KKZOU

52 件の小説
Profile picture

KKZOU

KKZOU というものです。 よろしくお願いします。 連載を完結させない才能を持ってます。

幻影 後日談

作 KKZOU 「なぁ知ってるか?」 「なんだよ」 「透清と舞と真実。アーティストになったらしいぜ」 「あー聞いた聞いた。まぁなると思ったわ。絵も上手かったし」 「で、奏佑はキャバクラで借金1億円して逃亡中」 「それは初耳だ。とんでもない状況だな」 「この前会って第一声が『金貸してくれないか』だったぜ」 「そこまで堕ちるとはな」 「で、もう一つ」 「なんだ?」 俺のことなんだが、、、」 「不幸話か?」 「まぁそうだな」 「どれどれ」 「最近、頭痛がすごいんだよ。それに視界の端がぼやけてるし」 「ぼやける?」 「ぼやけるっていうか何かが動いているみたいな感じかな」 「病院には行ったのかよ?」 「言ったけど特に異常はないって」 「大丈夫なのかよ、、、」 「アレ、、、?」 「どうした?」 「なんか用務員みたいな服装の人がこっちに向かって、、、」

1
0
幻影 後日談

幻影 終

作 KKZOU 鉛筆が動く。研ぎ澄まされた芯が物凄いスピードで削られていく。ぐにゃぐにゃのぶれ線がまとまり、形を成してゆく。首を、胴体を、模様を。脳でイメージした画が手という通路を通り、アウトプットされていく。残像が視界に残る。体力は削れていくが、止まるどころかスピードは増す。そして描きあげられた画を見て、息をつく。 画には麒麟が草原を走っている何気ない風景が描かれている。ただ、見ているだけで今にも紙の外へと飛び出してきそうな、そんな迫力が伝わる。スマホを手に取り、同じアーティストの真実にラインで写真を送る。すぐに既読がつき、返信が来る。 「え〜すごっ!」 スタンプ 「私もいい感じだと思う。これあげようかな?」 「いいんじゃない?ところでさ、こんなのを見つけたんだ」 送られてきたのは一枚の写真。 「なにこれ?」 「この絵、上手いよね。アニメとも、リアルとも取れる中間のタッチがいい味出してるし、何より、この何気ない風景ってのが舞が描く絵のテーマと似てるよね」 「そうだね。まぁ私の方が上手いけど」 スタンプ(笑) スタンプ(笑) スタンプ(寝) 「昼なのに寝るの?」 実際に声が出てしまった。 もう一度その絵を見る。そこで、あることに気がついた。 この絵の作者のところだ。そして作者名を見た瞬間、自然と笑みが溢れてしまう。 「なーんだ。君もアーティストになったんだ」 作者 透清嬉 筆を握る。さて、今日は何を書こうか。公園を見回す。最近付き合ったんだろうか、仲のいいカップル。桜を眺めている老夫婦。そして。木の上から降りてきた黒猫を追いかける子供二人。 栩琶、君に届くように。僕の絵が。

