憂桜
14 件の小説空
夏の空だと思った。 季節は春にもなりきっていない、 木々は裸で、ひんやりした風を受け、なびいているのに。 ほんの少し熱い日差しの中、青い空にどすんと身構えている分厚い雲を見て、そう思った。 眩しさに目がくらみ、目線を落として数歩進む。 体育館の前を通ると、3人ほどの女子がこちらを見ているのがわかった。 見られている。 その途端、心臓がきゅっとなり、息が苦しくなった。 何食わぬ顔で、だけど先程より足取りを速めて通り過ぎた。 見るなよ、と心の中で呟いてから、もう一度空を見上げると、そこにはもう夏の空はないように感じられた。 ただ、何の変哲もない、いつもの空だった。
きたない君がいちばんかわいい 二次創作 平和
「きたない君がいちばんかわいい」の二次創作です。 こんな2人が見たかった。 「ひな!早く来てよ」 「待って、あいちゃん!」 そう言って、ひなこは愛吏に駆け寄り、抱きしめ合う。 2人の前には、小さいが2人が暮らすには十分な大きさの家。 「やっと、一緒に暮らせるんだね…」 ひなこはそうぽつりと言い、愛吏はほほ笑みかける。 「これからは寝る時も起きる時も一緒」 愛吏がそう言うと、ひなこはパッと目を輝かせた。 「早く入ろう」 「うん」 もう既に家具などは1式揃えてある。今日からここで2人の生活が始まるのだ。 「落ち着いたら、大きな犬飼いたい」 愛吏がつぶやく。 「いいね」 ひなこが微笑み、愛吏と向き合う。 「愛してるよ、あいちゃん」 ひなこは愛吏の肩から、するすると手首まで指を滑らせる。 それが指先に到達し、お互いの手と手を合わせた時には、2人は口付けを交わしていた。
台風
「台風、こっちこないかな」 ニュースを見ながら、そう、姉がつぶやくので、私は頷いた。 「ほんとにね、学校休みにならないかな」 私たちの願った通り、台風は私たちのところへやってきた。 もちろん、学校もお休み。 台風がくる前日、窓を守るため、雨戸を下ろしながら、生ぬるい風を感じた。 私はこの風が好きだ。 台風が来る時特有の温度や、音がする。 ヒューッという音も、みんなは怖いというけれど、私は少しワクワクする。 「楽しみ」 私はそう、ぽつりと呟いた。
夜桜
私は1人、夜の街を歩いていた。 世の中は騒がしく、どうも落ち着けそうにない。 どうして私はこんな所にいるんだろう。 あちこちが眩しい蛍光色。目が痛いったらありゃしない。 「はぁ…」 私は小さく、ため息をついた。 どこか、遠くに行きたい。 どこでもいいんだ。ただ、静かに、心安らかに居られればそれで… 「おねーさん、ひとり?」 あぁ、ホストかなんかかな。本当に、誰も私をほっといてくれない。 「何言ってんの、横にもう1人いるでしょ」 私はそう言って何も無い方向をちらりと見やった。本当は私は何も見えていない。 大抵の輩はこうするとびびって逃げていく。 だけどこの男は違った。 「えー?…あー!本当だ。ちょうど死角で見えなかったんですよ〜!お友達かな?」 そう言って本当に私がいるとした場所を見るものだから、少し怖くなってしまった。 「あんた、見えるの?」 私が恐る恐る聞くと、彼は、 「?見える?…あぁ、そういうことかぁ。そうか、確かに…」 そう言って数秒考え込み、急にパッと私を見た。 「うーん、ちょっといいですか?」 彼はにっと笑い、私の手を引っ張って走り出した。 「はっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」 私は手を振り払おうとしたが、力が強すぎてどうすることも出来なかった。 「いーからいーから!静かなところに連れてってあげる」 “静かなところ” それは私がずっと望んでいたものだ。 私は少しだけ、振り払う手を緩めた。 何もせず、ただ求めるだけよりマシだ。 もう、流れに身を任せようと、私は彼と共に走り出した。 彼は私をどこに連れていくつもりだろう? しばらく走って、私たちはどんどん人が少ないところに向かっていた。 こんなところ、犯罪が起きてもおかしくない。 だけど私は、もう逃げる気も失せていた。 もう、どうする気にもならない。流れに身を任せると決めたんだ。 そう考え込んでいると、彼は急に足を止めた。 「ここだよ」 私ははっと我に返り、顔を上げると、そこには街灯に照らされ、光を放っている夜桜があった。 「綺麗…」 ふいに出た言葉に、私はびっくりした。 綺麗だなんて、いつぶりに思っただろう。ましてや無意識に声に出るなんて。 「そうでしょ?ここ綺麗だけど、人も少なくて、結構穴場なんですよ」 彼は自慢げに言った。 確かに、静かだし、いい所だ。 「って、そうじゃなくて、なんでこんなとこまで連れてきたの…」 私が言い終わるより先に、彼は叫んだ。 「あの人!!!本当に友達なの!?」 私はキョトンとした。 あの人?…あぁ、あの幽霊(設定)のことか。 「…さぁ」 「さぁって!!あれ絶対違うでしょ!なんてゆーか、あの人、すごい怖い目でおねーさんの事見てたし…おねーさんは迷惑そうにしてたし」 迷惑そう?それは多分あんたにだな。 と、思ったが口をすべらす訳にはいかない。 