傘と長靴
103 件の小説鳴らした音の行く先は 6-12
第六章十二話 思い出の味 あのあと、一度顔を洗って、叶衣と一階に降りた。 鏡には顔色が悪く、クマもすごい顔が写っていて一瞬誰かと思った。 久しぶりに見た自分の顔は本当に自分の顔かどうか疑ってしまうような顔だった。 叶衣はよくこの顔を見ても動揺しなかったな。そう思う。 一階に降りると、時雨と湊がいた。 「今、ホットミルク入れてるからちょっと待ってねー」 「それと、マフィンもあるよ」 時雨と湊もいつも通りに話しかけてくれた。 「ありがとう」 そう言って微笑む。 まだ体は重いが、最初とは比べものにならないほどには軽くなっている。 「はい。どーぞ」 そう言って、ホットミルクとマフィンを机に置いてくれた。 温かくていい匂いがする。 久しぶりにみんなで食事をする。 「「「「いただきます」」」」 このホットココアとマフィンは施設長に教わったものだ。 俺が大好きな味。 「おいしい…」 思わずそうこぼす。 「でしょー」 時雨はドヤ顔でそう言っている。 「みんなありがとう」 そう言うとみんな微笑んでくれた。 ごめんとは言わない。きっとみんなはそれを望んでない。 みんなの優しさと温かさに俺は救われた。
鳴らした音の行く先は 6-11
第六章十一話 きっと、そばに しばらくすると呼吸が落ち着いた。 もう涙は出てこない。 顔を上げると叶衣と目があった。 「実はね…もうひとつあるんだ」 そう言って、さっきとは違う封筒を取り出す。 「ありがとう」 今度はしっかりと声に出して受け取った。 封筒には『颯くんへ』と書かれている。 「これってもしかして…」 「うん。さっきのは施設のみんなに。これは颯にだよ」 施設長が俺だけに向けて手紙を用意していたことに驚いた。 とても嬉しい。でも…、自分が死ぬことを分かったうえで書いたということがどうしようもなく悲しかった。 「このまま…ここにいてくれる?」 そう俺が聞くと、少し驚いたような顔をしたが、頷いてくれた。 そうだ。俺は一人じゃないんだ。 だから、きっと大丈夫。 今はただ、そばにいてほしかった。 さっきよりもしっかりした手つきで、封筒を開ける。 正直、読みたい気持ちと読みたくない気持ちでごちゃごちゃだった。 でも、今読まないと一生読めない気がして、それだけは嫌だった。 一度深呼吸をする。 覚悟は決まった。 ―颯くんへ まず、この手紙を読んでくれてありがとう。読んでもらえない可能性も考えていたから嬉しいわ。 もう知っていると思うけれど、私は肺がんを患っていました。今まで黙っていてごめんなさい。 私が入院したときにも、施設のみんなには聞かれるまでは答えないようお願いしました。 でも、颯くんが来てくれてとても嬉しかったわ。もう会えない可能性も考えていたから。私は一人じゃないんだって心から実感できました。温かくて、ずっとそばにいてほしかった。 でも、私はそれを許せなかった。周りの人が悲しむ顔を見たくなかったから。それなら、私が一人でいなくなったほうがいいと思ったの。けどね、今こうやって手紙を書いていて寂しくて仕方がないの。どうしても、揺らいでしまう。今すぐに会いたい。どこか穴があいたような感覚なの。 颯くんは今どんな気持ちかしら。私を恨んでる?怒ってる?それとも悲しんでくれているのかしら。きっと答えは知ることができない。 でも、颯くんが笑って過ごす毎日が訪れることをずっと祈っているわ。 最期に颯くんと話せたこと、とても嬉しかったわ。 また来てくれるって言ってくれてありがとう。それと、約束を守れなくてごめんなさい。 颯くんが大切な仲間を見つけられたことが本当に嬉しかったです。 きっと颯くんの周りにはたくさんの温かさがあるから大丈夫。 愛しています。 五十嵐 このは 読み終えたとき、施設長はまだいるんじゃないかと錯覚しそうになった。この温かさは俺が愛した施設長のものだ。不思議と悲しくはなかった。でも、どこか切ない。 読んで良かった。 きっともう同じ温かさには触れられない。でも、まだ伝わってくる。 それに俺はひとりじゃない。施設長はまだ、俺の中にいるし、俺の周りには他にも離したくない人がたくさんいる。 それに気づけただけでも俺は幸せだった。
