エヴァンゲリオン

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エヴァンゲリオン

第6話「正美とマリアの計画」

白い精神世界。 「もう一回やってみよう」 「うん……!」 正美とマリアは、何度も“入れ替わり”の練習を繰り返していた。 深く潜る正美。 上へ向かうマリア。 少しずつ、少しずつ。 成功に近づいている実感があった。 ⸻ 「さっきの、あと少しだったね」 「うん! こんどはもっといけそう!」 マリアは笑う。 その笑顔を見て、正美は少しだけ目を細めた。 (……本当に、返せるかもしれない) ⸻ 現実世界。 正美は、その計画を国王と王妃に伝えた。 ⸻ 「……なるほど」 国王は腕を組み、深く考え込む。 「精神の“位置”を入れ替えることで、主導権を移す……か」 完全には理解できていない。 だが―― 「理にはかなっている」 「少なくとも、何もせぬよりはいい」 ⸻ 王妃は、祈るように手を握っていた。 「……マリアが……戻るのですね……?」 その問いに、正美は少しだけ迷い―― それでも答える。 「……可能性は、高いです」 王妃の目に、涙が浮かぶ。 「ありがとうございます……」 その言葉は、本心だった。 ⸻ 「だが」 国王が静かに口を開く。 「その場合、お主はどうなる」 空気が、止まる。 ⸻ 「……おそらく」 正美はゆっくりと答えた。 「私は……消えます」 「元々、死んだ身ですから」 「本来いるべき場所に戻る……のだと思います」 ⸻ 王妃が息を呑む。 「そんな……」 国王も、言葉を失った。 ⸻ 「……それでも、やるのか」 静かな問い。 正美は、迷わなかった。 「はい」 「これは……私が奪ってしまったものですから」 その覚悟に、国王は目を細める。 「……そうか」 それ以上は、何も言わなかった。 ⸻ その日の夜。 精神世界。 ⸻ 「ねえ、まさみ」 マリアがぽつりと聞く。 「なに?」 「まさみは……わたしにからだをかえしたあと……どうなるの?」 正美は、一瞬だけ言葉に詰まった。 (……来たか) 避けては通れない問い。 ⸻ 「……多分ね」 できるだけ優しく、言葉を選ぶ。 「天国に行くと思うよ」 「てんごく……?」 「死んだ人が行く場所」 「安心できる場所、かな」 ⸻ マリアは少し考えて―― そして、顔を上げる。 「じゃあ……」 「からだをかえしたら……」 「おわかれになっちゃうの?」 ⸻ その言葉は、まっすぐだった。 正美の胸に、深く刺さる。 ⸻ 「……うん」 否定は、しなかった。 できなかった。 ⸻ しばらく、沈黙。 白い空間が、やけに広く感じる。 ⸻ 「……やだ」 小さな声。 「え……?」 「やだよ……」 マリアの目に、涙が浮かぶ。 「せっかく……いっぱいおはなししたのに……」 「ともだちに……なれたのに……」 ⸻ 正美は、何も言えなかった。 ただ、隣に座る。 ⸻ 「……わたし」 マリアは震える声で言う。 「まさみがいないの……やだ……」 ⸻ その言葉に。 正美の中で、何かが揺れる。 (……私は) 返すべきだ。 それが正しい。 でも―― (この子は……) ⸻ 正美は、ゆっくりとマリアの頭に手を伸ばした。 触れられるはずのない世界で、 それでも、そっと撫でる。 ⸻ 「……大丈夫だよ」 「え……?」 「きっと、忘れないから」 「マリアのこと」 ⸻ マリアは首を振る。 「ちがう……!」 「わすれたくないじゃなくて……」 「いっしょがいいの……!」 ⸻ その言葉に、正美は目を閉じた。 ⸻ この選択は、正しいのか。 それとも―― ⸻ 白い世界で、二人はただ座っていた。 答えの出ない問いを抱えたまま。

