い⃟ち⃟ご⃟ラ⃟テ⃟
307 件の小説い⃟ち⃟ご⃟ラ⃟テ⃟
どうも、!高校生やってます 少しでも面白いと思ってもらえるように、頑張って小説を創作してます、! 是非読んでくれると、嬉しいです! ※フォロバ期待できないと思います フォローする際は私がお願いする場合あり 《完結》 「僕が描く一生の物語」 「正義の変貌の先、辿り着いた真実の絆」 「画面越しの君」 「期限付きの恋を君と」 2023 3/18 start
透明の君が消えるまで#12
あの一件から、特段変わったことも起こらず、何もない平和な生活が戻りつつあった。凛透のことを馬鹿にしていた奴らは、相変わらず態度は悪いけど、僕たちに関わろうとしなくなった。 僕たちも避けるようになった。 あれから湊はそいつらと縁を切ったらしい。SNSのツールも全て削除したと、歯を見せて笑っていた。 そして凛透は新しい物を買うと、逐一僕に嬉しそうに自慢してくるようになった。 「見て見て蒼真くん…!新しいシャーペン買ったんだぁ〜。」 ここ最近、僕はニコりと微笑む凛透を見て、自分の中の壁が少しずつ崩れていくのを感じていた。凛透が僕の知っている凛透から離れていくことに、少し慣れてきたみたいだ。そんな僕と凛透の会話を、湊は目を細めて聞いていた。 「今日はちょっと天気が崩れるらしいね。」 僕が帰りにそう呟くと、 「じゃあみんなで相合傘して帰ろうぜぇ?」 といたずらっぽく笑って凛透をこづいた。 「しょーがないなあ。」 凛透は口ではそう言いつつも、得意げに傘を開き、湊の手を引いていた。 道の途中に来ると、凛透が開いた手を軽く上げた。 「じゃあボク今日塾あるから…!また明日ね。」 「また明日!」 声を揃えて返事をすると、再び歩き出した。 「うわー。雨強くなってきたな。」 僕は自分のリュックに入っていた折り畳み傘を取り出していると、湊が降る雨に手を伸ばしていた。道路を走る車も、水しぶきを上げながら通り過ぎていく。僕の靴にも水が染みているのかもしれないが、雨の日には感覚が鈍るのか、それもわからなかった。 なんとか玄関のドアに手をかけた時には、眩しいほどに視界が明るかった。僕たちは最悪な時間に帰ってきてたんだなと苦笑しながら、ガチャリとドアノブに手をかけた。 すると、それを聞いたお母さんがキッチンから足音を立てて向かってきた。そしてチラリと僕を見て、再びどこかに消えたかと思うと、タオルを持って僕の前に戻ってきた。 「蒼真、帰ってきたばかりで申し訳ないんだけど、すき焼きに入れるお肉を買ってきてくれないかしら。お母さんうっかりしてて、少しお肉が足りなそうなの。」 眉を下げながら、僕の頭にタオルをのせた。僕はされるがまま、カバンも下ろさずに耳を傾けていた。 しばらくしてお母さんの手が止まると、僕はわかったと返事をし、再び歩き出した。 夕方になり、あたりはオレンジ色に染まっていた。昼と夜の境目の時間はどこか曖昧で、でもとても暖かくてのんびりした気分にさせてくれる。僕は右手の袋に入ったお肉をぎゅっと握って、家の方へ足を運んでいる。 その時だった。 僕の視界の片隅に“奴ら”がいた。 心臓がドクンと波打った。 鼓動が早くなる。 自分が言葉を失っていることに気づいた。 奴らの目の前には、塾を終えた凛透が歩いていた。 奴らはじりじりと凛透に近づいている。凛透は何事もないように歩みを進めている。 僕の心臓が忙しなく動き、血を全身に巡らせている。頭が真っ白になって、何も考えられない。 まずい。凛透が向かう先は歩道橋だ。奴らは何を企んでいる。途中で道路に落とす?それとも階段の上から凛透を押す気か?どちらにしても良いことではないということは理解できる。 僕は左胸を押さえながら…策もなく走り出していた。 (やめろ!!) 叫んだつもりが声が出なかった。 僕の声よりも先に、僕の拳が、奴らのうち1人に触れた。そいつは一瞬面食らった顔をしたが、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべて僕の方に向きなおった。 他2人は僕のことを見向きもせずに、凛透の方へと突き進んでいく。 止めないと。凛透が…! 僕は必死に手を伸ばした。