きと
389 件の小説きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。
140文字小説+α その183 「ターゲット」
俺は、暗殺者。今日は、とある政治家がターゲットだ。 スナイパーライフルを構えて、位置に着く。 「本部、位置についた。ターゲットの特徴は?」 「ああ。ターゲットは、奥歯をインプラント治療している」 「本部、外見で分かる特徴を言ってくれ」 「外見で分かる特徴か……。了解した、アルファ。情報を精査する」 そんな難しいこと何だろうか。スコープで覗いて見ている感じ、みんな外見違うんだけど。 「アルファ、こちら本部」 「こちら、アルファ。ターゲットの特徴は?」 「ああ、眼鏡をかけた男だ」 「本部、こちらから見る限り、眼鏡をかけた男は4人いる」 「ああ、黒縁メガネの男だ」 「本部、黒縁メガネの男は3人いる」 「アルファ、ターゲットの眼鏡はブルーライトカット加工が施されている」 「了解、ターゲット確認」 こうして、今日も無事に仕事を終えた。
夕暮れと飲み物と推しと私 その15 「終末ツーリング」
『終末ツーリング/さいとー栄』 バイクに憧れを持っている。 世界の様々な場所を颯爽と走り抜けていく姿を見ると、自由でいいなと思う。私自身、車を所有しているが、運転はあまり好きじゃない。いろいろと考えることも多いし、駐車するときはぶつけてしまわないか、いつもひやひやしている。 その点、バイクは考えることの多さは変わらないだろうが、少なくとも駐車に対するストレスは少なくなりそうだ。ただし、今度は駐車する場所の問題は出てきそうだが。 一時期、バイクのツーリング動画を見ていたことも、バイクへの憧れを強めさせた一因だろう。雄大な景色を走り抜けていく。風を感じ、季節の移り変わりを肌で感じる。植物の匂いも感じられるだろう。動物との出会いもあるのだろうか。でも、動物とバイクで出会うのは危ない気がする。雨に打たれるのは、痛いだろうけどそれすらも経験してみたい。 いつか、私もバイクで旅に出ることがあるのだろうか? そんな未来に思いをはせるのも悪くない。 『終末ツーリング』は、終わってしまった世界、いわゆる終末世界を2人の少女がバイクで旅をする異色のツーリングマンガだ。2人の少女は、人類がいなくなってしまった世界で、様々な出会いを経験する。なぜ世界が終わってしまったのか。それを考えながら読んでみるのも、面白いだろう。彼女たちは、このあとどこに行くのだろうか? 行き着く先に見える景色とは? 彼女たちの旅路をお気に入りの飲み物とともに楽しんでみてほしい。彼女たちと、終わってしまった世界で一緒にツーリングを楽しもう。
140文字小説+α その182 「初めての店」
駅前のラーメン店にやって来た。 初めて来た店だが、どうするか。 ……うーん、麺固め野菜マシ、アブラ多めにするか。 「すいません。麺多め野菜固め、アブラマシでお願いします」 「お客さん、全部間違えてます」 普通に恥ずかしい。 「えーと、麺固め野菜マシ、アブラ多めですね」 「はい……お願いします」 店員がそそくさと去っていく。ラーメンの注文なんて、慣れているつもりだったが、こんなにも盛大にミスるとは。なんだよ、野菜固めって。 少し待つと、ラーメンが運ばれてきた。一口、スープを飲む。 おお、これは美味い! 麺もいい固さだ。 夢中になってラーメンを食べる。ここは、何度も来てしまうかもな。 美味しく頂き、お会計へ。 「すいません、おあいそで」 「お客さん、また間違えてます」 別の理由で、この店来られなくなるかもしれない。
140文字小説+α その181 「温度調節」
夏の暑い日は、湯船につかるのも嫌になる。 なので、シャワーで済ませてしまうことが多い。 今日は、特に暑かったし、シャワーのお湯の温度は、低めにしよう。 「ほわぁあああああああああああ!?」 いくら温度低めと言っても、冷水はダメだ。死ぬ! 冷水シャワーで死にかけた。 嫌な人生の実績が解放されてしまった。 反省を活かして、冷水ではなくぬるま湯で。 温度を調節して、シャワーを浴びる。うーん、なかなか悪くないけど、もう少しぬるくてもいいかもしれない。 そう思って、蛇口の横にあるお湯の温度を調整するやつを捻る。 「ふぉおおおおおおおおおおおお!?」 捻りすぎて、さっきよりも温度の低い冷水を浴びることに。死ぬって! 冷水で死にかける頻度が高いって!
