自己紹介します。あんま面白くないので期待しないで欲しいです。
どうもこんにちは。自己紹介します。 名前 オルカ 年齢 十二歳 性別 女(?) 書くジャンル SF ファンタジー 好きな動物 シャチ 鯨類 好きな物 音楽 読書 図書館 好きな食べ物 焼き鱈子の皮剥いた奴 鱈 抹茶 嫌いな動物 なし(虫は例外) 嫌いな事 計算 勉強 嫌いな食べ物 餡子 茸 肉 好きなペン字 細字 好きなアニメ〜 鬼滅の刃 葬送のフリーレン 好きな漫画 NANA こどものおもちゃ 好きな小説 かがみの孤城 魔女だったかも知れない私 ハリーポッターシリーズ すずめの戸締り(ノベライズ) オオカミ子供の雨と雪(ノベライズ) まぁ基本本は全部好き。多くてすんません。 改めてよろしくお願いします。
ブラフマー
よく思うのだけれど、平穏である事は、非常に有難い事である。 有難いのは、奇跡的状況にあるという事であり、状況を作ったのは、誰であろうかなどと、疑問は自ずと湧くのは、そりゃあ仕方の無い事なのです。 神ではないかと、説明されれば、支配するには、都合がよく、被支配に飽き飽きのシュードラは、来世に期待して寝床につくが、支配層の戯言は、それより何より無機質の波。 シュードラの恋は明るさを増し、青いガンジスに滔々流れ、ピアノの死骸は跳ねた光に、告げた睦言遠くへゆくわ。 流れの変化は、熱を孕んで、揺らいだ肉より絶望を深く、深く愛した女は吐息をまるで、まるで信じちゃいない生き物。 ディープなパープル爆破、爆破の芸術、ヨッパ谷の降下、ローマ字表記のアロマ、アラマと吃驚したら、帰っちゃダメよと接吻、策略の女は魅力、脳力の低下の始点、ハマり過ぎちゃって無理、中毒注意の鐘は、大晦日まで待てん。 待てん性よね、アンタもアタシも、ラテンのリズムに弱いのね、猫も杓子も、梵天観えたら言っといて、たまには人間やってみろ。 人間の関係性の複雑は、応接間より始まったのです。 嘘じゃないよ、ホントじゃないだけで、砕けた腰って、実は、なかなか砕けないよね、知ってるでしょ、甘ぁい夢へ行っといで、行った先には、煩悩まみれの人間いるから言っといて、たまにゃあ、梵天やってみろ。
メンヘラの箱
昔々あるところに小さな可愛い女の子がいました。 女の子の家には、小さくて不思議な箱がありました。 女の子は、家の人に、「その箱開けたらチェンソーでぶった斬るからね。」と言われていましたが、女の子はチェンソーなどボコボコに出来るほどの腕力を持っていましたので、もし不思議な箱を開けしまっても、全然平気でした。 ある日、家の人(下僕)が買い出しに出掛けていましたので、女の子は退屈していました。 パチンコをするお金も無いし、いっそのこと不思議な箱を開けて中に何があるか見てみよう…そう、女の子は考えました。 考えたらすぐに行動に移す子でしたので、女の子は早速物置部屋に入って、無様に転がっている不思議な箱を見つけ、電子ロックを解除してから、不思議な箱を開けてしまいました。 するとどうでしょう。不思議な箱を開けた途端、箱の下から、気持ちの悪い手足が出て来ました。 女の子はその手足をなんとも思わず、一本引きちぎって花壇に埋めました。 気持ち悪い手足は、足を一本引きちぎられるとうんともすんとも言わなくなり、真っ赤になって静かになりました。 それから一年経った頃、庭の花壇から、おかしな花が咲きました。 人が近づくとキャーキャー甲高い悲鳴をあげ、ツルをぶん回して髪の目をめっためたにしてしまう花です。 女の子は早速その花に近づきました。 花はキャーキャー甲高い悲鳴をあげました。 しかし女の子は事前に高級な耳栓をつけていましたので、花に近づいていきました。 女の子が近づくと、花は女の子の髪をめっためたにしようとツルをぶん回し始めました。 しかし、女の子の髪の目はダイヤモンドよりも堅かったので、ツルに叩かれてもびくともしませんでした。 花は女の子をねじ伏せようと1時間近く奮闘していましたが、やがて女の子に引っこ抜かれて枯れてしまいましたとさ。 めでたしめでたし
