島の海と蜜柑

 ある日、島の横を、一隻の船が通りすぎて行った。 スクリューはかたかた廻り、波を押し分け進んで行く。 海は、スクリューにかき混ぜられたせいで、 青い海面に白い泡粒をぷかぷか漂わせている。 その泡粒は船の尾から、足跡のように伸びていた。 時折吹く風が島の林を揺らすだけで、 そこでは船と波以外、動くものはなかった。 島の崖のふちには蜜柑の木がひとつだけ生えている。
後川
後川
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