0
0
幻影 終

幻影 9

作 KKZOU 今から行われるものとは真逆の、天色のペンキで塗りつぶされた空は雲が申し訳程度にしかなく、自身の気持ちの対比にもなっていた。はたまたその空とは真逆の黒いオーラを放つ家の前に立つ。家の大きさはかなりあり何畳間がどれぐらいかは知らないが学校の教室5、6個分の大きさはある。そして奥には林に包まれた本堂が覗いている。白い石と黒い石で小さな地面アートが作られている。あ、これは足利義政が建てた銀閣寺のやつに使われたアレだな、名前忘れたけど。 チャイムを押そうと手を出す。だが、その手は震えていた。、、、。女子の家に初めてきた! 「いやいや、思春期発動しなくていいから、今!」 「ほんとそうだよ。玄関の前で数分間立たれても困るよ」 「出たあああ!!!」 「失礼なっ!人を霊みたい!」 「音もなく来るなよ」 「さっさと入りなよ。はい、どうぞ」 スライド式のドアが音を立てて開く。和咲はどうやって音もなく来たんだ? 「お邪魔しまーす」 ゆっくりと中に入り靴を脱ぐ。綺麗に並べた後、和咲に案内されリビングへと行く。お洒落な絨毯に朱く磨かれたように光を反射している机がある。 普通のリビング。ありふれた空間。ただ一つの要素を除いて。 「なにあれ?」 近づいてはいけないと言うかのような雰囲気が床からこちらに向かっているような錯覚に襲われる。恐らくクローゼットだろう木製の箱が縄で縛られ札が貼ってある。札にはよく分からない文字が書いてあり色はかすみ、油汚れのような色になっている。 「あーあれはね、引きこもりの霊がクローゼットに入り込んじゃって、、、面倒からそのままにしてあるの」 「とてもやばい」 「やばい10段階中3段階だ」 突如、脳が揺れる。体を叩き潰されたような痛みが脳に伝わり細胞が痺れる。 「、、、っ!?」 「透清!?」 「頭痛が、、、」 「早くお父さんに診てもらうよ!だから頑張って!」 壁に手をつき、なんとか歩く。本堂まで案内される。家から本堂へと繋がる階段を登り、扉を開ける。畳のその部屋には既に和咲の父親がいた。神主の服装をしており無精髭を生やしており身長は190はいくだろうか、それぐらい高い。和咲の父親以外にも5人の人がいる。自身の視点から右側には仏壇があり、線香の匂いで満ちている。重々しい雰囲気を出す薄暗い部屋に案内される。 「初めまして。和咲の父和咲兆慈だ。今年で26歳だ」 「今年で41だよ」 「数字の違いは些細なことだ。誰もが身長を聞かれたら、数センチ盛る。そうだろう、透清君?」 「えっと、、、盛りません」 「素直な子には、お祓いする気が湧くね。いつも娘が世話になってるそうじゃないか。ありがとうこのまま世話してやってくれ」 「あ、はい。ところで、、、1つ聞きたいんですが」 「ん?」 「お祓いしらた、、、もう2度と彼女とは会えませんか?」 「会えないね。会えたとしたら、それは死んだ時だね」 「そうですか、、、」 ー彼女をこの世界に残し続ける。それが僕の人生だー 「お願いします」 「それじゃあやろうか」 兆慈の近くにいた人が何かを渡す。 「これは祓具の一つ。『太刀鋏』だ」 「ただの、、、鋏にしか、、、見えませんけど。強いて言うなら、錆びてる」 「鋏ってのは上部の刃と下部の刃を紙に押し当てて持ち手の握る力で切る道具なんだ。紙を断つ。だが、この鋏はこっちとあっちを断つ鋏だ」 どこから出したのか、兆慈は紙をその鋏で断つ。2つの刃が重なり合い、紙は一直線に切れる。 「元々、僕達は関わっちゃいけないんだ。透清君、霊ってなんだと思う?」 「霊って、、、。見える人には見える存在?的なのだと」 「間違っちゃないね。というか僕の回答も正解だなんて思ってないけど。霊ってのはね、、、。人間が勝手に作り上げた恐怖の名前だよ」 和咲が「また始まった」と言わんばかりの顔をする。 「勝手に物が落ちたり、人が狂ったり、そういう自然現象、科学現象では理解できない不可解なことは人間は怖いんだよ。例えばどこで作られたどこの産地かも分からない肉は食うのに躊躇うだろう。それの延長線、拡大されていった事象が膨れ上がり、暴発するのを阻止するために『霊』のせいにしたんだ。理解できないものが怖い!でも、具体的に何が怖いのかはわからない。そうだ!その事象の正体を作り上げよう!これが霊ができるまでの歴史だ」 「、、、じゃあ彼女は?」 「霊というものには当てはまらない何かだ。君の見えているのがそうだ。関わってはいけないものがみえてしまっているんだ。普通は見えないさ。だから彼らも何もしない。しかし、『見えている』と彼らに認識されてしまったが最後、あっちのほうに持っていかれる」 「何がですか?」 「魂」 すごいなと同時にこの人は変人だとも思った。ただ、それでも霊媒師なんだ。 「話はこれぐらいにして、そろそろやるよ」 「もう、大丈夫です。お願いします」 せめてと思い、彼女と向き合う。 「お別れの挨拶でもしたら?」 「、、、はい」 「栩琶、僕はもう充分君のことは残した。もう、いいよね?」 冷たい風がふわりと切られた紙を弄んだ。 「それじゃあ、断つね」 そう言って鋏を握る。刃と刃が重なり合うその前に、彼女が言った。 「            」 「!?ちょっと待って!」 ージャキンッ その音は、虚しく、本堂に響いた。

