きと

360 件の小説
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きと

就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。

140文字小説+α その165 「覗き」

 修学旅行2日目の夜だった。  ホテルのロビーで、数人の生徒が正座させられていた。 「あいつら、何したんだ?」 「覗きだとよ。馬鹿だよなー」 「へぇ……」  覗き、か……。 「俺の見間違えじゃなければ、怒られてるの全員女子だけど?」 「安心しろ、見間違えじゃない」  女子による風呂の覗きか……。  いや、無いとは言えないだろうけど、やっぱり「え? なんで?」とはなる。  男子の性被害も注目される昨今に、何をしているんだか。  「お前らな! 男子でも、見られたくないという心理はあるんだぞ! 後で反省文だからな!」  女性の先生が、吠えていた。ま、これで平和な修学旅行になるだろ。  そして、次の日。 「あいつら、何したんだ?」 「先生の目を盗んで、異性の部屋に入ったんだとよ」 「へぇ……。また女子なん?」 「残念ながらな」  うちの高校、女子が積極的すぎないか?

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夕暮れと飲み物と推しと私 その5「少女星間漂流記」

『少女星間漂流記/東崎惟子』  あてもなく旅に出る。非常に気ままで、自由で、あこがれもあるものである。  しかしながら、その実態は苦労が絶えないだろう。  まず、お金の問題がある。当たり前だが、お金は使えば減る。旅先での財布のひものゆるみを考えれば、なおさら減る速度も速まる。余程のお金の余裕がなければ、旅を続けるということ自体が難しい。  そして、寝床や服の問題もある。衣食住は、生活する上で外すことができない要素だ。だが、旅をする以上、寝床は確実に決まっている保障はない。連休やイベントと重なると、都市部でもホテルが取れるか怪しい。服は、ある程度は持つだろうが、コインランドリーなどを使用しなければ不衛生で、それだけでストレスも溜まっていくだろう。  さらに言えば、心の問題もある。慣れない環境というのは、楽しみも大いにあるが、知らず知らずのうちに神経をすり減らす。  だからこそ、人は旅に出ても安心できる自分の居場所に帰って来て、ホッとするのだろう。  『少女星間漂流記』は、2人の少女が安住の星を求めて、広い宇宙を旅するライトノベルだ。笑いもあれば、癒しもあり、胸をえぐる辛さもある。少女たちは、そんな星々での体験をかみしめて、今日も旅を続けている。  少女たちが帰りたいと思う星が、見つかりますように。そう願いながら、私は時折空を見上げる。美味しいコーヒーを飲みながら、皆さんもぜひ彼女たちとの旅に出かけてみて欲しい。それは、きっといい旅の思い出になるだろうから。

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140文字小説+α その164 「システム」

 実家から荷物が届いた。  荷物を開けてみると、食べ物が沢山入っていた。  えーと、カップ麺にお菓子。  あとは、食べかけのふりかけ?  ふりかけを味見してみると、超まずかった。  まずかった物を俺に送るシステムは、学生時代からまだ続いているようだ。  どうするかな……、このふりかけ。  なんかふりかけからは、本来感じることのないケミカルな感じが脳に直接来る。  おかかたっぷり! とはパッケージに書かれているけど、おかかはほのかに香る程度で、ネギみたいな風味の方が遥かに強い。  でも、食材を無駄にはしたくないし、親からは「食べ物の粗末にすると、呪われるからね」と何度も言われてきた。  パスタとかに混ぜれば、なんとか食えるだろうか? あとは、ご飯8割ふりかけ2割くらいの割合で、食べ進めていくか?  まずい物を俺に送り付けるシステムのおかげで、まずい物に対する工夫がだいぶ身についてきた。  そして、毎度ながら思う。  ……このシステム、確かに捨ててはいないけど、ある意味粗末にしてないか?

