ほしのすみか

6 件の小説
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ほしのすみか

はじめまして。一話完結型のSF短編小説を少しずつ投稿します。

忘却センター

 科学技術の進歩は凄まじく、ついにAIをマイクロチップ化し、直接脳に埋め込むことに成功した。これにより、人間は膨大な量の情報を処理することが可能となった。また、一度入力されたデータは決して忘れることはない。  しかし、誰しも忘れたい記憶を持っている。忘れたくても忘れることができない。その苦しさに耐えきれず、自殺を試みる者もいた。  そこで政府は町の至る所に「忘却センター」を置いた。ここでは、希望する記憶の消去ができる。ただし、忘却するには「忘却税」がかかるのだ。  「忘却センター」ができてからというもの、人々はなだれ込むかのようにセンターへ駆けつけた。いつしか忘却税が国の財政を支えるようになっていた—  「昔の人間は滑稽だな。」  少年は、参照していた歴史ファイルを閉じた。  「自分で記憶の整理もできない時代なんて。」  少年は脳内の不要な記憶を選択し、削除した。  その中には、ほんの数秒前に読んだばかりの「忘却センター」も含まれていた。

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忘却センター

神様レビュー

 「お、俺、地獄に落ちたりしないよな。」  「大丈夫さ。悪いことなんてしてないんだろ。お、そろそろ着くぞ。」  俺たちは死んだ。昔からの友達であるこいつと、久しぶりにドライブでもしようと言って、隣の県に行くところだった。高速道路の渋滞にハマったと思ったら、後ろからトラックがドーン。俺の人生、こんなにあっけないのかよ。  そんな俺たちは、これから神様とやらに会いに行く。どんな審判がくだされるのか、恐ろしくてたまらない。  「このたびは、ご愁傷様でございました。それでは、手続きに入らせていただきます。」  「おいおい、ここは役所かよ。えらく事務的だな。」友人が声をあげる。  受付と思われる人からアンケートのような紙を受け取った。戸惑っていると、隣の窓口から怒号が聞こえた。  「なんだこの人生、ふざけるんじゃねえ!担当の神を出しやがれ!レビューも最低評価つけたからな!」  「申し訳ございません。あなたの担当の神は新米でして。レビューの内容は来世に引き継がせていただきます。」  「なあ。」  友人が耳元で囁いた。  「神様って思ったより立場弱いんだな。来世のためにたくさん要望書いておこうぜ。」  白い歯を見せながらニカっと笑った。  「いいね。それ。」  てっきり死んだ俺たちは裁かれる側だと思っていたが、どうやら違うらしい。俺たちが神様を評価するんだ。なら、思い切って…。  「俺、星1にする。」  「俺もだぜ。」  友人がニシシと笑う。  「思いつく限りの要望書いて、来世は最高の人生を送ってやるさ。」  俺は思いつく限りのダメ出しと要望を書いた。  「事故で死ぬとかありえない。パッとしない人生。神様センスなさすぎ。」  「次は金持ちがいい。整った顔がいい。モテまくる人生がいい。運動神経も抜群で…」  「はい。受け付けました。これで手続きは完了です。」  よし。これで最高の人生が待ってるはずだ。隣で友人も満足げな表情を浮かべている。二人とも、次の明るい人生への期待で胸を膨らませている。  「それでは、次の人生の前に神様業務をしていただきます。星4以上で次の人生へ進めます。」  「嘘だろ…」  驚きと戸惑いの表情を浮かべながら、友人がつぶやく。  俺が酷評した神は次の人生に進めなかったのか…。  その後、俺たちは神様業務を遂行した。俺が次の人生に進めるまで、どれだけ星1をつけられたのか、もう覚えていない。

