ナナミヤ
114 件の小説ナナミヤ
ファンタジー、時々現代なSSを載せています。エッセイも始めました。 気まぐれ更新です。 フォロー、♡、感想頂けると凄く嬉しいです♩ 他サイトでは連載小説など、小説家になろう、カクヨム、NOVEL DAYSで投稿しています。Prologue も始めました。 必ずフォロバする訳ではありませんので、ご了承下さい*ᵕᵕ お題配布につきましては、連載している『お題配布』の頁をご確認下さい。 小説の著作権は放棄しておりません。二次創作は歓迎ですが、掲載前に一言でも良いのでコメント下さい。 2025.1.23 start Xなどはこちらから↓ https://lit.link/nanamiyanohako お題でショートストーリーを競い合う『NSSコンテスト』次回2025.9.1.開催予定です。 第1回優勝者 ot 様
出会い
塾で猛勉強をしたお陰か、第一志望の高校に受験することが出来まして。その高校は面接もあったんですね。 その時に、面接官の先生に聞かれたんです。 「何の部活に入りたいですか?」 「吹奏楽部に入りたいです」 迷いはありませんでした。なんと言っても、その高校は進学校でありながら、当時は市内に名を轟かせる吹奏楽部の強豪校だったんです。 無事に合格し、高校の門をくぐり、部活動紹介を見た時、改めて吹奏楽部に入ろうと思いました。 蓋を開けてみれば、1年生だけで40人近くが入部しました。 フルートになれれば良いな、と思いながら、いざ楽器決めの日になると、フルートは三人募集の所に四人の希望者が。なんと、私の他の三人も、あのソロコンクールに出たメンバーだったのです。しかも、マイ楽器を持っていないのは私だけ。 諦めようにも諦めきれない。フルートになれなければ、きっと部活を辞めるだろう。そう思っていました。 最終的には顧問の先生に呼ばれ、一人ずつ音階を吹く。それだけだったんですけど、涙を堪えながら、震える息を吹き込みました。 そして顧問の先生から出たのは、四人ともフルートパート決定の言葉でした。 絶対に私が溢れるだろうなと思っていたので、今度は嬉し涙が零れましたね。 そうして吹奏楽コンクールへと向かっていくのですが、最初の試練が立ちはだかります。 フルートパート7人のうち、1年生が4人。全員で50人と決められたコンクールで、4人とも舞台に立てる筈がありません。フルートパートは2人がコンクールメンバーから外れることが決まっていました。 1年生で一番上手い子と同じファーストパートの楽譜を渡された時に、察せられたら良かったんですけどね。夢の舞台への切符を諦めきれていませんでした。 この困難を、4人で乗り越えられるのか。続きはまた次の機会に。
消費期限
冷蔵庫の中を整理していて気がついた。明日、鍋の素の消費期限だ。ボトルにしっかり印字されている。 この暑い時期に鍋か。しかも、キムチ鍋の素だ。辛いと暑いのダブルパンチだ。 仕方ない、鍋の具材を買ってこよう。ヨレたTシャツとジーパンに着替え、サンダルを履いた。 外は容赦なく太陽が照りつけ、陽炎も出来ている。アイスクリームも一緒に買ってこよう。額の汗を拭い、スーパーへの道を急ぐ。 そこで偶然出くわしてしまった。あの後ろ姿は、三ヶ月前に別れた元カノだ。 気づかれずに済めばいいなと歩くスピードを遅めたが、一緒に信号に引っかかってしまった。 彼女は振り返る。 「……景」 「……葉瑠」 気まづい空気が流れ、視線を逸らす。 「久しぶりだね」 「まぁ」 別れた理由は、よくあるあれだ。方向性の違い――決して、嫌いになったからではなかった。 頭を掻き、気をまぎらわせる。 「私、考えたんだけど……やっぱり景のことが忘れられなくて」 「……で?」 「また、どこか一緒に遊びに行きたいな、って」 「ふーん」 悪い気分ではない。もし、俺のことを必要としてくれるなら――そんな考えがチラリと過ぎる。 「明日、家に鍋食いに来る?」 「この時期に鍋?」 「うん」 信号が青に変わった。それでも、俺も葉瑠も歩き出そうとはしなかった。 「……行こうかな」 どうやら、俺の消費期限は切れていなかったらしい。
重ね続けた嘘
