花火玉。

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花火玉。

小説作家が夢のバリバリ中学一年生男児! 小学校四年から六年まで「縦式」使ってました! ここにきて、これに切り替えることに! よろしくおねがいします! 夢のため、率直な感想がガンガン欲しいです!

深夜徘徊

深夜11時59、街灯が夜風で冷たくなった僕の体を照らす 体は氷のようなのに、心の芯から熱が湧き上がっている 白い花がはらり、はらり、と舞い散って溶ける 昼には銀世界が待っているであろうこの世界に 腕時計が、深夜12時を知らせる 「こんにちは、2026年。さようなら、2025年」 家に帰った僕は、一人で祝杯をあげた。

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深夜徘徊

「刀」なんて、なんであるんだろう

拙者はただの雑兵。名を篠川玄門(しのかわげんもん)と申す。 刀を腰に関ヶ原に送り出された今。矢が飛び交い、土は赤黒く染まり、絶え間なく聞こえる悲鳴。 「ここは…地獄か……?」 刀を持った手が震える。無論、武者震いではない。ただの恐怖によるものなり。 何故、刀なんてものが存在致すのか…! それに対して拙者の仲間、血罪(けっさい)は「敵を全て斬る。拙者どもには、それだけで候。 もう拙者は…戦しか頭にない」 その一言に、ゾッとしたっけ。 敵の矢を甲冑で受けて、刀で大将を仕留めようと、刀を振るう。 「何故、刀なんぞがあるのだ」 ボソッと呟いたが、敵の将軍は答えた。 「…守るために候。守るもの無き者の何が武士。 おぬし、国を守るために、天下を守るために天下を賭けて参ったのでは無いのか?」 その一言にハッとしている。しかし… 「ぐっ…」 後ろから味方の流れ弾を首に…⁉︎不覚… 「おぬし…名を…なんと申す…?」 拙者は尋ねる。 「徳川家康と申す。 …短い間だったが、面白いやつよのう。 ……拙者、おぬし達のような者を「守る」ために刀を振るう者なり。 おぬしの無念、拙者が請け負おう」 「かたじけ……な……い…」 ドサッと、拙者は倒れる。 意識が薄れてゆく中、家康殿の涙が拙者にこぼれ落ちるのを感じた。 「安らかに眠れ、迷える戦士よ」 そこで、拙者の意識は消え去った。

