ピコゴン
32 件の小説弁護士と探偵と死体1 10
拘置所、俺は金田と向かい合わせになっている。 「・・・もう会わないつもりだったんだがな」 金田がぶっきらぼうに言う。 「・・・全て、分かったよ。」 俺は怯まずに即答した。 金田はそれに対してピクと肩を震わせた。 「まぁ、もっとも気づいたのは金田だけどな」 俺は少し笑った。 「誰だ」 「相棒だ」 「誰の」 「俺のだ」 単調な会話が続く。それはまるで、日吉は本題に入りたくないようだった。 「全て、わかったんだ。こよみさんの事件のこと」 「・・・・・・・・・・・・・」 日吉は黙った。だが、すぐに口を開く。 「言ってみろ。何が、分かったんだ?」 俺は一息ついて喋り出す。 「こよみさんを殺したのは・・・お前じゃない。」 俺がそう言っても、日吉は動揺を見せない。 俺は続けて話した。 「こよみさんは、自殺だったんだ。 お前は、それを庇ってる。それを庇って犯人になったんだ。」 「なぜそう言える」 「遺書を見つけた。 庭に埋められてた、遺書だ。 そこには書かれてあったよ」 俺はカバンから紙を取り出す。 それは、先ほど掘り出したこよみさんの遺書だった。 「「日吉さん。私はもう耐えられません。 スーパーでこき使われるのはもうたくさんです。頼れる人もいない。 だから私は自殺します。 日吉さん、後は頼みます。 図々しいかもしれないですが、お願いします」」 俺は書かれていることを読み上げた。 「お前はこれを、こよみさんの家に行ったとき、机に置かれているのを見つけた。 こよみさんの死体と同時に。 それで、お前は罪を被ったんだよ。」 そういうと金田は鼻で笑う。 「その紙には後を任せると書いてたんだろ? 罪を被って犯人になってくれ、なんて書かれてない。」 「そうだな。でも、お前は罪を被ったんだ。」 「なぜだ。なぜそうなる」 「お前がいい奴だからだよ。」 俺は机に手を置いて、日吉の顔を見る。 「お前は、こよみさんが自殺しただなんて、家族に知らせちゃダメだと思ったんだ。 それは、こよみさんの母親が関係してた。 母親の入っている宗教、幸せ家族。 お前はこよみさんから聞いていたんだろう? だから、罪を被らずにはいられなかった。 母親と、こよみさんの仲を取り持つために。」 「言ってる意味がわからない。お前は何を言っている」 俺は指を1つ立てた。 「幸せ家族の禁止事項の中に 自殺は禁止 という物があった。」 俺は回想する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 金田が調べてくれた幸せ家族の内容を考える。 「「あとは禁止事項も色々あってね。 先ほど言ったように退会は禁止。 布施は絶対に1ヶ月に3万以上支払うこと、 それ以下は禁止。 他人を傷つける言動は禁止、自殺は禁止。 ・・・・とまぁこんな感じかな。」」 金田は確かにそう言った ーーーーーーーーーーーーーーーーー 日吉は黙っている。 「お前はひとみさんの母親が こよみさんが自殺したことを知れば、 関係が悪化することは目に見えていた。 こよみさんは、母のことを気にかけていたから・・・・」 俺はまた回想する。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 秀樹さんが言っていたことだ。 「「家には電話しなくても、俺には何回か電話があった。家のこととか聞いてきてよ。 ・・・いつも母の体調は大丈夫か、って聞いてきてたよ。だから、あいつは母を嫌ってるわけじゃない。そう思うよ。」」 ーーーーーーーーーーーーーーーー 「・・・死んだこよみさんが浮かばれなかったんだろう。いじめられて自殺して、 そのせいで母親からも拒絶される。 そうならないために、お前はこよみさんの自殺を殺人に偽装したんだ。」 俺がそこまで言っても、金田は顔色を変えない。逆に、金田が質問をしてきた。 「自殺するならば、刃物で複数箇所を刺すことはできない。自身で複数箇所刺す間に事切れてしまうからだ。 だが、こよみは6箇所も刺されていた。 自殺なはずがないだろう。」 「それは、こよみさんの自殺の仕方が特殊だったからだ。 多分、首を吊るとかの自殺を連想させる死に方はしたくなかったんだろう。」 俺は即答する。 「こよみさんは、滑車とナイフ6本、 それから粘土を使って自殺したんだ。」 俺は説明をしだす。 「まず、窓際の天井に滑車をつけて、そこに紐を通す。そして、窓際には錘をつけ、こよみさん側には、粘土をつけた。 その粘土には、ナイフを6本つけて。 こよみさんは床に寝転がり、錘の付いた方の滑車を切り離した。 すると、こよみさんの上にあるナイフのついた粘土が、落ちてくる。 ・・・・だから、刺し傷が6マス状で、均等だったんだ。 お前が死体に気づいた時に、滑車とロープ、 そして粘土を取り外した。 滑車を取りはずるのにお前は苦戦して、 天井に傷がついてしまった。 その傷が残ってたよ。見てきたんだ。 錘の方は窓の下の川に流されたから拾わずにそのままにした。 これで合ってるはずだ。」 「よくできた嘘だな。粘土なんて使った証拠はあるのか。」 「知り合いの警官から、粘土片が残っていることを教えてもらった。 そして今、俺の手元にある。」 そう言って胸ポケットから粘土片の入った袋を取り出す。 「こよみさんに落ちる時の衝撃で飛んだ破片までは、お前も気づかなかったんだろう。 それが、証拠として俺が持っている。 言い逃れはできない。」 「恋人のために、犯人になるだなんてするはずがないだろう。俺が殺したんだ」 「どうだろうな。少なくとも、俺から見たらお前はそう言うことをする奴だと思ってる。 お前は・・・度がすぎていい奴だから。」 「・・・・・・・・・・・・・」 日吉が黙る。 「まだ話がある。 倉間のことだ。 倉間を殺したのも、お前じゃない。 倉間を殺したのは、こよみさんだ。」 俺は淡々と言う。 「こよみさんの遺書に、書かれてあった。」 俺は続けて遺書を読み進めた。 「「私は倉間さんを殺しました。 死体は隠しました。多分、見つからない。 人殺しをしてしまった私を、どうか許してください。 日吉さん、兄さん、お母さん」」 「お前はこれを見て、倉間という人物をこよみさんが殺してしまった事実に気づいた。 そして・・・お前はそれすらも自分の罪にしようとした。こよみさんを庇うために。」 俺は続ける。 「お前が死体を見つけたかったのは、こよみさんの証拠を消すためだろう。 もしかしたら、倉間の死体に何か痕跡があるかもしれない。だからそれを消して、お前が殺した痕跡をつけるつもりだった。 ・・・だからおれに依頼をした。 出所したときに倉間の死体を自分が殺したことにするために。 でもそれは杞憂だったな。 倉間の死体はすでに火葬された。 こよみさんの痕跡もなかったわけだ」 日吉は黙って話を聞いている。 「・・・・これが、全てだ。 つまりお前は、誰も殺してない。」 「・・・・・・・・・・・・・・」 そういうと、日吉は深くため息をついて話し出した。 「・・・こよみから電話があったんだ。 部屋に来て欲しいって。 俺はそんなこと言われるの、初めてだったからさ。色々と準備していったんだよ。 そうしたら・・・刃物が6本突き刺さったこよみが倒れてた。 その横には、遺書があった。 俺は、それを見て確信した。こよみは、自殺したことをバレたくないんだ、と。 だから、死ぬ前に俺を呼んだんだ、と。 ・・・母親との関係は前から聞いていた。 こよみは、母ともう一度仲良くなりたいといつも言っていた。 だが、倉間のいじめで限界が来て死んだんだ。 俺は遺書の通りに、死体を処理しようとした。 でも、気づいたんだ。 このままこよみは自殺と報道されれば、 こよみの母は更に拒絶するだろう。 それが・・・俺には耐えられなかった。 そうなるくらいならば、俺が・・・」 そこで日吉は喋るのをやめた。 「お前は、本当にいい奴だよ。 いい奴で・・・・バカだ。」 死人のこよみさんを想って、倉間のことも自分の罪にしようとした。 こいつは本当にお人好しだ。 「お前は、俺の母が死んだ時も、ずっと俺のことを想って仲良くしてくれてた。 正直、お前がいなけりゃ俺はどうなってたか」 俺は拳に力を入れる。 おそらく、日吉には自責の念もあったのだろう。 恋人であるこよみさんの苦痛を知ることもなく、この世を去ってしまったのだから。 「お前が、こんなところにいるのは、 俺はやるせねぇよ。日吉。 真実を打ち明けるべきだ。」 「だが、そんなことをしたらこよみは・・・ 母からも拒絶され、殺人犯として名を残すことになっちまう。」 日吉は涙を流している。 「じゃあ、こよみさんがこれを望んだのかよ! お前が、お前がこんなところにいることが、 こよみさんの望みだったのか!」 「そうじゃねぇ。俺はーーーー」 日吉は言葉を詰まらせる。 俺は深く息を吐いて、日吉の次の言葉を待つ。 だが、いくらたっても日吉は喋らなかった。 「・・・まだ聞きたいことがある。 1つだけ分からないことがあったんだ。 お前はなんで、遺書を見つけた後に、庭へ埋めたんだ?」 俺の質問に、日吉はゆっくりと口を開いた。 「・・・・電話の後、メールが一通来てた。 そこには、「「遺書は庭に埋めてください」」 と書かれてた。