Lucifer

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Lucifer

子供の頃の夢は小説家や脚本家になりたかったけどなれなかった普通のおばさんです。1981年2月17日生まれのA型です。 それでLuckyFM茨城放送リスナーと茨城ロボッツブースターをしているめっちゃくちゃ気まぐれで多趣味な性格です。

LuckyFes'24の思い出(DAY1編)

いよいよ開催されるLuckyFes'24 昨年は3日間とも海浜公園の駐車場を利用して楽しんだけど、終わって駐車場からの脱出に時間がかかった。なので、今回は勝田駅東口のコインパーキングに車を停めてシャトルバスで向かうことにしました。 7月13日、シャトルバスで海浜公園に着いた時には人がいっぱいだった。去年と同じようにチケット毎に並ぶのかと思ったらみんな一緒だった。そう、今年はゲート直前で振り分けをしているのだ。これなら迷うことなくスムーズに入れるね。 そうそう、ゲートに向かってる途中で主催者の堀さんと会えた。あいかわらず元気な人だねぇと思いながらも右手でLにして「イェーイ、今年も来たよ!」とハイタッチをした。 会場に入って真っ先に向かったのはLuckySpaceだった。ここでは3日間とも公開放送があるからである。放送が始まる前にパーソナリティたちと話せるかなって思ったけど無理だった。 ラッキー神社へ向かった。そこには子供の頃から大好きな推しのアナウンサーである阿部ちゃんがいた。 30年前、彼の番組で茨城放送を舞台にした物語を描くと手紙で送った。そしたら完成したら読みたいと彼は言ってくれたから長い年月が経ってしまったが完成したので渡したいと思った。 近くにいた堀さんにそのことを話したら行けと背中を押してもらえたので声をかけるが失敗した。ラッキー神社の御魂入れの儀が終了してからチャレンジした。30年前、番組での内容を話しながら持ってきた物語を渡そうとしたけど、「ごめん、今日はいろいろと忙しいから無理だね」と彼に言われた。そして足早に去ってしまったのだ。 私はショックが大きくて近くのベンチに座ると悲しくて顔をフードで隠すように被っておもいっきり声を上げて泣いてしまった。 泣くだけ泣いたら少しスッキリして短冊があったから願い事を書いて結んでいた。 「私が描いた茨城放送が舞台になった物語が本になりますように」 彼に読んでもらえないならお金を貯めて自費出版してしまえばいいと思った。登場人物や登場する背景などの名前もそのままにして… (以前、バロンさんに話をしたら、それもいいんじゃねぇの。そこに登場する俺が悪役でも気にしねぇよ!なんてこと言っていたな〜) そんなわけでLuckySpaceに戻ると公開放送が始まる直前だった。そこでは知り合いのリスナーさんと話をしたり、長野県から来たまいまい推しのリスナーさんと初めて会って話をしながら楽しんでいた。そうそう、11時過ぎぐらいに阿部ちゃんがゲスト席に来た。私が阿部ちゃん推しなのを知っていたリスナーさんが多かったので、最前列のセンターを開けてくれた。さらに写真が撮りたいとソワソワしていたらバロンさんのナイスアイストでいい写真が撮れて嬉しかった。 見たいステージは12時20分からの氣志團と12時50分からのイマヤスさん… とりあえず氣志團の音楽を楽しみながら茨城ロボッツのブースに行ってステッカーと隣のブースにて折り畳みのLuckyFesうちわをゲットした。氣志團のステージを遠目から見つつLuckySpaceに戻ってイマヤスさんのステージで集まった盛り上がった! そして花咲さんのステージでれなちょが出るかもという情報があったので公開放送を楽しみつつ待っていた。そして花咲さんのステージのラストにれなちょが登場して私が見ていたアニメの曲を歌っていたのでテンション上がった。それにしてもれなちょの歌うますぎるのにビックリした! その後、森高千里のステージを見るために移動を開始した。大塚愛のステージ、マシコさんのステージは被っていたので見ることができなかった。残念… 森高千里のステージを今かとワクワクして待っていた。そしてステージが始まってすごく懐かしい曲にテンション上がったんだけど、16時までに茨城ロボッツのブースに行かなければならなかったので最後までそこにはいることはできなかった。 茨城ロボッツのブース前では選手と一緒に写真が撮れるという時間指定のイベントがあった。B2リーグ時代からずっと応援しているラオ様と写真が撮れると思ったらワクワクしながら列に並んだ。すると私の後ろにMiCちゃんが並んだのでビックリした。そしてMiCちゃんといろんな話をしながら前に進んだ。しばらくして私の番になりカメラ機能にしてスタッフに渡して、テンションMAX状態だったので思わず「ラオ様とこんな近くで会えて嬉しい!」なんて言ってしまった。ラオ様も自分のこと様と呼ばれるのは慣れてなかったようでビックリした表情だったし、スタッフやシューゴたちは吹き出すように笑っていた。 その後はいろんなブースを見ながら楽しんでから拠点ともなっているLuckySpaceへ戻って公開放送のエンディングを楽しんでした。この時間は一青窈さんのステージが被っていたんだけどね。放送が終了してパーソナリティたちやリスナーたちとしばらく話をしてから移動開始した。 そして石井竜也with杏里のステージでは石井さんのボケボケトークに杏里さんのナイスツッコミがめちゃくちゃおもしろくて爆笑していたし、曲が流れると腕を振り上げて盛り上がっていたね。この後のウルフルズのステージまで体力が持つのか?と思うほどに〜 いよいよラストのウルフルズのステージ! 私はできるだけ前の方に行こうと人の間を縫って前に向かった。そしてけっこういい場所を確保し荷物を芝生に置いて始まるのを待っていた。そしてステージが始まるといっきにテンション爆上がりで体がどうなってもいいってほどに飛んだりなどをして体をめっちゃ動かしてましたね。やっぱサイコーだわ! そして全てのステージが終了して花火が始まろうとしていた時、前の方にいたフレンズが帰る準備をして移動したので柵がある場所まで前進できた。そしてドラゴンさんのDJに合わせて花火が始まった。私は今年も録画しながらその日にあったことをいろいろと思い出して涙が溢れてしまった。 そして花火が終わり帰ろうとした時に仲良しリスナーさんとまた会えたので、出口に向かいながらフェスやラジオの話などをしていた。そして翼のゲートを潜ってリスナーさんと別れてシャトルバスで勝田駅に戻ったのだった。

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LuckyFes'24の思い出(DAY1編)

Tears Falling in Fate第34話

 そしてノアの町へ行ったエドワードはラミアが住んでいる酒場へ行くとマスターに  「すみません、レックス様の姪っ子がここに住んでいると聞いたのですが〜」  「ラミアに何か用でもあるのかい?」  と聞いてきたのでエドワードは裁きの間でのことを言うとマスターは理解して  「あなたの話は理解しました。ラミアなら2階にいるけど、あの日からずっと外へ出ようとはしない。心に深い傷を負ってしまったようで〜」  「そうですか。会わせてもらいたいんです。」  「わかりました。どうぞ!」  と言われたのでエドワードはラミアの部屋に行った。するとラミアはエドワードに  「あのとき助けてくれた仮面のお兄さん〜どうしてここに来たの?」  「12時までに君とジェイを陛下の前に連れて行かなければならないんだ。じゃないとレックス様とアレックは失脚し、ケイは本当に処刑されてしまう。目覚めることなく〜全てあいつらの思うようにはなってしまうんだ。」  「先生が目覚めないまま処刑ってどういうことなの?伯父様が失脚するってどういうことなの?」  「ノアであったことをニコラとザメロは全てケイが悪いと真実を捻じ曲げて進言した。それに対して俺が見たり聞いたことをレックス様とアレックは信じてくれている。君とジェイの証言があればケイたちは救われる。」  「イヤ!あのときのことは思い出したくない!」 「…今は怖い思いをして本当に辛いんだろう。だけどこれだけは言わせてくれ!ケイは君を1番大切にしていた。その君が目の前で殺されたと思い込んで目覚めようとしないんだ。今のケイを目覚めさせられるのは君だけなんだ。11時55分まで噴水広場で待っている。」  と言うとエドワードは部屋を出て行ってジェイがいると思われる場所をマスターから聞いて向かった。しばらく歩いているとローズノアのアジトに着いた。そして扉を叩いてしばらく待つとミネットが出て来た。するとエドワードはマスターに話した内容と同じことを説明すると  「ジェイを呼んでくるからちょっと待ってて!」  と言うとミネットはジェイを呼びにその場を離れた。しばらく待っているとジェイが来てエドワードに  「話はミネットから聞きました。ケイたちのお役に立てるのであれば喜んで証言いまします。」  「ありがとうございます。あとはラミアちゃん次第か〜」  と言うとエドワードとジェイは噴水広場へ行ったけどラミアの姿はなかった。  「やっぱりいないか。ケイを救えるのはラミアだけ〜そのラミアがも心に深い傷を負って〜」  「ギリギリまで待ちましょう。」  「もちろんだ!それにしてもなぜ〜」  「仮面で顔を隠しているけど、あなたはアレック〜正確に言えばアレックの分身でしょうか?」  とジェイが言うとエドワードは笑い出して  「バレていたんだな。確かに俺はアレックの闇の心が具現化した者、それから俺以外にレックス様、バネラ様、シリウスの分身も俺の仕えている主人によって生み出された。」  「その目的は?」  「さぁ、俺にもわからない。」  「そうですか。それにしても自由に動けるんですね。あなたは〜何日かおきにノアに来てはケイの様子を見ていた。そのことはローズノアや町のみんなは知ってますよ。」  「そういえば町のみんなは俺のこと見ても警戒してない。まさかお前たちが言ったのか?」  「いいえ、あなたのことを町のみんなに言っていたのはケイですよ。」  とジェイは笑いながら言うとエドワードは驚いて飲み物を吹き出した。  「ケイに気づかれないようにと思っていたんだけど気づかれていた。ケイは何か言ってなかったか?」  「何も言ってないですけど、あなたが来てるのをわかると嬉しそうにしてましたよ。」  「そうか。それで俺の願いを聞いてもらいたいことが〜」  と言うとエドワードはケイの闇の心が具現化してルシフェルが誕生したこと、そのルシフェルが目覚めと同時にニコラとザメロへ奇襲かけたこと、ローズノアと教え子がノアで元気にしてることを伝えると大人しくなったことを言った。  「…だからルシフェルがケイの引き継ぎで子供たちに教育をしたいと言ってノアに来たときはケイのときのように〜」  「そんなことですか。もちろんかまいませんよ。あの子たちが全員巣立つ日までは〜ケイの友人という設定でみんなには話しておきます。」  「ありがとう。ジェイ!俺もルシフェルに話してみる。」  と言ったときラミアが来ていたようで  「どういうこと〜先生の友人という設定とかって〜」  と言うとエドワードはラミアに  「聞かれてしまったか。それより来てくれてありがとう。今は時間がないから行こう!時間ができたら全て説明するから〜」  とエドワードが言うとラミアとジェイの手を握って瞬間移動で裁きの間へ行った。そして裁きの間に着くとみんなは待っていた。するとレックスが  「時間ギリギリだな。エドワード!」  「あなたの姪であるラミアの心の傷が深くて〜だからギリギリまで待っていたんです。あの日のことでずっと外に出ることを怯えていたとマスターも言ってました。」  「そうだったのか。ラミア、勇気を出してよく来てくれたね。ありがとう!だけどケイは眠りに就いたまま〜」  とレックスが言うとラミアはケイの方を見るとショックを受けて泣いていた。それでもケイの所に行って  「先生、私だよ。ラミア!あのね、私たちが死んじゃったと思っているなら違うよ!あのときそこにいる仮面のお兄さんが私たちを助けてくれたんだよ。だからみんな元気にしてるよ。お願いだから目を覚まして!」  と声をかけるけどケイは何も反応がなかった。するとラミアはケイを抱きしめるとケイの口にキスをしていた。しばらくするとケイの腕が動き出してラミアを抱きしめて目を覚ました。  「…夢じゃないよね。」  と言うとラミアは笑顔でケイの顔をツンツンとしているとケイ嬉しそうに  「夢じゃない!ラミア、無事だったんだね。本当によかった!」  と涙を流しながら言うと今度はケイからラミアにキスをしていた。それを見ていたレックスは咳払いをして  「…ケイ、いつまでラミアとくっついているんだ!ラミアも人前でそんなことするのは〜」  と言うとラミアとケイは離れた。するとルクイエが笑みを浮かべてレックスに  「女性は愛する男性に夢中になることもあるのよ。それは大人であっても子供であっても同じこと〜」  と言うとアレックとバネラはミュウのことを思い出して納得していた。するとクリスが  「さて、これで全てがそろったわけだな。ノアでのことでどちらの意見が正しいのかを〜ニコラとザメロの方が正当であればレックス、アレックのS級隊長の任を解く!その逆であればニコラ、ザメロのの方の任を解くとこにする。」  と言うとラミアはあの日のことを思い出して耳を塞いで怯えていた。ケイはフラフラながらも立ち上がってラミアの所に行って抱きしめると優しく背中をさすっていた。  「大丈夫、怖い思いをしたんだよね。でもシンやルークたちは元気にしているんでしょう。」  「ケイ、そのことなんだけど、男の子たちは立ち直っているけど、女の子たちはラミアと同じように〜今は彼女たちの心のケアをしているけど時間がかかりそうなんだ。」  とジェイが言うとケイは落ち込んで  「そうだったのか。こんなときに僕はいない。兄様が言っていたようにノアに行かないで大人しくしていれば〜」  と言うとアレックはそんなケイに  「俺が言っていた意味をようやく理解したか。しかし時間は戻らない。ケイ、あの日にノアで何があったんだ!ラミアからは話を聞けそうもない。」  と言うとケイはジェイと一緒にあの日ノアであったことを全て話をしていた。ニコラとザメロは反論をして自分たちが正しいと主張していた。するとクリスは  「双方の主張はわかった。だが、どちらにも決定づけるものがない。となればやはり誰かの記憶を見るしかないようなだな。」  「そうですか。私は最後まで残っていたわけじゃないので途中まで〜ケイは体力的に負荷が〜そうなると残るはラミアさんしか〜」  とジェイが言うとケイは  「ラミアにそんなことをさせるわけにはいかない!僕なら平気〜陛下、お願いです。僕の記憶を〜」  と言うと倒れてしまったけど、それでも立ち上がろうとしていたのでジェイとエドワードが支えた。  「ケイ、そんな体では無理だ!そんなことよりニコラとザメロのどちらかの記憶を見せればいいことだろう!」  とエドワードが強めの口調で言うとザメロとニコラは笑い出した。ザメロが  「なぜ俺たちがそんな面倒なことをしなければならないんだ?俺たちは何も間違ったことはしていない。」  「そうよ!悪いのは全部ケイなんだから〜ケイは子供たちの心を利用して〜」  とニコラが言うとジェイは  「私たちレジスタンスはローズノアとして生まれ変わったんです。ノアの町を守る自警団として〜だから反旗を翻すことはしない!」  と言って睨み合っていた。するとラミアは勇気を出してケイたちの前に出ると片膝をついて祈りのポーズをして意識を集中させていた。しばらくするとラミアの所に魔法陣が現れてラミアの服装も踊り子のような服に変化した。  「ラミア、いったい何をするつもりなんだ?」  とレックスが呟くとラミアは歌いながら踊り出した。すると魔法陣は光の柱となり何かが映し出された。それはラミアがケイと過ごした記憶であり、複数の映像と一緒に音声もあった。アレックはその映像を見て  「これはケイと過ごしたラミアの記憶のようだ。俺の反対を押し切って家を飛び出して行って〜ちゃんと先生として子供たちに教育をしてる。子供たちも全員が養成学校を目指してがんばっているようだな。」  「そうだよ。スラム出身と貴族出身の格差を見て〜どんなに上に行ってもスラム出身者はバカにされる。レックス様もそうでしょう!」  とケイが言うとレックスは  「確かにそうだ。僕もS級隊長になってからもニコラとザメロに見下されていた。それで今でも貴族ってそんなに偉いのかよって思うよ。」  「そんなの関係ねぇよ。身分が違くてもみんな同じなんだよ。ケイの教え子たちはみんなお前を目指してるとケイから前にもらった手紙に書いてあった。」  「ラミアたちが僕を最終目標に〜それより映像が1つになった。」  とレックスが言うと映像を見ていた。ケイがラミア、カイト、ヴァインの3人を相手に実践形式で練習をしていた。そのときニコラとザメロにより奇襲攻撃があってあの日のことになる。するとケイは涙を流して  「ラミア、もういい!やめてくれ!これ以上やったら君は死んでしまうかもしれないんだ!それだけ強力なものなんだよ。これは〜」  と叫んでいた。そしてラミアがニコラの手によって殺されそうになった場面で全てが消えて、ラミアの服装も元に戻って倒れていた。ケイは必死になってラミアの所に行って抱くと  「泣いてるの?先生〜」  「当たり前だ!何であんな無茶をしたんだ。今の君には無理だって言ったじゃないか。」  「本当は怖かった。だけどこのままじゃ先生は〜だからママから教えてもらった歌と踊りで証明したかった。ちゃんと証明できたかな?」  と言うとラミアは気を失った。  「ラミア、しっかりするんだ!」  とケイが言うとエドワードはケイの所に行ってラミアの様子を見るとケイに  「今は気を失っているみたいだが危険な状態だ。」  と言って紫の液体が入ったビンを取り出してさらに  「前にアレックに飲ませた回復薬だ。飲めば一瞬にして何でも回復する幻とされている薬だ。初めからお前にも飲ませればこんなことになんなかった。俺もうっかりしていた。」  と言うとケイはビンの半分くらい飲んで回復するとラミアに残りを飲ませていた。しばらくしてラミアは目を覚ますとレックスは安堵の表情をして  「ラミア、君の勇気には感謝するけど〜君にもしものことがあったら僕はルーミィに何と言えば〜まったくルーミィもラミアに〜」  「ごめんなさい、伯父様〜」  とラミアが言うとクリスは  「レックス、そなたの姪はもしや女神の紋章が〜」  「隠すつもりはなかったのです。僕たちセフィルド家は女神の戦士の末裔なんです。紋章が現れるのはなぜか女性のなんです。僕の母、妹のルーミィ、そしてラミアと〜ちなみに僕とルクイエの間に女の子が誕生しても紋章は現れない。」  「そういうことなのか。これも運命の巡り合わせなのか。マリアとカルスによりアレックとジェミ、そのマリアとイザナでケイ、そしてラミアとケイが〜女神の戦士の血筋が強く受け継ぐと〜」  とクリスが笑いながら言うとケイは  「ちょっと待ってください!僕は戦争を引き起こして多くの命を奪ってしまった。戦争を引き起こせば処刑になると〜だから僕はラミアと一緒になることは無理な話なんです。」  「私が本気でそなたを処刑するつもりだと思っていたのか?私は初めから時止めと考えていたのだ。ただ、何年にするかはこれから決める。それにこの場を設けたのは違う理由なんだ。無論、このことはアレックやザンズたちにも知らせてないからな。」  と言うとその場にいた者たちはそれぞれに思いを言葉にしていた。そのときアレックの手首が輝き出してリストバンドを外すと虹色の紋章が少しずつ消えていた。そして完全に消えるとアレックは  「俺も陛下に隠していたことがあるんです。女神の呪いによって言えなかったんです。だけどさっきその呪いが消えたので〜実はケイは女神のセレーネスの子であるセレニアンの生まれ変わりなのです。」  と言ったときその場にいたエドワード、ケイ、ジェミ以外の者は驚いていた。するとクリスは  「2人の神が舞い降りし時、この世界に大きな危機が訪れるであろう。闇の神が勝利し時、この世界は終焉を迎える。それと逆に光の神が勝利し時、危機から救われ平和な世界が永遠に続くであろう。これはローゼン家に伝わるものだ。つまりケイの他にも神の生まれ変わり存在すると〜」  「そういうことになります。その者が誰なのかも知らないです。光がセレニアンで闇がジュレンス〜この神は女神セレーネスの子〜ジュレンスはかつて天界を追われてこの地にてディストラスと出会った。この世界にある伝説の始まりはこのことだったんです。」  とアレックが言うとクリスは納得した表情だった。  「さてと、話はだいぶそれてしまったな。ケイ、エドワード、ジェミ、ラミア、ジェイは控え室にて待機せよ!軽めの食事を用意してあるのでな。」  と言うとケイたち5人は退室して控え室行くと料理が置かれていた。なので5人は席に着いて食べていた。するとエドワードは笑みを浮かべて  「これで終わったな。ニコラとザメロは〜今までのことが全て明るみに出ることだろう。それにしてもよくがんばったな。ラミア!お前の行為があいつらを追い詰めるきっかけになったのだから〜」  「仮面のお兄さんが先生を救えるのは君だけだって私の部屋で言っていたから〜それより私の聞きたいことに答えてくれるんでしょう。」  「そういえばそうだったな。アレックの分身として俺が生み出されたのと同じようにケイにも分身が生み出された。そいつがノアに来たときはケイの友人として接した方がいいんじゃないかとジェイと話をしていた。」  とエドワードが言ったとき仮面をつけたルシフェルが姿を現して笑みを浮かべて  「もう僕のことが話題になってるんだね。兄さん〜初めましてケイの闇の心から生み出されたルシフェルと申します。みんなが困らないようにノアとかではケイの友人として行動する。」  と言った。するとケイは  「君が闇の心を持った僕なんだね。きっと僕に対しても言いたいことなどあるだろう。」  「何もないと言えばウソになる。だけど言ったところでどうしようもない。それよりあの家の鍵をくれ!僕が引き継ぐことにする。君の考えは同一人物なのだからよくわかっている。」  と言うとケイは学び場の鍵をルシフェルに渡した。  「ラミア、僕はケイみたいに手加減はできないかも〜それでもがんばって食らいつけば次の入試では合格できると思う。4人一緒に〜」  「どんなに大変でもがんばる!きっと他のみんなもがんばるよ。だから〜」  「決まりだな。それよりケイ、君の処分はどうなっているんだ?ずいぶんと余裕があるような顔をして〜」  「陛下は初めから時止めの刑にするつもりだったらしい〜だけどそれが何年になるかは決まってない。今は別件のことを先にするらしく〜ここで待っているんだよ。たぶんニコラとザメロの件だと兄さんが言っていたから〜」  とケイが言ったときルシフェルの表情が変わって力を高めながら  「ニコラとザメロだど〜あいつらだけは許せない!消し炭にして〜」  と言うとエドワードはルシフェルの所へ行くと2人で消えた。するとジェイが  「ケイ、どうやら地雷を踏んでしまったようですね。もう1人のあなたにあの2人の名は禁句ワードです。今はエドワードさんがなだめているのでしょう。」  「ケイ兄、自分のことなのに鈍感なんだから〜」  などと言われてケイはそれなりに言い訳を言っていた。しばらくしてエドワードとルシフェルは戻ってきた。  「ここは宮殿内だから何を言われても我慢する。あいつらの名が出ても〜」  とルシフェルが言うとみんな笑い出した。そしていろんな話をしているとアーサーが呼びに来たので6人は裁きの間へ行った。そして中に入るとアレックが  「お前はルシフェル!どうしてここにいるんだ!」  「アレック兄さんや他のみなさんには迷惑をかけてしまった。目覚めたばかりで無意識だったとはいえ、暴れてしまったことに変わりないのですから〜」  とルシフェルが言うとアレックは  「ケイより紳士的な振る舞い〜」  と思わず言うとケイは少し苛立って  「ちょっと兄様!それってどういうことよ!」  と言うとアレックは何も言わなくなった。するとバネラやレックスたちは笑っていた。するとクリスは  「ケイの闇の心より生まれし者よ!そなたが真っ先にニコラとザメロに奇襲をかけた理由もわかっておる。あの2人についてはS級隊長の任を解いただけではなく、B級隊員への降格処分にした。」  「…そうですか。かなりの不満はありますが、とりあえずはよしとしておきます。それでもう1人の僕への処分について見届けたいと思っているのです。」  「よかろう。」  とクリスが言うとルシフェルはエドワードやジェミたちのある場所へ行った。そしてケイの罪状について審議をしていた。そして結論が出るとクリスは  「ケイ・ストナイザ、そなたを10年の時止めの刑に処する。今はゆっくりと眠りについて目覚めたとき、新しい気持ちで歩んでもらいたい!」  と言うと解散となった。するとアーサーは  「ケイ、ある意味でよかったよ。10年経てばまた遊べるんだからよ。俺の仕事が終わるまで刑を執行するなよ!」  と言うと行ってしまった。そして9時に宮殿の前で集合すると約束してそれぞれ別れたのだ。  「さてと、残り5時間しかないけど〜ラミアと2人きりにしてくれないか?」  「ダメだ!何でそんなに一緒にいてくれないんだ。俺たちは家族だろう。それなのに〜」  と言うけどケイは何も言わなかった。するとルシフェルは呆れた表情をしてため息をつくとアレックに  「そういうときだけ兄貴ぶるな!ケイのやりたいことを素直に受け入れずに束縛しようとしていた。何でも自分が正しいと思っている。そんな姿に嫌気がさしたんだよ。」  「いいかげんなこと言うな!俺がいつケイを束縛したって言うんだ!」  と言うとルシフェルは苛立ちがピークになり  「よくそんなこと言えるな!5年近くも地下牢に閉じ込めて〜理由は何であれケイから自由を奪ったんだ。ジェミに危害を加えることがないとわかれば、すぐにでも旅に出るつもりだった。セレナスの各地や隣国にも〜それで2度とあの屋敷に戻るつもりはなかった。やっと自由になれたのにまた違った意味でケイのことを〜」  と言うとアレックは何も言えなくなりルシフェルがさらに何か言おうとしたときケイは  「もういいよ。ルシフェル〜兄様に何言っても僕の気持ちは伝わらない。それに過ぎてしまった時間は戻らないから〜それよりルシフェルにお願いがあるんだけど〜」  「言わなくてもわかっている。養成学校への入学が決まったら君がつけている水色のバラのピンバッジと同じこと者を贈ればいいんだろう。嬉しそうに用意していたのは僕もわかっている。」  「それじゃあ〜」  「もちろんだ。それよりケイ、君は本当にこんな形でアレック兄さんと別れることになってもいいのか?本当はわかっているんだろう。ノアのみんなと同じぐらいにアレック兄さんとジェミのことを大切に思っていること〜たまには素直になって一緒にいることも大事だ。ラミアとジェイは僕と兄さんといることにする。それでどうだ?」  「わかったよ。まさか自分に説教されるとはな。」  と言うとケイ、ジェミ、アレックの3人は仲良く立ち去った。そしてエドワードたち4人も瞬間移動してその場から離れたのだった。  そしてセレス中央エリアに行ったラミアたち4人は歩きながら話をしていた。  「おい、ルシフェル!今まであんなことを思っていたのかよ。あれでは俺でも何も言えなくなるぞ。」  「旅に出たかったのは本当のことだけど家に2度と戻らないって言ったのはウソ〜あれでアレック兄さんが何か反論するようであれば手が出ていた。」  「マジかよ。確かに自由になりたいといつも言っていたのに自分の立場ばかりを気にしていた。だけどこんな未来になるのがわかっていたらなって後悔しているんだぜ!父上がイーストスラムにしたことがもっと早く知っていれば〜」  「ふーん、そうなんだ。まぁ、過ぎた過去なんだからどうでもいいけど〜」  とエドワードとルシフェルが話をしているとラミアが  「何で仮面を外さないの?ノアではみんなにバレているんだから外したっていいじゃない。それにこの町の人には他人の空似っていうことでいいと思う。」  「ラミアの言う通りだな。」  とエドワードが言うと2人は仮面を外した。それから市場などに行って楽しんでいた。