0
0
幻影 9

幻影 8

作 KKZOU 「豚って体の構造上、上を見れないらしいぞ」 「そうなのか?」 「『飛べない豚はただの豚』っていうが上を見るのが最初の課題だな」 「まぁ、上を向いたところで、空を飛んだところで豚は豚だけどな」 毎度話題が尽きないのかと心配になる会話を聞いていると、視界の端に何かが映る。 「黒いモヤ」 そんな見た目の何かがいた。だが、気にするでもなくそのままにしておいた。この時点で、和咲に相談すべきだった。その日から見え始めた。見えてしまった。霊が。奴らは人の形をしていない。目もなければ耳も鼻も口もない。不気味で歪な形、コピーに失敗した時の線の歪みのような形をしている。奴らは視界の端、そして建物の上、教室や廊下。様々な場所に現れた。特に何があるわけでもないので無視し続けた。ある日。脳を砕くほどの頭痛が突如、襲ってきた。鼓動するように、まるで血管にでもなったかのような痛みに悶え苦しんだ。それは数十分続き、やがて治った。だが、頭痛は不定期に起こった。それだけではない。目眩や吐き気。 事態は深刻化していく。周りの景色が歪む。ただ、彼女、、、栩琶だけははっきりと見えた。 「やばい」 深刻そうに和咲は深刻なことを話し始める。そんな予感がした。 「すごくやばい。とてもやばい。めっちゃやばい」 「和咲?」 「ものすごくやばい。とてつもなくやばい。ありえないぐらいやば「やばいのバージョンアップはいいから。具体的にいうと僕はどのぐらい症状が進んでるの?結構進んでる気がするけど」 「生きててすごいねってレベルまであと10歩」 「10歩もあるのか」 「大股かもしれない」 「10歩かー、、、やばくない」 「知った者は言う。『やばい』と」 「どうすればいい」 「これはもう、、、」 「これはもう?」 「お父さんを召喚するしかない」

0
0
幻影 8

幻影 7

作 KKZOU 「人殺しなんだ、、、僕は」 「私には、、、お兄ちゃんがいたんだ」 突然の返答に、困惑する。ただ大人しく聞くことにした。 「5年前ぐらいにね、事故に遭ったの。自動車に轢かれて死んじゃった。轢かれそうな私を助けて、ね」 この時、自身はどこか仲間を見つけた感覚を覚えた。きっと思ってはいけないだろうことだが、心の底では救われていた。 「お兄ちゃん、、、アーティストになるのが夢だったんだ。だから、、、私が代わりになることにした。絵を描くのが下手だったけど、それでも描き続けた。それが私が美大を目指す理由。透清はどうして美大を目指すの?」 「栩琶が死んでから、栩琶の親は引っ越したんだ。まぁ自分の娘が死んだ土地に居たくはないだろうね。それで学校でも栩琶の席はなくなっていて、、、この世界から栩琶の存在が消えちゃうんじゃないかって思って。それで少しでも残そうって思ったんだ。栩琶の存在を。それで最初に思いついたのが絵を描くことだったんだ。多分、その頃から栩琶の霊が見えるようになってきたと思う。最初はぐにゃぐにゃの線だったのがだんだんと輪郭になってて栩琶を描けるようになっていった。このまま栩琶の存在を広めたいと思って。どうしようと思ったらアーティストがあると思ったんだ。だから僕は美大を目指す」 「なんか不幸自慢みたいになったね」 「そうだね、、、」 「体に異変とかあったら教えてね」 そう言って和咲は電話を切った。トゥートゥーという音が反復する。 心が軽い。 そう思った。今までこの話をしたことのある人はいない。ずっと一人で抱え込んでいたからそのおもりから解放されたような気分だった。ふと、壁に視線を移す。無。それが彼女の顔だ。 「もう、、、いいかな?」 答えてくれる訳はない。ただ、そう問いかけてみた。返答は、、、ない。

