除草機1号

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除草機1号

基本超短編を書きます。ストーリーは何となく決めます。新参者ですがどうかよろしくお願いします。

病室の煙

 いつからだろう。あの窓から煙が昇り始めたのは。ただ白い病院の窓に、いつからか、煙草の煙が昇るようになったんだ。  僕は嘘つきだ。他者から責められれば他人に責任を押し付け、いつだって自分にとって良い結果になることだけ考えている。そのくせ好奇心は人一倍強くて、あの窓の内側では老人が煙草を吸っている。その老人は煙草嫌いと言うくせに1日に何本も吸う頭のいかれた野郎だと聞くと、直ぐに会ってみたくなった。  病室には、1人の老人が眠っていた。彼の隣では、夥しい量の吸い殻が水に沈んでいる。話しかけると、老人はゆっくりと声を返してくれた。深く、感情に満ちた声で、老人は話し始めたのだ。 「私は昔、詐欺師をやっていた。煙草を使って、カモ達から大金を巻き上げていたんだ。しかし途中で、大きなミスをしてしまってね。組織から命を狙われ、通りかかった男に助けられるのだが、そいつの声を聞くうちに相手が私が詐欺をした相手だと気づいてしまったんだよ。そいつの顔を見て、私が今までにどれだけのことをしていたのか悟ったよ。」  それからその男に償いとして今まで自分が他人に勧めた量の煙草を吸えと言われ、今に至ったそうだ。後246本煙草を吸えば、私も悔いなく地獄へ行ける。あの日の老人はそう話した3日後に、亡くなった。担当だった看護師は、老人が僕と話したせいで煙草で腐っていた肺や気管がやられて病気が悪化してしまったと話した。僕のせいで、老人が死んだ。僕は、捉えようのないほどの後悔に襲われた。  僕は今、煙草を吸っている。あの日の、責任を取って。あと13本、後13本で、老人は救われる。どうか、あの世に昇れますように。

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[週刊]百足の唄 4

注意:この作品には、暴力的な表現、蟲が登場する可能性があります。耐えられる人のみ読んでください。  二重ドアの奥には、まるで雪山で吹雪に飲まれたかのような白の世界が広がっていた。あたりは真っ白で、はっきりと見えるものは何もない。ひとまずは仲間同士で居場所を示すサインである『百足の唄』を唄ってチームメイトの居場所を確認した。俺たちCチームのメンバーはヘルバン、ベル、ノレス、俺の4人。A〜Eの5チームのうち、訓練に合格するのは通常、1チームだけだ。もし訓練に落ちたら、教官に何をされるか分かったものじゃない。しかし、視界が確保できない中、使えるのは厚い本が入ったカバンと3ヶ月の訓練で得た知識だけ。全員が頭を抱えていたとき、ベルが何かを閃いたように手を叩いた。ノレスがどうしたのか問いかけると、ベルは勝ち誇ったように笑った。 「君たちも百足なら知ってるでしょ?''機械はガスを吸収する''という古い噂を。今回はそれを、逆手に取ろうと思ってね」 [お知らせ]  2月28日、3月7日 休刊いたします。

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ハッピー

「世界のみんなが良い人生を送るためには、どうなればいいでしょう」  ふと、先生がこんな質問を投げかけてきた。良い人生か......私は少し悩んでから、こう答えた。 「世界のみんながみーんなハッピーになればいいんじゃないですか?」  待ち侘びた答えを言われたことに喜び、先生は私に大きな拍手を送ってくれた。そのときの回答が本当に正しい答えだと思っていたあの頃。本当に懐かしく思う。  それから10年後、私は薬浸りになり、沢山のハッピーを抱えていた。そんなことをしても、私の人生は少しも良くはならないのに。頭ではわかっていても、行動には移すことができない。ハッピーは一時的な感情だ。一度強いハッピーを感じると、次はもっと強いハッピーを手に入れたくなる。ハッピーは自分勝手な感情だ。下手にハッピーに浸ると、周りの人にまで迷惑がかかる。  『良い人生』と『ハッピー』は違う。ああ、わかっているんだ。もちろん、わかっているんだよ。

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[週刊]百足の唄 3

注意:この作品には、暴力的な表現、蟲が登場する可能性があります。耐えられる人のみ読んでください。  この訓練所に来てもう3ヶ月、父母からの手紙以外に何の楽しみもないまま、俺たちは最後の訓練へ挑む事になった。ああ、この3ヶ月がどれだけ長かっただろうか。どれだけ辛かっただろうか。だが、これで、長ったらしい訓練も区切りを迎える。  簡単に説明しよう、最後の訓練は『宝探し』だ。単なる宝探しではない。白い煙が立ち昇るフロアの中で機密文書に見立てたノートを手に入れるというものだ。フロアのあちこちから立ち昇る煙は毒ではないが、微量の睡眠を促す成分が含まれている。俺たちは、訓練所の教官が変わり新しく行われるこの訓練の実験台といったところだろうか。覚悟を決めて、俺たち訓練生はフロアのドアを開けた。