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Tears Falling in Fate第34話

Tears Falling in Fate第33話

 そして目を覚ますとそのままレンスの屋敷へと戻るとアルゴルたちが目を覚まして広間にいた。  「アルゴル、シーレ、クザファン!目覚めたんだな。」  とエドワードが嬉しそうに言うとアルゴルはエドワードに攻撃を仕掛けた。エドワードはいきなりだったので防ぐことができず傷を負いながら突き飛ばされて倒れた。  「レンス様のお気に入りだからって調子に乗るなよ。この裏切り者め!」  とアルゴルが言うとエドワードはフラフラながらも立ち上がった。するとアルゴルは黒いクリスタルの十字架を現すとシーレとクザファンにエドワードを括りつけろと命じたが  「いくら奴らに肩入れしてるからってそれはやりすぎだ!」  とグザファンが言うとアルゴルは力を高めて笑い出した。そして印を結ぶと黒いクリスタルの十字架は影となりエドワードに向かったのでグザファンはエドワードをかばってダメージを受けていた。  「僕たちみたいに絶望の底より生まれてない君がこの技を受けるとただではすまない!」  「たとえ〜この身が滅びようと〜エドワードを殺させはしない!」  「そうか、ならば死ね!」  と言って苦しむグザファンにトドメを刺そうとしたときエドワードはグザファンを抱きしめてその場から消えた。するとアルゴルは印を解くと舌打ちをして  「逃げられたか。」  「アルゴル、何が気に入らないでそんなことをしている?レンス様の意見も聞かずに〜」  「シーレ、まさかとは思うが君もあいつらと同じではないだろうな。」  と言うとシーレは何も言わなかった。アルゴルはその態度が気に入らずシーレにダメージを与えていた。  「そういえばレンス様の命令でランツェアに行かなければならなかった。シーレ、その間に裏切り者のエドワードとグザファンを殺せ!」  と言うとアルゴルはその場から立ち去った。するとシーレはレンスの寝室に行って眠っているレンスを起こして広間であったことを報告した。  「なるほどな。そんなことが〜」  「このままではエドワードとグザファンのアルゴルの手によって〜」  「わかった。アルゴルが戻ったら再び眠らせることにする。シーレ、グザファンの代わりに明日の朝〜」  とレンスはシーレに指示を出すと再び眠ったのだった。そしてシーレはいろんなこと思いながら部屋に戻った。  そしてその頃、傷だらけのエドワードは気を失っているグザファンと一緒にセレス東部にある墓地にいた。  「…グザファン、しっかりしろ!」  と言って体を揺すっていた。そして生きていることがわかると  「よかった。気を失っているだけで〜何とかテレポテーションで逃げられたがこれからどうする?アルゴルは自分の意に反する者は消す。今はレンス様には従っているだろうけどいずれは〜」  と言うとエドワードも気を失ってしまった。しばらくして気がついたエドワードは周囲を見て  (…ここは俺の部屋〜そうか、アレックが俺を〜そういえばグザファンは〜)  と思って起き上がると頭を押さえているとアレックが  「気がついたか?」  「助けてくれてありがとう。それでグザファンは〜一緒にいたはず〜」  「心配すんな!客室で眠っている。それより仲間割れでもしたのか?」  「わからない。アルゴルは裏切り者と言って俺を消そうとした。そのときグザファンは俺をかばって〜何とか逃げ出したんだ。アルゴルが何を考えているのか俺には〜」  「そうか、話は変わるがなぜケイをノアに送ったんだ?」  「やりたいことをさせるために〜レックス様が行く25日までだったが、23日の昼頃にザメロとニコラが来てケイの心を崩壊させるため、ローズノアや教え子たちを虫の息まで傷つけていた。俺は光魔術を使って全員を完治させた。」  と言うとアレックは驚いた表情をして  「ケイはあいつらに〜それはそうと闇の者が光の力を使うとリスクが〜」  「あぁ、あれを使ってからレックス様の所へ行ってケイのことを伝えて、夢渡りでケイに少しでも光を持てるように傷ついた者たちを助けたことを伝えた。それから屋敷に戻ったからフラフラで〜」  「そこにアルゴルの攻撃を受けた。」  と言うとエドワードはうなずいた。するとアレックはマカロンの入った袋をエドワードに渡しながら  「好みが一緒なら食えよ!飲み物は〜ってお前は俺なんだからある場所ぐらいは〜屋敷から出なければ自由にしてかまわない。サオリとシオリには話してあるから心配するな。俺は少し出かけてくるから〜」  と言うとアレックは出かけた。エドワードは立ち上がって袋をテーブルに置くと棚からティーポットやカップを取り出して紅茶を淹れていた。それをカップに注いでハチミツを入れてスプーンで混ぜるとテーブルに置いた。そして座ってリラックスしていた。  そしてその頃アレックは宮殿の執務室に行って書類を整理しながらニコラたちの帰りを待っていた。そして25日の昼頃になってニコラとザメロが宮殿に戻るとアレックは待ち構えていた。  「これはこれはアレックがお出迎えとは〜あんたのかわいい弟はこの通り〜」  とニコラが笑いながら言うとケイはフラフラとしながら2人の後ろに立っていた。アレックはケイを取り戻そうとしたがザメロに邪魔をされて近づけなかった。そしてケイはニコラによって連れて行かれてしまった。  「ケイは俺たちが当日まで丁重に〜」  「ふざけるな!お前たちはケイに何をした!光を失っている目をしていた。まるで心のないような〜」  「アレック、これから死にゆく者に心は必要か?」  「そんなこと決まってないのに勝手なこと言うな!」  と言うとザメロはアレックを突き飛ばして笑いながら行ってしまった。しばらくしてアレックは悔しい表情をして宮殿内を探していたがケイを見つけられなかった。それもそのはず、ケイはある部屋に閉じ込めるとニコラとザメロによって2人にしか見えないように結界を張られていた。  そしてその頃、アストナス家ではエドワードは客室で眠るグザファンの前である決断をしようとしていた。そこへサオリが来て  「あの、バネラ様がお見えになられましたが〜」  「ここへ呼んでほしい〜それで大事な話をするから誰も来ないで〜」  「わかりました。」  と言うとサオリは出て行った。しばらくしてバネラが客室へ入るとエドワードは何があったのかを話した。  「…グザファンは俺をかばって〜たぶん、もう助からない。助かったとしても次にアルゴルと会えば〜」  「そうか、そのために俺を呼んだ。そうなんだろう?」  とバネラが言ったときシーレが来て  「エドワード、レンス様の意見も聞かずにグザファンをバネラ様に戻すつもりなのか?」  「そのつもりだ。グザファンの闇の力を全て俺が奪って心の水晶玉に戻す。そしてバネラ様に〜」  「私は認めない!確かにアルゴルの攻撃を受けて目覚めないのかもしれない。だけどエドワード、私たちは存在しているんだ。考え直してくれ!」  とシーレが言うけどエドワードは何も言わずにグザファンから力を奪おうとしていた。  「やめてくれー!」  とシーレは涙を流して叫んでいた。するとバネラはエドワードの腕を掴んで  「エドワード、シーレの思いを受け入れてやれ!あいつは仲間思いの強いシリウスの影〜それに俺はこのままでもかまわない。それによって戦うことになっても運命だと思う。」  と言うとエドワードはグザファンから力を奪おうすることをやめた。  「…28日にそうなる。俺はケイのことを守る。どんなことになっても〜」  と言うとバネラはエドワードの肩を軽く叩くと笑みを浮かべて  「お前もアレックと同じだな。できることなら戦わずにケイを手に入れたいと顔をしている。」  と言うとバネラは帰ったのであった。するとシーレはエドワードに  「アルゴルはレンス様によって眠らされた。変な容器の中で〜」  と言うとシーレは青いガラスを取り出した。そのガラス玉に映像が映し出されていた。その映像はアルゴルとレンスが映っていた。  「アルゴル、なぜ仲間を信頼できないんだ?エドワードとグザファンを消そうとしたんだ?」  「裏切り者には消えてもらった方があなた様の支障は出ないでしょう。それなのになぜ奴らに肩入れしているエドワードを生かしているんですか?」  「そんなの使い道があるからに決まっているだろう!さてと私の意に反したのだから〜それなりの罰を与えないと〜」  と言うとレンスは術を使ってカプセルのような大きな入れ物を出現させた。そしてカプセルが開くと中から複数の紐状が伸びてアルゴルの手足や首などに巻きついた。アルゴルは逃れようとしたがカプセルに引き寄せられそうになっていた。するとアルゴルは必死な声で  「レンス様、いったい何を〜」  「その中で眠りに就くのだ。そして2度と歯向かわないように〜」  と言うとレンスは印を結ぶとアルゴルはいっきにカプセルの中に閉じ込められた。手足は固定されているので身動きが取れない状態だった。恐怖を感じたアルゴルは涙を流して叫ぶように  「レンス様、お許しください!もう2度とエドワードに手を出さないと〜」  「虚言癖のあるお前など初めから信用などしてない!」  「僕はあなた様に忠誠を誓った。お願いですからここから〜」  「次に目覚めたときは私に心の底から忠実になるだろう。」  とレンスは笑みを浮かべて言うとアルゴルの両耳に細く長い何かがグングンと入り込んだ。するとアルゴルはもがき苦しみ出しながら叫び声を上げるといつしか気を失った。するとシーレは恐怖を感じながらもレンスに  「レンス様、アルゴルは大丈夫なんでしょうか?」  「心配するな。次に目覚めたときは大人しくなるだろう。それよりシーレ、倒れたグザファンを目覚めさせてやる。連れて来い!」  というところで映像が終わっていた。するとエドワードは  「わかった。レンス様ならグザファンを目覚めさせてくれることができる。それなら連れて行ってくれ!俺はここでやらないとならないことがあるから〜」  と言うシーレはうなずいてグザファンを抱いてするとその場から消えた。そしてエドワードは鏡の前で魔法陣を描きながら呪文を唱えていた。鏡が虹色に輝き出すと  「エドワードと言ってもあなたは私の知ってる者ではないですね。」  「さすがですね。俺はアレックの心の闇が具現化した者〜俺の他にも3人がいるしケイもいずれはレンス様により〜」  「エドワード、あなた次第で未来はいくらでも変えることはできますが、あなたを生み出した者が神の生まれ変わりならあなたは生け贄の道具です。」  とセレーネスが言うとエドワードは驚いた表情で  「…俺たちは生け贄の道具〜そのためだけに存在しているのか。こんなことは他の者には言えない。レンス様に歯向かえばアルゴルと同じように〜」  と言ったときエドワードはいろんなビジョンが見えてしまっていた。しばらくしてエドワードは何かを抱くように腕を組んで座り込むと震えた口調で  「…神々の戦い〜闇の神が勝利で真の破壊神が復活して世界が終わる。光の神が勝利すればこの世界は救われるが異世界で危機が訪れる。」  「見えてしまったのですね。エドワード〜それはこれから起きるであろう未来です。ジュレンスとセレニアンの力を覚醒させた者たちの戦い〜」  「…これは運命なんですか?受け入れるしかないんだな。できることならセレニアン様の力を覚醒させたケイが勝利する未来になってもらい。」  「立場的に辛いかもしれませんが、自分の信じる道を進みなさい。どんな末路になっても〜」  とセレーネスが言うと元の鏡に戻っていた。エドワードは立ち上がって振り返るとマリアが立っていた。  「母上、どうして〜」  と声をかけるけどマリアはエドワードのことを何も言わずに睨んでいた。エドワードはマリアの表情を見るとすぐに目をそらして  「わかっているよ。俺だって本当はこんなことは間違っていることぐらい〜だけどこれが運命ならどうすることもできない。ならば少しでも明るい未来になれるように願って進むしかない。」  と言ってマリアのことをそっと見ると  「エドワード、あなたが自分のやるべきことはわかっているなら思うようにやってみなさい。でも破壊の神を復活させていけない。この世界では〜」  と言うとマリアは消えてしまった。  (破壊神はいずれどこかで目覚めるということか。もしかしたら俺はジュレンスの生け贄になるのか?それがいついなるか〜わかっていることはケイは処刑にならない。俺が見た未来通りなら〜)  と思っているとセレーネスが言っていたことを思い出した。  「未来はいくらでも変わる。選択を間違えると最悪な未来になってしまう。どんなことしてもケイを生かせる道を選ばないと世界が終わる。」  というとエドワードはいつしか眠っていた。しばらくして目を覚ますとアレックが戻っていたようなので部屋に行って  「お前が俺と逆の立場だったらどうする?女神様に言われたんだよ。俺は神の生まれ変わりの者によって生み出された可能性が高いと〜それで何かの生け贄になるのではないかと〜」  とエドワードが言うとアレックはしばらく考えて  「自分の運命から逃げるな!俺なら逃げないと思う。自分が信じる未来に向かって進む!」  「やっぱりそうだよな。未来は自分自身で切り拓くもの〜俺には2つの未来が見えた。最悪な未来と平和な未来〜詳しいことは言えないが〜」  「不安な気持ちでいたのはそういうことか。ならばどうしたらいいのかはわかっているだろう?ケイを救い出さないと未来がないんだからな。俺にとっても〜お前にとっても〜」  「あぁ、そうだな。お互いの立場を利用してケイの処刑を阻止することだな。アレック!」  などと話をすると笑っていたのだ。  そして2月28日の朝、アレック、エドワード、ジェミの3人はセレニアス宮殿に行った。すると城門の前でザンズ、レックス、バネラ、ルクイエが待っていた。するとザンズは  「必ず来ると思っていたぞ。エドワード!だが、前にも言ったがケイを連れて行こうとするならば容赦はしない!」  と言うとエドワードはザンズに向かって何かをしようとしたがアレックが腕を掴んで  「やめろ!ここで騒ぎを起こしても無駄なことぐらいわかっているだろう。」  と言うとエドワードは冷静になってアレックの腕を振り払って  「わかった。そんなことはしないだけどケイの闇の心はいただく!レンス様がケイの闇の心を具現化してくれると約束してくれたからな。名前もルシフェルと俺が決めた。」  と言うとエドワードは気が狂うように笑い出した。ザンズ、レックス、ルクイエ、バネラはエドワードの言葉に対して驚と警戒をしていた。しばらくして裁きの間へ移動しながらそれぞれが話をしていた。そこへシリウスとアーサーが合流して裁きの間に入った。アレックたちS級隊長は奥に進んで、残った者は手前の扉を開けて入室した。エドワードは中央エリアを見ると生きているのか死んでいるのかわからない状態のケイがイスに座っていた。  「ケイ!しっかりしろ!」  とエドワードが叫ぶとニコラが笑いながら  「安心しなよ。ケイはまだいきているからさ。でもこころは壊れているから何も反応はしないけどね。」  「ふざけるな!てめぇらがノアでケイの仲間と教え子を手にかけたくせによくそんなことを〜俺がケイの様子を見に行ったから全員を助けることができた。」  「へぇ、あいつらは助かったんだ。」  「あの中にはレックス様の姪っ子がいたはずガラス気が強い赤いバラのピアスをした女の子が〜」  とエドワードが言ったときレックスたちが入ってきた。そんなことも気づかずにニコラは  「赤いバラのピアス〜あぁ、その子なら私の顔に傷をつけたからあらゆる関節を砕いて最後は血まみれにしてやった。そのおかげでケイの心にトドメを刺すことができたけどね。」  と笑いながら言うとエドワードの怒りもピークになっていた。それでも騒ぎを起こすまいと必死に堪えて何も言わずにいるとレックスがニコラに  「ニコラ!エドワードに言ったことは本当なのか?ノアでラミアたちを殺そうとしていたのは〜」  と言うとザメロはレックスを衝撃波で吹き飛ばして  「これが答えだ。レックスはケイと何かを約束でもしたのだろうけど、手柄は俺たちがもらったまでのこと〜」  と言った。レックスは立ち上がってときクリスが入ってきたのでレックスたちは自分の席の所で立った。クリスを中心に左側にザンズ、レックス、アレック、アレクサとなり、クリスの右側にバネラ、ニコラ、ザメロ、ルクイエとなっている。クリスが席に着くと一同は座ったのだ。するとクリスはエドワードを見つけると  「エドワード、そなたがなぜここにいる!ここはそなたが来るような場所ではない!」  と言うとザンズが  「お待ちください。陛下!エドワードをここへ呼んだのは私です。光と闇に分かれてしまってもケイのことを気になるのは兄として当たり前のこと〜もちろんケイを連れ出そうとする行為が少しでもあれば容赦はしないと〜」  「わかった。ザンズ!」  とクリスが言うとエドワードは  「そろそろ来ると思います。俺を生み出した者が〜」  と言ったときクリスたちは何かの気配を感じて周囲を警戒した。するとそこへグザファン、シーレを率いたレンスが姿を見せた。クリスは  「貴様らは何者だ!まさかエドワードの仲間なのか?」  「いかにも〜私はレンス・ファシブルでございます。クリス陛下〜」  「それでそなたの目的はケイを連れ出そうと言うのか?」  「いえいえ、私の目的はケイ・ストナイザの闇の心をいただくために参ったのです。」  と言うとレンスは術を使ってケイから心の水晶玉を抜き取って手にすると  「これはこれは〜そこにいるレックスと同じぐらいの漆黒の闇であるな。わずかでも光があれば戻すとの約束だったな。エドワード!」  「その通りでございます。」  とエドワードが言うとレンスは笑いながらエドワードに  「ケイは絶望の底に完全に沈んてしまったようだ。この水晶玉から光をまったく感じ取れない。確かめてみるか?」  と言うとエドワードに渡した。周囲の者たちは驚いていた。エドワードは手にすると涙を流しながら  「ウソだろう!そんなはずは〜ケイ、戻って来てくれ!お願いだから〜」  などと言っていた。エドワードの涙がケイの心の水晶玉に流れ落ちると微かであるが光が戻ったように感じた。それはレンスにも感じていた。  「レンス様、ケイの心に光が〜」  「これならケイの心は光と闇に分けることは可能になる。」  と言ってレンスは術をかけるとケイの心は光と闇に分かれた。光の心はエドワードによってケイに戻された。するとクリスはレンスたちに  「ケイの闇の心を手に入れたのだから用はないはずだ!早々に立ち去れ!」  「いやいや、お楽しみはこれからじゃないですか。どうやらこの中にいる誰かに復讐心を抱いておるようだ。」  「何だと〜この場で戦いを起こすつもりなのか?」  「それは闇の心を具現化させてみればわかること〜エドワードがルシフェルと名を与えたケイの影を〜」  と言うとレンスはさらに術を使ってケイの闇の心を具現化させていた。そしてケイの姿になると  「さぁ、今こそ目覚めるのだ。ルシフェル!」  とレンスが言うとルシフェルは目を覚ましてニコラとザメロを見ると攻撃を仕掛けた。ザメロは攻撃技を放ってルシフェルの攻撃を防いた。ザンズとアレクサはニコラたちに加勢しようとしたがグザファンとシーレに邪魔をされ手出しはできなかった。そしてニコラはルシフェルの背後に行ったけど気づかれてしまう。ルシフェルはニコラに殴る蹴るなどの物理攻撃を与え続けていた。ザメロが迫るのでニコラをザメロの方へ投げ飛ばしたのだ。するとエドワードが  「ルシフェルがなぜ貴様たちに的を絞った意味が理解できるだろう?ニコラ、ザメロ!」  「あんた、兄貴なら止めなさいよ!」  とニコラが叫びながら言うとエドワードはため息をついて  「ルシフェル!そいつらに憎しみがあるようだけど、お前の手で殺す価値もない!そろそろ遊びはやめて大人しくレンス様に従え!それからお前が気にしているケイの仲間や教え子たちはみんな元気に生きている!今もノアで〜」  と言うとルシフェルはニコラたちから離れて大人しくなった。するとグザファンとシーレはルシフェルを連れてレンスの所へ戻った。そしてクリスは術を使い壊れた物などを全て直すと  「なるほどな。ケイはニコラとザメロに何かをされた。それでそのことに対して復讐を〜」  「さてと、この通りルシフェルを手に入れたので行くとしよう。グザファン、シーレ行くぞ!」  と言うとレンスはルシフェルの腕を掴んでその場から消えるとシーレとグザファンも立ち去った。  「こんな場所で騒ぎを起こしてしまって申し訳ありませんでした。本来ならルシフェルを誕生させたらすぐに立ち去るつもりでしたが〜」  「まぁ、よい!今回の件はニコラとザメロのことが原因なのだからな。それでケイはどうなっているんだ?」  「目を覚ませばいつも通りなんです。しかしラミアという町娘のことを思い出してしまうと〜」  「そのラミアとは?」  とクリスが言うとレックスが  「ラミアは僕の姪なんです。ケイはノアでちょっと事件を起こしたのは陛下も存じておりますでしょう。僕の妹はレジスタンスのメンバーでありケイによって殺されてしまった。ラミアを引き取ろうとしたのですが、ラミアはノアを離れたくないと〜なので知人にラミアをあずけたのです。」  「なるほどな。今年になってからケイがノアで生活しているアレックから聞いている。その理由は自分のせいで孤児になった子供たちに教育しているとか〜」  「はい、孤児になった子供たちは全部で9名、僕の所有している家を学び場にしてます。レジスタンスのメンバーがケイのサポートしているようで子供たちは楽しそうでした。ケイはラミアが僕の姪であるからなのか、1番に大切にしてくれています。」  とレックスが言うとニコラは  「ケイを捕らえるためにザメロと一緒にノアに行った。ケイは話し合いに応じなかったどころかローズノアや教え子たちわ使って私たちに攻撃を仕掛けた。私とザメロは反撃に出たのよ。」  「ケイは自分の仲間や教え子が次々と倒されたことで自滅した。なのでケイをそのまま捕らえて宮殿に連行した。俺たちは何も悪いことはしてない。」  とザメロは笑みを浮かべて言った。するとエドワードは立ち上がって  「ウソも大概にしろ!俺がノアに行ったときはみんな生死を彷徨っていた。俺は自分の体がどうなっていいと思い、光魔術を使って倒れている全員をいっきに治した。金髪の男に何があったのかを全て聞いているんだ!」  「そんなのエドワードが勝手に言っているだけのこと〜陛下、私たちとそいつのどちらを信じるつもりですか?」  とニコラが言うけどクリスは何も言わなかった。するとアレックがエドワードに  「お前がテレポテーションを使ってジェイとラミアを連れて来れないか?俺とレックス様はその場にいなかったから証言はできない。その場にいたお前でも立場上は〜」  「わかった。今回の件について証言者を連れて来ますので少し時間をいただきたいです。」  とエドワードが言うとクリスは  「よかろう。12時まで待つとしよう。それまでに来なければニコラ、ザメロの証言を正当なこととする。」  と言うと出ていってしまった。エドワードは仮面をつけるとその場から消えたのだ。  

