ゆるる
48 件の小説ゆるる
本好きのゆるるです。 恋愛系 切ない系の物語を作りますゆるるの作品が貴方の心に灯ってくれると嬉しいです🌷✨ 🫧〜詩〜🫧 花の香りにふと撫でられ私はぽつりと風になる 優しさと美しさが光となって貴方に吹きますように。私の吹く文字という風が貴方の心の紙を奏でることを静かに願います 今日も私は物語を描いていく
2人ぼっちの私とココ
私は街をぶらりと歩くのが好きだった。秋の午後、もみじの道を跳ねながら歩いているといつも遊ぶ公園に着く。ブランコも滑り台も好きだけど私はよく砂場で遊ぶ。今日はシャベルと秋色のバケツを持ってお城を作る予定だ。公園に入ると私は目を丸くする。砂場に誰かが座っている。 「こんにちは」 挨拶するとその人は振り向いた。頭に草が生い茂っていて花がちらほら咲いている。目は、まるで吸い込まれそうな深い緑色をしていた。 「こんにちは…君も砂場で遊ぶの?」 「あ、あなた!頭に草が生えてるよ」 びっくりしてそういうとその人はクスクスと笑い始めた。 「そうだよね。びっくりするよね!僕は木から生まれたから頭に草が生えてるんだよ」 「じゃあ木がお母さんなの?変なの」 男の子は公園の隅にあるどんぐりの木を指差した。 「あれが僕のお母さん。大きいよね」 ん?私は不思議に思う。 「じゃあ、なんで貴方の頭にどんぐりがないの?」 「大きくなったらどんぐりできるんだ」 よくわからなかったけど私はその時この子は木の妖精さんなんじゃないかって思った。その子は私のシャベルを見て一緒に砂のお城を作ろうと言ってくれた。 「な、名前なんていうの?僕生まれたばっかで友達いなくて」 「私は、すずだよ」 「すずちゃんか!いいね可愛いよ」 「そ、そうかな」 褒められるのに慣れてなく私が目を逸らす。 「じゃあ貴方の名前は?」 「ぼ、僕は…ココだよ」 「あら、どんぐりくんかと思ったよ」 意外な名前に私が笑うと今度はココがそっぽを向いた。私たちはたくさんお話しながらお城を作る。夕日が見える頃、完成した。 「んー。何か足りないな?」 できたお城を見ながら私は考える。塔の数をもっと増やす?それともお城までの道を作る? 「これはどうかな?」 横を見るとココは自分の頭から生えてる花を摘んだ。そしてお城の天辺に刺す。 「可愛いー!これよ!」 「よかった。僕もなんか足りないと思ってたんだ」 「でも痛くないの?」 「人間も髪の毛が抜けるだろ?それと同じだよ」 ココは人間じゃないの?ということはやっぱり妖精さんなのかな。聞きたかったけど5時のチャイムが聞こえたので私は帰ることにした。ココはこの公園が家らしい。私が手を振るとココはニコリと笑ってくれた。 あれから少し経った日のこと。今日はブランコしたい気分だったのであの公園に向かう。ココは今日もいた。花壇の花たちを見つめてジョウロを持ってる。 「久しぶり!ココ」 「あ!すずちゃん!よかった。もう来ないかと思ったよ」 私たちは滑り台やブランコで遊んだ。 「あはは今日学校で何する??」 私の足が固まる。寒気がして急いで滑り台の後ろに隠れた。 「すずちゃん何してるの?」 「しっ!静かにしてて」 ランドセルを持った同級生たちが笑いながら公園を通り過ぎていく。あーあ。何も悩みとかないんだろうな。声が聞こえなくなると私はほっとする。 「すずちゃん。もしかして今日学校なんじゃない?どこ?一緒に行こうよ」 「私…行かない人だから」 「行かない人ってなぁに?」 その先が言えなくて私は口を噛み締めた。この気持ちはきっと妖精さんにはわからないから。 「いろいろあるのよ。私にも」 「ふーん。じゃあ紅葉でも拾おうよ!僕、お母さんから人間は紅葉を拾うのが好きだって聞いたことあるよ」 「うん」 その日の夕方、私は紅葉の押し花で作ったカードをココに渡した。器用だねって褒めてくれた。 冬になった。雪がふわふわと舞っている。寒いのは苦手だ。なので冬はいつも家で遊んでいる。ココは大丈夫かな?頭意外は普通の人間と見た目が同じ、服も着てたし。でも心配だった 家にあるカイロと毛糸の帽子持って私は外に出た。寒く、木の葉が落ち切った冷たい木が揺れる 「ココ!寒くない?頭とか」 雪が積もる中、ココは屋根のある遊具の中にいて座っていた。ココの頭は落ち葉だけでまるで茶髪みたいだった。 「すずちゃん寒いね」 「ココ!帽子あげるよ」 えー!いいのと言ってココは帽子をかぶる。私も横に座ってカイロであったまってるとココは不思議なことを言った。 「そろそろ。僕、家を見つけなきゃ」 「ん?公園が家なんじゃないの?」 「ここは、お母さんの敷地だから。ねぇ、すずちゃんの家に住んでもいいかな」 私はびっくりする。え?ココが私と一緒に暮らす?お母さんになんで言えば、、 ココは立ち上がって行こうと呟いた。ココの手に引かれて私の家に行く。 「ココ!私んち何もないわよ。お布団も2人分ないし」 「大丈夫」 私はお母さんがいないことを確認して家のドアを開ける。けど、ココは何故か庭の方に行った。 花壇の横の小さな地面に立ってニコリと笑う。 「すずちゃん。しばらく…うん50年くらいはここに住まわせてもらうよ」 「ご、50年?!」 ココは手を広げ笑いながら「僕がここに住めばすずちゃんは1人じゃない。日当たりもいいし」 「何、、言って」 その時、強い風が吹いた。私は思わず目を瞑る。木の葉が揺れる音、、ざわざわ。 目を開けるとココはいなかった。その代わり、大きな木が私の庭にそびえ立つ。冬なので葉っぱはついてない。 「あ…」 上の方の木の枝に毛糸の帽子がぶら下がっていた。お母さんは、その木が最初からあったように何も言わなかった。 「お母さん!あの木なんて言うの?」 「んー?どんぐりでしょ」 ココはどんぐりになった。木の妖精じゃなくて木の子供だったんだ。
