バブスラ
148 件の小説バブスラ
お金が無くて動けないVtuberです。 こちらではX(旧Twitter)→@bbsr_osuimonoに投稿している140字小説等をまとめさせて頂きます。 YouTubeで「声劇集団おすいもの」と調べて動画を観てみてください。そしてチャンネル登録をしてみてください。するとどうでしょう。みるみるうちに私が喜びます。
また逢うために
雨降る宵。文字通り母のママチャリを飛ばして、人通りも疎らになったアーケード街に乗り入れた。 通い慣れた豆腐屋の前で急ブレーキを踏む。 「こら!あぶねぇだろケン坊!」 「ごめんおっちゃん!ひろし居る!?」 転校は明日。ほつれかかった俺たちの糸を固く結び直し、必ず果たす約束にしよう。
百卌字奇譚 伍拾壱
寝返りをうち、今度は背面から涼をとる。 コンクリートの寝心地にも慣れてきたことに軽い笑いがこぼれる。 「夏はいいな〜」 間延びさせた声で派手な反響を楽しみつつ、足枷に溶接された長い鎖を手繰り寄せる。それを束ねて抱きしめて、彼の痩躯と鼻血の匂いを思い出す。 待つ幸せが心を満たしていく。 『愛の獄』
spies
バスルームの鏡に残された紅色の「xoxo」 機密文書は当然無くなっている。 「とんだハネムーンになったな」 見計らった様に鳴った電話の向こうで妻は悪戯に笑う。 「言ったでしょ?私、サプライズが好きなの」 「僕も言っただろ?浮気は許さないって」 スピーカーホンから流れる銃声をBGMに支度を始める。
はじまりの別れ
「俺と来いよ。ドラマチックな人生にしよう」 陳腐な誘い文句で最後まで食いさがる俺に、彼は微笑で謝絶した。 「燕がうちの軒下を選んだ。み空色の虹鱒が釣れた。君の門出に立ち会えた。いつも劇的さ」 陽光が温めた窓側の席で流れゆく緑を観る。 いつか彼に恥じないまなざしでこの景色を眺めたい。
百卌字奇譚 伍拾
無垢の証が吹きすさぶ海風でひるがえる。 君はふりかえると遠慮がちに僕を見た。 「今更そんな顔しないでよ。わかってるから」 苦笑いで促すと、君は微笑み、僕に問いかける。 「ここでいい?」 「…うん」 「いこ」 今朝に出会ったばかりの僕らは、にわかに凪いだ青藍のバージンロードを歩みゆく。 『死神』
希望の散髪
「短くしてください」 失恋したから髪を切る。その安直な考えを見透かされたのか「いいのね」と美容師は問う。 顎髭を蓄え、筋肉質ながらも中性的な美容師の太く優しい声色に、目頭が熱くなる。 小さく頷く私に「めいっぱい可愛くしてあげる」とほほえむ美容師。 その日、彼好みの長髪は美しく散った。
老夫婦の結婚記念日
花柄のレースが施された真白なテーブルクロスを撫でて懐古していると「おまたせ」と夫が席に着いた。 「ミネストローネだったよ」 「ふふ、当たりね」 嬉しそうに本日のスープの種類を報告する夫。 誓いを立てたこのホテルで今年もモーニングビュッフェを味わい、四十五年目の私たちが始まる。
それは慕情へと
「やっぱり送ります!もう遅いし…」 「…野暮ね、一人にさせて」 別れ際は寂寥を添えて足早に改札を抜けた。 最後に君の住む町を見たかったのに、深夜の車窓に映るのは涙で霞む私だけ。 「ばーか…」 狡猾な私と鈍感な君に贈る餞の言葉は、誰もいない10号車に流れる心地良い走行音に溶けて消えた。
恋を悟る
降って湧いた噂話を俺達は笑い飛ばせなかった。 真っ赤な顔でクラスメイトに怒るあいつは、俺と目も合わさずに帰ってしまう。 「待てよ!」 この感情に名前もつけられないまま、校庭を駆け抜けるあいつの手を掴む。 「ここじゃやだ…」 初めて見る涙目と、初めて聞くか細い声に、俺の心は捕らわれた。
老夫婦の水彩画
丘の上に建つ東屋に腰掛け、荒目の画用紙に鉛筆を滑らせる夫。 住み慣れた街並みを丹念に描いている。 「風景画は難しいね。どうかな?」 「ええ、充分ですよ。あとは私が」 細やかな空にたっぷりと水を含んだ平筆を落とすと「大胆だなぁ」と夫が笑う。 私達の合作の見所は、色濃く残った鉛筆線だ。