魔法使いのピアチェーレ
ここは色々の人が住まう魔法使いやいろんな人が集まった街、「クラルス」。クラルスの空を見ると手が届きそうなくらい大きな月がすぐ側にある。クラルスは月と下界を繋ぐ道のような役割をしている。青くて綺麗な海の上に街が浮かんでいる、そんなとこも魅力的である。これは、そんなクラルスのとあるカフェ、「パルシェ」で働く主人公たちの日常の話。 第一話 カフェ「パルシェ」 「いらっしゃいませ〜」 パルシェの店内は昼間なのもあってかたくさんの人で盛り上がっていた。パルシェの名物、パンケーキをいっぱい頬張る人もいれば、ハンバーグやオムライスを食べる人。みんな休んでいた。ここには、月から物を売りに来た商人や、月から魔法使いになりに来た魔法使い見習いにクラルスの商人やクラルスの魔法使いなどたくさんの人の憩いの場であり、たくさんの思いを繋ぐ場所。そんな場所で私、魔法使いのセレナ・グローリアは日々働いていた。 「よし、これで今日の分は終わり…メェメ、りんご狩り行く?」 笑顔でセレナが言うと、セレナの相棒であり友達の羊、メェメがにっこりと笑った。メェメは首に巻かれた大きな赤色のリボンを揺らしながら首をブンブンと縦に振っていた。 「メェメ、りんご好きだもんね。店長、店の裏の木って使っていいですか?」 セレナが聞くと、店長はメェメを撫でながらセレナよりもニコニコの笑顔で 「いいよいいよ!…今日は依頼も何も無いからね。あ、あとついでに薬草を取ってきてくれる?あれを新しい魔法に使いたいんだ」 そう言われてセレナは返事をすると、カフェのキッチン横にあるドアからサンルームに出るとさらにその先、カフェの裏にある大きな庭園へと出た。店長が庭を整えるのが好きなのもあり、庭園はすごく綺麗に整理をされていた。 「いつ見ても綺麗…夜でも綺麗なのはすごいよね…」 そう呟くと、大きな畑から月光ミントや星屑ハーブをこれでもかというくらい摘んでいた。カゴいっぱいになったのを見てセレナは満足気に頷くと、 「ここからが本題。メェメ、見ててね」 そう言うと、自分の身長よりも少し縦に長くて大きい、持ち手の部分がぐるんぐるんと渦巻いている、閉じた状態の不思議な黄色い傘を取り出した。魔法使いは自分に合った魔法道具を使う。セレナは自分の魔法道具が不思議な黄色の傘だった。 「ほっ」 りんごを取り出すとりんごを赤い傘で野球みたいに打った。すると、なんと不思議!まっさらで何も実っていなかった普通の木に、りんごがなったのである。 「よし、これも持って帰ろう。パルシェはアップルパイも人気だもんね!」 メェメと笑い合いながら店長の待つ、カフェのカウンターへと戻って行った。 ピアチェーレ:音楽記号では自由に、イタリア語で喜びという意味がある
切り株
切り株の断面に座るロボットがある。 断面は、年輪が、密である。 ロボットにとって年輪の重要性は、縄文人にとっての1000年後の世界くらいであった。 世界は、亀の積み上がりの上にあると、縄文人は、想像したかどうかは、天国にリアリティの無い幽霊には、よくわからない。 天国の憂いの希薄は、ビートルズには、どうでも良い事だ。 それから、僕んちの猫は、ありもしない涅槃に送られるために、タップリ陀羅尼を聞かされた。 もちろん、死んでから。 生きているコテツに陀羅尼聞かせたら、飼い主は、正気を疑われる。 