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第6話「正美とマリアの計画」

第5話「解決策の可能性」

白い精神世界。 今では、その空間に静けさはなかった。 「それでね、その本の続きが――」 「えー! うそ!」 マリアの声が弾む。 あれほど怯えていた少女は、もうそこにはいない。 正美の隣で、普通に笑っていた。 ⸻ 「……ねえ、マリア」 ふと、正美が真剣な声を出す。 「なに?」 「ちょっと……試したいことがあるの」 マリアは首をかしげる。 「ためしたいこと?」 正美は少しだけ視線を落とす。 「身体を……返せるかもしれない方法」 その言葉に、空気が変わった。 「ほんとに……?」 期待と不安が混ざった声。 「うん。でも……絶対じゃない」 正美は正直に言う。 「もしかしたら、うまくいかないかもしれないし……」 「逆に、もっと変なことになるかもしれない」 その言葉に、マリアは少しだけ黙った。 ⸻ 「……それでも」 小さく、でもはっきりと。 「やってみたい」 その目には、もう恐怖だけじゃなかった。 「わたし……ちゃんと、かえりたい」 ⸻ 正美はゆっくり頷く。 「……わかった」 そして、自分の考えを説明し始めた。 ⸻ 「この場所ってね、多分“深さ”があるの」 「ふかさ……?」 「うん。今ここは、中間くらい」 「で、私がもっと“奥”に行く」 「マリアが“外側”に近づく」 マリアは考え込む。 「じゃあ……」 「まさみが奥まで行って、わたしが上に行けば……」 「身体に戻れるかも?」 「そう」 正美は静かに頷いた。 ⸻ 「でもね」 少しだけ、声が重くなる。 「戻れなくなる可能性もある」 「え……?」 「私が奥に行きすぎて、戻れなくなるとか」 「マリアが途中で止まっちゃうとか」 「……最悪、どっちも動けなくなるかもしれない」 それは、賭けだった。 ⸻ マリアはしばらく黙っていた。 そして―― 「……やる」 迷いはなかった。 「まさみがいるなら、だいじょうぶ」 その言葉に、正美は少しだけ目を見開いた。 (……信じてるんだ) ⸻ 「……じゃあ、始めようか」 正美はゆっくり立ち上がる。 白い空間が、少しだけ歪む。 奥へ。 深く。 沈むように。 ⸻ 「マリアは、上に行くイメージ」 「うん……!」 マリアはぎゅっと拳を握る。 ⸻ 次の瞬間。 世界が動いた。 下へ引っ張られる感覚。 上へ押し上げられる感覚。 二つの意識が、すれ違う。 ⸻ 「……っ!」 正美の視界が暗くなる。 深く。深く。 沈んでいく。 (ここが……奥……?) ⸻ 一方で。 マリアの世界は明るくなっていく。 光。 音。 感覚。 (……からだ……!) ⸻ その瞬間。 ⸻ 現実世界。 ベッドの上で、マリアの身体がびくりと震えた。 閉じていた瞳が――ゆっくりと開く。 「……ぁ……」 小さな声。 それは―― 今までとは違う響きだった。 ⸻ 「……おかあ……さま……?」 涙が、自然とこぼれる。 (うごく……) (これ……わたしの……!) ⸻ だが、その直後。 ズキン――! 強烈な頭痛。 「……っ!」 視界が歪む。 体が、ぐらつく。 ⸻ 『……まさ……み……!』 マリアが叫ぶ。 だがその声は、完全ではない。 半分、重なっている。 ⸻ (……ダメだ) 奥で、正美が気づく。 (まだ……完全じゃない……!) ⸻ 次の瞬間。 意識が引き戻される。 強制的に。 ⸻ 「……はぁっ!!」 マリアの身体が大きく息を吸う。 瞳の色が、わずかに揺れる。 そして―― 静かに閉じた。 再び、精神世界。 「……っ……!」 マリアがその場に崩れる。 「いまの……!」 「……一瞬だけ、できた」 正美も息を乱していた。 ⸻ 「でも……」 「完全じゃない」 「うん……」 マリアも理解していた。 ⸻ それでも。 二人は、顔を見合わせる。 そして―― 少しだけ、笑った。 ⸻ 「……できるね」 「うん」 ⸻ それは、小さな一歩。 だが確実に―― “解決への可能性”だった。