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[週刊]百足の唄 2

注意:この作品には、暴力的な表現、蟲が登場する可能性があります。耐えられる人のみ読んでください。  太陽がてっぺんに差し掛かった頃、列車は音を立てて駅へ停車した。ドアの外へ一歩足を踏み出すと、そこは乾いた不毛な大地。近くには、白い真四角の建物が規則正しく並んでいる。俺たちは案内役に導かれるままに、白い建物の一つに入った。  建物の中は広く、壁には数え切れないほどの武器が並んでいた。好きなものを食べていいと言われたので、各々が好きなものを食べた。例えばヘルバンは巨大な肉の塊が乗った弁当、ベルは卵を使ったサンドイッチ、ベレナクスは臭豆腐らしき物体、俺とノレスは唐揚げという感じだ。  食事が済むと、入隊審査が始まった。何やら丸いものがついた棒のようなものを体に当てられ、3人がスパイとして処分された。審査に合格したものの前に、年老いた大きな百足が立つ。これから、鬼の百足式訓練が始まるのだ。

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 人々は、みんな鍵穴を持っている。それぞれ形は違うけど、どれも丁寧に鍵を差し込めば開けられるものだ。僕は、鍵穴を開けられたくはない。ドアの外の景色を見て欲しくないわけでもない。苦しいわけでもない。理由なんてない。今日も、若い少女がドアの外で鍵穴に鍵を入れようと試みる。 「大丈夫?」  僕は、ドアノブを強く掴んだ。......しばらくして、少女は去っていった。誰もいなくなった世界で、僕はつぶやく。 ......ああ、誰かドアを開けてくれないかな。

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[週刊]百足の唄 1

注意:この作品には、暴力的な表現、蟲が登場する可能性があります。耐えられる人のみ読んでください。 ......ああ、百足達の唄が聴こえる。百足の声が、煙の奥から響いている。  俺はメルカ。ただの百足だ。そんな俺は今、列車で戦地へ向かっている。きっかけは数年前、ミヌ大統領が大統領に就任した日まで遡る。最初は、彼はまともな百足に見えた。しかし就任から7ヶ月が過ぎた頃、ミヌは突然、隣国であるヤスデ王国へ攻め込み始めた。自分勝手な侵略者となったムカデ国に対し全蟲連は宣戦布告をし、数年が経ったということだ。  戦地に行かされることはとても嬉しいことではないが、その中でも良いことはあった。4人の親友と巡り会えたのだ。ミステリアスな思想家、ベレナクス、力持ちで勇敢な巨漢、ヘルバン、頭脳明晰な秀才、ベル、そして、10年の関わりがある大親友、ノレス。4人の親友と共に、俺は戦地へ向かった。

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流木

 流木のように、生きていきたい。  そう言うと、友人はコーヒーを啜った。どうやら彼は、自分で何かを決めることが苦手なようだ。少し話を聞いても良いだろうと、初めは思った。しかし、話を聞いていくと、僕は憤慨せずにはいられなかった。無責任で、不真面目、やる気がなくてだらしない。しかも彼の言動は、全て一方的な決めつけによるもののようだった。彼はきっと、流木になりたいと言うのも、流木になれたら楽だと言う勝手な決めつけなのだろう。       ×××  彼はぼくがだらしないダメ人間だと一方的に決めつけて、勝手に話を進めている。残念なことに、彼は自分が決めつけをしているなんて気づ気もしないのだ。

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ヒーローじゃない

 僕は、正義の味方なんて信じない。結局正義なんて、自分を正当化するための方便にしかならないからだ。あの日、僕を助けた青年は、悪者と決めつけ僕の父さんを殺した。父さんが悪徳企業の社長だから、法外な値段で商品を売りつけてるからって、そんなの物事の内側を知らない部外者が自分の意見を通すための言い訳にしかならない。あの時、無理にでも逆らって殺されればよかったよ。でも。できなかった。だから、僕は言ってやったんだ。 「お前が動いたって、本質は変わりっこない。お前のしてる事は、ただただ理由をつけて我を通そうとしてるだけだ」 って。

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柵の外に

 柵の外には、小さな少年がいた。あながち、俺の手紙に連れられてきて、柵の外で固まっているのだろう。俺は興奮を抑えながら、少年に声をかけた。少年は驚いてバランスを崩し、数秒後には肉がつぶれる音があたりに鳴り響いた。  これで98人目、目標の100人まで後2人だ。まぁ、達成したところで特に意味は無いのだけれど。普段人気のないビルの屋上で仕事をしていると、これぐらいしか暇つぶしがないのだ。  ある日、いつも通り仕事をしていると、40代ほどの女が柵の外を歩いていた。どこかで見覚えのあるシルエットをしているが、顔は見えない。興味を持って、声を掛けた。すると、女は声を返さずに被っていたフードを外した。その下にあったのは......妻の顔だった。いくら声を掛けても、妻は目を合わせようともせず、絶望に向かって歩いていく。どうして、どうして、どうして妻は声を返してくれないのか。考えた末に、俺は柵の縁に手を掛けた。 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………  ああ、誰かが抱き合いながらビルから落ちていく。2人に何があったのか、僕は知らない。僕はただ、ビルの屋上で作業をするだけなのだ。

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