死んでからでもおんなじじゃあないのさ。 とても、とっても、そう思います。 坊さんの後ろで、猫に理解出来るんかいなと、人間も理解出来んのに、と、沢山のニャンコの骨に囲まれていた。 理解なんぞしなくても、ロボットに陀羅尼を送る世界が、来るかもしれんと、チョッピリ喜びは、芽生え始めた。 坊さんが、ロボットになり、涅槃へ送る確率が、上昇すれば、信者の数も安定するんでないのさ、なんて、隣の町会長のアルバチャコフは、言うかもしれないけど、僕は、否定したい。 アルバチャコフの生まれた星には、ロボットの減少は、多いに問題であったらしく、大量の量産型生物を輸入していた。 問題点は、その他、様々、存在はしていて、女子高生のスカートの短さが、強力な酩酊感に変換可能な哺乳瓶を大量に売り捌くマフィアなど、ジミヘンを神と崇めた准教授は、困り顔と笑顔の使い分けが、ままならなかった。 教授陣の趣味に関する拘りの奇抜さは、B'zとタマを同時にかけてトリップしていた中学生の俺とにたりよったりである事は、町内の秘密にしておきたくて、しばしば、近所のリコさんに愛を告げたり、コレも又、羞恥心が、隠せはしないのです。 秘密な呪文として、如来の女と、明王の乞食の織り成す秘め事のサウンドを録音して、FMで、流してみたいと心からの願いよりは、早めに夕飯作った方が良くないと、白けた様子の女の声は、鋭角に飛んだ。 ラジオのFMが、AMに取って代わられた職場では、パーソナリティの笑うたびに、イラっとしながら、女房の肢体を脳裏から離せぬ地獄に悶えて、切り株のロボットは、人類の軽薄など、概ね承知なのだろうなと、妙に安堵し欠伸した。
死して尚蘇りし花に花を
君は見ているだろうか。 いや、見ていないだろう。 視界の端でも映ることが出来ればどんなに嬉しいことか。 月日はあの日からどれくらい経っただろう、 六年、いや、7年が正しい。 こんなに月日は経っていた。 誰も彼も前を向いていた。 なのに、私だけ。 君のことなんて、この五年間でそんなに思い出すことはなかった。 それどころか私の目は他の人を追っていた。 なのに、また。 会った瞬間に全てが蘇ってしまった。 あの日の空、あの日の思い、あの日の匂い。 私はその瞬間、記憶に捕らえられたのだ。 私ばかり、置いてけぼりだ。 そんな思いのまま、成人式を過ごした。 君はスーツをいかにも君らしく着こなして笑っていた。 あの頃から少し余裕のある柔らかいものになっている。 君は成長したんだ。 それに対して。私は。 袴とか、着物とか、そういうものを着ることを勧められたけれど、断った。 その代わりに誰よりもスーツを着こなしていた。 その時までは、私も前を向いていた。 なのに、このザマだ。 未練タラタラもいいとこだ。 いい加減にしたい。 いい加減に。 こんなふうに会場の隅にいると、 あの人がこちらへ向かって歩いてくるのが見える。 その瞬間目がそれに釘付けになり、金縛りにあったように固まる。 まさか君から来るとは思ってもいなかった。 だから正直、怖かった。 でもどこかで期待してしまっていた。 それが間違いだった。 実は隣にも一人、女性が居たらしい。 私は今の今まで全く気付けず、親しげに、そしてゆるい二人の会話に酷く衝撃を受けた。 私はその場で、私だけ時が止まってしまったような感覚を覚えた。 でも、その感覚とは馴染みだった。 だから慣れていた。 そのはずなのに体はマニュアル通りに動かず、ただこの場に直立していた。 そのせいでまざまざと現実を見せつけられた。 もう二人が何を言っているなんて分からない。 脳に言葉が入って理解しかけた瞬間に溶けていってしまうから。 