だからその通りにしただけだ」 俺は、その言葉を聞いてハッとした。 「・・・こよみさんは、本当は全て明らかにしたかったんだよ。 庭に埋めて、兄の秀樹さんが見つけてくれると、信じてたんだ。」 俺は秀樹さんが話してくれたことを思い出していた。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 遺書を見つけた後に、秀樹さんがいったことだ。 「こよみは、何かを隠すときや、おまじないとして庭に物を埋めることがあった。」 秀樹さんは涙を流している。 「・・・きっと、本当は見つけて欲しかったんだなぁ・・・。あいつは、俺を信じてここに埋めたんだ。」 俺はそれを聞いてハッとした。 こよみさんは、自殺を母に知られたくなかった。 それは事実だろう。だが、日吉が犯人になることは予想していなかったはずだ。 こよみさんの遺書、 「「日吉さん、後は頼みます」」 この言葉の真の意味は、おそらく・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーー 「おそらく、母と兄のことだったんだ。 多分、こよみさんにとって母との関係は心残りだったから・・・・・ そう言う意味での、頼みますだったんだよ」 そういうと、日吉はガタガタと肩を震えさせる。 「・・・・・・・・。 じゃあ、俺がやってきたことは・・・ 全部独りよがりの、ただの自己満足だったってことか?」 「そうかもしれない。 ただ、絶対に言えることは、 お前はここにいるべきじゃないってことだ。」 「・・・・・・・・・・」 日吉は泣き崩れる。 おそらく日吉は、この事実を墓まで持っていくつもりだったはずだ。 それが、俺や金田たちによって潰された。 「・・・・俺は・・・・ こよみのために・・・・・・・。」 だが、こいつは俺が救う。 死人のために、今生きるこいつが痛い目を見る必要はない。 だが、日吉は何を言っても、俺の言うことは聞かないだろう。 俺は身を乗り出して日吉に言う。 「日吉。俺はお前を救いたい。 お前はそれを望んでいるか??」 俺の問いかけに、日吉は少し迷った末に言った。
弁護士と探偵と死体1つ 9
次の日、俺と金田はこよみさんの家前に集合した。 住所を金田が以前特定していたことは分かっていたからだ。 そして、そこに秀樹さんと羽場も合流した。 「よし、全員集まったな」 金田がそう言う。 秀樹さんはこよみさんの兄であるため、何か俺たちの気づかないことに気づいてくれるのではないか、 と思ったので呼んでおいた。 羽場は刑事目線から何か気づくことはないかと思ったからだ。 羽場は気怠そうにしてため息をついた。 「で、どうやって入るんだよ」 秀樹さんがそう言う。確かに、無断で入るわけには行かなそうだ。 「そのための羽場くんだよ。」 金田は自信ありげに息巻く。 対照的に羽場はため息をついた。 「あのなぁ、警察だからってそんなポンポン事件現場に入れるわけじゃないんだ。 そもそもこの事件は警察の内ではもう終わってる。許可なんてとってねぇよ。」 意外な一言に3人は顔を見合わせた。 「えーっ!あんたが許可取ってくれんじゃねぇのかよ!!」 秀樹さんが叫ぶ。 「じゃあどうすんだ??」 俺も声を上げた。 流石に無許可で入るのは・・・・ 「無許可で入る」 羽場が俺の問いに即答した。 本当に警察なのかと更に疑わしくなる発言だった。 その目線を、金田は理解したようで口を開く。 「まぁ羽場くんはアウトローな警察だからね。 そりゃ許可なく不法侵入もするさ。」 金田が当たり前だろ?と言うように言った。 俺たちは羽場を先頭にアパートへ入って行った。 事件からすでに時間が経過したからか、騒ぎもなく部屋の前へ来ることができた。 羽場はポケットからキーピックらしきものを取り出す。 俺は再度金田に目線を送ったが、何度も言わせるなと言わんばかりにニコニコと笑っている。 これ、ほぼ犯罪じゃねぇか・・・・。 そう思いながらも、鍵が開くのを待った。 しばらくすると、羽場が開いたぞと言った。 俺たちは恐る恐る部屋へと入った。 こよみさんの部屋。 部屋は以前羽場が言っていた通り、質素なものだった。 血痕は綺麗に取られて、地面には真新しいカーペットが引かれてある。 しかし、家具などはこよみさんが暮らしていた時のもののままのようだ。 「血痕やらはすでに掃除されてある。 何か探すなら他のものだな。」 羽場が玄関口でそう口を開く。 「俺は誰か来ないか遠巻きに見とく。 終わったら連絡してくれ。」 そう言って羽場は出て行こうとする。 「なぁ、あんた。」 秀樹さんがその背中に対して声をかける。 「ありがとな。色々調べてくれてよ。 あんたも、妹を亡くしたんだってな。 ・・・・俺はこよみに何もしてやれなかった。 でも、あんたのおかげで、何か分かるかもしれねぇ。本当に、ありがとう。」 秀樹さんが頭を下げる。 「・・・・俺も、あんたと同じようなもんだよ。秀樹さん。俺も、何もしてやれなかった。」 羽場はそう言ってこちらを向く。玄関の扉から入る日差しで逆光になり、あまり顔は見えない。 「あんたらに協力するのは、 何もしてやれなかった俺の、罪滅ぼしみたいなもんだ。気にすんな。」 羽場はそう言って部屋を出て行った。 その時、羽場はどこか笑っていた気がした。 俺はまず、地面を調べてみることにした。 カーペットは新しく新調されてあるが、 床までは替えられない。 俺はカーペットをめくって床を調べる。 そこには、木目があり、少し赤みがかっている部分があった。 窓際、つまりこよみさんが倒れていた場所だ。 手で少し擦ってみても、特になにも変化はない。 だが、こよみさんがここで死んだということがより鮮明に理解できた。 次に俺は周囲を見渡す。 ・・・・しかし、特に変わったところはない。 ・・・・・いや、あれはなんだ?? 俺は天井を見上げる。 天井、こよみさんが倒れていた場所から少し横の天井に、 少しの切れ目があった。 偶然切れたものなのだろうか。 俺は椅子を持ってきて上に乗り、その切れ目を触ってみる。ザラザラとしていて、まるで故意につけられたもののように思える。 この傷は、何か意味があるのだろうか。 その間、他の2人も各々で何か証拠がないかを探していた。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 僕はまず、窓際を見ることにした。 窓を開けてみると、そこにはベランダなどはなく、下を見てみれば川が通っている。 そういえば、このアパートは川の横だったな、ということを思い出した。 僕は身を乗り出して下の方を見る。 「おい、気をつけろよ。」 秀樹くんが僕に話しかけた。僕は手だけ振って大丈夫だと表す。 ・・・下を見てみても、特に何もなさそうだった。どうやら川は関係ないらしい。 ・・・・いや、本当にそうか? 僕は顎に手を当てて考える。 もし、もしもだ。 日吉が、「刺したのではない」としたら・・・・。 サイコロの六の目のような傷跡、 一致した傷の深さと方向、 散らばった粘土片・・・・・・ 僕は考えながら天井を見た。 そこには、獅童くんが、天井を調べている様子があった。 獅童くんの手の先をみると・・・そこには傷跡があった。 天井の傷・・・・・・・・・・ そこで僕はハッとした。 1つだけアイデアを閃いた。 いやしかし、だとすればなぜこんな回りくどいことをしたのだ。 日吉がこのようなトリックをした訳が、 何かあるのだろうか。 僕は考えこんだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 俺はバカだから、きても意味がないと思ってた。だが、今来ると来て良かったと思う。 部屋の様子は以前羽場が言っていたように質素だった。 俺は昔のこよみの部屋を思い出す。 実家にあるこよみの部屋はいかにも女の子らしい、とても可愛らしい部屋だった。 壁にはコルクボードが飾っており、デコレーションがされていた。 家を飛び出したからと言って、こんなにも質素な部屋になるはずもない。 俺はこよみをいじめていたという倉間を殺してやりたい気持ちになった。 だが、今すべきは証拠を探すことだ。 日吉とこよみに関係する証拠。 それが必要なんだ。 俺は机や、タンスの中を見てみる。 しかし、何か証拠になるものは何一つない。 それはそうだ。 だってこの部屋はすでに警察が調べているのだから。証拠になるようなものは、すでに持って行っているだろう。 こよみが隠していない限りは、証拠なんて出てきやしない。 隠していない限りは・・・・・・・ 俺はまたこよみとの回想をしていた。 「こよみ。何してんだ??」 親父が死んで、母がおかしくなってから1年後のことだった。 こよみは実家の庭で何かを埋めていた。 「・・・・・お母さん。全然言うこと聞いてくれないね。宗教に入るのはやめてと言ってるのに」 俺の質問を無視してこよみはそう言う。 俺は言う言葉が見つからなかった。 母はすでに、どっぷりと宗教に浸かっていた。 母にとって俺とこよみは二の次で、 宗教が一番になっていた。 「もう、いつものお母さんは戻ってこないのかも・・・・」 こよみは寂しげに言う。 俺はこよみに歩み寄るしかなかった。 「大丈夫だ。