向島冬彦

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向島冬彦

  

島の草原

島の真ん中の草原はバッタの棲み家だった。 いつからか、チムニーはある事に気が付いていた。 それをなんと言うのかは分からなかったが、 まるで与えられた使命であるかのように、 チムニーにずっと、重く、のしかかっていたのだった。 次第に、チムニーはそれを抑えられなくなっていた。 その衝動は遂に爆発した。 チムニーは走り、跳んだ。 仲間たちの奇妙な眼差しも気にせず、 日が沈んでも関係なしさ、必死になって跳びはねた。 明け方、チムニーは消えた。 他のバッタは辺りを探したが、姿は見えない。 どうやら随分遠くへ行ってしまったようだ。 色んな噂が飛び交ったが、草のざわめきがそれを消していった。 ひと月後、チムニーは突然帰ってきた。 ずっと跳んでいたらしい。息も絶え絶えだ。 彼は言った。 『昔、追いかけっこで遠くへ行って、ひどく怒られただろう。 だが、あれほど遠くへ行ったって、 この高い草を超えることはできなかったんだ。 しかしついさっき、僕は草のない青空を見てきたんだ。 鳥なんかよりも恐ろしい動物も、 広大な雨の雫の流れも、 草なんかよりいくつも高い植物も。 今度みんなで行こうじゃないか、 きっと面白いだろうよ。』 そう言い終わると、彼は静かに目を閉じた。 草に隠れた月に バッタ達の好奇心が照らされている。

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