ねも

30 件の小説

ねも

Cry for the moon

黄昏の悠久に心を預けていた 沈みゆく太陽 水平線の境界からは温かい後光が見えている 波打ち際には引力が働いて 音とリズムは 生活の一切を絆してくれる 押し寄せる波はその実帰っていく波 どちらともなく 有耶無耶になっている 罪のない子供は自分に世界を携えて 我がままに駆け回っていた ところが衝いとしゃがみ込み ひとつをじっと眺めている なぜなら小さな亀が這っていた 好奇心が突き動かす景色の全てを側から垣間見た わたしはとりとめもなく 写真を撮る 見返すことのないカメラロールに蓄積されるのは 絶景の仮象 いつからか 感動を言葉に直そうとするようになった 経験をカタチに残すようになった 伝わらない苦しみを味わうくらいならと ひとり黙るようになった 諦観に立ち わかったふりをして ふれることなく痛みを感じようとする 手ざわりも親しみも なかったことにはできないだろうに どうしようもなく とめどない妄想を垂れ流す 取り返しのつかない選択の連続で 無限の将来を想像する 真白の月は 海に沈む一日を横目に顔を出す とめていたいくらい綺麗だった 進みたくないくらい苦しかった どうしようもないこと どうにもならないこと 焦点は全体に広がり虚になっていく 親子連れの呼びかけは空想から現実に引き戻す 気づいて靴の砂を払いのける 明るいうちに帰らないと あそこに居続けてはいけない わたしはもう行かなければいけない 夜は気付かぬうちに訪れる 取り残した思いを汲み取ることはもう叶わない 絶え間ない繰り返しが猶予を与えるわけではない その都度美しさに心を奪われる 瀬戸際の揺さぶりを瞑るように渡りたい

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レトリカルクエスチョン

街路時を抜けていく 段差は軽く飛び越えて 側溝を歩くやじろべえ 肩をふれる風に振り向けば ゴミが混じった枯田畑 底の見えない水溜まり 上っ面は綺麗だな どこか一歩でも踏み外せないように 空気は緊張を帯びている 明滅する信号は急いでいる 体裁だけの横断歩道を信じて渡る夕暮れ 古典は今や一種のあばんぎゃるど 趣味の延長に加熱する信条がある 追いかけようとすると捕まえきれない 彼らは片手間に腰掛けたつもりだったのだろう 答え合わせは叶わない 聞いたところで言葉にそれは現れない 目的地まであと少し 果たしてほんとにあと少し? 繰り返される押し問答 鍵はどこ ポケットを探す鍵を取り出す 家路には辿り着いた

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彼我

贖う罪もわからずに 体に引きずられ これでいいかと我が身に問う 夕焼けはどこでも綺麗に見える 夜空はくすみがかってる 時間は情緒を忘れて興味もあらず 信号の点滅は急かすように囃し立てる 段ボールの上で居眠りする黒猫は痩せている 満足に食べれてないのかもしれない 誰にも邪魔されない 夕暮れまでのモラトリアムを すやすやと満喫していた 健やかな安らぎを感じた休みの日 映画をみて涙を流す 内容なんか覚えてなくて 涙を流したことさえきえていくけれど あの日の傷はいつまで忘れられなくて いつまでも残ってる 過去を眺めることで、自分の道を確かめて 歩んできたという事実だけが後押しになってきた 未来をいつも怯えてる 誇れるものはなんにもなくて 根拠になるのはこれまでの道 ところであの猫はどこへ向かっていったのだろう どこかまた別の場所で気ままに昼寝をしていたらと思う 誰にも構われず 気付かぬところで気に掛けられていたらと思う 側から見たらわからぬ痛みを もろともせずに毅然と我がままに 生きていたらと

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ゆめみるひと

無機質に過ぎていく時間は 知らず知らずに食傷気味になっていく かつての移ろいの中で当たり前に過ぎていた 日常を一つ一つ拾い上げては ノスタルジーで情緒に味付けをする 過去と現在のコントラストが 今の闇をより深く暗くする 未来に希望を抱くことを辞めたふりをしていても 理想やプライドは 乗り越えてきた過去と共にそばを歩いてる あなたの為にと側にいたいけど あなたの痛みに近づけなくて 答えはいつも教えてくれなくて 答えはいつも居場所にならない 堂々巡りの押し問答 かすかな燐光あなたの中に いきたい道を照らすまで

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水仙

木漏れ日に翳る梢を眺め あてもない午すぎを刻々と過ごす日の気持ちを どのように言い表せばいいだろう レコードに流れる音源は 僕の心をなぞるように慰めていく 吹き抜ける風は他人事のようなさやけさで あるはずのない空想をせき立てるように紡がせる 塞ぎ込んだ心に差す陽光は 輪郭を照らすまま 同時に陰影を鮮明に浮かばせる 音もなく忍び寄る夜が薄暮を飲み込み 感じ得るべき当代の不安という名の障壁を抱かせる 無機質な時間と共に 昇華されることのないそれそのものは 消えないで 残ったばかりに見えないままに 終わりの見えない物語 苦痛にたえぬわたし 拙いことと知ってはいても 比較はしない 自分のものだと大切にしたまま