いずれ、分かってくれるさ。」 俺はこよみにそう言う。 そう言うしかなかった。 「・・・・ありがとう、兄さん。」 こよみが笑った。その顔が、今も頭から離れない。 「・・・・何してるかって、言ったよね」 こよみが涙ぐみながら言う。 「おまじないみたいなものだよ。 大事にしてるものを埋めて、何年後かに掘り起こす。それまでは、我慢、我慢。」 こよみの肩は震えている。 埋めようとしていたものは・・・ 4人の写った家族写真だった。 4人は満面の笑みでこちらを見ている。 俺はそれを見て目頭が熱くなるのを感じた。 「次にこれを掘り起こすときは、3人で写真を撮ったときにしよっかな。」 こよみが必死に笑って見せた。 だが、それが掘り起こされることはなかった。 こよみは殺されて、母ももう戻らない。 もし、今もこよみが・・・・・・。 こよみがまだ、俺たちを想っていたのなら・・・。 俺は獅童と金田を呼んだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 俺と金田は秀樹さんに呼ばれてアパートの庭部分へと足を運んだ。 「もし、こよみが何か隠すなら、ここだと思うんだ。」 秀樹さんがそう言う。俺たちは周辺を探し回った。羽場さんも途中から加わり、4人がかりで探し始めた。 俺たちは口には出さなかったが、全員が思ってただろう。 ここに何かなければ、真実は掴めずに終わる。 俺たちは必死に探し回った。 「・・・・!何かあるぞ!」 金田が声を出す。俺たちはいっせいに金田の元へ集まった。 そこは新しく掘り返された跡があった。 金田はそこを掘っていく。次第に、何か箱のようなものが出てきた。 プラスチック製の、何かの箱。 透けていて、何が入ってあるのかは確認できた。 そこには・・・・・・・・・ 何か文字が書かれた紙があった。
弁護士と探偵と死体1つ 8
「・・・・死体が倉間だという証拠が出たのか?」 俺は驚いて金田に質問する。 「・・・あぁ、残念ながら」 金田は俯きながらそう言った。 一体何が残念だと言うのか。死体が明らかになっただけでも万々歳ではないか。 「残念ながら、俺たちが捜査をする前から見つかっていたらしい」 そう言って金田はパソコンを俺の前に出した。 そこにはニュース記事の抜粋されたページが映し出されている。 発行日は、俺が日吉に接見する3日まえだった。 「身元の分からない遺体が、山の中で見つかった?」 俺は声を出してその記事の見出しを読む。 「あぁ、そうだ。恐らくこれが倉間という人物だ。 記事にはこう書いている。 青いパーカーを着た男性の遺体であること。」 「・・・それだけか???」 「いや、この情報がこの遺体が倉間であることを結論づけている」 そういうと金田はページをスライドさせて、次のスライドへ移った。 そこには、とある人のブログがあった。 「3ヶ月前くらいのこの写真を見てくれ」 金田が指を刺した先には、青いパーカーを着た男性が写っている。 「次に、この写真」 金田はそう言って次々と写真を出して行った。 どれも違う人のブログである。 その中には、青いパーカーを着た人物が写っているものがちらほらとあった。 その写真らは、どれもこよみさんの働いていたスーパー前であることが分かる。 「全部スーパーの前で撮ったものを挙げているブロガーの写真だ。こんなに写真に写っているというのは、スーパーの関係者であることは間違い無いだろう。」 「だが、まだ偶然という線もあるだろう。」 「いや、この写真を見れば偶然じゃ無いことが分かる。」 そう言ってまたページをスライドさせる。 そして、1枚の写真に辿り着くと、ある一点を指さして金田が言った。 「これ、こよみさんと青いパーカーの人物だ」 それは、とあるブロガーが挙げた一枚の写真。 スーパーを背景に買ったであろうアイスがデカデカと写真に写っている。 その右端に小さく写っていたのは・・・・ 青いパーカーの人物に頭を下げているこよみさんだった。 「これで、ほぼ確実に青いパーカーの人物は倉間だろうね。」 金田は、はぁ、と息をついた。 つまりは・・・・・・ 「つまりは、俺たちが調査を始める前から 死体は見つかってた、てことか??」 「そういうことになるね」 俺は肩を落とした。 では、俺たちの調査は何だったんだ。 今まで、見つかるはずのない死体を探していたのだ。なんというか、少しの虚無感があった。 「・・・・・あ、じゃあヤバいじゃねぇか」 「何がだい?」 俺は金田との接見時に、言われたことを思い出す。 「「警察より先に死体を見つけてくれないか?」」 ・・・そうなってしまうと日吉との約束が果たせなくなってしまったことになる。 俺はそれも含めてやるせない気持ちになった。 俺はそのことを金田に話す。 「あぁ、そんなことも言ってたね。」 「・・・・・・・・・・・」 俺は考え込んだ。 これでよかったのではないか?と。 倉間の死体が見つかってて、もうそれでいいではないか。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・いや、まだ謎が残っている。 日吉は、なぜこよみさんを殺した? そして、死体のことを知ってどうするつもりだったんだ? なんで警察より早くに死体を見つける必要があったんだ? 倉間と俺に関係があるっていうのはなんなんだ? こよみさんの検死のおかしな結果は? 部屋に残された粘土片は? ・・・・・・・・・まだ、俺たちがわかっていないことがたくさん残っているじゃないか。 「とりあえず、もう一度日吉に会ってくる。」 「そうか。では僕は何をしておこうかな」 「お前は寝とけ。・・・・寝てないんだろ?」 俺は金田の目の下の隈を見て言う。 ずっと事件のことに宗教のことを調べてくれていたのだ。恐らく寝る時間も削っていたのだろう。 「・・・・なるほど、気が効くじゃないか」 「まぁな。相棒だろ?」 俺は手でグッドマークをした。 「行ってきたまえ」 そう言って金田もグッドマークを作る。 俺は日吉のいる拘置所へと向かった。 拘置所、日吉が奥の扉から警察に連れられて部屋に入ってくる。 そして、パイプ椅子に腰掛けた。 「・・・・・日吉。」 俺はか細い声で日吉に言う。 「獅童。ここに来たってことは、死体が見つかったんだな??」 日吉は少し前のめりになって俺に言う。 「・・・・すまない。 俺たちが調査を始める前から、死体は見つかってたんだ。」 俺は先ほど金田と話していた内容を日吉にも伝えた。日吉はそれを黙って聞いていた。 「お前の殺した倉間は、 もう無縁仏(身元の分からない、または親族が受取拒否をしている遺体のこと)として火葬したらしい。だから、お前の依頼は達成できない。」 そこまで言うと日吉がゆっくりと口をひらく。 「・・・・そうか。山の中に死体があったのか。」 日吉はそうこぼした。・・・・・俺は少し疑問に思った。 「お前が山に埋めたんじゃなかったのか?」 日吉の言い方はまるで死体が埋められた場所を最初から知っていなかったかのようだった。 「いや、別に。 ・・・でもそうか。もう警察が見つけていたんだな。 ・・・・・ならもういい。協力ありがとう」 そう言って日吉は席を立ち、後ろの警察に目配せをした。 日吉が部屋を出て行こうとする。 「待ってくれ!」 俺は反射的に日吉を呼び止めた。 「まだ、分からないことがある。 死体が・・・倉間が俺と関係してるってのはどう言うことなんだ??」 日吉は少し黙って言う。 「お前を協力させるための方便だったんだよ。 騙して済まなかった。」 そう言って頭を下げる。 その様子からして、嘘ではないようだ。 「じゃあ、死体は母とも関係はなかったってことか?」 「どうしてもお前に協力して欲しかったからな。 そう言ったら、お前はこの依頼を無視できないと思ったんだ。」 俺はため息をつく。 日吉の言う通り、俺はその言葉を聞いて協力することにした。 だが、だとしても納得いかない点がいくつかあった。 「だとしても、まだ分からないことがある。 こよみさんについてだ。 お前は、どうやって、何の理由で殺したんだ。 答えてくれ」 少しの沈黙の後に、答えた。 「それはお前が知る話じゃない。こよみの事件についてはもう関わるな。」 その口調は、いつもとは違って酷く冷淡なものだった。 「・・・・・俺の苦労を無駄にさせてくれるなよ」 日吉が小声でそう言った。 なんのことなのかは分からない。だが、無性に腹が立ってきた。 「日吉。お前が何を隠してんのか、分からねぇ。 でも、俺たちは知らなきゃならない。 こよみさんが死んだ理由も、全てを。 ・・・・少なくとも、このままじゃあ秀樹さんが報われない。」 俺は拳を握りしめた。 秀樹さんは、こよみさんのことを何も知らないまま失ってしまったのだ。その後悔はどれほどまでに深いことだろうか。 「俺はお前が何と言おうと、事件の真相を見つけるよ。」 「それは、こよみが望んでいなくても、か?」 日吉は俺を睨む目で見る。 「・・・どういうことだ??」 「こよみは、そんなこと望んでない。 事件を明るみにすることなんて、望んでないんだ。 俺が一体どんな思いでここにいるか、 わかんねぇだろ。 そんなやつが、口出しすんじゃねぇ。」 日吉はそう言って扉を潜ろうとする。 「・・・・じゃあな。