前田 芍葉

10 件の小説
Profile picture

前田 芍葉

まえだ しゃくようと申します。 素人ではございますが、趣味で物語などを書くのが好きでなので、これから色々と投稿していきたいと思います。

桃園

台湾旅行の前夜、卓也の家に泊まったのだった。  卓也はリビングでスーツケースを広げて荷造りをしていたのだ。  「近場だからスーツケースじゃなくてリュックにしたら?」と俺が言ったら「だって現地で色々と着たい服がいっぱいあるんだもーん」と卓也は言い、ハムスターみたいに色々と詰めていた。  「何笑ってるの?」  「だってスーツケースに必死に荷物を詰め込んでいる姿がまるでハムスターみたいなんだもん」と俺は笑いながら言った。  「それはいくら何でも酷すぎだろー」と卓也は口を膨らませて俺の事をくすぐってきて、俺たちはじゃれついた。  こんな些細な日常も愛おしく感じ、幸せに浸るのであった。  そうしている内に時刻は夜の10時58分になっていた。  卓也は大慌てで、荷造りを終えてスーツケースを閉じて、玄関の入り口付近に置いたのだ。  「やっと荷造りも終えたし、そろそろアレの時間にするか」と俺の顎を持ち上げてキスをしてきた。  「今日はダメだよ、明日早いし」  「大丈夫でしょ」と話しも聞かないまま卓也は俺の服を乱し、キスして襲ってきて…そのままセックスをすることに…。  終えた後、シャワーを浴びて、一緒にベッドに入り、俺たちはお互い向かい合わせの大勢で抱き合って横になった。  卓也の匂いは相変わらずボディスプレーと卓也の体臭が混ざった、優しい香りがする。  俺は卓也の脇あたりに顔を埋めて眠りについた。  アラームが鳴り俺は目が覚め、スマホの時計は朝の4時だった。  外はまだで真っ暗で部屋は暗闇に包まれていた。  卓也の部屋は無機質でシンプルなインテリアばかりだ。  都会的なインテリアばかりで、グレーと白で統一されているせいか、暗闇だとすべて真っ黒に見える。  「卓也、起きて、起きてって!」と体を揺すった。  卓也は寝ぼけた状態で「もう朝…」と怠そうに言い、枕に顔を埋めた。  「起きなって!」と強めな口調で布団をかきあげた。  「寒い…」と卓也はブルブル震えていた。  「準備しないとバスに乗り遅れるよ!」と急かすように言う。  「まだ大丈夫だよ…」と言い、卓也はなんとか起きて、朝の身支度を行い、重いスーツケースを引っ張り駆け足で千歳烏山駅に付き、新宿行きの電車に乗った。  バスタ新宿に着いた頃には、卓也はもうヘトヘトで冬なのに汗をかいていた。  「意外と体力ないんだね」と俺はクスっとしながら笑い、卓也に言った  「三十路に入ると体力は日に日に減少するもんだぞ」と卓也は膝に手を置き中腰の体制で息をゼェゼェさせながら言う。  俺たちは羽田空港行きのリムジンバスを待ちながら、他愛のない話しをしながら待った。  リムジンバスが来て俺たちは乗車し、羽田空港に向かう。  朝が早かったのか、卓也は横で爆睡をしていたのだ。  相変わらず、寝顔があどけない感じで、こんがり焼けた日焼け肌がより、少年みたいで可愛いかった。  バスは空港に到着し、アナウンスがながれた。  卓也は目を覚まし、「おっしゃ、行くかー」と、一息吸い、低い男らしい声で、席を立ち上がる。  バスを降りて、冬空は透き通るように青く、太陽の暖かさが頬に伝わるほど、心地よい気候だ。  俺たちは羽田空港第二ターミナルに進む。  「飛行機はタイガーエア台湾であってるよな?」と卓也が聞いた。  「うん!合ってる」と言い、卓也は電光掲示板で確認しながらスマホで色々と調べている。  電光掲示板には台北(桃園)と表記さるてる。  俺たちチェックインしゲートに入場し、出発ロビーのベンチに腰をかけ、搭乗まで待つ事した。  「サンドウィッチ食べる?」と卓也が言う。  「うん、ありがとう」  サンドウィッチを卓也の手からとった。  中身はたまごサンドだった。  早朝の空港ロビーは何故か新鮮な感じで、ワクワク感に、ガラス張り越しから見る飛行機は見飽きないほどだ。  「台北着いらまず何しようかー」と卓也がスマホ見ながら聞いた。  俺は「とりあえずご飯食べたいかな」と言う。  「それからー?」  「士林観光夜市行きたい」  「それ夜にしか行けないじゃん」と卓也は笑う。  卓也もそうだか、俺も海外旅行行っても計画を立てず、基本は弾丸ツアーで、現地で酒を飲んでばかりだ。  「そろそろ、搭乗時間だし向かうか」と卓也は席を立ち上がる。  俺たちは搭乗ゲートを潜り、機内に入り、自分達の座席を探した。  「やった窓際だ」と卓也は子供みたいに喜び、座る。  「窓際で良かったじゃん、俺はトイレ近いから通路側で良かった」と俺は嫌味のように言った。  座席は二例で、俺たちは並ぶよりに座りった。  機内はアナウンスが流れ、キャビンアテンダントが通路で色々と説明していた。  飛行機は動きだし、加速して離陸した。  俺は、離陸する時の感覚が苦手で、いつも体が全体的に硬くなるような感じになる。  「大丈夫か?」と卓也は横で言う。  「うん」  卓也はニヤニヤしながら「大丈夫だよ、墜落したりしないから」と手を握ってきた。  違う、墜落の心配じゃなく離陸する時の内臓が浮かぶ感じが苦手なだけだ、とは言わず、めんどくさいからスルーした。  「台湾って3時間ほどで着くんだな」とスマホで調べながら言った。  「石垣島の近くだもんね」と俺は小声で淡々と言い、口にペットボトルのミネラルウォーターを含んだ。  卓也は外をながむ黄昏れているようだった。  「そういえば、二人で旅行に行くのって初めてだったな」と卓也が呟くように言う。  「そうだね、前から一緒に旅行に行こう?って卓也から誘うのにねー?」と俺はクスっと笑いながら卓也を揶揄った。  「俺が酷い奴みたいじゃん」と卓也はニヤニヤしながら俺の腰を指でつつく。  「そうじゃないの?」っと俺はまた卓也を揶揄うように言った。  「俺はこんなの優しいのになぁー」と卓也は口を子供みたいに唇を噛み、窓を見た。  そんなくだらないやり取りをしている内に俺は眠気が出て、しばらく仮眠する事にした。  着陸のアナウンスが流れた頃か、俺は目を覚ました。  卓也はすでに起きていて、横でスマホをいじっていた。  桃園空港に着いたのはちょうど9時ごろだった。  ずっと座ってた所為なのか、フラフラしながら歩き機内を出た。   空港内は沢山の人々が歩いており、その国特有の独特な香りがしたのだった。  「ボーっとしてると迷子になるぞ」と卓也は保護者のように、俺の腕を引っ張り、自分のところに引いた。  子供扱いされたと思い、俺はムッとしたが、外国の雰囲気、空港の見たことないようなお店を色々見て、それどころじゃなくなった。  「とりあえず台北駅向かうか」と卓也はいいスマホで調べてくれた。  「MRTで行けるんだね」と俺が言うと、「面倒だからタクシー使わない?」と卓也が言う。  「タクシーなんて、料金がもったいないよ、それにボったくられたらどうするの?」と言う。  「大丈夫だろー」とカラカラ笑うように言った。  その自信は何処ら込み上げてくるのか…少し俺はため息を吐くように呆れた。  卓也は基本何でもタクシーを使うのだ。 新宿でも少し歩けばいい距離をタクシーを使う。  結局、卓也の言い通りタクシーを使い、台北駅に向かう事にした。  空港のタクシー乗り場に停まっている黄色のタクシーに乗車した。  運転主はこちらにけっこう話しかけてきたが、まったく言語がわからない俺たちは頷く事しか出来なかった。  「めっちゃ話しかけてくるじゃん」と卓也は馬鹿にした表情で、鼻で笑いながら呟く。 「うん」としか俺は返さなかった。    タクシーは台北駅まで走り続け、俺は車内から見える、街並みを眺めた。  街は意外にも現代的で東京よりも高層ビルが多いように思えた。  「夜になると街全体がネオンの光に包まれて、綺麗なんだって」と卓也が呟く。 「そうなんだ、なら夜は色々と散策しないとだね」  「とりあえず台北駅着いたら、周辺で飯にでもしようぜ」と卓也は運転主の席の所に置かれている料金表を見ながら言った。  「せっかくなら、魯肉飯とか食べたいなぁ」と俺は言う。 「オッケー」と卓也は言い、スマホで色々調べた。  台北駅に着き、タクシー料金を払い、さっそく散策する事にした。  意外にも日系の飲食店や、世界どこにでもあるようなチェーンの飲食店が多いと思った。  街はどこもかしこも、漢字の看板が多く、道路には沢山の原付バイクが走ってた。  都会的だか、新大久保みたいにごちゃごちゃしてる雰囲気ですごく気に入った。  「あそこにする?」と卓也が指を指した。  「そうだね!なんかローカル感ある感じで、良いね」と俺は子供みたいにウキウキしながら言い、俺たちは店内入り、円卓の席に座った。  店内には香辛料に匂いがただよい、独特な香りが漂っていた。  俺たちは昼間から紹興酒を頼み、二人で呑んで色々と語り合った。  「二人で異国にいるのってなんか不思議な感じだな」と卓也は卓上のラー油を見つめながら、紹興酒をゆっくり飲みながら言う。  「そうだね、なんか変な感じがするよ」  「まぁ、俺は一樹と一緒に旅行にこれて嬉しいけど」と卓也は言い、ふたたび紹興酒を飲んだ。  「俺もだよ…」と俺は言い、目の前の道路街を見ながら言った。  「珍しく、素直じゃん」  「そう、いつもと変わらないよ」と俺は言い、卓也の顔を見た。  「まぁ、そういう所可愛いから、嫌いじゃないよ」と言い、卓也は目の前の炒め物料理に箸をつけた。  「そう言ってくれてありがとう」と俺は紹興酒のグラスを回しながら笑った。  「今日のお前はどこかおかしいな」と卓也はニヤニヤしながら言い、どこか照れてる様子だった。  海外旅行の魔法なのか、俺はものすごく子供のような気分になり、自分でも驚くほど素直に なってた。  しばらくして俺たちは台北市内をさまざまな観光名所を散策し歩き、夜には士林観光夜市に向かった。  夜市はカラフルなネオンの光に包まれ、屋台の暖色の裸電球が沢山ぶら下がり、異国情緒ある雰囲気を出していた。  俺たちは屋台で色々な台湾料理を頼み二で台湾ビールを瓶で注文し、ほろ酔い状態になっていた。  「台湾ってゲイの楽園らしいよ」と唐突言う。  「そうなの?」と言い、ビールを飲みながら蒸篭の小籠包をレンゲに乗せ齧った。  「タイと同じくらいゲイに寛大な国なんだよ」  「ふーん」と俺は辺りを見回した。  確かに夜市でも男同士で手を繋いで歩く人を数人歩いている。  「確かに、日本だと変な目で見られるもんね」  この後、西門にあるゲイタウンとか行ってみる?と卓也言う。  「せっかくだから行くか」と言い、俺たちはビールを瓶ごと一気に飲みした。  卓也は俺の手を急に繋いだ。  「行こうか」  「うん」  卓也にリードされながら二人で手を繋ぎ西台に向かう。  卓也はタクシーを拾い、俺たちはまるでカップルのように手を繋ぎ、タクシーに乗った。  西門は士林夜市よりも賑やかで、タクシー降りてすぐ沢山のゲイらしき人が沢山歩いていた。  街は赤い提灯みたいなランプがストリートをズラーっと遠くまで繋がっていて、周りはクラブみたいな音楽が鳴り響いていた。  俺たちはストリートを歩き、とりあえず入りやすそうな屋台風のバーに入った。  受付にいた上裸でマッチョの顔の濃い男性も恐らくゲイだろう。  卓也はビールを頼み、俺はジントニックを注文した。  「あの人めちゃくちゃカッコいいね」と俺が呟くと、「ふーん、一樹はマッチョ好きだからね」と変な目で見て、卓也はニヤニヤしてる。  「カッコいいには変わらないもん」と俺はその人を見ながらジントニックを飲んだ。  卓也は「あっちばかり見ないで、ちゃんと飲めよ」と卓也はプンとした。  「焼いた?」と俺が揶揄いながら笑った。  「俺がお前如きに焼くわけねーだろ?」と言い、ビールを飲んだが、珍しく卓也が拗ねてるように感じた。  俺は卓也の真似をし、「ふーん」とニヤニヤしながら卓也を見た。  「これ飲んだら次行くぞ」と卓也は言い、俺が飲み終わるのを急かした。  その後も色々なバーを周り、俺は沢山のマッチョなイケメン達を堪能した。  その中の一人が声をかけてくれて、一緒に記念撮影し、俺は浮かれていたのだ。  「そろそろ帰るぞ」と卓也が言い、俺の手を引っ張った。  「痛い!ちょっと離して!!」と、俺は強めの口調で言った。  「俺の前で他の男に浮かれるな」と卓也は言う。  珍しい事もあるもんだ、普段から卓也は俺の前で別のセフレの話しとかするのに…。  「どうしたの?」  「なんでもー」と卓也はプンとし、タクシーを呼んだ。  俺たちはタクシーに乗り、今日のホテルに向かった。  卓也はタクシーの中でだんまりとし、スマホをいじっている。  「どうしたの?」と俺が聞いても卓也は俺の顔をじっと見つめた後、フンっとした感じに、窓の景色を見つめた。  ホテルにつき、鍵をもらい、俺たちは部屋に入った。  「ごめん」と俺は謝った。  卓也は俺にハグをしながら、一呼吸つき、「俺の事なんてどうでもいいのかと思って寂しかったなー」と卓也は冗談混じりで言う。  「ごめんって」と俺は再び謝り卓也の肩に手をかけた。  普段、俺が焼き持ちを焼く側なのに今日は珍しく卓也が感情的になって、驚いたのもあったが、少し嬉しかった。  「今日はお仕置きをしないとな」と卓也は言い、俺の唇にいきなり激しくキスをしてベッドに倒した。  「ちょっと!何するの?」と俺は言うが、卓也は、ただニヤニヤしながら俺を攻めた。  この日の卓也は本当にお仕置きかってぐらい激しく、かなりのドSになっていて、恥ずかしい体位まで犯されまくった。  俺はただ卓也の激しいセックスに耐えながらも、ひたすら喘ぎ、頭が真っ白になるぐらい…。  俺たちはシャワーを浴びて、二人でベッドに入りタバコを吸った。  「一樹とのセックスはやっぱり最高だった…」と卓也は天井を見つめながら呟く。  「毎回同じ事を言ってるじゃん」と俺は言い、冷蔵庫に向かい、ミネラルウォーターをグラスに注いだ。  「卓也も飲む?」  「ありがとう」と言い卓也は喉仏を揺らしながら水を飲んだ。  「見て、今日も月が綺麗だよ」と俺は言い、窓辺に立った。  「本当だな」と卓也は俺の肩に腕を組み、二人で眺めた。  この夜は果てしなく長く感じ、こんな風に異国の地で二人で月を眺め、街のネオンのあかりですら特別な、かけがえのないものに感じた。    

