zankyou
24 件の小説zankyou
19歳のクソガキです 似たような事ずっと書いてます でも思う事はよくあります それを忘れたくないから日記として小説を書きます。 生きた証を残したいだけです 少しでも共感してくれたら嬉しいです
帰る場所
あいつの笑い声が、今でも聞こえる。 ケタケタって、少し高くて、周りまで笑わせるような声。 何がそんなに面白いんだよって思うくらい笑って、くだらないことで腹を抱えてた。 あの頃の俺たちは、何も持ってなかった。 夢とか、将来とか、そんな難しいことなんて考えたこともなかった。 ただ毎日が楽しくて、 明日も当たり前に来ると思ってた。 頭から血を流した日があった。 転んだとか、ふざけすぎたとか、理由なんて忘れた。 でも覚えてる。 痛いはずなのに、俺たちは笑ってた。 腹を抱えて、涙が出るくらい笑ってた。 たぶん、あんな笑い方ができたのは、あの頃だけだった。 いつからだろう。 笑うことが下手になったのは。 昔は帰り道すら一人じゃなかった。 何でもない時間が好きだった。 ジャンケンに負けたやつが漢字ドリルをやる。 ヒーローごっこで本気のパンチとキックをする。 どっちが強いかで本気の喧嘩になる。 女子には冷たい目で見られて、 「ほんと男子ってバカだよね」って顔をされる。 でも夕方には仲直りしてた。 何で喧嘩したかなんて、もう誰も覚えてなかった。 帰り道の分かれ道。 「じゃあ、また明日」 そう言って手を振った。 それがずっと続くと思ってた。 でも、気付いたら。 あいつはいなくなっていた。 教室から少しずつ減っていく机。 毎日いた場所が、少しずつ知らない場所になっていった。 俺たちは思った。 置いていかれる方が辛いって。 ずっと同じ場所に残る俺たちが、不幸なんだって。 でも今なら分かる。 違ったんだ。 転勤族だったあいつにとって、 同じ場所で過ごせる時間はきっと幸せだった。 帰る場所が一つあること。 それは当たり前じゃなかった。 毎日門限を守って帰っていたあいつには、 ちゃんと待ってくれる場所があった。 俺たちの周りには色んな奴がいた。 家に帰りたくないやつ。 複雑な家庭のやつ。 先生に怒られてばっかのやつ。 意味なんて分からないことで傷ついてるやつ。 帰り道には路上で寝てるおっさんもいた。 子供だった俺たちには、それがただ怖かった。 でも今なら思う。 あのおっさんにもきっと、 帰りを待ってる誰かがいたのかもしれない。 逃げ回った先に、 帰れる場所があったのかもしれない。 そう考えたら俺も幸せ者だった。 でも俺が今帰りたい場所は、 土地でも、家でもない。 あの日。 あの教室。 あの公園。 くだらないことで笑った時間。 悪ふざけして怒られた日。 隣にいた、お前。 そしてあの高い笑い声。 そこに帰りたい。 あれから俺にも友達は増えた。 きっと、お前と会ったら仲良くなれそうなやつらもいる。 大切な仲間もできた。 でもな。 胸の中にある穴だけは、 ずっと埋まらなかった。 寂しくて。 切なくて。 なのに、不思議と暖かい。 この気持ちが何なのか、ずっと分からなかった。 でも今なら分かる。 これがきっと、 俺の帰る場所なんだ。 最後に別れた日の、お前の顔。 まだ覚えてる。 バカな俺でも分かったよ。 お前、笑ってたけど。 本当は無理してたよな。 世界は広い。 大人になって、色んな人に出会った。 でもまだ、お前みたいなやつには出会えてない。 あの小さな島みたいな町が、 俺たちにとって世界の全部だった頃。 あの頃に戻れたらって、今でも思う。 夢を見た。 あの日の夢。 まだ何者でもなかった俺たち。 