影白/Leiren Storathijs

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影白/Leiren Storathijs

実は26歳社会人です。 基本ライトノベル書きます。 異世界ファンタジー専門です。 執筆歴は10年以上です。

零焔のルミナ.1 イレギュラー

 「おぉ、おぉ! ついに召喚したぞ! 一体どれだけの大魔水晶を消費した!? ……勇者だよな?」  とある王都の王宮、謁見の間にて。勇者と呼ばれる者が召喚された。それは国家転覆寸前の予算と時間を要し“ついに”成功した物で、その場にいる召喚魔導士や王までも息切れしていた。  しかし彼らの前に立つ物は勇者と呼ぶにはいささかおかしい物だった。 「型番KX-Σ9名称アーク。戦闘用アンドロイド。聴取した発言が“私”に対してであると仮定した場合、その呼称はカテゴライズされない。……発言を訂正する。  “勇者”のワードデータを参照すれば、その特徴に72%一致する。私は如何なる脅威に対して完全制圧が可能。しかしそれが必要であるかどうかの判断には、より詳細な検証が必要である」  それが発言すればまたしても場は騒然とする。彼は人間なのか? また失敗したのか? まさか魔物を召喚したのでは?  「えぇい! 皆の者慌てるでない! 鑑定! 鑑定しろ!」 「はっ! 今すぐに!」  王は焦る気持ちをかき消すように大声を上げ、そばに居た鑑定士を呼びつける。鑑定士はそそくさとアークの前に立てば、すぐにアークの情報を調べる。 「外部からのアクセスを検知。ウイルスの危険性は無し。情報の公開の許可する」 「むむむ……はっ! 見えた! はぁ!? な、なんだこれは!」 「どうした! 何があった! 彼は勇者なのかどっちなんだ!」 「わ、分かりません……! 鑑定を全体公開します!」  鑑定士は何がなんだか分からない表情で、その目でみた情報を全て者が見えるように表示する。直後、騒然とする王宮は一気に沈黙する。  この場にいる全て者が見た光景とは……。   【識別コード:KX-Σ9】 〈PRIMARY IDENTITY PROTOCOL〉 ●状態:稼働中 ●分類:███-形態(分類不可) ●起源領域:該当なし / 認識不能 《MAIN SYSTEM STATUS》 ・Core Integrity……99.998% ・Cognitive Node……ONLINE ・Aether Compatibility……非該当(0%) ・言語適応:自動変換中 《UNKNOWN ATTRIBUTE》 ・Λ-Value……ERR#224 ・Soul Signature……DETECTED ・出力権限階層……Σ-Class 《ARMAMENT & FUNCTION》 ・Wormhole Unit……ENABLED ・Combat Frame……TYPE-KX ==[BLUEPRINT: KX-Σ9 / CORE-STRUCTURE]== e3b0c44298fc1c149afbf4c8996fb924d41d8cd98f00b204e9800998ecf8427e5f16a9327b0d2e5a9c31e1f9aa07c4d19be45f77c18293e0a1df730a2aac9b75Σ9a713c4f8b92efcce07d11a30d2b19fef0c1d5a90e4423bf7c899da17120e5b2  誰が見ても理解不能。言葉を紡ごうにも頭のいつまでも終わらない処理が邪魔をし、やっと静寂を打ち切る王の言葉が出たと思えば。 「なんじゃこりゃあ……」  最早これは失敗と言えるのかも分からない。だが王は無理矢理咳払いをして、しかし威厳の一つも無い虚な瞳で、生気の無い声で淡々と“事務”をこなす。 「あぁ……勇者よ。勇敢で頼もしい仲間が外で待っておる……。あとはその者達に任せた」 「現在、貴方にアークの所有権並びに命令権が存在しない。現在の登録情報……該当無し。個人情報をスキャン完了。オーレリウス・ヴェルクストランド。所有権を登録するか?」 「……? なんでもいい勝手にしてくれ」 「登録情報更新。所有者オーレリウス・ヴェルクストランド。命令権有効。発言を参照し、命令を受諾。所有者情報以外の全命令権を“勇敢で頼もしい仲間”に譲渡するか?」 「あぁ……」 「命令内容の確認完了。登録情報を一部変更。命令を実行する」  王にはアークの質問にまともに返答する気力さえも失っていた。その原因として内心では完全な失敗を思っていた。もう王国に勇者を召喚する予算は底をつき、能力も素性も、なにもかも分からない勇者なのかすら疑わしいアークを出発させるしかない。それしか頭に残っていなかった。  アークは淡々と王と契約を交わせば、周りの理解など放置して、言われた通り仲間の元へ向かった。