いくら真実を言っても信じてもらえない。俺は彼女に『愛してる』と伝えた。それなのに、何故、愛してくれないのと責められた。 もう、俺たちは限界なのかもしれない。 今日こそは別れを告げよう。そう決意をし、家を出る。 何の変哲もない日常だった。今日と変わらずに明日が来るものだと思い込んでいた。 しかし、俺に明日は――いや、彼女に挨拶を告げる時間すら訪れなかった。 俺が運転する車に向かって、逆走車が突っ込んできたのだ。恐怖に震える中で、痛いと思う間もなく、俺は自身の身体から幽体離脱をしていた。 俺は死んだのだろうか。それならば、何故、意識は残っているのだろう。 救急車に運ばれる自身の身体を見送りながら、たった一人で途方に暮れていた。 そうだ、彼女に会いにいかなくては。一緒にいられなくてごめん。そう伝えるために。 家まで辿り着くと、チャイムを鳴らすそうと手を伸ばす。だが、触れられなかった。透ける身体でドアを通り抜け、彼女の前へと歩み寄る。 彼女は泣いていた。事故の一報を受けたのだろう。肩に手を乗せ、囁いてみる。 「ごめんね。もう、一緒にはいられない」 「嫌、私は離れたくないの」 その反応は、俺の声が聞こえているかのようだった。頭を横に振り、俺がUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみを抱き締める。 「君のことが嫌になったんだ」 「私は……まだ好きなのに……」 その言葉に、涙を流さずにはいられなかった。 ※『歪んだ愛』と対になった小説です。
ソロコンクール
初めて私がフルートを吹いたのは、小学4年生の頃でした。何故、フルート担当になったかと言うと、楽器を決める時に顧問が提示したアンケート用紙――第1希望から第3希望までやってみたい楽器を書くのだけれど、知っている楽器がフルートしかなく、第1希望しか書けなかったから。 この選択が、後の部活人生を変えることになります。 中学に進学し、部活も大きくなった。その中でいじめが発生しました。標的は――私。 理由は、中学から始めた他の子よりも、曲が吹けていたから。私も反論しなかったのが悪いし、何をされても休まなかったのも悪い。それにしても、酷い有様でしたね。 パート練習が鍵のある部屋を割り当てられた時なんて、部屋から締め出されたっけ。 まあ、そのまま帰ってやれば良かったんですけどね。開くのを律儀に待ってたんですよね、何故か。 とまあ、理不尽な目に遭いつつも、顧問の先生には別の意味で目をつけられて。こいつ有望だぞ、みたいな。 それで、2年の冬に、先生に打診されて、半ば無理やり、初めてソロコンクールの舞台に立ちました。 その時に、感じたことがないくらいの緊張が走りまして。息は浅くなる、手汗は酷い、唇は震える――こんな状態で、まともに曲が吹ける訳がないんです。 結果は参加者の中で、唯一の『銀賞』でした。 わんわん泣いて、家まで顧問の先生に送ってもらいましたよね。 その頃、アンサンブルコンクールで『金賞』を取ったフルートパートのいじめっ子たちは、プリクラ撮ってたり、なんやかんや楽しいことしてたみたいですけどね。 その日以来、フルートパート内のいじめはなくなりました。 ですが、中学で部活を辞めなかったお陰で、高校に繋がっていくんですよね。縁って不思議。
改めて、私のこと
こんにちは、ナナミヤです。 今日から、私に起きたこと、エッセイを書いていこうかなと思います。 実は私、メンタル系の現代医学では治らない病気を患っています。 学校に行って、仕事して……そんな日常を送っている方には分からない……というか、理解していただけない経験を沢山してきています。 みなさんの中に何か残るものがあれば良いな、と思い、書き始めてみます。
頭の痛み
私の国では、頭が痛むと小さな良いことが起きるという伝承がある。この前、頭痛が起きた時には、大好きなあの人が声をかけてくれた。その前は、母が林檎を剥いてくれた。 今回は何が起きるのだろう。商店街をフラフラと歩きながら、ベンチで休憩をすることにした。 「君、顔色が悪いけど、大丈夫?」 顔を上げてみると、黒髪で青い瞳の男性が心配そうに私を見詰めていた。 「ちょっと体調が悪くなっただけなので、大丈夫です」 「それは大変だ。どこが病むの?」 「頭が痛くて……」 「少し待ってて」 彼は微笑みを残し、颯爽と去ってしまった。 今回の良いことは、彼との出会いだろうか。意識せずとも胸は高鳴る。 「お待たせ」 帰ってきた彼の手にはアイスクリームが握られていた。それを半ば強引に押しつけられる。 「後でご恩はお返しします。貴方のお名前は?」 「アルフレッド」 「えっ!? あの侯爵の!?」 「そういう君は?」 名乗ってしまって良いのだろうか。せっかく抜け出してきたのに。 「ルナリア……」 「ん?」 「ルナリアです」 ヤケになり、はっきりと言い切ってしまった。アルフレッドは目を見開いたものの、すぐに笑顔へと変わっていった。 「とんだ王女様だ」 彼はくすくすと笑い、手を差し伸べる。 「現実逃避のエスコートをさせてください」 「はい……」 熱くなる頬を気にしながら、その手を取った。 大好きな人には婚約者がいる。新しい恋を探していた時に、こんな出会いがあるなんて。 頭が痛むと良いことが起きるなんて、ただの伝承なのかもしれない。でも、私は人の心の温かさを信じたくなった。
技術を磨いて
