てまきまき

4 件の小説

てまきまき

はじめまして

お花見

きょうはおはなみ ぱぱもままもたのしそう さくらがいっぱいさいてかぜにとばされて たのしそうだ。 さいてないつぼみものこってる まるでぼくみたい かみさまどおかぼくのあたまがよくなりますように

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自白

自白します。あれは一体いつの冬だったでしょうか。詳しいことはあまり覚えていませんが。私は重大な罪を犯しました。私は人を殺したのです。それも大勢。私は今朝ふと自分のしたことの重さに気づきこうして自首することを決めました。 はじめに殺したのはいつでしょうか。はっきりとは覚えていませんが、私は幼い頃から死体が好きでした。死体は嘘を吐かないし何よりも一緒にいて疲れないからです。彼らは絶対に裏切らないので、彼らなら真の意味での永遠の愛を誓うことができます。 さて話を戻してはじめに殺した人の話をしましょう。私がはじめに殺したのは母親です。私が母親を殺したのには理由があります。それは母を大層愛していたためです。いや愛していたと言うと語弊があるかもしれません。私は今でも彼女のことを愛していますし後に殺した兄も父も私は深く愛しています。次に殺したのは同級生の女の子です。彼女は非常に良い肉付きをしていました。私は彼女で童貞を捨てそれから長い間愛し合いました。彼女の肉はもう腐りついには消えてしまいましたが私は彼女のことを今でも愛しています。私がこのような話をすると大抵の人が顔を顰め怒りか気持ち悪がります。 私にはなぜ彼らが私をいや彼らには理解できない私たちを人間として扱わないのかが非常に気になるのです。彼らは意識的或いは無意識的に私たちを自分たちとは違うモノとして一線を引きます。彼らは自分達に関係のないことでも私たちのようなマイノリティには排除的姿勢をとります。私は彼らのような自称人間のような奴らが人間とは違うモノになる瞬間のことが愛しくてたまりません。私は人を殺す時 必ず質問をします。それは助けて欲しいかどうかです。この質問にはいと答えた人に次に身近な人を1人紹介するよう求めます。私はその要求で、自身に近い人ほど高ポイントを差し出すことを約束します。自身に一番近い家族は10ポイントです。 私は彼らに10ポイントで解放することを誓います。 これが私の犯罪のカラクリです。 つまり多くの場合が自身と交流のある他人10人を差し出すのです。私は10人を紹介してもらいその人を殺しました。次はその10人が10人を紹介と 殺しきれないほど多くの人が集まったのです。 そうして私が大学を卒業する頃には数えきれないほどの人数を殺しました。そうして殺すうちに私はただ殺すだけでは満足できないようになっていました。私は彼らを部屋に閉じ込め最大限の苦痛を与えてから殺すことに生きがいを見出しました。また女であるならば孕ませて子供を産ませるのです。その子供を目の前で殺すうちに大抵の女が自ら殺してくれと言うようになります。私は天邪鬼なので彼女たちにしっかりとご飯を出します。特に彼女らの子供を丸焼きにして彼女らに出した時の彼女たちの顔と言ったらすごく堪らなかったです。私はまた、死体を食べることが好きです。特に赤子の臍の緒は別品で豚や牛なんかとは比べ物にならないほど美味しいです。さて刑事さんこれくらいで話は済んだでしょうか。私の話からも分かる通りこの間の殺人事件を起こしたのは私で間違いがありません。なので彼女を、私の妻を解放してやってください。彼女は何も知らないんです。

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お花見

きょうはおはなみ おかあさんもおとうさんも きょうはたのしそう さくらがさいてる さいてないつぼみもあるよ まるでぼくみたい かみさまいつかぼくのあたまがよくなりますように

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あの桜が咲く丘に彼女はいる。