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第5話「解決策の可能性」

第4話「正美とマリアの精神世界」

目を閉じると―― そこは、白い空間だった。 上下も、奥行きも曖昧な、ただ広がるだけの世界。 「……ここが」 正美は直感する。 (マリアの中……) 一歩、踏み出す。 足音はしない。 ただ、自分の存在だけが浮いているような感覚。 「……マリア?」 呼びかける。 返事はない。 だが、気配はある。 遠く。ほんのわずかに。 ⸻ 歩き続けると、やがて“それ”は見えた。 小さな背中。 膝を抱えて座り込む、幼い少女。 金色の髪が揺れている。 「……マリア」 少女の肩がびくりと震えた。 だが、振り向かない。 「……かえして」 小さな声。 「それ……わたしの……」 胸が痛む。 「……ごめん」 正美は、正直に言った。 言い訳はしない。 できない。 「でも……どうしたらいいか、わからないの」 ⸻ 沈黙。 マリアは顔を上げない。 「……やだ」 ぽつりと。 「あなた……こわい」 その一言は、刃みたいだった。 (……当然だよね) 正美は少し距離を取って座る。 近づきすぎないように。 「……じゃあ、ここで話すだけでもいい?」 返事はない。 でも、拒絶もない。 それだけで十分だった。 ⸻ それから――何度も、この場所に来た。 最初は一方的だった。 正美が話し、マリアは黙る。 やがて、 「……それ、なに?」 小さな質問が返ってくるようになった。 「これ? これはね、本っていうの」 「ほん……?」 「お話がいっぱい入ってるもの」 そんな、他愛もない会話。 ⸻ 少しずつ。 本当に少しずつ。 距離が縮まっていく。 ⸻ ある日。 マリアが、ぽつりと聞いた。 「……なんで……いるの?」 その質問に、正美は少しだけ考えた。 「……死んじゃったから」 「しんだ……?」 「うん。元の世界で」 マリアは、少しだけ顔を上げる。 「……さみしくないの?」 その問いに、正美は少し笑った。 「……さみしいよ」 「すごく」 その答えに、マリアは黙り込んだ。 ⸻ しばらくして。 小さな足音。 マリアが、少しだけ近づいてきた。 ほんの一歩。 でも、それは大きな変化だった。 「……あなた……なかないの?」 「え?」 「わたし……いっぱい、ないた」 正美は、少しだけ目を伏せる。 「……泣きたいけどね」 「泣く暇もなかった」 その言葉に、マリアはじっと正美を見つめた。 ⸻ 「……ねぇ」 初めて、自分から話しかけてきた。 「……おはなし……して」 正美は、少し驚いて―― そして、優しく頷いた。 「いいよ」 ⸻ 白い世界に、声が響く。 物語の話。 元の世界の話。 どうでもいいような話。 それでも、その時間は確かに温かかった。 ⸻ やがて。 マリアは、正美の隣に座るようになった。 まだ少し距離はある。 でも、もう背中を向けることはない。 ⸻ 「……まさみ」 小さな声で、名前を呼ばれる。 「なに?」 「……ちょっとだけ……いいよ」 「……え?」 「からだ……つかうの」 時間が止まったように感じた。 それは、許しではない。 でも――拒絶でもない。 ⸻ 正美は、ゆっくりと頷いた。 「……ありがとう」 その言葉に、マリアは小さく首を振った。 「……まだ……ぜんぶじゃないから」 ⸻ それでも。 確かに一歩、前に進んだ。 これは―― 奪った者と、奪われた者の物語。 そして。 少しずつ、共に生きる物語へと変わり始めていた。

