影白/Leiren Storathijs
463 件の小説収納好きが行く異世界保存の旅.7
俺はグレイトウルフの親に殺されかけた所で、マリアンと名乗る女性に間一髪助けられた。どうして襲われていたのか、どうやって装備もなくここまで来たのか、そして俺が持つ箱はなんなのかを根掘り葉掘り聞かれ、森の外にあるというマリアンの家まで護衛してもらうことになった。 森を出るまでの道中は、それはもう激しく。マリアンから放たれる魔法はどれも派手で、次々と襲いかかって来る魔物は、俺がいちいちびっくりする暇もなく、オーバーキルされていった。 そうして本当に難なくマリアンの家につけば、それは木造の小さなボロ小屋で、恐らくここに住んでいる訳でないんだろうと察する。そして家の中にある机と、二つの椅子に向かい合って座る。 「いやぁ、ほんと私のアーティファクトさまさまだね。それで……。君のアーティファクトはどんなものなのか教えてくれる?」 俺はアクシアを机の上に置いて簡単な説明を始める。 「えーっと。コイツはアクシアって名前で、とにかく大きさ関係なくなんでも入るんですよ。で、どうやらコイツは目標があってですね、世界にある凡ゆる全物質を保存する。ことだそうです」 「全物質!? へぇ〜アーティファクトだから制限のない容量があるのは何となく分かるけど、そりゃまた大層な夢だねぇ〜」 「あぁ、実は夢じゃなくて絶対完遂しなくちゃいけないもので、自分もそれを目指してます。特に報酬があるとかは聞いてないけど、まぁ、やらなくちゃいけないんですよ」 「ふーん……。まぁそこについてはあまり詮索はしないよ。ありがとう! そういえばそれ、さっき喋ってたように聞こえたけど、私の気のせいかな?」 「喋りますよ。コイツ。あー、アクシア、なんか喋って」 《アクシアに雑談機能は搭載されていません。また追加されることもありません》 「だ、そうです。あ、質問くらいなら聞いたら答えてくれると思いますよ」 マリアンはアクシアの声を聞いて身を乗り出し、感動した表情でアクシアを見つめる。 「発声機能のあるアーティファクトって初めてみたわ! 質問かぁ……。ねぇ、アクシアってさ実際のところアーティファクトなの?」 《アクシアは厳密にはアーティファクトではありません。しかし構造や素材をこの世界に合わせるとアーティファクト級の道具であることは確かでしょう。さらに付け加えるなら、この世界でいうエーテルファクト級にもなるでしょう》 俺はアクシアから聞きなれないワードを聞いた瞬間、マリアンはガタッと椅子から立ち上がり、わなわなと震え出す。そんなにやばい物なのだろうか。エーテルファクトとは。 「エ、エ、エーテルファクト!? それは最早存在するかも怪しいと言われる物なんだよ!? あーごめんね。エーテルファクトっていうのは、アーティファクトよりさらに昔に作られた物。神の時代に作られた魔道具って言われてるの。一応劣化版のレプリカはいくつか存在はするんだけど……本物を生きてる内に見られるなんて……!」 はえぇ……。神の時代に作られたか。まぁそう言われると納得しか出来ない部分はあるな。なんせ世界を保存するとか言ってるし。それってつまり神の所業だよな。そこでマリアンは答えが分かりきっているようなことを持ちかけてきた。 「シマイ君……無理だと分かっても頼む。私の全財産をあげるからこれを……」 「無理です」 マリアンが言い終える前に即答した。マリアンがどれだけの金を持っているかはちょっとだけ気になるけど、これを万が一でも人にあげた場合、俺はこの世界から抜けられなくなる。それは命にかえても無理だ。 「だよねえ〜……! あー全てを納得したよ。君は弱そうに見えて実は凄く強いんだろう? 私の護衛なんて要らないくらいに。グレイトウルフに追い詰められていた時もそうだ。きっと追い詰められることになにか理由があったに違いない。そうじゃないと君がこの魔道具を持っていることに説明がつかないよ」 全問不正解。俺は弱いし、死ぬ所だったし、マジで追い詰められていたし、マリアンの助けがなかったら森の脱出なんて数ヶ月経ってただろうし。今俺が此処で生きているのはマリアンのおかげなんだよなぁ……。まぁ、一つだけ言うならば、俺は実際には死ぬことはない。 ただマリアンは気持ちよく納得してくれているのでこれをへし折ることはしない。でも事実も混ぜよう。 「そんなことありません! 俺が生きているのはマリアンさんのおかげですよ! 確かに護衛は過剰だったかもしれないけど、助かったことは事実です」 「あはは〜。そんなに褒められちゃあ……素直に喜んじゃうよ?」 さて、話はこれで終えたが、ここでマリアンを逃す訳にはいかない。このまま護衛は続けてもらうために、色々と理由を作ろう。 「で、これからの話なんですが……。出来たら護衛続けてくれなあかなーと思ってまして」 そう話を続けようとするとマリアンは真面目な表情になり、俺に手を伸ばして会話を静止させる。 「おっと……その続きは料金が発生するよ? これでも私は冒険者やっていてね。さっきは弱そうな君を助けるために善意でやったことだが、君が弱くないと知れば話は変わる。ここからは仕事の話だよ」 冒険者、護衛、仕事。なるほど。厄介なことになったな。生憎俺は金なんて持ってない。家に帰れば多分財布が置いてあると思うけど、この異世界じゃ使えないだろう。売ることは出来そうだけど。 それでもまた家に戻るには、あの森を通り抜ける必要がある。それこそまたマリアンの護衛が必要になるから、その案は無理だ。だからお金以外の方法で交渉に持ち込もう。 「なるほど……そうですか。うーん。それならお金以外の報酬でなんとか話できませんか?」 「おや? それはつまり君はお金を持ってないということかな? まぁ、それは条件次第かな。代わりに何をくれるんだい?」 「さっき倒したグレイトウルフの山分けとか……?」 「ごめん。それは話にならない。私にとってはあの程度は楽勝だからさ。君にとっては大物なんだろうけど」 アレを楽勝!? マリアンってマジでどんだけ強いんだ……? それが駄目なら今のところ交渉材料がない。マリアンに決めてもらうしかない。 「じゃあ、逆にマリアンさんが僕に要求するならどうします?」 「そうだねえ……。もしアクシアを売ってくれるんなら一生護衛についても良いとは思うだけど、それは無理だから……。そのアクシアの使用権を共有ってのはどうだい? わかりやすくいえば研究したいんだけど、それには私もそれを使わざるを得ないだろう?」 使用権の共有……! アクシアの譲渡・売却の話がデカすぎてその選択肢は思い浮かばなかった。でもそんなことできるのだろうか?