電話は来なかった。 きっと私と言う存在は不要だったのだろう。 私はため息一つをこぼし完成した絵に布をかけた。 これで何度目だろう。もう10回は応募してきた浜松絵画コンクール、審査は通るのだが入賞したことは今の一度もないままである。気づけば同級生たちは子供を持つことが当たり前になり四捨五入すれば余裕で40になる年になってしまった。桜の花びらは幾度となく咲いては散りそんな景色を私はマンションの窓から眺めてきた。何回目のコンクールだっただろうか。私は美しい桜の絵をコンクールに出した。その絵にはこの桜のように花開きたいと思いを込めたのだが、その思いは今の今まで叶うことはなかった。このまま私は先もせずに散っていくのだろうか、ひどく怖い。あの時に見切りをつけてやめておけば良かったとひどく後悔している。いやきっと今からでも遅くないはずだ。履歴書はきっとそこらの人間に劣るだろうが、真面目に生き直せばきっとサラリーマンとしてそこそこな収入くらいは稼げるだろう。いや稼げなかっとしても今の職業よりはずっとマシなはずだ。そんな思いを頭の中で巡らすとひどく吐きそうになった。それに私は問題を抱えている。まぁ今日を生きるためにはこんな思いは不要だ。そう思い蓋の空いたぬるいビールを喉に流し込み眠ることにした。目を覚ましたのは5時過ぎだった。流し込んだビールはまだ抜けてないらしい。痛い頭を押さえながら冷蔵庫にある水を取りに行く。冷蔵庫を開けようと手を伸ばした瞬間ふとあるものが目の前を横切る。それは桜の花だった。開け放した窓から風に飛ばされ流れ込んできた花びらが宙を舞っている。どうやらこの花弁だけが入ってきたのではなく他にも似たような弁達が床に散らばっている。不思議なことに私は窓を閉め弁達を掃除すると言うことが思い浮かばなかった。と言うより今を生きる学生のように燃えるような生のインスピレーションが湧き上がってくるのを感じたのだ。私は流れ込んできた桜を見るため部屋を出ることにした。あたりは少し夕暮れがかっていた。どうにも今日は昼が長いようなそんな不思議な思いを抱えながら道を歩いた。窓のそばに差し当たった時不思議な感じがした。何とも形容し難い不思議な思いだ。それは運命が手招きしているような。誰かに呼ばれているような。または少し緊張し恐怖すらも感じるような感じだ。桜の並木は風に吹かれて私を招いているかのように見えた。しかし不思議なことに私は風以外の音を感じなかった。小鳥も虫も人間すらいない世界に迷い込んでしまったかのように。そんな呆気に取られている私を現実へと歩いはもっと他の世界へと連れ出したのは音楽だった。私は楽器には詳しくないがおそらくチェロ?だろう。バイオリンとはどこか違う。この曲はバッハだっただろうか確かプレリュード、日本語で言うところの前奏曲というやつだった気がする。まるでこの音楽は私を翻弄する運命のように聞こえる。とても美しいがどこか悲しげな少女のようである。私は演奏している人間を見つけた。演奏者は女性であった。制服を着ていることから女子高生だろうか?いや短い髪とどこか幼なげな顔からしてもしかすると中学生かもしれない。まぁ年齢はいいとしてその女性が川辺で身長ほどもあるチェロを座りながら奏でている。私はひどく心が惹かれた。演奏を聴いているうちに向こうは口を開いた。「迷惑だったでしょうか、 今日は学校が閉まっていて練習する場所がなかったので人が少なそうなここでチェロの練習をしていたのですが。家には両親がいて、チェロの練習なんてできなくて。」 「いいや、散歩ついでに素晴らしい音楽が聞こえてきたので気になって聴きに来ただけですよ。それにしてもとても上手ですね。今の曲はバッハだったでしょうか。」 「はいプレリュードの一章です。この曲はかっこいいですよね。」 「はいそうですね。あまり詳しくない私でも流れているのを聴いたら足を止めるくらいには素晴らしいでした。その、お名前は」 「鶴田 ひさぎです。あなたは?」 「山下 小春です。ひさぎさんですか、ひさぎさんはバッハが好きなのでしょうか?」慣れない丁寧語口調でどこかおかしくないか心配だ、話題を繋げようと取り止めもない話しをする。 「そうですね。その他にもモーツァルトとかよく聴きます」とひさぎはまゆを困らせて行った。 また演奏を聞きたいという約束をし今日は帰ることにした。帰る途中音がら世界に帰ってきて忙しなく聞こえる鳥の囀りや車のエンジン音がよく聞こえた。 私は不思議な充実感を感じながらゆっくりと家に帰った。 しばらく時は過ぎた。私はいや私たちは音楽を通じて仲良くなった。私たちが顔を合わせたのは初めて会った時を含めて4度ほどであるが、彼女の演奏を通して音楽について話し合うようになり親睦が深まった。