にのむの

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にのむの

初めまして、にのむのと申します。 異世界最強魔王ファンタジー小説を書かせて頂いております! 是非読んでフォロー等々、宜しくお願い致します🙇‍ 2日に1話投稿予定。 休日、祝日は休みとさせて頂きます。

第9話 来世、学校に通う時

やってしまった…合格…。 しかも特待生クラス…。 何故こんなに目立つのだ。 目立ったら俺の壁角隅っこの位置が無くなる。 最悪、最悪だ…。 俺は心の中はしょんぼり肩を落としながら、だが外見は真顔で俺の教室である、いわゆる自分の地獄オワタクラスへと向かう。 ガラガラとドアを開け、教室の地獄門をくぐると元いた世界の大学のような長い机がいくつもある作りをしていた。 ここが地獄の場所… いや、俺の教室か。 皆の姿を全体を見るようにして見渡す。 ふと、見覚えのある白髪の女を見つけた。 …ん?こいつは確か…。 俺は後ろの方で1人ちょこんと椅子に座っているその白髪の女の元へ歩み寄る。 「久しいな。お前も特待生か。 名は確か…ノズラード・カクルト、と言ったか。」 「あら、本当に合格したのね。それも特待生として。」 「まあな、皆が落ちろと言う中、受かってしまった。やれやれ、今頃俺を良く見ていない奴らはさぞ悔しがっているだろうな。」 「それはたまたま、特待生として受かったのかしら?それとも…計算のうちなのかしら。」 ノズラードが俺をからかうように見つめる。 「フッ、さあな。俺は何も考えてなくても受かると思っていた。」 だってあんなに問題が簡単な上に皆思ったより弱かったんだもん。そりゃ受かりたくなくても、受かるわさ。ほんとにね!!! 「貴方は本当に不思議なお方ね。立ってるのもなんでしょ、隣に座ったらどう? 私が魔王様相手に座ってるのも無礼だしね。」 「うむ、そうさせてもらおう。」 俺はノズラードの隣の椅子を引き、席に座る。 良かった〜、友達1人げっっっとぉぉ! しかもびじぃぃん!!すこぉぉ! 「お前の家系は一人っ子か?」 「あら、知りたい?」 「いや、こうしてノズラードと会えたのも偶然故の奇跡だと思ってな。 それにもうお前は俺の友であり俺の配下だ。配下の家系を知りたくないやつが何処にいるというのだ。」 その瞬間、ノズラードの顔がどんどん赤らめていく。 「な、なんでそんな奇跡とかふ、普通に言えるのよ!!そんなの言う人、貴方くらいじゃないかしら!? ……一人っ子よ。」 「そうか、俺もだ。」 「あ、そ。」 「…」 「…」 会話が終わり冷たい沈黙になる。 あ、これなんか喋んなきゃだめなのかな。 陰キャだとこうゆう沈黙当たり前だけど…。落ち着くしね。 「な、何か喋ったら?何、この沈黙…。」 やはり言ってきたか。すまん、まじですまん。 「そうか?俺は落ち着くのだがな。話し続けても疲れるだけだ。」 そこは普通に言った方が良いと思ったので、素直に俺は答える。 「そ、そうなの。魔王様ってちょっとおかしいのね。」 「それは褒め言葉か?」 「どこがよ!!」 ふむ、中々ノリが良いではないか。 俺はそうゆう奴は好きだぞ。 その瞬間朝礼の鐘が鳴り、俺の教室に1人の教師が入り込んできた。 おそらくこの教室の担任だろう。 「皆さん、おはようございます。そして初めまして。私の名前はカリアナ・フィンガーと言います。今日から貴方達の教師よ。よろしくね。」 ふむ、中々良い人そうだな。教師というだけあり、魔力もそれなりに持っている。 「さて、じゃあさっそくですが、皆には1人ずつ自己紹介をしてもらいます。」 …………は?