ゆるる文庫結果発表
みなさん参加ありがとうございました!結果発表をしたいと思います。 順位はこんな感じとなりました 第1位 tentomushi様 第2位 ot様 第3位 つきみ様 第4位 蒼様 第5位 しんきユーザー様 次に感想を書いときます! ⚫️tentomushi様 愛を食べるばけもの 主人公が喜びの感情を感じるたび化け物の咀嚼音が聞こえることがすごく面白くて読んでて手が進みました!日常の中に不思議なことを混ぜる発想が私の作品と似ていてゆるる文庫にぴったりな感じです。また、書かれてないだけで主人公は昔すごい闇を抱えていたのかと想像してました。今は幸せな主人公だから化け物がきたのかな?今度、私も愛を食べるばけもの書いてみようと思いました。 ⚫️ot様 くじら otさんの作品は読んでいて何もない原っぱに1人で立っているような感覚でした。内容が難しくどういう話か分からなかったけど最初に思ったのは古文でした。そうですね、清少納言です。書き方が似てます。四季を飛ぶくじら。春、夏さまざまな世界の様子をくじらは見ている。まるで空を例えてるように。この文に付け加えるのであれば「くじら くじら おまえは何をみている。空か?海か?いや心だ。私にもある心がおまえの見る世界をもう映してたんだな」 ん?何を言ってるのでしょか。忘れてください🤣 古文風な詩、私にはない発想でしたよ☺️ ⚫️つきみ様 まさかの実在する展開ではなく亡き人を想い祈る感情が天国郵便局だという発想がとっても素敵でした!何を届けているのかな?やっぱり祈りとか亡き人の悲しみかな。最後の文章が手紙みたいな構成になっていてそれが良きポイントです。 ⚫️蒼様 あるあるすぎる展開ではなくもっとひねったアイディアも出せると思いました。内容はよかったです!最後のセリフで終わる書き方は私の好きな書き方なので好き!アドバイスとして「名前の知らない恋人」の物語例を書いておきます。 1,話したことのない人を好きになるお話 2,主人公は生きてる頃の記憶を失った幽霊である日出会った人が自分の恋人で主人公はそれを知らずその人を観察するお話 などどうでしょうか? ⚫️しんきユーザー様 天国郵便局 まず、文章が小説ではなく会社にあるような業務報告を言ってるような文章でした。長々と主人公の経歴や仕事内容を説明するのではなくそういう説明は簡潔にして展開を付け加えた方がいいです。例えば、主人公が働いてる天国郵便局は実は神社を表してるはどうでしょうか?だって神社って神様に願い事をします。主人公は神社の意思で、ある日変な願いをした人に出会うとか。そんな設定はどうかな?面白いと思いますよ。 以上になります。みなさん素敵な作品をいろいろありがとうございました!また私の作る企画に参加してくれることを待っています。新しく知り合った人フォローありがとうございました!よかったら私の普段描く作品も読んで欲しいです それではゆるる図書館の募集は終了いたします。
ゆるる文庫コンテスト
みなさんこんにちは!ゆるるです この度、小説企画を開催することにしました✨ この文章を読む前に前回投稿した「ゆるる文庫①」を読んでください。それではご説明します。 ⚫️文字数は300文字から最大2000字以内です。ちょうどいいページ数になるのでこの範囲でお願いします。300文字以下または2000字を超えるのはルール違反です。 ⚫️ゆるるは詩が大好きです。なので詩の参加もOKとします!ゆるる文庫なので。しかし、詩での参加を希望する場合は文字数多めにしてください。 ⚫️このコンテストは、8人ぐらいの参加人数があったら決勝戦を開催しようと思います。この企画を盛り上げるためたくさんの人が参加してくれると嬉しいです☺️参加人数増やすため宣伝するのは歓迎です。 ⚫️他の人が開催する企画には審査員がありますが私の企画にはありません。ゆるる文庫①を読んでくれたらわかりますが猫さんのいる、ゆるる図書館は私の作品が置いてある図書館です。なので私自身が審査をして順位を決めようと思います。 ⚫️開催期間は、10月19日までです。結果発表は20日に出します。提出しなかった場合は今後私の出す企画に参加できないのでご理解お願いします。 ⚫️注意⚠️投稿は必ず募集機能の方に投稿してください。まとめて見れるので助かります。また投稿のハッシュタグに「ゆるる文庫」と必ずつけてください。