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仕事サークル

 近くて遠い未来。AIの技術発展が進み、人間が仕事をするということがなくなった。  今や、接客や警備員、工事も全てAIが考えて、AIが行う。  人間は、労働から解放されて、娯楽を楽しむだけの生活を送る。あまりにも退屈で、あまりにも贅沢な時代となった。  太田は、本も映画にも興味がないので、この時代は退屈であった。  なにかしたい。仕事がある時は、いやでも時間が無くなり、退屈を感じることが少なくなった。むしろ、娯楽を楽しむ余裕がないとすら思っていた。  だが、ここまで娯楽しか楽しむものがないと、退屈に耐えるしかなくなってしまう。  仕事がしたい。働きたい。  太田は、自分と同じような人はいないかと、SNSで検索してみた。すると、同じような人がいるようで、『仕事サークル』なるものを見つけた。  詳しく見てみると、AIが行っている仕事を人間が敢えて行う。『仕事が趣味な人にピッタリ!』というキャッチコピーにも、心を打たれた。太田は早速、この仕事サークルに参加してみることにした。 「あ、太田さんですね。ようこそ、仕事サークルへ!」 「ありがとうございます。よろしくお願いします。……それで、この仕事サークルでは、どんな仕事をするんですか? SNSには、詳しくは会ってからお話します、と書かれていたので……」 「はい、この仕事サークルでは、AIが退屈しのぎに丁度いい仕事を提案してくれるので、それを我々が和気あいあいと体験していきます。職業体験みたいな形ですね。色々な仕事が体験できて、面白いですよ!」 「おお、それはいいですね! 娯楽で仕事ができるなんて!」  数年後。太田の参加したような仕事サークルが、多く活動するようになった。  AIが仕事を考えて、人間が仕事をするようになる時代の到来だった。

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140文字小説+α その163 「風邪に効く食べ物」

 風邪を引いてしまった。  熱も出て、家で寝ていると友人がお見舞いに来てくれた。 「大丈夫か?」 「ああ、そこまで酷くはないよ」 「風邪の時に効く食べ物作るよ。ほら、えーと……すりおろしレモン!」 「リンゴな?」  レモンは喉に効きすぎるわ。 「ああ、リンゴか。すりおろした果物っていうのは、覚えていたんだけど……」  友人は、照れくさそうにほほを掻く。  気遣ってくれるのはありがたいが、すりおろしレモンは勘弁してほしい。  幸い、冷蔵庫内に冷やご飯があるので、お粥を作ってもらうことに。 「お待たせー」 「ありがとうな」 「いいって。……あーんってしてやろうか?」 「男同士でおかしいだろ」  そう言いながら、お粥を見てみると、なんだかんだ茶色い。 「……なんか茶色いけど?」 「カレー粉を入れた、カレー粥です」 「妙なアレンジすな」

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夕暮れと飲み物と推しと私 その4 「星旅少年」

『星旅少年/坂月さかな』  そこまで詳しくはないのだが、なんとなく宇宙が好きだ。  夜になると無限へ広がる頭上に広がる世界。その光景を好きになったのは、子供の頃キャンプへいった時だろう。  初めて家族でキャンプへ向かった先は、海辺の海岸だった。夏休み期間だったので、かなり人も多かったが、海で泳いだりBBQを食べたりと、なかなかに楽しかった。  そして、夜になって頭上を見上げた時、絶景が広がっていた。キラキラと無数の星たち。今まで、街灯にかき消されていた小さな光たちまでもが、鮮明に見えた。世界には、こんなにも美しいものがあるのかと、子供ながらに感動した。  宇宙。多くの人が、存在は知りながらも踏み入れたことない世界。そこには、私たちが知らないだけで、いろいろな物語だったあるはずで、その物語を知ろうと日々奮闘している人たちもいる。そこにあるけれど、知らない物語。また、その中には忘れられた物語もある。  人が死ぬときは、忘れられた時。物語にも、同じように当てはまるだろう。 『星旅少年』は、眠らない少年303の旅の記憶だ。多くの人が眠ってしまったまどろみの星。その文化を、303は確かに記憶する。その旅の中で303も少しずつ変わっていく。  この美しい青の物語は、読む人に静かで優しい夜を届けてくれる。夜になる前の夕暮れに優しい飲み物が良く似合うこの物語。この物語は、どうかまどろみの中へと忘れられないように切に願う。

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140文字小説+α その162 「忘れ物」

 友人と温泉旅行へ来た。  宿は、温泉とご飯、どちらも素晴らしかった。  一夜明けて、後はもう帰るだけ。 「準備できた?」 「うん。チェックアウトしよ」  フロントに着いた時、友人がハッとした。 「ごめん、キャリーケース忘れた!」 「そんなことある?」  友人は、慌てて部屋へと戻っていく。  キャリーケース忘れるって……。旅行の荷物のメインじゃないのか、あれは。フロントの人も笑いをこらえているし。  まぁ、いいや。先にチェックアウトしちゃおう。 「この度はありがとうございました。何かお部屋で気づいたことは、ありましたか?」 「いえ。特には」 「ありがとうございます。それでは、お部屋の鍵をご返却願います」  ……あ。 「すいません……。部屋に鍵忘れました……」  フロントの人が、再び笑いそうになっている。  類は友を呼ぶ、ってこういう事なんだろうなぁ。