ここのところ彼女はとても真剣でもうすぐあるオーケストラのコンクールのためにより熱心に演奏の練習をしている。ここにくるのは学校が閉まったあとの7時前くらいとなっていた。どうやら彼女の学校はオーケストラ部があまり強くないらしく全国大会への出場が夢なのだと目に光を灯しきらきらと言っていた。部員の中で彼女が最も上手らしい。そんな憎まれ口を叩きながらも、だからこそ私がもっと引っ張らなくてはならないと意気込みをしていた。どうやら彼女の部活では3年生はいなかったらしく2年生に引き続き、新高校3年生の彼女が部長として吹奏楽部を引っ張っているそうだ。まだ部員の期待を背負うには幼なすぎるはずなのに彼女は力強くいう。見るべき先輩の頼もしい姿も見ずに。「それにしてもひさぎちゃんが練習しにくる時だいたい聞きにくるけど邪魔じゃない? 近くのマンションに住んでるから聞こえたらくるんだけど。」 「いや大丈夫ですよ。むしろ観客がいるといい緊張感の中で練習できるのでむしろありがたいです,」 「それなら良かった。もうコンクールだね。私は何もしてないけど練習の成果が出せるといいね。コンクール聴きに行ってもいいかな? 「ちょっと恥ずかしいですよ。まぁでも、近くの浜松市民ホールでするので良かったら聞きにきてください。彼女は少し照れて恥ずかしそうに笑いながら言った。 「サクラ音楽ホールね。わかった行くね。今日の演奏で行けば絶対行けるから演奏楽しんできてね! そういいお互いに帰った。 私はコンクールの日を楽しみにしながらソファに座った。しかしこのままでは行けない。彼女の、彼女達の演奏はとても楽しみだが、私のコンクールに向けて私も絵を描かなければならない。きっとこれが最後になるかもしれない。いや最後にしよう。 私は大学を出て芸術家として頑張ってきた。コンクールで入賞したことはないものの、snsではそれなりの人気があり、私の作った作品はそこそこに売れている。私はこの現状にありがたさを感じながらもコンクールで入賞しないことに疑問を感じていた。世の中芸術で稼ぐことができなくてもコンクールで賞を取る人はザラにいる。彼らと私は何が違うのだろう。そんなことを考えると、私は偽物の芸術品を作る詐欺師のように感じられた。だめだ。こんなことを考えても何にもならない。今は描く作品のことについて考えなければ。そう思い空のキャンバスに向かうも浮かぶのは彼女の、ひさぎちゃんのことばかりでキャンバスを埋めるインスピレーションは沸かない。 いっそ彼女のことを書こうと筆を握ったが、彼女のどこを書けばいいのか分からず途方に暮れた。彼女を描くにはキャンバスの余白が足りない。いっそどこかの大聖堂でも借りれたなら死ぬまでに完成して見せるのに。そんなつまらないことを思いながら空のキャンパスを指でなぞり眠りについた。とうとう彼女のコンクールの日になった。私は絵のことを思いドギマギしながらも席についた。思いの外席は埋まっており、1人とはいえ席を探すのに少し手間取った。どうやら浜松市大会に出るオーケストラ部は粒揃いらしくなかでも桜下高校は全国大会常連校でこのコンクールの目玉となっているらしい。まもなくその桜下高校の演奏が始まる。観客は息を呑み今か今かとその瞬間を待ち侘びている。指揮者が指揮台に立った。その直後だった。世界が変わった。音は私の意思にかかわらず耳に入ってきた。最初のシンバルに驚くまもなく、壮大な音楽がいや、頭を殴るような暴力が耳から入ってくる。こういう書き方をすると演奏が不快のように感じるかもしれないがそうではない。少しも痛くなく、むしろ鳥肌の立つような壮大な音楽という感情に支配されたかのような初めての音楽に私は驚いた。私は驚いた。私以外の観客も息を呑むことなどとっくに忘れてただ演奏に夢中になっている。一曲目が終わった。拍手は爆発するようになり私は2度呆気に取られた。今年は桜下が全国優勝するかもなと隣の人はいい今年の桜下高校のレベルがいつになく高いことを知った。他の高校の演奏も聴き次はひさぎの高校である。彼女の高校は浜北市唯一の女子校でありオーケストラ部の全員も女性である、指揮者は部活の顧問であろうか、50だいくらいの年配の女性が指揮台に立った。演奏が始まった。演奏が終わった。演奏自体は悪くなかった。しかし桜下に感じたようなインパクトはない。