0
0
桃園

夕顔の花

 私は小学生の頃から友達がいなくて、夏休みが来ると非常に苦痛だった。  よくクラスの男子に上履きを隠されたり、上級生に落とし穴に落とされて、よく泣かされていた。  クラスの女子達とは、別に虐めとかはなかったが、必要最低限しゃべらならなかった、って言うよりかは、女子は女子で、男子よりも高密な賢さもあり、陰湿な雰囲気が怖くて、信用してなかった。  私はが生まれて間もない頃、母親を失っていた。  父はサラリーマンで、仕事が忙しく、家にいる事が少なかった。  私はきほん家で一人で過ごす事が多かったので、1人は慣れっ子だった。  けど、夏休みだけは一人で過ごすのが嫌だった。  夏休みはイジメっこの男子達が、父が家にいない事をいい事に、庭先から水気の多く含んだ泥団子を投げてきたり、私が出かけようとすると、パチンコで石を当てたり、エアーガンでBB団を当てて、痛がる私を見て笑って、暇つぶしに、私を遊び道具にする感じが嫌だった。  夏休みは、私の唯一のプライベート空間を侵略するから大嫌いだったのだ。  夏休みの頃、私が町を歩いてた時だった。  急に私の目にめがけて、割り箸鉄砲の輪ゴムが当たった。  クラスの男子達が、私が痛がる様子を、動物園のニホンザルのようにキャっキャっ笑っていた。  「バカじゃーねの!?このすっとこどっこいの、おかちめんこ!」と叫ぶように笑う。  私はこの猿達の事を到底同じ人間には思うなく、無意識に睨んでしまった。  その中に上級生のボス猿がいて、「お前いま俺の事睨んだよな?」と私の前に来た。  このボス猿は見た目は強そうじゃないけど、無駄に身長だけはデカかった。  「こっちこい」と言い、そのボス猿は私の腕を引っ張り、空き地まで連れて行った。  「お前、服を脱げ」とボス猿は言う。  私はボス猿の言う通り、服を脱ぎ、下着だけの姿になった。  「お前この格好で、宮久保商店街を歩いてこい」と不細工な腹立つ顔で命令した。  私は首を横に降った。  ボス猿は「生意気だなぁ、痛い目に会いたいのか?」と無駄に大きい声で私に威嚇するのだ。  後ろから、「あなた達!何をしてるの!?」と、後ろから大人の女性の声がした。  ボス猿とその他猿は驚いたよう「わぁーー」と騒いで一目散に走って逃げた。  後ろを振り向いたら白地の生地に紺色のアヤメ柄の浴衣を着た、綺麗なお姉さんが立っていた。  お姉さんは私に駆け寄り、「大丈夫?可哀想に…女の子かこんな格好したらダメじゃないと」と言い、私に服を着せた。  お姉さんは肌が陶器のように白く、体が全体的に細く、髪を後ろで束ねた優しい雰囲気のお姉さんだった。  「お嬢ちゃんはどこの子?お姉ちゃんが家まで送ってってあげる!」と微笑むように和かに笑う。  私には姉や妹、母がいないから、お姉さんのような、優しい和やかな雰囲気が新鮮に思えたのだ。  私は緊張して声が出なかった。  お姉さんの優しい眼差し、空気のようにフワフワした感じがこの世のものとは思えないほど優しさに満ち溢れていた。  「あれ?目元が赤く腫れてるね?」とお姉さんが言う。  「さっき男の子達に、割り箸鉄砲で当てられたの」と、私はボソッと言う。  お姉さんは、「酷い…お姉ちゃんのお家においでよ、氷で冷やして上げる!」と言い、私の手を繋いで連れてってくれた。  お姉ちゃんの家は、さっきまで私が嫌がらせされた空き地の裏で、平家の縁側がある、古風な趣きのある家だった。  時刻は17時28分で、庭は夕日のオレンジ色に染まっていた。 庭には竹垣が格子状に編まれた柵につる性植物の白い花が沢山咲いてた。 お姉さんは氷を手縫いで包み、私の目に当てた。 「これでしばらく安静にしてなさい」と私の目を見て、優しく微笑んだ。 「あの白いお花はなんて言うの?」と私は聞いた。 「あれの事?あの花は夕顔と言って、夏の夕方に咲くの、実もできて味噌汁の具材として、煮込むと柔らかく、美味しい優秀な野菜なんだよ」とにこやかに説明してくれた。 「朝顔とはまた違うの?」と私は気になったので聞いた。 「うん、朝顔は朝に咲くし、それに食べれないでしょ?」と綺麗な声で笑った。 お姉さんはお盆から、ガラスの湯呑みを出し、キンキンに冷えた麦茶を差し出した。 私は麦茶を飲みながら、「またここに来てもいい?」言った。 お姉ちゃん「うん、でも…」とお姉さんは言葉を詰まらせた。 私は何かまずい事を言ったかと思い、「どうしたの?」と聞いた。 「いや、何でもないよ、また遊びに来てね!」と微笑みながら言った。 それから私は次の日もお姉さんの家に向かった。 門を開け、庭に進み縁側の所から「お姉さん?遊びにきたよ?」と言う。 中からは返事がなかった。 縁側から見える室内は、綺麗な清潔に保たれた畳、焦げ茶色の座卓、茶箪笥、奥の部屋には仏間らしき物が見える。 何度もお姉さんを呼んでみたが、いる気配がなかった。 「出掛けているのかな?」 昼間なのか、庭に植えられている夕顔の花は萎んでいた。 私はその日は一旦家に帰る事にした。 しばらくして時間が経ち私はまたお姉さんの家に向かった。 庭には夕日の茜色に染まり、 相変わらず綺麗な純白の夕顔が咲いていた。 縁側には浴衣を着たお姉さんが本を読みながら座っていた。 「あら!、いらっしゃい!」とお姉さんはこちらに気づいて、にこやかに微笑んだ。 「昼間も来たんだけど、今日はどこにいたの?」と私は聞いた。 お姉さんは「ごめん、今日はちょっと用事があって出掛けていたの」とお姉さんは微笑み私に謝った。 私はこのなんとも言えない時間が好きだった。 「そうだ!」とお姉さんは言い、台所に向かった。 奥からザクザクと包丁で切る音が聞こえる。 お姉さんはしばらくして、戻ってきて、私にスイカを出した。 「良かったら食べてね」とお姉さんは言い、「ありがとう!」と私は言いスイカを食べた。 お姉さんはしばらくして「学校は楽しい?」と聞いた。私は首を横に降る。 お姉さんは笑いながら「そうなのかー」と私の頭を撫でながら言った。 「お姉さんは子供の頃学校楽しかった?」 姉さんは遠くを見つめるように「私は、子供の頃、あまり学校に行けてなかったの」と言う。 「なんで」 「私は子供の頃から病弱でいつも入退院を繰り返してたの、だから学校と言うものをあまり知らないの、後、ちょうどその時代は日本がそれ所じゃない程、大変だったのもあるんだけどね」と言い、お姉さんの表情はどこか寂しそうだった。 「体の何処が悪いの?」と私は聞いた。 お姉さんは胸に手を当てながら「心臓が悪いの、でももうすぐ手術するの」とつぶやいた。 「きっと手術すれば良くなるよ」と言い、「ありがとう、お嬢ちゃんに言われるとそんな風に思えてきたよ」と微笑んだ。 空はまだ明るく、蝉が鳴いている。 奥の仏間からはお盆提灯の青白い光が回転しながら、ゆらゆらと回っている。 「そろそろ帰らないと」と言い、お姉さんにさよならを言い、この日は帰っていった。 家に帰ると父が台所で炊事をしていた。 「おかえり、ご飯もうすぐできるから」と父は慣れない家事をしながら台所に立っていた。 料理が出来上がり食卓にはチキンライスが並べられ、父とご飯を食べた。 私は父にお姉さんの事を話した。 「空き地の裏にそんな家なんかあったかな?」と父は不思議そうに言う。 「うん、昔の畳の古い家見たいのが」  「今時、珍しいな」と父は言う。  私はご飯を食べ終え、すぐ部屋に籠り、今日の事を絵日記に書いて、一日を終えた。  私はこの数日間の夕方だけ、お姉さんの家に何度も遊びに行った。   お姉さんと一緒に何気なくおしゃべりをするのが好きで、友達のいない私にはどこか新鮮で特別な時間だった。   ある日お姉さんは私の髪を櫛で髪をすきながら「私、そろそろ行かないと…」と呟いた。   「病院に手術に行くの?」と私が言う。   「うん…」とお姉さんは微笑みながら呟く。   お姉さんは庭先に出て、浴衣の袖からハサミを取り出し、一輪の夕顔の花を切った。   「はい、記念にあげる」と私に差し出した。   私は「ありがとう、手術から戻ったらまた会えるよね?」と私が聞くと「うん…きっとまた会えるよ」とお姉さんは微笑んだ。   「絶対だよ?約束だからね?」と私は何度も言った。   「うん!約束する!」「お嬢ちゃんと喋ってると元気が出てきたよ、ありがとう」と言いお姉さんは笑った。   私はお姉さんにさよならを言い、家に帰った。   お姉さんから貰った夕顔の花を押し花にし、国語辞典に挟んで、今日の出来事を絵日記にし、眠る事にした。   八月十六日、次の日の夕方だった。   いつものようにお姉さんの家に向かったが、何故かたどり着けなかった…と言うよりかは元々無かったような感じという表現が正しい。   私は道を間違えたのかと思い、何度もあちこちを探したが、家は無かったのだ。   そもそも間違えるはずがないのだ、だって数日間遊びに行った家を間違えるはずがないし、空き地の裏という、目印がある…しかし空き地の裏にはもう一つの空き地しかない。   私は、その日ら必死に探したがお姉さんも家も見つからない。  諦めかけた時、ある建物が目についた。  お姉さんの家の隣には診療所があるのだ。ことこの人なら分かるかもしれないと思い、私はそこの看護師さんに聞いた「ここの隣の家のお姉さんを知ってますか?」  看護師さんは不思議そうな顔をし、「家?ここの隣は診療所ができてからずっと空き地しかないわよ?」と言う。  私はそれを聞いて驚いた、自分があの過ごした日々はいったい何だったのか、急に体に寒気が出て、困惑した。  その日は諦めて帰る事し、家に向かった。 私は帰宅してからもお姉さんの事をずっと考えていた。  アレは幻だったのか、もしくは夢だったのか…しかしそんなはずはない、国語辞典にはちゃんと夕顔の押し花が挟んであるのだった。  夏休みも終わり私は何度もお姉さんの家あたりを散策したがそれらしい家も見つからなかったのだ。  今じゃ私も社会人になり、地元を離れている。  久しぶりにお盆で地元に帰省したら、子供部屋の国語辞典に目が入った。 開いて見ると夕顔の押し花がまだ挟んであり、急に過去の記憶がよみがえったのだ。  いまになっても幻か夢をみていたのかわからないが、あの日の出来事は私の不思議な、かけがえのない思い出…。