もう2度と会うことはない」 「待てよ!」 俺の静止も聞かぬままに、日吉はそのまま出て行った。 日吉・・・・今の日吉には、昔の優しかった頃の面影はどこにもなかった。 夜。帰り道、俺はコンビニの端で缶ビールを飲んでいた。 どうすればいいのか分からず、立ち往生していたのだ。 日吉は、明らかに何かを隠してる。 死体の件ではなく、こよみさんの事件に関して、なんらかを知っている。 俺は、どうすればいい。 日吉の言う通り、 このまま事件は明るみに出さずに放置するか? それとも、全ての謎を明らかにするか? 俺は、俺は・・・・・・・ 「ーーーーーやぁ、飲んだくれのおっさん」 そう、声をかけられる。 顔を上げると、金田が立っていた。 「金田、どうしてここが・・・」 「カバンの盗聴器、GPSも付いてるからね。」 俺はそれを言われるまで、カバンの盗聴器のことを忘れていた。 金田は俺の横に座る。 「・・・・聞いてたよ。金田との会話。」 「・・・勝手に聞くんじゃねぇよ」 「残念、聞いちゃったもんは仕方ないよね」 金田はいつもの調子でそう言う。 「君の母親との関係は、なかった。 ただ、日吉にいいように使われただけだったと。」 金田は確認するかのように聞いてくる。 俺は黙って小さく頷いた。 「じゃあ、正式にこの依頼は君にとって意味のないものになったわけだ。 じゃあ、もうこよみさんの事件は調べる必要もないね。」 金田が挑発するように言う。 確かに、俺にとって母と関係がないのなら、もう関わる必要もない。 だが、このもやもやはなんなんだ? 「いや、俺はそんなんじゃーーーー」 「君は謎を解きたがっている。」 金田が被せるように言う。 「まだ謎を解こうとしている。 こよみさんはなぜ殺されたのか。 その動機は。死に方がおかしかったのはなぜか。などなど・・・・・・。」 日吉はそう言って俺の顔を見る。 「なら、解くしかないんだよ。獅童くん。 解かれてない謎があるなら、解くんだ。 それが、探偵ってやつだ。」 金田はそう言って立ち上がった。 「日吉のためとか秀樹のためとか、 どうだっていいじゃないか。 ただ、君のもやもやが晴れるまで、謎を解く。 僕はそれに付き合うよ。」 金田が手を伸ばす。 「・・・・・・俺は探偵じゃねぇよ」 そう言いながら金田の手をとった。 こいつはいつもそうだ。いつも俺の足りない部分を補ってくれる。 「今は君は僕の助手だろう??」 金田が茶化す。俺は笑って立ち上がった。 「じゃあ、これからどうする?」 金田がそう聞く。 「明日、こよみさんの家に行く。 何か情報が隠されているかもしれない。」 「いいね。その意気だ。」 俺たちは顔を見合わせる。 誰のためでもない。 俺は、俺が納得するために謎を解くんだ。
弁護士と探偵と死体1つ 7
羽場が地べたに資料を広げだす。 そこには検死の結果と佐川こよみの名があった。 「まず、死因は複数箇所の切り傷による失血死だ。家の窓際で倒れているのが発見された。死体の周りには血溜まりが出来ていた。」 それを聞いている秀樹さんが少しうなった。 怒りを抑えている感じだ。 「でも、不可解なことがあるんだ。ここを見てくれ」 羽場は資料に指を刺す。 そこには人型の図があった。 そこには点々と赤で印が付けられている。 場所は人で言うところの腹から肩にかけて6箇所だった。 「この赤い点の部分が、佐川こよみが刺された箇所だ。腹部から肩にかけて平行に2点ずつ、 それが3つで6個の刺し傷だな。 ・・・・おかしいことに気が付かないか?」 ・・・確かに、刺し傷がサイコロの六の目のようになっていることに違和感を覚えた。 「それだけじゃない。ここを見てくれ。 これは刺し傷の位置と、刺さっている深さを表している。」 そこを見てみると、ミリ単位で測られたここの刺し傷のデータであった。 「・・・・・刺し傷の深さが一致しているな」 俺は声を漏らす。 そのデータに書かれた刺し傷の深さが、 6つとも同じだったのだ。 もちろんミリ単位では違うが、ほとんど深さは同じであった。 「そうだ。それに、刺された方向も同じだそうだ」 「方向?」 俺はまた口を出す。 「斜めから刃を入れられていたり、体と直角に入れられていたりってことだよ。 それも、全部の刺し傷が一致してる。 全てが体と直角にして刃が入れられていた。」 俺は少しゾッとした。 「ん?待て待て。それの何がおかしいんだよ」 秀樹さんがそう言う。 金田がそれに対して説明した。 「例えば、怒りに震えた男が女を滅多刺しにするとしよう。 そんな時、男はいちいち方向を揃えて、 いちいち刃が入る深さも揃えて、 いちいちサイコロの六の目になるような箇所を刺すと思うかい?」 秀樹さんは頭を横に振る。 「つまり、バランスが良すぎるんだよ。 日吉がもし恨んでこよみを殺したのだとすれば、バランスが良すぎて逆に不気味だ。」 金田がそう言う。 それに対して羽場が頷いた。 「もし日吉が殺したのなら、この殺し方は何かのシステムを使ったのかもしれない。 それか、殺し方に美を追求するサイコパスとか。」 俺は首を横にする。 「いや、あいつはそんなサイコパスじゃない。」 「なら、何らかの理由があるんだろうな。 とりあえず、検死の結果はこんなもんだ。」 羽場はそう言って資料を片付けだした。 「じゃあ次に佐川こよみの家についてだ。 秀樹。お前は一度でもこよみの家に行ったことがあるか?」 年上である秀樹さんに対して羽場はタメ口で言う。この場で無礼な奴が2人いることに驚きを禁じ得ない。 「・・・ねぇよ。一度も行ったことねぇ。 住所も知らなかった。 それどころか、俺は日吉とこよみが恋人だってことも知らなかった。」 秀樹さんは自嘲気味に言う。 「そうか。こよみは2階建てのアパートに住んでいたらしい。アパートの2階の端が家だった。俺も一度調査で入ったよ。 ・・・・まぁ、なんと言うか質素な部屋だったよ。」 「この部屋くらい?」 金田が言う。 「いや、ここまでひどくはなかった」 羽場がノータイムで返す。 「なんだと?だったらどう言う部屋がいい部屋なんだ。」 金田がムッとして質問する。 羽場は無視して話を続けた。 「ベットに机、タンスにはスーツやらなんやらあったが、特に目につくのはなかった。 なんというか、住んでいる感じじゃなかった。 恐らくあまり帰ってなかったんじゃないか? よほど仕事人だったらしい。」 そこで、俺は以前のことを思い出した。 あのスーパーの婦人が言っていたことだ。 「「倉間さん、夜遅くまで仕事をさせてたり」」 ・・・・こよみさんは、家に帰っても夜遅くてやることなく寝ていたのだろう。 倉間という人物は、一体こよみさんにどれほど辛くあたっていたのだろうか。 それを考えるとなんともやるせなくなった。 秀樹さんは拳に力を入れていた。 その様子を見つつも、羽場は話を続ける。 「そんな部屋に一際目立って、赤黒い血痕が窓際にあった。こよみさんが倒れていた場所だ。 日吉はよほど恨みがあったんだろうな。 血の量は悲惨な結末だったことを物語ってたよ。」 羽場はそう言って深くため息をついた。 「で、ここからが変なところだ。 部屋の中からは固まった粘土片が散らばっているのが確認された。その死体の辺りにだけ。」 羽場は胸ポケットからジップ付きの袋を取り出した。そこには、極小さな欠けらが入れられている。おそらくそれが粘土片なのだろう。 「まぁ関係ないかもしれんが、死体周りにだけ これが散らばっていたんだよ。」 「なぜ粘土片が??」 金田が言う。 「さぁな。だが、警察はこれに関しては深く調べてない。なんせ犯人が自首してるんだからな。 だが、探偵は小さいことから謎を解くんだろ?」 そう言って金田に袋を渡した。 「粘土片の中には、血のついたものがあった。 つまり、この欠けらは何か関係がある。 渡しておくよ。」 金田の持っている袋を見てみると、確かに赤く染まっている欠けらがあった。 「・・・・これが、俺の知っている内容だ。」 そう言うと羽場は立ち上がった。 「俺は帰るぞ。あいにく暇じゃないんでな。」 「あぁ、ありがとう。また何かあったら頼む」 金田がそう言う。 俺と秀樹さんは頭を下げた。 「・・・でも、なんで協力してくれたんだい?いつもはこんなに協力的じゃないじゃないか」 「・・・・・・別に。 ただ、妹さんが可哀想だっただけだよ」 羽場はそう言って部屋を出て行った。 「羽場も妹が居てね。つい最近何者かに殺されたらしいんだ。」 「そんなことが」 「・・・・あいつも、俺と同じだったってわけか」 秀樹さんが歯を食いしばりながら言った。 「・・・・俺は正直、こよみが辛い思いをしてたことも知らなかった。それだけじゃねぇ。あいつが家を出て行ってから、俺は顔も見てなかった。 いつもこよみと話すのは電話でだけだった。」 秀樹さんは力の入れた拳を床に叩きつけた。 目には少し涙が浮かんでいる。 「もっと俺が気にかけてれば、 日吉に殺されることもなかったのかもしれねぇ・・・。 もっと気にかけてれば、家に帰ってきてたかも知れねぇ。 俺は・・・・情けない奴だ。」 俺は秀樹さんにかける言葉がなかった。 「いや、君はよくやってる。 悪いのは君じゃない。日吉だろう。」 金田が慰めるように言う。 「もっと言えばあの宗教だ。 あれさえなければ君の母が信仰したり、 こよみさんは出て行くこともなかった。 あまり自分を責めない方がいい。」 秀樹さんは少しの間黙った後、家を出て行った。 その場には、俺と金田だけが残った。 「さて、色々と分かってきたけど何か分かることがあったかな。」 金田が顎に手を当てて言う。 俺はもう一度今まで出た情報をまとめてみた。 「・・・・・そういえば、倉間については何か分かったか?」 俺は金田に言う。 「あぁ、もう調べはついたよ。 それに、君の追っている謎ももう明らかになった。」 金田が唐突にそう言った。 俺は金田の顔を見る。なんとも自信のある顔だった。 「・・・死体のことか??」 「あぁ、僕たちの追っている死体、その人は・・・・・ 倉間で間違いない。」