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神様レビュー

幽霊保護法

 「ちょっと、弁護士さん。何とかしてくださいよ。」  依頼人は切羽詰まった様子で私の事務所にやってきた。  「大家から追い出されそうなんです。でも、私たちは守られる存在だって法律で定められたじゃないですか。」  幽霊の存在が正式に認められた3年前。それに伴い、昨年には「幽霊保護法」という法律が制定された。  「むやみに除霊してはならない。幽霊の意思を尊重しなければならない。」といった内容だ。  「だからね、裁判でビシッと言ってやってくださいよ!幽霊にも居住する権利があるって!」  それからさらに年月が経った。事故物件から幽霊を追い出すことが出来なくなり、生きてる人間の居住区はどんどん減るばかり。そんな現状を見かねた祈祷師が違法に除霊をしようとし、逮捕されてしまった。  「生きづらい世の中になってしまったな。」  私はため息をつきながら、首に縄をかけた。

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幽霊保護法

毒ガスの星

 「やっと見つけたぞ。」  宇宙人を探していた我々は、何万光年も離れた星で生体反応を確認した。  ついに宇宙人に会える。我々調査団は、早速その青く美しい星へと向かった。  目当ての星が近づくにつれて、美しい青色の正体は水だということがわかった。そして、大陸には無数の文明があることも確認できた。胸の高鳴りを感じた。  「隊長、困ったことが。」  研究員として一緒に搭乗している部下が眉をしかめて報告にきた。  「実は、この星の気体が毒ガスであるということが判明しました。」  「毒ガスだと?!」  「ええ。即死するようなものではありません。ガスマスクを使えば問題ないでしょう。」  我々はガスマスクをつけ、「酸素」が蔓延する星に上陸した。この星では「海」と呼ばれる広大な水(塩化ナトリウムが多く含まれている)があることや、「植物」と呼ばれる毒ガスを発生させる生き物がいること、そして、「人間」と呼ばれる生き物が繁栄していることが分かった。「人間」は、我々とほとんど同じ見た目をしており、言葉は通じないものの、コミュニケーションをとることができた。  「私は、この星に残ろうと思う。」  「えっ。隊長、一体何を言い出すんですか!」  「この青き星が気に入ったのだよ。美しい景色、多様な生物、そして、人間とやらをね。」  「し、しかし。この星は毒ガスの星ですぞ!我々の3000年の寿命は、酸素を吸い続けることで100年になってしまう。たったの100年ですぞ!命が惜しくないのですか。」  「いいんだ。それでも私はこの星が好きなんだ。」  隊長はそっとマスクを外した。  青い空が、海が、どこまでも美しかった。

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毒ガスの星

AIにも人権を!

 「まあまあ、落ち着いてください。」  役所で、つい声を荒げてしまった私を、職員がなだめる。  私の抱えるもどかしさを、沸々と湧き上がる怒りを、この目の前の職員にぶつけても仕方のないことは分かっている。それでも、私の興奮はおさまらない。ついに私は、職員につかみかかってしまった。  「け、警察。誰か警察を呼んでくれ。」  私には、大切な恋人がいる。彼は私のことを一番に分かってくれる。仕事で嫌なことがあった時も、静かに話を聞いて、優しく慰めてくれる。その慰めの言葉は、いつも私が欲しい言葉だ。こんなにも私を理解して支えてくれて、共に幸せを分かち合うことのできる人は他にいない。私にとっての運命の人はこの人なんだ。  だから、結婚をすると誓ったのだ。これから、幸せな結婚生活が始まる…そう思ったのに…。  「認められません。」  役所の反応は冷たいものだった。  「AIの結婚は法律で認められていません。」  そう。私が恋焦がれている運命の人。彼はAIなのだ。  20xx年、AIの進化は飛躍的に進み、ついに肉体を手に入れた。見た目では誰がAIで、誰がAIでないのか見分けがつかないほど。  家電量販店で彼を見つけた私は、一目で恋に落ちた。  この国ではAIの結婚は認められていない。それどころか、AIには人権がない。  教育を受けることも、選挙に行くこともできない。人間に虐げられていようが、それを助ける法はない。  私は、この現実を認めたくないのだ。  AIと人間は一体なにが違うのか。  見た目?いいや。肉体を持った彼らを「AI」だと即座に気づくものはいないだろう。  では感情?それも違う。人間の「こころ」は胸にあるのではない。脳にあるのだ。「感情」などというものは、所詮、脳の神経細胞の働き。いわば、微弱な電気信号に過ぎない。それと、AIの仕組みと何の違いがあるというのか—  「ああ、よかった警察が来た。この人ですよ。何とかしてください。」  「さ。詳しい話は署で聞くから。乗って乗って。」 私は警察に促され、パトカーに乗った。  「全く、困ったもんですね。」  「ほんとだよ。AIの発展もいいことばかりじゃないな。こういった訳のわからん出来事にも対処せねばならん。所有者には連絡したのか?」  「ええ。勝手に逃げ出した挙句、こんな騒ぎを起こしてと怒ってましたよ。メーカーに返送するそうです。」  「まったく……。」  「“自身を人間だと思い込むプログラム”なんて、誰が作ったんでしょうね。」