収納好きが行く異世界保存の旅.6
「ガアアアアッ!」 目の前で威嚇をしているのは高さ3mはある狼の親。それは暗闇で先が見えない茂みの中に向かっており、俺はそこにいるであろう人に助けられた。現状、まだ命は助かっていないが、足がすくんで全く動けそうに無い。 「ゲイルツェルライザーッ!」 そして茂みの中からまた声がすれば、直後嵐が吹き荒れるような轟音と共に、巨大な風の刃が現れ、チェーンソーのように頭蓋骨をゆっくり裂いてから、柔らかい肉は一瞬で。親狼を頭から股にかけて簡単に真っ二つにしてしまった。その間、狼の断末魔は無く。その断面が見えるように身体半分が地面に倒れる。 「ひいいいいぃ!? うぶっ……! おええええぇ!」 我慢しきれなかった。あまりのグロさに盛大に吐いてしまった。スライムを倒した時は体液の形が保てず溶けるだけだったが、良く考えれば分かることだ。動物を殺せば当然血が出てくることを。だがたとえ分かっていたことでも耐えられないものはあるだろう。 今は非常に気分が悪く今すぐにも家に帰りたいと思うが、まだ恐怖で体は動かない。そこで俺に一つの手が差し伸べられる。 「大丈夫?」 嘔吐した苦しさがありながらもゆっくりと視線をあげれば、そこには女性が立っていた。紫色の鮮やかな刺繍が施されたローブと、腰まで伸びる茶色のロングストレートに、栗色の瞳。歳は恐らく20代後半といった所か。普通に可愛いと言える顔立ちをしていた。 一瞬、誰もが夢見る二次元に入ったのか疑うほどの綺麗さに見惚れそうになるが、正直にその手を取って立ち上がる。 「あ、あぁ……なんとか。助けてくれてありがとうございます。危うく死ぬところでした……」 女性は一瞬驚いた表情をするとすぐに大きくため息を吐く。 「危うく死ぬ所でした。じゃないわよ……。こんな真夜中に魔物の様子が妙だなと思って来てみたら……。狼の縄張りに追い込まれている青年がいるだなんて。それにこの森は凶暴なモンスターばかりうじゃうじゃいる所なのよ? まともな装備も無しに、こんな深い場所まで、しかも私が来るまで生き延びているだなんて奇跡としか言いようがないわ」 「あ、あははは……そ、そうなんですねぇ……」 実はそんな森の奥深くに俺の家が鎮座しているとか、追い込まれたのでは無くその奥から来たなんて到底言えるはずがない。助けてくれたのはありがたいが、話が確実にややこしくなるのは避けよう。 「で? どうしてこんな森に来たの?」 「あ〜……ちょっと探し物がありまして……」 「探し物? それなら私が一時的に護衛してあげるけど?」 不味い。考えろ。今の状況に相応しい最適な言い訳を! ……。いや、この人の言い分からして俺はめちゃくちゃ弱い人に見られているから変なこと言ってもワンチャン気にしないでくれるかもしれない。うん。正直に言おう。 「あー、その、違うんです。実はこの奥に俺の家がありまして。なんとかこの森から脱出出来ないかと思っていた所なんです」 「はぁ??? ちょっと、言ってる意味が分からないんだけど。貴方の家がこの奥にあるのは誰かの別荘ってことかしら? ただ脱出したいとは……。貴方はその家に帰るまでにこの森を通って来たのよね? それなら脱出するのも簡単じゃないの? いや、転移魔法の可能性もあるけど……。貴方が使えそうな魔導士にも見えないし、転移魔法を直ぐに使える魔道具なんて存在しないし……ん??」 あー! やっぱりこうなったか! 簡単にまとめれば女性が考えているのは、俺の弱さと家の位置、そして移動方法の辻褄が合わないということだ。だがもう良いや。このまま無理矢理理解してもらう他に無い。 俺は女性の横を通り過ぎて狼の死骸前に来る。そして箱に保存を試みる。 《物質の質量が保存可能な大きさの既定値を超えています。物質を圧縮して保存します。この際はアクシアの容量を2以上使うのでご注意ください。解析完了。これはグレイトウルフ(未分解)。解析ポイントはありません。獲得するには分解してください》 すげぇ……。こんなことも出来たのか……。アクシアの機能に感動するのは良いが、背後から鼻息荒く女性が近づいて来た。 「な、な、なにそれえええぇ! アーティファクトよね!? それ! 一体どこで手に入れたの? ねぇ!?」 「えっ!? あー、えーと……」 「はっ!? あー急にごめんなさい。あまりにも珍しいアーティファクトだから。つい興奮してしまったわ……。私もアーティファクトは一応持ってるけど……単純に魔力を増幅してくれるだけなのよねぇ……。まぁ、そのおかげで今みたいな魔法が撃てるんだけども」 アーティファクトってなに!? だれかそこから説明してくれ! いや、この人の反応からしてありふれた物では無いのかもしれない。 「あーてぃふぁ……?」 「え、そんな物持っておいてアーティファクトを知らないの? まぁ、あくまでもそう呼ばれるってだけだからね。アーティファクトっていうのは……。あーいや、そういやここモンスターの縄張り付近だった。とりあえず私の家まで行きましょう。そこなら安全だから」 初対面の綺麗な女の人の家に招待される時が来るとはなんて幸運。と一瞬思ったけど状況的に考えて妥当か。なんならここから直ぐそこにある俺の家でも良いが、恐らくいや絶対家の形は、この世界の常識からかけ離れているはすだ。今回は珍しいアーティファクトという言葉のおかげでなんとかなったが、不用意に自分の事を明かすのはやめておこう。 「分かりました。えーっと、名前は……?」 「あぁ、私はマリアン。よろしくね」 「俺は……シマイです。マリアンさんの家はどこに?」 「私の家はこの森から少し離れた場所にある小屋よ。大丈夫。そこまで護衛してあげるから」 この森から出られるのか……! 家から一気に離れることになるけど、いつか帰る方法は見つかるだろう。この箱、アクシアの機能もまだどこまである分からないからな……。