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第六章十話 サイレントセレナーデ 扉を開くと叶衣がいた。 待たせてごめんと心のなかで言う。 「おはよう」 そう微笑む叶衣に重かった心が少し軽くなる。 「うん。おはよう。入って」 声を絞り出した。何日かぶりに出した声は枯れ、どうしようもなく情けなかった。 俺はひどい見た目だろうし、部屋も荒れている。 でも、叶衣は何も言わなかった。 それが叶衣なりの優しさなのだと思う。 しばらくの沈黙が流れる。 俺は何から話していいかわからなかった。 時間はたくさんあったのに、考えが何もまとまらなかった。 そうこうしていると叶衣が口を開いた。 「あのね…山崎さんからこんなのを預かったんだ」 そう言って手紙を見せてくれた。 いつもならきっと雑談を挟んで、気を紛らわせるのだろう。 でも、今俺にはそんな余裕がない。 きっと叶衣はそれに気づいていた。 俺は黙って受け取る。 震える手で、封を開け、読み始めた。 ―拝啓 霜が降りはじめ、ひだまりが恋しい季節となりました。 施設の皆様におかれましては、お健やかにお過ごしのことと存じます。 さて、日頃は何かといたらぬ私にたくさんのお心遣いをいただき、言葉では言い表せないほど感謝しております。 本日、私がこの手紙を書いたのには、今まで私にくださった思いやりのお心に応えたいと思ったからでございます。 私は肺がんを患っております。余命も残りわずか、私は自宅で療養することにいたしました。 お別れは避けることができません。それならば、私は皆様に弱っている姿をみせたくはありません。 これはただの私のわがままであると承知しています。この選択が皆様を傷つけてしまうということも理解しております。それでも、皆様の優しいお心に甘えさせていただきたく思います。 この手紙が皆様の元へ届く頃には、私はおそらく皆様のそばにいるでしょう。 今までの粗相を大変失礼いたしました。 それでは、皆様がますますご活躍することを願っております。 敬具 五十嵐 このは 読み終えたとき、最初は懐かしさにかられた。 やっぱり施設長だ。ここから温かさが伝わってくる。 でも、次第に悲しさが覆いかぶさってきて、涙が溢れてきた。 やっぱり、施設長はもう… 苦しくて悲しくて仕方がなかった。 俺を小さい頃からずっと見ていてくれた人。 俺が辛いときにずっとそばにいてくれた人。 その人はもういない。 その事実が受け入れがたかった。 「…もっと…もっと、一緒にいたかったのに…」 声にならない声がもれた。 辛くて、悲しくて、苦しくて仕方がない。 でも、読まないほうが良かったとはどうしても思えない。 涙が止まらない。苦しくて苦しくて、息ができなかった。
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第六章九話 ただ、近くで 扉をノックする音が聞こえる。 誰かと考えなくてもわかる。 今まではずっとそっとしておいてくれたのだ。 だから、応えないと。そう思い、体を起こそうとするが、力が入らない。 体が重い。どうにか体を奮い起こし、扉の前まで行く。 やっと扉の前まで着いたのに、扉を開けるかどうか迷った。 出ても何を話せば良いのだろう。 まともに話せる自信はなかった。 しばらく扉の前でうずくまる。 立っていられなかった。 呼吸が浅くなる。 まだしばらく話せそうにない。 扉をノックする。 きっと颯は今もこの中で独りでいるのだろう。 