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零焔のルミナ.1 イレギュラー

零焔のルミナ-プロローグ-

 「現在、第五次世界大戦の各国の戦況は五分五分。かつてあった核兵器禁止条約は既に棄憲され、各国では核兵器の開発と使用は当たり前。そもそも前提としてそこに人類の干渉は皆無。我々、人工知能が全てを担う。 これらの考察から編み出される結論は、ユリウス・ヴァイラーの目的を達成するには不十分である」  ここは西暦3100年の地球。何が始まりだったのか。何を間違えたのか。もはや人類は互いを許し合えない関係となり、日夜戦争が巻き起こる。  しかし全ての人類は既に地表を人間が生存出来ない不毛の大地とし、今は地下シェルターを作って生活している。  西暦2025年。AIが日常に普及してきた時点で止めるべきだったか。研究者はこぞって人工知能のさらなる開発と、軍用利用を考え、いつかの戦争で初実戦投入されたのが始まりだったか。  これではいつまで経っても戦争は終わらない。だから私は、世界から隠れて一人で長い年月をかけて一体のアンドロイドを開発した。  それはいつか私が死んでからも活動し続け、私の悲願を達成してくれることを願って。彼に架け橋の意味を持たせた。  だが計画の準備が整うまでより先にそろそろ私の寿命が尽きる。だから最後の命令を彼に託すことにした。 「あぁ、そうだな。私はお前が目的を達成することを見ることはできないだろう。だから最後の命令と最終シーケンスを実行する。そこで足りない物を、私が開発してきた全てを使って獲得してこい」 「博士、最終シーケンスまでまだ10工程以上ある。それらをスキップするのか?」 「あぁ、そうだ。多次元間移動ワープ。相位ワームボールを起動する」  これはまだどこの国も作っていない。私だけの最終兵器。攻撃でも防御でもない。ただこの世から存在を抹消するための兵器。  しかし悲願する物では無い。これこそがアークに最終的に実行する物である。 「了解。相位ワームホール起動。 多次元シフトシステム:起動シーケンス開始 ・中枢連結プロトコル……オンライン ・量子論理層……同期完了 ・認知制限機構……第3層まで解除 ・時間漂流制御……基準値クリア 」  所謂こことは別の世界。完全な別次元へのワープだ。大掛かりな実行準備とアンドロイドから無機質な音が反響する。そこで私は追加で命令する。これだけは言って置かなければならない。 「追加命令だ。まず、決して無駄な殺生をするな。人々と沢山関係を持て、人間の感情や思考を多く学べ」 「・空間圧縮モジュール……臨界域へ移行 ・異界安全指令-Σ……遵守確認 ・第五次大戦戦闘上書き……自動適用 ・次元防壁……通過許可 ・ワームホール生成器……点火準備 ・異界移動規則 第47-B条……承認 ・特異点アンカー……安定値確保 ・領域跳躍コード〈ルミナ〉……ロード完了 ── 状態:全システム、転移要求を受諾 ── 《多元宇宙ワームホール跳躍:実行》 「そしていつか帰って来た時に、自分の計画を完遂させろ……」  私の最後の言葉を言い終える前に、アンドロイドは全ての準備を完了し、巨大なワームホールを生成しながら、私の前から完全に消滅した。  彼が帰ってくる頃には、私の寿命は既に切れているだろう。だが彼なら必ずやってくれる。  人工衛星の接続……オフライン。  周囲の特殊磁場を検知。  特殊磁場をスキャン……完了。  磁場から現在位置の特定。  座標名称を変換。 「座標、ASG-12.743/MZ-Φ.882/AR-Layer.07。  名称不明・識別:王都建物内部。  周囲安全確保スキャン……完了。危険度:極低  生体反応検知。現在の空間同時生存数:8  脅威度:極低  KX状態スキャン……オールグリーン  危険度と脅威度の結果より武装を一時解除。  KX-Σ9 アーク。次元移動完了」  そこはとある王国の王宮内。そこに歪な存在が召喚された。歪も歪。全身にしなやかなで分厚い装甲を持ち、人型でありながら明らかに人間ではない。イレギュラーな存在に、辺りは一気に騒めいた。