弁護士と探偵と死体1つ 6
夜、一軒の居酒屋に入り、カウンター席へとついた。金田は端側の席に座って隣の席を俺に差し出す。俺はそこへ大人しく座った。 「お前が外に出るなんて思わなかったよ。 俺に捜査させてばっかだったしよ。」 「僕を何だと思ってるんだ。少なくとも生活用品などの買い出しでは外に出てるさ。 まぁ、インドア派ってのは否定しないけどね」 そう言いグラスに入った水を飲む。 酒や、軽い注文を済ませて話を始める。 金田は酒が飲めないらしく、代わりにウーロン茶を頼んでいた。 「・・・獅童くん。 君は、なんでこの依頼を受けたんだい? 別に拒否することもできただろうに。 それほどまでに日吉という人は君にとって重要な人なのかい?」 金田は水の入ったグラスをいじりながらそう言う。 「別にそんなんじゃない。 でも、恩義は感じてるんだよ、俺は。 ・・・日吉はな、昔はかなり仲が良かったんだ。 小学生くらいの時かな。でも、なんだか疎遠になっていって高校卒業を期に日吉と俺は会うこともなくなった。 よく覚えてないんだけどよ、確かに覚えてるのは・・・日吉は良いやつだったんだ。」 「・・・というと?」 俺も水を一口飲んで喉を潤す。 「・・・小学生の時に、俺の母が死んだんだ。 通り魔だったよ。ナイフで腹を刺されてな。 その時に、俺は母の隣にいて、その始終を見てた。かなりトラウマだったよ。 人間は死ぬんだなってはっきりと分かった。 ・・・・・犯人はまだ見つかってない。」 「なるほど、そんなことがねぇ」 金田は適当そうな返事をする。 「・・・そんな時に、俺を支えてくれたのが、日吉だったんだ。あいつは昔から良くも悪くも人のことを気にする性格でな。 その時も俺を想って仲良くしてくれてた。 だから、少なからずあいつには恩があるんだよ。 あいつが死体を探して欲しいっていうなら、俺は協力する。 まぁ、だから依頼を引き受けたんだ。」 俺はそう言い少し苦笑をする。 「弁護士が死体探しとか、おかしい話だけどな」 「フッ、それはそうだ」 金田もクスリと笑う。 「お前には手伝わせて悪かったな。 それこそ、断っても良かったのによ」 「僕が断ってたら君は詰んでるだろ」 「そりゃそうだ。だから感謝してるよ」 俺がそういうと金田は恥ずかしげに頭をポリポリと掻く。 「・・・君が日吉に協力している理由はそれだけじゃないだろう?」 グラスをいじる指を止めてそう言う、 「・・・・まぁな。 ・・・日吉が、この件は俺にも関係があると、そう言ってきた。」 「それは、君の母親の件と何か関係がある、ということかい?死体が君の母を殺した犯人と、何か関係していると?」 「そうだろうなと思っただけだよ。 別に確信はないよ。」 「そうか」 「でも、どちらにせよこの謎は解く」 少しの沈黙が続く。 「・・・・てか、なんで急に飯食いに誘ったんだよ。」 「それは、だって、 ・・・・・・・・・僕と君は友達だろ?」 金田が俯き気味に言う。 俺はわざとらしくため息をした。 「30代のおっさんと20代の青年が友達だとぉ? めちゃくちゃ寒いじゃねぇか」 「べ、別にいいだろう」 金田は顔を赤くしながら顔を上げた。 その時、頼んでいた料理とドリンクが届いた。 「・・・・まぁ、頼りにしてるぜ、相棒。」 俺は酒のグラスを金田の前に出してそう言う。 「・・・・相棒の方が寒くないかい?」 金田はそう苦笑しながらも、グラスを前に出し、カチンと鳴らした。 次の日、俺は金田に呼ばれて家へ向かっている。 おそらく、倉間という人物について結果が出たのだろう。 倉間・・・・こよみさんの働いていたスーパーの店長・・・・・。 もしも、死体が倉間なのだとしたら、一体俺とどんな関係があるというのだ。 考えを巡らせている間に、金田宅へ着いた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 中へ入ってみると、そこには金田だけではなく、 佐川秀樹さんともう一人知らない男がいた。 「やぁ、来たね」 金田が手をひらひらとさせて俺を出迎える。 秀樹さんはこちらを見てペコリと頭を下げた。 「なんで秀樹さんが来てるんだ」 俺は小さい声で金田に問いかけた。 「こよみの件で、俺も協力したいと思ってよ。 邪魔だったか??」 秀樹さんがムッとした顔で俺をみる。 金田に言ったつもりが聞こえていたようだ。 「いや、そういうわけじゃないんですけど。」 俺は慌てて弁明した。 「・・・・俺も納得いってねぇんだ。 こよみの事件のことをよ。金田って奴のことも、それに、もう一つの死体のこと」 俺は金田に目線をやる。 なぜ秀樹さんが死体のことを知っているんだ。 金田は俺の視線を見てニヤリと笑った。 おそらく全てを秀樹さんに話したのだろう。 全く余計なことを・・・。 「それで、こよみの事件について詳しいこの兄ちゃんが色々話してくれるっていうから来たんだ」 そう言って秀樹さんはもう一人の男をみる。 茶髪の派手な髪色で、鋭い目つき。 スーツを着ていて、その上には緑のコートを着ていた。 第一印象は、目つきの悪いやばい人だった。 だが、おそらく年齢は俺よりも下で、どちらかというと金田の年と近い気がする。 その男が俺の方を見ると少しだけ頭を下げる。 俺もそれにならって頭を下げた。 誰?という風に俺が金田に目線をやる。 「こちらは刑事の羽場正義。 こよみさんの事件を担当してるんだよ。」 「おい、俺は巡査長なだけで別に仕切ってるわけじゃない」 羽場は金田の説明に訂正を入れた。 口調からしても、とても警察とは思えなかった。 「・・・・本当に警察?」 俺は思ったことを口にする。 「彼は僕と事件を追っていたことがあってね。 それで知り合ったんだ。 今回は無理言ってこよみさんの事件について調べてくれてたんだよ。」 俺の質問を無視して金田がそう言う。 だが、その言い方からして本当に警察なのだろう。 俺は挨拶をした。 「どうも。弁護士をしている獅童と申します。」 俺は再度ペコリと頭を下げる。 「羽場だ。このボンクラにこき使われて今ここにいる」 「そう言わないでよ、僕らの仲じゃないか」 金田がそういうと羽場は鋭く睨みつけた。 「・・・はぁ、あんたも大変だな。 こんな奴の相棒だなんてよ」 羽場は俺に同情の目を向ける。 「まぁ、頼りにはなりますから」 俺は当たり障りのない回答をする。 その後少し雑談をした後に本題へ入った。 「まず、俺がここに来たのは警察しか知り得ない情報をお前たちに渡すためだ。 だからニュースとかで報道してる内容は省くぞ」 羽場がぶっきらぼうにそう言う。 俺たちはコクリと頷いた。 「今から2つ話をする。 1つ目に被害者である佐川こよみの検死の結果が出たこと。 2つ目に佐川こよみの家についてだ。」 そう言うと馬場は話し始めた。
弁護士と探偵と死体1つ 5
午前、俺は昨日言われた通り こよみさんの働いていたスーパーへと足を運んだ。 ・・・まぁあらかた警察が調べているだろうが、話を聞いてみるか。 俺は裏口に周り、休憩しているパートをしているだろう婦人に話しかけた。 文言は前と同じように。 婦人は話し相手を見つけたのが嬉しいのか、以前の母親とは違い流暢に話し始めた。 「こよみさんが亡くなる前や、ここで働いている時のこととか教えていただけると助かります」 「そうねぇ。とてもいい人だったわよぉ、こよみさんは。レジ前でも笑顔を欠かさない人だったしねぇ。 というより、笑顔じゃない時の方が珍しかったんじゃないかしら。」 「・・・なるほど。では、日吉という人物をご存知ですか?」 「あー、こよみさんを殺した犯人でしょ? 怖いわよねぇ・・・。 でも、私は関係について知らないわ。」 「そう、ですか・・・。 他に何か、こよみさんが殺される原因とかって分かりますか?」 「知らないわよ、日吉って人も知らないんだから」 「ですよね。すみません、ご協力ありがとうございました。」 俺はその場を離れる。 特に収穫はなかったと言っていい。 昨日に立て続け、手がかりがなく残念だと思う。 分かったことと言えば、こよみさんは良い人だった、ってことだけだ。 俺がそう思い肩を落としていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。 振り返ってみると、先ほどの婦人であった。 「探偵さん、関係ないだろうと思ってたけども、ちょっと言っておきたいことがあってね」 婦人は息を整えつつ話す。 「こよみさん、いつもは笑顔を欠かさない人だったんだけどね、倉間さんがいる時は笑顔じゃなかったのよ」 「・・・倉間さん?」 