投稿したら改変しないでね(バクの場合は大丈夫) ⚫️お題(小説) 「天国郵便局」 「愛を食べるばけもの」 「名前の知らない恋人」 ⚫️お題(詩) 「くじら」 「初恋」 「シャボン玉」 小説で参加する場合はお題をタイトルにして投稿してください!詩の場合はタイトル自由です どちらもお題に沿ってる作品にしてください ⚫️さっき書いた通り審査については私がやります。なのでハート数とかコメント数は関係ありません。私が面白いと思ったかどうかで順位決まります。 {出場者} No1 ot様 No2 つきみ様 No3 藍様 No4 tentomushi様 最後まで読んでくれてありがとうございました☺️ 参加方法はこの投稿とゆるる文庫①にハートをつけてこの投稿に参加表明コメントすることです。ゆるる文庫①にコメしてくださった方申し訳ないけど再度こっちにもコメントしてください!私が参加表明コメにハートをつけたら出場決定となります それではたくさんの本がゆるる文庫になることを楽しみに待ってます。
ゆるる文庫(企画)
みなさんこんにちは!ゆるるです。この度小説企画をやらせてもらいます。この企画は物語形式で始まるのでまずは本編をお読みください。主人公はこれを読んでいる貴方です。詳しい説明は明日の昼にご説明します。それではどうぞ! 私の名前はNだ。ノベリーという出版社で働いている。毎日、たくさんの人が自身の小説をノベリーに持ち込み応募するのだ。私は、この仕事を気に入っている。学生時代、本を読むのが好きで放課後はいつも図書館に寄っていた。本のページの匂いやパラパラと風で紙が揺れる音。その音を聞くと不思議と落ち着く。大人になったら本の仕事に就きたかった。 今日は、休日なので1人で道を散歩していた。歩いていると秋の木の葉が私の視界に落ちる。ノベリーに所属する小説家さん達の原稿の中に秋の詩があったっけ。その時だ。本当に一瞬の出来事。 木々を揺らす大きな風が吹き目を開けると大きな図書館があった。瞳に映った時何かに取り憑かれたような気がした。私はゆっくりとその図書館に近づく。 「ゆるる図書館、、?」 扉の上につるが張った大きな看板にそう書かれている。大きな図書館の扉を前にして私の好奇心が揺れ動いた。ドアノブを掴みそっと扉を開ける。入ってみると本が数冊ほど置いてあった。図書館にしては少ないな。カラフルな本の表紙が私を呼んでいるみたいで私は本に手を伸ばす。 「なんじゃお前」 「え?」 振り向くと大きな猫がいた。 「ね、猫が喋ってる、、」 私は、思わず後退りした。 鋭く光った目をした猫は私のことをジロジロ見る。 「お前、本は好きか?」 「好きですよ、、。私、本の出版社で働いているんですから」 大きな目がニヤリと笑う。 「なら、この図書館にその本達を寄付してくれないか?なにせ、先生はまだほんの少ししか本を作ってないからな」 私は、意味がわからなくて「え」と口にする。 「あー。そう言われてもわからなそうだな。」 コホンと咳払いをして猫は言った。 「この図書館は、ゆるるという名の小説家の書いた本が置いてある書庫じゃ」 「なるほど!じゃあその先生連れてきてよ」 「先生は忙しいんじゃ!そう簡単に連れてこれないんだ!」 「そ、そうなんだ」 今の猫の話を聞いて納得する。つまり、本が足りないと図書館にならないから寄付して欲しいわけだ。 「寄付いいですよ。面白そうですし」 「ほんとか!言っとくけどなんでもいいわけではないぞ。先生が言うには特定のお題に沿って書いて欲しいそうだ」 なるほど。私はポケットのメモ帳に書き込む。ていうか上司はなんて言うのかな?猫に頼まれた仕事なんて、。 「では!期限までに原稿を持ってくるがいい!詳しい内容は先生直筆のお手紙をお前の家に送る。」 「わかりました!」 よし!頑張るぞー!まずは小説家さん達にお電話しなくちゃ。 以上です。楽しんで読めたでしょうか?今回の企画はゆるる図書館に寄付する本「ゆるる文庫」をみなさんに作ってもらいます。ノベリーをやめる人、新しく来た新規さんなどいろいろあってこの雰囲気を変えたいと思い企画しました☺️この企画を通してお互いの小説を読み合いできるお友達ができたらいいなと思います。みなさんなりのゆるる文庫を作りませんか?最初に書いた通り詳しい企画内容は明日の昼です。募集機能もそのタイミングで出します。この企画に参加したいというお方はハート❤️とコメントお願いします。参加人数をカウントします。 それでは、たくさんの参加をお待ちしています。 ゆるる図書館の関係者より。
水の花の告白