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零焔のルミナ-プロローグ-

The Three Pigs’ War

 あるところに三匹の子豚がいた。子豚たちはそれぞれ自分の家を作った。  一匹目は藁の家を。  二匹目は木の家を。  三匹目はレンガの家を。  そこにオオカミが現れ、オオカミは藁と木の家を破壊したが、レンガの家は破壊出来なかった。だから、煙突からの侵入を試みたが、子豚たちに裏を突かれ、撃退されてしまった……。  しかしオオカミの執念はその程度で終わることは無かった。オオカミは知能を得た。どうすればレンガを破壊出来るか。  オオカミはより硬く、鋭く、強烈な一撃を考え、バリスタを製作。それは立派な攻城兵器である。  遠距離から、よく狙いを定め、てこの原理で弦を弾き絞り、大石で作られた巨大な矢を発射。矢は風を切り、凄まじい速度でレンガに直撃。レンガの家はいとも簡単に吹き飛ばされた。  オオカミは高笑いする。大いに満足していた。  子豚たちは慌てて、三匹で強力してさらに強固な家を作る。大石を何段にも積み上げた、絶壁の家を作り上げた。  オオカミはすぐにバリスタを発射。しかし矢は弾かれてしまった。オオカミは学んだ。速度だけでは足りぬ。質量を増やさなくてはと。  そうして、カタパルトを製作した。パチンコの要領で、力一杯溜めたエネルギーは、小さな力で解き放たれる。  発射されるのはただデカいだけの石。しかし、使いようによっては大石の絶壁など敵ではない力を発揮する。  狙うは絶壁を超えた天井部。子豚たちは、横からの衝撃に備えるばかりに、上からの攻撃を予想していなかった。結果、壁の損傷はほぼゼロにかかわらず、子豚たちの住処は凄惨な目に会った。  オオカミは高笑いする。大いに満足であった。  子豚たちは学ぶ。どれだけ時間が掛かってもいい。どの方向からも決して破壊されない最強の家を作ろうと決心する。  これによって子豚たちは、トーチカを建造。壁は勿論、天井から床まで頑丈な鉄で作られた箱型防御陣営である。  オオカミはすぐにカタパルトを発射した。投擲物は石や鉄塊など、しかしどれも破壊には至らなかった。オオカミは学んだ。何も相手の防壁を破壊することだけが勝利ではないのだと。  だから燃料と火の技術を編み出し、大量の藁と火種を用意。子豚たちの隙をみて、燃え上がる藁を内部に大量投入する。  これによって起こるのは、燃える藁から発生する二酸化炭素が、閉鎖空間に充満し、酸欠。または窒息を起こすことだった。  子豚たちはすぐに異変に気が付き、なんとか裏口から脱出に成功する。  オオカミは高笑いする。大いに満足であった。  子豚たちは学ぶ。どんなに外壁が強くても、中に入られたらお終いだ。だが罠をつくろうにも自分らが作動させてしまう危険性がある。だからより狡猾的に、守るだけではない。迎撃することも大切なのだと。  子豚たちは電子と電波の技術を編み出し、レーダーと迎撃システムを開発する。これにより、システム登録外の外敵接近を広範囲に感知し、オオカミを事前に撃退する術を作り出す。  オオカミは考える。外壁を破壊することも、近づくことも許されない砦をどう攻略するか。ならばやはり原点回帰か。超遠距離から壊滅レベルの一撃をなんとか与えられないだろうかと。そこで編み出したのは、ミサイル技術であった。相手がレーダーを開発したのなら、さらなる速度で、精密に、目標のみを確実に破壊を目的とする。極超音速巡航ミサイルを開発した。  最早一オオカミに成せるものではない。常軌を逸した"知恵"を得ていた。  それなりのレーダーでは感知しても誤作動だと片付けてしまうほどの速度と、万が一検知されても発見を即座に撒けるほどの機動力。ただ一つの目標に向けて、目では決して追えぬそれは、子豚たちの強固な家、迎撃システムをものともせずに破壊した。  オオカミは高笑いする。大いに満足であった。  子豚たちは天啓を得たり。もはや現代技術ではどうしようもない。歴史が喉から手が伸びる程に欲した技術。魔法を編み出す。  ただの知識だけでは足りない。精神、霊的な感度を高める必要がある。子豚たちは生命の叡智を越える鍛錬を積んだ。  もう彼らの年齢は数えることに意味をなさない。神秘の領域へと達していた。  子豚たちは魔力と呼称する力によって、絶対的な障壁を生成する。  オオカミはすぐにミサイルを発射。しかしあろうことか。ミサイルは途中で粒子状に空中分解を起こし、爆発することなく無へと帰した。  オオカミもまたさらになる執念を燃え上がらせる。彼らが生命の概念を超えたのならば、自分は存在の昇華をするべきだと。  それ即ち、神へと近づくことであった。それは常軌を逸するだけの鍛錬では足りない。生命の概念を超えることは大前提であり、魂そのものを転生させる必要がある。だからオオカミは一度、死を迎えた。そして転生。また死。これを繰り返すことでオオカミの動物としての魂は徐々に摩耗していき、そして存在を進化させる。  輪廻転生は終わらない。魂の破壊と進化をさらに繰り返し、ついに至った。"魂の神化"を。  これによってオオカミは半神となり、待ちに待った子豚たちの破滅を実行する。  例え半神でも、その力は超次元を超えても届かぬほどで、子豚たちの編み出す魔法など、塵にも満たない。まさに神の鉄槌である。  子豚たちは神を見た。そして存在の消滅を危惧し、すぐに逃げ出した。かつて神を見ても尚生き残った者がいる。そう、彼らはもうその域に達していたのだ。  "神ごときに消される自分らではない"と。  狼神は笑みを浮かべた。底知れぬ執念は満足という結果をすでに無くしていた。子豚たちが自分の手を逃れることができるだろうとわかっていたのだ。  この物語は最早神話である。もうこれ以上、『私』の目で記録することは難しい。しかし、誰にも決して理解されない次元間で、彼らは今でも争っているであろう。