ひさぎの奏でるチェロの音はよく通り耳を奪う美しさがあるが、それが他の部員の音色と調和しているかと言われるとそうではない。まるで工事現場の機械音と鳥の音色を合わせたかのような音と音のぶつかり合いのようである。演奏はつぎはぎで高校生としてはそれなりのレベルなのかは知らないがコンクールに選ばれるほどの演奏ではないだろう。彼女もそれを察したのか演奏終わり泣きそうな顔でお辞儀をしていた。春が終わったのだ。 彼女の家庭は厳しいらしく彼女は最後のコンクールにすると話していた。ここからは勉強をしなくてはならないのだと。その日の夜彼女はいつもの川辺に座っていた顔は見えない。しかし様子を見るにひどく悲しんでいるのだろう。いつも持って来ていたチェロはその日なかった。私が隣に座るやいなや彼女は口を開いた。「私はこれで最後だと考えずにただ演奏をして来ました。というのも変な緊張感は要らないと思ったからです。でも演奏は拙くてこれで最後とか今までの全部が無駄だったとかそーゆーのが頭に浮かんでくるばかりでもう無理です。」 私も返答に困ったが君の演奏は良かった他の部員がだめだったとか言ってもそれは私が上手く引っ張れなかったからですとか返されそうなのでここは黙ることにした。「私はどうすればいいんでしょうか。もうこれからの未来が暗くて見えないんです。いや未来なんて見てなかったけどでも見えないんです。 「それは私も分からないね。だけどひさぎちゃんが頑張って来たことは無駄にならないよ。きっとどこかでいつか役に立つはずだよ。 「いつかっていつですか。その日を待ってたら気づけば死んでしまいそうな気がするんですよ!」 「そうだね私もその気持ちよくわかるよ。実は私は芸術家なんだ。もう30後半というのにまだそのいつかを待ってるの。この絵で最後にしようとかこのコンクールで最後にしようかとか思いながらそのいつかをまってるんだ。私もそのいつかは来たことがないよ。でもそのいつかを待たないと今までしたことが無駄になるような気がして怖くて、確かに君のいうことは合ってるのかもね。いつかなんて来ないかもしれない。私たちは自分たちでどうにかできるほど大きな存在じゃないんだよ。ちっぽけでどうしようもないんだ。」 お互いに沈黙が流れた。少しの沈黙を破ったのはひさぎだった。「私だってそのいつかを追うために夢を見たいですよ。だけど、私にそんな時間なんてないんです。親は勉強することを強要して来ますしこれからの1年は勉強して夢を追いかける他ないんです。そもそも彼らは私にひさぎなんて酷い名前をつけるような人たちです。きっと生まれた時から間違いだったんです。」 ひさぎートウダイグサ科のアカメガシワの推測されているその花の正体は雑草だ。椿、榎、楸、柊と季節の漢字を有する花の中では特に地味である。 そして春に一番似合わない名前でもある。 「まぁ今更だけど私も似たようなもんだし特に言えることもないんだけどさどうしたいかはひさぎちゃん次第なんだしそれは自分で決めるべきかもね。 君はどうしたいの。」 「そりゃあまだチェロをしたいです。でも親の元で生まれた以上親の言うことを無視してチェロをすることは無理なんです。だから悩んでるんじゃないですか。言葉で諦めたと言うことは簡単でも心の奥底では諦めきれてないんですよ。」 「それって期限とかあるの?」 分かりませんけどさっきのコンクールが1学期唯一のものだし。もうコンクールは無理なんですよ。練習だけしてもどうしようもないし、普通の大学を出てチェロをするなんて無謀だし。」 「大学でチェロの部活とかあるところに行くのもいいかもね、。」 わたしはふと、とある張り紙を思い出した。 だけどもしかしたらオーケストラ部は無理でもひさぎちゃんだけならなんとかなるかも、」 そういい私はスマホで調べた富士音楽コンクールを出した。「ここからはちょっと遠いけど私が送っていくよ。どうする?」 ひさぎは何か言いたげな顔で 「行きます。」と言った。おそらく彼女はどうせ足掻くだけ無駄のにいく意味などないけど諦めきれないとか思ったのだろう。だけど後悔するのは足掻いてからでいい。足掻いて足掻きまくって泥だらけになりながら届かなくて笑顔で悔しかったと言う方がよっぽどいいだろう。そう。そうなのだ。足掻いてからでいいのだ。私は何か大事なことを忘れていたような気がする。ひさぎちゃんと別れた後私は絵を描いた。自分で納得できるような絵はできなかったが、何か掴めそうだ。それはそうとひさぎちゃんのコンサートが先に来そうだ。