除草機1号

15 件の小説
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除草機1号

基本超短編を書きます。ストーリーは何となく決めます。新参者ですがどうかよろしくお願いします。

第3回NSS決勝 魔法の言葉

 ジェイクは長いこと思い悩んでいた。悩みの種はもちろん、あの魔法の言葉のことだ。ことの発端は息子が継いだ工芸店の経営が傾きかけていたことにある。  ジェイクの家は先祖代々、工芸店を営んでいる。しかし経営は決して順風満帆でなく、代が変わるごとに必ずと言ってよいほど閉店の危機に瀕してきた。それでも潰れることなく営業できているのは、海を渡って来た1代目から代々言い伝えられてきたあの魔法の言葉のおかげと言ってよいだろう。 クリッソ・ド・コマワール。  経営が苦しい時は、先代から言葉の意味を教われば店はなんとか立ち直る。また、あの言葉があることで余裕が生まれ、落ち着いて仕事ができた。店を継いで間もない頃に父が拵えた借金で潰れかけていた店をなんとか立ち直すことができたのも、あの言葉があるおかげに違いない。  ジェイクが言葉の意味を知ったのは店を継いだ20年後のこと。経営に失敗し店も閉店寸前だったとき、先代の父が手紙でジェイクに言葉の意味を教えてくれた。恐る恐る手紙の封を破ると、そこには一言。 『全てを跡継ぎに丸投げしなさい』  ジェイクは言葉の意味を息子に伝えるか否か、いまだ思い悩んでいる。

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行末

 わが町には、とある占い師が住んでいる。彼女の占いは百発百中と評判で、いつもテレビや有名人、金持ちが彼女に占ってもらいにくる。一方で、50年間屋敷に籠り続けている彼女には、悪い噂もあった。夜な夜な、人を食べているとか、実は悪魔と契約している、なんて噂もあった。  高い金を払って、僕はやっと彼女の前まで来た。僕は、どんな犠牲を払っても彼女に聞きたいことがあった。 「願いを言いなさい」  妙に透き通り、気色の悪い声だった。僕は大きく息を吸うと、問いに答えた。 「占い師様の行末を占ってください」  屋敷の奥から、ガタンという鈍い音、そして彼女の断末魔が聞こえた。テレビで聞いた声とは違う、人臭い声だった。屋敷が崩れ、天井から女が落ちてきた。ひどく醜く、それでいてどこにでもいるような普遍的な老婆。  彼女が嫌ったもの、それは衰えてゆく自分自身だった。

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ボタンとペットボトル

 ペットボトルを捨てたあの日、僕は君をいらないものだと思っていた。でも、今僕は君を欲している。まず、ゆっくり、一滴ずつ飲み干して、空になった瓶で遊ぶ。ラベルを剥がして形を変えたり、人と思って話しかけたり、あるいはもっといろんなことができたかもしれない。あのボタンを押したことに、後悔はないと信じていた。でも、時間は、使い道が無いものにとっては永遠の地獄なんだ。だから、やり直させてくれないか。君を捨てた、あの日へ。 残り4億9999万9999年と359日11時間56分13秒

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第3回NSSコンテスト ふたご座流星群

12月のある日、星空の下で1組の母子が話していた。 「ねぇ、おかあさん、てんもんだいにいかせてよ」 「天文台? お金がたくさんかかっちゃうわよ?」  NGを出された息子だったが、諦めるわけにはいかない。今夜は双子座流星群が見えると聞いたからだ。 「ねぇ、おかあさん、きょうはながれぼしがみえるんだよ? ながれぼし、みたくないの? ねぇ、おねがい」  母親も諦めたのか、最後には折れて天文台へ車を走らせた。  星空の下で、天文台のオーナーらしき男が煙草を吹きながら話している。 「流星群が降るおかげでこの天文台は儲かる。だが、向こうもまさか自分が観られているなど思いもしないだろうな」    ここは小惑星ファエトン。鼠色の皮膚を纏った少年が母親らしき宇宙人に話している。 「ねぇ、ママ。ニンゲンみにいこうよ」 「ニンゲン? お金たくさんかかっちゃうわよ?」 「ねぇ、おねがい。おろかなニンゲン、みたくないの?」  あるゴミ処理業者の責任者は語る。 「俺達が撒いた塵をニンゲンが観るおかげでゴミは捨てられるし観光客を集められる。しかし、向こうも自分が観られているなんて思いもしないだろうな......」

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死とはなんだろうか

 死とはなんだろうか。少し、死について考えてみた。  死とは救いなのかもしれない。死は、苦しまなくて良い世界。何もしなくて良く、何もしてはいけない世界。  死とは終わりなのかもしれない。あったかもしれないより良い未来。それを潰して、問答無用で物語を終わらせる。  死とは、最良で最悪な選択。

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ハム

 夕飯のハムに、目が止まった。豚、か。  僕は以前、牧場で豚を飼っていた。可愛い、可愛い僕の豚。名をぽんずという。そんな豚も去年、付けていた縄で誤って首を絞めて死んでしまった。ああ、そのとき、僕は何度涙しただろう。ぽんずへの弔いの意味を込めて、僕は彼女を料理にした。彼女を取り込む中で、ひとつ思うことがあった。彼女は食べられて、本当に嬉しかったのだろうか。食べようが食べまいが彼女にとっては同じ、死だ。食べられて嬉しい、は人間の都合なのかもしれない。そう思い、僕はハムを箸で挟んだ。  いただきます。

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老いる

 浦島太郎という物語がある。それにおいて、彼は時代の流れから取り残され、最後には玉手箱の呪いで老人となった。貴様らは老いていく彼を哀れむだろうが、少し待って欲しい。彼は自分の生きてきた時代に置いていかれたとき、それを悲しんだのではないか。『老いる』事は彼にとっての救いだったのではないか。不老不死を目論む貴様ら人間に、私は問う。『生きる』事はそんなにも大事な事なのか。             2897年 1月3日 地球

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馬券

 俺は、今日も競馬場に向かう。大穴を狙って。ああ、今日も3番が勝った。がっかりした気持ちよりも安堵感を感じる。何故だろう。何故、俺は毎日こんなことをしているのだろう。心の声がそれに応える。競馬場に向かい、馬券を外してがっかりする、そんな日常を壊さないためなのだ、と。

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料理店

 私は19歳、とある中華料理店で働いている。ある日、中華料理店で働いていると、机の隙間にゴミがくっついている現場を発見した。手袋をつけて回収しようと思ったが、取れない。注意しようとしても、知らんぷりだ。なんて、自分勝手なのだろう。机の隙間にピッタリと挟まっているゴミを取ろうと苦戦していると、やがてゴミは隙間を抜け出し、風に乗って空を自由に駆け出し始めた。  なんとか定時に店を出た私は、その足で隣町のレストランに向かった。しかし料理についてきたフォークが細すぎて、スパゲッティを上手く巻きつけられない。それならと、私はテーブルクロスをフォークの持ち手にくっつけた。若い店員が何か話しているが、知ったものか。結局自分がやりやすいようにやれれば、それで良いのだ。

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弱者

 川底に、ワニがいた。ワニは僕を見つめると、すぐに川の奥深くに潜った。何故なら僕が、鉄砲を持っているからだ。どこか遠くで、水鳥の鳴き声が聞こえた。水鳥はワニには敵わず、ワニもまた鉄砲には敵わない。そこに、上の人間には決して敵うはずがない自分の姿を重ね、僕は銃口をわずかに下げた。しばらく歩くと、河岸でワニが赤子を喰らっていた。 弱い者いじめは、良くない。  僕は、そっと銃口をワニへと向けた。

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