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第9話 来世、学校に通う時

第8話 来世、第三次試験の時

着々と実技試験での戦いが繰り広げられる。 やはりどの受験者も見ていたが、魔法書に載っていた下級魔法がほとんどだ。 何故か皆はそれを上級魔法と言っている。 それも難関魔法だとかなんとか。 なら俺が読んでいた魔法書が誤って記載されていた?いや、そんなはずは無い。 どの魔法書も昔から代々保管されてきたものだと父が言っていた。 それにあのエルアシャトだ。そんな間違っている本があったらおかしい。 ということは、何百年の時を経て魔法力が衰えていったと考えた方がいいかもしれぬ。 やれやれ、可哀想に。同情するぞ。 俺は見下すようにしてドヤ顔で受験者を見た。 「な、なんだ魔王様…。凄い顔で見てるぞ。」 「へっ!俺たちの事を舐めてるんだろ。後で魔王様がボコボコになる姿を拝もうぜ!!」 その時、Dグループの実技試験が終わった。 「続いてEグループの実技試験を始めます。Eグループは準備をお願いします。」 よし、いくか。 俺は席を立ち、会場へと向かう。 「へっ!最初に戦うのが魔王様だとはな!」 なんだ、急に話しかけてくると思ったらさっき俺の事をボコボコの姿拝もーぜ!と言ってた魔族Aか。 「ふむ、名前は…たこ焼き…だったか?」 「タコ、ヤキ…?ふ、ふざけるな!俺の名前はターコ・ヤベキーヌだ!!そんな変な名前じゃねえ!」 それはほとんどたこ焼きではないか。なんか怒ると顔赤くなるみたいだし。 「お、お前なんて俺の手にかかれば1発だ!ひゃはははは!早くボコボコになるザマをみてぇなぁ!」 そう言いながら俺に人差し指をピンと指してくる。 「そうか、楽しみにしているぞ。…たこ焼き。」 「ターコ・ヤベキーヌだっ!!」 中々覚えずらいな、その名は。 まあいい、どうせたこ焼きはたこ焼きだ。 「第1試合!アレド・アザルゴド様、対するはターコ・ヤベキーヌ!両者試験場へ!」 ちなみに言い忘れていたが、一応魔王の家系以外の奴らは俺たち魔王の家系の名前を言う時は必ず「様」をつけなければならぬ。 法律がそうらしい。 誰だそんな法律を付けたのは。暇だったのか? 「それでは両者、準備はよろしいでしょうか。」 「よいぞ。」 「ひゃは!ぶっ潰してやる!」 さて、どう負けようか。 「両者!実技試験、始め!!」 始めの合図と共にたこ焼きがすかさず魔法を発する。 「火力魔法(ファーボン)!!」 ふむ、火力魔法(ファーボン)か。こいつは口だけじゃなかったな。 先程のナソヅ・ソヘコメージの風魔法(ヴィンセ)よりも大きいではないか。 評価してやるぞ。 「おらぁぁぁ!」 たこ焼きは腕を大きく振り落とし、俺の方へ火力魔法(ファーボン)を放つ。 「これは何もしなかったら黒焦げで負けたようになるだろう。負けるか。」 俺はふと先程のたこ焼きの言葉を思い出す。 まって、負けたらバカにされない?俺。 ボコボコにされた俺の姿を拝むとか言ってない? え、何怖い無理、いじめ無理。 それはダメだって。そっち優先しようよ。 うん、そうしよう。陽キャには敵わないよ。 「フッ!」 俺は火力魔法(ファーボン)に息を吹きかけそれを消した。 それと同時にたこ焼きが焦りを表す。 「な、なにしやがった!?」 「なに、ロウソクの火を消しただけだ。」 「なんだとっ!?」 さて、これはわざと負ける訳にはいかなくなったな。余計な事を言いやがって、たこ焼きめ。 「まだ足りぬか、ならロウソクをくれてやろう。受け取れ。」 俺は召喚魔法(イキューコ)でこの試験会場と相応の大きさのロウソクを出した。 そしてたこ焼きに向けて投げる。 「む、無詠唱!?しかもこんな莫大なでかさのロウソクだと!!?? ………く、くそっ!」 たこ焼きは火力魔法(ファーボン)をロウソクに向かって放つ。 その瞬間ロウソクに火が灯り、莫大な火のついたロウソクに変化にそのままたこ焼きの元へ速度を落とすことなく直進した。 「な、なんだと!?う、うわぁぁぁぁ!!!」 見事に直撃し、そのまま意識を失った。 「馬鹿だな。ロウソクに火をつけたら威力が増すだけだろう。もっと頭を使え。」 気絶してるから言っても意味ないがな。 「勝者、アレド・アザルゴド様ーー!!」 その瞬間観客席にいる受験者が騒ぎ出す。 「ま、まさか魔王様が勝つなんて…。」 「こ、こんなことがあっていいのか?」 「前代未聞だぞ!」 「い、今までの衰えはどこえ行ったんだ?」 ふん、凄いだろう。俺。 仕方あるまい。 今まで貶してた魔王の家系が急にとてつもなく強くなったからな。 しかし、なかなか皆信用しないな。 これを見ても信じ難いというのか。 …というか勝ってしまった。負けるはずが勝ってしまった…。 だ、大丈夫。次こそ負ければ大丈夫なのだ。 しかし、この後も対戦相手に死ぬほど煽られいじめになる事を恐れてどんどん尽く勝ってしまった。 結果、第三次試験優勝。 魔法学校特待生になったのだった。