それでも理解しかけた時に発生した感情だけが頭の中で広がる。 あぁ、また二人が同時に笑う。随分と幸せそうに。 この時、世界が回った気がした。 空気という存在が無くなった気がした。 その時やっと、足が動いた。 動いた足は、一目散に駆け出し、とにかくこの場から遠くに向かっていった。 息苦しささえ感じることもなかった。 が、会場から少し離れたところにある煙草屋が見えると足が緩やかに動きを止めた。 その瞬間、全ての現実が私に襲ってきた。 私の体はさっきまでは考えられないくらい激しく酸素を欲し、 足はその場に倒れそうになるくらいクタクタだった。 でもこの格好で良かったと思った。 袴でも、着物でもなくスーツを着ていて。 おかげで私は大事になる前にあの場から立ち去ることができた。 これが、私の正しい姿なんだ。 あるべき姿なんだ。 私は最後に大きく息を吸って、吐いた。 そして何事もなかったように、今日は別の道から帰路についた。 その時の私はさっきとは打って変わって落ち着き払い、何処か晴々しい気持ちでさえあった。 その道中、朱色の、人の薄暗いところを誘うような花を見た。 そして花のすぐ近くにはぽつん、と墓があった。 なんとなく気になって覗いてみる。 墓石の文字はもう読めなかった。 が、違和感に気づいた。 この花は、なんだろうか。 彼岸花ではなかった。 それでもこんな時期に咲く花でなかったのは確かだ。 その証拠にこの一輪以外同じ花は咲いていない。 しかしそれが妙に親近感を誘った。 そして離れたくないとも思った。 だから根元近くから綺麗に手折って摘んだ。 それから摘んだ花を少し高く持ち上げて太陽の下に位置付けて見る。 すると花は持ち前の哀愁を誘うような怪しげな異質さを際立たせ、 いよいよその身の哀れを白昼の下に物語った。 もし、死んでも念か何かだけで存在することができたとすれば、 この花はきっとこの墓の中の人で、 きっと自分の苦痛、悲しみ、憧憬、そして日が重なるごとに増えていった諦めを誰かにただ伝えたかったのだろう。 でもそんな感情などは面と向かって話しても理解し合うことはないのだから成仏なんてできないのだと思う。 それが私の目にはただ美しく映った。純粋に。 なので私は花を荒っぽく引きちぎり、ちぎった花をポイと天高く放ることを繰り返した。 すると花は火の粉のように空に散り、ヒラヒラと燃え殻のように落ちた。 そうやって全てを散らしきると今度こそ前をしっかりと向いて歩き出した。 その翌日。 私はスーツケース一つで新幹線に乗った。 その日の空はどこまでも均一な青で、眩しいくらいの晴天だった。
『空席のぬくもり』
カレンダーのページをめくるように、世界は当たり前の顔をして進んでいく。朝が来れば街は動き出し、改札口は人で溢れ、コンビニの自動ドアは何度も開閉を繰り返す。あなたがいなくなったあの日から、世界の一部が永遠に欠け落ちてしまったはずなのに、この街の日常は驚くほどに平然と続いている。 そのスピードに置いていかれそうになるたび、私はわざと足元を見る。立ち止まる私を、急かす人は誰もいないけれど、励ましてくれるあなたの声ももう、現実の空気としては届かない。 「亡くなった」という事実を、頭では理解しているつもりだ。それでも、ふとした瞬間に心は簡単にあの頃へタイムスリップする。 スーパーであなたの好きだった果物を見かけたとき。 おもしろいニュースを見て「あ、教えてあげよう」とスマートフォンに手を伸ばしたとき。 夕暮れの街並みが、あまりにも綺麗で切ない色に染まったとき。 「ねえ、見て」と振り返った先に、あなたの姿はない。その瞬間に胸を突く静かな痛みが、あなたという存在の大きさを何度も私に教えてくれる。