0
0
夕顔の花

ハゲ頭

お盆の時期になると思い出すことがある。  まだ私は5歳で、夏の蒸し暑い日のことだった。  母が電話で、なんだか深刻そうな声で身内らしきものと電話で喋っていた。  「義父さんが、さっき息を引き取った…。」と涙目で父にぼそりと話した。  「そうか…」と父は一言だけ喋り、自室に篭っていった。  母は私と兄に「おじいちゃんがさっき天国に旅立っていっちゃった」と涙を流し、私たち兄妹を抱きしめながら言った。  兄は小学校1年生だったのである程度意味を理解してたみたいだ。  まだ5歳児の私には理解できず、「天国って何?」と兄に聞いた。  兄は困ったような顔をし、「死んだ人が行く場所だよ」と言った。  「そうなんだー」と言いつつも、私は意味を理解でなかった。  幼い子供にとって死とは複雑でまったく理解できないことだ。  父が身なりを整え、部屋から出てきて、「これから病院に行ってくる」と家を出ていった。  母と兄、私は家でお留守番をする事となった。  私は父方の祖父の顔を知らなかったのだ。  私が物心着いた時には、脳梗塞でたおれ、ずっと入院をしていた。  だから祖父の顔も知らないし、思い出もなかった。  それから数日が経ち、人生で初めて葬式と言うものを体験した。  奥の親族の控室みたいな、畳の大広間で、親族らしき人がみんな黒い服を着て、色々と喋っていたのを覚えている。  母と叔母がお茶を親族たちに出しており、誰だかわからないような親族と会話を楽しんでいた。  奥の上座の席では祖母が卓上に置かれたお茶菓子を食べながらお茶を啜ってた。  私はこの祖母という人が子供ながら苦手だった。  セカセカとし、口調がキツく、ゴワゴワと厳つい手で、普通にしていても顔が鬼のような顰めっ面で怖かった。  母は私たち兄妹に「おばあちゃんの所にいない」と言い、兄と一緒に祖母の席の所に座らされた。  しかしさすがの祖母も今日は落ち着いた感じだった。  表情もいつもより柔らかい感じに見えたが口調は相変わらずだった。  「あーあ、やっと死んだよあの爺さん」と言いながら私たち兄妹に目の前に置かれたお菓子を渡しながらお茶を啜ってた。  兄も私も何を話したらいいのか分からずただ黙ることしかできなかったのは今でも覚えている。  しばらくして通夜が始まり、お坊さんが木魚叩きお経をあげた。  小さな子供にはこの時間が一番退屈で、私は飽きて、手足をバタバタし、母に何回も足を叩かれた。  会場は線香の匂いに包まれ、お経をあげる声しか聞こえない。  私は早く終わらないかと、ずっと周りをキョロキョロしながら過ごした。  通夜も終わり、大広間で普段滅多に食べれない寿司やらご馳走に私は喜んだ。  父と母は祖母や叔父、叔母と喋っており、祖父の生前の話に色々と盛り上がっていたのだ。  私は子供の頃から食が細く、お寿司を四つほど食べて満腹になり、眠くなり始めていた。  叔父が予約していたホテルに母と兄と笑は泊まる事になり、父は叔父と共に寝ずの番をするので葬儀場に残る事になった。  私たちはタクシーに乗って駅前のホテルに着いた。  子供ながら家以外の場所で泊まる事にワクワクし、兄と一緒にロビーではしゃいだ。  母がチェックインを済まし、鍵を持って私たちを呼び、エレベーターで部屋に向かった。 叔父が気を利かせ、スイートルームを予約してくれた。 子供ながらに広い部屋に大はしゃぎして、兄とベッドの上でトランポリンみたいに遊んだ。  母は「もう夜遅いからシャワー浴びて歯磨きして寝なさい」と言い私たち兄妹はションボリし、不貞腐れた。 部屋にはベッドが2人しかなく、私は母と一緒に寝るよう、促されたが、家に大きなソファーがなかったので「嫌だ!ソファーで寝るんだもん!」と言い私はソファーで寝る事にした。  部屋は兄のベッドサイドの暖色ランプだけ付いている。  私は何故かこの日は眠れなかったのだ。  色々な所に視線を移して、ソファーの上でキョロキョロとして過ごした。  しばらくして、部屋から物音がしてるのに気がついた。  最初は廊下で、従業員が何かしてるのだろうと思ったが、あきらかに違う…。  あたりを見回したが母も兄も寝てる。  ふと、脱衣所に目がいった。  脱衣所はちょうど私が寝ているソファーから斜めに見える角度だ。  私はこの時、目を疑った。  脱衣所の入り口には顔がぼやけたハゲ頭のお爺さん、今日葬式で見たお坊さんみたいな人が、壁を「ボンっ!ボンっ!」叩いていた。  私は怖かったが、何故か声も出ず、それをずっと凝視してた。  そのハゲ頭のお爺さんはずっと壁を叩きながらも、何度もこちらを見てる…。  顔はボヤけて分からないが、明らかに見ているとわかった。  私は、この時ものすごい恐怖に襲われ、声を出そうと必死にもがいた。  涙が目に入り、視界がボヤけた頃、やっと声が出てた。  「おかぁ〜さん!!」と大泣きし、母のベッドに入った。  「どうしたの?怖い夢でも見たの?」  「あそこにお爺さんんが!」と言い、母は脱衣所の所に目をやったが、「誰もいないよ?」と言う。  しかしそのハゲ頭のお爺さんはまだ私には見えていて、壁を叩いていた。  私は必死に母に説明したが、母はウンザリとした感じで「とりあえずお母さんと寝ようね」と言い、信じてもらえず、私は母のベッドに入り布団を被って怯えながら寝る事にした。  音はまだ聞こえる。  私は怖くて怖くて、恐怖に襲われ、布団を被ったまま、夜明けをまった。  気がついたら、朝だった。  私はいつのまにか寝ていたのだ。  布団を被ってた所為か、汗がびっしょり、服が濡れていた。  私は葬儀場につき、親族にその話して回った。  祖母が「ちょうど今はお盆だから、ハルちゃんに会いにきたんだろう?」と祖母は笑いながら言った。  私は本当に祖父の顔も、思い出も覚えてないのに、会いに来るのに疑問を子供ながら思った。  けど、葬儀中ふと祖父の遺影をみた。  ハゲ頭じゃなかったのだ。  後で、大人になって聞いた話だが、この遺影は亡くなる数ヶ月前に撮影したらしい。  今はそのホテルも廃業し、もう残ってないのだった…。              

