きと
302 件の小説きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。
140文字小説+α その132 「ブックカバー」
可愛いブックカバーを買った。 ウサギの刺繡が施されていて、本を読むモチベーションも上がる。 ただし、問題を1つ挙げるとすれば。 「なんかサイズ合わないんだよなぁ……」 中途半端にぶかぶかしていて、持つ感触が若干キモイ。 うーん、私の持っている本と厚さが合わないのだろうか。 どれだけ調整してもなんかぶかぶかしている。 本当にそれだけなんだよ。それ以外はマジでいいものなんだよ。 まぁ、本を読んでいる時は、集中しているからそこまで気にならないよな。 問題ない、問題ない。そのうち慣れるやろ。 なんて思ってから、2週間。 私の持っている本だと、ことごとくサイズが合わない。 なぜだ。なんでなんだ。 ま、まぁ今日新しい本買うし、大丈夫だろ。 結果。新しい本もサイズが合わなかった。 ……呪われているのか?
犬の気持ち その26
夏が過ぎ去り、少しずつではあるが、涼しくなってきた。 これが、季節を感じるということなんだろな。 「ぽち、服装ミスった」 青らしく、シンプルで大変けっこう。 というか、散歩へ出る前に母親から「寒いから気を付けて」みたいなこと言われてたろ。 「寒い……。気温的にはそこまで低くないはずなのに、なんでこんなに寒く感じるんやろ」 なんでか教えてやろうか? 青が半袖シャツだからだ。 「今の時期だと、コンビニでも温かいもの売ってないよな……。いや、でもホットスナックは年中売ってるか。ぽち、ちょっと寄り道するで!」 それは別にいいけど、できればおこぼれをくれ。 数分間歩いて、コンビニに着いた。青は、弾む様な足取りで店内へと消えていった。 そして、アイスを持って出てきた。 ……え、こいつ、何してんの? 「アホを見るような目で見とるな、ぽち」 実際、アホの言動だからな? 寒いって言って、アイス買ってくるのは。 「考えて見てや、ぽち。今の時点でこんだけ寒いわけや。と、いうことはこれか先には外でアイスを食べられる機会は、確実に減ってくるわけや」 そうかもな。 「つまりや。現時点で、美味しく外でアイスを食べるのは、今まさにこの時間なんや」 でも、青は現時点で寒いんだよな? 寒いとアイスは美味しいと感じないんじゃないか? 青はアイスを食べながら、俺を連れてコンビニを後にする。 「しかし、寒いな……。時間が経って、さっきより寒く感じるわ」 お前、自分で何食べてるのか分かっているのか。
140文字小説+α その131 「愛猫の贈り物」
部屋の中で何か動く気配を感じて、目が覚めた。 薄暗い部屋の中で、愛猫が何かをくわえてこちらを見ている。 なんだ? なんかカサカサ動いてる? ああ、ゴキブリか。 ……ん? 「のわぁあああああああああ!?」 朝4時なのに一気に目が覚めたわ! 「はぁはぁ……」 愛猫がくわえたゴキブリをなんとか処理した。 時刻は、4時半。テレビ放送ですら寝てるんじゃないか。知らんけど。 どうしよう……。完全に目が覚めてしまった。今日仕事なのに。 昨日布団に入ったのが、日付が変わる少し前くらいだったので、4時間くらいしか寝てない。 このままだと、仕事場で居眠りしてしまう可能性が出てくる。 なんとか寝ないと。 こういう時は、ホットミルクがいいとどこかで聞いたので、準備する。 台所でマグカップに牛乳を入れると、愛猫が近寄ってきた。 牛乳を飲みたいのだろうか? なんて考えていると。 愛猫がマグカップを床に叩き落とした。 ……えーと。とりあえず、床掃除するか。 悲しくなってきた。猫は可愛いけど。
本屋の回り方
私は、月に1回か2回ほど本屋へ行く。 近頃は、ネット注文で家に居ながら本が届いたり、そもそも電子書籍で紙の本を持たない人もいる。だが、私は実際に本屋に行っていろいろと本を眺めるのが好きなので、本屋に行くことが多い。 といっても、私は本屋で目的の本を探すのが苦手なので、ネット注文の方があっているのかもしれないが。 それでも、本屋に行くと、思いがけない出会いがある。ずらりと並んだ本の中で、気になる装丁を見つけたり、1話だけ読めるマンガの冊子が置いてあったり。 そして、その出会いがかけがえのない作品との出会いだったりする。実際に私には、そうして出会ったかけがえのない作品がいくつかある。だからこそ、私は、本屋に行くことが好きなのだ。 私の本屋の回り方としては、目的の本をまず買って、後は気になるジャンルの本をぶらぶら見るだけ、という感じである。 ネットでは、「こういう風に本屋を回れ」とか、「プロは本屋をこう回る」などの動画を見かけることがある。私としては、「どう本屋を回ろうが、好きな本と出会えたらそれでいいやん」というスタイルなので、プロの回り方などに興味を持てない。 そして、その回り方を一定数の需要があることにも驚いた。 勉強を目的としてビジネス書を読む方は、プロの回り方を参考にするのはなんとなく分かる。だが、娯楽として本を楽しむ際には、その姿勢は必要なのかがよく分からない。 「このほうが面白い作品と出会えるんですよ!」という説もあるかもしれないが、私は自由に自分の自分が面白そうと思える作品と出会いたい。 それで、間違ったとしてもいいのだ。それも、出会いというものだろう。