収納好きが行く異世界保存の旅.5
周辺探知スキルに引っかかり、俺が絶望した景色とは、どう考えても俺の初期地点。家はモンスターの縄張りのど真ん中だということに気付いたこと。半径50mに探知範囲が広がって、さらにより広い範囲を探る為に、家を中心に50mの距離からぐるりと回ったとき、なんと東西南北合わせて8方向に計32体のモンスターが囲んでいた。もしかしたらもっといるかも知れない。 つまり隠れて安全にこの包囲網抜ける道はなく、最低でも3体のモンスターを同時に相手しなくちゃならない。ちょっとだけ、ちょっとだけ様子を見よう。と、俺は木の影に隠れながらモンスターのいる場所を覗いてみる。そこには……狼がいた。 「あーこれ終わったわ……」 狼は基本的に群れで行動する習性がある。つまりだ。一匹倒したら確実に仲間を呼ばれると言うこと。 どうしようかと悩みつつ、一旦家に帰って考えようと思った矢先。 パキッと俺の足元で何かが折れた音が響く。その音に狼は鋭くこちらに顔を向ける。俺は死を察した。ここから背中を向けて逃げるのは得策ではない。なら殺るしかねぇかと。 虚映の長剣を取り出し、木の影から狼が向かってくると同時に思いっきり剣を振るう。 「おりゃぁ! ……は!?」 この虚映シリーズは、対象を斬る直前に実体化する物で、それまでは何を近づけても通り抜けてしまう代物。なのに、狼はその一瞬と俺の不意打ちを完全に捉えて、歯と顎で俺の剣を捕まえてしまう。 「おいおい嘘だろぉ……! 離せぇ……! っはぁ!?」 狼の顎から剣を引っこ抜こうと苦戦するなか、他の狼がこちらに突進してきていた。今度こそ死ぬ! と思った時にはもう遅かった。飛びついてきた狼は俺の首筋を噛みちぎるつもりで齧り付いてきた。 「あぎっ……!? え……?」 それはほんの一瞬の痛みと、視界から分かる違和感だった。 《シミュレーション続行不可エラーを検知。一時的に中断します》 その直後、砂嵐のノイズと、テレビの画面を目の前で見ているかのような。視界が薄緑色に埋まる。景色が見えない訳では無いが、明らかに非現実を感じる。 ふと足元を見れば、剣はすでに狼から抜けており、狼はまるで俺が忽然と姿を消したように、辺りを不思議そうに探し回っていた。俺は目の前にいるのに、まるで透明人間になった気分だ。 《貴方は、一時的にシミュレーションの中断状態に入りました。解除まで6時間かかります。これを仮死状態と呼び、仮死状態中も仮にシミュレーションの続行は可能ですが、如何なる獲得物は10分の1に減り、様々なペナルティが課せられます》 「10分の1!? つまり……スライムはもう狩れないのは分かったが、今石や雑草を必死に集めても、1個に付き0.004apしか集まらないということか。めちゃくちゃ重すぎるペナルティだけど……。生きてるだけマシかぁ……」 それに解除まで6時間って。もう家に帰って寝なさいって言ってるようなもんじゃないか。じゃあその通りにしよう。あとずっと考えていたことを決めようか。 それはこの箱と呼んでいる箱の名前だ。コイツ喋るし、聞いたこと教えてくれるし、いつまでも箱と呼ぶのはどうかと思う。だから俺は色々と考えた。コイツの名前は……。 「アクシアだ!」 《“箱"の名称をアクシアに変更しました》 よし。寝るか。 そうして目覚まし時計を設定してきっちり6時間後。時刻は午後11時。外はすっかり夜のはずだが、森が深すぎて暗いのかさえも分からない。気がつけば視界はいつもの色に戻り、仮死状態が終了していることが分かった。 じゃあ狼にリベンジだと言いたいところだが、不意打ちさえも効かなかったことを考えれば、今もう一度挑んでもまた死ぬだけだ。だからAPを貯めて、攻撃スキルを獲得しようと思う。もうスライム狩りはできない。ならば石、雑草、枝を集めまくるのだ。 「うおおおおおぉぉぉぉ!」 時刻は深夜2時。APは12溜まった。 「3時間ぶっ通しで……ゴミ拾い……ぜーはーっぜーはーっ……! スライム狩りよりなんで疲れが酷いんだ……アクシア、攻撃のショックウェーブブラストを獲得……だ!」 《必要AP8。ショックウェーブブラストを獲得しました。対象に向けて“アクシア"を投擲すれば、空中で発動。周囲の物体を吹き飛ばし、一時的なショック状態を付与します》 「すげぇじゃん……。なら早速実践だぁ!」 俺はまた狼がたむろしている場所に近づけば、狼は5匹。既にあくびをしながら固まっていた。余裕こきやがって……! 「行けえ! アクシアアアア!」 俺は思いっきり狼の集まりの真ん中目掛けてアクシアをぶん投げる。回転しながら投げられたアクシアは空中で静止し、2秒ちょっとのディレイをしてから衝撃波を周囲に発射。狼は何事かと四方に吹き飛び、地面に倒れれば痙攣しながら動けないでいた。 「今だああああ!!」 俺はそのチャンスを逃さず、狼のど真ん中を通り抜ける。ついについにこれで縄張り脱出だあああっ! と、興奮気味に走っていると突如足を止めざるを得なかった。 「嘘だろ……」 最悪な物に鉢合わせする。それは巨大な狼の親だった。狩りの帰りらしく、口に熊を咥えていた。 「ガルルルル……!」 「あ、あ、あ、アクシア……! やれ!」 《パワーリチャージに5分必要です》 畜生おおおお! また死ぬのか俺は! 俺は虚映の長剣を構えるが、ろくな戦闘技能もないから勝てるとは全く思わない。死んでも本当に死ぬ訳じゃ無いから良いけど、それでも死ぬのは普通に辛いんだよ! 「はぁああああっ!」 「下がって!!」 突然真横の茂みの中から聞こえる女性の声につい振り向いてしまう。直後、茂みから目で見える緑色の突風が吹き、親狼の巨体をものともせずに、頭部に大打撃を与える。 「キャウンッ!? ガルルルル! ガアアァッ!!」 タゲは完全に俺ではなく声がした方へ向き、威嚇している。俺は助かった……のか? 全く安心できる状況ではないが、親狼の敵が俺では無くなったことに、その場で尻餅をついてしまう。 「は、ははは……」