「えぇ、うちのスーパーの店長だったんだけどね。 こよみさんのことを、その・・・・・。 よくいじめててねぇ。」 「いじめていた??」 「そうそう。 こよみさんにだけ当たりが強かったり、 夜遅くまで残らせたりしてて・・・・。 でも今回の事件とは関係ないわよね。 ごめんなさい、それを言いにきたの。」 「いえ、ご協力ありがとうございます。 その倉間さんは、今いらっしゃいますか?」 一応その倉間という人にも話だけでも聞こうと考えて、そう言う。 「それがね・・・・・・・ 倉間さん。最近、顔を出さないのよ。」 ・・・・・最近来ていない?? 俺はある事を考える。 ・・・死体のことだ。 もし、日吉がこよみさんをいじめていた倉間を殺したのだとすれば・・・・。 死体というのは、倉間という人物なのだろうか。 ・・・いや、だが少しおかしい気がする。 ではなぜ、日吉はこよみさんまでも殺したのだ。いじめられていたこよみさんまでも殺すのはおかしいだろう。 では、倉間は今回の事件とは関係のないことなのか? 俺は考えを巡らす。 「ーーーあの、もういいかしら?」 俺は婦人に礼を済ませて、とりあえず金田のところへ戻ることにした。 「倉間・・・こよみさんの働いていたスーパーの店長・・・さらに調べる必要がありそうだね」 金田はいつも通り椅子に座りながらそう言う。 「で、そっちはどうだったんだ?宗教について調べてたんだろ??」 「あぁ、おおよその見当はついたよ。 おそらく母親が魅入られていた宗教は、 "幸せ家族"だ」 「幸せ家族?」 「あぁ、最近発足したらしいね。 理念は「幸せな人生を生きられるように」だそうだ。いかにもヤバい感じなのはそこからも伝わってくるものがあるね。 今から調べた内容を言っていくからしっかりと聞いてくれ。」 金田はふぅと深く息をして話し始める。 「幸せ家族。1980年に発足。 幸せな人生を生きることを理念におき、活動をしている。小さい規模での活動が多かったが、最近ではかなりの支持者も出ているようだ。 おそらくこよみさんの母親もその一員だろうね。 「幸せ壺」と称される商品を半ば強制に売りつけて資金を得ている。その他にもお布施やら何やら・・・調べただけでも色々と出てきたよ。 それに、一番ヤバいのはここから。 入会した人たちは家族とみなされ、退会することは許されない。つまり入信したら抜け出せない。あと、洗脳もしてるらしい。 その洗脳によって、そもそも抜けようとする人すらいない。いやぁ、怖いね。 あとは禁止事項も色々あってね。 先ほど言ったように退会は禁止。 布施は絶対に1ヶ月に3万以上支払うこと、 それ以下は禁止。 他人を傷つける言動は禁止、自殺は禁止。 ・・・・とまぁこんな感じかな。」 俺は聞きながら息を呑んだ。 「・・・ヤバい宗教すぎるだろ」 「ね。怖いね」 金田は他人事のように言う。 「とりあえずこれが全容かな。 今回の事件に関係あるから分からないが、知ってて損はないだろうね。」 金田は席を立ち、横に置いてあるお茶をぐいっと飲み干す。 「・・・じゃあ倉間についてはまた調べておくよ。それより、もう夜も遅いね。」 金田はどこかそわそわしているようだった。 「あぁ、そうだな。俺も帰るよ」 「待ちたまえ。今回の件は解決するまでにかなりの時間がかかりそうだ。 僕たちも、もっと仲良くなっておきたい。」 「唐突だな。それとなんか気持ち悪いな。」 「飯でも食いに行こうじゃないか、獅童くん」 金田はコートを着込み、俺にそう言った。
弁護士と探偵と死体1つ 4
金田宅、扉を開けると見覚えのある閑散とした部屋が広がっている。 秀樹さんを先に案内しつつ、扉をしめて俺も中に入った。 「何もない所ですけど、どうぞ」 「なんで君がそれを言うんだ。家主は僕だぞ」 奥の椅子に座っていた金田がこちらを見る。 「なるほど、あなたが秀樹さんだね? では、こちらに座ってくれ」 そう言い座布団の上を指差す。 どうやら椅子は金田の座っている1つしかないようだ。 「・・・・・・なんもねぇな。ここ。 レストランとかの方がよかったんじゃねぇか?」 秀樹さんは部屋に入った途端、不満をこぼした。 「何もないのがいいんじゃないか。分かってないね、君は」 それに対して心外だとも言いたそうに金田がぼやく。 「すみません。こいつ外に出たがらないんで、 ここで勘弁してやってください。」 なぜ、俺がフォローしなければならないのだろうか。そう思いつつ俺も壁際に立って本題に入ろうとする。 「秀樹さん、じゃあ色々教えてもらえますか? まずは、こよみさんの事件で、何か知っていることはありますか?」 「・・・・・・・・・」 秀樹さんは間を置いて話し始める。 「・・・こよみの事件についてはよくしらねぇ。前にニュースをやってたのと、警察が家に来た時に言ってたことだけだ。 こよみは、日吉ってやろうに殺された、ってな。何回も刺された跡があったって話だろ? 俺はそれくらいしか知らねぇ」 「・・・なるほど、ではこよみさんが亡くなる前の状況とか、教えてもらえますか?」 「こよみは実家にはめったに顔は出さねぇからな。もうかれこれ5年は見てなかった。 だから知らない。」 母親が言っていた通り、こよみさんはあまり実家に帰っていなかったようだ。 「ということは、母親の言っていたように、最近のこよみさんの人間関係とかも知らない、と」 金田が腕を組みながらそう言う。 「ああ、全くだ。なんせ、あいつは母が嫌いだったからな。家に顔も出さないわ、電話も寄越さないわで本当に疎遠だったよ。」 「なぜ、嫌っていたんですか??」 「・・・・・・・」 秀樹さんの顔が少しだけ歪む。 それは悲痛な顔のように見えた。 「・・・母はな、昔から変なんだよ。 特に、親父が死んでからはそれが加速した。 俺が小さかった頃から、飯を食べる前に変なお経を唱えたり、親族の葬式の時には白装束の婆さんが来て、変な舞をしたりするんだ。」 「・・・・というと??」 「・・・・・・・・・宗教だよ。 母はそれにどっぷりとハマっててな。それで、こよみは母を嫌っていたんだ。 別に、普通の宗教なら、こよみも嫌ったりしないさ。でも、母の信仰心は異常だったよ。 ・・・1年に一回、どこからともなく壺を買ってくるんだよ。 それだけじゃない。 月に10万の金を教会に払ってる。 ・・・分かるか?これは普通のキリストだとか、仏教とは違う。もっと危ない宗教なんだよ。」 「なるほど」 「・・・正直、俺もこよみも何回か止めたんだけどよ。 母は聞く耳を持たない。それどころか俺たちも勧誘しようとしてくるんだ。 それから時が経って、俺もこよみも諦めたよ。 今も壺が増え続けてる。 ・・・これが、こよみが母を嫌ってる理由だ」 「では、秀樹さん、あなたは?」 金田がわざとらしく彼に向かって指を指す。 「何がだ」 「君は、母親を嫌っているのかい?」 「・・・・・・・・・」 秀樹さんは少し考えたのちに口を開く。 「・・・俺は、母が好きだよ。 ・・・別に、こよみも母のことが真に嫌いだったわけじゃないと思う。 俺の言い方が悪かったな。あいつが嫌ってたのは、どちらかというと宗教の方かもな」 「なぜ、そう言えるんですか?」 「・・・電話も寄越さないって言ったな。 家には電話しなくても、俺には何回か電話があった。家のこととか聞いてきてよ。 ・・・いつも母の体調は大丈夫か、って聞いてきてたよ。だから、あいつは母を嫌ってるわけじゃない。そう思うよ。 ・・・おれが話せるのは、このくらいだ」 秀樹さんは話終わったあと、少しだけ悲しそうな顔をした。 「・・・・ありがとうございました。」 その後、俺は秀樹さんを駅まで見送った。 「・・・少しまとめようか」 金田の家に帰ってきたら、突然金田がそう言う。 「こよみさんは家には顔を出さなかった。 だから、母親も秀樹さんもこよみさんの最近の様子は知らなかった、と」 「・・・つまりは無駄な時間だったってわけだ」 俺はガクッと肩を落とす。 「・・・いや、そう決まったわけではない」 金田がそう言う。 「宗教というワードを新しく手に入れた。これで何か分かるかもしれない。」 「・・・そうかぁ?関係ない気もするが」 「関係ないと思ったことが案外、的を射ていることもあるもんだよ、獅童くん。 では、次はこちらでその宗教について調べてみるよ。」 「おいおい待て。そういやぁ俺が佐川家に行ってる間こよみさんの事件について調べるんじゃなかったのかよ。」 「あぁ、そのことを忘れてた。今共有するよ」 金田はそう言い話し始める。 「まず、こよみさんと日吉の関係性について。 こよみさんと日吉は、どうやら恋人同士だったようだね。」 「え?そうなのか?」 「あぁ、調べたらすぐに出てきたよ。 君はもっとリサーチ能力を高めるべきだ。」 俺は言い返す言葉も思いつかなかった。 「それで、もう結婚も視野に入れていたようだ。 それは、こよみさんのブログを見て分かったよ。でも、家族にもそれは伝えてなかった。 さっきの秀樹さんが日吉のことを知らない口振りだったからね。」 「そうだな」 「・・・でも不可解なのはここからだ。 日吉がこよみさんを殺す動機が見つからない。 調べた内容だと、2人の仲はとても良好だったらしい。 なぜ、日吉がこよみさんを殺したのか。 それがいちばんの謎だね」 「・・・・なるほど」 「と、いうことで獅童くん。 明日はこよみさんの働いていたスーパーにでも行ってきてくれ。」 「働いてた場所が分かったのか?」 「あぁ、彼女のブログの写真から位置を割り出して、他の写真なども漁ってたんだよ。 その過程でスーパーで働いているところが写っている写真を見つけた。」 「お前すげぇな」 「天才だからね。じゃあまた明日、情報収集が終わったらここで」 そう言って、俺たちも別れて家に帰った。 ・・・佐川家の宗教関係、日吉とこよみさんの関係、なぜ殺したのか・・・。 そして肝心な、もう1つの死体。 俺たちは、いつ事件の真相に辿り着けるのだろうか。