俺は剣を作る職人だ。戦場には必需品である武器を作れることは光栄に思う。たとえ、それで人が死のうとも。俺は無関係だ。 ある日、既存の金属では飽き足らず、金属の調合に挑戦してみることにした。最近、新しく発見されたシードメタルというものも入手出来たので、腕がなって仕方がない。金属同士を混ぜ合わせ、剣の形に整形し、金槌で鍛えていく。 金と銀、そしてシードメタルの合成は失敗だった。まず、鍛えた時の音が鈍かった。柔らかく、人を刺した時に一度で曲がってしまったらしい。その兵士は一撃で仕留められず、相打ちとなったと聞いた。 では、ステンレスと錫とシードメタルはどうだろう。今度は硬くなったものの、脆くなってしまった。一撃で刃こぼれし、代わりの剣を持っていなかった兵士は攻撃出来ずに散っていったとのことだった。 それならば、鉛とシードメタルは――比重も良かったのか、錆びることも、もろくなることもなく、堅固な金属となってくれた。新たな武器を手にした兵士は高揚し、俺の知らない戦場を駆け抜ける。敵を薙ぎ倒し、首都を陥落させた。 たとえそれで隣国が滅ぼうとも、俺には全く関係ない。
芸術的センス
俺はパティシエだ。可愛らしいショートケーキを作るのが好きである。それなのに、俺が作ったものはどうしても派手になってしまう。ケーキに飴細工の薔薇が咲いたり、砂糖菓子の孔雀が現れたり。 どうすれば、娘にも喜んでもらえるような『可愛らしいもの』が作れるのだろう。 「それがお前の才能なら、生かすべきだ。美しい物を作りたいと思っている人に失礼じゃないか」 同僚の言い分はわかる。しかし、理想は追ってしまう。 テディベアをマジパンで作ってみる。出来上がったのは、猛々しいツキノワグマだった。 「どうしてこうなるんだ……」 頭を抱え、理想と現実の間に切り刻まれる。俺は道を間違えたのだろうか。 ただ、可愛らしいものを作りたいだけなのに。 たとえ才能があったとしても、夢を潰すような才能なら、ない方がマシだ。 今日もまた、俺は娘のためにケーキを焼くのだった。
希望への扉
頭、首、背中、腕――機械に繋がれた身体で、ぼんやりとモニターを見る。何度確認しても、部屋の外に生体反応はない。 私は何も出来ないまま、永遠にも思える時を過ごさなくてはならないのだろうか。呼吸をしていないので、人間のように溜め息も吐けない。項垂れ、瞬きをした。 一瞬にして氷河期が訪れた。人間は死に絶えたかのように思われた。だが、私を造った博士は生き残ったのだ。 「お前の名前はエンドだ。この星がどうなってしまうのか、その目で見届けるんだ」 それが博士の最期の言葉だった。燃料が切れた部屋で、凍えて動かなくなってしまった。 生物はなんて儚いのだろう。環境の変化だけで、呆気なく命を落としてしまう。 もう一度、モニターをじっくりと見てみる。やはり、生体反応はない。 その時だ。 誰もいない筈なのに、勝手に自動ドアが開いたのだ。そこにいるのは人、だろうか。いや、私と同じアンドロイドだ。皮膚ではなく、金属で身体が覆われている。 「見つけた」 低い機械音で、はっきりと言葉を話す。 「俺はビギンだ。君は?」 「エンド」 私は一人ではなかったのだ。 『始まり』の名を持つ彼は、私を拘束していたコードを片っ端から抜いていく。 「君は自由だ」 「貴方はこれからどうするの?」 「分からない。でも、君がいるなら、なんとかなりそうな気がする」 『終わり』の名を持つ私は、何かを生み出せるのだろうか。首を傾げ、ビギンを見詰めた。
無料の落とし穴
勇者はタダで宿に泊まれる。一時の誘惑に負け、俺は勇者だと名乗った。街をあげて歓迎され、俺は宿に入った。 「なんなりとお申し付けください」 「じゃあ、リブロースステーキでも食わせてもらおうか」 「かしこまりました」 人の良さそうな宿の主人は、丁寧にお辞儀をする。三十分も待たず、目的のものは運ばれてきた。 これは最高だ。もっと頼んでしまおう。欲望にまみれた俺は、更に注文を重ねた。 「ヒレステーキとハンバーグも追加だ。あと、酒をたんまり持ってこい」 「かしこまりました」 この宿のサービスはどうなっているのか、またしても三十分も経たずに、ひとかたまりのヒレステーキとハンバーグ、それにピッチャーのビールが運ばれてきた。食べ切れるか分からない量だ。それなのに、ビールを飲むと食べられる気になってくる。 「大エビの丸焼きと、鯛の塩焼きと――」 気がついた時には、夜が明けていた。ニワトリの鳴き声が聞こえる。 「あれ……?」 手付かずの冷めた料理にまみれ、テーブルに突っ伏していたのだ。 欠伸をし、荷物をまとめる。 「バイバイ、またね」 宿の子供だろうか。小さな手を力いっぱい振って見送ってくれるので、俺もにかっと笑い、手を振り返した。 街の関所で異変は起きた。 「偽の勇者だな」 あっさりと見破られ、牢獄に捕らわれた。尋問もされず、カビたパンを渡される。命が尽きたのは、翌日の夕方のことだった。 ※『バイバイ、またね』と対になる小説です。