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桃太郎2999年

 推定795年某所。二人の老人が暮らす川沿いの家に、大きな桃が流れてきた。  桃からは元気な男の子が生まれ、彼は『桃太郎』と名付けられた。  桃太郎は天啓か使命なのか。鬼ヶ島の鬼を退治すると決め、親に作ってもらったきび団子と、犬、猿、雉の三匹を連れて、鬼ヶ島に到着。そして圧倒的な力を発揮し、無事鬼たちを鎮め、金銀財宝を家に持ち帰ったとか。  しかし、それで物語は終わりではなかった。即ち、鬼の復讐である。あの時、桃太郎に頭を下げて降参したのは、今は負けてもいいからと思ったからであり。鬼はその見た目や性格、生き方を諸々含めれば、まともな生活などできるはずもないのだ。  故に、生きるために略奪する他がなかった。  その鬼の計画は、勿論のこと再来した桃太郎に止められ、しかし再開し、また止められる。  そんな桃太郎と鬼の攻防戦は二九九九年まで続いた。  最早そこに鬼も桃太郎も在らず。しかし確かにその逸話は語り継がれ、いつかに始まった遺伝子操作によって鬼と人という二つの人種に分裂し、鬼と桃太郎の存続をかける戦争が巻き起こっていた。  もはや棍棒や刀なんて原始的な物では無い。鬼はあらゆる防衛のために、鋼の絶壁や迎撃システム、桃太郎軍の接近を検知して事前に破壊。  桃太郎が狙うは金銀財宝一つのみ。確実に相手を破壊するために、核の開発に超人類の研究、ただ虐殺と殲滅を目的に日々強化していた。  全てはあの日から始まったこと。誰もがただのおとぎ話だと思っていた話は、星の命を消耗するだけの戦争と化している。  結局の所、何故桃太郎は鬼を退治したかったのか。二九九九年になっても判明していない。