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Tears Falling in Fate第33話

Tears Falling in Fate第32話

 そしてその頃、セレス西部エリアにある謎の者が所有する屋敷でエドワードたち3人も謎の者によって眠らされていたのだ。そして謎の者はエドワードの両耳についている黒い星形のピアスを外して目覚めさせた。  「エドワード、目覚めたか?」  「ご主人様、どうして戻られてすぐに俺たちをアルゴルと同じように眠らせたのですか?」  「それを聞いてどうする?」  と謎の者はエドワードを威圧するとエドワードは何も言わなかった。  「さて、お前を目覚めさせたのは今日がイザナの最後だからな。」  と言うとエドワードは驚いて起き上がると謎の者に  「お願いです。父上の所へ会いに行かせてください。」  「やはりな。イザナと会ってくるがいい。それで今日から私のことをレンスと呼ぶのだ。」  「前に言っていた貿易商を営む下流貴族って言ったましたね。全ての手続きが終わったのですか?」  「そういうことだ。しかしこのとこはオリジナルたちには内密だ。」  「いろいろとあるのですか。わかりました。それでは手遅れになる前に〜」  と言うとエドワードはその場から消えた。そしてセレスの市場で黒のローブと口元が見える白い仮面を買った。それらを身につけると  (ゼレコロシアムに集結してるみたいだな。できれば今日だけは戦わずにいられたら〜)  と思うとその場から消えてゼレコロシアムに姿を現すとイザナに判決が出たばかりであった。  (間に合ってよかった。父上の最期に会えて〜)  と思って周囲を見るとみんなに警戒されていた。するとクリスがエドワードに  「そなたは何者だ!」  「この中に俺のことに気づいている者が何人かいるようだな。そうさ、俺はエドワード・ストナイザ、そこにいるアレックの闇の心がある者によって具現化された姿だ。」  「そなたがもう1人のアレックか。なるほどな。それでこんな所に来て何をするつもりだ!」  「親の最期を見届けるためだ。それができないと言うなら力でわからせるまでのこと〜さぁ、どうしますか?陛下〜もっともそこにいるザメロとニコラは一戦を交えたそうだな。」  と言うとクリスの意見を待たずにニコラとザメロはエドワードに攻撃を仕掛けた。エドワードはやむを得ずニコラとザメロを相手にした。エドワードは本気の2人を相手にしても遊んでいるかのように本気を出してなかった。ジェミ、ニコラ、ザメロ以外の者はそれに気づいていた。しばらくして  「そこまでだ!ニコラ、ザメロ、そしてエドワード!」  と言ったので戦闘は止まった。ニコラとザメロは興醒めたと言ってその場から立ち去った。エドワードはイザナの所へ近づいたけど、イザナがアレックたちと楽しそうにしていたので離れた所で立ち止まった。  「この中に俺の居場所はない。俺はアレックから生まれた影〜」  と言っているとイザナはエドワードの所に来て抱きしめていた。  「そんなこと言うな。エドワード!お前の居場所ならここにある。お前のことは本物のエドワードから聞いている。だから今回だけはアレックとエドワードと使い分けないとは〜」  と笑いながら言っていた。エドワードはその言葉が嬉しくて何も言えなかった。するとクリスは  「そなたに戦う意志がないのはよくわかった。宮殿内の移動は許可しよう。ただし、イザナの最期を見届けたら即刻に立ち去るのだ!」  「わかりました。陛下〜俺のことを受け入れてくれて感謝します。」  とエドワードが言うとクリスはその場から立ち去るとイザナはエドワードから離れた。するとエドワードはアレックの所に行くと  「…ケイとケンカでもしたのか?せっかく抜き取ってやったのにまた生み出しやがって〜しかも浄化しないでさ。」  「うるさい!あとで浄化はする!」  「あっそう!」  と言うとケイがエドワードに  「あまり兄様を責めないでほしい!父様が家に帰ってきてすぐに僕がノアに行ったから〜自分がずっとやりたかったことをやるために〜」  「それっていいことじゃないか!」  「兄様はずっと反対していた。僕もやがてノアに行けなくなる。そうなれば残された子供たちが傷つくと〜」  「…それでか。ケイの心に闇を感じるのは〜お前が裁かれる日に迎えに行く。あの方やシーレたちと一緒に〜」  とエドワードが言うとレックスが  「エドワード、そんな勝手なことはさせない!」  「ケイを処刑にするつもりなら戦闘になるまでのこと〜俺はケイを守るナイトなのだからな!」  と言ってレックスやザンズたちを睨みつけていた。  「2月28日だ!気になるならその日に裁きの間へ来るといい。ただし、ケイにどんな判決が出ようとも連れて行く権限はない。それだけは覚えておけ!」  とザンズが言うとアレクサと一緒にその場を離れた。するとエドワードは  「…あの人の威圧感って半端なくてちょっと苦手なんだよな。めちゃくちゃ怖いし〜」  と言うとイザナやバネラたちは笑い出した。するとルクイエにエドワードは  「うまくレックス様を救い出せたようでよかった。あれからしばらく眠らされていたから気になっていた。」  「エドちゃんのおかげよ。ありがとう!ところで他のみんなもあれから眠っているの?」  「あぁ、あの方の使用人としてそのうち目覚めるだろうけどな。だけどアルゴルは危険な存在なんだ。何を考えているか俺たちでもわからない。」  「僕の影が君たちでも手に負えない状態なのか。そりゃそうだよな。全てを憎み全てを壊したいと思っている。」  とレックスが言うとエドワードたちはそのことに関して何も言えなかった。しばらくしてケイはエドワードに  「兄さん、ニット帽ありがとう。」  「べつにいいって〜よく似合っているよ。だいぶ髪も伸びてきたし〜前みたいに長い髪にするのは〜」  「できるよ!」  と笑顔で言うとケイはいつもの長さに髪を伸ばした。エドワードは仮面を外して笑いながら  「あいかわらずだな。ケイ〜できるのにやろうとしない。まぁ、自然に伸びた方が本当はいいんだろうけど〜ケイ、ありがとうな。」  と言ってケイを抱きしめていた。しばらくしていろんな話をしているとルクイエ、バネラ、レックス、シリウスとは夜9時に再び会うことを約束して別れた。するとエドワードは仮面をつけるとイザナに  「俺が一緒にいない方がいいだろう。アレックの立場が悪くなるからな。だから9時に〜」  「そうか、私は一緒にいたいと思っていたんだがな。」  と笑みを浮かべてイザナが言うとエドワードはその場から立ち去ろうとしたときアレックが  「おい、待てよ!そんなにいたければ一緒にいればいいだろうよ。今日だけしか会えなくなるんだからな。」  「…いいのか?俺はお前の影〜」  「それでも家族だろう。父上、ケイ、ジェミはお前にとっても〜」  と言うとエドワードはケイたちを見るとみんな笑っていた。するとジェミはエドワードの手を握って  「エド兄、抱っこして〜」  と言ったのでエドワードはジェミを抱っこすると話をしながら移動した。そしてアレックの執務室へ行くとイザナは小さな容器の付いたネックレスを取り出した。そして何やら作業をしてネックレスを仕上げていた。  「エドワードにこれをやろう。本来の意味とは違うがアレックと同じネックレスを〜」  と言ってエドワードに渡すと  「父上の血が入ったネックレス〜でもどうして俺にこんな物を〜俺はあの方の命令があればアレックの敵となるのに〜だから悪者っぽく変装して遠くから見届けようとしたんだ。それだけでよかったんだから〜」  「エドワード、お前も私にとって大事な息子〜この先、お前は消滅するかもしれない。だからお前に持っていてもらいたいんだ。」  と言ってエドワードが手にしたネックレスを取るとエドワードの首につけてあげた。  「…ありがとう。父上〜大切にする。だから俺という存在があったことを忘れないでくれ!」  「クリスタルの中で力尽き、死者の世界に旅立つそのときまで忘れない。さてと、待ち合わせまで9時間もあるのだからみんなでセレスの中心街へ行こうではないか。」  「だったらいっきにテレポテーションするか。このぐらいの人数なら大丈夫だから〜この力はあの方から授けてもらえた特殊な術だからアレックには努力しても使えない。」  「なるほどな。それはそうと〜お前ばっかカッコつけてズルくねぇかよ。」  「だから言ったんだ。俺がいるとお前の立場が悪くなると〜それをお前は引き止めたんだ。」  とエドワードが言うとアレックは何も言えなくなった。するとイザナ、ケイ、ジェミは笑い出した。そしてエドワードはジェミを抱っこして、イザナたち3人はエドワードに掴まると瞬間移動でセレス中心街にある広場に着いた。そして5人は食事をしたりなどをして楽しんでいた。  そして楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい約束の時間である9時になった。エドワードは術を使って宮殿内にある処刑の間へ移動した。そこにはレックス、ルクイエ、バネラ、シリウスが待っていた。  「すまない。約束の時間より少し遅くなってしまった。」  とエドワードが言うとバネラたち4人はあまり気にしてはいなかった。そしてイザナは中央にある処刑台に横たわった。するとバネラは  「いよいよだな。これから長き眠りに就きゆっくりと時間をかけて力を奪われる。そして最後は力尽きてクリスタルごと消滅する。イザナ、今までありがとうな。」  「バネラらしくもないこと言って〜でもお前といると楽しかった。それからシリウス、レックスにはイーストスラムのことですまないことをした。」  「今さらそんなこと言われても失った命は帰ってこない!」  とレックスはイザナに背を向けて言った。そしてシリウスは  「確かにイーストスラムの件は許す気はないです。ですが、今まであなたのそばで戦場に出られたことに関しては本当によかったです。まぁ、不甲斐ないなときもありましたけど〜」  「何を言っているんだ。シリウス!お前がいたから何度も助かりセレナス軍を勝利に導けた。今度はアレックのために力を発揮してくれ!」  「もちろんです。イザナ隊長!」  とシリウスが言った。すると今度はルクイエにたいして  「ルクイエ、レックスといつまでも幸せにな。私の夢占いでは5年後に女の子が誕生すると出ている。確率はかなり低いけどな。」  「ありがとう。イザナ!あなたの夢占いを信じることにするわ。だけどレックスと一緒になっても隊長は辞めるつもりはないけどね。」  と言うとイザナは笑い出した。そしてしばらく話をしているとイザナはアレックに処刑執行しろと言ってゆっくりと目を閉じた。するとアレックは装置にS級隊長のエンブレムをハメ込んでスイッチを押して起動させた。そしてイザナの体が宙に浮き上がるとゆっくりとクリスタルに包まれていた。ケイたちは何も言うことなく見守っていた。しばらくして完全にクリスタルに包まれると生け贄の間という場所に転送された。アレックはエンブレムを左胸につけると  「父上を探しに行こう!」  と言ったのでみんなで生け贄の間へ行ってクリスタルに包まれたイザナを探していた。しばらくしてエドワードが見つけるとみんなを呼んだ。みんなが集結するとジェミが  「すごく幸せそうな表情してる。」  と言うとケイたち8人はそれぞれ心の中でイザナに語りかけていたのだ。その後は解散となりバネラたちは帰って行った。するとケイはエドワードに  「兄さんのテレポテーションでノアに送ってほしいんだけど〜どうせ兄様は僕の気持ちなんか理解してくれなそうもない。お願いだから今すぐにでも〜」  「いいのか?本当に〜」  と言ったときアレックはケイを引っ張って自分の方へ引き寄せてエドワードを睨みつけると  「ケイをノアには行かせない!」  「お前にケイの自由を奪う権限はないはず〜なぜそこまでしてケイの自由を奪うんだ?」  「てめぇには関係ねぇだろ!」  と言ったときケイはアレックの手を振りほどいてエドワードに抱きついた。エドワードはケイを抱きしめるとその場から消えた。  そしてケイとエドワードはノア付近の森に着くと  「ありがとう兄さん〜」  「いいって〜それよりケイ、絶望の底に堕ちて心を闇に染めるなよ。レンス様に狙われるから〜」  「レンス様って〜その人が兄さんたちの主人なの?」  「あぁ、そうだ。それ以上のことは言えないけどな。」  と言うとエドワードはその場から立ち去った。そしてケイはノアの自宅へ帰ってそのまま眠ったのだった。  そしてエドワードはレンスの屋敷へ戻るとレンスに  「ただいま戻りました。父上は永遠の眠りの刑となりクリスタルに〜最後まで見届けることができました。」  「そうか。イザナは永遠の眠りに就いたか。」  「それであの場で闇をいくつか感じたんです。1つは大きな闇の力を強力な光によってカモフラージュしている。まるで自分自身が気づいている。」  「それには手を出せない。とんでもないことになる予感がするからな。それで他の闇とは〜」  「2つは今にも消えてしまいそうな小さな闇、もう1つは闇をハッキリと感じることができる。」  「ほぉ、ではそいつを仲間にしようではないか。」  「申し訳ないですが、今は彼をそっとしてもらいたいです。せめて28日の裁きの日までは〜」  「なるほどな。その者とはお前の弟のケイなのだな。」  「その通りです。今はアレックと不仲であり、ノアの町で子供たちにいろんなことを教えているんです。ケイによって孤児となってしまった9名の子供を〜」  「お前は何が望みなんだ?」  「俺の望みはケイの心の闇を俺たちみたいに具現化してもらいたい。それで具現化したケイの影にルシフェルと名を与えてほしいです。そしてケイの引き継ぎでルシフェルにやらせたいんです。」  「よかろう。ケイの心を光と闇に分けて同じようにしよう。だけどルシフェルが子供たちを教えないと言ったらどうするつもりだ?」  「そのときはしょうがないです。その代わりなんですが、俺に少しばかりの時間をください。」  「わかった。それにしても黒のローブに白い仮面とはな。ノアに行くならそのローブはやめた方がいい。みんなに警戒されるからな。」  とレンスは笑いながら言うとエドワードは仮面とローブを外した。しばらくしてエドワードはシーレが眠る部屋に行くとシーレの顔に触れて  「シーレ、レンス様がケイの闇の心を具現化してくれると約束してくれた。そのときは一緒に迎えに行こう!」  などと言ってからグザファンの眠る部屋にも行って同じようなことを言っていた。そしてアルゴルの眠る部屋の前に行ったけど気が変わって自分の部屋に戻って眠った。  そして翌日からケイは学び場を再開して子供たちを教えていた。庭では剣術や魔術などを、教室では基礎知識や歴史などである。そして夜になって時間ができるとラミアを連れ出していろんな歌を教えていた。  そして2月15日の早朝、レックスはバネラと一緒にドメスのいる独居房に向かっていると焦げ臭い匂いがしていた。レックスたちはその匂いがする方へ行くとそこはドメスのいる独居房だった。バネラは扉を開けるとドメスの体は炎に包まれていたので、2人は消化しようと試みたが消えることはなくドメスの体は粉々の黒い灰となってしまった。  「これってドメスの自害だよな。」  「間違いはないだろう。だけどなぜこのような場所で〜とりあえずこのことを陛下に伝えよう!」  とレックスが言うとバネラと一緒にその場から離れた。すると灰の中から赤く輝く光の玉がフワフワと浮き上がるとどこかに飛んで行った。その光の玉はレンスの屋敷に入るとレンスの前で浮いていたのでレンスは  「私の片割れが戻ってきたか。」  と言うと光の玉はレンスの体内に入り込んむといろんな記憶のようなのが流れ込んでいた。  「なるほどな。夢で見ていた通りのことがあった。ドメスであるが今はレンスとしている。しばらくはセレスで奴らの前では仮面をつけて行動するか。」  などと言っていた。その内容を聞いていたエドワードはレンスに  「あなたの目的は何ですか?」  「お前には関係のないことだ。それとも私にそむくと言うのか?」  「いえ、そんなことは〜ですが、アルゴルたちをいつまで眠らせておくつもりでいるのですか?」  「私の考えに納得しないのであればケイのことについてわかっているだろう。エドワード!」 と言うとエドワードは何も言えなくなりその場から消えた。するとレンスは  「エドワードの奴、利用価値はあるが私のことを信用してない。ケイをネタに大人しくはさせているが〜」  と呟いていた。その頃、エドワードが向かったのはディスティルの東側にある小さな町まで移動してい。そして酒場の店主に慣れた感じで合言葉を言うと地下室へ案内された。ここのボスは  「エドワードさん、今日はどのような商品を持ってきたのですか?」  と言われるとエドワードはセレナスでしか手に入らない植物などをテーブルに置いた。そしてセレナスでは手に入らない鉱石などと取り引きしていた。そしてそこで取り引きされた物をセレスの貴族たちに売って利益を得ていたのだ。正当な物もあれば違法な物までを扱っていたのだ。  そして2月23日、ケイはいつものように子供たちといるとニコラとザメロが奇襲をかけてきた。ケイはジェイとジェーンと一緒に子供たちを守ると  「いきなり何をするんだ!」  「ケイ・ストナイザ、俺たちと一緒に来てもらう。その前に危険な芽を早めに摘んでおかないとな。」  とザメロが言うとジェイが  「私たちが危険とは〜だけど私たちレジスタンスは反旗を翻すことは〜」  「あら今はそうかもしれないけど、ケイが処刑になったらどうなる?子供たちは復讐心から〜」  とニコラは言いながら術を使ってケイをシャボン玉のようなのに閉じ込めた。ケイは脱出を試みたが壊せなかった。  「ケイ、レジスタンスと子供たちが死んでゆくのをそこで大人しく見ているんだね。」  とニコラが笑いながら言うとニックたち5人も集まってきた。そして戦闘になったけど力の差はあるようでローズノアの7人と子供たち8人が次々と倒されていた。そして最後に残ったのがラミアにだった。ラミアは複数の炎の矢をいっきに放った。ニコラは水の盾で攻撃を防ぐと霧が発生した。ラミアはその霧を利用してニコラに接近して持っていたナイフでニコラの顔に傷をつけた。  「よくも私の顔に傷をつけるとは〜」  と言うとニコラはラミアを捕まえて指の関節を折り始めた。ラミアは激痛で悲鳴を上げているとケイは  「ニコラ、やめてくれ!その子はレックス様の姪のラミアなんだ!お願いだからラミアを解放してくれ!」  と言うけどニコラは笑いながらケイの前でラミアのあらゆる関節を折りまくっていた。そしてラミアが動かなくなると上空に放り投げて氷の矢でラミアの体を貫いた。ケイはその光景を見ると叫び声を上げて倒れてしまった。するとザメロが笑いながら  「ケイの心にトドメをさせたようだ。それよりこいつらをどうする?まだ生きているが〜」  「どうせ虫の息でしょう。私たちはレックスより先にケイを捕まえることが目的だからね。さてとケイを連れて宮殿へ戻ろう!」  と言うとニコラは術を解いてザメロはケイを馬に乗せると2人はその場から離れた。それから数分後、エドワードがケイの様子を見に来るとその惨劇に理解はできなかったけど、印を結んで意識を集中させると  「まだ息がある!1人ずつだと間に合わない。光魔術は闇の俺にとってはリスクは大きい〜だけど今はそれに賭けるしかない!」  と言うと力を高めて術を発動させた。しばらくしてその場に倒れている16人の傷は完治して意識を取り戻して立ち上がった。そしてエドワードは術を使うのをやめると片膝をついて辛そうにしていた。するとジェイが  「仮面のあなたが私たち全員を助けてくれたんですね。ありがとうございます。」  「…それより何があったんだ?ケイはどこに〜」  と言うとジェイはエドワードに何があったのかを話していた。エドワードは全てを聞くと  「ケイはニコラとザメロに連れて行かれてしまったのか。」  「それで仮面の方、これからどうするつもりで〜」  「…ケイの手伝いと思っていた。ケイの処分がどうなっても子供たちを頼むと言っていた。」  「そうだったのですか。」  「俺はセレスを向かう。ケイの裁きについて何かわかればすぐに伝える。だからケイの思いを無駄にしないでくれ!」  「わかりました。子供たちが養成学校に入れるように私たちなりにやってみます。」  とジェイが言うとエドワードは笑みを浮かべてその場から消えてレックスがいると思われるネスコの町まで瞬間移動した。そしてレックスを見つけると  「ノアに行っても無駄だ!ニコラとザメロがケイを連れて行ったようだ。」  「それ本当なのか?」  とレックスが言うとエドワードはノアであったことを話した。レックスは驚いた表情をして  「話はわかった。ラミアたちを助けてくれてありがとう。これからセレスに引き返すよ。」  と言うとエドワードと別れた。そしてエドワードは  「これでよし!あとはケイの心を救えるかだけだが〜きっと絶望の底に堕ちてしまっているだろう。」  などと言っていた。そして廃墟の家に入って眠ると同時に夢渡りの術を使ってケイの精神世界へと向かった。そこではケイは涙を流しながら倒れていたのでエドワードはケイの体を支えて  「ケイ、辛くて苦しかったんだろう。今のお前は何も見えてないし、俺の声も届いてない。」  と言っているとケイの影が具現化してエドワードを襲ったので、エドワードはケイを抱いて攻撃をかわした。  「全てを失った。あいつらに大切な仲間を殺された。僕があいつらに復讐してやる。僕が本物に〜」  「ローズノアの仲間や子供たちは無事だ!俺がみんなの傷を完治させた。」  とエドワードは言うけど具現化したケイはまったく聞く気はなく連続攻撃をしていた。  「闇の人間がそんなことできるわけない。そんなリスクをかけてまで〜兄さんに何の得になる?」  「何の得にもならないけど〜お前に笑顔でいてもらいたいだけなんだ。最後の瞬間まで〜」  と言うと具現化したケイの攻撃は止まった。  「ニックやラミアたちが生きているって信じていいのか?本当に兄さんが〜」  「あぁ、そうだ!そんなに気になるなら俺の記憶を見るんだな。ただし、他の記憶は見るな!」  と言うと具現化したケイはエドワードから記憶の水晶玉を抜き取ってノアのことを見ていた。それを見終えるとエドワードに記憶の水晶玉を戻した。しばらくしてエドワードが目を覚ますと  「兄さんが言っていたことは本当だった。ありがとう兄さん〜」  と言うと具現化したケイは消えてしまった。エドワードはケイの所へ行くとケイは  「…ありがとう。兄さん〜」  と小さな声でそっと言ったので  「今はゆっくり休んで少しでも早く戻って来い!」  と言うとエドワードはその場から消えて現実世界へと戻った。