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第4話「正美とマリアの精神世界」

第3話「国王からの頼み事」

翌朝。 まだ日が昇りきらない時間に、部屋の扉が静かに叩かれた。 「マリア様……いえ、正美様」 少しだけ言い直す声。 それが、現実を突きつけてくる。 「国王陛下がお呼びです」 「……わかりました」 ⸻ 玉座の間。 昨日と同じ場所。 だが、空気はまるで違っていた。 「来たか」 国王の声は、落ち着いているが重い。 「広田正美、と言ったな」 「……はい」 「マリアは今、どうしている」 一瞬、言葉に詰まる。 頭の奥に意識を向けると―― 静かだ。 『……すぅ……すぅ……』 小さな寝息のような感覚。 「……眠っています……」 「そうか……」 国王は目を閉じ、わずかに安堵したように息を吐いた。 ⸻ しばらくの沈黙の後。 「……頼みがある」 低く、しかしはっきりとした声。 正美は顔を上げる。 「解決策が見つかるまでの間――」 国王の視線が、まっすぐに突き刺さる。 「マリアの話し相手になってやってはくれぬか」 「……え……」 予想外の言葉だった。 「わたし、で……よろしいのですか……?」 思わずそう聞き返す。 すると国王は、わずかに首を振った。 「お主にしか、できぬ」 その一言は、重かった。 「マリアは今、暗闇の中にいるようなものだ」 「声は届いているのだろう?」 「……はい」 「ならば――その子を、一人にするな」 ⸻ 胸が、締め付けられる。 (私が……追いやったのに) 罪悪感が、言葉を鈍らせる。 「……わかり、ました……」 それでも、逃げることはできなかった。 「私が……話します」 ⸻ その時。 国王はもう一人へ視線を向けた。 「竹川ヒロミ」 「はい、陛下」 一歩前に出るメイド。 「お主はしばらくの間――」 一拍置いて、告げる。 「“マリアの専属”ではなく、“広田正美の専属メイド”に任ずる」 空気がわずかに張り詰める。 それは、立場の変化を意味していた。 「……かしこまりました」 ヒロミは深く頭を下げる。 しかしその瞳には、複雑な色が浮かんでいた。 主を失った悲しみと―― それでも仕えねばならない現実。 ⸻ 「正美」 国王が静かに呼ぶ。 「これは命令ではない」 「……え?」 「父としての、頼みだ」 その言葉に、正美は息を呑んだ。 「……必ず……守ります」 それは誓いだった。 誰に対してのものかは、もう分かっている。 ⸻ 部屋へ戻る途中。 ヒロミがぽつりと呟いた。 「……正美様」 「はい……?」 「マリア様は……優しいお方でした」 足が止まる。 「きっと……今も、そうです」 それだけ言って、ヒロミは前を向いた。 ⸻ 部屋に戻り、ベッドに座る。 静かな空間。 ゆっくりと目を閉じる。 「……マリア」 呼びかける。 返事はない。 それでも、もう一度。 「……聞こえてる?」 しばらくして―― 『……や……』 かすかな声。 消えそうなほど弱い、それでも確かな声。 正美は、そっと呟いた。 「……これから、話そう」 「たくさん」 それが、贖罪の始まりだった。

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第3話「国王からの頼み事」

第2話「マリアの両親への告白」

頭の奥で、泣き声が止まらない。 『かえして……かえしてよぉ……!』 (……まだ、いる) 広田正美は理解していた。 完全に消えたわけではない。 この身体の“本来の持ち主”――真田マリアは、今もここにいる。 「……隠せない」 このまま何もなかったことにする? 無理だ。 言葉の違和感。 振る舞い。 思考。 2歳児ではあり得ないそれは、必ず露見する。 「……話すしかない」 正美はそう決断した。 ⸻ 王城の廊下。 マリア専属のメイドに抱えられながら、正美は玉座の間へと向かっていた。 「マリア様、本当に……大丈夫なのですか?」 不安げな声。 その意味を、正美は理解している。 (大丈夫じゃない。でも……) 「……おとうさま……おかあさまに……はなす……」 たどたどしい言葉。 だがその中身は、28歳の意志だった。 ⸻ 玉座の間。 国王と王妃は、突然の呼び出しに戸惑っていた。 「マリア? どうしたのだ」 優しい声。 それが、逆に胸に刺さる。 正美は、ゆっくりと口を開いた。 「……わたしは……マリアじゃ……ありません」 空気が凍りついた。 「……何を言っている?」 国王の声が低くなる。 「わたしは……ひろた……まさみ……」 途切れ途切れに、それでも必死に伝える。 事故。 死。 そして転生。 この身体に、もう一人いること。 全てを、隠さずに話した。 ⸻ 沈黙。 「……荒唐無稽だ」 国王が言い放つ。 当然だ。信じられる話ではない。 だが王妃は違った。 「……では……マリアは……?」 震える声。 その問いに、正美は答える。 「……います……なかで……ないてます……」 その瞬間、王妃の顔から血の気が引いた。 ⸻ 「証拠を示せ」 国王の目が鋭くなる。 試されている。 (当然だよね……) 正美は深く息を吸い―― 話し始めた。 マリアの好きな絵本。 お気に入りのぬいぐるみ。 怖がるもの。 眠る時の癖。 そして、昨日の出来事まで。 本来知り得ないはずの“すべて”。 「……なぜ、それを知っている」 国王の声がわずかに揺れる。 「……このからだに……あるから……」 王妃は、涙をこぼした。 「……本当に……マリアなのね……」 否定も、肯定もできない言葉だった。 ⸻ 再び沈黙が訪れる。 やがて国王は、ゆっくりと口を開いた。 「……理解はできぬ。だが、否定もできぬ」 そして、重々しく告げる。 「この件、外部に漏らすことは許さん」 メイドに視線を向ける。 「決して、誰にも話すな。王命だ」 「……は、はい!」 緊張に震えながら、メイドは頭を下げた。 ⸻ 「解決策を探る」 国王はそう宣言した。 「この状態が何であれ……マリアを救う方法は、必ずあるはずだ」 その言葉に、王妃は顔を覆って泣いた。 ⸻ 正美は、その光景を見つめていた。 (……私は) この家族を壊した。 奪ったのは、身体だけじゃない。 時間も、未来も、全部。 頭の奥で、小さな声がする。 『……ママ……』 正美は目を閉じた。 「……ごめんなさい」 その言葉は、誰に向けたものだったのか。 自分でも、わからなかった。