海の泡に混ぜて泳ぐ僕らはなんだろう 空気ではなく水を飲み干してゆっくりと海に溶けていく 美しい貴方の影を見た まるで神様の手だ ゆらゆら霞む神様の手 死ぬ時は貴方の光に入るのだろうか 僕の心にはなにもない。水とプランクトンだ 貴方は美しい何かを心に持っているのかな 足はあるけど地面には立てない 僕は 僕は 生まれ変わりたいよ みんなと海をぷかぷか 貴方の手はどこかに消えていく 言葉もなく 愛も分からず 僕はどうやって貴方と話せるのか 水を体に入れて泳ぐ僕らはなんだろう 夜の匂いと海の匂いが混ざり僕らは上り空気に触れた 月だった。。貴方じゃなかった それじゃあ、話すのはまた明日 その時だった。1人が溶けてく 僕は目を丸くした 嗚呼、魂が吸われてく 僕もだんだんと水が入ってきた。もう終わりなのかな 愛も言葉も貴方に聞きたかったのに ただ、ただ、海の声を聞くのだ 泡と海の声に引っ張られ僕の体は溶けていった 目を開けると東の上にある海から貴方の目が見えたの さようなら また会えるといいね 太陽さん 僕は、、くらげは貴方のことが好きでした
見知らぬ貴方と泡の中
俺は、誠実な人になりたかった。田舎ぐらしなので給料が多くもらえるのは誠実で呑み込みの早い奴で、俺にはとてもじゃないがなれない。誠実になれたらあのボロいアパートではなく一軒家に住めただろうなと俺はため息をつく。とにかく変わりたかったのだ。いや、むしろ全部忘れて 別人になりたかった 「川田!またミスしやがって。何回も言ってるじゃないか」 「すみません」 俺は深く頭を下げた。周りの視線が痛い中上司からもらった資料を片手に持ち自席へ進む。見ての通り俺は役に立たないやつ。環境も合わないし転職しようと思ったがこんな山に囲まれてる村なので会社数は少ない。手を伸ばしてパソコンで資料を直す。その時、後ろから肩を叩かれた。 「湊〜昼飯食おうぜ」 振り向くと幼馴染で一緒にこの会社に入った彰がいた。 「おー」 朝、コンビニで買ってきた弁当を広げながら会社の屋上にあるベンチに腰掛けた。 「湊、あんまり思い詰めるなよ。あのじいさん、いつもガミガミ言ってくるよな」 「でも、金稼がなきゃ。俺は我慢できるよ。それに俺の容量の悪さが原因なんだし」 2人の頬を風が通る。深くて青い空はまるでストレスがなにもない平和な心のようで俺は思わず目を背けた。 夕方になり彰と駅で別れた後、俺は自分の家から洗濯物をカゴに入れていつも行くコインランドリーに向かった。田んぼが続く道を俺はゆっくり歩いて行く。夜の田舎は、虫の音、蛙の音で覆われていた。でも、どこを見ても俺にとっては思い出の場所だ。数個の街頭の明かりを頼りにして俺はコインランドリーのドアを開ける。中を見ると店員のおじさん腕を組みながら横にあるテレビを見ていた。客は誰もいない。それはそうか、もう日にち過ぎてる時間だもんな。俺は、カゴを持ち上げていつも使ってる洗濯機の横へ置く。洗濯物を大きな穴に投げボタンを押した。 「カタカタ」と洗濯機は揺れる。俺は終わるまで椅子に座ろうとすると1つの洗濯機が目に入った。 店内の隅にある赤い洗濯機だ。俺は、赤い洗濯機の前に立ちじーっと眺めた。 「なんだろ?これ」 「兄ちゃん、その洗濯機興味あるかい?」 「え」 横を見ると店員のおじさんが横に立っていた 「いや、そういうわけではなくて…何でこの洗濯機だけ赤色なのかなと」 その時、おじさんはニヤリと口角を上げる。 「それはな、心の洗濯機だよ。入ったから心を洗ってくれるんだ」 俺は、頭が真っ白になった。 「いや、そんなことあるわけないですよ。店員さん夜中だからって俺を怖がらせようとしてるんじゃないですか?」 「嘘じゃないさ。これは生きるのが苦しいっていう人を助けてくれる。何もかも忘れさせてくれるんだ。洗濯機から出た時はもう別人になって楽しい人生を送れる!どうだ?興味あるか」 「もしも」という言葉が俺の頭に浮かんだ。俺の心にある黒い画用紙に白色の泡がついたクレヨンでなぞられたらどんな気分だろうか?泡水に心が沈み天国に行ってきた気分で目を開けたら、、 店員さんの目をチラリと見る。おじさんの目には俺が変われると映っているのだろうか? 信じたくなかった、いやこんな馬鹿なことを言ってる店員だ。断って立ち去ればいいのに俺の足は動かない。 「や…ります」 「そうか!決めたんだな」 俺は頷く。だってもうこんな生活終わらせたかった。おじさんは赤い洗濯機の扉を開けた。俺は身を縮めて中に入る。おじさんは、ニコリと笑いながら最後の俺に向かってこう呟いた。 「さようなら」 バタンと扉が閉まる音が聞こえ暗い洗濯機から「ウィーン」と音が聞こえた。俺は全てを諦め目を閉じる。 目を開けると一筋の光が俺の顔を照らす。 透明な扉から外を見ると店員のおじさんが椅子に座りながら寝ていた。はっと気づき俺は扉を開けて外に出る。 「なぁ、店員さん嘘だろ!変わってない」 そうだ。目を開けてもさっきのことは覚えてるし体にも変化はなかった。 「はは。兄ちゃん。そんないきなり変わるわけないだろ。徐々に変わって行くから」 「本当かよ…」 家に帰って数日経っても得に変化はなかった。ため息を吐き俺はベットに寝転がる。そうだ、買い物に行かないと。俺は、クローゼットを開けて何を着るか中を見る。 「あれ?こんな服持ってたっけ」 俺は、普段から黒い服を着てたはずなのに白い服か幾つかあった。あの時気付いてればよかったのに。 「湊、お前服の趣味変わったのか?」 しばらく経ったある日のことだった。休日遊びに来た彰にそう言われる。 