犬の気持ち その22

「ぽち、今日は本屋に行くで」  青は、俺にリードを付けると、開口一番に言った。  本屋か。そうなると、結構歩くな。何よりもいつもと違う景色になるのがいい。いつも同じというのも味があるが、少しくらい変わったっていいだろう。 「最近は、ネットとかでも買えるけど、やっぱり私は実際に店舗に行って買いたいんや。ぽちには、分からんやろうけど」  まぁ、犬だからな。本なんて読まないし。圧倒的に、公園でボールを追いかけているほうが楽しいしな。  「1回、電子書籍も試してみたけど、あれはなんか肌に合わなかったんよな。便利なことは間違いないんやけど、何というか、なんか違うねんな。あれや、ほら、分かるやろ?」  分からん。言葉出てこないにもほどがあるだろ。  「でも、紙の本の一番の問題は、場所取ることやねん。そろそろ何冊か売りに行かなあかんな……」  青は、しばし無言になる。  何かを考えているようだ。要らない本の選別でもしているのだろうか。
きと
きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。