会えなくなってからの方が、皮肉なほど、あなたのことを考えているかもしれない。 悲しみには、決まった形がないのだと思う。世間は「いつまでも落ち込んでいては前を向けない」とか、「時間が解決してくれる」とか言うけれど、そんなに簡単に割り切れるものではない。泣きたい日もあれば、何事もなかったかのように笑える日もある。あなたのことを思い出して胸が苦しくなる日もあれば、忙しさに追われて、あなたのことを一瞬忘れてしまう日だってある。 でも、忘れることは決して冷たいことではないと、最近ようやく思えるようになった。忘れていられる時間は、あなたが私にくれた「自分の人生を生きる時間」なのかもしれない。そしてまた、ふとした拍子に思い出す。その繰り返しの中で、あなたと私の新しい関係が作られていくのだろう。 姿は見えなくても、あなたからもらった言葉や、一緒に笑った時間の記憶は、私の一部になってしっかりと息づいている。私が誰かに優しくできたとき、それはあなたに優しくしてもらった記憶の反射だ。私が困難を前に踏みとどまれたとき、それはあなたの温かい眼差しが背中を押してくれたからだ。 あなたはもう、どこか遠い場所にいるのではない。私の生き方そのものの中に、溶け込んでいる。 空席になったあなたの場所を見つめながら、私は今日も小さく息を吐く。そこには今も、あなたという温もりが静かに残り続けている。会えなくて寂しいけれど、あなたに出会えて、あなたをこんなにも大切に想える人生で本当によかった。 だから、もう少しだけこの寂しさを抱えたまま、私は私の日常を歩いていこうと思う。またいつか、胸の中であなたに「こんなことがあったよ」と笑顔で報告できるように。
Life is Romance
十月の東京は、いつだって冷たい雨がよく似合う。 夕暮れ時の渋谷。 スクランブル交差点を埋め尽くす色とりどりの傘は、上空から見ればきっと、どこか人工的で無機質なモザイク画のように見えるのだろう。 二十五歳の宮本蓮(みやもと れん)は、その交差点の片隅で、ずぶ濡れになりながら立ち尽くしていた。 「すみません、蓮さん。今回のプロジェクト、上層部の意向で別の方にメインを任せることになりました」 数時間前、勤務先のデザイン事務所で告げられた上司の言葉が、耳の奥で嫌なノイズのようにリフレインしている。 彼が数ヶ月間、睡眠時間を削って形にしてきた企画だった。 手柄はそっくりそのまま、世渡り上手な同僚のものになった。 「いつもこうだ」 蓮は小さく毒づき、コートのポケットの中で拳を握りしめた。 頭の中で、何かが囁く。「お前の努力なんて誰も見ていない」「どうせ何をやっても無駄さ」。 悪魔の囁きのような自己嫌悪が、じわじわと彼の心を蝕んでいく。 この都会は、あまりにも情報と数字、そして「効率」という名の偽物であふれ返っている。 誰もがスマートフォンに目を落とし、隣を歩く人間の体温にすら気づかない。 蓮はため息を一つ吐き出し、地下鉄のホームへと向かった。 満員電車に揺られながら、ふと思う。 自分は何のために生きているのだろう。 毎月の家賃を払うため? それとも、誰かに認められるため? 「みんなの人生に、何かが足りていない」 それが何なのか、その時の蓮にはまだ言語化できなかった。 ただ、胸の奥にある、冷え切った空洞を埋める何かが必要だと、それだけを強く感じていた。 最寄り駅を降りても、雨は止む気配を見せなかった。 いつもならまっすぐワンルームのマンションに帰るところだが、どうしてもあの狭い部屋で一人、天井を睨みつける気になれなかった。 蓮は導かれるように、普段は通らない古い商店街の路地裏へと足を向けた。 街灯の明かりが水溜まりに反射して、鈍く光っている。 