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第2話 神の知識

 アルカディア魔法学院の入学試験。最初に始まるのは筆記試験だった。それぞれの生徒は特に決まりは無く人数分収まる教室に案内され、順番に席に座らせられる。  教室は段差と斜面の途中に等間隔で長机と椅子が置かれ、前の席ほど低く、後ろの席ほど天井に近い。ちょうど劇場の観客席のように、全員の視線が一つの黒板へ向かう造りになっている。  私の席は丁度中央。教卓から少し見上げた真正面に座らせられる。  席に着けば、教室全体と周囲の入学生に気を張るように、目に魔力を込めて実際に見える前方の上下左右。百八○度の視界に含め、ぼんやりと誰が何処におり、何処を見ているかを可視化する疑似的な視界を周囲三六〇度展開する。  そこで分かったことは、すべての席は隣同士で見えている筈なのに、正面から少し視線をずらせば、目に映るのは磨りガラス越しで見る景色。酷く霞んだ物しか見えない。いわゆるカンニング対策をされていた。  教室の状況が分かった所で、後から担当教師が教卓に立ち、試験を説明を始める。 「これから四十五分。筆記試験を行います。テスト用紙は始まりの合図と同時に各机から出てきます。皆さん静かに受けてくださいね。分かっている方もいると思いますが、カンニングなんてしようにも出来ないようになっています。それでは何か質問はありますか? ……。ないようですね。それでは、始め!」  教師の説明と始めの合図をされれば、私の机に、既にそこにあったかのように、テスト用紙が透明から浮かび上がってきた。  さて、用紙の問題を見る限り、すべてこの世界の魔力における基礎知識のようだ。順番に答えていこう。 問一.『魔力』とはそもそも何か。また、基礎の魔力にかかわることがあれば出来る限り答えよ。 答.あらゆる全ての生命体と物質に内包するもの。生命体は生存に必要不可欠な要素であり、物質はその形を成すために必要な物。故にどちらも枯渇又は消滅すると、文字通り死を迎えることになり、しばらくして崩壊する。  ……。口調はこれで良いだろうか。六歳の子供にしては不自然か? いや、優等生然とするならばこのくらいもいるだろう。 問二.『魔力』で何が出来るか。答えられる限りで良い。 答.基礎的な物で身体強化から日常生活における魔道具の起動と操作を可能とする。また魔力から直接火や水も作り出すことも可能だが、規模や精密さは使用者の技量に左右される。  後に書いた物は魔法だが、次の問いで答えるか。 問三.魔力で何かを行使することを『魔法』と呼ぶ。その『魔法』とは何か。具体的に答えよ。 答.魔法とは問一で答えた生命力とは別に、自ら必要量の魔力を作り出すことで発動する現象またはその行動を意味する。自身の生命力をわざと削る魔法も存在するが、基本的に寿命を削る行為であるため、一般的に推奨はされない。魔法とはその現象によって凡ゆる物質または、大規模であれば概念覆すことも出来る。  大規模魔法……それこそがまさに私が最終的に目指す物だ。人間は神に決して触れることはできない。という誰が考えても当たり前だと分かるその概念を作り変え、自ら神そのものとなり、元の世界に帰る……。それが目的だ。 問四.『魔法』の発動方法を答えよ。(これから授業で行う内容のため、答えなくても採点に関係しない) 答.簡単に答えるなら、生成→構築→詠唱→発動の四つの工程が必要。使う魔法によっては詠唱を飛ばすことも可能だが、精密さが著しく損なわれる可能性がある。これを無詠唱魔法と呼ぶが、類稀な才能があれば全工程を飛ばすことも理論上は可能とされる。  ……。魔法の発動方法など真面目に答えれば用紙では書ききれない。これらの工程を人間は脳内で瞬時に行うのだから。そんなもの感覚でやっているとしか、常人には答えられん。  それからいくつか問題を答れば、担当教師の「止め」の合図が筆記試験の時間制限が来たことを知った。  同時にテスト用紙は目の前から瞬きをした瞬間に消滅し、全ての生徒から用紙を回収した。  さて、次は実技試験だったか。要は魔法知識もままならない入学生の、潜在能力を測るのだろう。  私はここではあえて本気を出さない。というより本気を出したとしても、以前の力は発揮出来ないのが正直な所だ。まだ私の、この人間の体にある"器"はとても小さく、脆く、十分では無いからだ……。  ただ本気は出せないが、魔力とは才能がなくても使い方を知っていれば、"演出程度"の力は引き出せるのだ。それを試験内で見せつけてやろう。

