苺冷

10 件の小説
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苺冷

文章を書くのはそんな上手ではないので暖かい目で読んでくださると嬉しいです。 気まぐれで投稿します。

生まれつきの囚われ

可愛いものが好きだった。 ふわふわとしたドレスが憧れだった。 お化粧をしてみたいと思った。 「伊織、何見てるの?」 おかあさんのこえがきこえた。 「このどれすかわいい…!」 ぼくはにんぎょうさんをみる。にんぎょうさんのきているピンクのドレスがかわいい。 「え、ええ…そんなものよりもこっちのロボットの方がかっこいいわよ?」 おかあさんはそういってロボット、というものをわたしてきた。 そんなもの、か。 そっか。かっこいいもののほうが、いいのかなぁ。そうなんだなぁ。 「…おり……伊織!」 耳元で大声で名前を言われる。 体がビクッとなる。親友の楓真だ。 「なにボーッとしてんだよ!早く弁当食おうぜ!!」 「お、おう。」 そう言い鞄から弁当箱を取り出す。 黒のシンプルな弁当箱。中身は唐揚げ、ウインナーなどと肉々しい。 「伊織〜さっきボーッとしてたけどどうした?腹でも痛いのか?」 顔を覗き込むように楓真が問いかけてくる。ドキッとした。 「べつに、眠かっただけだよ」 昔を思い出してた、なんて言えるはずがないよな。どうせ相談したって気持ち悪がれるんだろう。 「さては遅くまでゲームしてたなぁ〜?」 「バレたかぁー!」 少し大きめの声で雑談をする。 横目でチラッと女子を見る。もう弁当は食べ終わっていてクシでさらさらとした髪を溶かしたり髪飾りを付けている。 可愛い。羨ましい。妬ましい。……そういうことは考えないようにしよう。 女の子になりたい。 可愛くて守ってあげたいような小柄な体。男みたいにゴツゴツしてなくて、いい匂いがして、可愛いものが好きでも変な目で見られないのだから。 でも生まれつきの性が男なのだからしょうがないよなぁ。 相談したいけど、楓真になら相談できそうだけど、迷惑だろうな。 俺が、我慢すればいい。男として生きていけばいい。仕事をして、女性と結婚して、死ぬまで働く。それだけでいいんだ。だから、今を不幸だと思うのはやめよう。これからの心配をするな。馬鹿。 でも、 やっぱり、 辛いなぁ。

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生まれつきの囚われ

花瓶

次の日の学校、華の机の上に花瓶が置いてあった。 「もう華死んだでしょ。」 そう声が聞こえた。華が死んでいるのは事実だ。私だけが知っている。 梅雨が明けた7月の初めに学校の屋上で華は死んでいた。まだ皆は行方不明しか知らないけど。でも机の上に花瓶が置いてあるのは決してダメなことでは無い、と思う。 でも何かいじめのような感じがして気持ち悪い。私が人のこと言えるわけないけど華は親友だったから。 目を瞑ると華を落としたときの情景が目に浮かぶ。ふわっと浮いた黒髪。頭から流れる血が丸くなって飛んでいた。 華の席の横にかけてある鞄。 まだ半年も使っていないのにボロボロ。 私とお揃いの鞄。 凄く仲が良くて毎日のように騒いで、遊んでいたなぁ。華がいないとつまらないや。 「か、かっ、て、に死ぬなよ…」 かすれた声で言った。涙が次々と出てきた。本当に言いたいことだった、と思う。周りの子が驚いたようにこっちを見てる。でも私は構わず泣き続けた。 自分の罪を隠すために考えないようにしたけど、やっぱり苦しいや。

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花瓶

夏の夕暮れ

ジジジジジ…蝉の鳴き声が聞こえる。 「樹!今日はどこ寄るー?」 笑顔でそう問いかけてくる君、早瀬由美。僕の彼女だ。 「コンビニでアイス買おっか!」 と僕は答える。 7月の中旬。夏休みまであと1週間くらいだ。とても暑く汗がダラダラと出てくる。これだから夏は嫌いだった。でも君といると楽しいなぁ。 コンビニに着いた。夏の暑さで火照った体をエアコンが冷やす。 「私これにしよー」 そういい君は棒付きのいちごアイスを取った。僕はその隣にあるソフトクリームを取った。 「僕が奢るよ。」 「やだ!私に奢らせてよ!」 可愛い。でもどうしても僕が奢りたい。 僕は由美の持っていたアイスを奪うように取り、レジで会計を済まし、由美にアイスを渡す。 「ありがと!次は私が奢るからね!!」 と無邪気に笑う。 カップを外し、ソフトクリームを舐める。美味しい。これが青春、なのかなぁ。僕はなんとなくそう思った。

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夏の夕暮れ

学校

学校に着く。 「ねぇ前田さん!」 とクラスメイトが私に話しかけてきた。 「華ちゃん行方不明らしいよ…」 そんなの等に知ってる。でも行方不明…か。死体があった、じゃなくて行方不明。 「そうなの…?」 私は肩を震わせて言った。 演技は苦手だけど今は上手くできたかも 今日はクラスの空気が重かった。 行方不明、といっても昨日の夜と今日帰ってないだけでどっかに泊まったと親に思われているのかな? 華は結構サボり気味だったし。 まぁとにかく私が疑われなければ、それでいいや。 あの屋上にはもう行きたくない。