「え、いや変わってないよ」 「そうか?なんかあんまり見ない格好だからさ。それに家の壁紙も変わってるし。もしかして彼女とかできた?」 「そんなわけないだろ。ただでさえ忙しいのに僕に彼女とか」 「え?湊?」 僕、、いや俺は思わず口を押さえる。 彰はキョトンとした顔で俺を見た。 「本当に彼女とかいないから俺」 「あはは!びっくりしたぁ。湊が僕とか言い出すからさ!もしかして実家では僕って言ってるのか?」 「え、、あ。実はそうなんだ」 夕方5時頃、彰は帰って行った。ドアがパタンと締まった時俺は力が抜けて座り込む。なんで、、 思えばそうだった。無意識に俺は自分の趣味ではないものを家に飾っていた。服だって壁紙だって 「なんで、、もしかして一人称だけじゃなくて全て変わってしまうのか?」 混乱と恐怖で心がえぐられそうだ。でも自分で望んだことだ。けど、俺はもう変わりたくないよ 目が覚めると散らかった部屋を見てため息をついた。あれ?僕、昨日床で寝てたはずだよな?自分の趣味ではない家具や小物になんだか胸騒ぎがしたので押し入れのダンボールに全部入れた。雑貨屋、スーパー、家具屋に行き僕は自分らしい素敵な部屋を作る。 「よし!終わった〜なんで僕の趣味じゃないものがあったんだ?」 何故だかわからない。昨日の記憶があまりなかった。でも、すごく心の中がスッキリしている。仕事を終えてソファに座っているとドアのチャイムが鳴った。 「湊ー!今日休日なんだしどっか行かね?車持ってきたからさ」 ん?誰だ?知らない人の声がした。不審者とか? 僕が無視してると男の声が聞こえなくなった。安心して部屋に戻るとスマホの通知音が聞こえる。スマホの電源を押すと彰という人から通知が届いていた。 「彰、、こんな人知らない。」 間違えて交換したとか?いや僕がそんなことするわけないし。意味がわからなったので僕はその人を友達欄から消した。そうだ。洗濯物洗わなきゃ。僕は、走っていつも使うコインランドリーに急いだ。店内に入るとクーラーが効いていて僕の汗を冷やす。 「おー!兄ちゃんじゃないか。どうだ調子は」 僕はニコリと笑い 「僕は元気ですよ」 店員さんにそういうと店員さんは真顔になり 「そうかよかったな」と苦笑いで呟いた 「そう言えばおじさん。黒い洗濯機なんで珍しいじゃないですか。ここの洗濯機全部白いのに。1つだけ黒色って」 「あぁ、、昨日から黒色になったんだ。前の魂が解放されたからな」 「前の魂?」 「そう。前は赤色の派手な靴を履いた優しそうな兄ちゃんがこの洗濯機を使った。君は、その兄ちゃんに似ているな。まぁそりゃそうか!ははは」 どうゆうことか僕にはわからなかった。けど黒いこの洗濯機を見る限り最近、黒色が好きな人がこの洗濯機を使ったのだろうか 「まぁ、兄ちゃんが幸せそうでよかったよ」 「え、、はい」 何の話をしてるんだ?とは思ったか考えてもわからない。自分の洗濯を終えてコインランドリーを出る。夕日が傾く田舎の景色と匂いを見ると不思議な懐かしさを覚えた。その時、強い風が吹いた。僕の帽子が風に乗って高く上がる。 「あ!いけね」 帽子を追いかけるとコインランドリーの入り口付近にある看板の上に乗った。帽子を取りその看板を見るとこう書かれていた。 ー洗い屋。なんでも綺麗に洗えますー あとがき こんにちは☺️ゆるるです。久しぶりのホラー作品です。なんかあんまり怖くなかったような、、。 今回は、心を洗う洗濯機をテーマにしました。使った人が増えるたび洗濯機の色は変わります。次にあの洗濯機を使う人がいたらきっと主人公に似た性格になるんでしょうね。自分の前に使った人の魂が自分の中に入るから。 貴方は変わりたいと思いますか? それとも今の自分が大好きですか? 不思議な道具を目にして自分の記憶を消してでも変わりたいですか? ダメですよね。なので髪型を変えたり使っている文房具を変えたりしてみてください。少しの変化で心が満たされるような人になってください。 全部消えるなんて怖すぎるからね。 ここまで読んでくれた人ありがとうございます よかったら感想教えてねー✨
ゆるるの呟き♯7
みなさんこんにちは✨📕私の小説を読んでくれる読者様にお2つ嬉しい報告をします 1つ目→この前、ある人が開催してた小説の大会に参加しました。戦争をテーマにした「腐った宝石とかくれんぼ」という作品で応募しました!とってもレベルの高い大会だった、、😓結果は、14位中6位でした。うーん?高いのかな?でも、前回出場した時は7位だったので1つ上がった!!「腐った宝石とかくれんぼ」よかったら読んでみてください☺️初手1行をインパクトにしたことが工夫です。 2つ目→次の投稿は、ホラー作品です。お化けは出ませんご安心を。やっぱ夏といえばホラーですよね。あらすじを少しご紹介します。 ある男がいた。男は自分が嫌でとにかく変わりたかった。そう別人のように、何もかも忘れて。そんな男がいつも利用してるコインランドリーがある。そのコインランドリーには1つだけ赤い洗濯機があった。噂によると、〇〇を綺麗にしてくれるらしい。 こんな感じのお話です。 それでは!