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第8話 来世、第三次試験の時

第7話 来世、第三次試験の時

俺は第三次試験へと足を運んでいく。 会場へ着くと、そこはドームくらい広く、周りは観客席に囲まれていた。 その囲まれた観客席の中心には戦闘場といえる、もはやここで戦えよと言ってきそうな白いタイルが埋め込まれていた。 もしやこれは 勝ったら入学できる可能性が上がるよ♡ のあれでは??? ふむ、それなら簡単だ。手を抜いて俺が負ければ良い。 さて、今度こそ負けて不合格を取るとするか。 約1時間後 …集まってきたな。そんなに終わるのが遅かったのか、あの試験。 どんな頭をしているんだ。ここの生物は。 「全員集まったようなので、第三次試験を開始致します。」 「ふむ、やっとか。」 俺は待ちくたびれたのでその場で召喚魔法(イキューコ)を使い椅子を召喚してその椅子に腰を掛けた。 「第三次試験はグループごとのトーナメント式魔力実技試験です。 各グループ、A、B、C、D、Eで15名ずつに別れてもらいます。そのグループ事でトーナメントを行ってもらいます。」 なるほど、要は戦いに制した1位が各グループ1人ずつ、合わせて5名になるということか。 その5名は特別クラスになるだろうな。 俺は負けにいくのだ。最下位が1番良い。 その瞬間、目の前に文字が浮かび上がる。 どうやら俺が戦うグループが表記されているようだ。 「俺は、Eか。A~Eの中で1番最後のグループだが、何か意味があるのか?」 例えば陰キャっぽいやつがEに入りやすい、とか。虐められそうなやつがEになりやすいとか。 無理、怖いって。どうなってんねんこのグループ分け。 「ちなみにグループ分けのやり方はシャッフルで決めたので特に意味はありません。」 助かったー。そうだよね、そんな事してたらここの学校潰れるもんね。なんなら潰れてしまえとまで思ったよ。うん。 もし潰れなかったら俺の魔法で壊してやる。って言わなくて良かった。 「それでは、Aから順に魔力実技試験を始めますので、その他のグループは観客席へ移動してください。」 なるほど、受験者も見れるのか。 どれ、少しばかり見学といくか。 受験者2人が観客席に囲まれた真ん中の対戦場へと歩いて登場してくる。 「第1試合!ナソヅ・ソヘコメージ、対するはヌテリ・ナットラリーです。」 「ここでルール説明を説明します。」 普通に考えて皆を観客席にやる前に説明するべきではないのか?効率が悪すぎるぞ。 …いや、あまり突っ込まないでおこう。 「相手が気絶、または魔力が底を尽き、戦闘不能になった場合に試合終了となります。尚、降参も可とします。」 お!異世界あるあるのルール!!俺そーゆーの大好きぃ!!! …おっと、つい前世の興奮が。 「相手を殺すのは禁止です。もしそうなってしまった場合は、失格とします。 観客席への被害は防攻撃魔法(ベンアウット)で守られていますので安心してください。」 殺すって…逆に可能だったら殺してたやつがいるというのか。 やれやれ、ここの世界は簡単に命を奪おうとするのだな。魔法が使えるが故に。 ちなみに防攻撃魔法(ベンアウット)は結界、つまりバリアーみたいなものだ。 「それでは各両者とも…始めっ!」 「オラァ!喰らいやがれ!」 まず始めと試験監督が声を発したとたん、勢いよく攻撃を仕掛けたのは、ナソヅ・ソヘコメージ。 どうやら風魔法(ヴェンセ)を作り出そうとしているな。 早く作り出せ、2秒もかかっているではないか。 その間に俺は同じ魔法も1000は容易いぞ。 「おらあ!《超風魔法(スヴェンセ)》!!」 「くっ!まずい!べ、《防攻撃魔法(ベンアウット)》!!」 相手側、ヌテリ・ナットラリーが慌てるようにして魔法を発動した。 超風魔法(スヴェンセ)が防攻撃魔法(ベンアウット)に衝突したとたん、煙がもくもくと舞う。 それが納まり両者の姿が確認される。 「はぁっ…はぁ…中々、やるじゃねーか。」 「こ、こんなもの、受け止められなくて受かるわけが、ない、だろう…はぁっ…はぁ。」 お互い息を激しく上がらせながら会話をしている。 「す、すごいぞ!今の魔法、使いは出来てもコントロールが難しいと言われてる難解魔法の1つじゃないか??」 「しかもそれを防攻撃魔法(ベンアウット)で防いでるのもすごいよ!!」 観客席が活気で賑わう。 その傍らで俺は呆然と口をあんぐりにしながら死んだような目で両者を見た。 な、なんだこれは!子供のお遊びか? 下級魔法なんじゃないのか、今のは。 俺はそんな風に見えても他の受験者はすごいと驚きを隠せない様子だ。 俺、最強になりすぎたのでは???

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第7話 来世、第三次試験の時

第6話 来世、第二次試験の時

「アレド・アザルゴド様、第一次試験の結果、通過しました。よってこれより第二次試験を行いますので指定の部屋へお越しください。」 俺の中だけに聞こえてきた。 他の者は聞こえていないようだ。 恐らく思伝魔法(トラローゲ)だろう。 ふむ。魔法を勝手に使った割には通過なのだな。てっきり落ちたと思ったぞ。 てか落ちて欲しかった。学校嫌だ。 次の試験は…記述か。 前世ではなんせクラスでも最下位の成績だ。 これは流石に落ちるであろう。 なんせ勉強などしていないからな! よっしゃ!! 「それでは第二次試験を始めます。時間は50分間、時間内よりも早く終わった人はこちらに提出しに来ても構いません。」 普通は試験時間中に提出しに行ったらダメなのだがな。 見直しとかなんとかもとか言ったりするだろう。 なんせ、前世の俺は見直しなんてしなかったが。寝てた。めっちゃ余り時間寝てた覚えしかない。 「それでは…はじめっ!」 試験監督が大きな声を発すると同時に、受験者が解答用紙に向かって書き解く音が鳴り響く。 さて、俺も分からなすぎる問題を解くとするか。 選択問題はどれにしようかなで決めよう。 俺は問題を読み始めた瞬間、目をかっ開いた。 な、なんだこれは!?問題が簡単すぎる! この問題は火力魔法(ファーボン)の性質だと!? 火は火だろうが!酸素の多い場所だとより火力が増す、当たり前のことだろう!? 他になんの選択肢があるというのだ! 何故風という選択肢があり二酸化炭素の方が燃えやすいという選択肢があるのだ! これも…これも……なんだこれは。小学生レベルだ。 約1分後 さて、次のクソ問題は… お、これはなかなかの問題ではないか。 魔王や魔王城についてだな。 【問題…魔王は魔族の誇りであり魔王城は願い、崇められる場所とされている。現魔王と魔王城の名を答えよ。】 ふむ。少しひっかけか? 現魔王とあるが、それは俺の父、ドルウィス・アザルゴドではない。父は前魔王なのだ。 ここの世界で魔王の家系は魔王の子供が生まれた時点でその子が現魔王となるのだ。 つまりこの俺、アレド・アザルゴドである。 魔王城は普段住んでいるし間違えようがないな。 エルアシャトだ。 これはこの問題の中でもまだマシだな。 簡単ではあるが。 さて裏面へいくとするか…………う、裏面が無いだと!? この問題数で表面だけ?そんな馬鹿な! お、終わってしまった。3分で終わってしまった。 まあ待ってても暇だ。提出しに行こう。 「おや、アレド様、何か質問でしょうか?」 「否、終わったので提出しに来た。」 その瞬間受験者がざわめき出す。 この試験が始まってから受験者は何回俺の行動を見てざわめいているんだ。 この問題逆にできないのか?魔族はどれだけ頭が悪いんだ? 「て、提出…ですか?」 「あぁ。」 終わったと言ったではないか。 「たった3分で?」 うむ。3分も、だ。 本気で解いたら1分くらいで解き終わっていただろう。 「そ、そうですか。お疲れ様でした…。採点が終わるまでお待ちください。」 「分かった。」 俺はジロジロと視線を感じながら席へ戻り着席した。 そんなに見られたら陰キャが発動するんだけど。消えたい、消えて無くなりたい。生きててごめんなさい許して。 数分後 「アレド・アザルゴド様、採点が終わりましたのでこちらへ。」 ふむ、採点にはそう長々と時間はかからなかったな。 それはここの世界でも変わらないのか。 「それで、どうだった。」 「ま、満点…です。第三次試験へお進みください。」 「ふむ、そうさせてもらおう。」 また受験者がざわめき出す。 「ま、満点!?これは過去最高の難しさと予想されていた問題だぞ!」 なに、これで難しいのか?それも今までの中で1番? というか試験中だから私語を慎め貴様ら。 「今回の魔王様はおかしくなったのか!?」 おかしくなってない、貴様らの頭がおかしいぞ。 あとだから私語を慎め。 何故試験監督は何も言わぬ。 「こ、こら!私語を慎みなさい!」 あ、言ってくれた。てかそれを言うのが遅いんだよ監督!新人なのか? まあ可愛い顔してるから許す。 さて、第三次試験へ行こうではないか。 俺は気を引き締め…とまではいかないが、そこそこの気持ちで第三次試験へと歩みだした。