140文字小説+α その180 「やるせない」
ああ、どうして俺は、こんなにダメなんだ。 忘れてはいけないと、強く思っていたのに。 目の間には、からっぽになった食器たち。そして、1つの生卵。 「卵かけご飯、食べようと思っていたのに……」 忘れて、普通に食事を完食してしまった……! 優しく生卵を手に取る。 その卵の消味期限は、今日。夕飯を食べる前に偶然発見して、慌てるようにテーブルに持って行ったのに。 仕方ない。明日にでも卵焼きにして食べよう。卵は、消味期限を少し過ぎても火を通してしまえば、問題なく食べられる。幸い、明日は仕事も休みだ。いつも朝食は、テキトーに済ましてしまう。だが、明日は卵焼きや味噌汁も付けたご機嫌な朝食としゃれこもう。 そして、翌朝。俺は、呆然としていた。 「……米、炊き忘れた」 パックのご飯もないし、その他に朝食として食べられそうなパンもない。 ああ、どうして俺は……。
夕暮れと飲み物と推しと私 その13 「サーチライトと誘蛾灯」
『サーチライトと誘蛾灯/櫻田智也』 子供の頃は虫に触れたけど、大人になったら触れなくなった。 よく聞く話だが、私もこの話に当てはある人間である。 子供の頃は、バッタを捕まえて虫かごに入れて、飼ったりしていた。でも、今はとてもそんなことできるとは思えない。バッタに触れないだろうし、仮に捕まえても逃がしてあげるだろう。 そう考えると、虫というのはなかなか不思議な生き物かもしれない。 子供の頃には平気だったうんぬんかんぬんだけではなく、刺してくるといった害を与えるものいるし、カブトムシのように熱狂的な人気を集めている虫もいる。私は絶対に無理だが、食べたりする種類もいる。神様の使いとしても扱われている虫もいたりするんだろうか? 多面的な扱いを受ける虫だが、季節を知らせる、という面は多くの人にも受け入れられているような気がする。夏の蝉、秋の鈴虫。私の住む北海道で言えば、初雪が降る前に現れる雪虫なども季節を知らせる虫だ。こうした虫たちは、鳴き声や姿を見ると「今年もこの季節が来たのか」と、ノスタルジックな気持ちになる。時の流れは、どことなく切ないものだ。 『サーチライトと誘蛾灯』は、昆虫好きの青年・魞沢泉が、訪れた先で出くわした事件を解決するミステリー小説シリーズの第1巻だ。令和のとぼけた切れ者である魞沢は、複雑な事件をのらりくらりと解き明かす。その終わりは、どことなく切なさを感じさせたりもする。彼の活躍をお好みのお菓子と飲み物とともに楽しんでみて欲しい。個人的には、『火事と標本』というお話が好きです。
140文字小説+α その179 「誕生日のリクエスト」
来週は、友人の誕生日パーティー。 料理に自信がある俺は、友人の食べたいものを作ることになった。 早速友人にリクエストを聞く。 「なんか食べたいものある?」 「ポル・ロー・コー・ルック!」 「せめてどこの国の何の食い物か分かるものにしてくんない?」 友人の言ったポルなんたらを調べてみる。 なになに……? カンボジア風の牛肉炒め、か。どこでいつ食ったんだよ。この町にカンボジア料理の専門店なんてあったか? どう作るのなんて当然のことながら、分からないので調べる。 そして、友人の誕生日当日。 「おお、マジでポル・ロー・コー・ルックじゃん!」 「ああ、良かった。これであってたのか」 「正直言って、数年前にスペインで食べたきりだから、記憶あいまいだけどな!」 「お前なんなんだよ。あと、なんでスペインでカンボジア料理食べてんだ」
140文字小説+α その178 「技名」
家で、息子たちがおもちゃの剣で遊んでいた。 思い思いに、カッコイイ感じに聞こえる技名を叫んでいた。 「うぉおおお、くらえ! ホーリーソード!」 「はぁあああ! 行くぞ、ソーリーセイバー!」 謝っちゃったよ! まだまだ小さい子供だから、英語の意味がよく分かっていないのだろう。息子たちは、何の疑問もなく遊びを続けていた。 どうしよう。英会話スクールとか、通わせた方がいいんだろうか。でも、習い事を強制させるのはなぁ。逆に英語が嫌いになるかもしれないから、よく考えよう……。 俺の葛藤など知る由もない息子たちは、またしても必殺技を叫んでいた。 「なかなかやるな! でも、これで終わりだ! ファイナルブレード!!」 「こっちこそ終わらせてやる! 必殺! ファックススライサー!!」 ファックス切っちゃった! お父さん、やっぱり心配!