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Tears Falling in Fate第32話

Tears Falling in Fate第31話

 そして1月23日、ケイはいつも通りに子供たちの授業をしているとレックスが来た。  「こんな所で学校みたいなことをしているとはな。しかもここは僕の生まれ育った場所〜」  と言ったのでケイはジュンとレオンに子供たちを任せて  「確かにそうですね。所有権はレックス様とラミアちゃんですね。ですが、ここを使っていいと言って鍵を渡してくれたのはあなたじゃないですか?」  「気が変わった。君は時が来れば処刑になるんだ!それなのに何を子供たちに教えられるんだ!それから君を失った子供たちのその後はどうなる?」  「確かに僕は罪人です。それはラミアちゃんたちにも伝えてあります。いずれ僕がここを離れることも全て〜それでも僕からいろんなことを学びたいと集まってくれているんです。」  「君はラミアの心を再び傷をつけるつもりなんだな。一緒にいればそれだけ別れも辛くなる。」  「…それが運命なんですよ。レックス様〜出会いがあればいつの日か別れはやってくる。そして新たな出会いがある。あなたも少しは理解して〜」  「あぁ、そうだな。だけどアレックやバネラの考えをねじ伏せるまでのこと〜公私混同させるなと周囲から言われるけど、君には未来なんてない!」  とレックスが言うとケイは何も言わずにレックスに対して背を向けた。するとレックスは光の剣を手にして無防備なケイに攻撃をしようとした瞬間、レックスに向かって複数の炎の矢が飛んできた。レックスはそれに気づいてシールドで防いで矢が飛んできた方を見るとラミアが立っていたのだ。  「ラミアが僕に攻撃を〜」  とレックスが驚きながら呟くとラミアはケイの前に行き  「私たちの邪魔はしないで!邪魔をするなら伯父様であっても許さない!」  「なぜだ、ラミア!この人は〜」  「わかっている。でも私たちの大切な時間を奪うことはできないはずよ!この家が私にも所有権があるなら先生はこれからもここに住んでいい!今までと変わらずに〜私がそれを認めているんだからいいでしょう!」  「ケイを先生か。わかったよ。好きにすればいい!ケイ、わかっているとは思うが2月25日に君を捕らえる!」  と言うとレックスは立ち去った。するとケイはラミアの所に行って  「ラミア、もしかして全部聞いていたのかい?」  「うん、だって伯父様の表情が先生と出会った頃の私と同じだったから〜パパとママを殺した先生が憎くて〜だけど今は違う。少しでも先生と長く一緒にいたいと思っている。」  「ありがとう。ラミア〜さぁ、授業に戻ろう!」  と言うとみんなの所に戻った。そしてその頃、レックスは酒場のマスターと会っていた。  「レックス、もう彼のことを許しやったらどうなんだ?彼は町のためによくやってくれたと思う。今では子供たちに勉強を教えているし〜」  「だけどケイは死ぬんだ!裁きを受けて処刑になる。」  「それはお前次第でも変わることもあるんだろう。彼が飲みに来たときに言っていたよ。」  「確かに生かすも殺すも〜たとえ生かしたとしても10年から15年は眠ることになる。その間のラミアたちはどうなるんだ。」  「心配ないよ。レジスタンスの彼らがあの子たちを支える。それに彼の兄にも手紙を送ったそうだからな。まだ返事はないようだけど〜」  「…もういい!誰も僕の気持ちも理解してくれないんなら〜ラミアにも裏切られた。あの家の所有権を放棄することに〜その手続きをする。」  「そんなことしたら〜ラミアが大人になるまでルーミィの代わりをするんじゃないのか?それともまさかとは思うがラミアと縁を切るつもりなのか?」  と言うとレックスは涙を流しながら笑い出して  「そんなことを口に出してもできるわけないじゃないか。大事なルーミィの娘なんだからさ。」  などと言っていた。マスターは何も言わずにレックスの背中をさすっていた。しばらくするとラミアが帰って来たので、マスターはラミアとレックスを2階に行かせてちゃんと話し合いをすることをさせようとした。  そしてその日の夜9時頃、ケイは酒場へ行くとラミアはいつものように元気よくお店の手伝いをしていた。  「マスター、いつものワインとナポリタンをお願いします。」  と言うとカウンター席に座った。そして出されたワインの入ったグラスを手にしてラミアを見ているとマスターが  「最近のラミアはあの頃より明るくなったよ。それに覚えたばかりの歌とかを客の前で披露しているんだよ。」  「へぇ〜僕が歌っていたのを覚えたようだね。きっと大人になったら母様のような歌姫になるかも〜」  「ラミアがお姉ちゃんみたいにか。そいつは楽しみだな。まだ1曲しか覚えてないようだけどな。」  「大丈夫、そのうち他の曲も歌えるようになりますよ。」  などと話をしているとラミアが来て  「先生が満月の夜に歌っているのを聴いて〜」  「あの日か。それでレックス様と話し合いはできたの?」  「伯父様とはとりあえず仲直りはしたけど先生のことを許してない。だけどあの家は使ってもいいと言っていた。私が大人になれば完全に私の家になるみたいなんだよね。」  「そうなんだね。あのさ、1月30日からちょっと休みにする。3日までにセレスへどうしても戻らないとならない大切なことがあるから〜」  「先生もそんな日があるんだね。」  「うん、その用事が終わったらまた再開するから〜」  などとケイはテーブルに置かれたナポリタンを食べながら話をしていた。ラミアはケイの優しさに心が惹かれていることに自分自身もこのときは気づいていなかった。  そして1月30日の昼頃、ケイは授業を取りやめて子供たちに話をしていた。子供たちはケイにとって大事な日があることを理解するとそれぞれが声をかけて帰ったのであった。するとケイは手伝ってくれていたレジスタンスのメンバーを集めていた。  「今まで手伝ってくれてありがとう。仕事の休みなどを利用して〜」  「そんなことないぜケイ!俺たちだって好きで手伝っていんだからよ!」  「そうだよ。それに子供たちと一緒になっていろんなことを覚えたから楽しかった。あっちで用が済んだらまた戻ってくるんでしょう?」  とニックとミネットが言うとケイはうなずいて  「そのつもりさ。僕には限られた時間しかないんだから〜その時間を自分の好きなことに使いたいからね。」  「あなたらしいですね。ケイ〜戻って来たらそのときは手伝いますよ。」  「ありがとう。ジェーン〜それからレジスタンスって言い方を変えてみない?僕の考えいるのは〜」  とケイは自分が考えていることをみんなに伝えていた。するとジェイが  「なるほど〜自分たちの町は自分たちで守る。そのための自警団を〜それは名案ですね。」  「それで名前なんだけど、僕の好きな花であるバラと町の名前を合わせたローズノアってのはどうかな?」  と言うとレジスタンスのメンバーはみんなケイの意見に賛同したことでこの日からローズノアとなった。  そしてその日の夜、ケイはいつものように酒場に行ってワインを飲みながら夕食を食べていた。しばらくして食べ終えてラミアに  「これからちょっといいかな?」  と言ってラミアを連れ出した。そしてラミアをディランに乗せてから自分も乗るとディランはケイに  「女の子を連れ出してどこに行くつもりだ?さては彼女に惚れているのか?」  と笑いながら言うのでケイは少しムキになって  「そんなんじゃない!いいから丘の上の墓地に行け!」  「なーにムキになってんだよ。」  「うるさい!」  とケイが言うとラミアはディランを優しくなでながら  「ディラン、私は少しでも先生と一緒にいられて幸せな気分になれるの。だから先生のことイジメないで〜」  「…悪かったな。ケイ〜しかしあんた動物と会話ができるとはな。あのときは驚いたぜ。まったく〜」  「全部じゃないよ。仲良くなった動物だけしか会話ができない。ねぇ、私とあなたは友達でしょう?」  「そうだったな。それじゃしっかり掴まってろよ!」  と言うとディランは勢いよく走り出して丘の上の墓地へ向かったのだ。しばらくして墓地の中心に着くとケイは少し大きな石碑の前で両膝をついて手を合わせていた。  「…僕はこの町で多くの人々の命を奪ってしまった。今さら許してくれとは言わない。僕は町のためにいろんなことをやっていたことに対しては〜そんなことしても失った命は戻って来ないと怒る者もいた。」  などとケイが言っているとルーミィが姿を現したのでラミアは涙を流して  「ママ!」  「ラミア、本当にごめんなさい。そばにいてあげられなくて〜でも元気そうでよかった。」  「あのね、先生がいろんなことを教えてくれているんだよ。出会った頃は酷いことをさせちゃったけど〜」  とラミアが言うとケイは立ち上がってラミアとルーミィを見ないようにしているとルーミィは  「ケイ、あなたを暴走させてしまったのは私たち〜だからあなたは悪くない。あなたが本当はいい人なんだってことは亡くなった町のみんなもわかっているから〜」  「ありがとうございます。町のみんな僕のことを許してくれています。それにやりたいこともやらせてもらってます。ですが、あなたのお兄さんだけは〜」  「兄ちゃんも本当はわかっているはず〜いつもの冷静な兄ちゃんに戻ってくれるといいんだけどね。心に漆黒の闇を生み出したことで邪悪な何者かによって光と闇の心に分けられた。」  「それって兄様が言っていた闇の心を持ったレックス様のこと〜話ではかなり力の差があって勝てる気がしないって〜無敵の力なのではとも〜」  「確かに〜今の兄ちゃんは気づいてない。心に闇を作れば作るほどにあっちが強くなっていること〜兄ちゃんの心が完全に漆黒の闇に染まってしまえば、2つの心は1つに戻って支配権はあっちになってしまう。他の3人も同じことが言える。ねぇ、あなたの兄ちゃんは大丈夫なの?闇を浄化する能力があっても〜」  と言うとケイはルーミィに何があったのかを全て話をした。しばらくして  「そんなわけで手紙やメッセージボールを送っても返事が来なかった。」  「これから戻るんでしょう。だったらちゃんと話し合って〜たとえ父親が違っていても兄弟なんだから大丈夫よ。」  「そうするよ。それより〜」  とケイはラミアを指でさしながら言うとルーミィは  「ごめん、ラミア!」  「大丈夫だよ。ママ!先生と大事な話をしていたんでしょう。私なら大丈夫!ママの仲間やお店のおじちゃんたちなどによくしてもらっているから〜」  「そう、それならよかった。」  「それで私は好きな人がいるの。だけどその人はもうすぐで死んでしまうの。だから〜」  「ラミア、どうしてその人が死んじゃうってわかるの?もしかして未来が見えるの?」  「ううん、違うよ!未来は見えないけどその人が言っていたんだもん!悪いことをしたから処刑されて死の世界へ旅立つって〜」  と言ったときケイは自分のこと言ってるのに気づいたけど知らないフリをしていた。するとルーミィは  「もしもその人が生きられたとしたらどうする?確かに1度はその人とさよならになってしまうけど〜」  「大人になってその人を探しに行く!いっぱい歌を覚えて〜セレスって大きな町に行って〜セレナス軍にみんなで入って〜そしたらどこかで見つけられる。」  と言った。ケイはうつむいてポケットに手を入れて小さな箱を握っていた。するとルーミィはクスッと笑って  「私が気づいてないと思ってるんでしょう。何も知らない顔をしてとぼけても無駄よ。先生!」  「うっ、バレてたんですか?それより何でそんな可能性があることを言っちゃうんですか?」  「まだ決まってないんでしょう。だったらいいじゃない!それとも私の娘が嫌いなの?」  「違う!僕はラミアのことが大好き〜愛してる!ラミアが大人になったらって何度も思っていた。」  とケイは小さな箱を取り出してラミアに渡した。ラミアは箱を開けると赤いバラのピアスが入っていた。  「私の髪と同じ赤いバラのピアス〜」  「最初は痛いけどつけてみるかい?」  とケイが言うとラミアはうなずいたので赤いバラのピアスをラミアの耳につけてあげた。するとラミアはルーミィに似合っているかを聞くとルーミィは似合っているよと喜んで言っていた。しばらく話をするとルーミィは消えてしまったので、ディランに乗ってラミアを送って行くとそのままセレスに向かった。 そしてセレスの屋敷に戻ったのは2月2日の未明だった。ケイはディランに  「ほとんど休まないで走ってくれてありがとう。しばらくはゆっくりして〜」  「べつにいいって〜」  と言うとディランは眠ったのでケイはそっと玄関の扉を開けて中に入れるとアレックが仁王立ちをして  「外で物音がしたのでな。いったいどういうつもりであんな手紙などを送りつけた!」  「…僕がいなくなったときのことを〜あの子たちに未来を見せてほしくて〜」  「俺は手伝う気はこれぽっちもない!自分の先が決まってもないのに勝手なことをしたんだからな。1番傷つくのはお前の教え子たちだ!それを〜」  「わかっている!そんなことぐらい〜もういい!兄様には頼まないから〜それにあまり寝ずに帰ったから少し寝る。」  と言うとケイは部屋に戻ってそのまま眠った。しばらくして朝になると目を覚まして  「兄様にもレックス様と同じことを言われた。わかっているよ。そんなことぐらい〜だけど僕はやりたいこともできずに処刑されるなんてイヤだった。」  と言っていると自分の頭をなでられたのでそっと見るとイザナがいた。  「…父様、いたんですね。」  「まぁな。エドワードから戻ったと聞いたのでな。私のために戻ってきてくれたのか?」  「うん、それで〜」  と言うとケイは起き上がってノアでのことをいろいろと話をしていた。イザナは嬉しそうに相槌をしながら聞いていたのだ。そのうちジェミが来て話が盛り上がっていた。そしてアレックが入って来るとケイは  「ちょっと出かけてくる。」  と言って出かけようとしたけどアレックがケイの腕を掴んで  「どこに行くつもりなんだ!さっきまで楽しそうに話していたくせに〜俺のことがそんなに気に入らないのか?」  「…べつに〜」  「だったら今日ぐらいは家にいろ!父上と一緒にいられる時間が少ないんだから〜そのためにノアから帰ってきたんだろう?」  と言ってケイの腕を放すとケイたちは庭園に出た。そしてケイが結界を作ると笑顔でイザナに  「父様と手加減なしの本気の勝負してみたかった。」  「言うようになったな。ケイ!」  と言うとアレックが自分とジェミにダメージがないように結界を張って  「どちらかが戦闘不能になった時点で終了とする!」  と言うとケイとイザナは身構えているとアレックは戦闘開始の合図を出した。ケイはあらゆる属性の魔術攻撃でイザナを翻弄とさせようとしたが、イザナはケイの攻撃を鮮やかにかわすと反撃に転じていた。2人の攻防は激しくなっていた。しばらくしてケイの動きにスキができるとイザナは見逃さずいっきに追い詰めた。それでもケイは剣を手にしてイザナに対して接近戦に持ち込もうとしたときイザナのワナに引っかかって植物のツルに巻きつかれた。  「ケイ、爪が甘いな。」  「くそっ!こんなもの!」  と言って炎で焼き切ろうとしたがイザナは手をかざすとそっと  「ウッドドレイン!」  と言うとツルがケイの体力などを奪っていた。しばらくしてイザナはケイを解放した。そしてフラフラで立っているのがやっとのケイにイザナは  「ローズ・ウィンド・スナイパー!」  と言って術を放った。するといろんな色のバラの花びらが現れていっきにケイを襲った。ケイは炎の術を使って花びらを燃やしたが、炎から逃れたバラの花びらがケイの体を傷つけていた。そしてケイが倒れたことで勝負ありとなった。イザナはケイの所へ行くと回復術を使っていた。  「さすがですね。父様〜」  「それも経験の差だ。それにしても戦いを好まないお前が〜」  「自分の実力がどこまでなのかを試してみたかった。それに夢で戦いに巻き込まれていく自分の姿を見たから〜」  「なるほどな。」  などと話をしていた。するとアレックとジェミがケイたちの所に来たので話をしていた。こうして短い時間であるが家族みんなで過ごしていた。  そして2月3日の朝、イザナたち4人は玄関前に行くとサオリとシオリが立っていた。するとイザナは  「この屋敷とも最後か。サオリ、シオリ、これからもこの子たちのことを頼むからな。」  「もちろんですよ。お父様が亡くなってからも私とシオリをメイドとしてこの屋敷にいさせてくれて感謝してます。」  「本当はお前たちにメイドはさせたくなかったがな。あっちに逝ったらウィルに何を言われるか〜」  と言うとサオリとシオリは笑っていた。するとサオリが  「お父様に会えたら私たちは元気に幸せであることを伝えてください。」  「わかった。ウィルに会えたら言っておくよ。」  とイザナは笑いながら言うとサオリとシオリは玄関の扉を開けて  『私たちは伯父様の来世が幸せであることを心よりお祈りいたします。』  と言って見送ったのだった。イザナたちは宮殿に向けて出発してその道中でイザナはケイに  「ケイ、少し前まで寂しがり屋だったのにな。」  「そんなことないですよ。父様と会えなくなるのは寂しくて心がおかしくなりそうです。それでもどこかで割り切らないと前に進めない。死者は生者の心の中で生き続けることができる。思い出として〜ずっと昔に父様が教えてくれた言葉じゃないですか。」  「確かに言ったな。そんなことを〜」  「だから僕は忘れないよ。そしてそれと同時に来世の父様が幸せであることを願っているよ。」  などと話をしていた。  そして宮殿内にある裁きの間の前に行くとシリウスが待っていた。イザナはシリウスの前に両膝をついて  「シリウス、本当にすまなかった。私はケイとエドワードに裏切られたと思い込んで〜それでお前のことも内部から壊そうとした。お前はいつも正しいことをしていたのに〜許してくれ!」  「…やっとわかってもらえたんですね。イザナ隊長〜そして私の知っているあなたに戻ってくれた。」  「私は全てを失ったわけではなかった。それに気づいていたが、それを認めてしまえば呪術が解けてしまいケイの行く末まで〜だけ兄上が呪術を掛け直した。それによってケイの時止めで眠っても目覚めるまでは現世に残れる。」  「そうだったんですね。私はあなたの最期を見届ける。アレックの許しをもらえたのでね。」  と言ってイザナを立たせたのだ。そしてシリウスとイザナが話をしているとアレックはケイの心の闇に気づいだけど何も言えなかった。  (…ケイの心にも闇の力を感じる。きっかけはわかっている。俺であることを〜このままではケイが奴らに狙われてしまう。俺の分身であるエドワードも探知能力があるから〜)  などと思いながらケイたちと一緒に中へ入るとレックスやバネラたちが集結していた。ニコラとザメロはあいかわらず嫌味なことを言っていた。バネラはいつものように反論したかった。レックスは何も言わずにいたけどニコラとザメロ側についていた。そんなレックスを許せなかったバネラはレックスに  「てめぇ!何で奴ら側につく!」  「…僕はケイさえ始末できればそれでいい。僕から大事な妹の命を奪ったんだからな。」  と言うとアレックはレックスに  「そんなことして復讐をしてもあなたの心は晴れることはない!それはあなた自身がわかっていること〜そんなんではあなたの妹の魂はずっと現世にとどまり続けて生まれ変わることができない。それって幸せになろうとしているあなたの妹をあなたが束縛して苦しめている。」  「うるさい!君に言われる筋合いはない!それに僕はルーミィを苦しめてなんかはない。」  「だったら何で前を見ようとはしないんですか!いつまでも過去のことに〜確かに失ってしまい、悲しくて辛い思いをしている。そんなに妹に対してグダグダ言うなら〜」  と言って剣を左手に持つとレックスに向けてさらに  「今すぐにでもあなたの妹の所に送り届けてやるよ!」  と言ったときその場の空気が凍りついた。するとアレックはレックスに攻撃を仕掛けたが、レックスはとっさに剣を抜いてアレックの攻撃を防いでいた。アレックは笑みを浮かべると間合いを取って  「そうこなくちゃな!レックス様〜俺が勝ったら2度と過去のことでグダグダ言わせない。そしてケイに対してもいつもと変わらない態度でいてもらう!」  と言うとレックスは笑い出して  「いいだろう。アレック!君が勝てたらルーミィのことでケイに対する復讐心は捨てる。だけど僕が勝ったときはS級第5部隊の隊長を辞めてもらうと同時にケイを永遠の眠りにさせる!君は仲間に剣を向けたんだからな!」  と言ったときクリスが笑いながら  「来てみれば、ずいぶんとおもしろいことになっているではないか。ならば広い場所に移動しようではないか。」  と言ってクリスはその場にいる者たち全員をゼレコロシアムへ転送した。  「アレックとレックスの決闘を認める。使用武器は手にしている剣のみで魔術の使用を禁ずる。」  とクリスが言った。余裕のある表情をしているアレックに対してレックスは険しい表情をして剣を構えていた。そしてクリスの合図で両者の思いがぶつかった。初めは互角であったけど少しずつ流れが変化していった。するとそれを見ていたイザナは笑みを浮かべて  「これは決まったな。」  「えっ、父様〜勝負はまだ続いてますけど〜」  「流れが変わった。徐々にであるがレックスが追い詰められている。さすがケイのナイトだな。」  などと話をしていた。しばらくしてアレックはレックスの腹部を貫いて勝負ありとなった。アレックは剣を抜いて回復術をかけて傷を治していた。  「さすがお兄ちゃんの子〜僕の負けを認める。君の言う通りにこれからは前を見る。過去をあまり振り返らずに〜ケイのことも冷静に判断する。」  「やっとわかってもらえたんですね。それだけで俺は〜」  とアレックが言うと2人は笑っていた。するとイザナはクリスの前に行くと片膝をついて  「罪状は述べなくてもかまいません。数ヶ月前にケイたちが語っていた通りですので〜私はあの日から家族に裏切られたと思い込んでしまった影響で気が狂ってしまい、シリウスを手にかけようとまでしまいた。」  と言ったのでクリスはシリウスに確認すると間違いないとのことだった。そしてその場でイザナは永遠の眠りの刑と判決となった。

