きと
328 件の小説きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。
140文字小説+α その147 「スーツ姿の男たち」
スーツ姿でサングラスをかけた強面の男たちが、道を歩いている。 どう考えても反社会的勢力だろう。 警官としては、見逃せない。 「……君たちは、どこの組の人達?」 「……○○町ウォーキングサークルや」 健康サークルかい。なんでスーツなんだよ。 「健康サークル……ということかい?」 「それ以外に何があんねん」 いや、何があるって言われると弱いんだけど。 ま、まぁ、危ない集団でないならいいか。 「運動の邪魔して悪かったね」 「気にしないでください」 リーダーと思われる人が頭を下げてきた。礼儀正しい……。 「兄貴、早くヤクを買いに行きましょう!」 「ちょっと待って、ヤクってなに?」 騙されるところだった。健康サークルの皮をかぶった反社会勢力か!? 「ヤクってのは、ココア味のプロテインのことです」 「いちいち紛らわしいな」
犬の気持ち その32
「ぽち、どうする。今年が終わる」 どうすると言われましても。 完全に季節は冬に移り変わった頃。もこもこのダウンコートを着ている青が、空を見上げて言った。 「くっそー、今年終わるやん。今年、私何してたん? 何のやりきった感もないねんけど」 青が何してたか教えてやろうか。食って、寝る。それをひたすら繰り返していただけだ。非常にシンプルだし、何なら俺とほぼほぼ変わらない。 「いや、確実に何かを成し遂げていたはずや。思い出してみよう……」 徒労に終わると思うけど、頑張れ。 「まずは、1月……、は一旦保留にしておこうか」 挫折が早すぎるだろ。 「2月、3月……。あかん、季節単位で考えよう」 1か月単位だろうが、季節単位だろうが、同じ1年なんだから変える意味ないだろ。 「まずは、春。大学2年生に無事に進級。んで、夏。なつ……」 だから、早いんだって。 「夏は、ぽちのゲージ買いに行ったな」 お前、それでいいのか。ゲージは確かに買いに行ったけど、成し遂げるというか、日常的に行っていることの一部じゃないのか。 「秋は、そうやな……。焼き芋が美味しかったな」 もはや成し遂げたことでも何でもないぞ。というか、青の今年の秋は、それでいいのか? もっとこう……、ダメだ。食って寝てただけだこいつ。 「んで、冬やけど……。クリスマスと大晦日に美味しいごはんが食べられた、という予定を立てておこう」 予定になっちゃったよ。目的を見失うスピードが速すぎる……。俺じゃなかったら気付かなかったぞ。 「ぽちは、今年はどうやった? って、犬は基本的に食って寝てるだけか。悪いこと聞いたな」 青にだけは、言われたくないセリフだな。
140文字小説+α その146 「福袋」
「ただいまー!」 初売りへ福袋を買いに行った妹が帰ってきた。 早速、リビングで開封するみたいだ。 「おー、この服もいいね。このマフラーも可愛い。さて、次は……!?」 妹が突然床に倒れた。 「どうした!?」 「マラカスが3本入ってた……」 「マラカス?」 ちょっと何言っているのか、分からない。 妹の近くにある紙袋を覗いてみると、確かにマラカスが入っていた。 しかも、3本。3組じゃない、3本だ。万が一マスカラを使いことになっても、1本余る。足りない1本何処に行ったんだ。 しょげた顔をしながら、妹は残りの福袋を開封していく。 どうやら、マラカス以外に変なものはなく、満足のいく内容だったようだ。 「うーん、このマラカスどうしようかな……」 「フリマアプリで売れば?」 「それでもいいんだけど、1本足りないやつはどうしても邪魔だよ」 それはそう。 どうしたものかと思案していると、妹のスマホが震えた。 「もしもし、うん。家着いて買ったやつ開封してたけど。……え!? うん、私も!」 何やら盛り上がっているが、どうしたんだろう? スマホから耳を離した妹に尋ねる。 「何かあったのか?」 「友達も3本マラカス入っていたって! これで何とかなりそう!」 「何その奇跡」
140文字小説+α その145 「お手製年越しそば」