弁護士と探偵と死体1つ 3
俺はベルを鳴らす。 3回ほど鳴った後、家の玄関の戸が開いた。 「はい、どちら様でしょうか??」 中から出てきたのは60代ほどに見える女性だった。その相貌からして、おそらくこよみさんのお母様だろうと思う。 「どうも、初めまして。私こういう者です。」 俺はポケットからあいつが準備した名刺を取り出す。 そこには、"金田探偵 助手"の文字と俺の名前が書かれてあった。 ・・・・助手というのは少し癪だがこの際仕方ない。 「私は、金田探偵の助手をしております。 獅童と申します。 今回はこよみさんの件でうかがいました。 金田は現在、他の依頼の最中でして、代わりに私が出向いた次第でございます。」 相手の警戒を解くために、わざわざ回りくどい挨拶をした。 怪しいやつと思われるのだけはごめんだ。 「まぁ、そうでしたか。私はこよみの母です。 ・・・でもこよみの件はもう済んだことですので、今更なにも聞かれることはございませんよ?」 こよみさんの母親はそういいながら首を傾げる。 このまま門前払いされると、なんの情報もなく帰ることになってしまう。それではダメだ。 「こよみさんの事件、まだ不可解なことが多いと思われます。例えば犯人との関係だとか。 そういったことをお伺いしたいのです。」 「それであれば私は何も言えることはございません。こよみの人間関係はまったく知らないので」 「ですが、こよみさんの人柄などはよく知っているのではないですか? 私たちはしがない探偵。そういった小さい情報から大きい情報へと繋げるのです。 できればご協力を・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・」 ここは逃さないという俺の意思が伝わったのだろうか。女性は口をゆっくりと開く。 「では、少しだけ。 こよみは小さい時から、私のことか嫌いだったそうです。中学生の時辺りから、ずっと私を避けているような気がしてて・・・・。 大学を卒業した後、逃げるように都心へ行ってしまって・・・。 だから本当に最近、あの子とは連絡も取ってなかったんです。 それで急に殺された、と聞いてね。 本当に驚きましたよ」 「それは、ご愁傷様です。」 「もういいですか?私、夜ご飯の支度がありますので」 ・・・これ以上、相手は話す気はないようだ。 「はい、ご協力、ありがとうございました。」 俺は頭を下げてきた道を戻る。 しかし、ほとんど何も収穫はなかったと言ってもいい。 そもそも俺たちが探さなければならないのは、 死体だ。母親とこよみさんの関係など聞いて、何になると言うのだ。 俺は考えながら駅を目指す。 「「ーーーーーーおい」」 ふと、カバンから小さく声が聞こえる。 俺はカバンを耳元へ持っていく。 「どうした。何かあったか??」 「「お前、今つけられてるぞ。」」 金田がそう言った。 俺は反射的に後ろを向きそうになる。 「「いや、後ろは向くな。勘づかれたら何をしでかすか分からないぞ。 とりあえず、このまま歩いて駅を目指せ。」」 「ちょっと待て。なんで俺が付けられてると分かった。」 「「足音が遅れて2重になって聞こえてきた。 お前のいる通りは普段この時間帯人通りはない。調べたからな。 それに、お前の歩幅にあって少しずつ近づいてきているように聞こえる。」」 「それだけ??」 「「用心は必要だろう。それに、話している感じあの母親は何かおかしかった。 誰かつけさせててもおかしくはない。」」 そんなわけない、と思いつつも、金田の情報力には目を見張るものがあると感心する。 確かに、耳をすませてみると足音が後ろから聞こえているのが分かる。 だがそれを、カバンの中に入った無線機から聞いたのだとすると、すごい洞察力だ。 俺は言われるがまま駅を目指した。 「「・・・・そこの路地裏で、正体を暴くぞ」」 少し歩いた後、金田がそう言う。 俺は、路地裏へと入った。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 路地裏、一人の男が入ってくるのが見える。 「・・・・どこいった??」 男がそう呟く。どうやら俺のことは見えていないらしい。 「「探しているのは、誰だい?」」 そうカバンの中から金田が声を出す。 男は自然に視線をカバンの方へやった。 しかし、そこには俺の姿はなく、カバンがあるだけだ。 「「ひっかかったな。獅童くん、ひっ捕えろ」」 俺は、男の背後にあったゴミ箱から身を乗り出し、男を捕える。 「あんまり俺を動かすなよ。俺だってもう全力で体を動かせる年齢じゃなくなってきてんだよ」 そう、これは作戦であった。 俺は路地裏にあった大きめのゴミ箱の裏に隠れ、金田が言葉を発して視線を誘導。その隙に俺が捕えるといった感じだ。 それがうまくいってほっとしたと同時に、俺の握力で捕らえられるかが不安であったが、 それもどうやら問題ないらしい。 男は俺を振り解く素振りすら見せなかった。 「さてと、あんたは誰だ。なんで俺の後を追ってきたんだ。」 俺は威圧的にそう言う。 すると、相手はゆっくりと口を開いた。 「・・・あんたら、こよみと何の関係があんだよ。何嗅ぎ回ってんだ。」 「「僕たちは別に悪くしようって訳じゃない。ただ、こよみさんについて調べてるだけだ」」 「それが怪しいっていってんだよ、この野郎」 男の口調が強まる。何か、関係のある人物なのだろうか。俺は男を捕まえる腕に力を入れる。 「「君は佐川秀樹だね?こよみさんの兄だ。それしか考えられない。 なぜなら今の所僕たちの調査は始まったばかり。僕たちを狙うにしてもまだ調査が進んでいないのだから、嗅ぎつけたのはさっきの時しかあり得ないはずだ。 君はおそらく母親と獅童が話しているのを窓から見ていたんだろう?」」 「・・・お前ら、何者だ」 「俺たちは探偵だ。こよみさんの事件について迫っている」 本当は死体を見つけることであるが、ここでそれを言うのはややこしくなるだろう。 「「君が探偵を名乗るとは・・・」」 「うるせぇ」 「・・・事件、か。なら、母親は頼りになんねぇよ。離してくれ。俺が色々教えてやる」 俺は、彼の拘束を解く。 彼は腕をぐるぐると回してストレッチをする。 「俺はあの兄ちゃんが言ってた通り、佐川秀樹だ。つけたりして悪かったな。 こよみの事件の関係者かと思ってよ。」 電灯の灯りで秀樹さんの顔が少し見える。 秀樹さんはバツが悪そうな顔をしている。 秀樹さんの見た目は、とても汚らしい印象だ。 いや、文字通り汚いと言うわけではなく、 髭を乱雑に伸ばしたような、手入れされていない感じで、帽子を深く被り顔色も悪く見える。 「「話を聞くなら、こちらに戻ってきてくれ。 彼を連れて、お茶でも出そうじゃないか。」」 俺は秀樹さんを連れて、再び金田の所へ向かった。
弁護士と探偵と死体1つ 2
俺は弁護士で、30のおっさんだ。 最近カツ丼も目一杯食えないし、ちょっと走るだけで息切れするようになってきた。 ・・・・そんな俺に、あいつは死体探しをしろってか、クソが。 とりあえず、手当たり次第というわけにはいかないだろう。一介の弁護士に、一体何ができると言うのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・はぁ、 あいつの力を貸してもらうしかないか・・・ 俺はガクッと肩を落とす。 路上で落ち込んでいる俺をみて、周りの人たちは邪魔そうにみてくる。 俺はその人たちを一瞥してから電車へと向かった。 ーーーーーー電車で数十分とちょい、 俺はある場所につく。 そこは廃ビルのように廃れた3階建てのアパートであり、そこら中からツタが伸びて巻き付いている。 俺はその3階の奥手にある303号室のベルを押した。 「ーーーーー俺だよ。獅童だ。」 「・・・・・・・・・・・・・・」 中からの応答はない。 だが、中にいるということは分かっている。 「・・・・はぁ」 俺はため息をつく。 「俺は別に帰ってもいいんだぞ。 ただ、"天才名探偵"のあんたの力を貸して欲しいだけだ。できないなら帰る」 俺がそう言う。と、中からガタガタと足音が聞こえてくる。 あいつは、天才というワードに弱い。 これを言えば無条件で協力してくれるだろうと言う実感があった。 そして案の定ーーーーー部屋から出てきた。 「・・・今、この僕の天才の頭脳を借りたいといったか???獅童くん」 中から出てきたのは、ボサボサの黒髪に日焼けのない真っ白い肌。目にはくっきりと隈のある男だった。 「あぁ、天才に力を借りたいのだよ、金田くん」 彼の名前は金田一郎。