収納好きが行く異世界保存の旅.4
シミュレーションを開始してから初めて出会ったモンスター。スライムによって怪我をしたので、それを何とか治せないかと家にあった救急箱から適当な物で応急処置。したはいいものの、まるで俺が求めることを知っていたかのように、回復ポーションの作り方を提案する箱。俺は仕方なく、また家から出てスライム狩りをすることに。 「さっきは良くもやってくれたなぁ……。俺の素材となれええええ!」 最初はちょっと可愛いと思ったのに、皮膚を爛れさせる程の大火傷 を負わせられ、俺はブチ切れる。次は確実な殺意を持って、見つけるスライムを次々と刺殺。一撃で倒せるので良いストレス発散になった。 「はーっはーっ……かなり倒したぞ。素材は最初の一匹で揃っているが、ポイントは……?」 《残りAP16》 でっけえええ! 初めて二桁行ったぞ!? なら早速回復ポーション作るか! 「箱。低級回復ポーションを作ってくれ」 《作成完了まで30秒……。作成完了》 そうして出来上がったのは、本当に効能があるのかさえ疑わしいと思えるほどに、うっっすい青色をした液体が入った小瓶だった。だが今ここで躊躇ってもどんどん腕の怪我が悪くなりそうなので、蓋を開けて患部にぶっかけた。その瞬間。 「いっでええええぇっ!?」 さらに腕の皮膚どころか骨が焼けるような痛みが走り、思わず倒れてのたうち回る。ただそれはほんの数秒で、ふと気づけばグロ画像だった腕は嘘かのように綺麗に治っていた。 「おおおぉ……! 流石異世界!!」 現代医療じゃあり得ない回復速度に、あらためてここが異世界である実感が湧いた。所で、使った後からなんだが、ちょっとだけでポーションの説明が気になり箱に聞くことに。 《それはスライムの体液から作った最低価値に位置する低級回復ポーション(下)。作成時にスライム特有の再生能力を抽出し、回復ポーションとして作り上げた物ですが、体液にある酸性は抜けず、飲んでもかけても患部に激痛が走る粗悪品となります》 何となく分かってた。どうして俺にあんな酷い怪我をさせたスライムの体液"のみ"で回復ポーションが出来上がるのか不思議だった……。まぁ、治ったからいいけど。 それじゃあ次はスキルとかなんか手に入れるか。あと残りは15もあるんだし……。 《現在獲得可能なスキルは以下の通り》 ・箱の拡張Lv3:2 ・ポイント獲得増加:3 ・マップ作成:5 ・周辺探知:3 ・ボックススキル拡張:10 「へぇ〜。このスキル拡張ってなんなんだ?」 《今まではスキルによりただ使用者をサポートするのみでしたが、拡張により防衛または攻撃性のあるスキルを獲得可能になります》 ふむ。かなり魅力的だが、今は脅威と言ってもスライムしか出会ったことが無いからな。まだ身の危険を感じたことが無いのに、防衛とか過剰だろ。それに、コレ自体獲得コストが高く、これを取ったとして残ったAPで追加スキルを獲得できるとも限らない。だから俺は……。 「ボックススキル拡張以外全部やってくれ」 《総必要AP13。箱の拡張Lv3完了。容量8。ポイント獲得増加Lv1完了。解析済みAPの獲得率が2倍に増加。マップ作成完了。初期地点から移動したルートと周辺の地形情報をマップに追加。周辺探知Lv1完了。自身を中心に半径25m範囲の地形情報と生体反応を探知可能になりました。残りAP2》 おおおぉお……。めっちゃ色んな物が追加された。気になるものを一つ一つ確認していこう。まずマップ作成は、ホログラムで常にコンパスの上位互換として今までに歩いた所がどんな場所だったのか一目で分かるようになった。言うて全部森だけど。 で、周辺探知は少し狭く感じるが、これだけでもすでに周囲にスライムが5体以上居たことに驚く。これでより狩りが効率化される!なので、これを元にポイント獲得増加を合わせれば……! 俺は早速マップと周辺探知から分かるスライム5体を撃破すれば、APは余裕で2から7に上がった。ヤバすぎね??まさかこのスキルってインフレする?? それならば、このままスライムを狩り続けるだけでAPうはうはになるかもしれない……! という俺の考えは浅はかだった。 「これでAP37か。おかしいな……。さっきからいくら隅々まで探知してもスライムが見当たらない。あぁ、そうだよな。そりゃそうだ」 ここはゲームの中ではない。シミュレーションという特殊な環境下ではあるが、あくまでも目的は、世界にある全ての物質を箱の中に保存すること。だから無限ではなく、必ず上限があるんだ。つまり俺はこの森の。少なくとも家周辺のスライムは狩り尽くしたと言っても良い。まぁいいや。AP37は現状最もでかい数字だ。有効活用しようではないないか。 《現在獲得可能のスキルは以下の通り》 ・箱の拡張Lv4:3 ・AP獲得増加×2:6 ・周辺探知Lv2:8 ・虚映の長剣:8 ・錬鉄の長剣:鉄×1、ap10 ・ボックススキル拡張:10 「ふむ……。じゃあ箱の拡張、AP増加、周辺探知、虚映の長剣、スキル拡張が欲しい」 《総必要AP35。箱の拡張完了。容量9。AP獲得2倍、周辺探知。半径50mに増加。選択可能のスキルを追加します》 《虚映の長剣。作成完了まで5分……。作成完了》 《追加スキルは以下通り》 防衛: シールド(前):5 攻撃: ショックウェーブブラスト:8 おぉ……。最初は二つだけってことか? ……。うーん。強そうな名前だがどっちが良いのか正直分からんな……。これについては後で考えよう。ひとまずさらに強化されたスキルの確認だ。 そうして俺は早速周辺探知Lv2でより広い範囲を見れば、その光景が何なのかを瞬時に理解し、絶望した。 「これ……モンスターの縄張りのど真ん中じゃね……?」