140文字小説+α その130 「紅葉」
「紅葉見に行こうよ!」 友人は、ウキウキした顔で言ってくる。 あまりにも古典的なギャグ過ぎて、ツッコむ気にもなれない。 でも、目が輝いてるからツッコんであげないと……。 「あんた、そんなオヤジギャグさぁ」 「……は!?」 気づいてなかったんかい! 「紅葉と行こうよ……。確かにオヤジギャグだ……、恥ずい」 友人は、顔を手で覆って悶絶している。 狙いに行っていたらサムいし、無意識に言ってたらなんか恥ずかしいという、オヤジギャグの罠に見事にはまっていた。 「まぁ、紅葉見に行くのは、いいんじゃない? 秋を感じられるし」 どう声をかけていいのか分からないので、話を逸らす。 「そ、そうだよね。でも、山だと車とか借りないといけないかな?」 「そこまで山深いところに行く必要はないんじゃない? 大きな公園とかでも……」 「だね。公園、公園……」 何やらぶつぶつ独り言を言い始める。なんだ? 「オヤジギャグにならない公園の名前……」 「気にしすぎだろ」 オヤジギャグになるような公園なんてそこまでないだろ。
犬の気持ち その25
「もぬぁーああ」 いきなり奇声を上げるな。 「はぁ、夏休みやからって昼寝しすぎたな。気がついたら夕方や」 つまり、いつも通りというわけか。というか、さっきのはあくびか。 でも、青が惰眠をむさぼってくれたおかげで、外が涼しくていいな。地面も熱くない。 「大学の夏休みは、10月くらいまであるからな。のんびりできて最高や。高校とかでもこの仕組み導入すればええのに」 いろいろと事情があるんだろう。導入されてないということは、導入できない理由があるはずだからな。 「……ん? 待てよ。ええこと思いついた」 多分、良いことじゃない。 「大学の夏休みを少し短くして、後期の途中で『スペシャルウィークでーす』みたいに一週間まるまる休みみたいにすれば、やる気が継続するとちゃうか?」 他の人間がどうなのかは知らないが、青は確実にだらけるだけだ。 「冷静に考えてみてや、ぽち。週5の勉強の疲れが、週2で取れるわけないやん。だからこそ、このスペシャルウィーク制度を取り入れることで、心身ともに定期的にリフレッシュできる期間を設ける……。最高ちゃう?」 まぁ、今まで青が思いついてきた制度とかよりは、いい感じなんだけど、どのみち短いだのなんだの文句を言うやつが出てくるだろうな。俺にスペシャルウィーク制度を唱えている奴とかが、いい例だが。 「でも、あれやな。夏休み短くなるのは、やっぱり反感買いそうやな。あと、私もあんまりそれは好ましくない……。ぽち、これが板ばさみってやつなんか?」 そうかもな。 「代わりにぽちが、スペシャルウィーク制度を大学に提言してみてくれんか?」 何をどうすればいいんだ。
140文字小説+α その129 「悪い自慢」
「俺ぁ、昔はワルだったんだよ」 居酒屋で飲んでいた時。隣のおじさんが若い女性を口説いていた。 今時、悪い自慢で口説ける女性がいるとは思えないけど。 「俺は昔、空母と戦ったんだよ。一人で素手でな」 「んぶ」 あぶねぇ、噴き出すところだった。 空母とタイマンて。嘘にしても嘘過ぎるだろ。 見ろ、女性も変な顔してるぞ。 「凄かったぞー。相手は、戦闘機で撃ってくるし、もちろん空母本体も砲撃してくるしな。何とかクロールで避けたけどな」 「は、はぁ……」 女性は、どうしたものかと困惑している様子だった。まぁ、そうなるよな……。 どうしよう。助けた方がいいんだろうけど、このおじさんに関わりたくない。なんか変ないちゃもん付けられそう。 ……、いやいくしかないか。 「おじさん、その話マジですか?」 「おお、若けぇの。お前も聞いてけ!」 それから、2時間。おじさん対空母の話を聞いた。話すだけ話しておじさんは去って行った。 おじさんが、店から出ていくと、女性と2人で深く息を吐いた。 「ありがとうございました。本当にどうしようかと……」 「いえ、大したことは……」 「それでもですよ。よければ一緒に2軒目行きませんか?」 ……おじさん、まじありがとう!