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学校

無責任

あームカつく。ほんとムカつく。 少し有名になったからって調子乗りやがって。 今日も140字以内の悪口を書きこみ投稿する。それにすぐ沢山の人が反応してくれる。 『分かるww』『え、そいつなんなの?』『そいつやば…ゴミ?』『おいww口悪いwwwww』ニヤニヤしてコメントを一つ一つ読む。仲間が沢山いると思ったら少し怒りが収まった。 でも今日もあいつが投稿する。ネイルをした と投稿だ。くだらない 何回もブロックされてるしアカウントBANされてるけど他にアカウントはいくつだってあるんだよなぁ。 『ネイルは綺麗だけどお前はブスだからネイルだけ浮いてるなwww』 と素早く入力する。すぐ通知がなった。 『は?黙れよ』『お前よりは美人だろ』『きっもww』 …うざい。俺は間違ったことは言っていない。黙れよ。黙れ。 何も知らないくせに。 あいつはクズなんだ。俺を使うだけ使って捨てた。こんな悪口なんてどうってことないだろ?悪いことをした奴は罰を受ける。当然のことだろう?なぁ? ー次の日ー 今日もあいつの投稿を見る。 いつものような自慢の投稿ではない。 『死にたいな…』 は?俺は目を見開いた。怒りが込み上げてきた。どうせ死なないだろ?構って欲しいだけだろ?ウザイんだよ。悲劇のヒロインぶりやがって。 『死ねば?』 そう入力し、スマホを閉じた。 通知は鳴り止まなかった。 次の日あいつは何も投稿しなかった。 何となく昨日の投稿のコメントを読む。 俺のコメントにあいつがリプライをしていた。 『わかった。』と。 …俺の言葉であいつは死んだのか? いや、そんなことないよな? インターホンが鳴る。ドアをガチャガチャしている音がする。 バキッ。 ドアが壊れて開く。 冬なのに汗が次々と出てくる。ドアを壊したのは紛れもないあいつだった。 「…ねぇ。私死ぬね。」 俺は声を出そうとした。やめろ、と。 でも声が出せず口をパクパクとすることしか出来ない。 あいつは俺の家の包丁を勝手に持って喉を刺した。 血が吹き出した。現実味がなかった。 「なんで、俺の家で」 やっと出た言葉がこれだ。 でもあいつは動かないし喋りもしない。 床に血が広がる。 慌てて家を飛び出す。走る。走る。 血のこびりついた服に誰もがふりかえる。追いかけられ、何か叫ばれる。俺は聞かない。聞きたくない。 「俺は、悪くない。あいつが、、あいつが勝手に死んだんだ!!!!」俺は叫ぶ。 刑務所なんか行きたくない。 行くくらいなら…いっそ!そう思い足を前に出すと俺は飛んだ。飛んだ? 下に地面がない。崖か。死ぬんだな。 俺は、無責任だな。

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無責任

ニュース

布団から出てリビングに行く。 「おはよう!」 とお母さんが笑顔で挨拶してくる。 どうやら機嫌がいいようだ。 昨日のことを思い出す。あの通りは人が多いからきっと華の死体は見つかっただろうな…。 少し気になりテレビをつけ、ニュースのチャンネルに変える。 あれ? ニュースに出てない… 死体があったら普通大騒ぎだろう。ニュースに取り上げられるんじゃないか? 机の上にある新聞をとる。 華。今井華。ない、ない、ない。 なんで? もしかしてプライバシーとかでニュースに取り上げないようにしている…? 今考えてもわからない。 とりあえず学校に行こう。

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ニュース

私は悪くない。

家に着く。時計を見ると8時を回っていた。食器を洗う音がキッチンから聞こえる。母にバレないように部屋に入り、着替えて机の上に置いておいた菓子パンを食べて布団に入る。お風呂は明日でいいや。そう思い眠りにつく。 屋上から落ちる。 勢いよく生ぬるい風が体に当たる。 地面が近づいてくる。 怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。 「ああああああああああ!!!!」 そう叫んで飛び起きる。夢…だったんだ。 昨日の出来事で悪夢を見たんだろうな。 でも…私は悪くない。 死体を屋上から落としただけで。 記憶はないけど……親友を殺すわけが無い。 きっと、そうだ。

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私は悪くない。

私のために

とりあえずこれをどうしようか…… これが見つかったら完全に私が疑われることになってしまう。 とにかく死体を隠すことに頭が働く。 もちろんゴミ袋なんて持っていない。手ぶらだ。 「……あ、そうだ」 ここから落としてしまえばいいんだ。 飛び降り自殺として見られるんじゃないか。 ズリズリと死体(華)を引きずる音がなる。そして屋上の端っこに着く。 「ごめんね。」 そう呟く。 自分でも最低なことをしていると分かっている。でも、私はまだ高校生活を謳歌したいんだ。私のために犠牲になって。 死体を強く引っ張り宙に投げる。 以外にも簡単だった。

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私のために

親友

息をしていない。 人間の、死体。 私はなぜ隣に死体があるのか覚えてないし、知らない。 鉄の匂いがする。恐らくこの死体から流れている血の匂いだろう。 よく死体を観察してみる。頭を強く打っていて綺麗な髪の長い女性。 あれ? なんか見たことがある顔と服。 ……親友の華じゃないか。 悲しみよりも先に涙が出てきた。 私のこぼれ落ちた涙が華の頬を濡らす。 「たった1人の親友だったのに……」 今日は確か華と一緒に学校の屋上で授業をサボって……そして…… そこまで思い出そうとすると頭が痛くなる。

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親友

綺麗な景色

床に座り込む。冷たく固く安定した床にホッとする。空を見上げると綺麗な星空が私を照らしていた。「綺麗だなぁ…」思わず呟く。こんな綺麗な景色がこの世界にあるんだ… いや、今この状況だから綺麗に見えるだけかもなぁ。 私のすぐ右にある物体。 そこにあるものは紛れもない人間の死体だ。

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綺麗な景色