収納好きが行く異世界保存の旅.3
箱からホログラムの短剣を作り、かなり心許ないが野生動物に襲われても直ちに命の危険になる確率は減ったと思う。 短剣はかなり使い勝手が良く、物質を切る時のみ一瞬だけ実体化する機能があり、切れ味はどんなものかと指で切先を触れようとしたが、通り抜けてしまい。どうやら所有者の身体を傷つけることはないようだ。 これで少しは遠出もできるかと考えたが、それはもう少し後。箱で絶対に作らなくちゃいけないものがある。それのために、短剣を使うことで初めて手に入れることが出来た。雑草を入手した。 《解析完了。これは雑草。APを1獲得しました》 本当に雑草なんだ……。てっきり植物の名前とか出てくるかと思ったが、雑草ってほんとにあるんだな……。これで速くもAPは2となった。それで俺はこれで、コンパスを生成する。 《生成完了まであと3分……完了しました》 手のひらにホログラムのコンパスが生成される。それはよく見る物と同じだった。赤と白の針が決まった方角を常に指す方位磁石だ。どんな原理は分からないが、家の周りをぐるりと回ってもしっかりと針は家の方角を向いていた。 「これでようやく遠出が出来る……! まずは森を抜けることが目標だろ!」 ホログラムだから無くす心配もない。この森がどれだけ広いかは分からないが、とりあえず帰ってくることも考えて各方角へ往復30分くらいの範囲に絞って探索しよう。 ……。もちろん家の例のガラクタ部屋を探せばきっと使える物もあるだろう。ただ今は必要ない。本当にどうしようもない時にあの部屋をまた掃除してみようと思う。 「じゃあ……まずは北へ15分歩き続ける!」 因みに時間感覚は普通に腕時計を使う。学生でも買える安いデジタル腕時計だ。現在は午後3時20分。だから35分まで真っ直ぐ歩こう。 それから経った5分歩いた頃だった。早速森の雰囲気が少しだけ明るく変わった。そう微かな木漏れ日が差し込んできた。 「光だ……。家の電気じゃない。太陽の光……。これだけで心が安らぐなんて……ほんと陽の光って偉大だなぁ……」 今だに鬱蒼と生い茂る森の木々から伸びる、ほんの僅かな一筋から三筋くらいの光。到底眩しくはないが、すこしだけ暖かく感じることに感動を覚える。 そんな陽の光に感動している中で、ふと足元にひんやりとした感覚を感じる。すぐに下を見れば、そこには。青色のスライムがいた。 ただド○クエみたいなのじゃない。青く半透明な綺麗な色で、足首に伝わるのはぷにぷにとした感触。まるで動物が頬ずりしてくるような動きをしており、全く害は感じなかった。 だから俺がそっとスライムに手を伸ばした時だった。スライムは突然ビクッと跳ねるように後退り、俺との距離を大きく空けた。 「えぇ……。えっと……怖く無いよ〜」 「モキュモキュ……ビィッ!」 スライムは突然液体を飛ばしてきたので咄嗟に腕で防禦すると、じゅうっと音を立てて俺の皮膚を溶かす。 「ぐあああっ! 痛えええ! やりやがったなこの野郎!」 俺はブチ切れて、短剣で真っ直ぐスライムを突けば、体内にあった核らしき丸い物体を一撃で潰して、スライムは形を崩すように溶けた。爛れた腕の痛みに耐えながら、決して目的は忘れずにスライムの体液を回収する。 《解析完了。これはスライムの体液。AP2獲得しました。種別モンスターの物質を初回収しました。これによって箱の物質生成を錬金機能にアップグレード。モンスターの素材を回収すれば上がる錬金ランクに応じて、虚映シリーズだけでなく、より強力で利便性の高い物質を生成することが出来ます。しかし、モンスターの素材を必要とする物質生成ではホログラムでは無くなりますので注意してください》 すっげぇ情報量……。毎回刻んで答えるから今回はまとめて説明してくれたんかな……? えーっとつまりだ。モンスターの素材を箱に入れればもっと良いものが出来上がるってことだな。ますますゲームみたいになってきたな……。 「っ……! あ〜……落ち着いたら腕が痛え〜」 流石にこのまま探索続行は危険な気がするので今は家に帰ることにした。たしか家に救急箱くらいはあったはずだ。それから5分掛けて帰宅。皮膚が爛れることなんて酷い火傷くらいしか無いだろう。因みに経験したことがないから正しい応急処置のやり方が全く分からない。とりあえず水道水で洗ってから何とかなるだろ。 傷を洗って、消毒液当てて、適当にガーゼ付けて包帯で巻く。……これで悪化したらそれはその時に考えよう。うん。 「なぁ、箱。お前ポーションとか作れねえの? ここってシミュレーションのために用意された異世界なんだろ?」 《現在錬金可能な物が以下の通りです。 残りAP2 ・低級回復ポーション:スライムの体液×1、1ap ・箱の拡張Lv2:1》 丁度どっちも取れるじゃねえかよ!! どっちもやってくれ! 《箱のアップグレードを完了しました。現在の箱の容量は7。申し訳ありませんが、物質を解析するのは素材を一つ消費することが必要で、スライム体液はあと一つ必要です》 「おぉいっ!! だから先に言えって言ってんだろうが!! 必要ならさっき帰らずに無理してスライムもう一匹狩ってたろうなぁ……」 箱に向かってブチギレても意味がないので、俺はまた探索にでることにした。現在の時刻は午後3時35分。
窓
