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14 件の小説鬱になる前の私のこと
鬱になるって人生が一回終わるくらいのことだと思う。 前の自分に完璧に戻ることはできない。 前の自分を愛してくれた人もきっといて、 その人はきっと“裏切った”と思うだろう。 だって、1番そばにいた自分が守れなかったから。 もうほぼ、 んでしまったから絶対戻れない。 でも、私が変わってしまったのは裏切ろうと思ったわけじゃない。 ただ、自分が最後まで弱かったから。 自分を最後まで守れなかったから。 自分を最後まで愛せなかったから。 今の私が覚えている昔の私。 昔の自分にも友達が何人かいた。 なのに、昔の私と思い出を紡げなくてごめんなさい。 口が悪くて、面倒くさくて、嫉妬深くて、内弁慶で、自己中で、最低で最悪な昔の自分 正直物で、仲良い人には本音でぶつかって、愛する人には言葉で愛を送って、困ってる人は放って置けなくて、陰口をいう先輩が大嫌いな昔の自分。 全部全部覚えてるよ。 悪いところも良いところも。 全部全部。 もしかしたら、本当は んでなくて ただどこかの隅っこで蹲ってるのかもしれない。 出てきても安心だよって そう思えたら前の自分に出会えるかな。 なんだか19さんのハイアンドシークみたいだ。 ゆっくり、ゆっくり、歩いていこうね。
あの子
「私はなんでもいいよー!ふふふ!」 可愛いあの子、 「えー!そうなんだ!」 素直なあの子、 「もう嫌!私絶対やだ!」 わがままなあの子、 だけど、 誰よりも自分に自信がないあの子 「私にまかせて!」 「あははは、やっぱり私には無理だよー」 誰よりも人に影響されちゃうあの子 「君がそういうなら私はそうなんだ」 だけど、 あの子が言う言葉に嘘はなくて 「君は頑張ってるよ。偉い偉い。」 「私は君のこう言うところが好き」 「えへへ、ありがとう」 あの子の言葉はキラキラ輝いて、 暗闇もあの子色に染まっていくみたいな 可愛くて頑張り屋なあの子だけの世界
水と私
水面の膜が張り付いた手のひらを、何度も水槽に落としてはまた引っ張った。体積が増えた水は自分の一部のように感じられた。不思議な感触だ、心地よさがあるのは、ここが居場所だからかな。足を伸ばした途端、丸まった背中を余計に意識してしまって大きな背伸びをした。天井に向けられた手のひらはカサついていて、時間の経過を感じた。明日のことを考えながら、重い腰を上げて、一息吐いてみた。感情のなさに、真実があるように思ってみた。
みぞれの溶けていく車窓
小さな幸せを見つけられないことに、一瞬の焦りが遮ってふと窓に目を向けた。 ざぁざぁ、ぱちぱちと流れ当たる音が、頭の中をいっぱいにした。 窓に滴っていく粒達が、悲しくも終わりを経ているように見えた。 はたまた、地についた喜びだといえるのかは、今の私には分からない。 ただ、自然と感情を浸していくのはこうゆう出来事であってほしいと思った。
小雪の降る夜空
暗い夜空に降った小雪を眺めて、久しぶりに心が躍って、冷えた電子機器を取り出した。 カメラに映った画面を見つめて、目に映ったこの景色とは何かが違うんだと感じた。 そっと、携帯をしまって、吸い込まれるように空を見上げて歩いた。
過ぎたさざ波
秋の香りに包まれたその空間は、優しく、包み込んでくれるようである。その道は細く、くねりのある田舎道といえる。僕は、左右に生えた稲穂の揺れを見ながら歩いていた。空を見上げると、ビル一つない景色が広がっていた。 「どうしてこうなってしまったんだろう。」 ぽつりと呟いた言葉は、この世界には僕だけしかいないのではないかと思わせた。その寂しさに押しつぶされないよう、一歩、また一歩と進むも、結局は行くあてもない。それから、数十分と長く細い道を1人で歩いた。しかし、ついには足に迷いを持ったのか、僕はふいに後ろを振り返った。そのとき、左の方から雲に隠れた光が徐々に姿を見せていった。それは、差し込むにしては柔らかく、明るさにしては暖かかった。僕は目を瞑り、それを一心に受け止めた。目から感じる、ほんのりとした熱は、僕の心を解いていった。もう帰ろう。そう思い、振り返った方向へと、歩き出した。波打つ海の音がざぁざぁと、鳴り響く。