絵は後回しでいいはずだ。いやコンサートで書こう。ひさぎちゃんに聞かなくては。そう言うことをひさぎちゃんに話しながら彼女の演奏を聞くうちにすっかり桜は散ってしまった。彼女は私の提案に少し困りながらも笑いながらいいですよと言った。もうコンサートの前日だ。 気づけば彼女との秘密の音楽訓練場所も近所の人が集まるようになっていた。近くに住んでいる佐藤さんは彼女の演奏会の常連客である。彼女は今年85になるらしい。彼女も含め観客は増え、さながらすこしにぎあう路上演奏のような状況を観客たちは楽しみにするようになっていた。コンサートに彼らもくるらしい。私も彼らと交流するようになり、新しい風を呼び込んでくれたひさぎちゃんに改めてありがたく感じた。最後の演奏会も終わり観客たちの応援がひとしきり終わった後ひさぎちゃんと2人で話した。 「初めに演奏するのはプレリュードです。あとの曲は秘密です。」そう笑いながら言う彼女は緊張を隠しているのだろうか、少し笑顔がぎこちなかった。 「そう。楽しみにしておくね。ひさぎちゃん緊張してるから今日は早めに寝るんだよ。わかった?」 「もう子供じゃないんだから。そんなこと言わないでくださいわかってますよ。それよりも明日ホールまで運転お願いします。」 「任せといて運転下見して来たから。」 そんな会話をしながら私も今日は早めに寝ないとなと感じつつ帰った。星が綺麗だった。 水をコップに入れて飲む。ベットに潜り眠る。 翌朝キャンパスと鉛筆をバックに入れ集合場所まで歩いた。いつもの川辺、彼女は右手にサイダーを持ち立っていた。そばには黒いケース。中にはチェロが入ってるいつものケースだ。 「おはよう。よく眠れたひさぎちゃん?」 「おはようございます。ぼちぼちです。ちょっと緊張しちゃって上手く寝付けなかったけどそれなりに眠れました。」 「よかった。眠かったら車で寝てていいからね。」 そう言い私たちは車に乗り込んだ。エンジンをつけ車を動かしてしばらく後コンビニ立ち寄った。そこで昼ごはんと飲み物と軽食としてゼリーを買い、再び音楽ホールを目指した。音楽ホールに着いた時はコンクールの1時間ほど前で無事確認をエントランスで済ませることができた。どうやらひさぎちゃんはオーケストラ部以外に個人としてコンクールに出ることはあまりなかったらしく、緊張していた。 初めの人が演奏を始めたらしい。緊張しないようにひさぎちゃんは演奏を聞かないように外にいる。きっと上手くいく、大丈夫そんな言葉を彼女にかけたかったが、自分の無責任さに気づいたので言わなかった。彼女の準備のため舞台袖に行かなくてはいけない時間帯になった。私は彼女の肩をたたいた。 「行ってこい!私も絵描かなきゃいけないからさお互い楽しもう!」 そう背中を押し出した。彼女はかなり緊張して硬くなっていた。そのことが心配だったが、もうどうすることもないので彼女の成功を祈る他なかった。 演奏が始まる。彼女が舞台袖から出て来た。やはり緊張しているのだろうか。歩き方がどこかぎこちない。こんなに緊張している彼女があんなに素晴らしい演奏をするはずがないだろうと他の観客は思っているのだろうか。少し悔しくも演奏が始まるのを待った。」 ー「私はひどく緊張していた。このコンクールを逃せば私は夢を諦めなくてはならない。そんなことを考えると手が悴んだように思うように動かない。 だけど大丈夫。小春さんがそしてみんなが応援しに来てくれている。オケ部のみんなもそれにおばぁちゃんも見に来てる。私なら上手くやれる! 私は初めの演奏曲であるバッハのプレリュード第1番の楽譜をめくった。もう楽譜なんて見る必要がないほど覚えている。だけどこう言うのはルーティーンなのだ。私はこの楽譜を開くことで自分の世界 に入れる。さああとはやるだけだ。 チェロの弦に弓を立てかけ演奏を始めた。 まるで運命に翻弄されるような音律。その中で私はバッハと踊った。精密機器のような、美しい構成はさぞ当時の人々に衝撃を与えたのだろう。もしかするとその精密さゆえに当時の人々は現代にタイムスリップしたかのよな気持ちさえしたのかもしれない。いやもしかするともっと未来かも。そんなことを考えながらただチェロを引く。こんなに演奏が楽しいのはいつぶりだろう。気づけば夢だとか、親がどうとか何かつまらないもののために演奏をしていたような気がする。結局今が楽しければいいのだ。 