夕暮れと飲み物と推しと私 その12 『夜は短し歩けよ乙女』
『夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦』 住み慣れた町でも、歩いてみれば冒険が待っていることもある。 数年前の夏。私は、帰宅中のバスの車窓から、ふと見慣れない道があるのを見つけた。 そこは、葬儀屋の隣にある一軒家とアパートの間にある森の中にあった。森の中へと続く階段だった。何やら階段の横に看板らしきものがあるが、バスの車窓からは何が書いてあるかは、読み取ることができなかった。 それから少し経った頃。私は、休日にその階段のある場所の近くへと寄ることがあり、何か導かれているような気持ちになり、意を決してその階段を上ることにした。 先ずは、看板を確認してみたが、使われている木材が黒ずんで、判読することができなかった。謎の階段は、完全に未知へと続く階段に変貌した。 私は、少し息を吐き、階段を上り始める。階段の一段一段は、少し高めだった。森の中を進んでいく。夏ということもあり、涼しい森の中とはいえ、汗が出てくる。5分ほど階段を上ると、開けた場所へ出た。 そこにあったのは、神社だった。高台にポツンと、小さな赤い鳥居と本殿があるだけの神社。高台から下の方を見てみると、野球場になっていた。そこで気づいた。ここは、子供の頃に兄が所属していた少年野球チームの練習をしていた公園の高台だったのだ。子供の頃に神社があったのかは、はっきりと覚えていない。それでも、奇妙な縁だと思う。ひと夏の小さな冒険をした私は、小さな神社を参拝して家へと帰った。 『夜は短し歩けよ乙女』は、京都を舞台とした「先輩」と「黒髪の乙女」の奇想天外な恋愛ファンタジーだ。あっちとこっちを行ったり来たりして、「偶然の出会い」から始まる冒険が繰り広がれていく。思わぬ縁が、思わぬ出来事を連れてくる。独特な森見登美彦節も魅力の1つだ。貴方もぜひ、お気に入りの飲み物と共に、この冒険の世界に飛び込んでみてほしい。その冒険との出会いもきっと何かの縁のひとつだ。
140文字小説+α その177 「若頭の今後」
「……お前も堅気になるのか」 「すいません、オヤジ」 今日。うちの組を支えてくれた若頭が、組を辞める。 将来は、俺の跡を継がせようと思っていたが……。人生は、分からんな。 「で、おめぇ、この後はどうすんだ? やりたいことがあるって言ってたが」 「はい。パティシエになろうかと」 「……ん?」 「パティシエです。あの、お菓子とか作る……」 「それは分かっとるわ」 すいません、と謝る声が聞こえたが、正直言ってどうでもいい。 なんか実家の家業を継ぐとか、そんな感じかと勝手に思ってた。 ゴリゴリのヤクザが、パティシエになれるもんなのか……? 「おめぇ、顔に抗争の時についた傷とか、背中に和彫りがあるが雇ってくれる場所あんのか」 「実家の店を継ぐので、そこは大丈夫ですよ」 実家の家業を継ぐのは間違ってなかったんかい。 「……オヤジ。こんな時になんですが、辞めるってことで、詫びの品を持ってきたんです」 「ん? ああ」 「俺が焼いたクッキーです。みんなで食ってください」 差し出された箱を開けてみる。キレイに焼きあがったクッキーが並んでいた。しかも、ラングドシャ。 コイツ、最初からパティシエなってりゃよかったのに。