ねも
32 件の小説Egoisms
脳裏をかすめる記憶の断片は いつかの憂鬱に似た感を帯びている 千切れそうな現在は偶然が繋ぎ止めて はたまた自分の内の自分じゃない誰かが 吐き捨てるように突きつけるように 絶えず私をわたしたらしめる 瞼を閉じて眠る前に思い起こすのは 認められなかった陰りの中にいる誰か 変容を変容と自覚しながらも 流れに身を任せることでしか 痛みを和らげることはできない それは僕の手の及ばないところにある 背もたれに寄りかかり 窓枠を覗き込み青空に光を望むように 諦念に端を発する希望に似た感情を漠然と 腹の底に据えている 走馬灯に流れる瞬間ばかりがイメージになり 言葉にすると瞬く間に風に流れてく ひとはみな壮大にしようとするけれど もとよりそんなものはなくて 自分の中にのみ生じてくる 微細な一喜一憂に心酔して息をしてかないといけない そのままで変わりながら 変わらずそのままで くたびれた体をなしても 歩き続けるだけの元気はあって どうしようもなく投げ出したい靄の中にいて 自分を投げ打つほどの勇気も絶望もない 匂いも味もない 目を瞑る 朝が来る 瞬きをする 今日が始まる これまでの煩悶や懊悩は 拙い現実が始まるまでの長い導火線なのだ 誰かがつけた自分がつけた初めからついていた 爆発するか不発に終わるか ジリジリと焦げ臭い匂いを漂わせて 最期に迫ってる 拙い現実が終わるまでの短い導火線なのだ 誤魔化しながら庇いながら責めながら いずれは終わっていくんだ その事実が僕を揺さぶり僕を安心させる その事実は僕を
プロローグ
春の夜風は吹き抜ける 当たり障りのない相槌のように 僕を優しさで包み込む 望んだものは手に入らない 理想はもたない 望まない代わりに 全てに恐れて、期待して 全てを忘れたふりをする 反抗も追従もどちらに振れることもできない 大義名分などない生活を正常に保つため あてどない日常を送ることだけを考える それが普通 それがあたりまえ 本当はそうじゃない そう考える方が楽だからそうしてる 楽することは悪いことじゃない だけれど楽することは 楽に生きれるわけじゃない 眠れる時にねむっとこう 寝れない夜が訪れる前までは
Cry for the moon
黄昏の悠久に心を預けていた 沈みゆく太陽 水平線の境界からは温かい後光が見えている 波打ち際には引力が働いて 音とリズムは 生活の一切を絆してくれる 押し寄せる波はその実帰っていく波 どちらともなく 有耶無耶になっている 罪のない子供は自分に世界を携えて 我がままに駆け回っていた ところが衝いとしゃがみ込み ひとつをじっと眺めている 小さな亀が這っていた 好奇心が突き動かす景色の全てを 側から垣間見た わたしはとりとめもなく 写真を撮る 見返すことのないカメラロールに蓄積されるのは 絶景の仮象 いつからか 感動を言葉に直そうとするようになった 経験をカタチに残すようになった 伝わらない苦しみを味わうくらいならと ひとり黙るようになった 諦観に立ち わかったふりをして ふれることなく痛みを感じようとする 手ざわりも親しみも なかったことにはできないだろうに どうしようもなく とめどない妄想を垂れ流す 取り返しのつかない選択の連続で 無限の将来を想像する 真白の月は 海に沈む一日を横目に顔を出す とめていたいくらい綺麗だった 進みたくないくらい苦しかった どうしようもないこと どうにもならないこと 焦点は全体に広がり虚になっていく 親子連れの呼びかけは空想から現実に引き戻す 気づいて靴の砂を払いのける 明るいうちに帰らないと あそこに居続けてはいけない わたしはもう行かなければいけない 夜は気付かぬうちに訪れる 取り残した思いを汲み取ることはもう叶わない 絶え間ない繰り返しが猶予を与えるわけではない その都度美しさに心を奪われる 瀬戸際の揺さぶりを瞑るように渡りたい
レトリカルクエスチョン
街路時を抜けていく 段差は軽く飛び越えて 側溝を歩くやじろべえ 肩をふれる風に振り向けば ゴミが混じった枯田畑 底の見えない水溜まり 上っ面は綺麗だな どこか一歩でも踏み外せないように 空気は緊張を帯びている 明滅する信号は急いでいる 体裁だけの横断歩道を信じて渡る夕暮れ 古典は今や一種のあばんぎゃるど 趣味の延長に加熱する信条がある 追いかけようとすると捕まえきれない 彼らは片手間に腰掛けたつもりだったのだろう 答え合わせは叶わない 聞いたところで言葉にそれは現れない 目的地まであと少し 果たしてほんとにあと少し? 繰り返される押し問答 鍵はどこ ポケットを探す鍵を取り出す 家路には辿り着いた
彼我