窓割り師。それは極めて迷惑で、ただの自己満足から発生する輩の名称。しかしどんなに迷惑であっても決して曲げない信念を持つ者がいた。 彼はただ窓を叩き割ることに信念をもっており、またそこに自己満足ではなく、人助けをしていた。 「くそっ! こんなに準備していたのに、入り口が強化ガラスなんて聞いてねぇぞ!」 「そこの者! 何をしている!」 「やべっ……! あー……ちょっと自分の家の扉が開かなくてねぇ。仕方がなく窓をぶち破ろうと思ったんだが、生憎強化ガラスだったことを忘れていてよぉ」 「なるほど……。せいっ!!」 バリイイインッ! 「え……」 「ん?」 「あー、あー! うんうん。ありがとうございます!やっと家にこれで帰れますわ!」 「役に立ったのなら良しとしよう。次は家の鍵を忘れないように!」 果たしてそれが男の家だったのか。という疑問は彼は考えない。どんな理由であろうとも。 「なるほどな……ここも、ここも防弾ガラス……。ボスの部屋に限っては特殊仕様の小窓しかねえ……」 「お頭、特殊仕様つーと?」 「最新技術で作られたクッソ硬えガラスだよ。二、三発なら対物ライフルの大口径の弾丸さえも止めちまう代物だ。つまり一発でぶっ壊せなくちゃあ、警報がなって終わりだ」 「え……お頭。別に窓狙わなくても壁吹っ飛ばせばよくないっすか?」 「お前話聞いてたか? それはたしかに一番手っ取り早いが、精鋭中の精鋭しかいねぇボディーガードをどうやって撒くんだ」 「あぁ、そうでしたね。すいやせん」 彼はどんな場所にも現れる。 「君たち! そこで何をしている!」 「やっべすよ! お頭!」 「慌てんじゃねえ。あいつはただの一般人だ。普通を装え。俺たちは依頼を受けて窓の点検をしにきた物だ。ここは一般人の侵入は許可されていない。通報されたくなければはやく出ていけ」 「窓だと? 窓に点検なんて必要なのか?」 「素人が首突っ込むな。お前には関係のない話だ。ここは重要施設だからな。傷が付いてちゃ直す必要があるんだよ」 「ならば協力しよう。私は窓割り師をしている物だ」 「は……? 窓、割り……師??」 「左様。私ならば耐久テストくらいは出来るだろう。どの窓だ? あの子窓か?」 「さっさと消えろっつってんだろうが!」 「まぁ、そう言わずに。せいっ!!」 バリイイインッ!!! 「な……嘘だろ……?」 「ふむ。なかなか良い窓だった! さらばだ!」 「は? おい待て!!」 相手が求めるからではない。相手が助けを求めているかもしれないと思うから、窓を割るのだ。そこに検討違いなど、もはや彼に関係ない話なのだ。 窓割り師の歴史は続く。
月光を浴びて
『月光』それは神秘に極められた奇跡の光であり、その力を左右する満ち欠けは星をも動かす。そこには魔物も巣食う。光は時に人を惑わし、時に慄かせ、そして死を髣髴とさせる。 だがそれこそが全て、奇跡であろう。 『月光』そのものを己の力とする者がいた。彼はその輝きを常に道標とし、消えることのない道を歩み続けていた。 ─我ら血によって人となり、人を超え、人を失う─ その教訓は、獣狩りの夜を歩む狩人の宿命として刻まれる。血に酔い、獣に堕ち、あるいは月光に導かれた彼もまた、その運命の輪から逃れることはできなかった。 その名も、ルドウイーク。かつては病と獣蔓延る夜に対し、仁義と正義を掲げ、崇高なる狩人として多くに尊敬されていた英雄。 だが彼はいつしか忘れてしまった。 ─知らぬ者よ、かねて血を恐れたまえ─ 今は血に紛れた咆哮とともに、異形を曝す醜い獣。 それでも、彼はだだ一つ。月光は見失うことは無かった。光を浴びる剣をその手に。 月光の剣は彼にとって、狩人の誇りであり、信仰であり、そして最後の名残だった。血を啜る衝動がいかに理性を蝕もうと、剣を握るそのの佇まいだけは、狩人ルドウイークの姿は確かにそこに在った。 だが月光は、彼をまた呪う。 光に魅入られ、光に狂い、それでもなお光を求める。たとえそれが最期であっても、彼は月光を浴びるのだった。 「……狩人よ、光の糸を見たことがあるかね? とても細く儚い。だがそれは、血と獣の香りの中で、ただ私のよすがだった。真実それが何ものかなど、決して知りたくはなかったのだよ ヒイッ、ヒイッヒイッヒイッ…」 「……教会の狩人よ、教えてくれ 君たちは、光を見ているかね? 私がかつて願ったように、君たちこそ、教会の名誉ある剣なのかね?」 (そうだ) 「おお、そうか……それは、よかった…… 嘲りと罵倒、それでも私は成し得たのだな。ありがとう。これでゆっくりと眠れる……。暗い夜に、しかし確かに、月光を見たのだと……。 スヒーッ、スヒーッ……」
収納好きが行く異世界保存の旅.2
「えぇ……ここどこぉ?」 謎の箱を起動したら、外が森になった。慌てて玄関から外に出れば、どこをどう見ても木、木、木。鬱蒼とした森が続く。木漏れ日という光の差し込みはほぼ無く、一寸先は闇ばかり。 全く現在地が分からず、探索しようにも遭難したら嫌なので、すぐに家に戻ることにした。そして箱に話しかける。 「なぁここどこなんだよ!? お前がやったんだろ? 早くいつもの場所に戻してくれ!」 『現在シミュレーション続行中。シミュレーションの中断は出来ません。貴方の目的は世界の凡ゆる物質を全て箱に収めること。この箱は半無限アイテムボックスになっており、最初は小さいですが、拡張していけばいずれ無限になります。 拡張するにはこの箱に物質を入れ、解析し、解析ポイントを獲得してください』 それを、先に、言ええええええええ! シミュレーションは中断できないという言葉が衝撃的過ぎて、その後の話はほぼ聞いていなかった。箱の中に物入れてポイント稼げとか言っていたような……。 自分が持っている箱は、直径15cmくらいの立方体。両手で持ち運べるサイズだ。だが、生憎入り口がめちゃくちゃ小さい。多分そこらの石ころや枝くらいなら入るだろう。 それにしてもだ。終わるまで帰れないことは本当に衝撃的で、今頃頭の中は大パニックになっている筈なのだが、不思議と落ち着いている。その理由は、家があるからだと思っている。実家の安心感って全く素晴らしいな。 そんなこんなで、俺は箱を持ちながら、もう一度玄関から外へ出て、足元に転がっている石を拾ってポトリと箱の中へ落とせば、箱は青白い光が箱の中心へと吸い寄せられ、凝縮されていく。やがて、圧縮しきった光が閃光となり、一瞬で四散し、一言。 『解析完了。