センヒキ

13 件の小説
Profile picture

センヒキ

バスでの話

バスの車内は程よく冷え、ワイシャツに滴る汗を少しずつ乾かす。背中の湿ったシャツが、座席のシートにくっつく。医大前を通り過ぎると、人はまばらになる。男はスマホの多肉植物を見て微笑む。バスはしばらく進み、駄菓子屋の横を通り抜け、海へ出る。海の上を走りながら、バスは進む。船が横を通って、船長が帽を振る。一匹の魚が跳ねた。 「魚!」 一人の老人がそう言って立ち上がった。それを見た乗客は顔を見合わせる。 「魚!!」 みんなが一斉に立ち上がる。男は無視をしながら、スマホを見つめる。しばらくすると乗客は何事もなかったかのように腰掛け、またスマホを眺める。 カーブミラーはバスを映し、家を歪ませる。 「降ります」 一人の少年がそう言った。 「820円です」 2枚のコインしか持たない彼は、また席に座る。 ミラーに映る運転手だけがにやついていた。

0
0

旋 めぐる

旋 めぐる 明日晴れるかなんて  だれも決められないなら 考えても無駄って君はいうけど  無駄という言葉が 無駄ってことを作ったのでしょう  雨は上がって にじはかからずに 1230円の折り畳み傘 雨という言葉が 天気予報に勝ったのでしょう ずっとずっと好きだった  ならずっとずっと離れ離れでいよう   流しそうめんの香りが  たとえめんつゆの香りだったとしても!  僕といた日々は、細かくつるつるめぐるでしょう    百均で悩む君  どれでもいいのなら 考えても無駄って僕はいうけど  無駄という言葉が 無駄ってことを作ったのでしょう  ずっとずっと離れ離れ  心の繋がりそんなの怖いから 流れる時間の重みが  たとえ胃袋の衰えだっとしても!  君といた日々は 大きく揺らいでめぐるでしょう  そうめんはいまやひとまとめの  ちいさなちいさな皿に そこから海に行こう   免許がないからタクシーで    明日はどうせ曇りだけど それでも仕事は続くから あなたは僕に聞くの あしたは、晴れるの? 3回目          

0
0

朝の決意

朝の決意    朝からハイキングの爺さん    市議会議員でびっくり    ハイタッチハイキック    お尻で挨拶    朝からカンニングの坊ちゃん    東大志望でびっくり    ハイタッチハイキック    お尻で挨拶    朝からピッキングの婆さん    初挑戦でびっくり    ハイタッチハイキック    お尻で挨拶    お尻ふりふり三度振り    乾いたバットも三度振り    いつかの朝日が見えるとき    みんなのクワガタねむった日    今日も叩くの肉厚な結    

1
0

前橋前歯

前橋前歯 遊び誘ってくれた日お前は うんことか出てってぬいぐるみを投げてさ 便座座って二時間、たったね十二年 健康といえば歯って 適当なスクリプト うんこしてた時間は 英単語の時間で 部屋にあるB.B弾 撃ってた僕独り お前が打つ麻酔の 前歯の 前橋医院 浪人の一年はカルメ焼きの一年で 二十個買うのはサッカーのスクラッチ 僕らはたいてい裏山登りきって 怖くなって帰って チャリで溝に落ちてた 夕方のチャイムとリモコンカバーに指はめるお前 エムサイズのシリコン 伸びてるそうめん 白衣でいる水道に僕は今黒板に 「磨き残しがあるね」って 歯茎削るだろうって みんなは言ってた 僕もそう思う 中学の担任 SHR 歯茎から溢れる汁 お前と同じだな 腕 校舎の裏タバコ吸う教師僕 削ればいい、机の角でもって 言いながら箒でチャンバラ その仲裁の秀才 どうせ学校のバスケで忘れる バスケで忘れるんだよね 前歯を落として。

1
0

覚    女に覚えはない。覚えはない自覚がある。酒は自覚を奪い、自覚は酒を啜る。自分を隠して覚えてみせる。覚えという言葉を覚え、話し、伝え、聴いた。覚えたものは、覚えという言葉よりも先の尿意で、尿意よりも人肌で、人肌より飯だ。格言に客死して、帰らぬ友人は、駅でナンパしたホス狂い。さようなら、さよなら。ああ、さいなら。手を振る時は腰から。腰から降って陰茎。妙覚寺の隣んとこ。迎えきて。