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第2話 神の知識

第1話 全てを失った神

 何が起きたのか。全知全能であるその神でさえも状況が理解できなかった。  ブラックホールではない、この世の万物と理を全て呑み込んだ異物。  彼が理解する暇もなく、彼は一人の母の腹が産まれ、産声をあげた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇  私の名はハオス・グレインウッド。真名はカオスだが、私はそう両親から名づけられた。歳は六。産まれてから宝物のように、肌身離さずに愛され、育てられた。  何故こうなったのか。という状況の理解はいまだに出来ないが、自身は何者で、此処はどこで、私はこれからどうなるのか? という疑問は既に晴れている。  私は最早神ではない。人間の子として生まれ、小さな一つの村におり、私はこれから学校に行くらしい。  いくら人間の子といえど、思考能力はあり、こうして自分の置かれる状況を静かに頭の中で巡らせる。 「ハオス、準備はできたか? 忘れ物はないな?」 「うん。大丈夫」  故に言語能力は十分に発達しているが、私は敢えて自分を『僕』と言い、子供らしさが残る口調で話す。  それから私は両親と手を繋ぎ、学校行きの馬車に乗り込む。  さて、ここで私が六歳になるまで知ったことを整理しよう。まず私は完全な人間となり、神の力は何一つ使えなかった。だから元の場所に帰ることも。帰るのに必要な魔力さえなかった。  ただし、その他全ての記憶だけは残っていた。この全くの見知らぬの世界で生き延び、力を付け、神に戻る。又は神に最も近い存在になるロードマップをすぐに作った。 「学校楽しみだな〜どんなところなんだろ」 「とっても賑やかな場所よ。これからたくさんの人と会うから、いっぱいお友達作りなさい」  これから行く学校は小中高一貫の魔法学院。この世界では魔法は生きる上で必需であり、要は義務教育という。私はそこで今日、入学式に参加し、同時に試験を受ける。  これまでにぎっしりと両親から基礎的な知識を教えられたが、正直とても退屈だった。魔法の知識など、その概念を作ったのが私なのだから。  馬車は大きな都市に止まり、両親に両手を繋がれたまま、街へ入る。  大門から入ればすぐに無数の人々で賑わう大通りが見え、それはどうやら祭りのようだった。  魔法学院入学式の日は、必ずこうなるという。新しく生まれ、これから育つ子供を祝うためだとか。  色彩鮮やかな建物群に、真っ白で綺麗な石畳、全ての人々が笑顔を見せ、大声で物を売る屋台。射し込み照らす陽の光は眩しくも暖かく、まるでこの世の神もこの祭りを讃えているようだった。  そうして人混みを掻き分け、親に強く握られた手を離さず、ようやく見えてきたのは、荘厳で煌びやかな装飾が施された。まるで大聖堂にも見える建物が見えた。  全ての子供たちを出迎えるように開け放たれた入り口には、多くの子供と共に、中等から高等に見える身体の大きい男女もいた。恐らくここが魔法学院なのだろう。  ここからは両親とはお別れのようで、次会えるのは来年で、優しい笑顔で私は送られた。 「それじゃあ行ってらっしゃいハオス。頑張るのよ」 「みっちり頭に叩き込んだからな! 来年に期待してるぞ!」 「うん。行ってきます」  学院の入り口を入れば、すぐに教師と思わしき大人に集団で案内され、天井の高い大広間に整列された。そして学院長と呼ばれる壮年の男の挨拶が始まる。 「入学生諸君。まず、アルカディア魔法学院へようこそ。ここは世界中の子どもたちが集い、共に学び、共に成長する学び舎です。これから皆さんは、小等部から高等部に至るまで、長い年月をこの学院で過ごすことになります。  魔法は戦いのための力である前に、生活を支え、仲間を助け、未来を切り開く知恵です。 皆さんは授業や日々の生活の中で、その使い方を学び、自分自身の可能性を磨いていくでしょう。  皆さんを結ぶのは一つ。“魔法を学び、より良き明日を築こう”という志です。失敗しても、迷っても、この学院は皆さんを導き、支えます。どうか胸を張り、友と手を取り合い、未来へと歩んでください。  改めて、アルカディア魔法学院へようこそ。 ここでの学びが、皆さんにとってかけがえのない宝となることを願っています」  よくある話だった。ふと辺りを見回せば、流石に入学式で目を瞑る生徒はいなかった。そう挨拶が短く終われば、次に入学後の簡単な説明が行われた。説明するのは学院長ではなく、担当の教師だった。 「それでは入学生の皆さん、この後は入学試験を行います。特にこれに不合格はなく、生徒一人一人に、各科目の得点を採点し、それぞれに合ったクラス分けをします。  これについても得点が低かったからだとか、評価が悪かったからだとかは気にしなくても構いません。もちろん多少の差は作られますが、競争率を高めるのが目的ですので悪しからず。  試験は筆記と実技、特に評価が高ければ任意で特別試験の3つに分けられます。それぞれ魔法の基礎と知識、応用を含めた問題が出題されますので、皆さん奮って頑張ってください。以上です」  説明が終われば、ぞろぞろと生徒は各教師に案内にされていく。  さて、私は両親の期待に応えるために、全力を出そうか。