腐った宝石とかくれんぼ
太陽が沈む頃、それは起こった。黒くて臭くて虫が舞う物体が私の背中から落ちる。私は驚いてその場に座り込んだ。違う、違う、、頭の中に混乱が生まれる。私が背負っていたのは宝石だった。優しくてしっかり者で話していると暖かい。手を伸ばして触ると冷たくてドロドロしていた 「ひっ、、」 私は、思わずその黒い物体を蹴った。荒い息が私の耳を包む。気持ち悪さと絶望で心がえぐられた。その時、一つの考えが浮かぶ。彼女は、かくれんぼが好きだった。 「入れ替わったんだ。この黒い物体はゴミで私にバレないようにかくれんぼを始めた、、そうよ!きっと」 私は、立ち上がり彼女の名前を呼ぶ。火の玉が落ちても銃声が聞こえても私は、彼女を探した。意味なんてなかったのに。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「みなさんおはようございます。」 先生が、みんなを見渡しながら笑いかける。 「先程、戦争の前線で頑張っている兵隊さんからお知らせをもらいました。看護要員としてお国のために動員したいと」 みんながザワザワする。え、学校の勉強はどうなるの?不安という冷たい風が私の心を仰ぐ。その時、肩を後ろからトントン触られた。振り向くと後ろの席のみっちゃんがニコニコしている。 「そんなに緊張してどうするの!みんな初めてなんだから大丈夫よ」 「そ、そうかな」 次の日、荷物を持って病院に行った。私の知っている建物の病院ではなく戦地の兵隊さんが運ばれる地下病院だ。強い血の匂いがする 「みっちゃんこんなとこいたらそのうち私達が倒れるんじゃない?」 先生が説明している中、鼻をつまみ小声でみっちゃんに助けを求める。 「た、確かに。換気とかしないのかしらこの病院。でもね、逆らったら兵隊さんに非国民だ!って言われるから我慢よ」 私達の仕事は、兵隊さんの包帯巻きや水を汲んでくることだった。朝から学校が終わる時間の夕方まで働く。何より辛かったのは死んだ兵隊さんを埋める作業だ。誰もが首を横に振る中、立ち上がるのはみっちゃんだった。手を高く上げてみんなの注目を集める。 「さすが!助かるよ」 みんなが安心した顔をして作業に帰っていく。はっとして私はみっちゃんの元へ走った。 「私も手伝うよ」 「え?本当に」 私は、頷き2人でスコップを持って遺体を埋める。遺体を埋めるのはいつのまにか私達だけの仕事になっていった。誰かがやればいいのに。でも、あの時の私もみっちゃんの優しさに甘えていた。 「でね、みっちゃんすごいの。嫌な仕事も笑顔でこなしてて」 「へえ。それはすごいわね」 私は、家に帰るといつもみっちゃんの活躍をお母さんに話す。戦争が始まってから家の雰囲気はガラリと変わった。お兄ちゃんは兵隊へ行き、お父さんは戦闘機の工場で夜まで働いている。話すことはいつも暗かったが私とみっちゃんの話だけは明るくてお母さんはニコニコ笑いながら「みちこちゃんは優しいのね」と母は、優しい目を私に向ける。 ガラガラ 「あら、お父さん帰ってきたわ」 私も、おかえりと言うとお父さんはまるで一回死んできたような目をしていた。思わず目を逸らす。 「今日、同僚の若い友達が戦地に行くそうだ」 「それって、、お父さんと仲の良かった人?」 お父さんは何も言わず鼻をすすりながら隣の部屋に入りふすまを閉めた。 「そうよね。お父さんだって、きっと帰ってくるって信じることしか心を慰められないのよね」 振り向くとお母さんは、お兄ちゃんの写真を見て俯いていた。お兄ちゃんと重ねていた。 「お、お母さん大丈夫だよ!日本きっと勝つよ。お兄ちゃんも訓練所で友達できて訓練頑張っているかもよ」 あぁ、まただ。また、落ち込むお母さんの背中を撫でながら曖昧な言葉を投げる。この生活が早く終わって欲しかった。だって、こんなの私の家族じゃなかったから。お父さんは庭でいつもお兄ちゃんと遊んでてお母さんは笑いながらお隣さんとの面白い話をする。それが普通だ。普通を壊した戦争なんて大嫌い。その後、少しだけのご飯を食べて布団に入った −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−バケツを持って水を取りにいくのは私の仕事だった。地上に出て近くの井戸まで行く。空を見上げると大きな雲が流れていた。でも、この作業が一番楽。だって、外の空気を吸えるから。あんな血と土の匂いがするとこで死んだような顔をした兵隊さんのお世話をするとこっちまで辛くなってくる。ふぅーと深呼吸して病院内に戻るとみっちゃんが駆け寄ってきた。 「えり!お疲れ様。疲れたでしょ。はい水筒よ」 「みっちゃんありがと」 少し休んだら、兵隊さんのお世話だ。まず、バケツの水でタオルを濡らし兵隊さんの体を拭く。動ける人は自分でやっていたが動けない人は、私達が拭かなければならない。私が兵隊さんの背中を拭いていると兵隊さんはチラリと私を見た。 「汚いよね、、ごめん」 「い、いえ。頑張った結果ですよ。兵隊さん」 私がそう言うと「そうかい」と表情が柔らかくなった。戦争に必要なのは、心の助け合いだ。相手が戦争で挫けそうな時は、心が強い人が引っ張ってあげないと。多分、ここで働く私達みんな思っているだろう。匂いと雰囲気は最悪でもここはいつも優しい言葉が漂っていた。 「えりー。包帯が上手く巻けないの。教えてー」 横を見るとクラスの坂田さんがあわあわしている。兵隊さんの足に巻いてある包帯がゆるゆるだった。私は立ち上がり「うん」と返事をして手伝った。