0
0

呑気

論理を作っている間、人は呑気なんだ。 溝に困っている人が、その溝を解決するための論理を立てることはできない。 論理を捨てることが自由なのではない。 論理は、本質的な呑気のなかからしか生まれない。

0
0

祭日

改札の酒臭い人形たちの 吐き出したゲップが うすい膜をはっている 揺られる車窓 肩にふれる少女と彼氏 彼女の二の腕が見える 今朝の味噌汁のようで そうしてこぼれる 歩道橋のむこうがわ 少年が手を振っている 喉を刺す釣針に ずっと水面を舐める魚 蹴飛ばす石ころ タバコを捨てた運転手 800円のフランクフルト この街はずっと生きている    信号が青になって トラックが泥を跳ねる 少年はすり抜けて 母親に抱きつく ねだる綿飴、白い空白 見ていたのはずっと 僕のほうでした   静かに吸い込むガスに 肺が冷えていく 道端の空き缶はカラカラ鳴り 僕の靴の下で笑う 白線はぼやけて背を押す タバコとピアスを嫌悪した 親はどっちもいないらしい 僕よりずっと先を生きてた 居場所も忘れたふりして 靴を脱ぎ捨てた 飲みかけの炭酸が 足にへばりつく   抱き枕を抱きしめた総理 財布にゴム隠した優等生 僕だけが見てた自販機の下の夏 今日はお祭り 歩道橋から飛んだ  また客が減ったよ 運転手はそう言うと車を出した

5
0

ピース(哀)

ピース   そよ風を 頭の中に飲んで 吐き出したため息   子どもの足音と くたばったお父さん   元気な配達の人と 話が通じないおばあちゃん   庭の掃除を野良猫に中断される人   コードに絡まった埃を綺麗に取ったが 同時に足も攣った人   リモコンの電池を変えてみるも アンテナが壊れてたとき   街灯の虫除けの電圧がうるさくて眠れない人  でも静かな友人の家ではなんだか落ち着かない人   踏切で電車見てたらうんこも踏んでた人 コンビニの店員が思ったより優しいとき   割り箸を二膳つけてくれたけれど 一人で食べるとき   遊びに行ったら寝袋があったけど子供用だった人   コンセントにコードまで完備されてたとき でもタイプCだったとき   犬が自分に懐いてきたけどおやつのためなとき それを知っていても、嬉しさを隠せない人 草が上手に抜けたことを金魚に自慢する人 それを見て笑って犬に話しかける散歩の人   春の川沿いの桜と風が美しいとき 匂いを嗅いだら排気ガスまみれなとき 友達がお土産の消しゴム使ってくれていたとき たけど使いにくそうなとき   サブスクが解禁されたけど聞いたらファンじゃない気がする人 サブスクを使いまくる古参ファン   賞味期限切れのお菓子を持ってくる友達   好きな番組が2時間スペシャルなとき 時計を確認しちゃう人 良さがぶつかってるアーティストコラボ   犬がおしっこする綺麗な道端の花。   小さな子が指を指したとき それに謝るお母さんに微笑む人。   嘘のようにお母さんが優しくなる風邪を引いた日 風邪が治ったときの月曜日感。   アイスを3つも食べれる夏祭りの日。 お腹を抑えてアトラクションくらい長い仮設トイレの列に並ぶとき。   花火を見ながら食べる無駄に高いフランクフルト トイレットペーパーがギリギリ足りたけど次の人を考えるとき   友達のお母さんが送ってくれるって言ったとき それがまさかのバイクだったとき   リアルで初めて見たけど美味しくない渦巻きキャンディ   「消しゴムを使い切った」と自慢する友達の顔   客を覚えていたけどいつものが違った店主   ドアを開けたときコーヒーよりも冷気を感じる喫茶店 嫌がる友達のバイト先に行くのにシフトじゃなかったとき   虹を見た日に星も綺麗だったのを知るニート   窓の隅に住んでいたクモが少し大きくなっていたとき   「強盗にきをつける」と張り紙をしても窓を開けて出かけるおばあちゃん   タネを飛ばして芽が出たスイカを真面目に育てようとする子ども それを見て本気になるお父さん 好きな人と同じ時間の昇降口でずっと靴紐縛ってるとき それに気づいて友達との話を伸ばすとき 久々にドーナツを食べたいと思ったらクーポン見つけたとき 結局使うの忘れちゃうとき   今日の晩ご飯をお父さんと予想し合うとき どっちも大外れなとき   おはようと挨拶してくれる近所の人が組事務所に入ってくのを見た人   買い替えたいスマホを湯船に落としても奇跡的に無事な人   急に仕事が休みになったとき 結局やることがなくて1日を無駄にする人   台風が過ぎ去ったときの匂いと大量の落ち葉掃除   ジェラート屋さんで悩んだ挙句バニラアイスを頼む人 でもそれが1番満足するとき   銭湯に行ったら大家さんと会ったとき 話題を探して腕の筋肉を褒められるとき   川遊びで溺れている子供を助ける妄想をするカナヅチな人   テレビを見ながら俺ならこうする、といいながら、やっぱり…と悩む人   ジムでトレーナーから、センスがあると励まされていきなり120キロあげたがる人   焦って行ったけど、相手もまだ来ていなかったときの勝ち誇った気持ち   紙コップに名前を書いてくれるけど全く読めない甥っ子の文字   引っ越しで4Kのテレビをもらえたけど部屋に入らないとき   腕時計を褒めてもらえて、うんちくを語り出すけど偽物だった人   スーパーで見つけるまで、お母さんの手作りジャムだと思ってた人   枕カバーが違うと寝られない叔父さんが、ソファーで爆睡してたとき まだまだたくさん、あるでしょう   ああ、生きていてよかったと 思える瞬間   なんの価値もなくて 誰も切り取らない   でもだからこそ美しい 誰にも知られず、ただそこにいて。  