弱さ
悲しいな。言葉はナイフだよ。 本当の自分と向き合ってくれたらいいのにな。 どれだけ弱くとも、恥じずに悲しいと思うよ。 どんな自分も変わらない自分なのだから。 私は私だけを見るよ。 貴方には愛だけを送りたいから。
第二話 僕は漫画家になるのだ
「僕は将来漫画家になろうと思う!」 「なんで?」 赤いベレー帽を被り、右手に万年筆を持った僕は、冬弥に背中を向けて高らかに宣言をした。 「昨日-runner runner-という漫画を読んだのだが、それに僕は感化をされたのだ!読感としては常に新作変わりダネスイーツが提供されるようで、僕を魅了していくのだ!」 「新作変わりダネスイーツなんて、ハズレだったら大ハズレそうで怖いんだけど。」 僕はちらりと後ろに目をやると、冬弥は僕のベッドに寝転び、3DSを手にカチカチと忙しそうにゲームをしている。キャラ同士を戦わせる格闘ゲームをしているようで、時々眉間に皺を寄せて真剣そうだ。 「これだから凡人は凡人なのだ。」 僕は、冬弥の無関心さにヤキモキして、少し尖った発言をしてみた。しかし、冬弥は「そうそう“ボンジン“って強いんだよなー」などと訳のわからないことを言い出す。 「やられたー!あーやっぱり久しぶりにやったから鈍ってるなー。」 そうかいそうかい。そうくるなら僕は1人でやりますよと、僕は自分の机の椅子にドスンと座り、用意しておいた真っ白の紙と万年筆を手に、ベレー帽を深く被り直した。 「一郎ゲームありがと!え?何してるの?」 僕を見るなり、先程のテンションは何処へやら、いつもの冷静な冬弥に戻っていた。 「僕はもう構想は考えている。冬弥も手伝ってくれないか?」 「嫌だよ、面倒くさいよ。このベレー帽わざわざ買ったの?」 「そうだ。」 「分からんけど、たぶんそれ古いよ。」 「ふっ古いってどうゆうことだ!」 「「…」」 冬弥は沈黙の内に何かを考えたのか、秘密を打ち明けるように口を開いた。 「runner runner書いたの俺だよ。」 「…うっ嘘だろう…?」 「嘘だよ。」
青春真っ只中
「ねぇ!ちょっとここから叫んでみない?」 「え!?ほんとに言ってる?」 夏休み、目の前では校庭でテニス部や野球部が練習をしている。 「梨花ちゃん…さすがに恥ずかしすぎて無理だよ…。」 「大丈夫大丈夫!あーーー!!!」 梨花は2階から校庭の方に向かって、目の前にある手すりに体重を乗せて思いっきり叫んだ。 「あはははは!梨花ほんとにやった!でもみんな部活してるから気づいてないっぽい!」 「ほんとだ!あーーーー!!!!」 梨花は先ほどの叫び声を上回るべく、次はもっと体を前のめりにして全力で叫んで見せた。手すりに体重を乗せた梨花の足は少し浮いている。 「え!これでも気づかないの?じゃあ私も!あーーー!!」 「あー美華ちゃんまで………。」 「伊保ちゃんもやろ!ストレス発散!」 生き生きとした2人に吸い寄せられるように、私はこくりと返事をしていた。 「じゃあ行くよー!3人で!!せーの!」 『あーーーーーーー!!!!!!』 意図もなく校庭中に私達の叫び声が響き渡った。想像より大きな叫び声に私達は思わずしゃがみこんだ。先程と打って変わって声を抑えて静かになるのが可笑しくって、わははと肩を並べて笑いあった。
第一話 なんか言いたかったこと