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Tears Falling in Fate第31話

セレネーヌ仮面 第26話(最終回)

 この物語は主人公たちの周囲で次々と起こる不思議な出来事に巻き込まれてしまうお話です。  なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名所などは架空であり、実際のものとは関係ありません。そのことをご理解の上、お楽しみください。  そしてあれから3年と少し後の6月のある日、ここはIBSの近くにあるプラザホテルである。そして花嫁支度室には白いウェディングドレスを着た千鶴が真衣と一緒にいた。  「ついにちーちゃんも圭太くんと結婚か。そういえばバロンさんに招待状は出したの?」  「うん、出したよ。返信用には出席に丸があったから来ると思うけど〜」  「そっか、そういえばバロンさんに会うのもすごく久しぶりな気がするね。」  「そうだね。圭太さんと正式に付き合うようになって、その後もみんなでうまくやっていたんだけど、翌年の3月末でIBSを辞めちゃった。その原因はやっぱり私たちのせいだよね。」  と千鶴がうつむいて言うと真衣が  「確かにそのことでハピモニも終わっちゃったんだよね。だけどちーちゃんや圭太くんのせいじゃないよ!」  「わかっている。だけどあれから連絡がまったく取れないんだよ。招待状だって阿部さんに調べてもらって〜」  「なるほどね。バロンさんと繋がっているのは阿部さんとだけね。それにしてもあれからもう2年ちょっとが経つなんて早いな〜」  「本当に早く感じるよ。圭太さんやバロンさんたちと一緒に始めたハピモニ、ケイによって私はセレネーヌ仮面として戦った日々、その中で圭太さんとの恋が芽生えた。」  「まさか私たちの前世がケイの家族だったのにはビックリした。そして阿部さんの前世がケイの尊敬する人〜」  などと話をしていた。しばらくして真衣は支度室を出て行くと同時にスタッフの人が入ってきて教会へと案内されていた。そのとき千鶴はあの日のことを思い出した。それは圭太が千鶴に告白をした翌年の勝田マラソンの実況中継が終わった直後のことである。お昼のお弁当を食べながらバロンは  「阿部さんには前に話したことなんだけど、みんなにも聞いてもらいたい。俺は今年度を持ってIBSを辞めることにした。今さらなんだけど東京に出て勝負がしたいんだ!」  と言うと千鶴や真衣たちその場にいた者は驚いていた。すると重典は  「バロン、もう1度だけ言うがそれで後悔しないんだな。」  「あぁ、今のままだと広瀬と圭太を心の底から祝福できないからな。少し離れた環境で気持ちを切り替えたいんだ。」  「そんなこと言わないで!それじゃあ私と圭太さんが悪者じゃないですか!」  と千鶴が言うとバロンはうつむいて  「本当にすまないと思っている。ちなみにあるタレント事務所とは契約している。だから春からは東京で生活になる。茨城にはしばらく帰ることはないな。」  「そうか。もし、茨城でしゃべりたくなったらいつでも戻って来い!」  と重典が言うとバロンは笑いながら  「今の阿部さんにはそんな権限はないだろう。でも、そのときが来たらそうさせてもらおうかな。週に1度でも〜」  などと話をしていたのだった。  そしてそんなことを思い出して  (バロンさん、この1年は誰ともまったく繋がってないみたいだから忙しいのかな?LINEも未読スルーが多いし〜やっと阿部さんに調べてもらって出せたんだよ!でも東京ですごく活躍してるのはみんな知っているよ。そうそう、阿部さんも今年度から編成局長になったんだよ。ねぇ、バロンさんにとって私たちは〜)  などと思っていた。しばらくして教会の扉が開くと千鶴は拍手で迎えられた。千鶴はゆっくりと圭太の待つ所に向かいながらバロンを探していたけど見つからなかった。しばらくして千鶴は圭太の隣に来ると圭太は小声で  「どうしたの?」  「ちょっとバロンさんがいないみたいなの?もしかしてまだ〜」  「出席に丸がついていたんだからそのうち来ると思うよ。それより〜」  と言うと圭太と千鶴は神父の前で挙式をしていた。しばらくして挙式が終わると真衣たちみんなは教会の外で圭太と千鶴が出てくるのを待っていた。そして扉が開いて圭太と千鶴は幸せいっぱいな表情で出て来て真衣やかつりょうたちと話をしながら広場に向かっていた。そして出席者の最後にバロンがいた。すると千鶴と圭太は笑顔で  『バロンさん!』  と言ってバロンの所に行った。  「広瀬、圭太、結婚おめでとう!」  「ありがとうございます。バロンさん!それより挙式のときにはいなかったみたいだけど〜」  と圭太がバロンに聞くとバロンは笑いながら  「首都高での事故の影響で渋滞して間に合わなかった。ずいぶんと遅くなって悪かったな。」  などと話をしていた。そのとき複数の黒い羽根が不自然に舞っていたので、千鶴は圭太たち5人に  「圭太さん、バロンさん、黒い羽根が風もないのに舞っている。」  と言うと重典はそれを見ると何かに気づいて、他の者たちには誰も来ないように伝えると、千鶴たちを連れてその羽根を追いかけた。そしてその羽根が消えると青い瞳で青緑色の長い髪をした半透明の姿の老人が椅子に座っていた。重典たちはその人物がケイなのではと思った。そして重典はその老人に  「もしかしてお前はケイなのか?」  「その声はアベだね。そして近くにはバロン、ケイタ、チヅル、アキラ、マイがいる。そうだね。」  「あぁ、その通りだ!ケイ、裁きの光によってお前は魂ごと消滅したんじゃないのか?」  「僕も初めはそう思っていた。だけど気がついたら体ごと死者の世界にいたんだ。兄様たちのいる時の流れの〜」  「どういうことなんだ?」  「女神の子であるセレニアンと女神の戦士ストナイザという2つの魂の融合されて生まれ変わったのが僕なんだ。そして消滅する瞬間、魂が2つに分裂をしてセレニアンの魂の方が消滅して僕は助かったんだ。」  「それじゃあその姿は〜」  「セレニアンの消滅で神の力を失ったからね。それでせっかく体があるなら残りの人生を楽しんでこいって兄様たちに言われたからセレナス帝国に戻った。そして50年ぐらいは暮らしていた。」  とケイが笑いながら言うと圭太は  「どうしてあの日、自分が消滅することを選んだんだ!僕はケイを失って心が絞めつけられるように苦しかった。」  「ケイタ、本当にすまなかった。それで僕の寿命が尽きる前に君たちと何とか話がしたいと思っていた。そしたら奇跡が起きて思念体だけをこの世界に飛ばすことができたんだ。」  「ケイ、もしかして〜」  「あぁ、僕はまもなく命が尽きる。そして生まれ変われるんだ。君たちの住んでいるこの世界で数年後に〜」  と言うと圭太はすごくホッとした表情をしていると千鶴が嬉しい表情で  「ケイ、私と圭太さんは結婚したんだよ。やっと〜あなたが消えてしまう前に願っていたことがようやく現実になったんだよ。それでさっきまで教会で挙式をしていたよ。」  「そうか。ケイタ、チヅル、結婚おめでとう!いつまでも幸せに〜それからおもしろいことを教えてあげるよ。さっきは数年後に生まれ変われると言ったけど、それは君たちの子供として僕は生まれ変わるんだよ。」  と言うと圭太たちは驚いていた。すると千鶴と圭太は見つめ合うと何も言えなくなった。そしてバロンは  「ケイは家族の愛情を知らずに育ったようだけど、あいつらなら心配ないさ!今度はたくさんの家族の愛情を受けられるからな。」  「そうだな。それよりバロン、君は大丈夫なのか?」  「心配すんなよ!俺はもう未練なんてないし、今は東京で新しい生活を始めているからな。時の流れは早いもので、お前がいなくなったあの日からもう3年4ヶ月が経ったんだ。」  「そんなに年月が経つんだ。本当はみんなの姿を見たかったけど、僕の世界では治せない病によって視力を失っている。だけどアベ、ケイタ、バロン、アキラ、チヅル、マイのことは感覚でわかっているからね。」  とケイが笑顔で言うと晶が  「それでさっきあんなことを言っていたんだな。まるで何も見えてなかったように言っていたから不思議に思った。」  「アキラ、君の時間は無事に動き出したんだね。」  「ちゃんと5年前のあの日に戻ることができた。記憶の混乱はいろいろとあったけど、自分の中で整理をして今があるんだ。」  などとケイたちはいろんな話をしていた。しばらくするとケイは少し寂しい表情をして  「どうやら時間が来てしまった。僕はこれから死者の世界へ行き、魂が浄化されて新しく生まれ変わる。最後に君たちに会えて本当によかった。さよなら〜」  と言うとケイは消えてしまった。すると重典は空を見上げて涙が流れると  「ケイとしてはこれが最後なんだな。ありがとう。最後に会いに来てくれて〜きっと広瀬と高橋なら大丈夫だ!」  と言うと圭太たちもそれぞれに思って空をしばらく見上げていた。そしてみんなと合流して披露宴会場へ向かった。  そしてさらに月日が流れて10月になっていた。第1スタジオではこれから新番組がスタートしようとしていた。するとボブPとかつりょうがスタジオに入って来。そしてボブPが  「バロン、本当に久しぶりだな。」  「やっと気持ちが切り替わることができた。そしたらまたIBSで話せるようになれたんだ。」  「阿部が以前にハピモニチームが集結できる番組を必ず作ると言っていたからな。それがこの番組か〜」  とボブPが言うとかつりょうが  「バロンさんがフリーになったから週に1度なんですよね。しかも番組のタイトルが土曜王国と書いてサタデーキングダムと〜」  「バロンさん、ボブP、かつりょう、そして圭太さんと私で始まったのがハピモニでしたね。あの頃はいろんなことがあって、バロンさんはいつしかIBSを去ってしまったけどこうしてまた〜」  「あの頃は俺も〜」  などと話をしていた。しばらくしてそれぞれが準備をして放送時間を迎えた。そしてバロンはカフを上げると千鶴と一緒にオープニングトークをしていた。しばらくして圭太のレポートも入りながら楽しくやっていた。しばらくして千鶴は話の流れで  「バロンさん、そういえば今度CDを発売されるみたいですね。」  「まぁな。この曲は未来に向かって走り続けてもらいたいという願いを込めた応援ソングとなってます。それでは発売前だけど、ここでお送りいたします。バロン山崎でYOU CAN RUN!」  と言ってカフを下げるとバロンの曲かが流れた。こうしてバロンと千鶴は久しぶりだったけど、ハピモニと変わらない雰囲気で放送をしていたのだった。そして5時間の放送が終了するとボブP、かつりょう、圭太がスタジオに入って来て放送後記を収録していた。  そして収録が終わって圭太と千鶴はバロンにまた来週と言って先に帰った。しばらくしてからバロンはスタジオを出ると重典が待っていた。  「バロンお疲れ!久しぶりのスタジオはどうだ?」  「俺がIBSを去ってから2年半が経ったのに何も変わってない。そういえば圭太と広瀬の挙式後のときに言えなかったけど、阿部さん昇進おめでとう!」  とバロンが言うと重典は笑い出して  「ありがとう。そう言うお前もCD発売するんだってな。移動中に聴いていたけどいい曲じゃないか。大ヒットするといいな。」  「あぁ、それはそうと久しぶりだから晶も誘って飲みに行かないか。もちろん俺はソフトドリンクだけどな。」  とバロンが言うと重典は晶を誘って飲みに出かけたのだった。  それから3年後、土曜王国では千鶴が産休になったので真衣たち女子アナが代打をしていた。そして6月のある日、この日は真衣がバロンと一緒に放送をしていた。そして3時半頃にある場所と中継を結んでいた。  「ここで圭太と電話が繋がってようです。もしもし!」  とバロンが呼びかけると  「あっ、バロンさん、菊地さん!ついに僕たちの子供が無事に誕生しました!えっと53センチの2856グラムの元気な男の子ですよ!」  と圭太は嬉しくてテンション高めで言っていると、バロンと真衣は祝福の言葉を言ってかつりょうは拍手の嵐のSEを流していた。そして圭太は千鶴の耳にスマホを近づけると  「バロンさん、真衣さん!」  「ちーちゃんおめでとう!これでちーちゃんもお母さんだね。」  「そうだね。真衣さんたちにはさらに迷惑をかけてしまうけど〜」  「べつにいいよ!そんなこと〜落ち着いたら戻ってきなよ!待ってるから〜」  と真衣が言うとバロンが  「広瀬、よかったな。赤ちゃんが無事に生まれて〜これから大変なこともあるだろうけど、お前たちなら心配はないだろう。とにかく今はおめでとう!」  「ありがとう。バロンさん!」  などとしばらく話をして中継が終了した。すると千鶴は圭太に  「それより名前は決まっているの?」  「彗星の彗と書いてケイにしようと思っている。」  と言うと千鶴が抱っこしている彗の頭を優しくなでていると千鶴は  「圭太さんもスッカリお父さんだね。それより彗がずっと何かを握りしめて離さないでいるんだよ。」  「彗、何を持っているのかな?パパに見せてくれないかな?」  と言うと彗は笑いながら手を開くと水色のバラのピンバッジがあった。圭太はそれを手にして  「これは前世の君がいつもつけていた大切な物だね。そうか、僕たちにちゃんと生まれ変わったよという君からのメッセージなんだね。」  「圭太さん、この子の前世は親の愛情を知らずに大人になった。だけど今度は私たちでこの子がいっぱい愛情を感じられるようにお互いにがんばろう!」  「あぁ、そうだな。千鶴!」  などと嬉しい表情で話をしていた。                     FIN

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セレネーヌ仮面 第26話(最終回)