0
0
幻影 7

幻影 6

作 KKZOU 栩琶尚弥(くべなおや)は自身からして姉のような存在だった。この過去の出来事を話す前置きとして言っておく。 自身は栩琶を殺した。それは間接的であり、意図したものではないものの、確実に、死を招いたのは事実だ。それを言っておきたかった。 ある日のことだ。栩琶は可愛い物好きで可愛いものを見つけると発狂するちょっとぶっ飛んでる奴だった。だけど、優しく頼もしいと当時は思っていた。そして二人で歩いていると黒猫が草の塊から飛び出てきた時にも発狂していた。黄色く鋭い目をした猫はあまり好きにはなれなかった。だが、気づけば栩琶がその猫の跡を追っていた為、仕方がなく着いていった。 「こっちに逃げた!」 「いや、こっちだよ。ほら見て。草ボーボーの所の下。葉っぱが落ちてる。きっと猫が逃げた証拠だ」 「るさい!猫は頭いいからそんなヘマしない!」 「圧倒的理不尽」 「じゃあ透清はそっちに行って!私こっち行くから!」 「はいはーい」 そう言うと栩琶は森の木々のせいで入り組んだ獣道を突き進んで行った。体重なんて元からないように、地面の下から抜け出した木の根へ着地して走っていく。早いなーっと思いながら仕方がなく言われた方向に向かった。異様に木の多い公園は人気はなく、その寂しさを癒すかのように優しく風が周りを揺らす。葉っぱと葉っぱ、枝と枝、風の勢いで擦れ合い、地上へと緑の葉を落とす。公園のいわゆる森ゾーンの奥には広い河原が広がっておりそこまでの下り坂は急降下のような下がり具合だ。葉っぱが覆い被さり屋根のようになっており昼間だと言うのに薄暗く気を抜くと転びそうだ。木を抜きたいところだけど、とりあえず足を進める。すると黒い姿が視界を横切る。それは紛れもない黒猫。滑らかな輪郭、体、尻尾。全てを見通し、鋭く突き刺すような眼。黒の模様に白い稲妻のような白が入ったその姿は猫というよりはホワイトタイガーに近かった。黒と白が反転なホワイトキャットだ。しかし、黒白を反転させてしまってはブラックタイガーになってしまうなと思った。 「おーい、そっちは危ないぞー。何もしないからおいでよ」 猫は当然、人間の言語は理解できているわけはなく、何言ってんだこいつと言う顔でしばらく見つめて来たのち、体を百八十度回転させ 、河原に向かってしまった。 「あーあ。栩琶に言うかー」 めんどくさいと受け取れる動作で起き上がる。とその時だ。 鋭く、甲高い叫び声が聞こえた。 それは多分、猫の発した音だろう。 河原に向かうと下り坂の岸側に猫はいた。なんだ、転がっただけか、、、。一応確認しようと下を覗こうとした時。足が滑った。足は勢いよく宙を向き、視界は揺れる。周りの石、木、空の輪郭は歪み、線となり周りの線と繋がり横切っていく。体は反転し体が急降下の下り坂に打ち付けられる。 「っ!?」 高さはかなりあり二メートルは超えている。そして下には岩が転がっている。 「とうせい!!」 回転が止まる。視界が輪郭を捉え、正常になる。 「なにしてんの!?」 「っっぶな!」 自身の手は栩琶に強く握られていた。 助かったと思った時、再び視界は歪んだ。しかも今度は勢いよく落ちていく。 ? 簡単な話だ。栩琶は自身の体重を支えきれず、自分までもが落ちてしまったのだ。背中が、腕が、脚が、地面に打ち付けられる。叩きつけられる。だめだ、、、痛い。痛い。響く。骨が軋み欠片が舞ってしまったのかと勘違いするぐらいの痛みだ。地面に到達した。腕がズキズキと震える。体が重い。上がらない。それでも力を振り絞り立ち上がる。 「栩琶!?」 すぐ横には栩琶の姿がある。しかし、頭から赤い液体を流し、目を瞑っている。 「は?」 え、、、?は、? 「栩琶、、、栩琶、、、ねぇ栩琶ぇ!ねぇ起きろ!おきろおきろ」 返答はない。返ってくるのは無限に続くように感じる静寂と沈黙。頭ではわかってはいる。だが、感情が、心が、この現実を否定している。うけつけない。アレルギー反応のようにはぁはぁと息が荒れる。 栩琶は死んだ。 それも、自身の手によって。