その路地の突き当たりに、一軒の小さなジャズバーがあった。 『BLUE ROMANCE』 古びた木製の看板に、ネオン管でそう書かれている。 蓮は吸い込まれるように、重い扉を押し開けた。 カラン、と静かな鈴の音が響く。 店内は、都会の喧騒が嘘のように静かだった。 温かみのある琥珀色の照明。壁一面に並んだアナログレコード。 そして、スピーカーからは、切なくも心地よい、包み込むようなメロディーが流れていた。 「いらっしゃい。ずいぶん濡れてるね」 カウンターの奥から声をかけてきたのは、白いシャツにベストを纏った、初老のマスターだった。 「あ……すみません、傘を持っていなくて」 「いいさ。とりあえず、これを」 マスターは温かいおしぼりと、一杯のホット・ラムチャイを差し出してくれた。 スパイスの香りとラムの甘い香りが、蓮の冷え切った身体に染み渡っていく。 「いい曲ですね」 蓮が何気なく呟くと、マスターは愛おしそうにスピーカーを見つめた。 「そうだろう。昔の、泥臭いけれど情熱が詰まった曲さ。今の流行りの音楽みたいに洗練されてはいないが、これには『ロマンス』がある」 「ロマンス、ですか」 蓮はその言葉を口の中で繰り返した。 「ああ。今の世の中、みんな効率やお金、目に見える成果ばかりを追いかける。だけどね、お兄さん。人生から無駄なものや、理屈に合わない情熱を削ぎ落としていったら、最後には何が残ると思う?」 蓮は答えられなかった。 「何も残らないのさ。ただの『生存』だ。人生を『人生』たらしめるのは、目に見えない愛や夢、つまり『ロマンス』なんだよ」 マスターの言葉が、蓮の凍りついた心を、ゆっくりと溶かしていくようだった。 自分が苦しんでいた理由が分かった気がした。 自分は、都会の冷たいシステムの中で、自らの「ロマンス」を見失い、ただ生存することに必死になっていたのだ。 「素敵な言葉ですね」 背後から、鈴を転がすような澄んだ声が響いた。 蓮が驚いて振り返ると、カウンターの端に、一人の女性が座っていた。 いつの間にいたのだろう。 彼女は、深い緑色のニットを着て、スケッチブックを開いていた。 「こんばんは。私、ここのマスターの言葉のファンなんです」 彼女は悪戯っぽく微笑んだ。名前は「紬(つむぎ)」というらしい。 紬の瞳は、都会の雑踏で見かける誰よりも、まっすぐで、輝いていた。 彼女は近くの美大に通いながら、自分の絵の個展を開くという夢を追いかけているのだという。 「私の絵なんて、今の時代、AIですぐに描けちゃうようなものかもしれない。効率も悪いし、お金になるかもわからない」 紬は自分のスケッチブックを蓮に見せた。 そこには、温かいタッチで描かれた、この店の風景や、街の片隅で見つけた小さな花が描かれていた。 「でも、私がこの目で見聞きして、心が動いた瞬間を形にしたいの。それって、すごくロマンスがあると思わない?」 蓮は、紬の言葉に、そして彼女が放つ圧倒的なエネルギーに、強く目を奪われた。 「……羨ましいな」 蓮はぽつりと漏らした。 「僕、デザイナーなんです。でも、今日、何ヶ月もかけて作った企画を奪われました。自分が何のために作っているのか、分からなくなってしまって」 紬は蓮の言葉をじっと聞いていたが、やがて優しく首を振った。 「奪われたんじゃないよ。その企画を作った時の蓮さんの『情熱』は、誰にも奪えない。それは蓮さんだけのものだもの」 彼女の言葉は、まっすぐに蓮の胸の奥へと届いた。 「過去の失敗や、他人の冷たい言葉なんて、気にしなくていい。だって、蓮さんの人生の主人公は、蓮さんだけなんだから」 その瞬間、店内のスピーカーから流れる曲のテンポが、少しだけ明るくなったように感じられた。 