贖う罪もわからずに 体に引きずられ これでいいかと我が身に問う 夕焼けはどこでも綺麗に見える 夜空はくすみがかってる 時間は情緒を忘れて興味もあらず 信号の点滅は急かすように囃し立てる 段ボールの上で居眠りする黒猫は痩せている 満足に食べれてないのかもしれない 誰にも邪魔されない 夕暮れまでのモラトリアムを すやすやと満喫していた 健やかな安らぎを感じた休みの日 映画をみて涙を流す 内容なんか覚えてなくて 涙を流したことさえきえていくけれど あの日の傷はいつまで忘れられなくて いつまでも残ってる 過去を眺めることで、自分の道を確かめて 歩んできたという事実だけが後押しになってきた 未来をいつも怯えてる 誇れるものはなんにもなくて 根拠になるのはこれまでの道 ところであの猫はどこへ向かっていったのだろう どこかまた別の場所で気ままに昼寝をしていたらと思う 誰にも構われず 気付かぬところで気に掛けられていたらと思う 側から見たらわからぬ痛みを もろともせずに毅然と我がままに 生きていたらと
ゆめみるひと
無機質に過ぎていく時間は 知らず知らずに食傷気味になっていく かつての移ろいの中で当たり前に過ぎていた 日常を一つ一つ拾い上げては ノスタルジーで情緒に味付けをする 過去と現在のコントラストが 今の闇をより深く暗くする 未来に希望を抱くことを辞めたふりをしていても 理想やプライドは 乗り越えてきた過去と共にそばを歩いてる あなたの為にと側にいたいけど あなたの痛みに近づけなくて 答えはいつも教えてくれなくて 答えはいつも居場所にならない 堂々巡りの押し問答 かすかな燐光あなたの中に いきたい道を照らすまで
水仙
木漏れ日に翳る梢を眺め あてもない午すぎを刻々と過ごす日の気持ちを どのように言い表せばいいだろう レコードに流れる音源は 僕の心をなぞるように慰めていく 吹き抜ける風は他人事のようなさやけさで あるはずのない空想をせき立てるように紡がせる 塞ぎ込んだ心に差す陽光は 輪郭を照らすまま 同時に陰影を鮮明に浮かばせる 音もなく忍び寄る夜が薄暮を飲み込み 感じ得るべき当代の不安という名の障壁を抱かせる 無機質な時間と共に 昇華されることのないそれそのものは 消えないで 残ったばかりに見えないままに 終わりの見えない物語 苦痛にたえぬわたし 拙いことと知ってはいても 比較はしない 自分のものだと大切にしたまま
filler
雨の降らない曇り空は誰に当たるでもなく 飲み込めない不満を表情に溜め込んでるみたいです 閃光は音と共に散り かすかな匂いをのこして消えていく 人だかりの波は列をなしてなおも行進を続けます やる気のないクレーンゲーム くたびれたアーム ぬいぐるみの無機質な表情 もうそろそろ諦めました 閑話休題 生気も失せて閑散とした街並みで 思い出話に花を咲かせます 変わってしまったのは私なのでしょう がらんどうに漂うノスタルジーの気配は 私たちだけのものです もう少し待ってください そんなに長くは続きませんから 気の抜けた炭酸は 過去の思い出のように 喉を通り過ぎていく 刺激も何もなくなっていく こだわりすぎるのも考えものです 断ち切る必要はありません 解いてまた結び直す時が来るならばその時です 間違わないように選びながら それでも間違えて 誤解や失敗を無理やり形に押し込めば 一丁前になるんでしょうか あっという間だと思ったことはありません 特に意味はありません 向かうべき場所は決まってます みんながみんな行進を続けます 次はどこで会えるでしょうか どこかの交差点で会う人もいるでしょう 同じ空うねりをあげて淡々と歩みます あの日と同じ顔で笑うことはできないでしょう それでも僕はあの日と同じ僕でしょう 違いますか それでもきっと あの日と同じ空 雨の降らない曇り空は誰に当たるでもなく 飲み込めない不満を表情に溜め込んでるみたいです
真実の扉
クローゼットの背広を指でなぞり 今日の自分を選んでいく 他愛もない雑談で空白を埋め 他人との歩度の違いを改めて確かめる 目線の中に表情を探し 本意を包み隠した笑みを浮かべる 時間と現実に運ばれた身の上を自嘲気味に振り返り 覚束無いノスタルジーに相槌を打つ 行く末を案じつつ 瞼を閉じ息を呑み込んで まどろみに溶けこむ私 明日の朝までゆっくりと
John Doe
想像の域を出ないdystopiaを心に抱きながら 曖昧な境界を今日と私は心中する 呼吸に首輪を繋がれた魂と共に 無自覚な悠久に感覚を麻痺させながら 私は何を贖うか 葛藤にかき消されたteenager ここから先は君の物語だと 名無しの誰かが突然背中を押す 偶然を作為的なラッキーに すれ違う人混みに溶け込んで 自らの輪郭を漂白していく あてもなく 触れることのできないあなたへの 言葉をいつも探している