セレネーヌ仮面 第25話

 この物語は主人公たちの周囲で次々と起こる不思議な出来事に巻き込まれてしまうお話です。  なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名所などは架空であり、実際のものとは関係ありません。そのことをご理解の上、お楽しみください。  そして金曜日の昼頃、圭太はカウンセリングの帰りで何気にIBSの前にいた。  (…何度も夢に出る君がケイなのか?君は光の中で消えてしまった。それを見ると心が絞めつけられるように苦しくなる。これが声を失った原因なのか?なぜ僕はそこまで君を〜)  などと思っていると晶が出社して  「圭太、この前は悪かった。あんなこと言って〜阿部さんに言われたよ。記憶と向き合わないと声を取り戻せないと〜それで、どこまで思い出せたんだい?」  と言うと圭太は振り返って  『とりあえず年末まで思い出した。だけどケイという者に関しては何も思い出せていない。それでも必ず思い出して声を取り戻す。ケイという者の繋がりを見つける。』  「そう、それは君にとって辛いことになる。だけどそれを乗り越えて未来に向かってもらいたい!それがケイの願いでもあるんだから〜」  『部長から聞いたけど、僕とケイの関係を教えてほしいんだけど時間は大丈夫ですか?』  「早めに来ているから問題はない。」  と言うと晶は圭太に全てを話した。圭太はその内容を聞きながら思い出そうとしていたが無理だった。そして晶が話し終えると圭太はうつむいて首を横に振った。晶はため息のように息を吐くと  「やっぱりそう簡単には思い出せないか。正直なこと言えば記憶より声を先に取り戻してもらいたいと思っている。君の未来のことを考えると〜」  と晶が言うと圭太はどうしたらいいのかわからず何も書けなかった。すると晶はそれ以上は何も言わずIBSの中へ入って行った。そのとき圭太は頭に激痛がしてフラフラながらも通用口へ向かった。そして暗証番号を押してドアを開けようとしたとき気を失ってしまった。しばらくして目を覚ますとそこは仮眠室であったのだ。  「気がついたようだな。高橋!」  と声がしたので圭太は声のする方を見るとボブPと千鶴がいた。圭太は起き上がると近くにあったノートとペンを取って何かを書き始めた。  『頭に激痛がした。そのときいろいろと思い出した。千鶴、僕は君のことを愛している。』  と書いて見せると千鶴は圭太に抱きついた。圭太は千鶴を抱きしめると  「…ち、づ、る、好、き、だ!」  と必死になって言っていた。すると千鶴は笑顔で  「圭太さん、私のことやみんなことを思い出したのね。そして必死になって声を出して〜」  と言うと圭太にキスをしていた。すると圭太は  (千鶴のためにも早く声を出せるようにしないと〜よくわからないけど結婚して幸せになろうって約束したような気がする。だから〜)  などと思っていた。そして千鶴は圭太から離れると  「そういえばバレンタインが近いね。圭太さん!」  と言うと圭太は笑顔で  『海外では男性から女性に送ることもあるらしいよ。ねぇ、話は変わるけど、職場の雰囲気を感じたい。いつまでもこんなことしていたら部長にも迷惑をかけるからな。』  と書いているとボブPが笑いながら  「明日は偕楽園内にあるM・GARDENで公開放送がある。体調がいいんだったらリスナーとして参加は可能〜とは言ってもお前はレポーターとしてなんだろうな。」  と言うと圭太はうなずいた。すると千鶴はボブPに  「何とかならないんですか?」  「…声が出ないからな。まぁ、とりあえず9時までに来てくれるとみんなで出発できる。それより広瀬、代打で収録あるんじゃないのか?」  と言うと千鶴は忘れていたようで時計を見ると仮眠室を出て行った。それを見ていた圭太は笑いながら  「あいかわらずだな。千鶴は〜あのボブP、明日は千鶴と一緒にレポートがしたい!」  と思っていることを声にしているとボブPが驚いた表情で  「高橋、お前の声が〜もしかして戻ったのか?」  と言ったので圭太も驚いた表情をして  「えっ、あっ、本当だ!ちゃんと声が出ている。完全に記憶が戻ってなくても仕事に戻れそうな気がする!」  「まぁ、焦るなよ。体力をしっかりつけてからでもいいんじゃないのか?」  「そうですね。それでボブP、僕の声が戻ったことを内緒にしてもらえませんか?明日、みんなの驚く表情が見たいから〜」  と圭太が言うとボブPは笑い出して  「わかった。まぁ、ここにいたらドッキリもサプライズもならないからな。とりあえず僕の車の所に行こう。ついでに家まで送るから〜」  と言うと2人は駐車場へ向かった。そしてボブPの車に乗って話をしながらボブPは車を走らせていた。  「広瀬と菊地を入れ替えるか。そうすれば広瀬と一緒に偕楽園内を行けるからな。もっともみんながそれを納得すればのことだけどな。もちろん、僕は反対する理由はない。」  「ありがとうございます!明日がすごく楽しみで夜はちゃんと眠れるかな〜」  と圭太は子供っぽくワクワクしながら言うと  「子供か!」  とボブPが笑いながらツッコミを入れたので圭太も思わず笑い出していた。そして圭太の住んでいるアパートに着くと圭太はボブPと別れて部屋に戻ると明日の準備をすごく嬉しそうにしていた。  そして翌日の8時半頃、圭太はIBSへ行くと公開放送の準備をしていたかつりょうたちスタッフに  「おっはようございまーす!今日も1日がんばろう!」  と言って建物の中へ入って行った。かつりょうは  (えっ、高橋さんの声が戻っている!確かボブPの話では雰囲気を味わうために一緒に行くと言っていたけど〜)  と驚いた表情で思いながら機材を車に運んでいた。それから圭太はアナウンサー室へ行くとバロンたちが集まって話をしていたので  「おっはようございまーす!今日の公開放送が楽しみで昨日の夜はあまり寝れなかったですよ!」  と元気よく言ったのでバロンや千鶴たちは驚いた表情をして何も言えなかったのだ。すると圭太は千鶴の所へ行くと  「千鶴、おはよう!どう、ビックリした?」  「すごくビックリしたよ!だけどいつ声が出るようになったの?」  「千鶴が収録に向かった直後ぐらいからだよ。だけどみんなの驚く表情が見たかったからボブPには〜」  と笑いながら言うとバロンは  「まったく声が戻っているなら教えろよな!ボブPは何も言わないから〜」  「そんなことしたらドッキリにはならないじゃないですか!」  と圭太が言うと徳夫が笑顔で  「すごく驚かせてもらったよ。高橋には〜でもよかったな。声が戻って〜それじゃあ僕は抜けることにするよ。これは高橋と菊地によるレポート対決だったからな。」  「あの、そのことなんですが、僕と千鶴がペアを組んで、菊地さんと鹿原さんがペアを組んでのレポート対決なんてのはどうですか?ちょうど男女のペアになるし、明日はバレンタインってこともあるので〜」  と圭太は笑いながら言うと徳夫は  「おっ、それはおもしろいな。だけどそんなことになったらバロンさんが1人で4時間もやることに〜」  と言うはみんなバロンの方を見るとバロンは笑いながら  「俺なら心配すんなよ!やりたいことをおもいっきりやろうぜ!それにアシスタントなんていてもいなくてもどうせ同じだからな。」  「ひっどーい!バロンさん!」  と千鶴が言うとみんな笑っていた。するとボブPがアナウンサー室に来ると  「おっ、ずいぶんと盛り上がっているな。」  と言うと真衣が笑いながら  「そうなんですよ。圭太くんがリハビリを兼ねた企画で私と鹿原さん、圭太くんとちーちゃんというチームに分かれてレポート対決しようって〜」  「それはおもしろそうだな。でもあまり無理をするなよ。完全復活じゃないんだからな。」  「わかってます。まぁ、声が出なくなったら千鶴を丸投げしますから〜」  と圭太は笑いながら言った。すると千鶴は苦笑いをしながら  「えーっ!圭太さん!」  と言うとバロンたちは笑っていた。そしてボブPはバロンに  「1人で4時間になるが大丈夫か?」  「圭太が復活してこんなに嬉しいことはないので何とかします!」  とバロンが言うとそれぞれが出かける準備をしていた。その様子をアナウンサー室の外で見ていた重典に気づいたボブPは重典の所へ行くと  「今日は休みなのに来ていたんだな。高橋のことが気になったのか?」  「あぁ、バロンから高橋が来るってLINEをもらったからな。でも声が出るようになって本当によかった。来週にはレポーターとして戻れそうか?」  「今は何とも言えない。この公開放送をやってみないことにはな。心配ならバロンのアシスタントでやるか?」  「いや、いいよ。そこまでは〜それより春になったらハピモニチームはバラバラになってしまう。だけど再び集結できる場所を作る!」  「やっぱりウワサは本当のことだったんだな。広瀬と高橋がそれぞれの番組を持つことで〜僕は火曜のみでかつりょうは完全にハピモニから外れる。」  「すまない、せっかくいいチームでここまでやっていたのにこんなことになってしまって〜だけど何年かかっても必ず何とかしてみせるから〜」  「阿部、お前のその気持ちだけでいいよ。だけどあまり無理するなよ。なんて言ったってさ、お前はIBSのエースなんだからな!」  「…私がエース?そんな!私はエースなんかじゃない!」  と重典が強い口調で言うとボブPは笑みを浮かべて肩を軽く叩くと  「昔から変わらないな。」  と言うと重典は何も言わずにその場から立ち去った。  そしてバロンたちみんなで偕楽園に行って公開放送の準備をしていた。圭太はM・GARDENからの景色を見ながら気持ちを落ち着かせていると真衣が来て  「久しぶりだから緊張してるの?」  「…その逆で高ぶる気持ちを鎮めているんですよ。それより菊地さん、ケイに関すること以外は全て思い出した。これが架空なのか真実なのかなんてわからないけど〜」  「そう、圭太くんは〜ううん、そのうち彼のことも思い出せるかもね。」  「そうですね。それより僕の身勝手なことにみんなが乗ってくれたのはどうしてなんですか?」  「圭太くんはちーちゃんといたかった。ボブPの話では私と入れ替えるみたいだった。だけど圭太くんは番組をおもしろくしたいという思いが伝わった。それだけのことよ!」  「そうですか。僕は千鶴のアシスタントでやるつもりです。」  「そうか、ルーキーズには負けないからね!」  と真衣が言うと圭太は笑い出して  「こちらこそ!お手柔らかにお願いします。」  などと話をしていた。しばらくして集合して最終ミーティングをすると圭太と千鶴はピンクの法被、真衣と徳夫は赤い法被を着た。すると千鶴が  「すごくドキドキしてきたよ。」  「大丈夫だよ。僕が君をアシストするから〜」  「ありがとう。圭太さん!」  などと話をしているとリスナーたちが会場に入ってきた。するとリスナーたちは圭太の姿を見つけるとザワめいていたのだ。そして放送開始まで時間があったので、圭太や千鶴たちはギリギリまでリスナーたちと話をしたりなどの対応をしていた。  そして午後1時になって番組がスタートした。  「特別番組!偕楽園梅まつりでうめぇことやっぺよスペシャル!」  とバロンがタイトルコールを言うとオープニングテーマ曲が流れた。しばらくしてボブPの合図で  「改めてこんにちは!バロン山崎です。さぁ、ついに始まりました水戸市偕楽園での梅まつり!なので今日は偕楽園内にありますM・GARDENから公開生放送をお送りいたします。そして会場内のレポートは2組によるレポート対決となってます。」  と言うとバロンを中心に右側に真衣と徳夫、左側に圭太と千鶴が座っていた。  「まずは菊地・鹿原のベテランチームによるあいさつや今の意気込みを聞いていきましょう!」  とバロンが言うと徳夫と真衣が話を始めた。すると徳夫のおもしろトークでリスナーたちは爆笑をしていた。しばらくしてベテランチームの話が終わるとバロンは気を取り直して  「さぁ、続いては広瀬と圭太によるチームルーキーズによるあいさつや今の意気込みを聞いていきましょう!」  と言うと圭太は話を始めた。  「みなさんこんにちは!そしてお久しぶりです。レポーターの高橋圭太です。いろいろとご心配をかけてしまってすみませんでした。今日は来週から復帰できるかをテストする意味で来ました。」  などと圭太と千鶴によるあいさつなどをしていた。しばらくしてバロンは  「さて、レポート対決は全部でスリーゾーンあります。そしてどちらがよかったのかを決めるのは会場にいるリスナーたちです。そして負けたチームには罰ゲームとして、ある食材の食レポをしてもらいます。」  などとオープニングトークが終わるとバロンを残して千鶴たちレポーターは出かけて行った。そしてバロンはスポンサー企業を紹介してCMになった。しばらくしてCMが明けるとバロンの進行でゲストを招いてトークをしていた。それからレポートがあったり、メールを読んでいたりなどして賑やかに番組が進んでいた。そしていよいよ最後のエンディングゾーンとなった。そのときはオープニングと同じように千鶴たちは席に座っていたのだ。  「さて、それぞれのレポートチームが帰って来ました!時間がないので感想を一言ずつ手短めでお願いします。」  とバロンが言うと徳夫、真衣、千鶴の順に感想を言っていた。そして圭太の番となりマイクを持つと  「久しぶりにレポートができたことに嬉しくて楽しかったです。これなら来週のハピモニから完全復活します!本当に今日は最高の1日でした!」  と圭太は元気よく言うとバロンたちは笑顔になった。そしてバロンは  「さてさて、ここでどっちのレポートがよかったのかを目の前のリスナーたちに決めてもらいましょう!負けたチームは大量のワサビが入った激辛シューとセンブリ茶の食レポをしてもらいます。」  と言うとリスナーたちはレポートがよかった方に拍手をしていた。その結果、千鶴と圭太のチームの方の拍手が多かった。それに対して真衣は反論したけど判定は変わることがなく、真衣と徳夫は罰ゲームで激辛シューとセンブリ茶の食レポをしていた。しばらくしてバロンが笑いながらながら締めて無事に番組は終了した。それからバロンたちはリスナーたちとオフ会をして、最後のリスナーが会場を出るのを見送った。すると圭太は  「今日は僕の身勝手なことに振り回してしまってすみませんでした!それでもみんなに付き合ってもらえてすごく楽しくできたことに感謝しています。本当に素晴らしい仲間に出会えたことを嬉しく思ってます。これからもこんな僕ですけどよろしくお願いします。」  と言って頭を下げた。するとかつりょうが最初に拍手をするとみんなもつられて拍手をしていた。そしてみんなで片付けをしてIBSへ戻った。それからもみんなで片付けて解散となった。  そしてバロンたち予定がないメンバーは国道を挟んだ焼肉屋で打ち上げをすることになった。集まったメンバーたちは飲み物が入ったコップを手にすると徳夫のトークと乾杯で打ち上げが始まった。しばらくして重典と晶も合流して盛り上がっていた。すると圭太は  「千鶴、僕は君の笑顔を見ていると心が暖かくなるんだ。君は僕よりも若いからやりたいこともたくさんあるだろう。だけど僕は君のことを愛してる!だから正式に結婚を前提に僕と付き合ってください!」  といきなりのプロポーズに千鶴は戸惑っていた。すると真衣は笑顔で  「ちーちゃん、みんな知ってることなんだから自分に正直になりなよ!」  と言ったので千鶴は  「圭太さん!こんな私ですが、よろしくお願いします!」  と少し恥ずかしそうに言った。すると真衣や晶たちは祝うように話が盛り上がっていた。しかしバロンは寂しそうな表情をして烏龍茶を飲みながら焼肉を食べていると重典は隣に座って  「バロン、大丈夫か?」  「…こんなことは初めからわかっていたのに〜ここにいても辛いだけだからフリーになろうかな。」  「それで後悔しないんだったらそれもいいんじゃないのか。」  と重典が言うとバロンは笑いながら  「冗談だよ。俺はフリーになんかならねぇよ!あいつらの行く末を見守るつもりだ!最後まで〜」  「そうか〜今朝、大内にお前はIBSのエースと言われたけど、私はみんなを引っ張っていける存在じゃない。」  「そんなことねぇと思うけどな。阿部さんは仲間からもリスナーからも信頼されている。もしかしたらいつの日かトップをなるんじゃねぇのかってな。」  と言うと重典は飲み物を吹き出しそうになりながら  「バロン!お前な〜私がそんな上まで行けるはずないだろう!」  などと話をしていた。こうして夜10時頃まで打ち上げは盛り上がっていた。そして焼肉屋の外に出ると代行タクシーなどが待っていたので、その場で解散となった。

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セレネーヌ仮面 第25話

セレネーヌ仮面 第24話

 この物語は主人公たちの周囲で次々と起こる不思議な出来事に巻き込まれてしまうお話です。  なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名所などは架空であり、実際のものとは関係ありません。そのことをご理解の上、お楽しみください。  そしてその日の夕方、バロンと千鶴が圭太のいる病室へ行くと晶がいた。  「圭太、何も思い出さなくてもいい!君にとって辛く苦しい現実なのだから〜それに君の言っていた者は会うことができないんだから〜」  『どうして?』  「…それは言えない。それから君が大事にしているこのガラス玉などは僕が預かる!君は声を出すことだけを考えるんだ!僕たちと同じ職場でいたいなら〜」  と言って晶はガラス玉などを持って行こうとしたとき圭太は取り戻そうと必死になっていた。晶はそれでも強引なやり方でも奪おうとしたときガラス玉は落ちてしまった。するとガラス玉が割れてしまうといろんな服や帽子、財布やカバン、食器などが現れた。量にしてみれば大きい収納ケース2つ分ぐらいだった。そして晶と圭太はバロンと千鶴がいることに気づいた。  「バロンさん、千鶴さん〜いつからそこにいたんですか?」  「お前が圭太から強引に何かを奪おうとしてる少し前からだ。それにしてもこれってケイが使っていた物じゃねぇかよ。」  「あぁ、そうだよ。彼がこの世界で使っていた物〜それをなぜか圭太が持っていた。」  「そうか。それより何で〜」  とバロンが言うと晶はバロンたちを睨みつけて  「時間がないからに決まってるからだろう!春の改編で圭太は月曜の夜8時からの1時間、千鶴さんは水曜の夜7時半からの30分の番組をやることになっているらしいんだ。そうなればハピモニのチームは今までのようにならないけど〜」  と言うと圭太と千鶴は驚いていた。  「そっか、私と圭太さんは一緒にハピモニができなくなる。もしかしてボブPとかつりょうも〜」  「そこまでは知らない。だけどその話は今月末までに圭太が声を出せるようになってレポーターとして復帰することなんだ。もし、それができなかったら圭太は即日に解雇となり、阿部さんはその責任で編成部長の座を降ろされてしまい広報などの雑用に〜そうなればもう2度とアナウンサーには戻れないんだ!」  と晶が言うとバロンたちは驚いて何も言えなかった。そして晶はさらに  「…阿部さんには口止めをされていたけど黙ってはいられなかった。ハピモニが放送されていた時間に来年度のことについての会議があったらしいんだ。阿部さんはその会議に出席してしたようで、僕が取材先から戻ったとき公開スタジオで倒れていたんだ。それで目を覚ました阿部さんは珍しく泣いていた。」  「もしかして泣いていたその理由はさっき言っていたことなのか?」  とバロンが言うと晶はうなずいた。  「だから記憶を取り戻すより先に声を出せるようになってもらいたいんだ。そのためなら余計な物はとりあえず取り除こうとしていたんだ。そしたら〜」  と言うと散乱しているケイの物の整理を始めていた。千鶴は晶の手伝いをしながら  「ちなみにこれは誰の物にするつもりなんですか?」  「今は僕が持っているけど、落ち着いたら圭太の物にすればいいよ。」  「そうですか。それよりケイってこの世界で何か仕事していたの?」  「この世界では職には就いてないよ。ケイは上流階級の貴族だったから〜この世界に来る前まではね。僕と一緒に生活していたから家事などをやってもらっていた。」  「それって強制的にですか?」  「違うよ!ケイは世話になるからと言って〜それで生活費や旅費などを出してくれていた。僕たちの喜ぶ顔が見たいと言っていた。」  と晶は言うとバロンは笑いながら  「ケイは晶に世話になっていたと言ったが、晶が世話になってたんじゃねぇのか?それよりケイの所持金をけっこう使ったからあまり残ってねぇんじゃ〜」  「それがまだ土地付き家が買えるぐらいはあるよ。」  「ちょっと次元が違いすぎる。バロンさんも立川さんもどうして普通でいられるんですか?」  と千鶴が言うとバロンと晶は笑っていた。すると圭太はノートに何かを書き始めた。  『もういいよ!僕のせいでみんなが困るなら僕なんかいなくなった方がいいんだ!』  と書くと窓の所に行って窓を開けると身を投げ出そうとしていた。するとバロンは圭太を窓から引き離して晶が窓を閉めると圭太にビンタをした。  「バカ!みんな圭太のためを思ってやってることなんだ!誰も圭太のこと迷惑なんて思ってない!圭太はIBSの仲間なんだからバカなことはしないでくれ!」  と言うと圭太は声が出ないけど泣き崩れてしまった。バロンは圭太を支えてベッドに寝かせると  「晶と広瀬はここにいてくれ!ちょっくら収納ケースを買ってくるから〜」  と言うとバロンは出かけて行った。そして晶と千鶴はケイの物の整理を続けながら  「ケイって本当にどんな人だったんですか?」  「仲間思いの強いのは知っているだろう。優しくて責任感が強いからいつも必死になっていた。」  「何となくそれは前世の記憶にある。本当にすごいですよね。町のリーダー、自警団の団長、子供たちの先生、そして国の役職と〜友達や仲間に手伝ってもらっていた。」  「あぁ、そうだな。そして何より愛妻家だった。ラミアに対してはすごく大事にしていた。あまりに大事にしすぎてお腹にいたジャンに呪い殺されそうになったらしい〜僕の前世の記憶でしか言えないけど〜」  「確かにそうですね。前世の記憶があるなんて不思議ですけどね。」  「そうだな。それで人間界に来たのは僕たちと出会う1年ぐらい前だった。その年に台風による災害が県内の各地であった。ケイは魔術を使って最小限に食い止めたり、復旧作業が早く進むようにしていた。誰にも見つからないように〜そしていつしかこの県にあった天狗伝説からケイは愛宕の天狗と呼ばれるようになった。」  「そうだったんですか。それで出会いはどんな感じだったんですか?」  「梅雨時期の長雨で県内の数ヶ所で堤防の決壊しそうな場所の強化で飛び回っていた。そして僕とバロンさんがIBSの駐車場に落ちてきたケイを見つけた。」  「それが出会いだったんですね。それにしても立川さんはよく受け入れたんですね。」  「バロンさんには反対されたけど、僕は何かを感じてこのままではいけないと〜今思えば大事な弟を見捨てるなと前世からのメッセージだったのかもな。」  と晶は笑いながら話をしていた。それからも晶と千鶴が話をしているとバロンが収納ケースを持って戻って来た。  「1番デカイサイズのがなかったからとりあえず3つ買ってきた。これだけあれば全て入れられっぺな。」  と言うとケイの物を全て収納ケースに入れていた。  「今は辛いかもしれないけど、君はケイに生かされた意味を理解し、悲しみを克服しなければならないんだ。記憶がないから理解できないだろうけど〜」  と晶は圭太に言っていた。そして全てを入れ終わったとき  「ラミアのネックレスを返して〜」  とかすかな声で圭太が言った。バロンはそれに気づいて  「圭太、声と記憶が戻ったのか?」  と期待を込めて言うけど圭太はその一言だけで声を出せなかった。バロンはため息をして  「…空耳か。なぁ晶、圭太にラミアのネックレスを返してやれよ。もしかしたら無意識で言ったのかもな。」  と言うと晶はラミアのネックレスを収納ケースから取り出してテーブルに置いた。しばらくして面会時間終了間近のアナウンスがあった。  「そろそろ行くか。」  とバロンが言うとバロン、千鶴、晶の3人は収納ケースを1つずつ持って病室を出て行った。そして圭太は千鶴が持ってきたメッセージの束を1枚ずつ読んでいて夜が更けていった。  そして翌日の10時、圭太は荷物をまとめているとそこへ晶が来て圭太に  「入院費は払っておいた。準備はできたか?」  と言うと圭太はうなずいて荷物を持って晶と一緒にその場を去った。そして晶が運転する車内でも会話らしきことはなかった。晶は不機嫌な表情で何も話そうとしなかったからである。  (晶さん、昨日のことで怒っているだろうな。だけど僕の大切にしていた物を奪うようなことをしたんだ。あれが何だったのは知らなかったけど〜僕にとってすごく大切な物だったと思う。だから手離したくはなかった。それなのに〜このネックレスだけは返してくれたけど〜今月中に声を出せるようにしないと〜わかっているけど出ないんだ!僕だって普通にみんなと会話がしたい!)  などと思っているといつしか眠ってしまった。しばらくして圭太が住んでいるアパートに着くと圭太を起こした。それから圭太の部屋の前に行くと  「ここが圭太の住んでいる部屋だ!」  と晶が言うと圭太は鍵を取り出してドアを開けると中に入った。晶は荷物を中に入れると何も言わずにその場を去ってしまった。圭太はベッドに座ると  (…夢に出てき紫色の長い髪をした者〜その人が晶さんが言っていたケイなのか?彼はこの世界で晶さんに助けられた心優しい人〜なぜぼくがその彼を〜わからない。だけど君のことを知っている気がする。晶さんたちはどうして全てを教えてくれないんだ!)  と思うと記憶と声を取り戻すために部屋にある物をチェックしていた。  『君は声を出せるようにすることを考えるんだ!僕たちと同じ職場でいたいなら〜今月末までに職場復帰できなければ〜』  と晶が言っていたことを思い出した。なので圭太は思っていることを声に出してみようと必死になっていた。  (くそっ!何で声が出ないんだ!事故による失語症なのかよ。これが〜)  と思うと何も考えられずベッドに横になっていた。しばらくしてインターホンがしたので圭太は玄関へ向かってドアを開けると重典が立っていた。  「ちょっと出かけてみないか?」  と言われたので圭太は不思議な表情をしていた。すると重典は圭太の表情を見てさらに  「高橋、お前が声と記憶を失ったのは事故によるものではないんだ。本当はケイを失ったことによる精神的ショックからなんだ。事故というのは架空の記憶で真実は〜」  と言うと圭太は重典の言ったことが理解できず近くに置いてあったノートとペンを持って  『ちょっと待って!あなたが言っている意味がよくわかりません。いったいどういうことなんですか?』  と書いて見せると重典は笑い出して  「…そうだよな。すまない、私としたことが〜」  と言うと重典は自分がわかっていることを圭太に隠さず全て話した。すると圭太は  『つまり僕やあなたたちはケイという者を知っている。そして僕たち6人は知らない。そのことによって本来と架空の記憶が存在することですか?』  「そういうことだ。晶は声を出すことを優先にしているようだけど、私はその逆だと感じている。」  『晶さんから聞きました。今月中に職場復帰しないと僕は解雇となり、あなたは今の地位を失うと〜』  と圭太は書いて見せると重典は笑みを浮かべて  「確かにそうだけど気にするなよ!それよりお前に希望を持たせておきながら守れそうもない。すまない!」  『そんなこと言わないでください!時間がまだあるのですから努力してみますよ。だから最後まで〜』  「そうだな。私の知り合いにカウンセラーがいるんだ。話をしたら引き受けてくれた。そこへ毎日通えばと思っているけど行ってみないか?」  と言うと圭太は出かける準備をしていた。しばらくして圭太は重典に頭を下げると重典は笑顔で  「高橋、頭を上げろよ!それじゃあ行くか。」  と言うと重典は圭太を連れ出してカウンセリングを受けられる場所へ行った。そして重典はカウンセラーの人と話をしていた。しばらくして圭太に  「車で待っているからな。」   と言うと重典は車の所へ戻った。そして圭太はカウンセラーの人に言われるようにベッドに横になると全身の力を抜いてリラックス状態となったことで記憶を蘇らせるためにカウンセラーの人は催眠術をかけていた。  そして車に戻った重典は目を閉じて  (高橋、私はお前を守りたい!晶のときのようなことは絶対にしない!もう2度と〜)  などと思っていた。そんなとき会議での1部を思い出していた。それは重典に役員の1人が  「高橋圭太は交通事故により声と記憶を失っていると報告を受けている。その件についてはどうなんだ?阿部!」  「確かにおっしゃる通りです。ですが高橋は〜」  「言葉を慎め!アナウンサーにとって致命的な声を失っているなら必要はない。今すぐにでも解雇するとしよう。」  と言ったとき冷静な重典はいつになく熱くなり  「待ってください!高橋は必ず戻って来る!私はそうだと信じている!それに高橋自身だって声を取り戻そうと必死になっているんだ!」  「阿部、自分の立場をわかっているのか?」  「えぇ、わかってますとも〜ですが、上に何を言われようと私はもう逃げたりなんかしない!そう、5年前に晶を守ることより自分の立場を選んだ結果があれだ!だからあんな思いは2度としたくない!どんなことがあっても私は高橋の未来を最後まで守ると誓った。今の地位を捨てる覚悟はある!」  「そうか、そこまで言うなら今月末まで待つとしよう。だが、その日までに職場復帰ができなければ高橋は解雇〜そして阿部、編成部長の任を解き広報に行ってもらう。2度マイクの前で話せると思うなよ。」  と言われると重典は荒ぶる気持ちを落ち着かせて  「わかりました。私は高橋を信じているので問題はありません。」  と言うと話題が変わった。そして会議が終わると重典はしばらく席を立つことができなかった。  「私のしてることは間違っているのか?ケイ、こんなときお前ならどうしているんだ?教えてくれ!」  と言うけど答えなどは見つけられなかった。そして公開スタジオへ行くと悔しくて泣き崩れた。そのうち気を失っていたようで取材先から戻った晶と話をしていた。  「…そうか、実はさっきまで会議があったんだ。」  と言って重典は晶に全てを話した。晶は驚いた表情で  「もしかして僕のことがあったから圭太のことを〜でもあなたはそれでいいのですか?もし、圭太が復帰できなかったらアナウンサーではいられなく〜」  「それは覚悟なる上で〜だけど私は高橋を信じている。明日、高橋を退院させて自宅に連れ帰ってくれ!私は高橋をやれるだけのことをするつもりだ!それから私の処遇についてはバロンたちには言わないでくれ!余計な心配はかけたくないからな。」  「わかった。」  と晶が言うと重典と晶はしばらく話をして  「ありがとう。晶〜話をしたら気持ちが落ち着いたから心配するなよ。それより番組があるから切り替えないとな。それから圭太の担当するニュースは〜」  「先週に引き続き僕が担当するよ。」  と晶が言うと2人は別れた。  そして重典はいつの間にか眠っていたようで目を覚ますと車から降りて背伸びをして腕時計を見ると  (あれから2時間か。この1回で記憶と声を取り戻すことができれば〜高橋を追い詰める上の連中を黙らせることができる。私は仲間の未来を守ると約束したんだから〜)  などと思っていると圭太が少し疲れた様子で戻って来たので重典は圭太の体を支えて助手席に座らせると  「高橋、大丈夫か?」  と言うと圭太は疲れた表情で笑みを浮かべていた。  (…あなたのおかげで少し記憶を取り戻せました。ありがとうございます。部長〜)  などと思っていた。そして圭太は必死な感じで声を出そうとしていたので重典は  「無理をするな!自分のペースで焦らずやろう。」  と言うと運転席へ行って車のエンジンをかけたとき  「…ありがとう。部長!」  と圭太はかすかな声で言っていた。重典は少し驚いていたけど笑みを浮かべて車を走らせた。しばらくして信号待ちのとき圭太は  『すみませんが、晶さんに合わせてほしいのですがダメでしょうか?』  と書いていたのを重典に見せた。すると重典はカーラジオのスイッチを押した。そこから晶がニュースと天気予報を言っていた。  「IBSに出社する前にお前の迎えを頼んだ。晶は火曜の夕方から夜のニュース読みを担当している。それから本来ならお前が担当する金曜もな。」  と言うと信号が変わったので車を走らせていた。そして圭太の住んでいるアパートに着くと  『あの、僕が金曜のニュース担当って記憶にない。』  「…秋の改編があって、そのときになったんだ。ちなみにどのぐらい記憶が戻ったんだ?」  『今、思い出せているのは8月の黄門まつりの公開放送が終わった頃ぐらいです。』  「なるほどな。半年前までの記憶が戻ったわけか。だけどお前がこうなったきっかけはその先のことで〜それを思い出して克服しなければ未来はない。」  『それって出かける前に言っていたことに関係しているのですか?』  「そうだ。お前はケイを失ったことで心が堪えきれず無意識で記憶と声を封じてしまったんだ。私もバロンも晶もケイを失ったことは辛く悲しい〜それでも時間は待ってはくれない。高橋、ケイがなぜそうしたのかを理解し、彼の思いや願いを受け入れてほしい!」  と言うと圭太は車から降りて部屋に行った。重典は車を走らせながら  (ケイ、あの日に私たちと出会ったのも運命だと言っていたな。何で消滅するのわかっていたのに女神からの使命を成し遂げたんだ!もっとお前と一緒にいたかった。お前と楽しいことをやりたかった。きっとバロンも晶もそう思っている。それなのに〜)  などと思ってIBSへ向かった。  そして圭太は部屋に入るとそのままベッドへ横になって  (…辛い悲しみによって無意識に声と記憶を封じたと言っていた。ケイとは僕にとってどんな存在だったんだろうな。いったい〜)  などと思っていた。それから圭太は毎日カンセリングを受けて記憶を取り戻していたけどケイに関してのことは思い出せていなかった。