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第6話 来世、第二次試験の時

第5話 来世、試験の時(2)

俺は名前を呼ばれ、魔力測定用の水晶玉の前に歩み寄った。 「さぁ、それではアレド様。水晶玉に触れてください。」 「うむ。」 俺は水晶玉に手を触れ、数値が出される時を待った。 すると水晶玉にヒビが入り、「バリンッ」という音を響かせ、原型を留めず粉々に散ってしまった。 「なっ!こ、壊れた?そんな事例、今までないぞ!?」 「何が起こったの?まさか、尋常じゃない数値だったってこと?」 他の受験生が騒ぎ出す。 こんなんで壊れてしまうのか、俺の魔力は思ったよりも強いかもしれないな。 俺、強いもんな。最強だもんな。 うん、気分がめっちゃいい。 「ふむ。壊れてしまったぞ、どうすればよい。」 俺は淡々とした口調で試験監督に話す。 「えっ!そ、そうですね。今までこんな事例はなかったので…す、すみません。新しいのをお持ちしますね!」 「いや、その時間が面倒だろう。俺が新しく用意しよう。」 「え?」 《 擬似魔法(プセロアティス) 》 その瞬間、全く同じ水晶玉が現れ、元々水晶玉が元々置いてあった場所にコロンと落ちた。 「これでいいだろう。なに、心配するな。強度を先程より強くしている、安心しろ。」 「個体をみ、見ただけで無詠唱で擬似魔法(プセロアティス)を…?」 「あぁ、イメージしただけで出来るだろう?」 「そ、そんなことが…。」 俺は心の中でドヤ顔で自慢げにしていた。 やはり俺はすごいな、天才。 「では続けよう。」 「あっ!はい!そ、それではアレド様、もう一度測定を。」 「うむ。」 俺はもう一度水晶玉に触れる。 数字が出た途端、試験監督が今までにない大声をあげた。 「10億5468万1086!?!?」 「じゅ、10億だと!?」 「魔王様は落ちこぼれなんじゃないのか?」 「水晶玉になにか仕組んだんじゃないか?そうじゃなきゃ絶対おかしい。」 皆がありえない数字を目の当たりにして混乱している。 「…ふむ。皆がそう思うのも仕方ない、なら次の受験者の貴様。この水晶玉に触れてみよ。」 「ふん!どうせはったりだろ!いきんなよ魔王様風情が!!」 俺の事を下に見る受験者がそう言いながら水晶玉に触れる。 「…ろ、68…。」 「な、なんだと!?!?」 「これで分かっただろう。これはちゃんとした魔力測定用の水晶玉だ。はったりではないぞ。」 「く、くそが!魔王様がいきがんなよぉ!今まで弱いで有名だったくせに強いからって!!」 「では俺の代で戻ってきたみたいだな。強き頃の魔王の時代が。」 「ふ、ふざけんなよ!!魔王様気取りが!」 「魔王だからな。10桁しか魔力がないお前ごときがかなう相手ではないぞ。」 「ち、調子に乗るのもここまでだぜ!ははっ、この俺を怒らせちまったみたいだなぁ!! 俺の魔法をくらいやがれぇ!最高魔法だっ!! 火球魔法(ファーボン)!!!」 そう叫び出すと、受験者は俺に向かって半径50mほどの火球魔法(ファーボン)を放った。 「こ、これはやばい!皆にげろっ!!」 他の受験生がどんどんそれを恐れ、逃げてゆく。 だが、俺は片手でそれを受け止め、握りつぶすようにして火力魔法(ファーボン)をいとも簡単に消した。 「なっ…!」 「そちらこそ、いきがってる割には弱すぎるな。お返しをしてやろう。」 俺は人差し指を上にあげ、火球魔法(ファーボン)を作る。 「な、何だこのでかさ!?見たことないぞっ!…おい!やっやめろっ、やめてくれ!!」 「そうゆう訳にはいかぬな。せっかく貰ったんだ。俺からもあげないとな。」 そう言い俺はその受験者に向かって火球魔法(ファーボン)を放った。 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 それと共に受験者が絶叫の断末魔をあげる。 「…ふむ、これで死なぬとは。お前もやるではないか。」 「こ、このや…ろ…。」 「これがやられたらやり返す、リアル100倍返しだ。」 その場がしんと静まり返る。 この言葉、前世では皆が知ってる当たり前の言葉だったのだがな。ここでは通じぬか。 …少し恥じたぞ。 「…これなら問題なく受験出来そうだな。しかし俺を魔王様風情と言ったこと、少し根に持ったぞ。」 「俺の事をごちゃごちゃと抜かす前に、まずお前の事を改め直す事だな。」 受験者は俯いたまま悔しそうにその場にかたまっていた。 他の受験者は俺の圧倒的強さにざわめいている。 ふむ、この機会逃してはいけないな。 俺は息を吸い、大声で受験者全員に聞こえるように叫んだ。 「皆の者、よく聞け!落ちこぼれと言われ続けてきた魔王の時代は終わりだ!あの強き誇らしい魔王は今ここに戻ってきた!それがこの俺、アレド・アザルゴドだ!」 「この中には不自由な者も、辛い思いをしている者もいるだろう。だが、この俺がこの地、この場所に来た時点で全てその不幸を覆してやろう!俺が俺だからできるのだ!」 「弱いものは弱音を吐け!辛い事は辛く生きよ!俺にそれを示すのだ。不可能を可能にしてやろう!それが、アレド・アザルゴドだ!」 俺は少し笑みを浮かべた。