0
0
幻影 6

幻影 5

作 KKZOU 自分の触れたくない物、存在を隠しておきたい物。人はそういうものには上から蓋をする。それは自身も例外ではなく、思い出したくない、しかし忘れてはならない記憶を蓋で閉めている。しかし、その蓋はちょっとした衝撃で簡単に外れてしまう。 それは自身も例外ではない。 「私のうちね、、、聞いてると思うけど霊媒師の家系なの」 「うん」 「それで、体質的に見えちゃうんだ。そういうの」 そういうのとは彼女、栩琶尚弥(くべなおや)や昨日のお化けのことだろう。 「うちにはさ、霊に取り憑かれた人がいっぱいくるの。お祓いをしてほしいとかで。それで昔から私は霊に取り憑かれた人達を見てきたの。だから、、、」 電話越しに和咲の口籠る声。聞き返すと今度は意を決したようにいう。 「透清は今、重症になりかけてる」 「重症?」 「霊に取り憑かれる人には二種類いるんだ。 罪悪感から死んだ人に自ら干渉しようとしてく人。相当恨まれてて霊自らが干渉された人。二つには結構違いがあるんだけど最終的にはおんなじ結果に行き着く」 「どうなるの?」 「死ぬ」 「、、、」 死ぬ、、、死ぬ。現実感のない響きに妙な違和感を覚える。すぐ隣にいる彼女を見る。無。それが最も適した表現だと思う。彼女の顔からは生気を感じない。空っぽの器だけが自身の隣にはいる。だからこれが彼女だとは思ってはいない。しかし、見た目が彼女である以上、心は軽くならない。 「重症になりかけてるって、、、どういうことなの?」 「昨日、用務員の霊を、、、君のいう栩琶さんがね、、、蹴り飛ばしたの」 「相当なキモさだったんだろうね。正当防衛だ」 「正当防衛にしては殺意マックスの蹴りだったよ。君は見えてないかもだけど、、、その用務員の霊が潰れるほどの威力だった」 「それは過剰防衛だ」 「そこはどうでもよくて問題は彼女の行動。普通は取り憑いた霊は他の霊には危害は加えないの」 「なんで?」 「取り憑いてるものとの干渉を防ぐ為」 「じゃあ、あの用務員の霊はどうして、、、」 「私が可愛かったからじゃない?」 「、、、」 「、、、」 「ソーカモネー」 「ごめん、、、ふざけただけだから、、、忘れて、、、」 「バッチリ記憶した」 「、、、。で!他の霊に危害を加えるってことは凶暴化してってるの!昨日は偶然いた霊が犠牲になったけど、、、いずれ透清にも悪い影響が出始める。それがどんな症状かはわからないけど、めっっちゃ辛いのは確かなの。だから、、、出来るだけ早く祓ったほうがいい。出来るかはともかく、やれるだけやらないと、、、」 「、、、」 「信じなくてもいいから。でも、一つ確かなのは透清に傷ついて欲しくないこと。私は透清がどんどん呪われてくのなんて見たくない。だから、、、お願い、信じて」 あまりにも突拍子もない話だ。信じろと言われて信じる方が無理がある。それでも。それでも。どんなに無茶苦茶な話でも。心は既に、信じている。和咲を、、、信じている。 「いつもなら信じずに聞き流すよ」 「でも!「だけど和咲が言うなら、、、信じるよ。そんなくだらない嘘つかないってことは、、、大体わかるから」 「、、、ありがとう」 「和咲」 「なに、、、」 「霊は、、、栩琶は怨んでいるのか?」 「分からない。それは過去に何かあったによるもの、、、」 「そう、、、」 「嫌なら話さなくていいよ」 ーガタッ 「いや、、、話すよ」 ーガタッガタッ 「栩琶尚弥のことを」 ーガタッガタッガタッガタッガタッガタンッ そして蓋は開かれる。