これは石です。解析ポイント(AP)を1獲得しました』 おぉ……。としか感想は無かった。で? それでどうするんだと思ったところで箱は追加の言葉を発し、自分の目の前にホログラムの文字を見せた。 『解析ポイントを使って箱の拡張や、Boxショップの利用、Boxスキルの獲得が出来ます。現在の所有ポイントは1。現在利用可能な物を選択してください』 ・箱の拡張 Lv1:1 いやこれしか無えのかよ! と心の中でツッコミながら、とりあえずたった一つだけ表示されている物を選択する。すると箱はスキル獲得と同時に、ドンッと空気を振るわせるほどの音と振動を起こす。 『箱の拡張をします。一度消費したポイントは元に戻せません。三、二、一……スキル獲得』 おぉ……。なんか凄いとしか思いつかない。箱を拡張したと言っても見た目は何一つ変わっていない。何が変わったんだろう? 「なぁ、何が変わったんだ? 変わらず枝や石しか入らねえだろこれ」 『現在の箱の最大容量は6です。一度解析した物質は枠を基本1つ消費し、無限に蓄積します。なので、現在の残り容量は5となります。それともう一つ。この箱の入り口と、物質の大きさは関係しません。大抵の物であれば箱に近付けるだけで収納できます』 はぇ〜……。んじゃあ……とりあえずそこらの石集めまくってAPとやらを稼げば良いんだな? 俺は別に掃除が好きなんじゃなくて、乱雑に置かれた物を一つにまとめて分類することが好きなのだが……。世界を整理整頓するなんて考えたことすら無かった。 さてはて。とりあえずこの箱の言うことに従えば、いずれ元の場所に戻れるんだろう。そうとりあえず信じて、俺は生き生きと石ころを箱に入れた瞬間、絶望した。 『これは解析済みです。APを0.01獲得しました。解析済みの物質は初回を除いて、その物質に定められたAPを獲得します』 嘘だろ……? それじゃあ……石を百個集めなくちゃならないってのかよ。いや、石だけじゃなくてってことか。じゃあ……これは? 俺は適当な枝を箱に入れる。するとまた光って霧散。 『解析完了。これは木の枝。APを1獲得しました』 はー! なるほどね。分かった。じゃあ、集めまくるか!! そうして俺はただひたすらに。決して遠くには行かないように。すぐに家に戻って来られるような範囲で、ひたすら石と枝をそれぞれ百個くらい集めて家に帰る。APは3となった……。発狂しそうだ。 「ぜーはー、ぜーはー……。これだけやって……3? 一体俺は何をしているんだ……? そうだ……このポイントで何かできる?」 『現在利用可能な物を選んでください』 ・箱の拡張Lv2:1 ・コンパス:2 ・虚映の短剣:2 ・解析済みポイント獲得+Lv1:3 選べる物に何故武器もあるのかとふと考えれば、俺はさっきまでなんて恐ろしいことをしていたのかと気付かされる。俺がいる場所はどこかの森の中であり、勿論野生動物もいるはずだ。もし熊とかに出会っていたら俺は死んでいただろう。 それを考えるなら一択。虚映の短剣を選ぶ。すると箱から小さなレーザーが空中に照射され、まるで3dプリンターのようにゆっくりと物の形を作っていく。 『生成完了まで1分。……。生成完了。虚映の短剣です。こちらは武器ですが、物を切る時以外は実体化しない機能を持ちます。また持ち主の身体も決して傷は付けません。ご安心を』 「すっげ……。これもホログラムで作られてる……」 刃渡は約8cmくらいで、手に取れば持っているのかさえも分からないくらい軽い。箱の言う通り、軽く刃先で指を撫でようとしても、刃は指を透過して切れる様子は無く。適当に雑草を切ろうとすると、刃は当たる直前に実体化し、スパッと切れた。 良い切れ味だ……。これも解析できるのかな? 試しに短剣を箱に入れようするが、なにか磁場のような物で弾かれた。 『箱が生成した物質は、この世界に存在しないため、保存・解析対象になりません』 「そりゃそっか……」 もし出来て、APが沢山貰えるならば、なにもせずに荒稼ぎ出来るんじゃないかとは考えた。流石に対策済みというやつだ。 という訳なので、俺は短剣を持ってまた外へ出た。
収納好きが行く異世界保存の旅.1
俺の名前は仕舞井分也(しまいぶんや)。高校二年の17歳で、わりとなんでも収納したくなる極普通の人間だ。 収納癖がついたのは幼少期の頃から。顔も知らない父が他界してから、母さん一人で俺を養っていたようで、俺はいつも家で一人だった。 母さんはいつになっても朝から仕事、夜遅くに帰ってきて、掃除や洗濯や料理……。小さい頃は何を思ったのか、いつも忙しなく動く母さんの姿にただ感動して、自分もなにか出来ないかと考えたのが始まり。洗濯や料理はやり方が分かんなかったし、そもそも高くて届かなかったけど、ゴミ捨てや整理は出来た。 たまに捨てちゃいけないものや、ぐちゃぐちゃに一つにまとめたりすることで大事な物が行方不明になったりで、良く母さんに怒られてたっけ。 ただ俺はその頃から楽しさを感じていた。散乱していた物が一つのまとまりになって、乱雑さが無くなり綺麗になって、そして今に至る。もう床に散らばったりしているとストレスが溜まるほどに収納したくなる。 物はあるべき場所に戻すべし。片付けを怠けることなかれ。 もうこれが俺の座右の銘となった。 そうやって俺は今日も"定期的な"大掃除を始める。と言っても家の中はほぼ常に綺麗にしているから片付ける物は特になく。何をするのかというと、他界した父が持っていたという家の地下室。 それはそれは究極に散らかっており、母さんが言うには父は凄まじいほどの面倒臭がり屋で、捨てるべきか分からない物はとりあえず地下室に投げ込んでいたとのこと。今の俺が聞けば絶句物だ。 まさしくそこはゴミと宝の山で、宝といっても如何にもな貴金属が出てきたりはしないけど、何故これを持っているのか、どうして捨てなかったのかと、背景も用途も不明な物体があったりする。