でも僕が掴んだのはただの空気だけだった。その代わり、僕の方には強い圧迫感があった。 「は…なせっ……。」 相手の手をこれでもかというほど強く掴み、横に倒そうとした。はやく。凛透のところに行かなければ。すると相手も僕の手を強く握った。 「…あ?…なんつう口の利き方、しやがんだ。」 僕が相手の足を蹴ると、相手も僕の足を引っ掛けて、腕を掴めば、腕に爪を立てられた。揉み合っていると突然 僕の足場がなくなった。 僕の重心は後ろに倒れた。相手の力が弱くなって、僕の手は自然と離れた。手をつくところもない。僕は背中に強い痛みを感じた。頭の至る所をぶつけた。上も下も、右も左もわからなかった。ただわかることは、僕は−落ちているということ。 口が切れたのか、鉄の味が口いっぱいに広がった。頭痛がひどい。手も足も針が刺さったような痛みが広がっていた。 「……り……………と…」 僕の動きが止まった時には 僕の意識もなくなっていた。
認められない自分
人生に一度は、死が美化されるらしい 嫌なことや辛いことがあった時 死んだら楽になれるんじゃないかって 全部忘れられるんじゃないかって このまま消えてなくなれたら どれだけ幸せなんだろうって この現実から逃げられたら どれだけ気持ちが軽くなるのかって そうやって考える時 死が美化されているらしい 理不尽な世の中だよね なんであの子は上手く話せないのに なんであの子は勉強ができないのに なんであの子は運動ができないのに なんであの子はお手伝いできないのに なんであの子はあんなに物を欲しがるのに なんであの子はなんにもできないのに 私の方が何倍も何十倍も頑張ってるのに どうして認められないんだろう どうしてあの子はよくて 私はだめなんだろう 認められない自分が嫌になって 逃げたくなって やめたくなって 消えたくなって 死にたくなる 自分の存在意義が感じられなくなって 自分を保って 創って 自分はここにいていいんだって思えるように 毎日色々なことを試すのに どれもうまくいかなくて 前を向きたくても向けなくて 今日も生きててごめんなさい そう思いながら今日も なにもない空を見上げる 人生に一度は美化される死を あなたはどう受け入れますか
明日なんていらない
明日なんていらないと思った。 今すぐにでも消えてしまえれば楽だと思った。 別に死にたいとかじゃない。 ただ消えたい。 僕には生きてる価値なんてないんじゃないかって。 僕には空気を吸う価値なんかないんじゃないかって。 毎日が億劫で。 毎日が面倒で。 毎日が怖くて。 そんな毎日に嫌気がさしちゃって。 そう考えてる僕でさえ嫌になって。 この世界の何にも罪はないというのに 僕は消えることを願ってしまう。 目を閉じて布団に入った。 もうこのまま −目が覚めなければいいのに
相談
衣緒さんのみコメント可
透明の君が消えるまで#11
凛透に向かって、僕は噛み締めるように言った。 湊は少し赤く腫らした目で、凛透は涙でいっぱいの目を僕に向けた。 僕の心臓はドクドクと鼓動を刻み、周りの音が耳から入ってくるのを拒絶しているかのように、僕の身体の中に響いた。 僕は空気を肺いっぱいに吸って、凛透の方を見た。 「僕さ、ずっと凛透のことが…受け入れられなかったんだ。」 凛透は何も言わず、瞬きをただ一回だけした。 「正直すごくびっくりしたし、今までのは凛透の理想の凛透じゃなかったんだって思った。…気づけなくて、ごめんって、思った。」 湊がすん、と鼻を鳴らす。 「でも、僕たちに打ち明けてくれたあの日から、目の前の凛透の持ち物が変わって、僕たちに楽しそうに話す凛透を見て、違和感が拭いきれなかった。……最低だよね、僕。凛透をずっと、認められてなかったんだ。どんな凛透でもいいはずなのに、目の前の変化のスピードについていけなくて。」 僕は流れる涙を拭いもせず、不安定な声で話し続けた。 「どんな凛透でもいいって僕は言った。でもそれは、その時に出てきたただの綺麗事だったんだって……僕は気づいた。本当に凛透のことを認められてはなかった、認められなかった、受け入れられなかった。僕の脳裏にいるのは、男の子の凛透だから、…でもさっき凛透が絡まれている時に、助けなきゃって思ったんだ。