あの人にーさんに感謝しなくては大事なことを思い出せた。そんなことが頭によぎりながら初めの演奏を終えた。 ー初めの曲が終わった。今までのひさぎちゃんのどの演奏よりも美しかった。何よりも彼女が音楽を楽しんでいるのがよくわかった。演奏が終わり拍手の雨が降ったポツポツとなり始めた。拍手はいつのまにかザーザーとゲリラ豪雨のように変わっていた。拍手が終わるとひさぎちゃんがおかしいことに気がついた。 自分の音楽を楽しみいつもとは異なる演奏方法をしていたことの弊害なのからだろうか。手を痛めている。彼女はそれを悟らせないようにしているつもりなのだろうが彼女の演奏を見て来た私からではよく分かる。二曲目はいや最後の曲はカノンだった。制限時間内的にこれが最後の曲だろう。彼女は痛めた手を器用に扱いながらチェロを演奏する。おそらく弓を引く過程でどこかに指をぶつけたのだろう。彼女のカノンはとても美しかった。庭に迷い込んだ美しい蝶のようなそんな優雅さがあった。 チェロの音色は全ての楽器の中で最も人間の声に近いらしい。 私はそのことを初めて実感した。 それほどまでにチェロが歌っていると言う表現が似合う演奏に出会ったのだろう。チェロは歌う。まるでパッヘルベルのいた中世の街並みを懐かしむように。彼女は蝶だったのだろうか。そしてパッペルベルの庭に迷い込み標本にピン留めされ曲にされたのだろうか。そんなありもしないようなことを想像し音楽に浸った。私はゆっくりと筆を動かした。しかし私が描いたのはこの美しい演奏でも歌うチェロでもない逆境の中演奏を楽しむ彼女自身である。彼女はこの瞬間花を開き咲かし咲き誇っている桜のように見えた。演奏が終わり雨はますます強まった。今日の中でも最大降雨量だろう。 私はキャンバスに下書きを書き終えた。 あとは結果を待つだけだ。 結果が出るのはおそらく翌月だろうか。それならば彼女の結果と同じ時期に私もコンクールを出す予定となる。 コンクールに間に合わせるには今から今日書いた下書きを死ぬ気で色入れする必要があるだろう。少し気が引ける。今日の演奏はいや、今日の体験は素晴らしかった。とても贅沢な日だったと言えるだろう。家に帰り床に落ちている缶ビールを蹴り無我夢中でキャンパスに赤を出した。ここに白をいい具合に入れる。私の中で絵の色は、配色は決まっていた。 そのため他のことなんか目に入らなかった。色を塗る。線をなぞる。筆を運ばせる。今まででいちばんの出来になりそうだ。この絵には思いが強く詰まっている。そんなことを途中思いながら絵をついに描きあげた。描いたのは雨が降る中咲き誇っている桜の絵である。背景は青い。春だというのに雨が降っている不思議な天気である。私はひさぎちゃんが素晴らしい演奏をして受けた拍手の雨を受けこの絵を描いたのだが、今思えば、私とひさぎちゃんは雨の中花開こうとしていたという点で似たもの同士だったのかもしれない。もちろん彼女はとうに花開いたが、あとは私だけである。私は薬を飲み眠りについた。明日コンクールを出しに行こう。 月日は経った。今日ひさぎちゃんのコンクールの結果がわかる。どうやら結果がわかるのは夕方らしい。私は自分のことではないのにひどく落ち着かなかった。とりあえず料理でもしようと、いつもは触らないフライパンをコンロに置き火をつけ、油を敷いた。チャーハンを作り、冷蔵庫から水を取りコップに入れる。コップには飲みかけのオレンジジュースが入っていたけれどそのまま水を入れた。結果はどうなのだろう。彼女以外の演奏はあまり聞いてないとはいえ、彼女の演奏が周りよりも素晴らしかったのはいうまでもなかっただろう。とりあえず結果を待とう。 夕方彼女から電話が来た。携帯越しの彼女の声は高く喜んでいるようである、 「小春さんコンクール銀賞でした!それとどうやらそのコンクールの入賞者の賞状とかが今度届くみたいなんで持って行きます!」 「金賞ではなかったですけど、入賞できたのは小春さんのおかげです。本当にありがとうございました。」 「おめでとう!私なんてほぼ何もしてないしひさぎちゃんの努力の賜物だよ!本当におめでとう! 次は私の番やね」 「はい絶対小春さんなら上手く行きます!」 そう話した。結果は明後日である。 絶対ってなんだろうか。彼女に私の絵は見せてない。というのも、私と違い花開いている彼女に満開の桜の絵を見せることに負い目を感じたからである。私はなんて情けないんだろう。自分よりずっと年下の少女に嫉妬するとは。