何も持ってなかった俺たち。 もしあのまま同じ道を歩けていたら。 何か変わっていたのかな。 でも分かった。 置いていかれたと思っていた俺は、 本当はずっと、 あの日に置いていかれたままだった。 18時の鐘が鳴る。 カラスが帰っていく。 駄菓子屋の前から、昔みたいな笑い声が聞こえる気がする。 離れ離れになっても。 忘れたわけじゃない。 耐えて、耐えて。 いつかまた会えるその日まで。 俺は俺の帰る場所を守っていく。 あの日のお前と。 あの日の俺たちに。 もう一度「また明日」って言える日まで
ただいま。そして久しぶりです。
ペンを握らなくなって、気づけばかなり時間が経っていた。 前はあんなに頭の中に言葉が溢れていたのに、最近は何を書いても違う気がした。 「忙しかったから」 「時間がなかったから」 そう言えば簡単だった。 でも、本当の理由は違った。 ただ、モチベーションがなかった。 書きたい気持ちが消えたわけじゃない。 小説が嫌いになったわけでもない。 むしろ、ずっと心のどこかには残っていた。 でも、前みたいに「書かなきゃ」って思えなかった。 机に向かっても何も浮かばなくて、 昔の自分が残した文章を見返して、 「よくこんなの書けてたな」って思う日もあった。 少し悔しかった。 自分が好きで始めたものなのに、 自分自身が一番離れてしまっていたから。 でも、離れた時間があったから気づいたこともある。 書くことは、誰かに見せるためだけじゃない。 自分の中にある言葉にならない気持ちを、 形にするためだった。 だからまた戻ってきた。 完璧な文章を書こうとか、 昔より良いものを書こうとかじゃなくて、 今の自分が感じてることを、 今の自分の言葉で残したいと思った。 待ってくれていた人がいるならありがとう。 何も言わずに止まっていたけど、 終わったわけじゃなかった。 ただ少し、自分の言葉を探していただけ。 またここから書いていきます。
それでもこの街を愛してる
夏の湿気は、頭の奥までじわじわと染み込んでくる。 考えも鈍って、ただ空気に溶けていくような感覚。 外に出れば、近所のやつらの視線と、聞こえないはずの陰口がまとわりつく。 冬になれば逆だ。 骨の芯まで冷えて、全部が止まりそうになる。 それでも、そんな埼玉を、どこかで愛している自分がいる。 どうせ来世なんて、たいしたもんじゃない。 虫にでもなって、この街にまた戻ってくるんだろう。 カルマを背負って、また同じ場所を這い回る。 瓦屋根の上から見た景色、 いつの間にか丸い車ばかり増えた街。 「君なんだよ、ずっと頭にいるのは」 8月の雨は、羽みたいに軽くて、全部を跳ね返す。 月曜、水曜、金曜、木曜 ぐちゃぐちゃな時間の中で、思い返すのはいつも同じだった。 あの日、あの時、あの場所。 道の途中にぽつんとあった、小さな駄菓子屋。 今じゃ空き家だ。 その事実が、ただの悲しみじゃなくて、心の奥に沈む“憂い”に変わっていた。 ガラスみたいな街。 毎日、あの人のことを考えている。 一緒に歩いていく存在それが「愛」だと思ってた。 でも時々、心の中で突き立てる。 「ふざけんな」って、中指を立てるみたいに。 全部壊れてしまえばいいと思う夜もある。 虫になって、風の中をただ縫うように進む。 何も考えず、ただ存在するだけでいい。 団地の花壇で休んで、 水たまりで手を洗って、あくびをする。 10円の駄菓子で当たりを引いて、 飛び上がったあの日の歩道。 影をまたいで歩いた帰り道。 夕焼けは街に溶けて、全部をオレンジに染めていた。 親の金を抜いて買ったカードゲーム。 すぐダチに奪われて、 金の重みを知ったのは、もっと後のことだった。 