2025.12/02 広島県呉市 仁方

仁方の駅に繋がる県道二六一号線はまだ薄暗く、朝焼け前の澄んだ紫色の光に包まれていた。びゅうと強い南風が吹いて、私の体温を奪い、また少しばかり伸びた髪を揺らせる。 −最後に恋をしたのはいつだろう 三十路をすぎてからはそんな経験は一切ないし、異性とは仕事以外で関わらなくなった。 ほんの少しばかり寂しさを覚える心をよしよしと慰めながら、朝六時台最後の列車がやってくるホームでスマートフォンを開いた。
犬飼 拓海
犬飼 拓海
小説家になろうやカクヨムなどで執筆、投稿をさせていただいている十代前半物書きもどきです。  Noveleeでは基本的に一ページから三ページ程度で終わる超短編(主に恋愛)を投稿する予定です。どうぞご贔屓に