「多分、あんたが見てるの幽霊だよ」 私はそう言った。 「だって本当は、私見えてないし…勧誘とかだるいから、言っただけだし」 「勧誘じゃないよ!!!!あ、じゃなくて、見えてないの!?」 話している途中に叫ばれ、私は少しビクッとした。 「勧誘じゃないなら何よ…てか、あんたはほんとに見えてたんだ?」 「当たり前でしょ!!ただ…おねーさんが綺麗だったから…それに、幽霊さんだとしても、あれは関わっちゃダメな人だった」 “綺麗” そんな照れくさそうに言われると、私まで照れてしまう。 「ふーん…」 私がそう言うと、二人の間に沈黙が流れた。 「とにかく、あの人は追ってきてないから、安心して。あ、あと…で、出来ればでいいけど…その…連絡先!また追われてたら嫌だし…いつでも駆けつけるから、教えといて」 あまりに顔が赤いから、私はふっと笑ってしまった。 「追われるっつったって、私見えないし、多分呼ばないと思うよ?笑」 私がそう言うと、彼はまた顔を赤らめた。 しばらくそうして、急にポケットをごそごそし始めたかと思ったら、メモ帳を取りだして何かを書き出した。 「俺の番号!幽霊とかもうどうでもいいから、また会いたい」 あまりにストレートな言葉に、私まで赤くなってしまった。 「…どーも」 「…綺麗だね」 彼は夜桜を見ながら、そう言った。 「どっちがよ」 私はニヤリと笑って言った。 彼は相変わらず顔が赤い。 そんな私たちを、夜桜は優しく照らした。
君の
僕は、君の隣に座った。 君の臭いは、耐えられたものじゃないけれど、そのくらい屁でもない。君がいさえすれば。 なんて考えながら、僕はふっと笑った。 君が臭いを放っているのに、君がいればいいなんて、おかしな話だ。 今日は気分がいい。 こうすると決めたからだろうか? “君は、僕のものだ 本当の意味で、僕のものになるんだ” あのとき、僕は、そう言って君の首を絞めた。 と同時に、泣いた。 君は、嬉しそうに笑った。 そして、君は僕の首に手を置いた。 驚いた。君も僕を、自分のものにしたいと思っていただなんて。 君に首を絞められた僕もまた、嬉しそうに笑った。 きっと、僕達はこの世でいちばん、幸せで綺麗だ。 お互いの手で、お互いの一生を、終わらせられるのだから。 “僕が、死ぬことさえ出来れば。 今度こそ僕は、君のものだ” そう言って僕は、君の手をとった。
僕が?
君は、起きないのか? どうして? そんなことを、なんども思った。 そう考える度に、嘔吐も頭痛も止まらないけれど、考えないといけないような気がした。 君は、確かに、僕と一緒にいたんだ。 それで、なんだっけ、そう、僕が泣いたんだ。なんでないたんだっけ? わからない。だけど、とにかく− そこまで考えて、僕は吐血した。 手の感触が残っていた。 君の、白くて、細い首の… 頭痛も止まらない。 君の首を見た。 跡が残っていた。
君は、
何日が経っただろう。 君は、近づいても汗の匂いはしなくなった。 だけどその代わり、遠くからでもひどい臭いがし始めた。 ここで僕は、あることを考えた。 君は、君はもしかして、もしかしたら。 そう考えた途端、頭の痛みが酷くなった。割れるような痛み。同時に嘔吐もしてしまった。 君は、きっと起きる。 僕が起こしてみせる。
君と
僕が今日気づいたのは、君は何をしても起きないということだ。 なぜ起きないかと言うと、それはわからない。 わかっているような気がするのに、考えれば考えるほど、頭が痛くなる。 僕は君を揺さぶったりしてみたが、君のサラサラな髪がふわりと揺れるだけだった。 そこで僕は思ってしまった。 君と、今なら好きなだけ、触れ合えるんじゃないのか? やめろ、やめろ、と打ち消した。 だけど、だけど… 僕は、誘惑に負けた。 君に、キスをした。 君の唇はとても冷たくて、紫で、とても愛おしかった。 だけど冷たすぎる。寒いのだろうか。 僕は君を抱きしめた。冷たかった。 暖房をつけたけれど、夏場はやはり暑い。僕も汗をかいてきた。
君に
起きた。 訳が分からなかった。けれど、すぐそばに君がいてびっくりした。 大丈夫なんだろうか?君も、僕と眠っていたのか? でもどうしてここに? 君は、何をしても起きない。 呼びかけてみたけれど、起きない。 その時、僕の中の誰かが言った。 君に、触れたい そんなこと、出来るはずがない。 いや、だけど、今なら− そう思って、肩を軽く叩いてみた。 近づいた時に、少し、汗くさかった。 僕は急激に熱くなって、すぐに離れた。 結局、君は起きなかった。 このまま起きなかったら、どうしよう。 僕にも我慢の限界がある。 こんな無防備な君の姿を見て、何も思わないほど子供では無い。 いい加減起きて…
僕は
僕は、間違っていたのかもしれない。 いいや、君のせいだなんて、間違っていた。 ごめんね。 もう、こんなことは言わないから。 いつだったか、君は言ったよね。 辛さを人のせいにすることほど、辛いことは無いんだと。 確かにその通りだ。 僕が君のせいにした時、僕は君の顔を見て、吐き気がした。 申し訳なかったと思ってる。 ところで、さっきから、すごくくらくらする。 なんか、いしき、かぁ−