犬飼 拓海

14 件の小説
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犬飼 拓海

小説家になろうやカクヨムなどで執筆、投稿をさせていただいている十代前半物書きもどきです。  Noveleeでは基本的に一ページから三ページ程度で終わる超短編(主に恋愛)を投稿する予定です。どうぞご贔屓に

二年越し

久しぶりに時間ができたので、ブラウザのブックマークからこの場所に戻って来た。 最後の投稿は一昨年の三月。よく見ればユーザ・インタフェースも洗練されていて 気が付けばそんなにも経っていたのかと、時の無常さをほんの少し感じた。 去年の今頃は何をしていただろうか、全く覚えていない。 バックナンバーを遡ると、中学生の時のエピソードで埋め尽くされている。 もう戻ることのないあの日を思い出して、ちょっぴり懐かしさを覚えた。

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2025.12/02 広島県呉市 仁方

仁方の駅に繋がる県道二六一号線はまだ薄暗く、朝焼け前の澄んだ紫色の光に包まれていた。びゅうと強い南風が吹いて、私の体温を奪い、また少しばかり伸びた髪を揺らせる。 −最後に恋をしたのはいつだろう 三十路をすぎてからはそんな経験は一切ないし、異性とは仕事以外で関わらなくなった。 ほんの少しばかり寂しさを覚える心をよしよしと慰めながら、朝六時台最後の列車がやってくるホームでスマートフォンを開いた。

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尽果

「ごめんね」 小さく零れた彼女の声は、予想の通りそっくりそのまま 「いきなり悪かったね」 僕はそう言って踵を返し、家路を辿る。 やっぱり好きとか、そういう救いが欲しかった。 イヤホンから流れる爽やかな曲は、余計に僕を苦しめた。

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運命

塾の帰り道、女友達の家に成り行きで寄った。 彼女は僕の想い人。好機はここだと意気込んだ。 「久しぶりだね。髪伸びた?」 数ヶ月ぶりの君の声。やっぱり緊張してしまう。 「ねえあのさ」 揺れる心を必死に抑え、今紡ぎだそうその言葉。

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受験生の嘆き

金曜日、二十二時半の塾の終わりと共に僕の一週間は終わる……はずだった 「犬飼くん、入対(入試対策講座)なんだけど」 そう言って渡された予定表には 12/18 08:30~16:50 12/19 08:30~16:50 鬼のような文字が踊っていた。 そして今、僕は塾に監禁されている 僕の土日を返してくれ

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ペットボトルの逆襲

友人のペットボトルを使ってボトルフリップに挑戦した帰り道 僕が投擲したそれは美しい軌跡を描きながら地面に激突してとてつもない形へと変貌した。 その次の友人の番。彼は何を血迷ったのか勢いよく地面に叩きつけた。 −直後、キャップが破裂する 中に入っていた液体は見事に僕の制服を濡らした。 「ふざけるな」と心で叫んだ。

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テキサスからのお友達

同郷の友人に、テキサスに数年間住んでいたやつがいる。 よく彼の話す英語を聞いてみると何かがおかしい。 「many thingsって言ってみて」 「メニィングス」 "T"の発音が抜けていた。どうやらテキサスはそうらしい 私も彼に同じことをされ、「many things」と言った 僕はイギリス発音だった。 発音はイギリス イントネーションはオーストラリア 喋り方はアメリカ どうしてこうなった

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ゲーミング?

先日、ゲーミングマウスとキーボードを購入した。 手触りは良好、使い勝手も良さそうだった。 ただ一つ、気になることがある 「……いや光りすぎだろ」 近頃のゲーミング需要が謎すぎる。 やはりマットな黒か白が周辺機器らしい色であると感じた。

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詳しすぎるクレーマー

ある駅の窓口の前に一人の男が立っていた。 「やらかしてくれたねぇ!ガム踏んだじゃねえかよ」 「それは申し訳ありません……」 「じゃあ弁償してもらおうか」 「それは致しかねます……」 彼は駅員相手に飛躍した理論を見せつけ、屈服させようとする。 「お前じゃ話にならん!管区長を呼べ!」 「管区長は今いないですね」 「じゃあ助役呼べ、助役」 「助役は会議に出ております……」 「なんだよもう!じゃあ一級駅務係!」 「今隣駅におります……」 「じゃあ二級駅務係は?!」 「本日は非番です……」 「もういい!三級駅務係!」 「三級駅務係は……ってあなた詳しすぎでは……?」

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あたまのわるい皿屋敷

誰かの声が聞こえる。 「一枚……二枚」 数える声の度にかちゃんかちゃんと皿が置かれる音がする。 そして十枚目を数えた時、がしゃんと皿が割れた。 「十枚足りない〜」 そう声が聞こえたのはその直後のことであった。

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