彼女の無責任な絶対という言葉にも少し苛立ちを感じてしまった。きっと コンクールの結果が不安でイライラしやすいんだろう。とりあえず今日は寝よう。 翌日目を覚ました。私はひさぎちゃんが絵を描きたいということを思い出した。水をコップに入れた時 私は薬が切れていることに気がついた。病院に行くのがひどく億劫だから薬はもういいや。 古いキャンパスを取り出す。 あれこれしている内に夕方になった。 明日か、明日で変わるのか。 そう思い私は屋上に向かった。 私が目を覚ますと時計の針は11時を回っていた、 どうやら目覚まし時計が壊れていたらしく、予定の8時を大きく超えてしまっていた。 「ーさんに電話しなきゃ。」 電話をかけた。だが、電話は出ない。 私は忙しいのだろうと思い、その日を過ごした。 夜になり父がテレビをつける、流れていたのは 取り止めもない日曜のコメディ番組である。 母がとんかつを突きながらふと話す。 どうやら昨日近くのマンションから飛び降り自殺があったらしい。 … 私は怖かった、もしかすると小春さんではないかと、 そんなことを思うとあの人の家に行く気にならなかった。あの人の家は、部屋は知っている。それに一度お邪魔した時に鍵ももらった。あの人は笑いながら別に気にしないから家に疲れたらいつでもおいでって言っていた。 明日また電話をかけよう。それから毎日私は電話をかけた。だが小春さんは出ない。そうして過ごす内に電話をかけるのが怖くなって来た。もし小春さんがコンクールに落ちていて、私に会うのが気まずくて会うことを躊躇っていたらどうしよう。そんなことを思うとますます家に行くことはできないし、電話をする頻度も減っていた。風は暖かくなり、かなり時が経ったが私はまだ小春さんのことをひきづっている。私は今やプロのチェロリストを目指している。この間は全国大会で3位を取れたし、親も音楽の道に進むことを許可してくれるようになった。このことを小春さんに知ってほしい。そう思い久しぶりに電話をかけた。電話は出ない。いつのまにか音声が変わった電話を聞き流しながら電話を切る。私はいつか彼女に会いに行く元気が出るのだろう。彼女がニュースになっていれば確認できるのだが、どうやらニュースにはなっていなかった。もうすぐ1年が経つ。私は最近彼女と会うのが日課となっていた川辺をよく散歩するようになった。チェロは家で弾けるようになったので、今や手ぶらである。携帯を片手に道を歩く。夕暮れ時のあの場所で見覚えのある人影が動いた。 あの人は誰だったけ。そう思いながら思い出す。 その人が話しかけて来た。私は思い出した。春のコンクール前にここで演奏した時にいたおばあさんだ。どうやら向こうも私を覚えていたらしく。 たまに私が出るコンクールに顔を出しているらしい。私たちは小春さんのことを話した。おばあさんはなにも言わなかった。それから小春さんが私のために絵描きセットを準備していたことを聞いたと話した。どうやら昔言った何気ない芸術への興味を彼女はよく聞いていたらしい。誕生日にでもわたすつもりだったのであろうか。皮肉にも今日がその誕生日であるが、次におばあさんはその家にはもう誰も住んでいないことを話した。私は少しがっかりしたが 誰もいないということを知り彼女が前住んでいた家に行くことにした。彼女にもらった鍵でドアを開ける。ドアを開くと私は驚いた。そこには彼女の暮らしていた跡がそのまま残っていた。窓は空いている。その隙間から忍び込んだのだろうか、花びらが地面に幾重か積み重なり散らばっている。私は家に入りテーブルの上に置いてあるものを目にした。 そこにはパレットと筆達と箱と手紙があった。私は手紙の宛先が私の名前であることに気がついた。私は全てを察した。涙というよりどうしたらいいのかわからない感情であった。彼女はもういない。彼女はコンクールの結果が出る前日に飛び降りたのだろう。だからおばあさんもあんな顔をしていたのだ。だけど何で前日に。そう思いながら私は少し硬くなった手紙を開ける。書いていることを声に出して読む。 ーひさぎちゃんへ とりあえずは謝りたいと思います。 本当にごめん。私は自殺することにします。 私には幼い頃から持病があってあと長くても2年後には亡くなると医者に言われていました。私は芸術家らしく最後は自分の手で決めるつもりでした。 ひさぎちゃんには何の関係もないことです。 