0
0
幻影 5

幻影 4

作 KKZOU 最近、和咲と話すようになった。ちなみにある程度親しくなったのでさん付けはやめる。 ある日のことだった。 「南館でお化けが出るらしいぜ」 「な訳ねーだろー」 やはり中林とは気が合いそうだ。前の席で会話をしている二人を横目に課題を進める。 「なぁ透清は知ってる?最近、南館でお化けが出るらしいぜ」 「いるわけないでしょ」 「すげーこのクラス四十六人中四十四人おんなじ反応だ」 「あと一人はどんな反応なんだよ」 「めっちゃ怖がってた」 「そんな奴いるわけないだろ」 そんなことを話していたら、ホームルームが始まった。 そして部活へと向かう。 「ねぇねぇ透清透清」 横からか後ろからか、とりあえず和咲がいるのは分かった。最近、一緒に美術室に向かっている。別に和咲と行くのはいいんだが、絵の具を入れている鞄を足元で振り回さないでほしい。当たるとクソ痛いから。 「最近さー、「お化け?」 和咲がえ?って表情で振り向く。 「なんで分かったの??」 「いや、みんなその話で盛り上がってるから。和咲は信じてんの、お化け?」 「いやー、、、会ったら怖いかな?」 「信じてるんだね」 そういえば小林がいうには四六人中一人が怖がっていたらしいが、、、。 「正直いうとね、、、怖い」 「お前か」 「なにが??」 コツコツと響く二人の足音。そんな時、違和感を覚えた。違和感を煽るように体の芯を撫でるように冷たい風が吹く。 「ねぇさっきから人いなくない?」 部活が始まるんだ。いつもなら叫び声や物音でうるさいぐらいなのが全く聞こえない。電気のついていない部屋がずらりと並び、最奥には薄暗く、心霊スポットのような雰囲気を出している美術室がある。 「確か、、、あっ!人いるじゃん!」 と和咲が走っていく。なんだいるんかと思いついて行く。 「おい、和咲、、、」 「ん?」 「人がいるって、、、どこに、、、?」 「え?」 ひゅーっと風の音がする。それ以外は無音。 変な緊張感が体を締め付ける。 「なにも、、、いない」 少なくとも、自身の視界には人影すらない。それに気配も音しない。そこで記憶の海から何かが打ち上げられる。 「あれがお化け、、、」 「マジで?どんな格好?」 「用務員みたいな?」 「意外と社会的。話してみる?」 「だめ。下手に動いたりしたらダメだよ?気づかれちゃう。どっか行くまで待とう」 「漫画の読み過ぎだよ」 「私アニメ派!」 「それどころじゃない」 「あっ、、、」 ーバツン 突如、天井から光を発していた電灯が火花をあげてその光を消した。あたりが一瞬のうちに暗くなる。 「気づかれちゃった」 瞬間、何か足音のようなものが聞こえた。凄まじいスピードで近づいてくる。脳が危険信号を全開に鳴らしている。だが、体がアロンアルファを塗ったくられたように固まって動けない。これが金縛りってやつかな?と思いつつ目を凝らす。 ダメだ。見えない。足音はすぐそこだ。和咲も自身と同じなのかその場に固まっており、目をつぶっている。 あれ、、、やばくない? ードッ 自身から左側の機材準備室のドアに何かが激突する。かなりでかいものがぶつかった時の音がした。その時見えてしまった。音の正体。 彼女だ。 何をしたかはわからないが、目の前に立つ彼女が向かってきたお化けを飛ばしたのだろうか。突如、光がつき周りからは叫び声や騒いでいる音が蘇ってきた。 「何今の?」 和咲の方を見ると冷たい、というか震えたような目で自身を見ていた。 「ねぇ見えた?」 「何も」 「じゃあそこの女の人は?」 彼女は、、、指を差す。その方向には、、、。 「見えてる」