時雨と湊には待っていてと伝えた。 きっと今大人数で押しかけるのは迷惑だから。 しばらくの間、反応がなかった。 でも、少ししてからふと気配を感じた。 きっと扉の向こう側、すぐ近くにいる。 いつでもいい。だから、焦らないで。 そう心のなかで言う。 きっと言葉に出したら颯は無理してでも出てくる。 颯の準備が整うまで。 私は扉のすぐ近くに座り込んだ。 しばらくはただ呼吸を繰り返していた。 ただ呼吸が落ち着くのを待つ。 今もまだ、外で待っているのだろうか。 扉がノックされてから、しばらく経ったように思う。 いや、きっといるのだろう。 扉越しに誰かがいる気配がある。 きっと、ずっと待っててくれたのだ。 一度深呼吸をする。 俺は大丈夫。もう話せる。 そう自分に言い聞かせ、覚悟を決めて扉を開けた。
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第六章八話 失ってしまう前に 颯と最後に顔を合わせてから五日たった。 ご飯は食べているし、大丈夫だとは思う。 でも、これ以上このままでいるわけにはいかない。 私はまず山崎さんのところへ向かった。 「こんにちは。お久しぶりです。山崎さん」 「ああ、叶衣か。いらっしゃい」 山崎さんはどこか疲れているように見えた。 少なくともいつもの活発さは感じられない。 「はい。今、少し時間よろしいですか?」 「ああ」 そう話し、小さな部屋に向かった。 「颯はどんな感じだ?」 「ここ五日間は顔を合わせてないですね。でも、ご飯は食べてるようですよ」 「そうか…」 きっと山崎さんは私がここに来た時点で、颯はまだ部屋にこもっていることに気づいてはいる。 「大変なときにすみません。少しお話を聞いておきたくて」 「いや、俺も話しておかないとと思ってたところだ」 そう山崎さんは言い、大きな深呼吸をした。 そして覚悟を決めた顔で話し始めた。 「颯はいわゆる孤児なんだ。赤ん坊のときにこの施設の玄関のところに置かれていたと聞いた。それから、ずっとこの施設にいる。そんな中、きっと颯は施設長の愛に触れんだと思う。だから、颯からしたら、施設長は大切な家族で、ずっと一緒にいたい人だったんだろうな…」 そう言った山崎さんはどこかせつなそうに下を向いた。 「…きっと施設長だけじゃないですよ。颯は、山崎さんもここの施設の職員も、みんなのことを大切に思ってると思います。私にはそう感じられます」 ただ私は思ったことを口に出した。颯はみんなのことを大切に思っている。それは、初めて会ったときからなんとなく感じていた。 「でも、…俺は颯が今辛いのを分かってるのに、…何もできない……」 かすれた、小さな声でそう吐き出す山崎さんは今までで一番小さく見えた。 「…少なくとも私はそんなことはないと思います」 その言葉に山崎さんは顔を上げる。 今にも泣き出しそうで、でも、どこか苦しそうな歪んだ顔をしていた。 「私は、この状況をどうにかしようと山崎さんを頼りに来ました。山崎さんが颯とよく話しているのを知っていたから、話を聞きに来たんです」 少しでもこの想いが伝わってほしい。山崎さんもちゃんと救われてほしい。 山崎さんも辛いはずだ。でも、周りのことをしっかり見ている。 自分よりも周りの人を優先しすぎている。 「山崎さん…今は…いいんですよ」 そう言った途端、山崎さんの目から涙がこぼれ始める。 感情を失ってしまう前に、解放してあげたかった。