20代の探偵だ。 別に名が売れているわけでもないが、俺が仕事をする際に何度か助けられたことがあった。 彼は警察とのコネもあり、情報を収集する能力にしてもピカイチだろう。 それもあって今回の件、金田の助けが必要だろうと考えたのだ。 ・・・だが、鼻につく奴なのだ、こいつは。 自分が天才だと自負しており、いつでも自尊心だけは高い。 まぁ簡単に言うと、話すのが疲れる相手なのだ。 「まぁ、入りなよ。獅童くん」 「俺が年上なんだから、敬語くらい使って欲しいんだが」 「何?君は僕に頼みにきた立場なんだろう?それならば君が敬語を使うべきじゃあないか?」 「・・・・・・・・・・・ めんどくせ。じゃあどっちでもいいわ」 「じゃあ僕も敬語は使わない。 じゃあ話が一致したところで中に入りな」 俺はため息をつきながら中へと入る。 中は思ったより片付いており、人は見た目によらないなと思う。 というよりは、ミニマリストといった方が適切だろうか。全くといっていいほど家具がない。 「・・・じゃあ、本題を話してもらおうか」 金田は偉そうに1つ置いてあるパイプ椅子に座り、指を鳴らす。 「まぁ、察しはついているよ、獅童くん。 君は今、弁護の仕事をしている。 そして、その弁護相手について、知りたいんだね?」 「・・・ちょっと違うな」 「ほぉ、では、聞かせてもらおう」 ーーー俺は全てを金田に伝える。 「ーーーーーてことで、俺はそのもう一つの死体を探さないといけないんだ。」 「なるほど。では共犯ということで警察に通報するよ。」 「ちょ、まてまてまて!」 「ふっ、冗談だよ」 ・・・・ほらな。やっぱりこいつと話すのは疲れる。なんというか、俺と性格が合ってない。 「じゃあ、協力はするよ。おもしろそうだしね。 ・・・そうだな。僕はまず、佐川こよみさんの事件について調べるよ。 だから、獅童くんはまず佐川さんの親御さんに話を聞きに行ってよ」 「え?ちょ、ちょっと待て。お前は来ないのかよ」 「あいにく僕は日に当たると死んじゃうからね。 僕は頭脳を。君が足となって解決していこうじゃないか。」 「・・・・また冗談ってわけが」 「まさか、じゃあ頼んだよ」 そう言いながらパイプ椅子をくるりと回しデスクの上に置かれたパソコンを操作しだす。 俺は言われるがまま動くしかないようだ。 外に出て、佐川家を向かうことになった。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 佐川家 獅童の調べより、家の場所を割り出したらしい。 本来、弁護士が相手の家へお尋ねすることなどはまずない。 あるとしてもまず連絡などをとって、礼儀を見せることから始まる。 だが、今回俺は弁護士としてではない。 日吉の知り合いとして会うべきだろうか。 「「ーーーーそれはだめなんじゃないかな」」 考え込んでいると、俺のバッグの中から声が聞こえる。その声は、金田だった。 「な、お前盗聴器なんて仕掛けたのかよ」 「「そうだよ。僕の家に入ったら、いつ仕掛けられてもおかしくないと思いなよ。 それより、君には探偵として会ってもらった方がいいと思うよ。」」 俺の考え事が口から漏れていたのだろうか。 金田は見透かしたかのように続ける。 「「君のバッグに君専用の名刺を入れておいた。 それを使えば、捜査している探偵という程で話を聞ける」」 バッグを開くと、名刺らしきものが数枚押し込まれている。 「余計なことを・・・」 「「でも、これで話が聞けるね。 僕はここから話を聞いておくよ。カバンは近くに置いておいてよ。遠ければ聞こえづらくなるからさ」」 俺はそのまま金田のペースにのせられつつ、 佐川家のベルを鳴らした。
弁護士と探偵と死体1つ 1
真っ青で、快晴な空。 そんな空が、俺の頭上に広がっている。だが、俺の気分はそんな晴々したものじゃない。 俺は今、拘置所に向かっている。 俺の友人が、殺人で逮捕されたからだ。 俺は獅童和夫。30のおっさんで弁護士だ。 キャリアとしては8年と長い間積んできた。その中には、大きな事件の弁護で勝ち取ったこともある。 だがまぁ、最近の業績としてはまぁまぁって感じだ。特別すごい弁護士とかではない。 今回も、久しぶりの依頼だった。 目を疑ったよ。弁護相手は、俺に依頼をしたのは、友人である日吉からだった。 なんでも、殺人で捕まったとか。 俺は、その全容を聞くために拘置所に会いに行っている、というのが今の状況だ。 といっても、事件についてはあらかたはじめに調べておいた。 殺害されたのは佐川こよみさん、29歳。 自宅のリビングで倒れているのを大家さんが発見した。 ご遺体にはナイフで複数箇所の刺し傷があり、死因は失血死。現場に残されていた1本のナイフから指紋が検出された。 その指紋が、日吉のものであった。 ・・・これが、調べた限りでの情報だ。 ・・・・正直、友人と言っても日吉とは知り合いみたいな関係といっても良い。 高校生の頃はかなり付き合いもあったが、それからは全くだった。 久しぶりの連絡が依頼だったのは意外だったというか・・・・。 元々そんなやつではなかった、気がする。 ましてや殺人など・・・・・。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 拘置所、俺は受付を済ませてホールで待つ。 少し経つと、奥の部屋へと案内された。 ガラス1枚を挟んだ縦長の部屋。 そこにはガラス面から見て対になるように 椅子がある。 片方の椅子に座って待っていると、奥の扉が開く。 そこには、日吉の姿があった。 警察につられて部屋に入り、椅子に座らされている。 日吉は俺の顔を見た途端に、笑顔を見せた。 その笑顔は、どこか不気味だった。 照明のせいな気もする。とにかく不気味だった。 「・・・・獅童、久しぶり」 優しく語りかけるように、俺に言う。 「あぁ、久しぶりだな」 「高校卒業ぶりだよな? お前が弁護士やってるって知っててよかったよ。 あの頃は楽しかったなぁ・・・。 ほら、修学旅行でさぁ・・・」 「おいおい、別に俺は昔の話を聞きに来たわけじゃない。本題に入ろう。 ・・・・お前が俺に弁護をして欲しい内容は、殺人についてなのか??」 「・・・・・・・・・・・」 吉野は張り付いたような笑顔を硬直させ、俺の顔を見る。 「・・・・僕は殺しを認めるよ。裁判をするつもりもない。僕が彼女を殺したんだ。」 笑顔のままで、続ける。 「獅童をよんだのは、弁護のためじゃない。 友達として、頼みたいことがあるんだ。」 「・・・・なんで俺に?」 「だって、こんな俺のところに来てくれる人なんていないだろう? だから、君を弁護士として雇って半強制的にここへ連れてきたんだ。」 「・・・それは賢いな」 「だろう?仕事なら、僕のお願いを聞いてくれるかい?」 「俺の仕事は弁護することなんだが、 ・・・まぁ、話だけなら聞こう」 日吉は昔から変わったやつだった。 だが、こんな形で再会し、しかも頼みごとなどを言われるなんてのは、思いもしなかった。 だが、金を払ってくれるならば引き受けても良いだろう。 この時の俺は、そのように考えていた。 まさか、あんなことになるなんて・・・・・ 「よかった。じゃあ、早速頼みなんだけど、 僕が殺したのは、佐川こよみさん。 でも、それだけじゃない。 僕は、もう一人殺したんだ。」 俺はピクと体を動かす。 「・・・もう一人??」 「あぁ、僕はもう一人、人を殺した。 ・・・でも、死体が見つかっていないんだ。 ふふっ、そりゃあそうだ。だって完璧に隠してるんだからさ」 日吉はいつもの調子で続ける。 「・・・・でも、俺も実際にどこへ隠したのか忘れてしまってね。 それじゃあ困るんだ。 だから獅童。警察より先に、俺の隠した死体を見つけてくれないか??」 日吉の顔が少し歪む。 俺の顔は、おそらく怒りだったのだろう。 机をバンっと叩いて見せた。 「お前、ふざけるなよ。 遺体を探せだって?それも、警察より先に? 見つけた後はどうするつもりだ。 俺を巻き込もうとしているのか?? それに、隠した場所を忘れたなんて、 おかしいだろ。」 「初めての殺しで気が動転してたんだ。 だから、忘れてしまったんだよ」 「そんなの屁理屈だろ。 お前、俺に何させる気だ。」 「・・・・・・・・・・・」 日吉は笑みを壊さずに話す。 「獅童、お前にも関わることなんだ。 今は言えないが、協力してくれ」 「俺に関わるってーーーーー」 「時間です」 日吉の後ろに座っていた警察がそう言う。 日吉はそのまま席を立ち、去っていく。 俺は、ただ黙るしかなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 日吉は、俺に関係することだといっていた。 日吉の殺した、もう一人の人物・・・ まだ警察も嗅ぎつけていないことなのだろうか。 ニュースも記事も含めて、今回の事件で取り扱われていたのは佐川こよみさんのことばかり。 死体を探し、警察より先に見つける・・・。 ・・・・・・・・・俺に関わること・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ 仕方ない。調べるだけ調べようか。 そうして、俺の探偵じみた、 死体を探す物語が始まった。