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第5話 来世、試験の時(2)

第4話 来世、試験の時

ついに入試試験か。 学校は魔法学校でこの世界の首都、「ウィホユーツ」にある。 ちなみに魔王の存在や魔王城は皆が当たり前の事のように知っており、魔王城を通りかかる時は一礼をしなければならないという決まりがあったようだ。 神社、なんだ、神社なのか?我が家は。 一礼するなど神社か寺くらいだ。 しかし、あくまで過去形である。 数十年前から魔王という最高権力は衰えていったらしい。 理由は不明だが、力そのものが衰えていき最強と言う文字はきれいさっぱり無くなったみたいだ。 そのせいで魔族、人族でさえも魔王に忠誠を誓わず、それどころか弱すぎるという小馬鹿な発言をよく耳にするらしい。 俺は平和を作りたかったが、ここの世界は大きな争いがなく、ほとんどの人が不自由なくすごせている。 つまり平和なのだ。 平和故、こんなちっぽけなことで俺ら魔王を馬鹿にするのであろう。 ふむ、何とかならないものか。 そんな事を考えながら魔法学校の門をくぐり抜け、試験会場へと足を運ばせていった。 それなりに試験生徒も多いようだな。 む、この見た目、完全に陽キャだ。 間違いなく陽キャだ。 余り関わらないでおこう。 ふむ、こいつは陰キャだな。 いかにも話しかけやすそうだ。 もし合格して会っていたら話しかけるとするか。 やはりここの世界も陰キャ陽キャの区別が見た目だけでつくのだな。 全く、嫌なものだ。大っ嫌い陽キャ。もう大っ嫌い。 それにしてもジロジロと視線を感じるな。 やはり俺が魔王だからか? 皆俺が魔王という認識があるのだな。 「みて、あの落ちこぼれ魔王様よ。」 「全く、この学校によくやって来れるよな。」 「ほんとだよ、どうせ魔法もろくに使えないだろうに。同情するぜ。」 明らかに悪い言葉があちらこちらから聞こえる。 相手は聞こえないと思っているようだが、耳広魔法を使えば簡単に周りの声が聞こえるので意味が無い。 故に俺は大ダメージを食らっていた。 ごめんなさい、まじでごめん。許してください。生きててごめんほんとに。 しかしそう思っていながら外面では真顔で表情をなにひとつ動かしていない。 はぁ、頑張って来世の自分はそれっぽい性格にしようとしてたのに。 こんなん言われたら元の俺出てくるよぉ… 無理、ほんっとー無理。 そのまま試験会場へ到着した。第一次試験は魔力測定だ。 丸い水晶玉の様なものに触れるだけで数字と化して魔力が測れる優れもの魔法具だ。 試験番号順に整列して並び、その時をゆらりと待つ。 「78、86、82 …」 なるほど、平均は大体そんなものなのか。 果たして落ちこぼれと言われてきた魔王がどのくらいの数値なのだろうな。 「1万5406!?」 俺の順番が来る数名前にその言葉を試験監督やら誰かやらが口にした途端、場が大きくざわめいた。 確かに先程の平均の魔力の数値と比べたら明らかに桁違いだ。 一体どんなやつなのやら。 先程の数値の測定を終えた受験者は、すたすたとこの会場を後にする。 容姿はスラリとした体型でスタイルは抜群だった。 まるで美容院に行きたての様なサラサラな艶のある白色の髪で、髪は結わずへそくらいまでのロングヘアーだった。 目は綺麗な海の様な青色をしている。 正直めっちゃ好み。大好きだ。 これは魔王の特権を使わない訳にはいかぬ。 陰キャが皆の前で目立つなど恥じらいしかないが、こればかりは今話さないと損な気がするからな。 俺は会場を後にする彼女を引き止めた。 「貴様、名前はなんと言う。」 「ノズラード・カクルトよ。貴方が魔王アレド様かしら。」 「いかにも。俺はこの世界の魔王、アレド・アザルゴドである。先程の魔力、中々の実力ではないか。今この目で魔力を見たが凄腕なのは確かだ。」 「あら、ありがと。 …貴方の魔王家系、よく落ちこぼれ扱いされてるみたいだけど、今回の魔王様は何か違う気がするのよね。」 「ほう、何故そう考える。」 「まあ、勘というか、予感というか。私はここの会場に入って貴方と同じ空間にいる時に、魔王様は試験に受かる可能性があるかもって思ったのよ。」 「なるほど、良い目をしている。観察力が中々のものだ。だが一点だけ明らかに違うものがある。「合格可能性があるかもしれない」ではなく「必ず受かる」だ。そこまで甘く見られては困る。」 「俺を誰だと思っている。魔王、アレド・アザルゴドだ。魔王が学校に合格しなくてどうする。」 ノズラードは一瞬少し驚いた顔をして、フッとゆるい笑顔を見せた。 「強き魔王様が帰ってきたかもしれないわね。次に会う時はクラスメイトの時ね。それじゃ。」 そう言って彼女は去っていった。 いや、可愛かったしいい人だった。 神オブザ神!転生して良かった。友達1人出来たぞ、俺でも。 とりあえずは一安心、だな。 「次、アレド・アザルゴド様。」 よし、少し魔王らしくしてみようではないか。 俺は魔力測定用の水晶玉の方に歩み寄って行った。