万引きを疑われたこともあったけど、 今となっては、ただの笑い話だ。 手放しで乗る自転車。 野球の帰り道。 誰かに指をさされて、 言葉にならない穴が心に開いた。 でも、あの日笑われたことは、 全部取り返したつもりだ。 土の中から這い上がって、木に登って、 殻を脱いでいくみたいに。 シャツのシミが広がるみたいに、 この街の記憶も広がっていく。 そして、誰かの肩で、少しだけ休む。 ガラスの街。 毎日、あの人を思い出す。 一緒に歩く「愛」を信じながら。 でも、やっぱり時々思う。 全部壊してしまいたいって。 雨に濡れながら、埼玉の街を眺めていた。 ガラスみたいに、ただ綺麗に光っていた。 頬を濡らしたあの記憶も、 砕けて、今はただ輝いている。 季節は流れていく。 毎日が変わっていく。 まるで四季みたいに、 形を変えながら、それでも一緒に進んでいく「愛」。 これは、ガラスのように壊れやすくて、 それでも確かに存在している、埼玉の物語。
地平線の向こう側へ
位置についた、まだ名も知られない二等兵。 スタートの合図と同時に、俺は空へ駆け出した。飛び方なんて気にしない。ただ、雲の向こうへ急ぐだけだ。 幼さは消えていない。いや、あえて残している。 無邪気さと衝動、それが俺の武器だった。 喉は楽器。吐き出す言葉は、まだ荒削りな落書きのようで、それでも確かに何かを刻んでいく。 理想を追い、希望を握りしめ、俺は一気に潜る。 深く、もっと深く、記憶の海へ。 息が続く限界まで、沈み続ける。 そこには正しさと歪みが混ざり合った、現実の欠片が漂っていた。 俺はそれを拾い集める。痛みも、美しさも、すべて。 夜は時々、残酷だった。 押し潰されそうな静寂の中で、俺は缶コーヒーを開ける。 白いボスか、金の微糖。どちらでもいい。ただ、苦さが現実を溶かしてくれる。 カフェインで無理やり繋ぐ意識。 眠りは足りない。食事も適当。そんな日々が当たり前になっていた。 遠くで何かが吠える。ハクナマタタ、問題ない、なんて言葉が、どこか虚しく響く。 白昼夢のように浮かんでは消える未来は、泡のように儚い。 それでも俺は信じていた。 当たり前すら変えられるのがアートだと。 だから歌う。 ただの曲じゃない、自分そのものを。 太陽に焦がれ、夕暮れに飲まれながら、俺は進む。 風をまとい、軌道に乗る。 B-BOYの姿勢で、大地を揺らすように。 過去の残響が体に染み付いている。 刺激は消えない。むしろ、俺を突き動かし続ける。 光の差す方へ。 終わりの見えない地平線の、その先を見つめながら、俺は音に溺れていく。 イヤホン越しじゃ足りない。 音楽は、もう俺の中に入り込んでいた。取り憑かれたように、俺はクラブへ向かう。 疲れた足を引きずりながら、それでも低音に身を委ねる。 曜日なんてどうでもいい。 ただ、この瞬間だけがリアルだった。 弱かった心は、少しずつ変わっていった。 虚勢で固めていた自分は、崩れ、その奥から本物が顔を出す。 カラオケで満足していた過去の自分は、もういない。 “自称”なんて言葉は、跡形もなく消えた。 この火が消えない限り、俺は進み続ける。 年齢なんて関係ない。目指す場所は、ずっと先 五つ星のその上だ。 そしてまた、同じように空を見上げる。 焦がれ、迷い、進みながら。 地平線の向こうへ。 音の上に立つ、まだ名もなき存在として。
どうしようもない世界で