14
3

人生不採用(中途採用歌)

人生不採用 おでん屋で 爪楊枝を咥えて 武勇伝を語って 躊躇って躊躇って眠る。 終電を逃した 銭湯で へそ毛のじじいの 仕事話で のぼせて搬送 学校の帰り 空を眺めて 側溝のブタクサ 泥だらけの国語   夢を見ていた未来の姿 未来とは明日なことを忘れて 睡眠を削り突っ伏して眠る 信じてたあの頃 あの頃は七時頃。 それが嘘なんて、誰が言ったの 聞けよ、こころに お前は、爪を切って切るのか 道はそこにあるって言われても お前のことをそいつは知らない   聞けよ、こころに お前は、それで眠れてるのかい 誰かのために生きること それも確かな夢ではあるだろう     喫茶店で 恋愛相談 彼女できたことが 一度あるなら キッチンバイトで 先輩面してた男 介護してる そんなの知らん   デジタルで 本を読みたくて 本屋に行って 説明本を買う ただ青かった夏、茶色ぶるコロッケ 楽しかったなんて 50でお前も言うだろう 聞けよ、こころに お前は、ちりちりできているのか 芸能人の不倫ニュースに 怒れるくらいの元気はあるのか   聞けよ、こころに お前は、空を見上げているのか 富士登山するドキュメンタリーに 泣けるくらいがちょうどいいだろう ああ、あなたのその怒り顔が ずっと、将来永久に 石像になればいいのになあ       暗い夜道に一人だけ 街灯のスポットライトで ライブして 職務質問   明日は早起き目覚まし 6時か7時か悩んで 結局深夜一時で 翌朝十時に絶望 そして休み   誰も諦めてなんてない 諦める勇気はない それでも尿酸値と生きる 最終コーナー回って ぶっちぎりの一位 みんなにチヤホヤされて そこで正座でお辞儀するような そんな人間でありたい そんな人生でありたい     人生不採用 人生不採用 人生中途採用可

10
0
人生不採用(中途採用歌)

石ころ

僕は石ころみたいなものさ 角を削られ社会の波に飲まれてる いつも眺めてたカワセミと 懐かしいあの場所 戻れないし戻らない でもずっと残ってほしい 君は天然水みたいに 澄み切ったその瞳で 僕の横にただ座る 僕はどこに忘れてきたんだろう いつのまにか溶けて消えていた 泥がへばりついたような気持ちで いじらしいやつと言われて 毎日生きているというのに 泳いでる魚たちを眺める僕に 君は顔をのぞきこんで言う 石ころがあってくれるから ここの水はこんなにも綺麗でいられるのね、と

11
0
石ころ