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第4話 来世、試験の時

第3話 来世、成長の時

あれから約1ヶ月が経過した。 俺は魔法について書かれている本、つまり「魔法書」を毎日読み続け、今では簡単に難なく使いこなせるようになった。 難しかったかと言われると、簡単だった。 めっちゃ簡単すぎてびびった。 なぜならわざわざ詠唱せずとも無詠唱でイメージしただけで簡単に魔法が出てくる。 両親にそうゆうものなのかと聞いたが、今までで無詠唱で魔法を使えた前例はないらしい。 つまり、俺が初めての無詠唱人物という訳だ。 はっ、確かに最強を求めたがここまでとは。 笑えない冗談だな、少々祈りすぎたようだ。 だがこれはこれで面白い。俺が大好きな魔法がいとも簡単に出るのだからな。 楽しい。楽しすぎる。俺、最強。 「…くふふ、くははは!!」 思わず腰に手を当てて笑った。 「だ、大丈夫かしら…急に笑い出して。」 「魔王の笑い方らしくて良いじゃないか、俺は好きだがな。」 おいそこ、丸聞こえだぞ。 両親が俺を見世物のようにジロジロと見てくる。 確かに少し恥ずかしい気もするが…。 なんせ元の世界ではこうゆうのを「厨二病」というからな。 でもこの世界に来た以上、もう魔法やら魔王やらなんやらですでにもう厨二病の世界じゃないか。 しょうがない、うむ、しょうがないのだ。 ……そういえば、俺が異世界転生漫画を読んでた時は幼少期のやつが急に大きくなるという魔法もあったものだ。 俺はまだ生後1ヶ月、赤子中の赤子だ。 もしかしたらこの世界にも成長が出来る魔法があるのやもしれぬ。 どれ、調べてみるとするか。 なんせこの格好じゃ動きずらいのでな。 俺は数千もの魔法書をあさり出した。 「これも違う、これも…。ふむ、やはりないのか、成長魔法が。あったら楽なのだがな。残念なことよ。………ん?」 色んな魔法書を次々に出していたら、ある一枚の紙が静かにひらひらと地に落ちた。 「なんだこれは。1枚の紙切れか。」 ひょいと落ちた紙切れを拾う。 どうやらここに記載された日の年月が書かれているみたいだ。 ふむ、いったいいつ記載された紙切れなのやら。かなり古そうだがな。 「こ、これは…!書かれている年代が約千年前、千年前だと!?」 しかも、あくまで伝説として記載されている。 こんなものが魔王城、通称エルアシャトにあるとは…いや、エルアシャトだからあるのか? とりあえず読んでみるか…。 数時間後 …ここには俺がこの数千の魔法書を読んでいても書いてなかったものが沢山記載されているな。 しかも俺が求めていた成長魔法、「カロンジ」もあった。 なるほど、この成長魔法(カロンジ)には魔法を発動する時に条件が必要なのか。 まず1つ、その体が5歳以下であること。 これは難なくクリアだな、なんせまだ1ヶ月しか経っておらぬ。 そして2つ、魔族であること。 これも当たり前の事だな、この魔王城エルアシャトに生まれた時点で魔族だ。 そして最後、転生者であること。 …転生者、か。 確かに俺は転生したが、それはここの世界で転生したのではなく、別の世界から転生したのだ。 それは果たして条件のうちに入っているのか? さて、どうなるのだろうな。 試してみるとしよう。 年齢は…そうだな、1番育ち盛りが良さそうな16歳くらいでいこう。 きっとイケメンで最高な顔立ちになるだろうな。 やばい、楽しみすぎてついにやける。 「…コホン。じゃあやるとするか。」 俺は腕を伸ばし魔法を発動した。 「成長魔法(カロンジ)」 その言葉を発した瞬間、俺の体は電球のように光始め、腕や足、体全体がみるみる伸びていった。 「…成功…か?」 恐る恐る鏡の前に立ってみる。 視界に移るのは、鏡の前で目をまん丸にさせている16歳ほどの顔立ちのよい、つまり死ぬほどイケメンな男性だった。 「…よし!成功だ!」 やばい…イケメンすぎる…この手で抱きしめてあげたい! 自分のアクスタが作りたい!! 俺、かっこいい!!!!! 自分で自分に好意を寄せていたら、両親がドアを開けて入ってきた。 「もー、アレドちゃん、何時間籠っているつもりなのー!魔法が好きだからってそんなに籠ってちゃ……。」 俺を見るなり母は言葉を失い、呆然と突っ立っていた。 「アレド…アレドなのか?」 その次に父が俺をすごい目で見ながら名前を言う。 そんなに変な動物でも見たかのような目で見なくても良いだろ。 それともかっこ良すぎて見とれているのか? 「なんだ、そんなに驚いた顔をして。」 「いや、急に成長したら誰でも驚くぞ。こんな事がありえるのか…?」 まあそれもそうか。 まだ1ヶ月しか経ってない自分の子供が16歳の姿に成長しているのだ。 驚くのも無理はない。 「…いや、そもそも赤子が喋る時点でおかしいからな。今頃驚くのもって感じだし。流石、魔王の息子だな。」 父はすぐ納得し始めた。 案外受け入れが早くて助かるな。 「そうよね、アレドちゃんはきっと天才なのよ。こんなにかっこいいもの。」 それに続き母ものほほんとした口調で受け入れた。 しかし、普通に考えたら明らかにおかしいぞ。 それを難なく受け入れるとは…。 この両親、もしやバカなのでは…? すっと冷たい眼差しで両親を見つめていたら、母がはっとした顔で俺の方を見た。 「アレドちゃん、学校行きましょう!魔族学校よ!!アレドちゃんはそこに行きたくてこの姿になったのね!」 何を言い出すかと思ったら学校だと? 学校はもううんざりなのだがな。 なんせ陰キャと陽キャがあるではないか。 その時点で終わりなのだ。嫌だ、あの生活はもう嫌だ。本当に無理。無理だって。 「そうだ!アレド、学校に行きなさい。その為なら俺は何でもするぞ。」 なんか物凄い誤解をしているな。 俺はただイケメンにしたくて…じゃなく、動きやすくしたかっただけなのだが。 …まあ、ここまで応援してきてくれた両親だ。 期待に応えてやろうではないか。 「分かった、その魔族学校とやらに行ってやろうではないか。」 という訳で俺は生まれて約1ヶ月で魔族学校に行くことになった。