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−帰り道はいつもみっちゃんと一緒。 「戦争っていつ終わるんだろうね。早く学校の勉強に戻りたいよ。この仕事疲れるし」 みっちゃんの言葉に私は首を縦に振りながら 「疲れるけど、みっちゃんはすごいよ。嫌な仕事も丁寧にこなしてさ。私は、無理だよ」 「あら。えり、この前手伝ってくれたじゃない」 そ、それは…みっちゃんがいたし。 「二人なら大丈夫なの!」 みっちゃんは、私が考えていることがわかったようにクスッと笑った。夕日がみっちゃんの頬を照らし大きな影を作る。私は、思わず指を差した。 「見て!みっちゃんの身長高くなってる」 「もう、、えり!私が身長低いのからかってるでしょ」 みっちゃんは、顔を赤くして私をポコポコ叩いた。ごめんと言いながら私が手を合わせるとみっちゃんはため息をつく。 「ねぇ、みっちゃんかくれんぼしない?好きでしょ」 かくれんぼと聞いてみっちゃんは嬉しそうな顔をした。よかった。機嫌治ったみたい。 「じゃあ、私が鬼やるよ」 「わかったわ。数かぞえて」 私は、顔を手で隠しながら一、ニとかぞえる。 その時だった。ドーンと大きな音がしたのは。 え…何??地面がぐらぐら揺れて私は思わず座り込んだ。 「えり!大丈夫?」 草むらがみっちゃんが慌てて出てきた。 「みっちゃん地震かな?」 「わからない」 転ばないように二人で抱き合いながら座っていると カンカンカンカン、と音が聞こえた。 「空襲だー!逃げろー!」 何が起こっているかわからなかった。みっちゃんの顔を見ると青ざめている。私の足は震えてて動かない。早く、、早くお母さんを迎えに行かなきゃ 「えり!走って」 みっちゃんは立ち上がり自分と私の頭にタオル巻いて走り出した。みっちゃんと私は全力で走ってお互いの家に向かう。町に着くと遠くの方は黒い煙が上がっていた。家の玄関が見えるとお母さんは荷物を持って私を待っていた。 「えり!遅い。早く防空壕へ!」 黒い煙の中をお母さんと口を押さえながら走り防空壕に駆け込んだ。中は、泣いている子供と暗い顔をした大人達、同じクラスの友達もいた。 「ここに座りなさい」 お母さんに言われ混雑した人達の中に入り座り込んだ。先生に教わった通り耳を押さえて口を開ける。先生が言うには放射線?という光を体から逃すとかなんとか。大きな爆発音が聞こえる中、心配だったのはみっちゃんと病院の兵隊さん。私は耳を強く押さえながら祈り続けた。 爆発音が消えてシーンとなり私は目を開けた。 周りはザワザワしていて「もう大丈夫か」と聞こえてくる。前の人がドアを開けて外を確認していた。 「空に敵軍はいなかったわ。一旦出てみましょ」 みんな頷いてゾロゾロ外に出ていく。 「お母さん、外に出るって。もう終わったよ」 お母さんの顔を見るとびっしょり汗をかいていてお兄ちゃんの写真を握りしめていた。 「そ、そう。」 順番が来て、お母さんの手を引きながら外に出ると私は、あまりの酷い景色に口がガタガタ震えた。お母さんは呆然として泣いている。あたりは、灰色の砂まみれになっていた。とにかく、何もなかったのだ。建物も、電波塔も瓦礫になって散らばっている。その後は、誰かに手を引かれ平地になっているとこでみんなで固まって過ごした。正気になってきたとこで、私はハッとした。 「みっちゃん、、は?」 薄暗い視界の中浮かんだのはみっちゃんだった。 横を見るとお母さんは毛布に包まれ寝ていた。私の体は考えなくても動き、のろのろとふらつきながらみっちゃんの家に向かう。生きていて欲しかった、、大丈夫神様にお願いしたし。瓦礫だらけの道を進み家の前まで着くとみっちゃんの家は真っ黒けで形すらなかった。 「そうだ、、防空壕。確か近くにあったよね、、」 向かうと、みっちゃん家の近くの防空壕に人が集まっていた。よかった!みんな生きてたみたい。 防空壕の前まで着くと異様な景色が広がっていて思わず座り込んだ。 「な、何これ…」 血まみれた何かがたくさん転がっている。 「落ちたんだって、、防空壕の下に」 「え、まさか全員」 はぁはぁはぁ…私は人混みを押し除けて赤い塊を見つめた。すると、左の隅にみっちゃんのカバンをぶら下げた"何か"がある。 「みっちゃん!大丈夫。今出してあげるから」 私は、腕を引っ張って黒い塊の中からみっちゃんを出した。赤い液体を顔につけたみっちゃんだった。私は、その姿を見てゾッとする。いやこの世のどん底に突き落とされた。しかし、私の体は動いた。みっちゃんをおんぶして走り出したのだ。 「病院、、!病院」 もう助からないよと後ろから聞こえても私は病院を目指す。しばらく走って病院が見えた時、 「あ!」 目の前にあった瓦礫で転んでしまった。うぅと足を押さえる。そうだ!みっちゃん落としちゃった 「みっちゃんごめんね。今、病院つい、、た」 何かが腐るような匂いと虫の音が私の体を蝕んだ。振り返ると、それはみっちゃんではない黒い物体だった。虫が舞っているゴミだった。私は、気持ち悪くなり思わずそれを蹴って遠くに飛ばした。そうだ、、みっちゃん私に気づかれないようにかくれんぼ始めたんだ。 「もーいいかーい。見つけにいくね…」 私は、足が折れそうなぐらい歩いてみっちゃんを探した。照りつける太陽と灰色の景色の中。でも、どこにもいなかった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−今日もあの日と同じように太陽が照りつける中、私はみっちゃんのお墓参りに行っていた。あれから三十年近く経ち、私は大人になった。