0
0
ハゲ頭

落ちてゆく蜻蛉

 今夜は半月が青白く優しく見守るように輝いている。   窓辺に置いてあるモスグリーンの一人掛けソファーに座り、白ワインを飲みながら一樹は月を鑑賞した。  部屋の奥に置いてあるガラスキャビネットの上にはリサイクルショップで購入した木目調のレコードプレーヤーが置いてあり、今日はエリック・サティの「ノクチュルヌ第三番」をセッティングしてある。  いまは亡き祖父から形見分けされたピアノ名曲集のレコードの中から今日の月に似合いそうの物を選び月を鑑賞するのだった。  ソファーの側には、縦型のクリーム色の石油ストーブが置いてあり、乾燥対策に水を入れた、赤いやかんから蒸気が立ち、窓がほのかに曇り、街のネオンの光がちょうど良い感じにぼやけている。  俺はワインを飲みながら、ただ月を眺め、このなんとも言えない至福の一時を一人、堪能してた。  窓際にはもう一つ一人掛けソファーが置いてある。  これは卓也が来た時の為に置いてあるのだった。  しかし、最近は自分が卓也の家に行く事が多いから、このソファーには誰も座る事なく、真新しい新品と変わらないほど綺麗な状態が保たれていた。  近ごろは卓也と会う回数が少し減っており、一人の時間が増えた。  前なら卓也の方からLINEをくれ、それに俺が返信をして逢いに行くのだったが、今では俺の方がLINEを送る事が多いのだが、「ごめん今日は忙しい」と断られてばかりだった。  二丁目のゲイ仲間から噂で聞いた話しだと、最近新しく知り合った、耕士くんという俺と同い年の子と頻繁に会いに行っているらしいのだ…。  耕士くんは俺も何回かバーで会った事があり、明るく、笑顔が可愛いくて、流行にも敏感なアグレッシブな子だ。  そんな事を考えつつ「そりゃ卓也もメロメロになる訳だなぁ…」とため息吐き、独り言を呟くのだった。  とは言え、卓也とは毎日LINEをし、お互い意味もないLINEを繰り返している。  前よりも会う頻度減ったが、月に2回ほどだった。  逆に前が頻繁に会いすぎていたのだ…。  二丁目の行きつけのバーの店子ののぶリンくんが「頻繁に会っていると刺激もなくなり、飽きられるもんよ。」とこの前話したのだ。  「やっぱそういうもんなのかなぁ…」と俺は落ち込んだ。  「まぁ、恋はそんなもんよ、でも相手に想いをキチンと伝える事も大事よ!気持ちを伝えて終わる関係と気持ちを伝えないで終わるのとじゃ全然違うもんね!」とのぶリンが言い、俺は自分が気持ちを伝えずにビクビクしている事に嫌気が出て、グラスに注がれた焼酎を一気飲みした。  そんな事を思い出し、俺は無性に悲しくなり、喪失感に襲われそうになったので、早めにベッドに入り、眠る事にした。  布団の中で卓也との過ごした日々を昨日の事のように蘇っていった。  「ダメだぁ…眠れない」と布団を出て、俺はキッチンの換気扇の下に置いてあるパイプ椅子に座り、タバコを吸い、気持ちを落ち着かせることにした。  俺はふとある日記を思い出したのだ。  昔から古典文学が好きでよく、平安時代の物語や日記などの作品を、幼少期から読み漁っていた。  藤原道綱母の「蜻蛉日記」を思い出した。 日記にも記載されている、「なげきつつひとりぬる夜のあくるまはいかに久しきものとかは知る」百人一首にも載っている和歌で、非常に人間臭い和歌だ。  まるで今の自分に当てはまるような感じで、虚しくも、そんな事で悩んでいるのも自分だけではないんだなぁと思い、逆に可笑しく思えてきたのだ。  俺は急に眠気が少し出たので、急いでタバコを灰皿に押しつぶし、ベッドに入った。  酒の力もあった所為なのか、意外にも早く眠りについた。  アラームが鳴り響き、外は明るくなっていた。今日は空が水色で晴天だった。  せっかく早く起きたので、久しぶりに一人気晴らしに、街を散策する事にした。  クロワッサンを軽くトースターで焼き昨日の残りのトマトスープとモカ珈琲をカップに注ぎ、ダイニングテーブルで食べながら朝ニュースを見た。  食事を終え、洗い物を済まし、歯を磨きをし、髪の毛をセットした。  クローゼットから黒のロングコートにグレーのパーカー、淡い水色のジーンズを履き、ラフな格好で自宅のアパートを出た。  外はほんとに清々しいほど気持ちよく、最寄りの本八幡駅に向かう、日々見慣れた光景も新鮮に思えるほどだった。  都営新宿線の本八幡駅の地下は生暖かい風が流れており、地下鉄独特の匂いがただよっていた。  しばらくホームで待っていると新宿行きの電車が着き、乗車した。  耳にAirPodsをはめ、iTunesで米津玄師のアルバムを流しながら電車に揺られ目を瞑り、眠りについた。  目が覚めて「新宿三丁目」とアナウンスが流れ寝ぼけながら降りた。  BYGS新宿ビルと繋がっている地上口を出て、新宿御苑方面に進んだ。  御苑に向かう途中の道は俺の中では、かなりお気に入りの通りで、古いレンガ作りのアパートやオシャレな飲食店などが並んでる。  そうやって休日の時は、意味もなく散歩するのが好きだ。  新宿御苑の入り口に着き、チケットを購入し、入場した。  冬の庭園は枯れ木ばかりで、特に見どころが無いのか、人が少なく、ほとんど貸し切り状態だった。  しばらく黙々と歩き、温室に着いた。  温室の中は暖かく、少しジメジメとしていたのだ。  熱帯のエキゾチックな花木などを鑑賞し、一人で都会のオアシスを堪能した。  時刻は12時になり、お腹が空いたから、御苑を出て昼食を摂る事にした。  御苑周辺にある、バーガーショップに入り、ブラックコーヒーとアボカドバーガーを注文し、窓際の席に座った。  外の景色は日本なのになぜか異国情緒ある雰囲気でまるでヨーロッパの街並みみたいに見えた。  クロスバイクで走っている欧米人、高いヒールを履き、カッコよく歩いている女性などがまるでアートポスターの絵みたいに見える。  そうやって外を眺めていたら、「お待たせしました」と店員がトレーを持ち、ハンバーガーとコーヒーを持ってきた。  ハンバーガーにかぶりつき、コーヒーを飲んで俺は昼間から久しぶりに贅沢な時間を味わった。  前なら卓也と会っている事が多く、こうやって一人で過ごす時間がなかったのだ。  本来の自分は一人でこうやって意味もなく過ごすのが大好きだった。  久しぶりに本来の自分を取り戻せた感じがし、俺は満足気にコーヒーを飲んだ。  しばらくして散歩を再開し、ひたすら歩き続けた。 街は夕方になりビル群が茜色に染まる頃、卓也から久しぶりにLINEがきたのだ。  「今日会える?」 慌てて、スマホを開き「大丈夫だよ」と返した。  卓也の方からLINEをくれるなんて珍しいと思った。  「今すぐ新宿これる?」  「いま新宿にいるから大丈夫だよ」と返しつつも、急なことだったから少し驚いた。  「じゃあ紀伊國屋で待ち合わせな!」 と返信が来て、そこに向かうことにした。  近くにいたのですぐにつき、店内に入った。  奥のビジネス本のコーナーの所で卓也が、立ち読みしていた。  「お待たせ」 卓也が振り向き本を棚に戻しながら「早いじゃん」と言う。  「たまたま近くに来てたからね」  「何してたの?」と聞いたから「暇つぶしに散歩してただけ」  「ふーん、ホントかな~」と揶揄うよう卓也は言う。  「それどういう意味?」  「別にー」と卓也が口を尖らせて言った。  「お腹すいだだろ?これから中華料理でも行く?」と卓也が話題を変えて聞いた。            「いいよ、じゃあ行こうか」  俺たちは本屋を出て、中華料理店を目指した。  中華料理店はビルの中にあり、入り口ネオン看板には「東陽軒」と書かれていた。 店内は明るい暖色の照明がついており、中国オリエンタル調の幾何学文様のパーテーションで席がくぎらて、壁には福の字のサインネオンが照らされていた。  俺たち店員に案内された窓際の席に座った。  「いい所でしょ?ここは点心がオススメなんだって」と卓也が言う。  「うん、凄い雰囲気がいい所だし、点心好きだから楽しみ」  「一樹は中国料理好きだからここがいいかなって」と卓也がニヤけながら言った。  店内ではなんだかよく分からない中国の演歌?的なBGMが流れており、窓の景色からはビル群夜景が見え、ドコモタワーが虹色に光っている。  卓也はメニューを開き「どれにしようかなー」 「凄い迷う」と言っている。  メニューにはメインとお好きな点心2つ選べますと書かれている。  「俺は翡翠餃子と鱶鰭餃子と四川風麻婆豆腐にする」と言ってテキパキ決めた。  「なら俺は小籠包と焼売と油淋鶏のご飯セットにする」と卓也は慌てるように決めた。   「酒飲む?」と卓也が聞いた。  「うん、ビールがいい」  「オーケィー」と卓也がメニューを開きながら店員を呼んだ。  店員は中国人らしき女性で無愛想にメニューのオーダーとった。  「接客態度悪いなぁ」と卓也はイライラしたような口調で言った。  「そんなもんでしょ?逆に日本が過剰すぎるぐらいだよ」と言い俺は笑う。  ムッとした卓也の表情が可愛いく感じ、可笑しかった。  しばらくして、サービスのジャスミン茶が入った白磁のポット、小さな白磁の湯呑み、ビール二つと、それぞれ頼んだ料理がテーブルに並べられた。  箸を取り、俺たちはそれぞれの料理に箸をつけ、堪能した。 料理はどれも美味しく、あまり会話をせず黙々たべたのだった。  「食ったー、けっこうボリューム多かったな」 と卓也は満足気に言う。  俺も食後の口直しにジャスミン茶を飲みながら「卓也の言う通り、点心が特に美味しかった」 と言った。  「あっそうだ!」と卓也がGUCCIのクラッチバッグから何かを取り出した。  「はい」と卓也はチケットをテーブルの上に置いた。  台湾の旅行券だった。  「どうしたの?台湾でも行くの?」と俺はキョトンとしたように聞いた。  「会社の抽選で応募したら見事に当たった」と卓也はドヤ顔で言った。  「いいじゃん!」と俺はお茶を飲みなら言った。  「いいでしょ?」と卓也は満面な笑みをこぼす。  「楽しんで行きなよ!お土産よろしく!」とちゃっかりお土産まで要求して言った。  「何言ってんだよ、これは一樹の分だよ」と卓也は言ったから、「えっ!」と思わず声が出て、飲み込もうとしてたジャスミン茶が少し咽せた。  「どういうこと!?」  「どういう事って…一緒に行こうって事だよ」と卓也は呆れたように言う。  「そんな、急すぎだよ、だって後一週間後じゃんこのチケット…」  「そうだよー」と卓也は軽く言う。  「俺いま何件か依頼されてる仕事抱えてるし厳しいよ」と俺は困ったように言った。  「フリーランスなんだから其処は何とか融通利かせらるでしょー」と人ごとのように卓也は言うのだ。  「そんな事言ったて、決められた期限に守らないと信用問題になるでしょ?」と俺は少しイライラしたような口調で言った。  「えー、せっかく一樹と行きたかったのに残念と」と卓也は拗ねるように言った。  でも俺も内心は嬉しかったのだ。  最近卓也と会う回数が減って、飽きられたと思ってたのに…海外旅行で二人で行けるなんて夢のようだ。  「やっぱこのチケット貰います!」と俺は言い、チケットを手に取った。  「そうこなくちゃ!じゃっ決まりだな!」と卓也は満面な笑を溢しながら言った。  俺は手帳を開き、仕事の調整をその場でした。  「この仕事とこの仕事は優先順位的に低いから先延ばししても大丈夫っと」ぶつぶつ言いながら確認した。  後の一件の仕事は期日が迫っていたので、それまでに終わらせないといけなかった。  「今夜、そっちの家に行ってもいい?」卓也が聞いた。  久しぶりに卓也が来る嬉しさからすぐに「いいよ」と言う。  俺たちは速やかにお会計をし店を出て駅に向かった。  電車に揺られ、地下鉄の真っ黒な窓ガラスに映る俺たちを見つめた。  自宅に着くなりシャワーお浴びた、卓也が「一緒に入ろ」と言い二人で体を洗い合った。  浴室から出た後は卓也は俺の服を着たが相変わらずサイズが小さく、パツパツだった。  「小せぇな」と文句を言いながら卓也は缶ビールを開け、ソファーに寝転がりテレビをつけた。  俺はデスクに着き、パソコンを開き少し仕事を進めた。  仕事を進めて30分くらい経ち、卓也はテレビに飽きたのか、デスクに向かっている俺を後ろから抱きしめ、デスクに置かれている資料を見て「これ何語?」と聞いた。  「フランス語」  「ふーん、よくこんなの翻訳できるな」とつまらなそうに言う。  「いま忙しいからあっちでテレビでも見てなよ」と俺は冷たく言った。  「それいまやらいといけないの?」と卓也は拗ねたように言う。  「じゃないと旅行までに間に合わないから」と俺は相変わらず冷めたように言った。  すると卓也はパソコンを無理矢理閉じたのだ。  「何するの!?」  「今日は俺と一緒に過ごしてるんだろー?なら仕事止めて、こっちおいで」と言う。  俺も卓也のその言葉に負けて、卓也の言う通り、二人掛けソファーに座り、テレビを見る事にした。  テレビは録画してあった月9のドラマついている。  二人でただつまらなそうにテレビを見るのだった。  ソファーの前に置いてあるセンターテーブルの上に卓也が缶ビールを置きながら、横に置いてあった本を卓也が手に取るようにパラパラと開いた。  「蜻蛉日記じゃん」と卓也は言った。  「知ってるの?」と俺は少し驚いたように聞いた。  「一応ね」と卓也は本の表紙を見ながら言った。  「最近、俺が全然会わなかったから寂しくてこれを読んでたんだろー?」と卓也はニヤニヤしながら顔を覗きこむように言った。  「そんなコトないよ、ただ久しぶりになんとなく読んでみただけ」と俺はツンとした感じで言う。  「素直じゃないなぁ」と卓也はバカにしたように言った。  図星だったので俺は黙ってビールを飲みテレビをみた。  「やっぱ一樹と一緒にいると落ち着くなぁ」と卓也は俺の肩に手を組みながらポツりと言う。  「それはどういう意味なの?」  「いや、何でも…」と卓也は濁す。  「そう言えば、最近耕士くんとはどうなの?」 と俺は聞いた。  「はぁ誰それ?」と卓也は目を丸くしながら言った。  「最近頻繁に会いに行ってるらしいじゃん」と俺はテレビを見ながら淡々と言った。  「誰から聞いたの?」と卓也は声色を変えて聞いた。  「二丁目の人達が言ってた」  卓也は「アイツとはもう会ってないよ」と淡々と言った。  「そうなの?」  「うん」と卓也は頷き、一呼吸ついて「アイツはガツガツしすぎてウザいし、セックスも正直気持ちよくなかったんだよねー」と冗談半分にニヤニヤしながら言った。  「酷い話しだ」と俺は言いつつも内心は少しホッとした。  「あと一樹のケツの方が気持ちいいし、顔は一樹の方が一番可愛いいしタイプだな」と誤かすように卓也は俺の首にキスしながら言う。  「ふーん?色々なセフレにもそんな事を言ってるの?」と俺はツンとした感じで言った。  「言ってないよ、てか一樹の事はセフレだと思ってないよ!」と卓也は言うのだ。  「何それ…じゃあどういう関係なの?」と俺は言った。  「うーん、大切な人かな?だから怒らないで」と言い、卓也は抱きついてきた。  「別に怒ってないよ、ただ聞いただけ」と俺は言った。  心の中で「何それ…ただのセフレと変わらないじゃん…」と呟き、無性に切ない気持ちに襲われた。  卓也は俺の体を無理矢理抱き抱えて、ベッドに落とした。  服は脱がされ、卓也はひたすら唇に激しくキスをした。  「可愛い子、俺だけの物にしたいくらい」と耳元で呟きながら言い、ひたすら俺の体を抱きしめ、色々な場所にキスをし始めた。  でもやっぱり卓也の事が好きだ…卓也の色々な所すべて含めてだ…。  ただの都合の良い関係だと感じても、結局卓也の事を嫌いになれない自分が腹立たしいのだ。  その夜はひたすら卓也に抱かれ、熱い夜を過ごすのだった。                                                  