大切な存在なんだって、無意識にでも分かった。」 凛透がこくりと頷いた。 「……僕だって、口に出してないだけで、本当はあいつらと同じじゃないかって思った…受け入れられない、普段通りに接することができない、親友の変化を認めてあげられない僕の方が断然悪いんだって心の底から思った、」 湊が唇を噛んで、階段に目を落とした。 「だけどさ、僕もう決めたんだ。周りに受け入れてもらえなくたって、凛透は僕の大事な親友。どんな姿だって、どんな持ち物だって、全部凛透の選択で。」 拳を握りしめて僕は放つ。 「だから僕は凛透を受け入れる。」 自分は全く受け入れてあげられなかった。目の前で起こる急な変化に、何もついていかなかった。でも目の前で、自分のことだけでも苦しいはずなのに、辛いはずなのに、僕たちのことを気にしてくれる凛透。そんな友達を、僕は絶対に裏切らない、裏切りたくない。 「僕はずっと、凛透の親友だよ。」 僕がそう言ってぎこちなく微笑むと、凛透は僕に抱きついてきた。 「ごめん、蒼真くん、ごめんなさい、」 そう言って泣く凛透はどこか子供のようで。 だけど僕たちの言葉に安心したのか、背中に回る手はもう震えてなんてなく、温かった。 僕らを、窓から差し込む明るい光が照らしていた。
2番目
君にとっては2番目だった。 僕と君の脆い絆。 高校二年生になった僕は、今日も教室へ入る。クラス替えを確認して、再び中学校からの仲の良い友達と一緒になれたことを、嬉しく思っていた。 しかし、そんな僕にも心に闇がある。 どうしたって好きになれない、苦手な人がいた。無責任で自分勝手で、僕はそういうところがとても受け入れられなかった。そんな僕が苦手としている人は、僕の仲の良い友達を僕から取った。 高校一年生の頃は同じクラスだった仲の良い友達が、別のクラスになり、関わる人がいなくなったからだ。 その人が僕に対して行うことは、嫌がらせをしているのかもしれないと思うほどだった。僕がその友達と話していると、わざわざ間に入り込んできたり、2人で歩いているところについてきたりした。そして、ペアワークの時は真っ先に僕の大事な友達のもとに駆け寄り、僕がいたはずの場所を奪った。 そんな僕はもう友達を諦めた。 無理に関わるのはやめようと。 苦手な人が寄ってきて正直とても不快で、いっそもういいや、とさえ思った。 そんな僕と仲良くしてくれたのは、2年生の最初の席替えで席が隣になった、1人の男の子だった。 僕はその人と2年生の間を過ごした。一緒に行こうと言われたら着いて行ったし、移動教室の時も、お互い待っていた。気づかずに置いて行ったら、あとで、なんで置いて行ったのと言い合うくらい、僕と君は仲が良かった。 でも、1年間共に過ごして形成された絆は、とても脆かった。 高校3年生になり、僕はまた君と同じクラスになった。僕は朝クラスへと足を踏み入れ、君の元へいこうとした。 でも、足が止まった。 君は誰かと話していた。 その誰かとは、君と中学校から仲が良い友達だった。 そこから君は、僕とあまり関わらなくなった。 僕は2年生の時のように、また一緒に移動教室に連れて行ってくれると思っていた。休み時間にはいっぱい話してくれると思ったし、知らない話をしに、僕のところに来てくれるんだと思っていた。 でも違った。 君は、その誰か、友達を優先した。 僕のことなんて見向きもせずに、いつも教室を出て行った。 近くにいたら話すし、たまに話はする。 でも2年生の時みたいに、仲良くはしてくれなくなった。 僕はその時知った。 1年という期間をかけて築いてきた絆は、とても脆かったのだと。 その友達に敵おうなんて思わない。 でも僕は今までみたいに、一緒にいたかった。 そんな思いと一緒に身体の外へ出た溜息は、重く落ちていく。
ホワイトチョコ