私はこのコンクールで最後にするつもりでした。 それはずっと前から決めていたことで、ひさぎちゃんに出会うまではコンクールに前描いて落ちた桜の絵を送るつもりでした。つまらないことだよね。 だけどひさぎちゃんに出会って立ち向かう姿に感動して、私は自分の描きたいものを描こうと思いました。結果がどうであれ私は描きたいものが描けてとても幸せです。ひさぎちゃんに絵を見せることはなかったけど、いつかは見せたかったな。視界がぼやける。ぼやけた視界を戻すため目を指で擦り目を開けた瞬間目の前を何かが横切った。それは桜の花だった。開け放した窓から風に飛ばされ忍び込んできた花びらが宙を舞っている。私はその桜の花弁が入って来たであろう窓を見た。窓の横に絵がある。かけてある布を捲る。それは桜の絵だった。窓から入って来た桜の色と一緒だ。雨が降る中咲いている。 絵の下に紙が貼ってある。どうやら絵の題名のようだ。題名には春雨と彼女と描いていた。その題名を見て私はこれが私の絵であるのだと気づいた。この絵には女性がいない。だけれども彼女と描いたのは 私を桜のモチーフとしたからであろう。よく見ると 題名の紙にシールが貼ってある。そこには入賞と大きく書かれていた。私はベットに腰掛け手紙を読み直す。涙が流れる目を知らないふりして擦る。手紙を見る。 ひさぎちゃんは私に会いに来るかな。 一応遺書にこの部屋は私が死んでから1年は借りたままにしてほしいと描いたのだけど、ひさぎちゃんが読んでいたらいいな。私は本当に酷いことをしたと思っています。本当にごめんなさい。本当にごめんなさい。本当に。それとひさぎちゃんに渡すものが2つあります。一つはパレットと筆達です。 もう一つは置いてある箱にあります。私はパレットを見る。少し古いパレットだ。彼女がこれを選んだのは初心者でも使いやすいものだからなのだろう。目立った汚れはないことからも彼女がよく洗ってくれたことが目に浮かぶ。彼女は色々考えたのだろう。私が使いやすい道具とかを選んでくれたのだろう。きっと私に喜んでもらうために色々考えたに違いない。なのに何で。どうして。涙が手紙に落ちる。わたしは鼻を啜りながらも、箱を開けた。少し大きな箱、中にはチェロが入っていた。サイレントチェロだ。私が家でも練習できるように買ってくれたのだ。少し不恰好なカミキリムシのような形状。彼女は私のためにチェロを買ってくれた。胸が熱く言葉が出てこない。息をしようと息を吸うが、嗚咽になり上手く吸えない過呼吸になりそうなほど泣く涙が止まらない。手紙はもう終わる。 その箱にはチェロが入っています。最初は普通のチェロを買おうか迷ったけど、ひさぎちゃんも芸術家なんだし自分の道具は自分で買いたいと思うかなっと思ったので、家でも練習できるサイレントチェロにしました。いつも川辺に練習しに来るのはとても楽しみだったけど、風邪引いたりしないか心配だったから。だからこれで家で練習してね。 ーひさぎちゃんはどう思うだろうか。私を恨むだろうか。私はひさぎちゃんのおかげで変われた。 やっと前に進めたんだ。ありがとうひさぎちゃん さようなら。ー 誕生日おめでとう。 涙は止まらない。もう言葉も出ない。口を開こうにも声にならない。息が苦しい。鼻水がひどく出る。 それに何よりも胸が熱い。燃えそうなほど熱い。 「ーさんなんで!何で!声にならないながらもそう叫ぶ。 桜が咲いた。わたしは大学生になった。県外の芸術大学に行く。 私がチェロの道を諦め画家になると言ったら彼女は怒るだろうか。それとも笑って許してくれるだろうか。わたしは花を持って歩く、向かうのはあの丘だ。桜がよく咲いている。花をお供えして手を合わせる。 わたしはポケットから携帯を取り出し彼女に電話をかける。彼女は電話には出なかった。 だけど私はどこか満足していた。 日があったかい。季節は私たちには関係なくまた回っていくのだろう。少し歩き振り返る。 「ばいばい小春さん。」そう言って微笑んだ。 あの桜が咲く丘に彼女はいる。 長く深く眠っている。 きっと桜が散っても彼女はそこにいるのだろう。 あの桜が咲く丘に彼女はいる。 読んでいただきありがとうございました。 感想等くださるとありがたいです。 初めての小説ですが、これからも描こうと思うので、気が向いたら読んでいた抱ければ光栄です。

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