0
0
落ちてゆく蜻蛉

玉葉集

夏 沢野辺に 光ただよう 蛍たち いにしえ人の 残り魂かな 窓開けて 微かに香る ユリの花 辛き浮世の 唯一の癒し 目が覚めて 暑さ耐えれず 衣捨て 白き肌着は 夕顔の花 藤の香に 誘い集まる 熊蜂の 貴方も蜂も 不意に訪れ 月沈み 空は瑠璃色 切なさに 貴方の肌に 手を触れ恋し 月はただ 進むばかりで 過ぎてゆく 君の心も 振り向きもせず 星落ちて 地に帰り咲く 桔梗花 亡き人偲ぶ 盂蘭盆会かな 夜が明けて 引き離される 七夕の 日の入り恨む 名残の涙

0
0
玉葉集

朧月

 仕事が終わり、卓也と新宿三丁目駅にある、地下のルノアールで待ち合わせをした。  俺は先に着き、店員に案内された席に着き、メニューを開いた。  って言っても注文する物はいつも決まってルノアールブレンドだ。  店員が近くに来たので、「すみませーん」  「はい!お伺い致します!」  「ルノアールブレンドを一つお願いします」  「はい、ルノアールブレンドお一つですね?、以上でよろしいですか?」  「はい」  店員は注文をメモに取り、裏に下がっていった。  店内はビジネスマンがパソコンをカチカチ入力してたり、年配の老紳士が難しい顔をしながら新聞を読んだりと、色々な人達がいた。  「お待たせ致しました、ルノアールブレンドでございます」と店員が卓上にコーヒーカップを置いた。  一口コーヒーを啜り、卓也が入ってきた。 「お待たせー」と卓也が言い、席に着いた。  「お疲れ様、今日も浅草橋まで営業してたの?」  「そうなんだよ、マジクソ疲れたー」 とだるそうに言い、メニューを開いている。  卓也はウィンナーコーヒーを注文した。  運ばれてくるウィンナーコーヒーを啜り、口の周りにクリームをつけながら、「この後どこ行く?」と聞いた。  「えっまだ店に入ったばかりじゃん」  「だってお腹空いたんだもん~」と甘えた口調で言うのだ。  「せめてコーヒー飲み終わってから考えさせて」と言い、卓也はため息をついた。  卓也に急かされ、コーヒーを飲み終え、会計を済ました。  新宿三丁目の飲み屋街を歩きながら「何食いたい?和食?洋食?中華?」と卓也が聞いたので、「中華が食べたいかな?」と言ったら「俺 はイタリアンがいいなぁと」卓也が言った。 「なら聞かなきゃいいじゃん」と俺は呆れた口調で言ったのだ。 卓也はこちらの話も聞かず、スタスタと目的の店に、向かった。 店に入るなり、二人でメニューを開きながら、色々と迷いながら、これがいいだの、アレがいいだのと…。  「酒は何がいい?」と卓也が目を細めて聞いた。  「グラスワインでシラーにする」  「ならボトルにしようぜ」と卓也が言うから、とりあえずボトルで注文した。  店内は、沢山のカップル達が幸せそうな顔をしながら、他愛のない会話に花を開かせている。  「お待たせ致しました、コノスル シラー ビシクレタ ・レゼルバでございます」と店員がグラスに注いだ。  「じゃあお疲れ様」と卓也と乾杯した。  一緒に運ばれてきた食事と食べながら、赤ワインん口に運び、俺はテーブルにひかれたあ、赤と白のチェックのテーブルクロスを見つめながら、ひたすらワインを飲んだ。  「どつしたん?いつもより元気ないじゃん」と、卓也が聞いた。  「そんな事ないよ、疲れてるだけ」  「ふーん」とピザを食べながら卓也は言った。  俺は卓也が仲通りで例の男と親密な感じで歩いてるのを見た事、航平さんとの出来事を思い出してた。  考えても仕方ないのに…今日はせっかく卓也とのディナーなのに、こんなネガティブな事を考えてしまう自分に嫌気が出る。  目の前で卓也は、食事を堪能しながら、ワインん飲んでる。  店内では、恋人達が幸せそうな表情でお互い見つめあったり、楽しそうに会話してる姿が、 今の自分には毒だ。  気を取り直そうと、俺はワインを多めに口に流した。  卓也は意外にも神社仏閣が好きで、毎回食事するたびに色々な神社の歴史や寺院の建築について話すのだ。  「知ってる?柴又の帝釈天?」と卓也が聞いた。  「そりゃ知ってるよ、男はつらいよの舞台になった場所でしょ?」と俺はボロネーゼをフォークで巻きながら言った。  「俺この前、仕事の外回りの途中にそこに寄ったんだよー、東京都内にあるのに一回も言った事なくてさー」と軽やかな口調でニヤニヤしながら言った。  「それで行ってみてどうだったの?」  「帝釈堂の前の瑞龍の松ってのを見てきたんだけど、アレは中々見事な樹形でつい見入ってしまったよ」と卓也らは得意気に言った。  俺は「へー」とだけ答えた。  「今度一緒に行こうぜ、一樹の家からも近いしー」と卓也が言うから。  「そうだね」と俺は軽い口調で言った。  卓也は毎回、どこどこ行こうと言っておいて、一回も連れて行ってもらった事がないから、期待はしない。  俺たちは食事を終え、少し休憩した後、お会計をしにレジに向かった。  「今日は俺が全部出すよ」  「いいよ、毎回卓也が多めに出してるし、ワインもほとんど俺がのんだから今日は俺が多めに出すよ」と言うが、卓也はお構いなしにカードでお会計をスマートに済ました。  「ありがとう、いつもご馳走になってばかりで」  「気にするなよ、俺の方が年上だしさ」と卓也が言った。  俺たちは夜の新宿の街をひたすら歩いた。  卓也が「てかさっきから思ってだけど一樹最近、どんどん可愛くなってない?」と唐突聞いたので、俺は恥ずかしくなり、体が熱くなった。  「そんな事ないよ、いつもと変わらないよ」と俺は言った。  「そっか?服装もオシャレになったし、髪型も前よりイケてるじゃん」と卓也は俺の顔を覗きこむように言った。  「一応、人と会うし大人としての最低限の身だしなみでしょ?」と俺は言った。  「ふーん、てっきり俺の為にやってくれてのかと思ったー、残念だなー」と卓也は前を向きながら言った。  俺は急に胸がドキドキした。  「何それ…待ってこれは何!?」と心の中でバクバクする心臓に聞いた。  俺は思わず卓也に「それはどういう意味?」 平常心を保ち、冗談半分で聞いた。  「何でもなーい」と卓也は笑いながら歩いた。  俺はこの今の空間がとても幸せに感じ、胸をときめかせた。  他愛のない会話でも、こうして卓也と過ごせる事が嬉しかった。  「この後、どうする?ウチで映画でも見る?」 と卓也聞いたので、「うん」と俺は答える。  「ならそこのドンキで、お酒とポップコーンでも買おうぜー」と卓也が言い、店内に入った。  店内で、カゴを持ち、卓也と酒とポップコーンを入れ、色々な商品を見ながら回った。  「そう言えば乾燥が酷くて、リップクリームを探してるんだけどどれがいいとかある?」と卓也が聞く。  「俺はニベアのデリシャスドロップピーチを使ってるかなー」  「ふーんだからそんなエロそうなプルプルな唇なんだー」と卓也が揶揄うよに言い、「まったくすぐ人をおちょくるんだから」と俺はツンとした口調で言い、卓也は満足気に笑いレジに向かった。  俺たちはドンキを出て、靖国通り沿いを歩き、新宿三丁目駅に向かった。  俺たちは京王線に乗り二人で並んで、電車に揺られた。  真っ暗闇の窓には卓也と俺の姿が映っていて、マンションや家の明かりが灯されているだけだ。  電車内は珍しくガラガラだった。  卓也は急に俺の手を掴み、自分のコートのポケットに入れた。  「こうすれば寒くないだろ?」と卓也がいう。  「ちょっと公共の場で男同士がこんな事したらヤバいって…」と俺は小声で言うが、内心はすごい嬉しかった。  「一樹は冷え性だからこうしないとダメ」と卓也は笑いながら言った。  俺は卓也のコートのポケットの中で手を繋いだまま千歳烏山駅まで繋いだ。  卓也の最寄り駅に着き、卓也のアパートに向かった。  外は冷たい空気が流れる、静かな烏山川緑道を歩いた。  「今日は薄曇りで月が見えにくいな、せっかく満月なのに」と卓也が言う。  「そう?今日は朧月で趣きがあって綺麗じゃん」と俺は立ち止まり紺色に染まる空と朧月を見上げた。  「一樹は相変わらず、オシャレな表情をするなー」卓也が低い声で言う。  「そりゃ月は昔から、いにしえ人達を魅力してきたんだもん、だから和歌にも月を歌った作品が多いでしょ?」  「時代は変わって、文明が発展しても、人の心はいつの時代も変わってないのかもな」と卓也は俺の目を見ながら微笑んだ。  「そうだろうね」と俺も卓也の目を見ながら微笑み言う。  「さーて、寒いから早く家に帰ろうか」卓也は言い、俺の手を繋ぎ自分のコートのポケットに入れながら歩いた。  俺は今日のこの時間がとても幸せで、この間のことがどうでもよく思えてきた。  例え、卓也が他の人とそういう関係でも…ただ今この時間を大切にしたい… 心の中でそう呟くのであった。  アパートに着き、俺たちはすぐシャワーを浴びて、ソファーに座り缶ビールを開けた。  ポップコーンをつまみながら、ネットフリクスで洋画を見た。  時刻は0時をまわり、「卓也がそろそろベッドに入ろうか」と言う。  ベッドに入り卓也は俺の唇に優しいキスをした。  「相変わらず、エロい唇をして可愛い顔してるな」と髪を撫でながら言った。  俺はただ卓也の目を見つめる事しか出来なかった。  この時間がいつまでもいつまでも続けばいいのに…と心の中でそう願った。  今日は特に卓也の息遣いが荒く、卓也は無我夢中でキスをしながら激しく腰を振る。  俺もいつもより、喘ぎ声が大きくなり、ますます卓也の腰振りが激しくなったのだ。  セックスを終えた後、俺は卓也の腕枕で横になり、卓也との会話を楽しんだ。  目が覚め、いつのまに寝たのか、時刻は明け方の4時だった。  外は群青色になってた。  卓也は俺を抱き枕のように抱いたまま寝てる。  俺も卓也の手に添えて、再び目を瞑ったのだった。  二度寝から覚め、外は明るくなっていた。 起きたら、横に卓也は居なかった。  台所から音が聞こえ、向かったら卓也がスウェット姿でエプロンを付け、朝ごはんを作ってた。  「おはよー」と卓也は言い、「目玉焼きは硬焼き?半熟?」と聞いた。  「おはよー、半熟がいい」と言い、卓也は熱したフライパンに卵を割り、落とした。  「パン焼けたから、皿に出しといてー」と卓也が言い俺は食器棚から無地の白い皿を出し、冷蔵庫からバターを取り出し塗った。  焼いた目玉焼きを卓也は慣れた手つきでフライパンから滑り出すように皿に乗せた。  俺たちは「いただきます」と言い黙々とご飯を食べたのだ。  そういえば、卓也がご飯を作ってくれるなんて珍しかった。  たとえ卓也の家でもほとんどは俺が作ることが多いのだ。  俺たちは食事を終え、俺は皿を洗いコーヒーを入れ卓也とソファーで並びながら朝のニュースを見た。  卓也は俺の体に手を回し、くっつかせながらコーヒーをのんだ。  俺も卓也の肩に頭を乗せ、ただ幸せを噛み締め、ただニュースをボーっと見るのだった。                                  