君に惹かれたのは、一年前のバレンタイン。 高校で初めて知り合った、笑顔が素敵な君。 桜の降る頃、窓の外を共に眺めて笑ったあの日。 君との思い出が鮮明に脳裏に蘇る。 まるでスクリーンに映された、アルバムのように。 「はい、バレンタイン!」 そう言って僕にチョコを手渡してきた。僕はそれをどうやって断ろうか考えていた。僕は甘いものが苦手だった。チョコなんて一度口にした時から手に取ったことがない。僕が断りの言葉を考えているにも関わらず、君ははい、と僕の手に持たせた。 「え、ちょっと、」 僕が言い終えるより先に、君は僕から離れていて、ふわりと髪をなびかせながら僕の方を振り向くと、ニコりと頬を緩ませた。 僕は家に帰り、自分の部屋に入ると、丁寧にラッピングされたリボンを解き、箱を開けた。食べるつもりはないが、せっかくくれたのだから見ようと思ったのだ。箱を開けると、一枚の紙が入っていた。それを開くと、小さく丸い字で、 「甘いの苦手って教えてもらったから、ビターチョコレートを使ってみた!食べてもらえると嬉しいな!」 と刻まれていた。僕はそれを見るとなんだか胸がとくんと鳴り、苦手なはずの甘いチョコに、手を伸ばしていた。一つパクリと食べ、口の中で転がすと、いつもの甘ったるい味ではなく、苦味のあるチョコの味が広がった。嫌いじゃないかもしれない。 3月14日。僕は君にチョコを返すことにした。右手に握った袋の中には、僕が昨日選んだいちご味のチョコレートの詰め合わせが入っている。なぜだかいつもより学校に行く足取りが軽い気がして仕方がなかった。 僕は教室で君を見つけた。普段女子と深く関わりを持たない僕は、なんと話しかけていいかわからなくて、何度も何度も自分で練習した。「あ、これ、バレンタインのお返し。」という簡単なことですらなかなか口に出せなくてもどかしかった。やっとのことで、あの、と声をかけると、君はなに?と柔らかく微笑んだ。 「これ、バレンタインの、、お返し、。」 緊張で上手く話せなくてカタコトになった。練習していた自分がバカみたいで恥ずかしい。なかなか受け取らない君に、僕は動揺した。ホワイトデーに返すのって、もしかしてキモいとか。僕が「あ、ごめんなんでもない」という言葉を言いかけると、君は「ありがとう!」と言って笑った。僕の手から袋の感覚がなくなる。 「いや、全然、たいしたこと、、ないんで。」 僕はそう言ってその場を立ち去った。 君にどれを選んであげよう。君との出会いは桜の季節。初めて仲良くなった異性の友達。お店に並ぶチョコレートの中で、いちご味のピンクが、君に1番似合う気がして。そう思った頃にはすでに買っていた。 そして、僕は自分の想いを綴った。 「僕は、君が好きです。」 それしか書けなかった。それでしか自分の気持ちを表せないと思った。それだけで十分だった。 それをさり気なく箱の間に挟んだ。上手くいきますように。僕はとくんと響く心に手を当ててそうお願いした。 次の日の朝。僕は恥ずかしくなってその手紙を抜いてしまった。 月日は流れ、君にチョコを渡した日から一年が過ぎた。君には彼氏ができた。僕の願いは儚く散った。神様なんて、何にも叶えてくれないんだって思った。 2月14日。君は彼氏がいるのに、僕にチョコをくれた。一年前と何一つ変わらない表情だった。僕は中身を見た。ビターチョコレートではなく、ホワイトチョコレートだった。 ホワイトチョコレートの意味は、“今までの関係を望みます”。 僕は家に帰って、やっぱり苦手なはずのチョコレートを口に含んだ。 一年前、手紙を挟んだままだったら何か変わっていただろうか。 友達以上の関係になれていたのだろうか。 君の特別に、なれていたのだろうか。 僕の口で転がされるチョコに、少しいちごの甘酸っぱさを感じた。
偽物の私
私は自分を偽って生きている。 みんなの前では、何に関しても動じず、真面目でクールな優等生。だけど、本当は、臆病で泣き虫な弱い1人の人間。 「真依(まい)ちゃん、私これから部活だから、このプリントの仕分け、お願いしてもいい?」 肩にカバンをかけて教室を出ようとした時、クラスメイトに声をかけられた。私はこの後お母さんと出かける用事があったのだが、仕方なくプリントを受け取る。 「全然いいよ、やっとくね。部活頑張って。」 私がそう言って微笑むと、そのクラスメイトは 「ありがとう、めっちゃ助かる!」 と言って足早に教室を出て行った。 私ははぁ、とひとつ溜息をつくと、教室の外へ向いていた爪先を教室の中心へ向け、自分の席へと向かった。