推す方法
近頃は、好きな作品やキャラクターを『推し』というようになった。 「推しは、推せるときに推せ」などという言葉もよく聞くようになったと思う。 この推すという行為。方法は、幾千にも及ぶと思う。 分かりやすい所で言えば、グッズの購入だったり、ライブに行くことが推すことになるだろう。 だが、これはある程度の金銭的余裕がある人しかできない。私も最近になり、多少の金銭的余裕ができたので、グッズなどを購入することも多くなった。 お金がなかったころは、推しのことをSNSで発信することはしていたが、少しばかり何とも言えない複雑な心境になっていた。 もちろんのこと、「SNSで発信するだけなんて、推すことに入っていない」なんて暴論を言うつもりはない。どれだけ小さなことでも、魅力を伝えること自体が推すという行為だろう。 それでも、グッズを並べてある棚を作ったり、ライブで楽しんでいる様子を見ると、「俺はこんなことしかできていないのに……」と劣等感を抱いてしまう。自分でできる精一杯をやっていても、それを軽々と越えられる。どれだけやっても天才に追いつけない、という現実を突きつけられる。でも、好きだし……、という思いが自分の中でくすぶる。 どれだけやっても天才に追いつけない。悲しいが、それは現実としてある。 ならば、好きなようにできるということでもあるのではないか? 目標として天才に追いつくことを設定することは、もちろん良いだろう。それは、大変立派なことである。でも、その道筋は自由でいいし、そもそも天才を見ながら、「俺はこっちの道に行く」と逸れても立派であると思うのだ。 結局のところ、自分の道は自分で決めて、好きなことをやっていくしかないのだ。 あなたのやり方で推しを推すのは、立派な行為である。 推すだけではない。どんなことでも、やり方を決めるのは自分しかない。 なんてことを推しのグッズであるTシャツが届くのを待ちながら書いた。北海道は、そろそろ寒くなるので、早く届くことを祈る。
140文字小説+α その128 「ピザと」
友人宅で、ピザをデリバリーで頼んだ。 2人で飲み物などを準備しながら、ピザの到着を待つ。 「ピザって、どうしてこんなに来るのが待ち遠しいんだろうね!」 「それなー! あ、そうだ。米何号炊けばいいかな?」 「あんた、ピザで白米いくの!?」 「え、いかないの? 実家だと、定番だったんだけど……」 すげぇ。いろいろとすげぇ。 お好み焼き定食もあるくらいだし、おかしいことではないのか……? 「と、とりあえず私は、白米食べないから、あんたの分だけでいいよ」 「りょーかい。えーと、今日頼んだのは、マルゲリータだから……」 友人は、少しだけ考えると。 「1号半……、いや2号炊けば足りるか」 「めっちゃ食うじゃん」 そんなに米に合う食べ物だっけ? ピザって?
140文字小説+α その127 「値札」
友人が着ている服に値札が付いたままになっている。 これは、どう伝えたものか。 直接言わずに、遠まわしに伝えた方が友人のためだろう。 「その新しい服決まってるね! おろしたて?」 「え、これ着るの5回目だけど」 それは流石に気づいて! 「え、値札!?」 驚愕する友人の言葉に静かに頷いた。 5回目て。初回で気づかないのはまだ分かる。でも、その後に洗濯するんだから気付く確率は、跳ね上がるでしょうに。 「は、はさみとか切るものないか?」 2人でお互いのカバンを探してみたが、あいにく切れるものはなかった。 どうしたものか、と2人で思案していると。 「あ、あそこ! 100均!」 我ながらよく見つけたと思う。急いでお店に向かい、はさみを購入して値札を切った。 「……ごめん、助かった」 「いいよ、それより早くパンケーキ食べに行こ!」 そう言って友人を励ましたが、友人はなんだかバツの悪そうな顔をしている。 「……ごめん、財布忘れた」 「今日行くお店、現金しか使えないって何度も言ったよなぁ!」 ドジっ子は可愛いけど、こっちは大変だ。