0
0
朧月

あかるい花園

爽やかな秋風が吹く頃。  夕日に染まるビル群とベランダのナデシコとススキが銀色の穂を揺らし、秋の雅な演出を醸し出してる姿を窓ぎわのソファーに座り、ウィローパターンのティーセットで紅茶を飲みながら黄昏てる頃だった。  突然ゲイ友達の航平さんから、「久しぶりに二丁目で飲まない?」とLINEがきた。  俺も暇だったから、即返信をし、「オッケー」と返した。  航平さんとは二丁目のいつものようにバーで顔を合わせてるうちに、いつのまにか飲み友達みたいな関係になっていた。  航平さんは渋谷でアパレルの会社を営んでいる。  それにシャツを着ていても分かるくらい、中々の肉体美に、綺麗な髭を生やし、竹野内 豊に似た色男だ。  約束通り、18時半に航平さんに待ち合わせ場所に指定された、新宿二丁目のシャインマート前に着いた。  航平さんはセブンスターを吸いながなら、無地の白Tシャツにビンテージ者のジーンズを履いただけのシンプルな格好で、こちらに手を振った。  「今日はどこで飲もうか?」と航平さんが聞いた。  「俺はあまり詳しくないから航平さんの知ってる所でいいよ」  そう言うと、航平さんは「おう」と言い、仲通りをみるみると進んだ。  路地裏の雑居ビルにつき、航平さんに着いてくままエレベーターに乗り、開いてすぐに店の扉らしきものが見えた。  銀色の扉に看板がぶら下がっている。  「タロット」と書かれていた。 航平さんは慣れたように、扉を開けた。  店内は薄暗い青いネオンの光がついていて、お店のママみたいな人がカウンターにポツンと立ってるだけだ。  平日のせいなのか、客も常連らしき人が一人カウンターに座ってだけだった。  ママらしき人がか「あらぁ…こんな若い子連れちゃって…航平さんもいやらしいわぁ~」と航平さんにニヤニヤしながら言った。 「そんなんじゃないよ、飲み友達だよ」と航平さんが言う。 「あらぁ‥本当かしらぁ」といやらしそうに言うからこちらも。 「ただの友達です」って言い、とりあえずカウンター席につき、ママさんが自己紹介してきた。 「ここのママのジュンです!よろしくね!」と言いこちらも。 「一樹です」と軽く自己紹介した。 ジュンさんは手慣れた感じのようにボトル棚から焼酎を取り出し、おしぼりと灰皿と、グラスと割り物を出した。  ジュンさんは、セットのスナック菓子を出し、「今日のお通しでーす」と茄子の煮浸しが出てきた。 とりあえず航平さんのボトルキープしている、グランブルと言う焼酎を、ジュンさんが氷を入れ割り物とステアし、カウンターに丁寧に出し、乾杯した。  俺たちはお通しを食べ、酒を飲みながら、ジュンさんが色々と話しを聞き出し、緊張をほぐしてくれたのだ。  次第に常連らしき人も交わり、下ネタやら、恋愛話などをし、ひたすら他愛の話が続いた。  「一樹くんとかも良い人とかいないの?」とジュンさんが聞いたので。  恥ずかしそうに「居るにはいるけど…なんかね~」と濁すように言った。  ジュンさんは察したのか「あらぁ~中々大変そうな恋をしてるのねぇ笑」と手に口を手で押さえながら笑った。  「でも好きな人がいるなんて、素敵!私なんかもうとっくの昔に枯れちゃったわぁ~!!」と言い、空いたグラスにお酒を注いでくれた。  航平さんは「一樹くんが気になっている人ってどんな人なの?」と聞いた。  とりあえず「チャラそうな人なんだけど、なんかミステリアスな雰囲気がある人かなぁ」  航平さんは「そっかー、それほど魅力的な人なんだねー」とカウンターに頬杖つき、ボトル棚を見つめながら言った。 「そういう危険な男ほど、トキメキもんよねぇ~!!」とジュンさんは女子会のノリのような感じで言った。  確かにそうだ、卓也とはそういう危険な男だ…分かっているのに卓也に会えば会う程はかれてしまう…。 「バカな自分だぁ…」と心の中で自分に呟いた。  酔った常連らしき人が「まぁ、恋とはそうやって色々経験し、成長しとくもんだよ少年」と何もかも分かってるかのように言い、「面倒くせぇ~」と思った。  ジュンさんが「航平くんも一樹くんも」何か歌う?と聞いたので、航平さんが「じゃあ歌っちゃおうかなぁ」とデンモクを触った。  航平さんはofficial髭男dismの「pretender 」 を熱唱したのだ。  正直かなり上手くて、思わずジュンさん、常連さんと一緒に航平さんに喝采した。  航平さんは照れたように「全然だよ」と謙遜したが、満更でもないように、嬉しそうだった。  「一樹くんは何歌う?」とジュンさんが聞いたので、「俺は下手だし、航平さんの後に歌うのは恥ずかしい」と言った。  「なら皆んなで歌おうよ!」と航平さんが言い、デンモクに大塚愛の「さくらんぼ」を入れたのだ。  思わず皆んなで「え~!?」と口に出してしまったのだ。 「そんな治安の悪い曲嫌よぉ~!」とジュンさんがいうが、常連は「まぁ盛り上がりからいいやん!」と言った。  俺は地獄絵図が思い浮かび、覚悟した。 そう思っているウチに航平さんが「す~いす~いすいすいすい、一樹が飲まなきゃ嫌だっちゃぁ~1一樹~!2一樹3一樹からのしーぼーお」と1番最初に俺を指名してきたので、グラスの酒を半気した。  それを繰り返していき酔いが回ってきた、最後にジュンさんで終わったのでジュンさんがグラスの焼酎を飲み干したのだ。  ゲップしながらジュンさんは「あぁ~本当に地獄だわ~」と雄の声で言った。  確かに盛り上がってテンションは上がったが酔いも回りだいぶ視界がボヤけてきた。  しばらく休憩し、お会計をし航平さんと二軒目を目指した。  エレベーターまでジュンさんが見送り「またいらっしゃっいねぇー」と手を振った。 深夜の0時を回り、仲通りの交差点は沢山のゲイ達がほろ酔いの状態で歩いてる。  そんな中に見間違いだろうか、卓也らしき人が反対側の中通りの歩道を歩いていた。 「あれは見間違いじゃない、卓也だ」とはっきり分かった。  隣には小柄なカッコ可愛い系の男を連れて、その男は卓也の腕にしがみついたり、イチャイチャした感じで歩いていたのだ。  俺は急に酔いが覚め、急に嫌な気持ちになった。  航平さんが「次はどこで飲む?もう終電もないだろ?朝までコースにする?」と聞いた。  俺もふと、我に帰り「あぁ、そうだね、朝まで飲みますか!」と気を正常に保った。  「どこで飲む?次は一樹の行きたい所でもいいよ?」と聞いてきたので、「ゴールデン街は?」と言った。  「いいよ!あそこも中々いい店あるしな!」と航平さんが言い、二人で靖国通りを歩いた。  花園神社の横の道を通りゴールデン街に着いたのだ。  色々な飲み屋が並ぶゴールデン街、このノスタルジックな雰囲気は戦後の闇市の名残のおかげなのか、なんだかタイムスリップしたような不思議になる場所だ。  あかるい花園1番街を歩き、色々な店を探した、けどさっきの一件がありただぼーっと歩くだけで、中々決められなかった。  航平さんが「こことかどう?」と聞いてたので、「うん、そこにしよ」と言って店の扉を開けた。  店の中は薄暗く、ステンドグラスのランプが小さなカウンターに置いてあり、大正レトロなポスターに、丸い真ん中に穴がある赤いパイプ椅子がカウンターに並んであった。  カウンターには1人の女性立ち、「いらっしゃいこちらにどうぞ」っと、艶やかな声で言った。  俺たちは手で指された先のカウンターに座った。    色っぽく艶やかなロングヘアの女性が「初めてですよね?」聞き、メニュー開き色々説明してくれた。  航平さんは、バーボンウィスキーをロックで頼み、俺はスコッチウィスキーをロックで頼んだ。  女性がカウンターの下からアイスピックと大きなブロック氷を取り出し、氷をカチ割りグラスに入れウィスキーを注いだ。  目の前にコースターを置いて、「どうぞ」とウィスキーのロックを出した。  俺たちは乾杯しゆっくりとウィスキーを口に含んだ。  喉にゆっくりと通るように焼ける感じが、伝った。  俺はさっきの出来事を思い出し、モヤモヤした状態で、カウンターのステンドグラスのランプを見つめたままウィスキーを口にはこんだ。  「大丈夫?眠いの?」と航平さんが聞いた。 「あーごめん、ちょっと酔いが回ってね」と答えた。 「そりゃそうだよね、さっきはあんな歌を歌わせたからな」と航平さんが笑いながら言った。  「お客さんは今日はどこで飲まれたんですの?」と艶やかな女性が聞いてきた。  「二丁目です!」と航平が淡々と答えた。 「あーじゃあソッチ系の?」と艶やかな女性が聞いたので「はい」と二人で答えた。  「なんとなくそう思ったんですよ」と微笑みながら女性は答えた。  「やっぱ分かるもんですか?」と俺が聞いたら。  「だってお客さん達、所々所作にホゲが出てますよ」と上品に笑いながら言った。  なんだか急に恥ずかしくなったけど、この女性の嫌味のない柔らかな言葉使いに、この店のノスタルジックな雰囲気に、さっきの嫌な出来事が少し薄れた。  この女性店主さんの名前は章子さんいう。  大正レトロなインテリアが好きみたいで、お店のコンセプトも大正ロマンなのだ。  椿柄のワンピースを着て、エプロンをつけ、艶やかな雰囲気は並み大抵の人には出せない色気だとつい感心してしまった。 航平さんとゆっくり話しながら、酒を飲んだ。 俺は酔いのせいか、卓也の関係をポロッと航平さんに話し、さっきのは出来事も話した。 航平さんはただひたすら聴き相槌を打った。 「でもこのままだと一樹が苦しくない?」と航平さんがポツリと呟いた。 「それにその人、俺の知り合いなんだよ…」と航平さんが話した。 思わず「え!?」と声に出してしまった。 気まずそうな表情で「一樹には言いにくいけど、そいつ色々な年下男に手を出し、思わせぶりのような発言してるんだよ」と航平さんが下を向きグラスを見つめながら言った。 「なんで知ってるの?」と俺は聞いた。 「二丁目は狭い世界、だから色々な情報が入ってくる。」 「俺もそいつに弄ばれた子を何人か知ってるからさ…」と航平さんが言った。 正直、なんとなく知ってたけど、改めて人から聞くとなんだか心にグサってと刺されたような感覚になった。 「ごめんごめん、でも卓也も一樹の事をちゃんと見てるかもしれないからさ!」と慌てたように言った。 自分もそうだと思いたいけど急にさっき目撃した卓也とその男の事が脳裏に浮かんだ。 「あの二人今頃…」と心の中で思ったが、おそらくやる事は絶対してると確信できるぐらい自信がある。 アンティーク調の壁掛け時計は午前3時を差していた。  「そろそろお暇するか」と航平さんが言い、お会計を済ましてくれた。  章子さんが「またいらして下さいね」と言い、カウンターに立ちながら微笑んで見送った。  まだ電車は動いてないのにどこ行くんだろう、と思いながらゴールデン街を歩いた。 航平さんはゴールデン街を抜け歌舞伎町の方を指差し「あっちに行こう」と向かってた。 しばらく歩いているとホテル街に入った。  「航平さん?」と俺が聞いたら。  「ここで休憩するか」と俺の手を引きホテルに入った。  俺は抵抗しなかった。  酔ってたのもあるが、卓也のさっきの光景を見て「俺も…」と少し自暴自棄モードに入っていた。  部屋に入るなり、航平さんはキスをしてきた。 「ごめん我慢できない」と航平さんが耳元で言い、ベッドに押し倒された。   服も脱がされ、俺の体に愛撫してきたのだった。  心の中で罪悪感もあったが、卓也もどうせ今頃…と思い航平さんに体を委ねた。  航平さんの大きな体に覆われてただひたすらセックスをした。  航平さんのセックスも激しく、気持ちよかったが、なぜか卓也ほどドキドキ感がない。  航平さんに挿入され、激しく腰を振ってこちらにキスをしてる最中もどこかで卓也の事を思ってしまう…。  シャワー浴びて体を拭き、ベッドに戻った。 航平さんはベッドの上でタバコを吸っていた。 「おいで」と航平さんが腕を開き、俺は腕枕される状態で一緒にタバコを吸った。  スマホを見たら卓也からLINEがきてた。 「今週の金曜の夜どう?」と…。  俺はますます罪悪感に襲われたが、卓也とは付き合ってないし、そもそも卓也には何人ものセフレがいるじゃないか…と言い聞かせた。  航平さんが俺の頭を撫で「とりあえず寝ようか」と言い、とりあえず俺も眠る事にした。    起きたのは午前12時ごろ、ホテルを出て、航平さんとファミレスでご飯を食べた。  「昨日はごめんな」と航平さんが言う。  俺は「別に謝る事なんてないよ」と言い。 航平さんが「なら良かったと」爽やかな笑顔で言った。  俺たちは駅に向かい航平さんと解散した。 電車に揺られながら昨日の航平さんとのセックスを思い出した。  航平さんとこれから友達の関係でいられるのかと少し不安に思ったが、あまり考えないようにしようと思った。  とりあえず卓也に返信し、「大丈夫だよと」送った。  帰宅し、疲れてベッドに倒れてしまった。 昨日は沢山の事が起こり、頭が思考停止状態になり、ただひたすら横になった。  ベランダではナデシコやススキやらたくさんの草花達が風に揺れ動いてる姿がこちらを見て、ヒソヒソと噂してるように見えたのだ。                                          