そして椅子を引いて座る。外で運動部の声がした。私は時計を見て、早く終わらせて帰らないと、と気を引き締めた。 さっきのお願い、用事があるなら断ればよかったじゃないかときっとみんな言うだろう。でも私にはそれが出来なかった。なぜなら怖いからだ。あれを受けなかったら、私が頼み事を受けてくれなかったと噂が立つかもしれない。もしかしたら、頼れると思っていたのに、と幻滅されてしまうかもしれない。私はみんなの中にある“私のイメージ”を壊さないことが、自分の中での使命だと感じていた。 その時、ガラリと教室の扉が開いた。そこには幼馴染、優が立っていた。 「俺、今日の宿題持って帰るの忘れちゃってさ。真依はなにやってんの?」 優は自分の机の引き出しからプリントを取り出しながら私に問う。私はプリントを仕分ける手を止めずに 「プリントの仕分けやってるの。頼まれたから。」 と答えた。すると、私の前の席によいしょと優が座る。そして私のプリントを指さして言った。 「俺も手伝う。」 私は片手をぶんぶんと振った。 「いや、いいよ。私が全部やるから。」 それでも優はきかなかった。プリントを掴んではなさなかった。私は根負けして、仕分けのやり方を教える。やっと優が仕分けに慣れてきた頃、優が口を開いた。 「あのさ、これ誰に頼まれたの?」 私は頼んできたクラスメイトの名前を口にした。すると優は目を丸くした。そして不機嫌そうな顔になる。 「は?あいつ友達とカラオケ行ったけど。」 私も手を止める。カラオケに行った…? 「え、でも部活だって…」 私は必死に言い聞かせた。何かの間違いだって。騙されてなんか、いないんだって。 「いや、ほんと。マジ有り得ない。真依、先生のとこ言いに行こう。」 優は私の手を引いて職員室へと向かう。困惑している私には、それを拒む力さえなかった。 職員室に行くと、優が事情を説明してくれた。先生は終始頷きながら話を聞いてくれて、プリントの仕分けはやらなくていいと言ってくれた。 「失礼しました。」 職員室を出て、廊下を歩く。そして私よりも断然大きな男の子の背中に向かって、ぽつりと呟く。 「ねぇ、本当にプリントの仕分けしなくてもいいのかな。」 優はちょっと不機嫌そうな顔で振り向いた。 「やらなくていいだろあんなもん。」 その時私の視界が滲んだ。そうだ、やらなくていいんだ。でも、私が先生に言ったってバレちゃうよね。文句言われたりとかするかな。明日会うのが怖い。 その時私をあたたかい何かが包んだ。上を向くと優の顔があった。いつの間にか立ち止まっていたようだった。優に、抱きしめられていた。 「どうした。大丈夫だ。」 優はそう言って私の頭に手を置く。それが私の中の鍵を外して、涙を流させた。 「私ね、ほんとは全然すごくなくて、すっごく弱くて、さっきのお願いも、断ったら嫌われちゃうかもって、変なこと言われるかもって、怖くて、どうしても、断れなくて、」 途切れ途切れになる言葉を必死に繋いだ。優はずっと、何も言わずに聞いてくれていた。しばらくして涙が乾いてきた頃、優は私に言った。 「俺は、真依らしいお前が好きだよ。」 私は耳を疑った。聞こえたことが嘘みたいに聞こえた。 「別に嫌われたっていいじゃん。お前を嫌う奴なんか友達じゃない。お前を泣かせる奴なんか、友達じゃないだろ。変なこと言われたって何だよ。別にお前は何も悪いことしてないじゃん。」 優の言葉がすっと心に入ってきて、また涙が溢れそうになる。今度は温かくて、心地良い。 「俺ならお前を泣かせたりしない。どんな時もそばにいてやるから。」 私は優のシャツをぎゅっと握りしめた。 「俺と、付き合ってください。」 その言葉を、私はすぐには素直に受け取れなかった。 「でも、優、こんな…こんな私でいいの、?」 自分でも馬鹿げた質問だと思った。でも聞かなきゃ、自分が後悔する。優はにこっと笑った。 「当たり前じゃん。真依じゃなきゃだめなんだ。俺の前では真依らしく笑っててくれよ。」 私は目の前の優の背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。優はへへっと照れくさそうにしながら私を抱きしめてくれた。 偽物の私が繋いだ、私らしい物語。