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セレネーヌ仮面 第24話

セレネーヌ仮面 第23話

 この物語は主人公たちの周囲で次々と起こる不思議な出来事に巻き込まれてしまうお話です。  なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名所などは架空であり、実際のものとは関係ありません。そのことをご理解の上、お楽しみください。  そして10時になって入場開始となり圭太とかつりょうは会場の中へと行った。そして本部に向かう途中で何人かのリスナーに囲まれていたので、かつりょうは圭太の今の状況を説明していた。するとリスナーたちは理解した上で話をしていた。そして圭太はサインや写真を求められるとそれなりに対応していた。しばらくしてリスナーたちと別れると  「高橋さん、大丈夫ですか?」  『大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。僕はレポーターと報道記者をやっていたんですね。それでリスナーを楽しませていた。だけど何もわからないです。』  「不安なんですね。でもそのうち思い出せるようになりますよ。それから声だって出るように〜」  とかつりょうが言った。すると圭太は近くの店で飲み物を2つ買うと1つをかつりょうに渡した。そしてリスナーと会いながら千鶴たちがいる本部へ行った。すると千鶴は圭太に  「こっちは仕事しているのにかつりょうとずいぶんと仲良く楽しそうにしてるじゃん!」  「ちょっと千鶴さん、そんなに怒らないでくださいよ。」  とかつりょうが動揺した表情で言うと千鶴は笑い出して  「そんなのジョークよ。それより圭太さん、リスナーたちと会っていたみたいだけど何か思い出せた?」  と言うと圭太は首を横に振った。するとその場にいた仲間たちはため息などをして拍子抜けたような表情をしていた。それでもみんな笑いながら  「やっぱりダメか。でもそのうち思い出せるようになって声が戻るよ!」  「そうよ!だからそんなに落ち込むなよ!」  などと声をかけられていた。圭太嬉しくて涙を流して  『ありがとうございます。早くみんなのことを思い出して声が出せるようになりたいです。』  と書いて見せていた。すると晶は  「圭太、千鶴さんと少し見てきなよ!その間は僕が代わりにアナウンスをしておくから〜」  「えっ、ちょっと待ってください。立川さんは営業の方で忙しいのでは〜」  「確かにそうだけど、圭太も千鶴さんと一緒なら何かを思い出すかもしれないだろう。」  と言うので千鶴は晶の言葉に甘えて圭太と一緒にいろんなブースを見ていた。すると圭太は立ち止まって  『僕と君はどんな関係なの?周囲の人は恋人同士のようにと言っているけど、僕は本当に君に指輪を渡したの?だけどその指輪がないのはどうしてなんだ!』  と書いて千鶴に見せた。すると千鶴は  「今の圭太さんには信じてもらえないけど、私たちは魔界から来た者によって戦いに巻き込まれた。そしてその戦いが終わったら結婚式しようって約束したのよ。」  と言うと圭太はしばらく考え込んだ。  (…何言っているんだ?彼女は〜魔界なんてありえない!でもこのブレスレットやネックレスなどは僕にとって大事な人からもらった気がする。それがいったい誰なんだろう。わからない。もしも彼女が言ったことが本当なら〜)  と思うと圭太は呆れた表情をしながら  『そんなこと信じられるわけないだろう。魔界から来た者なんて、戦いを巻き込まれたなんてありえないだろう!』  「そうだよね。現実的にありえない話だよね。だけど本当のことなのよ。バロンさん、立川さん、真衣さん、そして部長はこのとこを知っている。もちろん私もだし、圭太さんだって全てを思い出せばきっと〜」  『バカバカしい!そんなに僕と恋仲だって言うならキスぐらい簡単にできるよな!』  と圭太は千鶴を睨みながら見せると千鶴は圭太に抱きついてキスをしていた。圭太は驚いた表情をすると持っていたノートとペンを落として  (本当にキスしてきた。すごく温かい〜僕はこの感覚を知っている。僕は何度も彼女をしているような〜)  などと思っていると目を閉じて千鶴を抱きしめていた。しばらくして2人は離れると圭太はノートとペンを拾って  『少し言いすぎた。君とキスをしたとき、心が温かく感じた。僕はこの感覚を知っている。全てを思い出せていない。だけど君のいろんな表情が頭の中に浮かんでくる。今はそれだけなんだ。』  「圭太さん、私のその表情と一緒に何かエピソードがある?」  と言うと圭太は首を横に振った。すると千鶴は笑いながら  「そっか。だけど今はイベントを楽しみましょう!」  と言うと圭太と千鶴はイベントを楽しんでいた。千鶴は会場案内のアナウンスのために何度か本部へ戻りながらである。そして夕方になり本部では  『今日はありがとう。すごく楽しかったです。』  「それはよかったな。そろそろ病院へ戻らないとな。」  とバロンが言うと圭太はうなずいた。そして圭太はバロンの車で病院へ戻っているとき  (千鶴さん、僕に記憶がなくて声も出ないから寂しそうな表情をしていた。何でこんなことに〜)  などと思っていた。しばらくして病院へ着くと圭太はバロンと別れて病室へ戻るとそのままベッドで眠ってしまった。圭太は夢を見ていた。  (僕は誰かに体を奪われていた。僕のあの姿はいったい〜あれが魔族なのか?紫色の長い髪、真紅の瞳、黒い翼のある君は誰なんだ?なぜ僕は君を助けようとしている。でも僕は君を失いたくない!待ってくれ!僕をおいて1人で消えないでくれ!消えるときは僕も一緒〜)  などと思って目を覚ますと朝になっていた。  (えっ、朝か。そういえばハピモニという番組があるのは今日だったな。メールでも送ってみるか。あの場所にいなかったリスナーに知らせる意味でも〜)  と思うとハピモニ宛にメールを送っていた。  そしてIBSではボブPはバロン、千鶴、かつりょうの3人に圭太の昨日の状況を聞いていた。  「そうか、高橋に記憶も声も戻らなかったのか。アナウンサーにとって声を失うのは致命的だな。」  「そんなこと言わないで!圭太さんは必ず声が出るようになって戻ってきます。私たちはチームでしょう!信じて待っているのが〜」  と千鶴が興奮気味に言うとバロンは千鶴の肩に手を乗せて  「そうだな。圭太は再びマイクの前に戻ってくる!」  と言うとかつりょうは笑っていた。するとボブPはため息をして  「…わかった。高橋がいつ戻ってもいいようにする。それだけのことだな。」  と言うとその場を離れた。するとバロンのスマホが鳴った。  「あれっ、圭太からだ。」  と言って電話に出てみた。しかし圭太は何も言わずにいるとバロンは何気に  「まだ声が出ないんだな。それでも俺の声が聴きたくて電話をしてきた。話したいことがあるのか?そうだったら夕方に広瀬と一緒に会いに行くから〜」  と言うと電話が切れた。  (…圭太の不安に思う気持ちはわかる。声が出なくても電話をかけてきたってことは〜何気ないことだけど圭太の不安が少しでも取り除かれると〜)  と思ってスタジオへ入った。しばらくしていつも通りにハピモニの番組が始まった。そしてボブPは番組に届いたメールをチェックしていると  (あれ、これは高橋からのメールだ。やっぱり辛いんだな。記憶も声も失って頼れるのはハピモニだけか。お前の気持ちは受け取った。あとは〜)  と思うと他のメールの1番上に乗せてスタジオへ持って行くとバロンに渡しながら  「高橋からメールが届いた。彼にとって頼れる場所がこの番組なんだな。」  と言うけどバロンは何も言えなかった。なぜなら重典が以前に言っていたことを思い出したからである。  『声が戻るかは高橋次第だな。辛い苦しみから解放されたくて記憶と一緒に声を封じてしまったのかもな。バロンが思っているより心の傷は深い〜』  (そんなこと言われなくてもわかっている!圭太はケイが消滅したことで心に深い傷を負っていることも〜全ての記憶を取り戻したときあいつは死を選ぶだろうな。あのときだって圭太は〜)  と思うと思わずテーブルを叩いてしまう。  「バロン、今は生放送中だ。少しは落ち着け!」  とボブPが言うとバロンは我に返って  「すみません。もう大丈夫です。」  「曲が流れているときでよかった。」  と言うとバロンの方を軽く叩いてさらに  「頼んだからな。バロン!」  と言うとボブPはミキサールームへ戻った。しばらくして曲がフェードアウトされるとバロンはカフを上げて  「お送りしたのはマシコタツロウでヘイナルボンでございました。さて、時刻は10時18分になります。ここからはドンドンとメールを紹介したいと思いますが、高橋圭太本人からメールが届いたので紹介します。」  と言うとバロンは圭太から届いたメール内容を読んでいた。しばらくして内容を読み終えると圭太の今の状況を話していた。すると千鶴は  「それで昨日は何かのきっかけになればと思って圭太さんをサンバレンティーノへ連れ出したんです。そこで会ったリスナーなら状況はわかってもらえたと思います。ですが、何も思い出すことができなかったんです。リスナーのみなさんにお願い!圭太さん宛にメッセージをください!放送中に読めないけど、必ず圭太さんに届けるから〜」  といつになく熱くなっているのでバロンは少し寂しい表情をして  (…広瀬、やっぱりお前にとって圭太なんだよな。俺なんかよりも〜)  などと思うと飲み物を飲んで  「そんなわけでメールをお待ちしています。さて、本来のテーマメッセージに戻りますか。ラジオネーム〜」  と言うとバロンと千鶴はテーマメッセージのメールを次々と紹介していた。そして10時40分から15分間の通販番組となったので休憩となった。  「圭太さんも今が1番辛いときですよね。私たちができることってこれしかないですよね。」  「…あぁ、そうだな。改編が近いからせめて声だけでも戻ってもらわないとヤバい気がする。  「もし、声が戻らなかったら〜」  「…言わなくてもわかっているだろう。さすがの阿部さんでも限界はある。今回ばかりは〜」  「そうですよね。そういえば風のウワサで聞いたんですけど、この番組が始まる前の企画の段階で反対していたと言ってました。」  と千鶴が言うとバロンは苦笑いをして  「それをいったいどこで〜さては情報元は菊地だな。確かに5年前のことで俺は全ての番組を降りて山崎剛として報道や営業、ミキサーやディレクターなどをきしていた。」  と言うとバロンは思い出して1部を千鶴へ語り出した。それは今から1年ちょっと前ぐらいのことである。営業から戻ったバロンの所に重典が企画書を持って来た。  「お疲れ、バロン!」  「阿部さん、こんな時間まで残っていたんだな。」  「お前が戻るのを待っていた。新番組の企画書を持ってな。バロン、そろそろ番組復帰しないか?」  と重典が言うとバロンは呆れた表情をして  「断る!俺は2度と番組を持たないと決めているからな。あの日からずっと〜俺が晶より自分の立場を優先したせいであんなことになって〜」  「あれはお前だけのせいじゃないといつも言っているだろう。お前1人だけで背負うこともないだろう。」  「だけど俺は晶をこの手で〜だけどなぜか周囲には事故に巻き込まれたとなっている。」  「確かに〜真実が誰も知らないならいいじゃないか。私だってあの日を忘れたわけじゃない。だけどいつまでも過去ばかり見ていたら前には進めない。」  と重典が言うとバロンは重典の胸ぐらを掴んで  「あんたは止めることもせず見てるだけだっただろう!今さらそんなこと言うんじゃねぇ!」  「バロン、確かに私は何もできなかった。べつに晶のこと忘れろとは言ってない!だけどお前はアナウンサーなんだろう!だったらマイクの前に立て!晶だってそれを望んでいるかもしれないだろう!」  と言いながら重典はバロンが掴んでいる手から逃れた。するとバロンは重典に対して背を向けて  「…俺だってこのままじゃいけないのはわかっている。だけどスタジオでニュースを読んでいるだけで胸が苦しくて逃げ出したくなる。そんな思いをワイドでやれとあんたは言うのか!」  「…信じるかはお前の勝手だけど、晶が夢に出てきたんだ。そこでバロンがパーソナリティに戻ることを願っていたんだ。それと同時にこんなことを〜」  『運命に導かれし者、この場にて集結する。バロン、ケイタ、チヅルは迫り来る世界の危機に終止符を打つことになるだろう。』  「…と言っていたんだ。それで調べたら高橋圭太と広瀬千鶴が書類選考を通過していた。この2人が来年度から仲間になるならと〜」  と重典が言うとバロンは振り返ると企画書を奪うように手にしてチェックしていた。  「…こんなもんは阿部さんがやればいいだろう!何で俺が新人2人の面倒を見なきゃなんねぇんだよ!」  「どうしてもダメなのか?」  「…晶が番組をやれと言ったのだってウソなんだろう。そう言えば引き受けると思ったのか?くだらない!」  と言って企画書を重典に返して帰ろうとした。すると重典はバロンの前で土下座をして  「お願いだからバロンにはパーソナリティとして戻ってもらいたい!せめて秋の改編まででいいから〜」  と言った。バロンは驚いた表情をしたが、すぐに冷静になると重典に  「そんなことしても俺の気持ちは変わることはない!それからしばらくの間は顔も見たくない。連絡もするな!」  と言い残すとバロンは帰ってしまった。それから約1ヶ月が経ったときバロンはアナウンサー室へ行くと重典に  「上の命令であんたの出した企画を受けることになったんだ。だけどこれだけは言っておく!俺は乗り気じゃねぇし、しょうがなくやるって感じだからな。」  「それでもいい〜バロンがパーソナリティをやってくれるなら〜ありがとう。バロン!」  と笑みを浮かべて言うと重典はメールの束を持ってアナウンサー室を出てスタジオへ向かった。  そしてそんなことを千鶴に話したバロンはペットボトルの水を飲んで  「…と言うことなんだ。まさかここまで最高のチームになるとは思わなかった。」  などと話をしていた。すると休憩が終わり千鶴は天気予報をチェックしながら伝えていた。そしてさらに番組が進行してエンディングとなった。  「今日もたくさんのメールありがとうございました。それから圭太へのメッセージも〜まとめて本人へ必ず渡しておきます。さて、というわけでここまでお送りいたしましたHAPPY・MORNING略してハピモニ〜お相手はバロン山崎と〜」  「広瀬千鶴でした。それではまた明日、この時間にお会いしましょう!」  と言うと番組は終了した。そしてボブPとかつりょうがスタジオに入ってくるとバロンは  「ボブPは気づいていると思うが、圭太が声を失ったのは事故による失語症ではないんだ。」  「やはりな。高橋は心因性失声症なんだな。」  とボブPが言うとバロンはうなずいた。すると千鶴はボブPに  「心因性失声症って何ですか?あまり聞いたことがない病名なんですけど〜」  「精神的なストレスが原因となって声が出なくなる病気なんだ。要するに心に大きなダメージがあって、そのショックでなるんだ。しかしバロンはなぜわかったんだ?」  「阿部さんが言うには、あまり外傷がなく脳波やCTなどを見ても失語症になる要因がなかった。だから外出許可もあっさりと出たんだと思う。」  「確かに行ったらすでに外出許可は出ていたからな。バロンは高橋が精神的なショックを受ける理由を知っているのか?」  「わかりません。たぶん圭太本人も本当の病名は知らないだろうな。主治医も今は話すときではないと言っていたようだから〜」  「そうか。まぁ、本人は復帰したいとメールにもあったから希望はあるな。」  とボブPが言うとバロンと千鶴は何も言えなかった。しばらくして話題を変えて話をしていた。  そしてその頃、重典は疲れたような表情をして会議室を出て1階の公開スタジオまで来ると悔しくて泣き崩れていた。  「高橋が今月中に戻れなかったら高橋は解雇になってしまう。そして私はその責任を負って2度とアナウンサーではなくなる。もっと上の立場なら〜高橋の未来を守れたのに〜仲間の未来を守れる立場までなりたい!そして〜」  などと呟いていると倒れてしまった。しばらくして晶が取材先から帰ってきて重典を見つけると駆けつけて  「阿部さん!」  などと声をかけていると重典は目を覚ますと起き上がって晶に  「…晶、私はいったい〜」  「阿部さん大丈夫ですか?いったい何があったんですか?」  と言うと重典は会議室であったことを思い出すと涙を流して  「…私は仲間の未来を守れる立場になりたい!今の私の立場では仲間の未来を守れない!」  などと言うと晶は重典を椅子に座らせると缶コーヒーを2つ買ってテーブルに置いた。そして隣の席に座って  「いったい何があったんですか?いつもの阿部さんらしくないですよ。涙なんか見せない人が〜」  と言うと重典は缶コーヒーを開けると少し飲むと  「…らしくないか。そうだよな〜あの頃に戻りたいと今も思っている。お前を失う前までの時間に〜」  「…ケイがいて4人で楽しく過ごしていた時間〜確かにあの頃はすごくよかったかもしれないけど、もうあの頃には戻れないんですよ。」  「…わかっている。戻れないことは〜晶は高橋のことは知っているだろう。」  「昨日のイベントに来ていたから知っている。あいかわらず記憶も声も戻らなかったけどな。」  「そうか。実は〜」  と重典は何があったのかを晶に全て打ち明けていた。晶は驚いた表情をしている重典は笑いながら  「ありがとう。晶〜話をしたら気持ちが落ち着いたから心配するなよ。それより〜」  などと話をしていた。しばらくして重典はアナウンサー室へ戻るとバロンがいたので話をして夕方からの番組の準備をしていた。