今日は、大晦日。なので、年越しそばを食べている。しかも、恋人の手作りというのも嬉しい。 でも、気になることがある。 「あのさ」 「何?」 「……なんで塩そばなの?」 いや、美味しいからいいんだけどね? 「塩そば、苦手だった?」 彼女が可愛らしく首をかしげる。 「苦手じゃないけど、普通めんつゆ使うんじゃないかなーって」 「確かにそうなんだけど、せっかくなら変わった物作りたいなーって」 ああ、そういうことか。料理好きだし、血が騒いじゃったのかな? もしかして、他の正月料理も変わった趣向があるのかもしれない。 「おせちも何か変わったものが?」 「いや、おせちは普通だけど」 「だけど?」 「シュトーレン焼いてみました」 「それは、クリスマスでは?」 僕のツッコミに彼女が笑う。つられて、僕も笑う。 来年もいい年になりますように。
140文字小説+α その144 「定食屋」
近所にある行ったことがない定食屋に入ってみた。 いい雰囲気だし、メニューも豊富だ。 どれにしよう……、ここはおすすめを聞いてみるか。 「すいません、おすすめのメニューとかありますか?」 「天丼以外はすべておすすめですよ!」 「はい?」 えーと、聞き間違えたか? 「て、天丼以外は……?」 「はい! 天丼以外は、すべておすすめです!」 逆に気になる! 天丼に何があるんだよ!? で、でもここで天丼頼むのも、なんか勇気いるよな。 「じゃあ、カツカレーをお願いします……」 「はい、少々お待ちください!」 何でだろう、ちょっとだけ疲れた。 「おじゃましまーす」 「あ、今日も来てくれたんですね!」 む、常連さんか。 「今日も天丼ダメ?」 「ダメですねー」 ダメって何? 当たりの日があるの? 「パチ屋では勝てるんだけど、天丼はかてねぇーなぁ」 「こればっかりは仕方ないですよ~」 パチンコで勝つ確率より、ここの天丼が当たりの確率の方が低いの?
今年もやってきた
今年も誕生日がやってきた。また一歩、おじさんに近づいたというわけである。いや、もう30超えてるから、おじさんなんだけど。 2025年は、どんな年だったのか。振り返ってみても、思い出が特にない。 それはつまり、平穏無事であったということだ。良いことではあるが、寂しいのも事実である。 小説は相も変わらず書き続けてきた。今年は、特に新作を投稿してない気もするが。 実はというと、今定期的に更新している作品以外にも書いてはいる。ただ、中途半端に止まっていたり、まだ完成していないというだけだ。 来年は、これらをとりあえず完成させるのが、1つの目標だ。 ここまで書いて思い出したが、小説関連で今までと変わったことがあった。 文学賞に応募してみたのだ。短編ではあるが、3つの作品を提出した。どこかで、この3つの作品も公開できたらいいのだが。 思えば、私は短編小説しか書いたことがない。初めて書いた『シェアハウス四方山話』は、1話完結で約50話ほど続いているので、短編小説とは言えないかも知れない。だが、1話完結なので話としては、ほとんどが2000文字以下のものである。 長編小説を意図して書いていないというわけではなく、単純に書けない。練りに練った伏線とか、そもそも思いつかないし。思いついたとしても、それを物語の中でキレイに回収できる気がしない。まったくもって、頭の悪いことである。 来年、私はどんな物語を書いているのだろうか? もしかしたら、小説を書くことをやめてしまっているのではないか? 未来のことなので、どうなるのかは、いるのかすら分からない神様しか知らない。 それでも、何かいいことが起きればいいな、とは思う。 どうか、来年もこんな稚拙な文章が書けますように。 とりあえず、1月にある推しのライブを楽しもうと思う。 皆様、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
140文字小説+α その143 「善と悪」
「なんでこんなことした?」 警官である俺の前で、金髪の少年が苛立っていた。 この少年は、喧嘩をしていたのだ。 少年は、黙ったままだ。 「黙ってないで、何とか言え!」 「献血行こうとしてたのに、こいつらが邪魔してきたんだよ!」 「……んん?」 「献血?」 「そうだよ、悪いかよ」 「いや、むしろいいことなんだけど……」 何だこの子。社会貢献活動にいそしむいい子なのか、不良少年の悪い子なのか、よく分からない。行動に一貫性がない。 い、いや、見た目で判断しちゃダメだよな。 この子は、思いやりのあるいい子だ。そういうことにしておこう。 「まぁ、事情は分かった。でも、喧嘩はダメだぞ。学校に連絡するけど、どこの高校の子?」 「……S市聖カトリック高校だよ」 「あそこ、ここいらで偏差値一番高くなかった?」 「学生の本分は、勉強だろーが」 「ああ、もう訳が分からん」