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filler

雨の降らない曇り空は誰に当たるでもなく 飲み込めない不満を表情に溜め込んでるみたいです 閃光は音と共に散り かすかな匂いをのこして消えていく 人だかりの波は列をなしてなおも行進を続けます やる気のないクレーンゲーム くたびれたアーム ぬいぐるみの無機質な表情 もうそろそろ諦めました 閑話休題 生気も失せて閑散とした街並みで 思い出話に花を咲かせます 変わってしまったのは私なのでしょう がらんどうに漂うノスタルジーの気配は 私たちだけのものです もう少し待ってください そんなに長くは続きませんから 気の抜けた炭酸は 過去の思い出のように 喉を通り過ぎていく 刺激も何もなくなっていく こだわりすぎるのも考えものです 断ち切る必要はありません 解いてまた結び直す時が来るならばその時です 間違わないように選びながら それでも間違えて 誤解や失敗を無理やり形に押し込めば 一丁前になるんでしょうか あっという間だと思ったことはありません 特に意味はありません 向かうべき場所は決まってます みんながみんな行進を続けます 次はどこで会えるでしょうか どこかの交差点で会う人もいるでしょう 同じ空うねりをあげて淡々と歩みます あの日と同じ顔で笑うことはできないでしょう それでも僕はあの日と同じ僕でしょう 違いますか それでもきっと あの日と同じ空 雨の降らない曇り空は誰に当たるでもなく 飲み込めない不満を表情に溜め込んでるみたいです

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真実の扉

クローゼットの背広を指でなぞり 今日の自分を選んでいく 他愛もない雑談で空白を埋め 他人との歩度の違いを改めて確かめる 目線の中に表情を探し 本意を包み隠した笑みを浮かべる 時間と現実に運ばれた身の上を自嘲気味に振り返り 覚束無いノスタルジーに相槌を打つ 行く末を案じつつ 瞼を閉じ息を呑み込んで まどろみに溶けこむ私 明日の朝までゆっくりと

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John Doe

想像の域を出ないdystopiaを心に抱きながら 曖昧な境界を今日と私は心中する 呼吸に首輪を繋がれた魂と共に 無自覚な悠久に感覚を麻痺させながら 私は何を贖うか 葛藤にかき消されたteenager ここから先は君の物語だと 名無しの誰かが突然背中を押す 偶然を作為的なラッキーに すれ違う人混みに溶け込んで 自らの輪郭を漂白していく あてもなく 触れることのできないあなたへの 言葉をいつも探している

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鬼と人間②

ある日弟鬼は、静かな森の中を歩いていました。 すると、茂みの奥から何やら音がします。 近づいて見てみると、そこには兎でも猿でもない動物の子どもがいます。弟鬼はその姿が人間の子どもだということを何故だか確実に理解できました。 人間の少女は背伸びをして桃の木に手を目一杯伸ばしています。 しかし、あと少しのところで届きません。 鬼は初めてみる、人間の姿に怯えながらも、 自分の中に湧き起こる好奇心を抑えきれず 幼い手を懸命に伸ばす少女に隠れながら声をかけてしまいました。 「僕が取ってあげようか」 小さな人間の女の子は驚いた顔で、木の影を振り返りました。 「あなたはだあれ?」 「…わからない。君たちは鬼て呼んでるのかな。」 「おに?」 「…怖い顔をしているから、君には見せられないよ」 自分の中に溢れて足りない思いをかき集めて一言一言丁寧に答えました。 「怖くなんかないよ。出てきて桃をとってよ。」 少女は無垢な声でそう言いました。 「本当に?、どうか逃げないでね」 「うん、絶対逃げない」 鬼は木の影からゆっくりと、勇気を振り絞り 初めて会う人間に顔を覗かせるのでした。

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鬼と人間 ①

昔々あるところに2人の鬼の兄弟が仲良く2人で暮らしていました。 鬼の世界は人間の世界とは別れていて、人目につかない深い谷底にありました。 鬼の世界には昔から人間に近づいてはいけないという掟がありました。 弟はそれがなぜだか分かりません。 「にいちゃん、なんで僕たち人間に会ったらいけないのかな」 「仕方ないよ。鬼だから。」 兄は当たり前のように答えました。 「人間は俺たちを嫌ってるんだ、それどころか何か良くないことがあるとおれたちのせいにする。人間にとって俺たちは悪の象徴になってるらしいんだ。」 「そんなのひどいじゃないか、僕たち人間に悪いことなんてしてないよ」 弟は身に覚えのない間違いを指摘された子供のように反抗します。 「それに人間には俺たちの姿は醜く、恐ろしく見えるらしいんだ。」 兄は淡々と冷たい声で続けました。 「そんなに、怖いのかな。ぼくたちは。」 弟は人間のことが気になっていました。離れた世界でどんな暮らしをしているのか、何を想って生きているのか。 「心配せずとも谷底で慎ましく生きている分には人間と関わることなんてないさ。」 兄は適当に話題の着地点を定め、曖昧に話を終わらせました。 弟の人間への興味は募るばかりです。

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