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第3話 来世、成長の時

第2話 来世、理解の時

「転生したぁぁぁぁぁ!?!?!?」 「しゃっべったぁぁぁ!?!?!?」 あ、これ喋れるの知らなかったんだけど。 てか赤子が喋れるか普通。 「な、なんで喋れるのかしら…。」 若い美人、いわゆるここの世界でいう私の母は首を傾げ私をおかしそうな目で見た。 それに私は罪悪感を覚えた。 「…なんか喋っちゃってすみません。」 「いや、いいんだ、きっとお前が天才故のことだろう。」 続けてここの世界でいう父が会話を繋げる。 あ、ふーん、こんなに受け入れてくれるもんなのね。 「あの…ここの世界がどこで、どうゆうものなのか教えて頂きたいのですが…。」 私がこう聞くのも無理はない。 なんせ明らかに私が元いた地球、日本ではないからだ。 その理由は一目瞭然。 まず両親が明らかに日本ではありえない服装をしているからだ。 母は何かのパーティかと思わせるほどの豪華なピンクのドレス。それもとてもお高そうな。 父は黒い制服のような、騎士のような…とりあえず私が大好きな異世界漫画で着ていそうな服を着ている。 そしてうってつけは髪と目の色だ。 母はうる艶なベージュの髪、目は燃え盛るような色をした赤。 父はサラッとした黒色の髪、目は母ほどの赤ではないが、薄いパステルカラーのような赤色だった。 明らかに私の元いた世界ではありえない事だ。 もしかしたら、ここの世界は…。 可能性があるかもと期待を膨らます。 父はゆっくりと息を吸い、息を吐いて言葉を口にする。 「ここの世界は、魔法を使う世界なんだ。そして私はここの世界の魔王、ドルウィス・アザルゴドだ。」 「そして私が、魔王の妻、サフィア・アザルゴドよ。」 あ、マジすか。やばいじゃん、ガチで異世界転生しちゃった。 しかも魔王の子供だよ。こんなことあっていいんだな〜。 私はつい母の腕から飛び出して踊り出しそうになった。 平和を作りたかったから、その為に権力のある魔王になりたかったから。 これからこの世界について沢山学んでいこう。魔法も全て使いこなしてやる。それも短時間で。そしてこの世界を平和で満たそう。楽しく、誰もが不自由ない世の中を作ろう。 「所で聞きたいんですけど、わた…」 私って言いかけたけど、この体とか声からして男よね…。 コホンと咳払いし、言い直す。 「俺の名前ってなんですか?」 母はその瞬間嬉しそうににっこりと微笑んだ。その顔はまるで女神のようだった。 「あなたの名前は」 「アレド・アザルゴド。」 「……アレド・アザルゴド……」 これが、私の来世の名前か。 …いや今世の俺の名前だ。 これからこの世界で生きてく相応しい名だな。 フッと微笑み俺を覗き込む2人に視線を向ける。 「良い名だ。これからよろしく頼む。」 俺は今日から、新たなる魔王。 アレド・アザルゴドだ