風が吹いていた。 ビルの隙間を抜けるその風は、どこか現実味がなくて、まるで夢の中みたいだった。 最低の生活。金もなく、未来も見えず、ただ日々をやり過ごすだけ。 それは地獄と何も変わらなかった。 でも、ひとつだけ違った。 人の温もりを知ったこと。 ある夜、誰かの言葉に救われた。 リリックだった。 名前も知らない誰かが吐き出した言葉が、胸の奥に刺さって抜けなかった。 「頭、上がんねぇな…」 それからだった。 同じままじゃ、何も変わらないって気づいたのは。 夢は、待ってても叶わない。 だったら、無我夢中で、不条理ごとぶっ壊すしかない。 歯車は、噛み合ってなかった。 社会の中で、自分だけがズレている感覚。 でも、それでいいと思った。 気持ちのゴミは、全部言葉に捨てた。 綺麗な人生なんていらない。 トラブルもドラマも、全部が燃料になる。 ナイフみたいな言葉を握りしめて、信号も見ずに走った。 どこに向かってるかなんて、分からないまま。 でも、止まらなかった。 「人一人の価値なんて、光一つじゃ測れねぇ」 あの頃の自分には、その意味すら分からなかった。 ただ、どうしようもない世界に、どうしようもないって叫ぶことしかできなかった。 便利に見えるこの世の中は、どこか壊れている。 権力、争い、見えない圧力。 だから叫ぶ。 歌なら、痛みをぶつけても壊れないから。 砂が舞うみたいな日々の中で、心は凍りついていた。 それでも、自分の聲だけは信じていた。 プライドは売らない。 誇りだけは、最後まで握りしめる。 SNSには、傷だらけの言葉が並ぶ。 フリーターの現実、過去の自分、あの頃の仲間。 でも、気づけば変わっていた。 ただのキッズだった自分が、ステージに立つ側になっていた。 評価なんて、後からついてくる。 大事なのは、自分の足で掴んだ証。 金じゃ埋まらないものがある。 その先にある“生きがい”を、追いかけていた。 夜。 時計は容赦なく進む。 明日が来る保証なんて、どこにもない。 それでも、生きる。 昨日の意味が、今になってやっと分かる。 失敗も、後悔も、全部必要だったと知る。 「死んでも、生きる詩を書け」 誰かの声が、また胸の奥で響いた。 「本当はどうしたいんだ?」 鏡の中の自分に問いかける。 自分を殺してまで、生きる意味はあるのか。 嘘ついてまで、続ける価値はあるのか。 答えは、シンプルだった。 「俺は、叫ぶ」 評価じゃない。 見栄でもない。 ただ、自分であるために。 額縁に収まらなくていい。 綺麗じゃなくていい。 生き様そのものが、芸術になる。 だから俺は、原点に戻った。 ただの「詩」を、聲に乗せるために。 埼玉の街。 何もないと言われた場所から、それでも声を飛ばす。 「帰ってこい、ここまで」 その言葉は、自分自身への叫びでもあった。 迷ってもいい。 傷ついてもいい。 それでも 言葉で、生きろ。
「今日は自分を褒めるために」
「もう、誰の声も気にしてない。」 そう言い聞かせるように、俺は小さくつぶやいた。 不安もネガティブも、もういらない。 これ以上、背負いたくない。 自分は自分だって、頭ではわかってる。 でも、ときどき迷う。 「今の俺って、どこにいるんだろう。」 ただ、自分でいたいだけなのに。 それだけなのに。 “ただ、自分でいたい。” その言葉が、何度も心の中でリピートされる。 散らかったテーブル。 その横にある、空っぽみたいな心。 同じ景色を見ながら、ふとつぶやいた。 「今日は、自分を褒めるために何しよう。」 誰も褒めてくれないなら、せめて自分で認めてやりたかった。 周りはいつだって、人の悪いところばっか見てる。 でも、そこにフォーカスしてもしょうがない。 だから、振り払う。 余計なもの全部。 もう一度、自分に光を当てるみたいに、意識を戻す。 それでも、また始まる。 怖くなって、 聞きたくない言葉から逃げるように耳を塞いだ。 