0
0
幻影 4

幻影 3

作 KKZOU 「和咲でいいよー。さん付けは堅苦しいからね」 「あんまり喋ったことないから一応さん付けするね」 「話聞いてよー」 美術室は南館の二階の最奥にある。階段を降りて左に曲がり、右と奥に進む道を右に曲がる。右に曲がれば遠くに保健室が見えてくる。そのまままっすぐ行けば児童玄関だ。 「どうやって美術室まで来たの?」 「いやー真実ちゃんについていってたから」 真実とは「えー!何それ面白そー!」とあおったあいつだ。 「そのうち覚えるよ」 「ありがとね。じゃあ」 「さいなら」 彼女が靴を取ろうと手を伸ばす。、が止まる。 「あのさ、」 「?」 「いや、なんでも」 と靴を素早く履き、行ってしまった。 何を言おうとしたのだろう?少し気になるが特に深掘りすることなく、自身も帰路についた。 家に帰ると自室に向かう。ドアを開けるとそこには四つの塔がある。すべて彼女の描かれた紙だ。 「ねぇ栩琶。君は和咲さんから見えるの?」 目の前に立つ女性はただ、形があるだけで存在も、魂も、この世にはもうない。分かってはいる。分かってはいるが、どうしても忘れられない。あの日のことを。