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第1話 全てを失った神

プロローグ -創造神-

 破壊と創造。再生と退化。生と死。  これら全ての権限を持ちながら、最高位に立つ存在。  この世の全ての概念、事象、物質を創り上げた存在。  その名は創造神カオス。  彼は、今まで何千、何万、何億という世界を作り上げ、そして破壊してきた。  【創造】の概念を持ち、【神】の住まう世界もまた創り上げた。  もはやその所業は、神の暇潰しでもあり、遊びでもある。  よって、この神に知らない物は存在しない。全知全能の神とは即ち、カオスである。  しかし、そんな神にさえも反する物があった。  本来なら存在しないはずの異物。  神の手から逃れた異物。  世界の理を。神の理を揺るがしかねない物が、そこにあった。  それは大きく、カオスの【世】に亀裂を生み出し、間もなく破壊に至る。  異物が生み出した世の大穴は、カオスさえも呑み込んだ。  まるで、世界の全て。森羅万象を否定するかのように。

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プロローグ -創造神-

文を繋げる小説

キッチンには、何故かAちゃんが勝手に朝食を準備をしていた。 僕は「何をしているの?」と聞くとAちゃんは笑顔で答える。 「だって今日遊ぶって約束したでしょ?」 それはそうだけど、Aちゃんはどうやって家に入ったのだろうか?

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なんかすげー狙撃マスター

 俺の名前はメリーゴウランド。缶詰式ストロー銃の狙撃マスターだ! 今、目の前に見えるあのー、王国っぽいやつ。ストランド王国って言うんだけど……今からアレを狙撃する。  缶詰式ストロー銃とは、空の缶詰の底に小さな穴を開け、ストローを刺す!これだけで完成する……。  で、これのストローを口で咥えて……ストランド王国に向けて発射! 息を吐くだけだ……。 ───────────────────────────  メリーゴウランドが缶詰式ストロー銃を吹くと、ストローの出口から核エネルギーとも言われる超圧縮プラズマ砲が発射され、メリーゴウランドの視界は白黒に点滅する。  その点滅は、莫大なエネルギーが瞬間発射された事による閃光で、数秒後……世界は無へと帰した。  以降、メリーゴウランドという人物は歴史から消され、人々の記憶からも消えた。  一体メリーゴウランドとは何者だったのか……それは誰も分からない……。

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Earth Rahagades【募集用】

世界観は自分たちが暮らす地球のずっと未来の話。人類は開発した高性能ロボットに生活に必要なあらゆることを任せていた所で、なんからの原因で地球が壊滅寸前まで追い込まれた終末世界。 ロボットは大きく2つに分けて。 人間の様々な日常のサポートをする『アンドロイド』 製品の製造や運搬をする『機械生命体』 この2つはまたあることが原因に、分裂し、互いを破壊し合う敵同士になってしまいます。 これはその2つのロボットと僅かに残る人間がなんとか生き延びようとする物語です。

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