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桜の下

 桜の木の下には、死体が埋まっている。  なんてことはよく言った物で、なかなかに真実味があるのではないか。  なぜそんなことを言えるのか。不思議なことを言うもんだな。そう思う方も多いだろう。  理由はシンプルだ。  俺が、桜の木の下に死体を埋められた極道者だからである。  俺の死体が埋められているとも知らず、桜の木の下で複数の家族が花見を楽しんでいる。  普通に幽霊なので、写真を撮られると写っちゃうんだけど。上手く避けないと、家族連れを怖がらせてしまう。 「ゆうくん、撮るよー!」  おっと危ない。 「かなちゃん、こっち向いてー」  おお、こっちもか。子供が多いと避けるのも大変だな。  しかしながら、今日は風が強い。桜の花びらが舞って、写真映えするから、みんなめちゃくちゃ写真を撮っている。  桜が舞う中で、写真から外れる戦いをすること数分。結構疲れてきた……。子供がいると、親はここまでシャッターを切るのか。 「みんなで集合写真撮ります?」 「お、いいですね。子供たち集めますか!」  集合写真なら避けるのは簡単だな。画角が広いけど、カメラの後ろに行けばいいし。  子供たちと親が桜の木の下で、整列する。  親の1人が、スマホを三脚に立てる。それを見て、俺はスマホの後ろに移動する。 「みんな、撮るよー」  シャッターを押した人が走っていく。と、その時。強い風が吹いた。 「あ! 倒れる!」  そのまま写真が撮られた。 「スマホ大丈夫?」 「うん。って、これ……」 「うわー! 幽霊だ!」 「逃げよう逃げよう!」  三脚が倒れて、ちょうど俺が写る画角になっていたらしい。子供が走って逃げていく。  ごめんなさい。これでも子供大好きなんですよ。幽霊だし、刺青入ったヤクザなんですけども。

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140文字小説+α その161 「力の代償」

『力が欲しいか?』  魔族との戦いで、死にかけの頭に声が響いてくる。  今、生き残るには、この取引に賭けるしかない。 「欲しい……! 代償はなんだ……!」 『月額利用料金貨3枚になります』  サブスクリプションタイプの力って存在するんだ。 「分かった。払おう」  なんか力が抜けた。 『いいだろう……! 取引成立だ……!』  それっぽく声色作っているけど、今更だ。  頭の中の声が静かになると、不思議な力があふれてきた。  これなら、行ける!  数分後。俺は、魔族を倒すことができた。  良かった。取引は、ちゃんとしていたようだ。  一息ついたところで、頭の中に再び声が響く。 『お疲れ様でした。それでは、利用規約などを説明させていただきます』 「え、そう言うのもある感じ?」 『ポイント還元がお得なプランもありますよ』 「いよいよだな」

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夕暮れと飲み物と推しと私 その3 「恋文の技術」

『恋文の技術/森見登美彦』  手紙を書いたことは、ほとんどない。あってもせいぜい子供の頃に、何かの行事で両親や近隣住民の方々に描いたくらいだろう。  あと手紙と言えば、年賀状だろうか。子供の頃、友達が少ないながらも年賀状は書いていた。  小学校の頃には、友人と一緒にスタンプを年賀はがきに押して、オリジナルの年賀状を作っていた。中学校に入ってからは、CD-ROMが入っている年賀状印刷用の本を両親が買っていたので、それを活用してパソコンで作っていた。今では、スマホで済ませるようになってしまったが、1人だけ年賀状のやり取りをしている。その年賀状もパソコンで作っている。  年賀状は、大抵の場合、パソコンでのテンプレート文の他に何かしらメッセージを手書きしている。  何を書いていたかは、すっかりと忘れてしまったが、そこには相手を思いやる何かを書いていたように記憶している。もちろん、子供の頃の話なので、ふざけたことも書いていただろう。  手紙は、メールなどでは伝わらない何かがある気がする。特に気持ちがこもるように思えて、だからこそ手紙という文化が残っている、と勝手に思っている。 『恋文の技術』は、京都から能登半島の研究所へ飛ばされた大学院生が、文通修行として親しい人と手紙のやり取りをしていく書簡風小説だ。彼らの文通はおもしろおかしく、思わず「何してるん?」とツッコミを入れたくなるが、読んでいて愛おしい。最後に書かれている恋文のコツは、なかなかに的を得ている。恋文を書く予定はないが、このコツは全ての手紙に当てはまるような気がする。  皆さんもホッとする飲み物を用意して、のんびりと彼らとの文通の世界へ飛び込んでみて欲しい。  その世界は、馬鹿馬鹿しいかもしれないが面白く、心に満ち溢れている。

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