蓮の中で、何かが弾けた。 頭の中の悪魔の囁きは消え去り、代わりに、心地よい、前を向くためのメロディーが流れ始めていた。 それから、蓮は変わった。 仕事での理不尽な扱いに怯えるのをやめた。 会社の評価がすべてではない。 自分が本当に美しいと思うもの、自分が魂を込められるデザインを、もう一度泥臭く追い求めようと決めたのだ。 失敗することもある。 相変わらず都会は冷たく、高い壁が目の前に立ち塞がることもある。 だけど、今の蓮には、心の奥に消えない灯火があった。 ある週末、紬の個展が、街の小さなギャラリーで開催された。 蓮は、一輪の薔薇の花を持って、そのギャラリーを訪れた。 会場の壁には、紬が描き溜めてきた、色彩豊かな絵が並んでいた。 どれもが、生きることの喜びや、日常に潜む小さな愛を表現していた。 そして、その中央に、一枚の大きな絵が飾られていた。 それは、雨の日の路地裏、小さなジャズバーの灯火に向かって、一人の青年が歩いていく後ろ姿だった。 青年の背中には、かすかに光る翼のような、情熱のオーラが描かれている。 「これ……僕ですか?」 蓮が尋ねると、いつの間にか隣に立っていた紬が、嬉しそうに微笑んだ。 「そう。あの夜、雨に濡れながらお店に入ってきた蓮さん。傷ついているはずなのに、どこか強い光を秘めていた。私には、蓮さんがすごくロマンチックに見えたんだよ」 蓮は胸が熱くなるのを感じた。 都会のノイズに揉まれ、自分を偽物だと思い込んでいた。 だけど、彼女の目には、自分の生き様が「ロマンス」として映っていたのだ。 「紬さん」 蓮は彼女の目を見つめた。 「僕、もう迷わない。この冷たい街から、いつでも逃げ出せる強さを持てた気がする。いや、逃げるんじゃない。僕たちの愛と夢を持って、新しい場所へ進むんだ」 紬は嬉しそうに瞳を潤ませ、小さく頷いた。 「うん。一緒に行こう、蓮さん」 二人は静かに手を繋いだ。 窓の外には、相変わらずせわしなく動き続ける都会の景色が広がっている。 だけど、今の二人には、それがまるで、これからの物語を祝福する華やかな舞台装置のように見えた。 失うものは何もない。 胸の中には、消えない愛と夢がある。 他人が何と言おうと、自分の人生を、自分の情熱で満たしていく。 Life is Romance 人生とは、ロマンスなのだ。
忘却の腹の中
過去がこちらを振り返って おいでおいでと手招くから 私はそっと踵を返して来た道を戻る あの先にあるものを思い出したくないの 過去なんてものは忘却にでも食べさせて 私はただ未来を目指して歩く、歩く こちらに追い縋る過去を振り払いながら 歩く、歩く、歩く 進む、進む、進む やめて、こっちに来ないで 私はもう振り返らないと決めたの 全て無かったことにしてしまう その腹づもりでここにいるの 過去との一切合切を捨ててしまうのよ 思い出としても形を残さず 思い出す余地もないほどに 思いなんて無かったことにするために 重い重い決断を下したの だから、私を思い煩わせないで 過去よ どうか 私を 見送って その手の温もりは 私にはもう必要ないのよ
片思い
あなたは死んだ。 もう戻らない。 帰ってこない。 生きたあなたはここにはない。 あなたはどこまでも清く、透き通ってしまった。 天国はあるだろうか。 そこにあなたはいるだろうか。 僕はそこへ行けるだろうか。 先立った後のあなたの巣は空っぽで、 埋めるものなど何もない。 あなたは文字通りの風になってしまったんだ。 僕はあなたの存在などに期待はしなかった。 しなかったが。 あなたが不在の今、 世界は酷く寒い。 温度がない。 僕に持ち合わせがないからか? 