0
0
幻影 3

幻影 2

作KKZOU 2 勝負と濁流 「舞ちゃんの絵ってすごいよね。動いてるみたい。なんか漫画の戦闘シーンとかにある線みたいだなー」 「ぶれ線のこと?」 「あーそうそうそれ」 「ありがとう!」 自身は美術部に所属している。他数人。しかし、彼らはただ早く帰りたいだけだ。この学校は全員が強制的に部活に所属することを義務付けられている。元々、美術部に入部するつもりでいたので、嫌ではなかったが早く帰宅したい生徒からはクソみたいなルールだろう。運動部は県大会を目指して燃えており、きっと一年はしばかれているだろう。文化部も厳しいルールがある。だがしかし、美術部は違う。顧問というか担当の浅倉(あさくら)は優しく(自身からしたらめんどくさいこのうえない)部活時間が他と比べて短いという元帰宅部達には神的な存在だろう。長くなったが、要するに半数以上が、全くやる気のない生徒の集合した部活だ。 しかし、和咲さんは違った。 彼女が転校してきて二週間。そして入部してから三日。同じ美術部なので彼女の絵はたまに見る。 彼女の描くものは基本的に動物であったり、車や自転車であったり、大体が動くものだ。恐らく彼女の絵の特徴、要ともいえるのはぶれ線の扱いだ。ぶれ線とは漫画やアニメでよく見かける動く時に見えるぐにゃぐにゃの線のことだ。あれは物の動きをより、分かりやすく迫力あるものにする為の技法だ。和咲さんはそのぶれ線の扱いがとても上手い。この前見たのは草原を走る麒麟の姿。その麒麟は片足をあげ地を蹴り、飛び出し、また地を蹴ると言う動作を繰り返している。その足を持ち上げる瞬間のぶれ線が、その先の行動を予測させてくる。線の向き、軌道、歪み具合。それらから伝わる迫力。 彼女の絵を見て確信した。 ー彼女なら、きっと美大にも行けるだろうー と。 「なぁ、透清(とうせい)。いい加減その女の絵以外も描けよ。今回のテーマは動物だからな?」 滑らかに動いていた筆の先に圧がかかり、歪む。 「別にいいでしょうが。人間も動物ですよ」 「そんなこと言うんだったら俺をカッコよく描けよ」 「浅倉先生は動物とは程遠い生き物ですからね。描けるかなー?」 「おい」 なんやかんや、浅倉は好いている。たまにムカつくことを言うが、別に悪い人というわけではない。なんなら誕生日プレゼントを渡したりしてくれる。なので浅倉が誕生日の日には彼女の絵をしかたがなく、送り付けている。 「ところでさーお前。和咲とおんなじクラスなんだろ?」 友達のノリで話されてもと背中を優しく撫でる寒気を堪える。 「どっちの絵が上手いか比べてみようか」 なんでそれを大声で言うのかは到底理解はできない。ただ、朝倉の顔面に筆を突き立てたい衝動を抑えるのがやっとだ。 「えー!何それ面白そー!」 普段、やる気のない奴が言うか! 「本気ですか?」 「私はいいよ」 何言ってるの!止めてよ! 「マジ?」 「透清はこの女に執着しているからテーマは女の人で!それじゃ始め!」 慌てふためいている中、スタートの合図がおりる。 ーシャッ 瞬間、鉛筆の掠れる音が無音の教室に鳴る。横を見れば彼女が鉛筆を握り、画用紙を睨んでいた。鉛筆で書くのか!?と鉛筆に切り替える。何度も、何度も、描き続けてきた動きがアウトプットされる。鉛筆は彼女を、画用紙の世界へと生み出していく。世界は真っ白な世界へ造られていく彼女へと集中していく。 ーシャッ 鉛筆の掠れる音。 ーシャッシャッシャッシャッシャッシャッ 絶え間なく続く音に思わず横を向いてしまう。そこには尋常ではない動きで、スピードで女性を描く和咲さんの姿があった。 ーシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ 負けるかと鉛筆に力を込める。この勝負は運動部の部活動時間ギリギリまで続いた。そして判定は女たらしこと奏佑(そうすけ)が行った。 「判定はー、、、、和咲さん!」 「その理由は〜?」 「可愛いから!」 「おい誰か審判交代させろー」 和気藹々とした雰囲気で部活は終了した。部活終了のチャイムがなる。普段、早く帰る生徒も話し合いながら帰っていく。教室には静けさだけが残った。 「おい透清部活の時間は終わったぞ」 「これじゃダメだ」 「今日は貸せねーぞ?週三って決まってるからな。描きたきゃ家で描けよ」 「、、、はい」 帰りの支度をする。ーごぽっー 「!?」 水の溢れる音がした。瞬間的に脳内で紫という色が浮かんだ。これは特に意味はない。 「冷たっ」 下を見てゾッとする。水漏れ、、、というのか美術室の床が浸水している。水位が上がってくる。不思議と感覚はなく、ただこの場を離れなければと思考が混雑する。 駆け出す。 水飛沫をあげながらドアの前に倒れる。全身水浸しだ。それでも震える手をドアノブに伸ばす。 ーぎっ 開かない。 「は?」 よじ登るように立ち上がりドアを叩く。 「あけ、、、開け、開け!」 すね、ひざ、太もも。水位は上がっていく。 「あけよっ!!おい!クソがっ、、、はぁ、、、はぁ、、、くそっ!」 何をしてもびくともしないドアから離れる。振り返るとそこにはさっきまでなかった人影があった。それは段々と色づいていく。 「あ、、、ぁ、、、」 「お前が、、、」 彼女は指を差して言う。 「ごめん、、、ごめんなさい、、、」 震えることしか、できない。ただ、震えることしか。 できない。 「殺した」 はっとして周りを見渡す。浅倉がさっさと帰れよーと言いながら美術室を出て行った。 「はぁ、、、はぁ、、、」 「大丈夫?」 「っっ!?!?」 横を向いたら和咲さんがいた。心臓が圧縮される。 「あ、びっくりさせちゃった?」 「いや、大丈夫大丈夫」 自身に言い聞かせるように言う。近くに来られると心臓に悪いなと思う。 「帰らないの?」 「それがね、、、」 と言いづらそうに言う。 「児童玄関までの道、忘れちゃった」

1
0
幻影 2