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セレネーヌ仮面 第23話

セレネーヌ仮面 第22話

 この物語は主人公たちの周囲で次々と起こる不思議な出来事に巻き込まれてしまうお話です。  なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名所などは架空であり、実際のものとは関係ありません。そのことをご理解の上、お楽しみください。  そして千鶴はバロンに  「ねぇ、新たに流れ込んできた記憶、その月曜日のハピモニって確か〜」  と言うとバロンと千鶴は新たに流れ込んできた記憶を思い返していた。  それは月曜日の朝、第1スタジオ手前のミキサールームでバロンとボブPに  「えっ、圭太が来てないってどういうことなんですか?広瀬じゃあるまいし、あいつがまさか〜」  「こっちもさっきから高橋のスマホに何度も電話をしているんだけど繋がらないんだ。」  「圭太に限って無断で遅刻や休むような奴じゃない。もしかして圭太の身に何かあったのかも〜」  「とりあえず高橋がいないからレポートなしで進めるぞ!」  「わかりました。トークと曲で乗り切ります。かつりょう、あと2曲ほど用意してくれ!」  と言うとかつりょうはレコードやCDが保管してある部屋に向かった。そしてボブPが  「何かわかったことがあればトークバックで知らせるから〜」  「…はい、お願いします。」  と言うとスタジオに行って準備をしていた。しばらくして午前9時になるといつも通りに番組がスタートした。そして9時15分になってバロンが  「本来ならここでスクーピーの時間なんですが、諸事情によりお届けすることができなくなってしまいました。楽しみにしていたリスナーの方には本当に申し訳なく思ってます。なのでこの時間は1曲お送りいたします。磯山純で流れ星です。」  と言うと曲が流れた。するとボブPが来て1枚の紙を千鶴に渡した。千鶴は下読みしてショックを受けて呆然としているとバロンが  「大丈夫か?何かあったのか?」  「大丈夫です。速報が入ったのでちょっと〜」  と言うと千鶴は気持ちを落ち着かせてかつりょうに合図を出した。そして曲がフェードアウトすると千鶴は  「ここで速報が入ったのでお伝えいたします。」  と千鶴は涙を堪えながら内容を伝えていた。その内容とは、圭太が自転車で横断歩道を横断中に信号無視をしてきた大型車にはねられてしまい、意識不明の重体で救急搬送された。そして圭太をはねた大型車はそのまま逃走して警察が行方を追っているとのことである。  「…以上、IBSニュースをお伝えいたしました。」  と千鶴が言うとバロンは驚いた表情をしながら  「とりあえずいったんCMです。」  と言うと約3分のCMが流れ始めると千鶴はイヤホンを外してスタジオを出て行ってしまう。そしてバロンはテーブルに残されたニュースの原稿を手にすると  「マジかよ!それで圭太が来ないわけか。くそっ!」  と言ってテーブルを思わず叩いてしまった。そして硝子越しにミキサールームを見ると  「広瀬が出て行ったのもわかる。とりあえず俺だけで乗り切るしかねぇよな。それにしてもこのニュースの原稿がメールって〜あれ、このメアドって確か〜」  と言って折りたたんでポケットに入れてトークバックで  「ボブP、とりあえず俺だけで乗り切る。広瀬には気持ちの整理がついたら入って来いと言ってくれ!」  「わかった。あと30秒ほどでCMが明ける。」  とボブPが言うとバロンはボタンを放して気持ちを切り替えるとCMが明けてジングルが流れた。そして千鶴はミキサールームで泣き崩れていた。そこへボブPが来て千鶴と同じ目線になって  「広瀬、気持ちはわかるがお前はアナウンサーなんだ。だからたとえ仲間に何があってもお前はマイクの前にいなければならないんだ。バロンのように〜」  「でも圭太さんが事故で〜意識不明の重体なんて〜来てないと思っていたら〜まさかこんなことに〜なっていたなんて知らなかったよ。」  「…辛いのはお前1人じゃない。バロンだって辛いと思う。今すぐに高橋の所に向かいたいとみんなが思っている。だけどそんなことしたら番組はどうなる?僕もかつりょうも気持ちは同じだ。今のお前には冷たいことを言っているだろうけどわかるな。」  「…わかっています。でも圭太さんがこのまま〜」  「広瀬、高橋はこの番組に対してどう思っている?そして3人の休みが重なるとよく出かけているみたいだが、高橋はお前やバロンのことをどう思っているのか?」  「圭太さんはハピモニがすごく大好きみたいです。それに私たちのことをかけがえのない大事な仲間とも言ってました。」  と言うとボブPは千鶴の肩を軽く叩いて  「だったら高橋のためにもしっかりするんだ!高橋は今も生きようと必死で闘っている!きっと高橋なら大丈夫!帰って来ることを信じてやれるだけのことをしよう!」  「わかりました。でも少しだけでいいので時間をください。気持ちを落ち着かせるためにも〜」  「わかった。10時の時報までには戻れるな。」  「はい、大丈夫です。」  というとこであった。その内容を思い返した千鶴は  「つまり圭太さんは今も意識が戻ってない。もう頭の中が混乱しちゃいそうだよ。」  と言うとバロンは苦笑いにしながら  「…俺は番組に速報メールを送ってきた奴を特定して接触したんだ。それで圭太のことを聞き出そうとして〜」  「どういうことなんですか?」  「そのメールの送り主は阿部さんなんだ。だからあのとき阿部さんも一緒に消えたんだ。きっとどこかの病院にでも行っているからだと〜」  などと話をしているとバロンのスマホに重典から着信が入った。バロンは電話に出て話をしていた。しばらくして電話を切ると  「広瀬と一緒に水戸医療センターに来いって〜ようやく教える気になったんだな。」  「えっ、何のことですか?」  「いや、何でもない。とりあえず行こうか。」  と言って駐車場へ向かいバロンの車で水戸医療センターへ向かっているとバロンは重典とのやりとりのことを思い返していた。  それは速報が入った翌日のこと、バロンはハピモニの放送が終わると  (昨日のメアド、あれは阿部さんのメアドだった。なぜ阿部さんごあんなメールを送って〜)  などと思って公開スタジオに行くと缶コーヒーを2つ買って待っていた。そしてエレベーターの方から重典が来るとバロンは缶コーヒーを渡して  「お忙しいときに呼び出してすみません。」  「気にするな。それに2人でいるときは敬語で話すのはやめろよ。私とお前は同期なんだから〜」  「そうだったな。じゃあ単刀直入に聞くけど、昨日のハピモニへ速報メールを送らなかったか?」  「いったい何のことだ?私はハピモニへメールは出した覚えはない!」  と言うとバロンは速報メールの紙をポケットから取り出してテーブルに置くと  「とぼけるな!このメアドはあなたのスマホのだろ!どうせスマホを調べても履歴は消されているだろうけど〜」  と言うと重典は不敵な笑みを浮かべて  「だったら何だって言うんだ。バロン!そうさ、これは私がハピモニへ送ったメールだ!」  「圭太が事故にあったのは本当らしいな。昨日のニュースでもやっていたし、今朝の新聞にも小さく載っていた。それで圭太はどこに搬送されたのですか?」  「…知らない。たとえ知っていても教えるわけにはいかない。」  「なぜだ!俺たちはハピモニのチームとして今までやってきたんだ!そしてこれからも〜」  と言うと重典は缶コーヒーを開けていっきに飲むと  「変わったな。バロン〜あれだけ新人2人の面倒を拒否していたのにな。それを今では〜」  「確かにあの頃はあなたに厄介事を押しつけられたと思っていた。新番組で新人2人だもんな。でも回数を重ねるうちにあいつらの個性が楽しくて〜そんなことを考えていたら昔のことを思い出した。」  「バロン、まだ晶のことを〜あれはもう5年前のことなんだ!確かにお前は晶のことで番組を〜それとこれとは話が違うだろう。」  「わかっている。だけど圭太を見ているとあの頃の晶のようで〜それに圭太は前の放送局で自殺未遂をしている。理由は晶のときと同じだ!」  「バカな!だけど思い返してみれば〜初めはあんな感じだったのは〜」  と重典は驚いた表情で言うとバロンは話を戻そうとしたが、重典はその件に関しては何も言わずに約束があるからと言われて逃げられてしまった。そんなことを思い返したバロンは  (阿部さん、なぜ圭太のことを隠そうとしていたんだ?それにハピモニのチームの話になるとあの不自然な笑み〜いったい何が〜)  と思っていると水戸医療センターの駐車場に車を停めて総合受付所へ行くと重典が待っていた。  「阿部さん、もう1つの記憶の方はあるのですか?」  「同じ時間の記憶ならある。多少の混乱はあるがこれで本当の意味での時間が流れる。」  「確かにそうだな。それで圭太はどうなっているんだ?」  「目立った外傷はない。だけどずっと眠り続けている。あのとき言えなかったのは高橋に黙っていてくれと頼まれたからだ。」  「それじゃあ、なぜあのメールを番組に送ったのですか?」  「情報はいずれ流れる。あとは報道時代の本能というか何というか〜」  「約束していたからしょうがないか。たぶん俺たちに心配かけたくなかったんだろうな。」  とバロンが言うと重典は圭太が眠っている病室の番号を教えるとバロンは千鶴に先に行くように言った。そして千鶴がその場から離れると重典は  「本当に最高のチームになったな。」  「あぁ、そのきっかけを作ったのはあなただから〜」  「半分はそうだけど半分は違う。ケイと出会って晶を失った記憶と晶が5年前に戻っての記憶〜ケイがバロンと晶の他にケイタとチヅルと言っていた。あの日、ケイに関して消えゆく記憶の中でこの2人の名前だけは覚えていた。」  「それじゃあ〜阿部さんはハピモニの企画を作成するときにはもう〜」  「…偶然なのか必然なのかは今となってはわからない。ケイは晶の自宅に住むようになってからは楽しかった。あんなことがなければ記憶を消されることもなく楽しい日々が続いたのかと思うと〜」  「やめろ!やめてくれ〜だけどあの日があったからあなたは編成部長になったんだ。そして俺はもうあんな思いはしたくないと全ての番組を降りた。」  と言うとバロンは近くにあった椅子に座ると重典はため息をして  「バロン、晶の止まっていた時間は動き出している。だからそのことは忘れた方が〜と言っても無理なんだろうな。私も関係が壊れる前にケイに何度も説教されたからな。」  「…阿部さんもなのか。俺も言われたよ。晶が苦しんでいるのに何もしないとは〜それでよく親友と言えるよなって〜結局、晶を最後まで支えていたのはケイだけだった。」  「それでケイは女神からの使命を成し遂げて魂ごと消滅したって〜」  「あぁ、俺たちの目の前でな。圭太は転生を強く願っていた。叶わないなら一緒に消滅することも考えていた。」  と言うと重典は驚いた表情をして何も言えないでいるとバロンは続けて  「だけどケイは圭太を吹き飛ばして自分だけが裁きの光の中に消えた。圭太の心には大きく深い傷を負ってしまった。だけどケイの家族の魂が時空を超えて〜それで何があったか知らないけど圭太はとりあえず前を向いて歩めるようになったんだ。」  「…そうか、早く立ち直ってくれるといいな。」  と重典が言うとしばらくは会話がなかった。そしてバロンは笑いながら  「ハピモニの番組をやってよかった。広瀬と圭太が俺の心の救いにもなってくれていた。」  「なるほどな。なぁ、バロン〜4月から番組枠が空く所がある。そこを高橋と広瀬にやらせようと考えているんだ。バロンはどう思う?」  「俺は反対しねぇよ。そうか、あいつらが番組を持てるのか。きっと聞いたら飛び跳ねて喜ぶと思うぜ。」  とバロンが嬉しそうに笑いながら言うが重典は冷静に  「まだ決定ではない。仮にそうなれば今のハピモニのチームはバラバラになってしまう。」  と言った。するとバロンは驚いた表情をして立ち上がると  「それってどういうことなんですか?ハピモニのチームがバラバラに〜」  「月曜の8時からの1時間と水曜の7時半からの30分なんだ。それから大内と勝又も動くことになる。」  と言言うとバロンは何も言えないまま時間が流れた。しばらくしてバロンは  「…月曜の夜だから水曜のみ、水曜の夜だから月曜と火曜〜圭太と広瀬はすれ違いになる。そこにきてボブPとかつりょうも〜」  「よく話し合ってもらいたい。もし、バラバラな道を進むなら再会できる場所を作れるように努力する。何年かかっても必ず〜」  と重典が言うと千鶴が血相変えて走って来ると  「部長、バロンさん!ちょっと大変なことが〜」  「どうしたんだ?広瀬〜圭太に何かあったのか?」  「いいから来て!」  と言うとバロンと重典は千鶴と一緒に圭太がいる病室へ向かった。そして病室の扉を開けると圭太は意識を取り戻していた。すると重典は安堵の表情をして  「高橋、気がついたんだな。本当に無事でよかった。」  と言うけど圭太は不思議そうな表情をして何かを言おうとしたが声が出なかった。バロンと重典は驚いた表情を隠せなかった。バロンは  「圭太、声が出ないのか?」  と言うと圭太はうなずいた。そして千鶴はコンビニで買ったノートとペンをテーブルに置くと圭太はそれを使って  『ここはどこ?なぜあなたたちは僕を知っているんですか?僕はあなたたちのことを知らない。』  という内容を書いて見せると重典はベッドの隣に椅子を持ってきて座ると落ち着いた表情で  「私は阿部重典、IBSというラジオ局の編成部長をしながらアナウンサーをしている。君はIBSのことで何か覚えてないだろうか?」  『知らない。IBSでわかっているのは書類選考の通過の知らせを受けたことだけです。』  「約1年ぐらい前のことか。高橋、今の君はIBSの社員なんだ。そこにいるのはバロン山崎と広瀬千鶴、君はこの2人と一緒にハピモニという番組をしている。その番組で君はレポーターとして県内のあちこちでレポートしている。他にも祭りの公開放送にも出かけているし、報道記者としても活躍している。」  と重典が言うと圭太は何かを思い出そうとしていたが何も思い出せていなかった。  『何も覚えてないです。僕のことでみなさんにはご迷惑とご心配をかけてすみません。』  「気にするな。今は何もわからなくて辛いかもしれないだろうけど焦ることはない。私は君の復活を楽しみにいつでもIBSで待っている。」  と言うと圭太は涙が止まらなくなっていた。すると重典は圭太を寝かせると  「バロン、広瀬〜今はそっとしておこう。高橋、明日はバロンも広瀬もイベントで来ることができない。だけど誰かをここへ呼ぶことにする。それで何か思い出せるきっかけになるといいし、早く声が出るといいな。」  と言うと重典たちは病室を出て行った。しばらくして病院の外に出るとバロンが近くの柱に寄りかかって  「記憶だけじゃなくて声も失っているのか。ラジオアナウンサーにとって致命的だな。このままだと〜」  「声が戻るかは高橋の心次第だな。きっと記憶と一緒に声も封じてしまったとしか考えられない。」  「どういう意味ですか?」  と千鶴が言うと重典は深呼吸をして  「…事故というのは大内や鹿原たちの記憶の上であって私たちの真実の記憶とは違うだろう。つまり高橋にとって辛く苦しい何かから解放されたくて〜」  「そんな!このまま声が戻らなかったらどうなるんですか?でもその原因はケイの消滅なんですよね。」  と千鶴が言うとバロンは  「確かにそうかもしれねぇけど、圭太はケイの家族たちによって立ち直ったんじゃねぇのかよ!」  「バロン、お前が思っているほど高橋の心の傷は深いってことなんだろう。私が力を使って倒れることもケイはわかっていた。だから高橋に託して消えてしまった。そしてその高橋は無理に感情を出さずにその力を私に与えたとしたらどうだ?」  と重典が言うとバロンと千鶴は何も言えなくなった。その2人の表情を見た重典はさらに  「…推測で言ったんだけど本当のようだったんだな。真実の記憶がある私たちで高橋の心の傷をどこまでも埋められるかだな。」  と言うとちょうど水戸駅行きのバスが来たので千鶴はそれに乗って帰ると言ったので解散となった。  そして翌日の朝、圭太は窓から外の景色を見ているとかつりょうがノックをして入って来た。  「高橋さん、お体の調子はどうですか?」  と言った。圭太は振り返って不思議そうな表情をしていたのでかつりょうは自分のことを話をしていた。圭太はかつりょうの言ったことを理解するとそこへボブPが病室へ入って来て  「外出許可が出ていたみたいだ。バロンと広瀬はこのイベントスタッフとして今日は来ることができないんだ。だったらこっちから行ってみないか?」  と笑顔で圭太にサンバレンティーノマルシェのチラシを渡した。圭太はそのチラシを見るとカバンの中身をチェックしたり、着替えるなどの準備をしていた。しばらくして準備ができると3人はイベント会場となっている笠間市の芸術の森に向けて出発した。  そしてその頃、バロンたちはイベント会場でいろいろと準備をしていた。するとバロンのスマホが鳴って電話に出るとかつりょうからだった。しばらくして電話を切るとIBSの仲間を集めた。そして圭太のことについて話をしていた。IBSの仲間たちは理解すると最終チェックをしていた。そしてバロンと千鶴は北駐車場に行ける階段の上でボブPたちが来るのを待っていた。しばらくしてボブPたち3人はバロンと千鶴に合流した。するとボブPは  「バロン、高橋を連れてきた。しかし本当に僕たちのこと知らないようだな。それに声が出ないとなれば〜」  「わかってる!だから今は何も言わないでくれ!」  とバロンは強い口調でボブPに言うとボブPは冷静に  「わかった。この話の続きは明日の打ち合わせのときにしよう。それじゃあな。」  と言うとボブPはその場から立ち去った。すると圭太は心配そうにバロンを見るとバロンは笑いながら  「心配すんなよ。圭太!それより今日は何も気にしないで楽しめよ!それによって何か思い出せるかもな。」  と言うとそこへ真衣や晶たちが集まってきた。圭太はすごく不安な表情をしていると真衣がいろいろと話していた。すると圭太はノートに  『ごめん、やっぱりみんなのことを覚えてない。それにこの場所もわからないです。』  と書いて見せた。すると真衣は笑いながら  「気にしなくていいから今日はちーちゃんと楽しみなよ!だってこのイベントは圭太くんとちーちゃんのためにあるようなものだし〜」  と言うと千鶴は真衣をみんなから引き離して  「ちょっと真衣さん!私と圭太さんの関係は〜」  「公開スタジオで仮の結婚式もやっていたのに〜2人の表情がすごく幸せそうだったじゃん!」  「…勝田マラソンの前日のこと〜だけど今の圭太さんはそのことを覚えてないんですよ!」  「あっごめん〜そういえばそうだったね。それなのに〜」  などと話をして圭太たちの所に戻った。しばらくしていろんな話をしていると晶が時計を見て  「そろそろ10時だ!」  と言うとバロンや千鶴たちはそれぞれの持ち場へと戻った。かつりょうは不安そうにしている圭太に  「入場したら本部の方に向かいながら楽しみましょう。」  と言うと圭太はうなずいた。

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セレネーヌ仮面 第22話