0
0
あかるい花園

月の光

深夜の0時頃だろうか、なぜか急に目が覚めてしまった。 隣でねている卓也を起こさないよう、そっとベッドから出て、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り、グラスに注いでベランダに出た。 外は凍えるように寒く、スウェット姿だけでは流石に寒かったが、今夜の三日月は青白く、一段と美しく儚い感じだ。 カーテンを少し開けてるだけでも、部屋の奥まで青白い光が差し込み、卓也の寝顔まで青白く染めてしまうぐらいだ。 自分は明日仕事が休みだからいつもよりハメを外し、深酒しすぎて少し頭が痛い…。 けど、そんな事もどうでもよくなるくらい、今夜は卓也の寝顔が愛おしい…。 俺たちの関係は何も進歩しないまま、今の関係がズルズルと続いているのだ。 俺はいつのまにか、苦しくなるほど卓也の事が好きになってしまった…。 想いを伝えたい気持もあるが、もし伝えてこの関係が壊れて、二度と卓也に会えなくなってしまうのでは…と怖い想像までしてしまう。 なんで、「いつの間にこんなにも卓也の事が好きになってしまったんだろう…」と心中で叫んだ。 卓也には俺意外にも関係を持っている人が沢山いる。 所詮遊ばれてるだけだと何度も言い聞かすが、わずがな可能性を期待してします自分もいるのだ。 苦しいが、今一緒にいる事だけでも幸せだと思ってしまう…。 アラームが鳴り響き、朝日が昇って、目が痛くなるほど眩しい。 いつのまにか二度寝していたのだ。 「おはよー」と卓也が言う。 卓也はスーツに着替え、ツーブロックでトップの黒髪を七三分けにして、ジェルでかき上げ身支度をしていた。 「おはよー、卓也は今日仕事だったね」と寝ぼけながら呟いた。 卓也は俺にキスをし、抱きしめて「寝ぼけた間抜け面も可愛なぁ」と笑いながら仕事に向かっていった。 1人残された俺はベッドの卓也の温もりを感じながら、また眠りについた。 目が覚めて、スマホを見たら午前11時頃だった。 寝ぼけながらベッドを出て洗面台にむかい、歯を磨いていたら、電話が鳴った。 由明香からだった。 「おっはー!一樹!」と相変わらずテンションの高い声で、さっきまで眠気が覚めた。 「どしたの?急に電話なんかかけてきて?」 と私は聞いた。 「久しぶりに平日休めたから、これから会わない?」と由明香が言った。 突然の事だったが、社会人になってから由明香と会えてなかったから俺は二つ返事でオッケーした。 由明香とは専門学校時代の友人で良くいつもの仲良しメンバーの1人だった。 12時半に新宿駅の地下街にあるバーガーキングで由明香と待ち合わせした。 「おー!!ひさー!!」と大きな甲高い声でこちらに向かってきた。 由明香は相変わらずのギャルだった。 「相変わらずのぴちぴちギャルじゃん!」と笑いながら俺は言った。 由明香は明るく、誰にでも隔てなく接するので学校でもムードメーカー的な存在だった、それに由明香は俺のことをゲイだと知ってる友人の1人で気を許せる友人だ。 「一樹も相変わらず色々な男喰いまくってるんじゃないのー!笑」冗談でからかってきた。 「そんなんできたら男で困らないだろ笑」と答えた。 俺たちはドリンクとハンバーガーを頼み久しぶりの他愛のない会話を楽しんだ。 俺たちはバーガーキングをでて明るい時間から居酒屋に行き、軽く飲んだ。 由明香が突然「いま付き合っている彼氏なんだけどさー、最近恋愛感情持てないんだよねー」と言う。 「どうしたの?あんなに仲良かったのに…」 と私は疑問に思った。 「別に嫌いではないんだけどさー、なんかそういう目では見れなくなってマジやばいんよー」と言う。 恋愛経験が乏しいから不思議に思った。 けど、由明香みたいにどんなに明るいギャル系でもこういう事があるのかぁー、と色々話を聞いていて少し、勉強になったと思う。 由明香と解散した後、色々考えてしまった。 「恋とはなんだろう…」自分はいま卓也に片思いをしていて、色々と悩んでいた。 けどいくら考えても、本を読んでもわからない…。 恋とは難しい物だ…と自宅で紅茶を飲みながら壁に飾ってあるゴッホの絵を見ながらぼんやりと考えたのだった。 外は真っ暗で月が昇っている。 「卓也も今頃、この月でも見てるのかなぁ」と呟きながら、ただ物思いにふけるのだった…。