犬の気持ち その31
「ぽち、雪って何なんやろな……」 知らんけど。 すっかり気温も低くなり、秋から冬に変わった頃。青は、外を見ながら黄昏ていた。 「外へ散歩に行くのが、こんなにも億劫になるとは……。雪は、恐ろしいもんやな……」 おい、まさか散歩に行かないつもりじゃないだろうな。 確かに今、外は雪が降っている。外は寒いだろう。だが、それだけなんだ。それを我慢すれば、いい景色が広がっているはずだ。 ほんの少しの勇気でいい。それだけ、世界が変わる。 「ぽち、雪は滑って危ない。ぽちも足が冷えてしまう」 まぁ、そうだな。 「よって、今日の散歩は――」 「ワン!」 思わず吠えてしまった。久しぶりじゃないか、俺が吠えるの。 「……あかん?」 「わふ」 「うーん」 うーん、じゃない。健気な飼い犬がお願いしているんだ。ここはひとつ、騙されたと思ってだな……。 「傘をさしていくか? それもなぁ。しんどいよなぁ。ぽちは、レインコートを着せればいいけど、私はそういうわけにもいかないし……。何よりも寒いんよな」 なら、もこもこした服をいっぱい着ていけばいいだろ。犬の防寒具より、人間の防寒具のほうが絶対に種類があるんだから。 「でも、今からダウンコートを出したら、負けな気がするんよな」 誰の何に対しての負けだ。 「はぁ~……。行くか。ちょっと待っといてな、ぽち」 ようやくか。最近、この行くか行かないかの攻防をするけど、最終的に行くんだから何の意味もないだろ。 まぁ、結果として散歩に行けるから、あんまり文句はないけど。
140文字小説+α その142 「地球儀」
物置を整理していたら、地球儀を見つけた。 そこには、子供の頃に俺がいろいろと落書きしていた。 この国で、サッカー選手になるとか。 あの国へ、あの子と新婚旅行に行くとか。 ……子供の頃夢どころか、この先も俺が行けそうな国はないな。 地球儀をクルクル回す。 子供の頃は、俺も夢に満ち溢れていたんだな。 見てたら、悲しくなったきた。 夢を見ていた子供時代を裏切ってしまい、今は小太りの若干髪が薄くなってきた悲しきサラリーマンである。彼女はまだない。 もういい。この地球儀は、捨ててしまおう。 引き続き、物置の整理をする。 すると、一冊のノートを見つけた。 中を見ると、『夢を叶えるためのロードマップ』の文字。 思わず、空を見上げる。そんなことをしても、悲しき友達も少ないムダ毛がすごい悲しきサラリーマンである。彼女はまだない。
犬の気持ち その30
「ほっ、ほっ」 ハッ、ハッ。 「ハァ、ハァ、いいなこれ!」 だな。たまにはゆっくりと歩くんじゃなくて、走るのも良いものだ。 急にジャージをがちがちに着込んできたときは、ただの変な防寒対策かと思ったが。 「走る前は、ちょい寒いと思ったけど、走ったらそんなの全然気にならへんな!」 俺も暑くなってきたな。最近は、家の中で軽く遊ぶことはあったが、こんなにガッツリ体を動かすのは、久々だ。 しかし、何の吹き回しで走ってるんだ? 「まったく、油断したわ。食欲の秋とはいえ、食べ過ぎたわ。誰や、秋に美味しいものをたくさん生み出す奴は」 ああ、ダイエット中か。 恨むなら、青自身の自制心の無さを恨むんだな。秋は、何も悪くない。むしろ、青はその恩恵をかなり受けていただろうが。 「走るのはいいけど、体力落ちてるのか、ちょっとしか走ってないのに苦しくなってきたな。もう少しで公園に着くし、そこで小休止や」 そこから、3分ほどで公園に着いた。青は、ベンチに腰掛ける。 「ふー、疲れた疲れた。でも、良い運動なるな。これから、たまには走る日を作ってもいいかもな」 青は、2か月くらいで飽きそうだけど。 でも、たまに走るのは賛成だ。なかなかにいい気分だ。 「うーん、高校時代は部活で走ってたから、そこそこ体力あったのになぁ。老化現象って恐ろしいわ」 老化ではないんじゃないか。 「さて、そろそろ帰ろうか、ぽち。帰りももちろん走るで!」 よし、臨むところだ! そして、次の日。 「ぽち、すまん。風邪ひいた……。今日は、お父さんが散歩連れてってくれるから……。ああ、もう頭痛いわ……」 そこまで病弱だったか、お前。 次に走る日は、防寒対策しっかりしろよ。 ……これで、走るのやめたりしないよな?