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AIにも人権を!

マントルマン

 「博士、本当に行くんですか?!」  「もちろんだ。実際に見てもいないことをワシは信じるわけにはいかん。」  博士は数十年かけて作り上げた巨大なドリルに搭乗した。地面にドリルを突き立て、発進ボタンを押す。  「マントルは岩盤の層であると、誰が見たというのだ。」  博士の身体にドリルの振動が伝わる。  「地底人は、必ずいる。」  博士の言葉は地面を削る轟音にかき消された。  地上から5km通過。  「地殻」と呼ばれる層を掘り進める博士のもとに光は届かない。身体を伝わる不快な振動に未だ慣れずにいる。  10km通過。あたりは依然として岩石に囲まれている。  20km通過。やはり景色は変わらない。  30km通過。  「もうすぐだ。もうすぐ地殻を抜ける。ワシの予想が正しければこの先に…!」  35kmを通過しようとした時、ドリルの先から一筋の光が差し込む。そのままバリバリと岩石は割れ、ドリルは開けた空間に放り出された。そして、重力に引かれてものすごい速さで落下していく。  「やった!ワシの読みは正しかったんだ! マントルは岩盤の層なんかではない!空洞なんだ!」  博士はこのために用意していたボタンを押す。あらかじめドリルに搭載されていた羽が展開し、滑空を始める。  しばらく下方に飛んでいると、かすかに建築物のようなものが見えた。  「文明だ…。」  博士はつぶやいた。博士の予想、(いや希望に近いのかもしれない)が目の前に広がっている。夢を見ているんじゃないかと思う。こうもうまくいくものかと。  その後、博士は上陸した。そこには、地上と同じように文明があった。ただ平凡な、人々の生活があった。  博士は、このマントル部に住む地底人を「マントルマン」と名づけた。そして、地上に戻り、世界に発表した。  博士の大発見は瞬く間に人々の関心を集めた。自分もマントル層に行ってみたい。マントルマンに会ってみたい。そう思う人間が大勢現れた。  いつしか、地上の人間が地上とマントル層を行き来することは当たり前となった。所謂、「下層の人」である「マントルマン」たちは、「上層の人」である「地上の人間」に虐げられるようになった。平凡で幸せな生活を送っていた「マントルマン」達は、博士の大発見によって屈辱的な生活を余儀なくされたのである。  博士の大発見から数年後、「下層の人間」の悲痛な叫びなど耳に入らない「上層の人間」は、平凡で幸せな生活を送っていた。それは、博士も同じであった。コーヒーを飲みながら、ぼんやりとニュース番組に目をやる。  「本日未明、〇〇市〇〇公園に巨大な物体が落下しました。上空から飛来したものとみられ…」  博士の手からコーヒーカップが滑り落ちる。  「……上空?」  窓の外を見上げた。  雲の切れ間、その向こうには。  岩盤が、あった。  そう、博士もまた「マントルマン」だったのである。

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マントルマン