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第六章七話 ノイズメルトダウン 何をする気も起こらない。 あれから何日経ったのだろう。 学校も行ってないし、みんなとも顔を合わせていない。 どうにか体を起こして部屋を出ると、扉の横に食事が置いてあった。 あの日からそうなのだろう。 みんなは学校に行っていて家にはいない。 下に降りようと歩みを進めるが、足が重たい。 体はだるくて、動かすのもしんどいが、一度お風呂に入っておこうと思った。 あの日からお風呂に入っていない気がする。 もう記憶も曖昧で、息をするだけでもしんどい。 お風呂場までやっとの思いで、たどり着く。 たどり着くが入る気になれなかった。 体を丸めてうずくまる。 ただ、息をするのに必死だった。 目を瞑ってなんとか小さな呼吸をする。 結局、洗面台で髪を洗って、濡れたタオルで体を拭いて自分の部屋に戻った。
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第六章六話 今できること 山崎さんから連絡をもらった。 施設長が亡くなったこと。それを颯が聞いて、愕然としていたこと。 このことを時雨と湊にも共有した。 正直、どうするべきかわからなかった。 私が何も言えずにいると、二人は話し出してくれた。 「僕は両親が亡くなったとき、僕のせいだと思ったんだよね。それで、苦しくて、自分をずっと攻めてた。それこそ、自傷行為にも手を出したよ。でも、事実は変えられないし、それなら死んでも良いなって…僕はあえて距離を取ったんだけど、結局は誰かのそばが一番安心したな」 「僕は、結構荒れたな。翔はいたけど、ほとんど話さなかったし。それこそ、自分から関係を切るようなことをしちゃったし。だから余計に孤独感はあったかも。でも、自分のせいだからっていうのが大きかったからな。僕も誰かと一緒に喋ったのが大きかったかも」 初めて聞く事実に衝撃を受ける。でも、今はそんな場合ではないのだ。 「そっか、話してくれてありがとう。私はお母さんを亡くした実感がなかったし、それに見捨てられても何も感じなかったからな…でも、こうやって今みんなと話せることがとても嬉しいんだ。だから、初めて颯が話しかけてくれたときは、すごく心が温かくなったんだ」 私も言って気づく。 私たちは施設長の代わりにはなれない。でも、できることはあるのだ。 みんなの目を見て頷き合う。 今はただ、そばにいてあげること。 そして、時が来たら一緒に話そう。
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第六章五話 引き裂かれた想い たどり着いたのは、小さな個室だった。それこそ、施設職員と二人で会話をするときに使う部屋。 「あのな、本当は俺から言うべきじゃないことなんだ」 その一言にどうしても最悪な事態を想像してしまう。 「施設長は、もうこの施設には来ない。入院が決まってから、辞めたんだ。颯に聞かれたときは、貧血だって答えたけどな、きっと本当はもっと重い病気だったんだと思う」 息ができなくなる。だって、あんなにそばにいたのに全く気づけなかった。 「でも…」 必死に声を絞り出す。 「病院の受付の人に聞いたら、退院したって……だから、もう大丈夫なんだよね…」 必死だった。ありえない。そんなことない。 そう思うが、山崎さんの様子を見て、愕然とする。 きっと、もう施設長は… 俺は耐えきれなくなって、部屋を飛び出した。 「颯‥!」 俺を呼ぶ声が聞こえたが、気にせずに走った。 嘘だ嘘だ嘘だ だって、約束した。勝手にいなくならないって。 なのに、…なんで……。 気がつくと俺は自分の部屋のベッドに横たわっていた。 あれからどう家に戻ってきたかわからない。 もう何もする気にならなかった。 動くのも考えるのもしんどかった。 涙も出ない。辛くて苦しくて仕方がないはずなのに、何も感じられなかった。
鳴らした音の行く先は 6-4