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第2話 来世、理解の時

第1話 来世、転生の時

───俺はこんな世界が欲しかった─── 「優子!どうしてあなたって子はこんな問題も解けないの!?」 顔に強い衝撃が走り、頬が熱く、痛くなっていくのが分かった。 あー、やばい、ちょー痛い、力加減くらいしてよね。涙出てきたじゃん。 私は頭が悪い。学年でも下から2番、3番の成績だ。 それとは真逆で有名な高校の特待生だった母は私の勉強の出来なさに怒り、手を出さずにはいられなかった。住良木家ではこれが「日常」だった。 ちょっとお父さん、見てないで止めてよそこで突っ立ってなにやってんねん。 銅像か!外国でよく見る人が止まっててお金くださいの銅像かよ!金入れたろかごら。 父は気の強い母に抵抗できず、私が暴力を受けているのを知っていながら見て見ぬふりをしていた。 父と母同士も仲はあまり良くなく、会話をしていることは滅多にない。すると言っても仕事の話やお金の話など、生活面での会話だ。 私の頭が良かったらこんな風にはならなかったのかな。もしかしたら家族みんなが笑顔で過ごせる毎日があったかもしれない。 そんなありえない事を考えていた。 私は今高校生だ。 陽キャか陰キャかと聞かれると、陰キャだ。バリバリの陰キャだ。陽キャがクソ怖い。 すれ違うだけで寿命が10年縮まった気分になる。こんな身分制度なくなっちまえと毎日思う。 部活は一応やってるが休部中だ。自分の才能の無さでストレスを感じ、気づいたら適応障害という心の障害になってた。 私って才能どれだけないんだよ。1つでもあればいいのにさ、神様けちすぎるよ。 「今日のアニメ見た!?しんどくない?声優といい、作画といい今回神回だよね。」 「見た見た〜、心奪われますよあれはー。」 私が話すと相手が相槌を打ってきた。 一応友達は極わずかだがいる。 もちろん陰キャなのでアニメや漫画話が鉄板だ。 休み時間になると大体2次元の会話になっていく。 私も2次元は大好きだ。 特に異世界最強系漫画が大好物だ。 それも魔王系。 魔王はその世界にして最強の存在であり、みんなから崇められる存在なのだ。 魔王だから支配して世界征服して悪巧みするもんじゃね?っていう反応が普通だろう。 だが甘い、甘すぎる。勝手に妄想するな馬鹿めが。なめんなよ、くそイケメン魔王を。 今の異世界最強系漫画の魔王系バージョンはそんな世界残酷に陥れようとしないんだわこれが。 平和を作るっていうのが今の魔王系なのよ。 平和のために最強の力を使う。こんなにいい話この世にあっていいのかよほんとに。誰だよこんなの作り出したやつ。愛してる。 私は密かに魔王に憧れていた。 差別のない平和を作って皆が笑顔になっていくその世界に憧れていた。 私がいるこの世界ではありえないこと。だから来世ではこんな最強魔王に転生してみたい。てかしてみせるとまで思っている程だ。 それほど今世が辛いのだろうと我ながら思う。 それもそうだ。 家では親に暴力を振られ、学校では才能がないからと部活もろくにやらず2次元をでかい声で語り陽キャにすごい目で見られるのだから。 別にいいじゃんね、2次元語ってて何が悪いよ。 「はーぁ、異世界最強になって平和を作り上げたい…、魔王になりたい。」 気づいたら毎日の口癖になった。 朝、いつもとなんの変わりもない見慣れた通学路をぼっちで歩いていた。 あ、ぼっちの方が過ごしやすいからそこ気にしてないんで。 信号待ちの間スマホをポケットから取り出して触り、漫画アプリでいつもの異世界漫画を読んだ。 「は?こんなやついてたまるかよ、カッコよすぎガチ無理なんで強いのに顔もいいねんふざけんなよ好き結婚しよう。」 相変わらず変な事を言いながら読んでいたら、信号機の方からピヨピヨと可愛い子鳥のさえずりのような音が聞こえてきた。 信号が青になったら私の住んでいる所では音がなる。 それと同時に読み終わらぬ漫画を読みながら横断歩道を渡った。 ふと、後ろから大声を出す中年のおじさんがいた。 「危ない!轢かれるぞ!!」 え、めっちゃ大声出すじゃん、朝っぱらから元気だねおじさん、私そうゆう人嫌いじゃないで。 ん?てかさ、それ私に言ってない? 轢かれる?私が?まさかぁ、車なんてどこにも…。 と横を見た瞬間、車が目の前にいた。 え、マジか、私死ぬじゃん、100パー回避出来やんやん。 おじさん、叫ぶのもう少し早めにしようぜ。 これは無理ゲーよ。 私魔王みたく時間停止魔法とか使えないわよ。あー、終わった。 普通の人ならここで絶望するだろう。 しかし、私は絶望よりも嬉しさが勝っていた。 これで転生出来る、もうこんな辛い人生から解放される。最強イケメン魔王になってやる。そして、平和な世の中を作ってみせ……。 そこで私の視界と意識がシャットダウンされた。 「……の…あかち…よ」 え、何?ちょっと眠いからやめてよ、もう少し寝させて。 「あ…、か……い…り…こ……だ」 あれ、てか私死んだんじゃないの? なんで、生きてたの? 異世界転生は? てか何この状況、私誰かに抱えられてない?私重いのによく持てるな。 むっきむきじゃんぜったいこの人。 てかさすがにこれは2度寝無理だわ、起きよ。 ゆっくりと私は目を空けた。 そしたら目の前に美人な顔のお姉さんがいた。 うっわまじでクソ美人じゃん私こんな人に抱えられてたの?? お姉さん見かけによらず力あるのね。てかこんな美人いていいんか。 やばい生きてて良かった、私。 「あ!目が…!あなた、この子目を開けたわ!!」 当たり前じゃん、目開けてなにが悪いのさ。 「本当だ!綺麗な赤い目をしているなぁ、きっとお前に似たんだよ。」 あ、男の人もいるんだ、あなたって言ってたから旦那さんかな。 いやー、旦那さんもイケメンすねー、サイン欲しいくらいだわ。 てか目が赤色? それって病院沙汰じゃない? 大丈夫そ?私。 てかお前に似たんだよって何?まるであんた達の子供みたいな言い方するのね。 「そんな事ないわよ、イケメンなとこはあなたそっくり。」 なに、私女ですが? 漫画イケメン大好きな完全オタクの女ですが??そんなに男に見えるかね。 てか自分の子供発言さっきからやめてもろて。さすがに美男美女の子供は言い過ぎやて。 「これから愛情込めて育てような。」 「ええ、私達の、大切な大切な子供ですもの」 何言ってんだこいつら、ついに自分たちの子供っていいやがったぜ。 まあこんな美男美女の子供だったら喜んでなりますけれども。 ……てかさっきからやけに動きずらいな。 事故った後だから?でもそれにしては痛くないな。なんでやし。こわ。 ……んー? ふと自分の手を見てみる。 その瞬間私は目を大きく見開いた。 手、ちっちゃ!!何事!? まるで私が赤ちゃんみたいな……赤ちゃん?? あれ、さっきこの夫婦、私のこと自分達の子供って…まさか、私…もしかして… 「転生したぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」 「しゃっべったぁぁぁぁ!?!?!?」 私が大声で叫んだ瞬間、夫婦は声を揃えて同じく叫んだ。 これが私の異世界転生への第1歩である。

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  第1話 来世、転生の時