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第2話「マリアの両親への告白」

第1話「肉体の強奪」

仕事帰りの夜道。 広田正美は、いつものように研究資料のことを考えながら歩いていた。 次の瞬間――視界が白く弾けた。 強烈な衝撃。 ブレーキ音。 そして、すべてが途切れる。 ――死んだ。 その事実を理解する間もなく、意識がふっと浮かび上がった。 「……え?」 目を開けると、見知らぬ天井。 豪華な装飾。柔らかいベッド。自分の手を見ようとして――違和感に気づく。 小さい。 異様なほどに。 声を出そうとしても、 「……あ、ぁ……」 言葉にならない。 (なにこれ……!?) 混乱したその瞬間―― 『いやぁぁぁあああああ!!』 頭の中に、もう一つの“声”が響いた。 幼い少女の泣き叫ぶ声。 「なに……これ……誰……?」 『こわい、こわいよぉ……! ママ……!』 その声は、自分の意思とは無関係に響き続ける。 やがて、断片的な記憶が流れ込んできた。 ルーミア王国。 王城。 そして――「真田マリア」という名前。 (まさか……転生? それも……) 鏡に映った自分を見て、確信する。 金色の髪。 幼い顔。 ――二歳ほどの少女。 「……王女……?」 理解が追いつかない中、再び頭の中の声が叫ぶ。 『返して……それ、わたしのからだ……!』 その瞬間、正美ははっきりと感じた。 この身体には、もう一人“いる”。 (つまり……二重人格? いや、違う……) これは――本来の持ち主だ。 『いやだ、いやだ……! かえしてぇ……!』 必死に抗うように、内側から何かが押し返してくる。 だが。 「……落ち着いて」 無意識にそう呟いた瞬間、波が引くように抵抗が弱まった。 28年間積み重ねた意識と、2歳の幼い意識。 その差はあまりにも大きかった。 押し寄せる思考。 論理。 自己という輪郭。 それらすべてが、幼い魂を覆い尽くしていく。 『……や……』 声が、遠ざかる。 『……こわ……い……』 そして――静寂。 完全に“支配”した。 「……はぁ……はぁ……」 荒い呼吸だけが残る。 何が起きたのか、理解できない。 ただ一つだけ、確かなことがあった。 (……今の、私がやったの?) 自分は――誰かの身体を、奪った。 その事実だけが、重く胸にのしかかるのだった。

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第1話「肉体の強奪」

最終章 始まり

空が歪む。 再び現れる、“巨大な手”。 戦いは終わっていない。 「行くぞ」 メリオダスが言う。 全員が構える。 ニシンヒラゴは、少女の前に立つ。 「……大丈夫」 守るように。 少女は空を見る。 その“手”を。 そして思う。 (これは……ただの戦いじゃない) 物語は、ここから始まる。

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第8章 もう一人

静寂。 だがその時。 後ろから、小さな足音。 振り返る。 そこにいたのは―― 見慣れない存在。 小柄な少女。 だが様子がおかしい。 「……誰だ?」 誰も知らない。 七つの大罪の仲間ではない。 その時。 ニシンヒラゴが前に出る。 「その子は……」 少しだけ、優しく。 「私が連れてきた」 全員が驚く。 「あの中に……いたのか?」 彼女は頷く。 「一人で……いた」 少女は何も言わない。 ただ、周囲を見ている。 まるで“観察するように”。

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第7章 元の大きさ

その瞬間。 身体が元に戻る。 「……戻った……」 キングが呟く。 ディアンヌも、元の姿へ。 本拠地の中だけの異常だった。

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第6章 脱出

空間が崩れる。 「逃げるぞ!!」 メリオダスが叫ぶ。 全員が走る。 小さな身体のまま。 出口へ。 そして―― 外へ飛び出した。

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