あまりにも汚いので定期的に大掃除している訳だが、一日で終わるような量ではなく、今日もそれをやるんだ。 そこで俺は今日に限って過去一最も変な物を発見する。 「何だこれ……箱?」 それは直径15センチほどの立方体で、ずっと奥に仕舞われていた筈なのに新品同様に見える程にピカピカで、持ち上げればまるで発泡スチロールなのかと思うくらいに軽く、でも触った感触は間違いなく金属の、灰色の箱だった。 「どうやって開けるんだ……?」 特に蓋はなく、爪を引っ掛けられそうな隙間すらない。ただツルツルで、叩けば空洞音が鳴ることからやっぱり箱に間違いない。 俺はそれがあまりにも不思議で、珍しく掃除を後回しにして、自室に箱を持ち帰る。 「くそっ、中身が気になる……!」 ただの鉄塊ならまだしも、内部に空洞のある金属物なんて、絶対に何か意味があるんじゃないかと、普段そんなに回さない頭をフル回転させる。とにかくペタペタ触ったり、意味もなく押したりする。 すると突如、箱の底面はガコッと凹み、機械の起動音が鳴り出す。 「はぁ!? 箱じゃなくて絡繰だったのか?」 それから箱は上面の中央から青い光が放射状に伸び、箱全体に奇妙な模様を作れば、細かくガチャガチャと変形を始める。 『仮想シミュレーションの開始を受理。対象である登録者、仕舞井拡平が不在のため、対象者の再登録をします。登録者は仕舞井分也。それでは衝撃に備えてください。シミュレーションの開始五秒前。四、三……』 「いやいやいやいや! なになに!? はぁ!? えぇ!? 拡平は父さんの名前なのか……? なんとかしてこれを止めないと!! あ……」 『二、一、零。開始』 もう間に合わない。そう思った直後だった。 バンッ! それは銃声ではない。凄まじく眩しい閃光と同時に、思わず尻餅をついてしまうほどに部屋が揺れた。 「っ!???」 まるで家の庭になにか小さな隕石でも落ちて来たかと思うくらいの爆音で、箱を机に置いてすぐに窓の外へ視線を向ける。 そこには……森があった。
オリ主がやりたい放題するペルソナ5
第1話 黒髪イケメンメガネと金髪と猫 前書き・・・ 先に言っておくとかなりアンチヘイトするかもしれない作品です。原作ストーリー絶対変えないで!と言う方はブラウザバック推奨。 オリキャラはやりたい放題する物語です。なるべくストーリー準拠で多分原作崩壊しないとはどの程度かと言うと、最初のカモシダのオタカラを一時的に預からせてもらう程度ですね。 ────────────────── 俺の名は|最上稟獰《もがみりんどう》。実際に殺人で前科があり、どういう訳か奇跡的に、秀尽学園に転入出来た男だ。転入理由は単純にこの学園に同時入学してきた噂の転校生がいるからだ。なにやら傷害罪で前科ありだとか。俺の前科より軽いじゃねぇか! どうして俺よりそいつの方が噂になってんだよ!? という訳で俺はその転校生を陥れるために来た! ははっ! ホンモノって奴を教えてやるぜ! 4月11日、授業4限目終了。 噂の転校生は何食わぬ顔で登校してきた。初日から4限終了まで遅刻するとかやるじゃねえか……。初日からちょっかい出そうと朝早くから登校した俺が馬鹿みてえじゃねぇか。 仕方が無え。あいつの住所特定からするか。 4月12日、下校。 何やら転校生は別の金髪野郎と校門前で話していた。どんな話してんのかと声をかけようとしたその時だった。 金髪の方がスマホを操作した時。 「……!?」 空間が気持ち悪い程に歪む。な、なんだぁ!? 空間の歪みに驚きながらもふと気がつけば、目の前の光景はいつもと変わらない東京かと思えば、振り向くとそこにはまるで西洋の城に変化した秀尽学園の姿があった。 「ビンゴ!!」 金髪の嬉々とした声が聞こえた。なにがビンゴなのか知らんが、恐らく今の現状を知っているからこそ出た言葉なんだろう。ならばここは身を隠さなくちゃならない。すぐに校門の影に身を隠してクセっ毛眼鏡の如何にもイケメンな黒髪と、金髪二人の後を追った。黒髪の服装がいつの間にか変わっていることはファッションなのだろうと一旦気にせずに。 すると二人は二足歩行で頭のでかい猫に会っていた。なんだアレ……。何か話しているように見えるが良く聞こえなかった。そうしていると猫と黒髪と金髪は揃って三人で城の横にある通気口らしき所から内部へ入って行った。 どうして正門から入らないんだろう。自分の学校だって言うのにまるで……。 「そういうお年頃カナ?」 俺は堂々と正門から入ろうとするが、とてつもなくデカい扉の上に鍵がしっかり閉まっていた。 なるほどそういうことか。放課後直後なのに忘れ物さえも取らせてくれないなんて。つまりこじ開けろと言うことだな。 「お邪魔しまあああす」 俺はしっかりと拳を握ると、勢いよく扉を殴り吹き飛ばした。どうしてこんな力があるって? 元異世界転生者と言っておこう。 さていい感じに手加減出来た。本気でやっていたら学校ごと吹っ飛ばしていたからな。 「何事だぁああ!」 すぐに複数の教師が駆け寄って来たかと思ったら、目の前には青白い間抜け面した仮面を被った、大きな盾と直剣を持った兵士だった。 ふーむ。こいつは殺しても良いのだろうか。せっかく現代日本に帰ってきたというのに、いきなり殺人して刑務所行きは嫌だぞ? 「貴様を器物損壊罪と不法侵入罪として強制連行する!」 不法侵入? 俺ここの生徒なんだけど? そんな考えも許されぬまま、俺は何故か突然背後からシールドバッシュが如く強烈な盾攻撃を打ち込まれた。 「弱いな。殺すか!」 それで俺が倒れるとでも? 訳も分からず連行されるのだけは許せねぇなぁ!? 「なに!? こいつ倒れないぞ?」 「死ねよ雑魚共!!」 俺は三人の兵士を軽く、文字通り捻り潰した。 俺は例の三人の後を追わなくちゃならねぇんだ。邪魔するなら……多分殺す。