意味のない歌を口ずさんで、 少しだけ霧が晴れた気がした。 でもやっぱり、 自分の汚さとか弱さとか、全部が嫌になる。 嫌になって、 またもがいて。 終わらないバッドデイ。 くだらない自分だって思いながら、 それでも叫んだ。 誰かのためじゃない。 自分に見せるために。 この声が、 どこかで同じように苦しんでる誰かにも届くように。 「もう、誰の声も気にしてない。」 不安もネガも、もういらない。 もう、いらないんだ。 それでも、時々迷う。 「俺は今、どこにいる?」 それでも ただ、自分でいたい。 そのために、今日も考える。 「今日は、自分を褒めるために何しよう。」
また会えるその日まで
あの日の熱は、まだ右のポケットに残っている気がする。 何度洗ったズボンでも、あの頃の温度だけは落ちない。 離れても、頭のどこかでずっと再生されてる。地元の景色、帰り道の空気、笑い声。 昔は笑われてた。 夢なんて言えばバカにされて、マイクを握れば冷ややかな目で見られて。 それでもやめなかったのは、意味があるってどこかで信じてたからだ。 今ならわかる。 あの時の全部が、ちゃんと今に繋がってる。 俺の声が、誰かの左のポケットに入ってるとしたら それだけで、あの日の自分は報われる。 休み時間、トイレにこもってイヤホンを分け合った。 誰にも見つからないように、小さく音を鳴らしてたフリートラック。 でも結局、スピーカーは没収されてさ。 担任の先生に怒鳴られて、笑って誤魔化して。 それでも、アカペラでかましたあの瞬間。 あの空気だけは、誰にも奪えなかった。 今でも全部、昨日みたいに思い出せる。 もし、明日すべて終わるとしたら。 ちゃんと伝えられてるか? 愛してる人に「愛してる」って。 友達や家族に「ありがとう」って。 じいちゃんもばあちゃんも、まだ笑っててほしいし。 親父もおふくろも、弟も。 言葉にするのは照れくさいけど、 それでも、ちゃんと伝えなきゃいけない気がする。 俺はずっと、愛してるって。 今もまだ、旅の途中だ。 歌えば歌うほど、愛しい日々が増えていく。 だけど立ち止まるわけにはいかない。 この先で、また会えるって信じてるから。 だから、寂しくはない。 「過去は変えられない」って、誰かが言ってた。 でも今、目の前にいるんだ。 昔の自分が。 嬉しそうに泣いてる。 報われなかったはずのあいつが、 ちゃんと笑えてる。 もしこれが夢なら、醒めないでほしい。 もう二度と、「報われない側」なんて言わない。 音楽に救われた。 数えきれない人に、救われてきた。 だから今度は、俺が誰かを救う番だ。 もしこれが最後だとしたら。 もう一度、帰ってきてもいいか? 俺の声は、届いてるか? 不安になる夜もあるけど、 それでも信じたい。 ちゃんと届いてるって。 「ありがとう」 その一言じゃ足りないくらいの気持ちを抱えて、 今日もまた、俺は歩いてる。 旅の途中。 歌えば歌うほど、愛しい日々が増えていく。 また会えるその日まで。
『拝啓、まだそっち側で闘う同胞へ』
これは俺とお前の。 拝啓、まだそっち側で闘う同胞へ 夜になるとさ、たまに思い出すんだ。 マイクを握ってた頃の、あのどうしようもない熱。 声が枯れるまで叫んで、でも何も変わらなくて、 それでも次の日にはまた同じ場所に立ってた俺たちのこと。 俺の生きた証なんて、大したもんじゃない。 形にもならないし、金にもならない。 でもきっと、どこかでお前らの中に残ってる。 それでいいと思ってる。 今でも分かるよ。 生活と夢の間で、喉が締まる感じ。 諦めきれないくせに、続ける理由も見失いかけてるあの感じ。 俺もまだ、完全には抜け出せてない。 