あの日、私は歩き疲れて倒れていたとこを母が見つけて助けてくれたからだ。母に抱きしめられて嬉しいはずなのに何も感じなかった。あの黒い物体がみっちゃんだと理解したのは、お母さんから火葬してもらったみっちゃんの骨を見せられた時。 「みっちゃん、隠れる場所が天国だなんてそりゃ見つけられないよ。あの時、手でも握ればよかったな。蹴ったりしてごめんね」 私は、そう呟きお線香をみっちゃんの前に立てる。何かに取り憑かれたように毎週、みっちゃんのところへ行って気づいたら何十年も経っていた。お兄ちゃんも親友も無くした戦争は大嫌いだ。でも、私の心にはみっちゃんがいた。眩しくて優しい宝石のようなあの人が心にいる。 「私、みっちゃんの分まで頑張って生きるね。いつか、天国でまたかくれんぼしようね。」 涙を拭きながらそっとお墓に手を当てる。私とみっちゃんは心で手を繋いでいるからね。帰り道、みっちゃんのような優しい風が私の髪を撫でた。
水たまりのお客さん
僕はいつものようにハンドルを手に夜の街を走っていた。2年前タクシー会社に就職したからだ。年寄りのおじさんが多い会社に入ったため若い僕の存在を嬉しそうにしていた。なので、僕は夜のタクシー担当になる。そりゃあおじいさんが夜道走るのはちょっと危ないよなと僕は静かに納得した。 ふと、そんなことを思い出しながら運転してたら 雨が降ってきた。 「雨でお客さん増えるかな」 きっと傘を忘れた人が乗り込んでくるだろうと僕は、近くの駅を目指す。その時、暗闇の中に人影が見えた。僕は、思わずスピードを落とす。 その人は、僕のタクシーを見て、ゆっくり手を上げた。 「え?」 僕は、その人の前でタクシーを止めた。 「すみません。タクシー乗ってもいいですか?」 「ど、どうぞ」 灰色のレインコートを着ている人だった。 「どこまで行きますか?」 「…」 何故か、その人は答えない。 「じゃあ、見覚えのある景色見えたら教えてください。そこで止まります。」 僕らの間には雨の音しかなかった。ポツポツと雨がガラスをなぞる。しかし、雨の音とは全然違う音が聞こえてきた。 「ぴちゃ、、ぴちゃ」 大粒の水滴がゆっくり床に落ちる音に聞こえる。 「なんか、水が落ちる音がしますね。窓から水が垂れてませんか?」 僕は道の隅にタクシーを止めてお客さんの方を振り返る。 「い、いえ。多分、私の音だと思います」 レインコートのフードをとった彼女の姿を見た時、思わず息が止まりそうだった。透明な顔、体に流れる泡、ぴちゃぴちゃと落ちる彼女の水。彼女の体は水でできていたのだ。 「あ、あの。黙っててごめんなさい。私、雨人間なんです。」 「あ、雨人間?」 夏のおばけ?それとも僕の夢だろうか。 「見た通り、雨の水でできた人間です。晴れたら蒸発して消えてしまうけど」 「そんな人がどうしてタクシーに?」 「人間とお話ししたくて、、昔から」 彼女は、自身のことについて語る。 「私、雨の日しか姿を作れないので人と話す機会があまりなく。でも、梅雨なら雨がたくさん降るし、さっきまで道を彷徨っていたんです。お化けだと勘違いされるか怖かったので道に落ちてたレインコートを着てました。」 彼女と話すうち僕の彼女に対する恐怖心は薄れていった。彼女は、雨人間だけど、とても気さくで優しい人だった。駅に着くまでの彼女との時間は淡い風のよう。 「名前なんて言うんですか?よかったらまた喋りに来てください」 彼女は、残念そうな顔をする。 「名前ないんです。」 「そうですか。じゃあ、僕がつけてもいいですか?」 「え?」 バックミラー越しに彼女と目が合う。 「人間に名前つけてもらうなんて、、!」 「雫さんとか。水で、できてますし」 「可愛い名前、、大切にします。」 彼女とのやりとりはそれで終わりだった。駅が見えてきて僕はタクシーを止める。 「ありがとうございました。ここで止めるんですよね。私、降ります。」 彼女は、ドアを開けて外に出る。 降りたか確認した時、座席の上にレインコートがあった。 「雫さん忘れ物です!」 僕は、ドアを開けて彼女に声をかけようとすると彼女の姿は消えていた。 いつのまにか空は晴れている。 「雫さん?」 ふと、下を見ると大きな水たまりが目に映った。 晴れた空を写す透明な水たまり。彼女だろうか?確信ではないが彼女だと感じた。水たまりには紫陽花の花びらが舞っている。 僕は、そっと水たまりの中から花びらを拾った。 「代金頂きますね。ご利用ありがとうございました」 あれから1年経った後、僕は彼女の存在を思い出しあの場所へと夜道を走る。 「さすがにいないよな」 タクシーのライトに照らされ1人の人影が浮かんだ。彼女は、ニコリと笑って片手を上げる。夜と雨が繋ぐ不思議なお客さんは、僕だけの秘密。 あとがき 今回は、企画でもらったカタツムリさんのリクエストです✨☺️ 梅雨をテーマに書いてみました。 不思議なお客さんっていいですよねー!
ガラスの踊り子
光が照る中、今日も私はスカートを揺らし舞う カラコロ カラコロ 私の足先から音が鳴る 鈴のような舞で風を吹かせる 君は今日も見てくれるかな 光が眩しくなる頃、君は私を見た 君は私の足を掴み何かを結ぶ 君は、ニコニコ 私は、カラコロカラコロ お願い事だった。なら守ってあげよう 私の舞は涼しいかな? 君はまた笑ってくれるかな? カラコロ…カラコロ 私の舞は今日も冷たい風を吹かせるよ 小さな私のお友達へ 今日は、フォロワーのつきみさんからもらったリクエストを題材に書いてみました✨🎐 久しぶりのゆるるの世界です 楽しんで読んでくれたら嬉しいです