「スープ類は飲み物では無い、食べ物だ。よって一般的な自動販売機に混ぜるべからず!」 「いや飲み物だろうが食べ物だろうが、自動販売機にあるに越したことないだろ。そうゆう系の気分のときもあるから助かるよ、俺。」 「いーや!飲み物の聖域に、例えばコーンスープなどという外来種はあってはならんのだ!美しくない!」 「うんうん。分かった、分かった。」 絶対分かっておらん。そう言い放ちたいが、熱弁した体に夏の日差しがジリジリと照りつける。僕の気力を全て奪う勢いである。靴底からアスファルトの熱気が伝わるくらいの猛暑日。全身かしこも救いがないのだが。 「「 … 」」 「あぢい。」 「あついな。」 暑さに囚われてしまった僕達は、喋ることすらままならなくなり、擬音を放つモンスターと化し、月光を避ける狼の如く日陰を探しながら学校へと向かった。 「やばい…俺もう死んでるかも…。」 「大丈夫だ…僕はちゃんと聞き取れたぞ…。」 やっとの思いで下駄箱へとたどり着いたのだが、隣の冬弥はイケメンとは名ばかりだと思うほどふにゃふにゃになっている。 「お昼から学校なんて最高だけどさ、寝て授業終わる気がする。」 「まぁまぁ、明日から夏休みなんだ。頑張ろうではないか!」 「いてっ!肩強く叩きすぎ…断然やる気なくなってきた。」 キーンコーンカーンコーン 「はい!じゃあこれでホームルーム終わり!夏休み羽目外し過ぎないように!私は準備やらなんやらでそんな暇無いけどね…って独り言は置いといて!高校初めての夏休みなんだから楽しみなさいね!解散!」 ガタガタッといつもの何倍も勢いのある椅子を引く音がしたかと思うと野球部勢の男共が吾先にと教室から出て行った。僕は紳士でスマートな大人な男性であるから、僕は優雅な退出を試みる。実際は夏休みにワクワクが止まらないのだが。僕も後を追いかけようとしたそのとき、目の前に誰かが来た。黒髪ミディアムのお女性で、伏し目がちでなんか恥ずかしそうである。 「一郎くん…ちょっといいかな?」 「なんだい?」 「うーん…ちょっとここじゃあ人に聞かれてしまうから、2人きりで話せるような…校舎裏に来てくれない?」 そう言って、目の前にいるミディアム女子はこの場を足早にさって行った。僕は冬弥以外のクラスメイトの顔はぼんやりとしか覚えていないし、ましてや未知生物の女性なんぞ区別の仕方が分からない。この状況を飲み込めないでいると、冬弥がおもむろに話しかけてきた。 「一郎、今田さんと仲良かったの?何か話してたからさ。」 「いや、今日が初会話だぞ。今田というのか。校舎裏に呼び出されたから今から行ってくる。」 「校舎裏って…。」 「校舎裏がなんだ?何かあるのか?」 「多分告白だろ。知らんけども。」 「告白?」 「うん。」 僕に告白…。まぁ千年に一度の逸材であるこの僕に告白など当然発生しうるシチュエーションだが、現実世界では初体験である。 「一郎、何してんの。そのポーズって弥勒菩薩だっけ?」 「僕は弥勒様に助けを求める。」 冬弥が呆れて目が細まっていくのが見えた。 「ほら、訳わからんこと言ってないで行くぞ。今田さん待ってるから。」 僕は冬弥に手を引かれながら校舎裏へ向かった。冬弥は見た目通り非力だけど、今の僕ならどこまでも運ばれてしまう気がした。 「あっいい今田さん…はっ話ってなんだい?」 「あの…これ!冬弥くんに渡してくれませんか!」 「冬弥…?」 そう言って今田さんは何やら鞄から小さな箱を取り出した。その箱を見れば、磁石を使って閉じられた蓋のようなもので、力を入れればパカりと空きそうな仕様だ。 「なっなんだこの箱は。」 「指輪です。わたし冬弥くんのこと好きなんだけど、自分からは渡す勇気でなくて、藤山くんにお願いしたくって。」 「指輪…?」 「それじゃあ、またね!きゃー渡しちゃった!」 今田さんは僕が箱を手にとった瞬間、興奮気味にどこかへと走り去っていった。びゅーんと風が通り過ぎた。何だ、さっきの出来事が嘘のようではないか。 「…冬弥。」 僕は後ろの塀に隠れて見ていた冬弥に呼びかける。 「へ!?」 「僕のウッキウキを返してくれ。」