ぼくはいぬ。#2
ぼくは毎日幸せな日々を送っていた。ぼくをお世話してくれる人は、いい人なんだって思った。その人はぼくに、「私はこむぎのままなのよ。」とにっこり笑いながら言った。ぼくはそれからこの女の人をぼくの"まま"って呼ぶようになった。今日もぼくはままのお布団で寝ていた。ぼくがままの横に行って、お布団を鼻でつんつんすると、必ず中に入れてくれた。ぼくはあったかいお布団で、ままと一緒に寝る時間が何よりも幸せだった。 次の日目が覚めると、ままはお布団にいなかった。ベットをぴょんと降りて、くぅんと鳴きながら探す。まま、どこ?ぼくが廊下を歩いていると、どこからか美味しい匂いがした。おにくが焼ける香り。ぼくは前に住んでいた場所を思い出した。ぼくを撫でてくれて、シャンプーをしてくれる、優しい店員さん。そして、一緒にボールを取りあって、走ったお友達。元気にしてるかなぁ。そんなことを考えるとなんだかすごく寂しくなって、早くままの所に行って頭を撫でてもらいたいって思った。ぼくはお肉の焼ける香りを追いかけながら、キッチンへと向かった。 そこにはエプロンをつけたままが立ってた。ぼくはしっぽを振って、ままに飛びついた。「まま〜!」下から見上げていると、「今日はこむぎにご馳走作ってあげるからね。」って、僕の頭をよしよししてくれた。店員さんも、たまにすっごく高そうな缶を買ってきて、ぼくにくれたっけ。ぼくは余計に嬉しくなって、耳をぺたんとしながらわんっと吠えた。 しばらく待っていると、ぼくがいつもご飯を食べるお皿に、店員さんが持っていた高そうな缶に似た缶を開けて、盛り付けた。そして、さっき焼いていたお肉を、はさみで切りながら乗せてくれた。ぼくはあれが食べれるのかなぁって、嬉しくなって、はやくはやくってままに催促して二本足で立ってみたりしたけど、「ちょっと待ってね」とくすくす笑われるだけだった。 ぼくはままの後ろを追ってついて行くと、「おすわり」って言われた。ぼくは大人しくおすわりをして、ままの目を見つめた。次はおてをした。ままは「こむぎ、えらいえらい。」っていっぱい頭を撫でてくれた。ぼくはつい嬉しくて、目を細めて笑った。「よし。」って言われて、ぼくは目の前の美味しそうなご飯を食べた。すっごく美味しかった。ままはぼくのことをじっと見つめながら、「こむぎ今日誕生日なんだよ?知ってた?」なんておどけた調子でぼくに話しかけてきた。ぼくは、あ、今日誕生日だったんだってその時気づいた。ぼくは誕生日をお祝いしてくれるままのことがもっともっと好きになって、食べ終わってから背中を床につけて、お腹をみせた。もっといっぱい撫でて欲しくて、くぅん、とおねだりもしてみた。その度にままはにこって笑った。 明日はなにしようかなぁって考えながら、ソファの上でお昼寝をした。
生きてる
今日も生きている 朝が来るたびに、また何ら変わりない日常が始まる それが憂鬱で、面倒で、布団から起きられない なのに良心が寝ていることを許さなくて 自分の体の本音を無視して、起き上がる 学校に行けばみんながいる 楽しそうな笑い声が、話し声が 僕の中では騒音に変わって 耳の外から聞こえるピーという音が だんだん僕の中を侵食していくのが分かる 毎日授業を受けて なんで1秒先に死んでいるかもしれないのに 僕はこんなところで勉強なんてしてるんだろうとか 自分がやりたくないこともやらされて、なんで縛られないとれいけないんだとか 思ってはいけないのに思ってしまう自分がいた やっと家に帰って布団に入っても またすぐに朝が訪れる 生きてるだけで偉いなんて 所詮綺麗事だななんて 僕は鼻で笑うしかなかった 何もしなくていいなら 何て楽なんだろう 好きなことだけして生きるなら どれだけ楽しいだろう 僕はそんな、ただの夢を右手に握りながら 今を生きている 死ねない だって死ぬのが怖いから 死ぬことに抵抗があるのは まだ生きたいって思いがどこかにあって 生きなきゃいけないって心が叫んでいて 人間としての最後の本能なのかもなんて 今度は鼻を啜りながら見上げる 死ねないから生きている。 いや 死ねないから生きてしまっている。