落ちてゆく蜻蛉
今夜は半月が青白く優しく見守るように輝いている。
窓辺に置いてあるモスグリーンの一人掛けソファーに座り、白ワインを飲みながら一樹は月を鑑賞した。
部屋の奥に置いてあるガラスキャビネットの上にはリサイクルショップで購入した木目調のレコードプレーヤーが置いてあり、今日はエリック・サティの「ノクチュルヌ第三番」をセッティングしてある。
いまは亡き祖父から形見分けされたピアノ名曲集のレコードの中から今日の月に似合いそうの物を選び月を鑑賞するのだった。
ソファーの側には、縦型のクリーム色の石油ストーブが置いてあり、乾燥対策に水を入れた、赤いやかんから蒸気が立ち、窓がほのかに曇り、街のネオンの光がちょうど良い感じにぼやけている。
俺はワインを飲みながら、ただ月を眺め、このなんとも言えない至福の一時を一人、堪能してた。
窓際にはもう一つ一人掛けソファーが置いてある。
これは卓也が来た時の為に置いてあるのだった。
しかし、最近は自分が卓也の家に行く事が多いから、このソファーには誰も座る事なく、真新しい新品と変わらないほど綺麗な状態が保たれていた。
近ごろは卓也と会う回数が少し減っており、一人の時間が増えた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2024/9/3 3:22
最終編集日時: 2024/9/3 16:27
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
前田 芍葉
まえだ しゃくようと申します。
素人ではございますが、趣味で物語などを書くのが好きでなので、これから色々と投稿していきたいと思います。