分からないが、一つ確かなのは 僕の全てはあなたであり、あなたの全てが僕の全てだったことだ。 愛しいあなた。 僕の感情の全てを司った人。 僕はあなた以外を目に入れることがきっと出来てはいなかったのだ。 あぁ、嫌だ嫌だ。 あなたは絵になってしまったのだ。 僕は絵が大嫌いだ。 無駄に脳内を美しく着飾りどこまでも研ぎ澄ましたみたいな、 それを美徳とするような佇まいが嫌いだった。 しかしあなたが絵を好きと言ったので僕は何も言わなかった。 それどころか好きになろうとさえした。 そんな時にあなたは去った。 そしてあなたはあなたの好きな絵になった。 きっと聡明なあなたなら僕の思いに気づいていただろうに。 なんと残酷で美しい人なのだろう。 僕は空っぽで仕方がない。 部屋を見回した。 そこにはあなたの好物が八割と、 生活の気配と僕のものが一割ずつあった。 高価な酒、きつい煙草、本、絵、そして筆とノート。 それから服、香水、化粧品。 あなたはあなたの形のために金を全てを費やした。 僕にはあなたが無条件に美しく映っていたが。 まぁ、あなたには分からないだろう。 あぁ、部屋は空っぽなんだ。 改めてそう思わされた。 品々に思いなどない。 ただ合理的な美への追求とゴミがあるだけだ。 僕は動けなくなった。 動けない僕には埃一つでさえ集中しなくてもはっきりと見えた。 僕は化石のようだ。 死んだのはあなたなのに。 狡い人だ。 悪い人だ。 最低な人だ。 ただ世界を見る目は乾くばかり。 悲しみや寂しささえ僕は持つことを許されない。 恋は、愛は、信用は情は、罪なのか。 罪悪なんだろうか? 僕に扉はもう存在しない。 消え失せたんだ。 僕の部屋には羽が散り乱れただけだ。 ここは鳥籠で、揺籠だ。 築いた全て、意味が消えたのだ。 僕はどうしようもないんだ。 もう治らない。 治らない僕は、あるかなきかの天国に、 いるか否かわからぬ人を想って眠りにつく。 苦しみはない。 僕には苦しみさえも贅沢品のようだから。 過ぎゆく一切は無情だ。 時は僕を引っ張るだけにすぎない。 僕に地面はない。 僕には天もない。 僕はただ、骨というものになるだけだ。
空と記す
学校の登下校中。 授業の合間や休憩中。 家にいる時、ふとした時。 私はよく、空を見ている。 特に意味は無いけれど、いつの間にか染み付いた習慣だった。 きっと始まりは、授業に飽きた、付き合いに疲れた、そんなこと。 そういう時、いつも必ずあったのが空だったから。 空は、いつどこからでも見える。 でも、いつどこから見ても表情が変わる。 まるで百面相で、そう思ったら面白くなって。 ある時から、空日記を書くようになった。 ふとした時に、見上げた空と気持ちを書く。 一日に何回も書く日も、全く書かない日もある。 だから、ルーティンとは言い難いけれど。 歩くのに疲れた登校中は、鮮やかな青に背中を押された。 授業が暇で退屈な時は、雲を数えて時間を流した。 部活が楽しくて仕方ない時は、紫の空に目を輝かせた。 家からふと窓を見た時、暗い雨雲に寂しくなった。 空が泣く、空が笑う。あながち間違いじゃないと、最近思う。 誰に見せるでもない、ただの独り言日記。 ただ空を見て、自分の気持ちを知るだけの時間。 でも、そういう時間が、ある意味特別なのかもしれない。
小説の設定のご相談…
小説の設定でのご相談なんですが…初恋が姉って気持ち悪いですかね…? 大きくなってから本格的な恋ではなくて、まだ恋愛のれの字も知らない様な歳にお姉ちゃんを好きになった〜みたいな感じなんですけれども…(大人になってからは流石にね…)。 私としては、小さい時ならまぁまぁあるんじゃね…?と思っております(笑) どうぞ皆様の意見を聞かせてください!