でもな、今は誇れる仲間がいるよ 自分より先に、名前を呼びたくなるような奴らが山ほどいるよ だから言わせてくれ。 俺はもう、この先 音楽で一円も稼げないかもしれない。 それでも音楽に、美学を見つけちまった。 もう遅いんだよ。 だからお前らは さっさと売れて 早いとこ楽になっちまえよ。 その代わり、ちゃんと背負えよ。 俺はさ、結婚式場で働いてる。 知らない誰かの一日を、 一生の思い出にする仕事だ。 名前も知らない人に、幸せを届けてるよ。 不思議だよな。 あんなに“自分の言葉”にこだわってた俺が、 今は誰かの“人生の一瞬”を支えてるんだぜ でも、これも悪くないんだ。 お前は、お前の人生を生きろよ。 それでいい。 ただ一つだけ、約束してくれ。 仲間の期待は死ぬ気で答えろ 10分のライブに、命を置いてこい。 たった3分の曲に、全部詰め込め。 タワマンに住んでもいい。 でも、地に足つけろよ。 なあ、ここだけの話し本音を話してもいいかい? 本当は、辞めたくなかった。 ラップなんて、辞めたくなかった。 ライブ、したいよ。 「もったいない」って言葉、 何回も聞いた。 そのたびに、少しだけ心が揺れた。 でもさ、 どっちも選ぶなんて、できなかった。 ラッパーを“趣味”にして、 仕事を“保険”にする そんな生き方、 俺にはできなかったんだよ。 不器用だろ。 だから今、全部お前に預けるよ。 次にお前が立つステージは、 俺が死ぬほど立ちたかった10分だ。 次にお前が出す曲は、 俺が死ぬほど作りたかった3分だ。 だから、ちゃんと賭けろ。 人生ごと。 俺の炎は、お前に預けるよ。 売れるかどうかなんて、どうでもいい。 この気持ちが、誰かに届くなら。 その声を、誰かのために使え。 そしていつか— 「自分で選んだ道の先」で、 胸張って笑え。 俺たちが嫌いだった大人には、なるなよ。 約束してくれ。 この手紙の返事を、 いつか音で返してくれるって。 その日を、待ってる。 俺はまた、帰ってくるから。 敬具。
全世界を敵に回しても
朝六時。 街はまだ眠ってるくせに、空だけがやけに白んでて、俺のことを急かしてくる。 泣き虫だった。 それは事実で、どうしようもない過去だ。 でも、泣くのをやめたわけじゃない。 ただ、人前で見せなくなっただけだ。 強がりは、後天的な才能だと思う。 昔は一人でボールを蹴ってた。 相手もいないのにパス出して、勝手に受けて、勝手に転んでた。 笑えるだろ。 でも、あの時間だけは嘘じゃなかった。 靴なんてすぐ壊れた。 裸足で走ると、地面の温度も、石の痛みも、全部が直で伝わってくる。 その汚れた足の裏が、俺の生きてきた証だった。 「無理だ」 「お前はバカだ」 そう言ってきた奴らの顔、今でもぼんやり覚えてる。 でも不思議と、嫌いじゃない。 あいつらの言葉がなかったら、 俺はここまで遠回りしなかったから。 近道なんて知らない。 知ってたとしても、たぶん選ばない。 どうせ俺は、遠回りする生き物だ。 騙される側でもいい。 笑われる側でもいい。 それで、誰か一人が笑ってくれるなら、 それだけで価値があると思ってしまう。 バカだろ。 それでもいい。 名前は「zankyou」。 だけど魂は、もっと泥臭くて、もっと弱い。 苦しいときほど笑えって、誰かが言ってた。 だから俺は笑う。 ダセェ群れに紛れるくらいなら、 一人で突っ込む方がまだマシだ。 傷だらけのままでもいい。 どうせ綺麗に生きる資格なんて、最初から持ってない。 それでも。 守りたいものが、ある。 全世界を敵に回してでも、 手放したくないものが、ある。 昔の俺が、夢の中で泣いていた。 八年前の、小さくて弱い俺。 