0
0
月の光

月見草

今日の午後3時ごろだろうか?卓也から「夕方ひま?」とLINEが来たのだ。 「18時からなら空いてるよ」ととりあえず返信しといた。 「 なら18半ぐらいにあそぼー」と相変わらず 軽いノリで返信がきた。 とりあえず「どこで会う?」と返信し、しばらく返信を待った。 「渋谷」 「おっけ」と送ったが、私はこの世で渋谷という街が苦手だ、 なんで渋谷ぁーかなぁーー、とつい枕に顔を埋めながら叫んだ…。 自分とは真逆のキラキラした明るい社交性の高い人間があつまり、ファッションに敏感な人達の集団なんかに、自分が歩いてたら、浮いちゃう…と焦りながらクローゼットから必死に服を漁った。 色々と服を選んでいるうちに、時刻は午後4時半を差した。 結局迷って選んだ服はビンテージ物のスタジャンに無地の白のロングTシャツにスキニージーンズだ。 とりあえずそれらを身に纏い、準備して家を出た。 慌てて小走りで、本八幡駅に続く細い通りを、ひたすら歩き、駅に着いた頃には黒髪が乱れ、汗をかいていた。 駅構内のトイレの鏡で髪を整えてから電車に乗り、耳にAirPodsを挿し、鈴木雅之&菊池桃子の「渋谷で5時」を聴きながら電車に揺られた。  渋谷駅に着いたのは結局19時だ。  ハチ公前は人集り溢れ、スクランブル交差点のビル群のモニターの爆音が鳴り響いていた。  後ろから肩を叩かれ、振り向いたら卓也がいた。  「おそーい、いつまで待たせるんだよー」と言い、「とりあえず喫煙所行こーぜ」と言い、俺達は喫煙所に向かった。  卓也はIQOSのミントを吸いながら、「お前まだ紙タバコかよー、しかもキャメル吸ってるなんておっさんみてぇじゃん」とホワイトニングされた真っ白な歯を剥き出しながらニヤニヤ笑ってる。 「いいの、これが一番安くてタバコ感あるから」と私はツンとした感じで言い放った。 卓也は「ふーん」と口をとがらせながら、バカにしたような顔でこちらを見た。 卓也は灰皿に吸い終わったタバコを捨て、一息をつき、「とりあえず服でもみに行こー」と言い、服屋に向かった。 渋谷のガラス張りの大型店舗の中に沢山並んだ服、どれも俺が着ないような派手な個性的なデザインな服ばかりだった。 卓也は、「これ可愛いじゃんと!」色々な服を重ねて試していたのだ。 俺は服にそこまで興味なかったから適当に、「あー、可愛いね。似合うんじゃない?」と適当に返事する。 その後も卓也の服選びは時間かかったが、結局一枚も買わずに店を出た。 二人で居酒屋に立ち寄り、卓也はビールと手羽先を頼み、俺はハイボールを注文した。 卓也は運ばれてきたビールをクビクビと音をたてて飲んだ。 「おまえ、手羽先の食い方下手だなぁ」と笑いながら卓也はビールを口に運んだ。 「じゃあどうやって食べるの?」 俺が聞いたら卓也は手羽先にしゃぶりつき、骨を引っ張り出したのだ。 確かに綺麗に食べれるが、なんか気持ち悪いと思った。 「好きに食べるからいい」と言い、私はチマチマ食べた。 二人で何杯か酒を飲み、居酒屋飯を堪能し、お会計を済まし店を出た。 渋谷は相変わらず、街は明るく、治安の悪い酔っ払いや、大声で奇声をあげる若者が溢れていた。 「このあと家に来る?」と卓也が聞いた。 「今日はこのまま帰る、明日色々とやる事あるし」と言い、卓也が「えー寂しいなー」と、不満気に言った。 「でもまたすぐ会えるし、近いうちまた!」と卓也は言い放ち、京王井の頭線の渋谷駅に向かった。 俺も駅に向かい、1人帰宅する事にした。 渋谷のごみごみとした忙しない街でも、ビル群の隙間から満月が一際美しい覗いている。 本八幡駅に着いたのは夜の12時半頃だろうか、あたりは真っ暗で駅前も人が少なくなっていた。 歩いて帰宅し、帰る途中の空き地に沢山の黄色い花色の月見草がいつのまにか、 咲き誇っていたのだ。 私は月見草を一輪摘み、帰宅後、ソファーの横のサイドテーブルに飾った。 風呂上がりに切子のロックグラスに氷を入れジンとトニックウォーター注ぎ、1人掛けソファーに座りながら、中森明菜の「ON NO,OH YES!」流し、ジントニックを飲みながら、今日の出来事に思いに浸ったのだ。

2
0
月見草

月を抱く

この世でいちばん美しく切ない姿は月だと思う。  アイリッシュウィスキーをロックで片手に飲み、タンクトップにパンツいっちょうの姿で窓際に立ちながら、仲田一樹は思う。 後ろから卓也が「何をぼんやり考えてるん?」ときいた。  「いろんな事」と俺は答えた。  卓也はおそらく何も深い意味はないだろうという風に「ふーん」とだけ呟き、いつもの定位置のソファーに座り、テレビに目を向けた。  私はこうやって夜風にあたり月を眺めながらウィスキーを飲むのが習慣になってるのだ。  卓也と知り合ってかれこれ3年ぐらいの付き合いだ。  私よりも8歳ほど離れており、都内でバリバリ働くエリートサラリーマンだ。  しかも超が着くほど陽キャでノリも良く、人気者で、男女問わず誰からもモテるだろう。  そんな人がなぜ真逆な私と同じ空間で息をしてるんだろう?と毎回会うたび不思議に思う。  そんなくだらない事を考えてたら、後ろから卓也が抱きついてきて「そろそろ横になろうか?」と私をベッドに引っ張ってきたのだ。  部屋は薄暗くなり、暖色照明だけで、卓也に押し倒され、キスをしてきた。  卓也の唇は柔らかく、優しいキスに毎回うっとりしてしまうほどキスが上手だ…。  私はこの時間がいつまでも続けば良いのに 、夜がもっと長ければいいのにと、卓也に抱かれながらそんな事を考えながらセックスをしてるのだった。  カーテンの隙間から微かな光が目を照らし、目が覚めた。 「もう6時か…」  横では卓也は上裸姿でまだ寝ている。  私はそっと卓也の筋肉質な肩に手を添えてまた横になった。 相変わらず綺麗な肌で、微かなボディスプレーの匂いが落ち着くのだ。  この時間が1番幸せで何とも言えない寂しさに襲われる時だ…このままずっとこうしてたいと思う。  卓也のアラームが鳴り、私達は起きた。 とりあえず朝の身支度をし、卓也はスーツ姿、私はセーターにジーンズ履きロングコートを羽織った。  外は相変わらず寒く、吐息が白く、顔の皮膚がキリキリするほど冷えてる。  早歩きで俺たちは千歳烏山駅に向い、一緒に電車に乗り、新宿駅で解散してお互いの会社に向かうのがルーティンなのだ。  私は都営新宿線の中で1人になり、急にポッカリと抜け殻になるような気分になった。 毎回の事だが、この時が1番切なく、自分が虚しくなる時間だ…。  「はぁー、いつか卓也と本当に恋人関係に慣れたらいいのに…」と心の中で思う。  そう、私達は所詮セフレの関係なのだ。  卓也には何人ものセフレの関係がおり、私はそ の中の1人に過ぎない…。  この関係が壊れるのが怖くて、いつも本心を伝えられない。  男女の恋愛もそうだが、ゲイの恋愛も複雑でゴールの無い儚い恋なのだ。  初対面の時からもそうだが、私達は出会って早々、体の関係から入った。  ゲイのマッチングアプリで卓也から声をかけてきたのがこの関係の始まりだ。  アプリ内でLINEを交換し、電話しながら新宿三丁目駅の地上口で待ち合わせし出会った事は、今でも鮮明に覚えている。  卓也は初対面から馴れ馴れしく、チャラそうなのが印象だった。  当時、自分は学生だったので何も考えず、ただ年上のちょっとチャラカッコイイお兄さんぐらいにしか思ってなかった。  とりあえず私はリードされるがまま餃子居酒屋に入り2人で軽くお酒飲み何気ない会話をした。  「一樹君って素朴な感じで可愛いね」と卓也が躊躇もなく、息をするように言ったのだった。  !?は?と私は突然の事に驚き、全然だよとと笑いながら、軽くあしらったが、そういうのに免疫のない私にとっては、初めての経験で世間知らずの自分には刺激が強すぎた。  そうも頭の中がパニック状態になっているうちに卓也がそろそろ解散しょうか?と言ったのでお会計し、駅に向かった。  電車を待っている中、卓也がコートから寒いから良い物をあげるーって言って、ホッカイロを渡してきたのだ。  は?と私は思った。  しかも汗臭い匂いがついたホッカイロだ。  私はこんな臭いの要らないよと冗談まじりで答えたが、卓也は「失礼だなぁー笑」と言いながら無理矢理私のアウターのポッケに入れて、電車に乗って帰った。  変な人と思いながらも、クスって笑えて愉快な人だなぁと思ったが、私の心に何故か変な違和感が…アレ?。  彼が去った駅のホームで私は不思議な気持ちになりモヤモヤした感情がただ残った。 私は改札を出てまた新宿三丁目駅の地上に戻った。  モヤモヤしながらただネオン街を歩き、新宿二丁目の行きつけのバーに向かった。  「あら!かずちゃん!いらっしゃーい」と、いつものでいい?とゲイバーの店子ののぶリン君がいつもの調子で迎えてくれた。   「今日はビールにしとくよ」と言い、とりあえずいつもの調子で私は平然を保とうとした。  店子の人達と楽しくたわいのない会話してたら、LINEの通知音が鳴った。  卓也からだった。  「家に来たかった?」と送られてきた。  私は素直じゃないから「別にどっちでも良かったよ」と送ったらすぐ返信がきた。  「じゃあ来る?」ときた。  「うん」と送信してしまった。  自分でもわからないが、何故か体が勝手に反応してしまった。  急いで会計を済まし、小走りで新宿三丁目駅に向かった。  電車に乗ってる途中も「俺ももうすぐ千歳烏山駅に着くから、そこの近くのライフの前で待ち合わせなー」ときた。  とりあえず私はも彼にしたがい、千歳烏山駅に着き、改札を降りて、ライフに向かった。  彼は入り口前で待っていたのだ。  「とりあえず酒でも買って行こうぜー」と言い店内で一緒に酒を選び、つまみなど買って、 彼のマンションに向かった。  「とりあえずシャワー浴びてこいよ」と言い私はタオルを持って浴室に向かった。  浴室内は殺風景で、整理整頓された清潔な浴室だった。  彼のメンズ物甘い香りのシャンプーを使い、メンソールのボディーソープで体を入念に洗い流した。  体をタオルで拭き、いつの間にか準備されてた卓也のスウェットに着替えたが、サイズが大きくブカブカだった。  その姿を見て卓也が、「不恰好で可愛いなー」とバカにしたような口調で私の顔を覗きこんだ。  「はいはい」と相変わらず愛想ない返事をして私は振り払った。  卓也は不満気そうに「ふーん」と言ってソファーに座りテレビに向けた。  私もとりあえず卓也の隣のソファーに腰をかけて恋愛ドラマを見た。  ハイボールを何本か開けてお互い色々喋ったが、ほろ酔い状態になり、どんな会話をしたのかは忘れたが、ただなんか心地よい幸せな時間だった。  深夜の午前3時ぐらいまで起きてたせいか、流石にお互い眠気に襲われ、卓也に誘われるが、まま一緒にベッドに入った。  特にこれといった、事はせず、お互い背を向けて横になった。  私は内心ドキドキしたが、これ以上何も発展しそうにもないので、淡い期待を捨て、眠りについた。  次の日が休みなので、お互い時間を気にせず、かなり寝てたのだと思う。  遮光カーテンのおかげか、部屋の中は真っ暗だか時間はお昼頃になっていた。 私は寝ぼけたまま、また布団に潜り、ただ目を瞑った。  卓也も起きていたのか、モソモソ動く感じが伝わってきて、後ろから私を抱いてきた。 私も卓也の手に軽く触れ、ドキドキしながら目を瞑った。  そしてお互い向かい合わせで抱き合って目を瞑ってたら、卓也の唇が私の唇に触れて、そのまま軽いキスを…。  卓也が「キスしてもいい?」と言って、自分は「うん」と言って、ディープキスをした。 私はこの時人生で1番激しく、気持ちいい大人のセックスを初体験したのだ。 それに初めて心がドキドキして胸が熱くなった体験も…。 卓也の逆三角形のマッチョの体に抱きつきながら私は溶けてしまいそなくらい、頭が真っ白になったのだ。 気がついたら夕方になってた。 目が覚めてもまだ夢の中にいるような感覚だ。 私はシャワーを浴び、帰る支度をし、卓也と一緒に駅まで向かった。 街は冬の寒さに包まれ、商店街は夕日色に染まっていた。 「じゃ!」と卓也は軽く手を振り、私は改札の中に入っり、私達は解散した。 初対面で1日半一緒に居たのにあっという間だった…。 駅のホームに1人ぼんやり立ちながらながら京王線の電車を待ったのだった。 電車のアナウンスで目が覚めて終点の本八幡駅に着き、降りた頃には外は真っ暗で冬の透き通った空気に包まれていた。 帰り道の真間川の桜並木の道を歩き、青白く輝く半月を眺めながら、今日の余韻に浸り、ただ帰路に向かうのだった。

1
0
月を抱く