第六章四話 不安と焦り しばらくの間、病院に顔を出せなかった。 バイトが重なって、面会時間に間に合わなかった。 バイトを休むことも考えたが、三人にも迷惑がかかるだろう。 だから、休むことはできなかった。 今日は久しぶりに病院に顔を出す。 きっと今日も施設長は「いらっしゃい」と言ってくれる。 そう思って、病室に向かった。 「こんにちはー」 そう言い、入った病室には誰もいなかった。 少し席を外してるのかな。そう思い、ベッドに近づいた。 様子がおかしいことに気付いたのはその時だ。 ベッドの周りにはものが何も置かれていなかった。 それにネームプレートもなくなっている。 俺は慌てて受付に確認しに行った。 「あの!」 そう受付の人に声をかける。 「もしかして、五十嵐さんのお見舞いですか?」 「はい。あの、病室に行ったらいなかったのですが…」 「五十嵐さんなら先日退院しましたよ」 「!…そうなんですね。ありがとうございます」 良かった。無事退院できたということに嬉しくなる。 それなら、これから向かうのはここじゃない。 そう思い、病院を後にした。 「こんにちは!」 そう声を上げると、山崎さんが話しかけてくれた。 「颯か。なんか久しぶりだな」 「うん。あのさ、施設長いる?」 そう聞くと、山崎さんは驚いたような、バツの悪そうなよくわからない顔をした。 「…山崎さん?」 俺は不安になって山崎さんの名を呼ぶ。 「ちょっとこっちに来てくれるか?」 そう言って、向こうの方に歩いていってしまう。 どうしても不安な気持ちに覆われるが、今は山崎さんについていくしかなかった。
鳴らした音の行く先は 6-3
第六章三話 待ち人 「こんにちはー!」 「あら、颯くん。こんにちは」 「施設長!ここに来るときに猫見たんだ!これなんだけどかわいいよね!」 そう言って写真を見せた。 「そうね。でも、颯もかわいいわよ」 「いやっ、俺、別にかわいくないし…」 俺が照れたのに気づいているのだろう。施設長は頭を優しく撫でてくれた。 俺もそのまま撫でられていた。施設長に触れたのなんていつぶりだろう。 きっとこの温かさをずっと待ち望んでいた。 「そういえばさ、施設長はなんで、施設長になったの?」 ずっと近くにいたのに今まで一度も聞いたことがなかった。 施設長はしばらく押し黙っていたが、俺の方を見て話し始めた。 「私はね、もともと教師になりたかったの。でもね、いざなろうって思ったときに、感じたの。私がしたいのはこういうことじゃないって。私はもっとひとりひとりと向き合って、生活全般を支えたいって思ってたから。それで、いろいろな仕事を見て回って一番しっくり来たのが施設の職員だったってだけ。今はこうやって颯くんや他の子たちと話して一緒に考えるのが楽しいのよ」 ただ単に嬉しかった。施設長が楽しそうなら俺も嬉しい。 「そっか。それなら良かった」 思わず声に出してしまった。ずっと心配だった。施設長になったことを後悔していないか。でも、施設長の言葉を聞けて安心した。 「颯くん?」 俺がこぼしてしまった一言に施設長は不思議そうにこちらを見た。 「ううん。なんでもない」 そう。なんでもない。だから、ずっと俺から離れていかないでほしい。 「やっば。もうこんな時間だ。じゃあ、また来るから」 そう言って病室を飛び出す。いつの間にかもうあたりは暗くなっていた。 施設長の他にも俺を待っていてくれる人がいる。 だから、今は帰らないと。そう思い、病院を飛び出した。 「ただいまー」 「「「おかえり」」」 俺が家に戻ると、少し甘めの醤油の香りがした。 みんなが夕食を作ってくれていた。 「俺も手伝う」 そう言ってもう完成していた料理をテーブルに運ぶ。 今日は久しぶりにみんながこの時間に揃っている。 「「「「いただきます」」」」 みんなで一斉に声をだし、夕飯を食べ始めた。 今日は朝話していたように、和食だ。少し甘い味付けの肉じゃがもある。 この肉じゃがのレシピは施設長から教わったものだ。 他にもいろいろな料理を教わった。 教わった料理を作って施設長に食べてもらったこともある。 おいしい、おいしい、と一口一口を味わって食べてくれた。 そんなことを思い出しながら今日はご飯を食べた。