「お前は、俺のヒーローだ」 そんなこと言われても、困る。 俺はヒーローなんかじゃない。 ただ逃げなかっただけだ。 それだけだ。 でももし。 誰かの物語の中で、 俺が“悪役”になったとしても。 別の誰かの中で、 ヒーローになれるなら。 それでいい。 四畳半の暗い部屋。 膨らんでいくのは、現実じゃなくて想像ばかり。 背中を叩いてくるのは、過去の自分だ。 「派手にやれよ」 後ろは崖。 前には壁。 逃げ場なんて、どこにもない。 それでも、笑う。 だってもう決めたから。 救いたい人がいる。 理由なんて、それで充分だ。 眠れない夜は、今でも怖い。 不安は消えないし、自信なんてどこにもない。 でも、俺は知ってる。 誰かに救われた側の人間が、 今度は誰かを救う番だってこと。 気づけば、これは俺だけの夢じゃない。 失った数で競うつもりはない。 傷の数だって、誇る気はない。 ただ。 無駄じゃなかったって、言い切りたいだけだ。 だから今日も向かう。 誰かの元へ。 どれだけボロボロでも、 どれだけ笑われても。 立ち上がる。 何度でも。 俺は ヒーローになるんじゃない。 “なってやる”。 誰か一人のために。
心の天気は「晴れのち喜び」
潮の満ち引きみたいに、心は勝手に浮いて沈む。 それを止めようとするほど、余計に遠くへ流される気がして、俺はもう逆らうのをやめた。 波に任せる。 ただ、漂うだけ。 「こんなのzankyouらしくない」 そう言ったあいつの顔を思い出して、少しだけ笑った。 らしさなんて、誰が決めたんだろうな。 俺のことを分かった気でいるその声は、やけに遠く聞こえた。 俺は浜辺を歩く人間だ。 どこに行くでもなく、ただ足跡を残して、波に消されて、それでもまた歩く。 あの日々も、冷えた夜も、ちゃんとまだ俺の中で生きてる。 だから、寒い夜にはスープを飲むみたいに、 自分で自分の憂鬱をあっためるしかない。 周りはスーツ着て、ちゃんとした顔して、 まばらな観客席みたいな世界で、それぞれの役を演じてるけど、 俺はそこ出身じゃない。 空白を縫うのが得意なんだ。 言葉にならない部分を、音に変えることだけは、誰にも負けない気がしてる。 答えなんて一つじゃない。 心の数だけある。 晴れのち喜び。 そんな天気予報みたいな人生でもいい。 隣り合わせの不安と希望を、そのまま歌にして、 一世一代とか大げさな言葉を、あえて軽く使いながら、また歩く。 誰の真似でもない、君だけの足取りで。 雨も、風も、 気分一つで、晴れに変わることだってある。 もっと、もっと、 自分らしくいればいい。 人の命は、ちゃんと光る。 心の数だけ、ちゃんと光ってる。 ところで、君はどうだ? ちゃんと歌えてるか。 自分の歌を。 今、少しでも自由だと思えてるか。 俺はさ、俺の色の絵の具しか持ってない。 でも、それでいいと思ってる。 音がそこにあるなら、 それだけで、まだ続けられる。 無限大なんて言葉、信じてるわけじゃないけど、 それでも、終わりを決めるのは自分じゃないって、どこかで思ってる。 たまに、ふうって休んで、 またふらっと歩き出す。 そんなもんだろ、人生って。 かっこつけてみたり、 ふざけてみたり、 肝心なところでちょけるやつとか、 そういう人間臭さは、たぶん何があっても消えない。 誰にも奪えない。 人の数だけ、生き方がある。 得意な生き方がある。 その中の、永遠に若いままの一部分に、 ちゃんと愛をやりたい。 音が鳴り止むまで、 フラフラしながらでも、向かっていく。 君だけの足取りで。 雨も、風も、 全部ひっくるめて、 最後に笑えたら、それでいい。 人の命は光る。 心の数だけ。