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「刀」なんて、なんであるんだろう

くりーむめろんそーだ 1 始動

時期は秋。緑球高一年五組に所属する私、緑野雫(みどりのしずく)は、目の前のプリントに頭をフル回転させている。 「学園祭の出し物希望調査用紙」と書かれたプリント。 高校初の学祭。 無駄にするわけにはいかない。 王道を攻めるなら、カフェや劇だ。 でも、それでは捻りがない。 周りがガヤガヤとざわつく中、私にも紅咲良(あかいさくら)が話しかけてきた。 「ねえねえ、しずはどーすんの?」 「んー、迷ってる。そっちは?」 「一緒」 「だよね〜…」 参ったな。 そこに、白由玲(しらよりれい)が混ざる。 「人間に欠かせないものを用意したらどうだ?」 と、意味のわからない事を言い出した。 「えっ、御手洗作るの⁉︎」 と咲良。 「バカ。なんか違う! 例えば…服とか売ってみるか?」 「手間かかりすぎ…」 そう言って咲良は水筒に手を… 水筒? 私の頭にパチっとアイディアが弾ける。 「コレだ!二人ともナイス!」 周りから冷たい視線。 「静かにプリントに記入してください」 「す、すみません…」 そこから数秒、沈黙が続いたが、玲が口を開く。 「で、何を思いついたんだ?アイディアの女魔王」 「そこは女神にしてほしい。女魔王は酷すぎ」 「悪い、つい本音が」 と淡々と語る。 「いや本音かよ!」 と咲良がつっこむ。 「ドリンクバー、なんてどう?」 と小声で囁く。 その声に反応して、二人は目を輝かせる。 「「それだー‼︎」」 「ウホン‼︎」 「「すみません…」」 教室中から笑いが飛び交う。 そこから迷わずに「ドリンクバー」と記入した。 それから数分。 議長がプリントを集計し、アイディアをまとめた。 「候補を発表します。 ロミジュリ八票、メイドカフェ十二票、執事カフェ八票、ダンスバトル二票、ラップバトル一票、漫才二票……ドリンク、バー…三票…︎⁉︎」 普段は静かな書記の時雨さんも、「ドリンクバー」の一言にギョッと目を見張っている。 「え、ええと、それぞれ質問等ありましたら挙手をお願いします」 ハイ、ハイハイと約十人。 「あの、ドリンクバーって、具体的にどう言った感じなんですか?」 誰が言い出したかもわからない案に対して、話す人を探してみんなキョロキョロ。 「言い出しっぺは私。詳しく私と咲良と玲で話すね」 「お願いします」 私は人差し指を立てる。 「まず、きっかけから話すね。話し合ってた時に、玲が「人に欠かせないものなんてどうだ?」みたいな事を言って、そこで咲良が水筒を飲んでいる時に、アイディアが浮かんだの。 人間、水分がなけりゃ生きていけないでしょ? コレが、一つ目の理由」 そして、中指も立てる。 「二つ目は、簡単。 王道はロミジュリやカフェ。 でも、そんなネタは聞き飽きたから、捻ろう、という事。 学祭で「ドリンクバー」なんて聞いた事ないから、行ってみたい!って思うでしょ?」 「確かに…」と同調する人が出てきた。 「今私がパッと思いつくメニューはあまり多くはないかな。 飲み物がコーヒーに抹茶ラテ、メロンソーダジンジャーエール、サイダー。 でも、飲み物だけだとあまり楽しくない。 軽食を入れたら大分来るかなって思ってる。 その軽食は、一口フルーツサンド3コとか、ミニパフェとか、チョコ、クッキー。 五百円以上のお買い上げでフルーツサンド1コおまけ、とか」 などとペラペラ話すと、あたりは静まり返る。 アレ?伝わりにくかったかな? って思ったけど、すぐにみんな盛り上がった。 そこから、全員ドリンクバーに票を入れて、決定。 私たち三人は、企画係に任命されてしまった。

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くりーむめろんそーだ 1 始動

終焉の鐘3

…さっきは言い過ぎた。 鎮静剤を飲んでしばらくベッドに座っていた。 そりゃ、そうだろうな。 勝手に「いずれ」を早めて、すぐ聞いた途端「介護する」「身代わりになる」って。 そりゃ怒るよ。当たり前だ。 震える指で、ナースコールを押した。 それから間も無くして、扉が開く。 「…気は済んだかい?」 「はい。先程は大変申し訳ございませんでした」 「いやいや、いいんだよ。それより、メイさんの容態について、二人で話したいことがある」 …二人で、話したいこと? なんだろう。 込み入った話になると読んで、扉を閉めてベッドから付き添い用の椅子に座り直した。 「なんでしょうか。なんでも聞きましょう」 「実は、彼女は精神病だ。未知であるが」 「精神?肉体ではないのですか?」 てっきり、なぜか心臓に異常があったり、脳がはちゃめちゃになってんのか、とでも思っていたら。 「ええ。精神病はご存知ですね?」 「鬱とかですよね?」 「ええ。おっしゃる通りです。 メイさんは、小さい頃に両親を事故で亡くしたと聞いています。合っていますか?」 「…合っているはずです。」 年長。ランドセルを買った帰りに交通事故で、亡くなった。それくらいしか聞いたことはない。 聞けなかった。聞きたくもなかった。あれ以上メイが傷付くのが、嫌だったから。 「メイさんは、頼れる人がいないのです」 「え?親戚は?」 「母方の祖父母はお亡くなりになられて、父方は祖父母共に元気だとか。 でも、養うどころか海外に昏睡状態で入院しているので、実質いません」 「そう、なんですか…」 俺、知らないこと多いな。 好きな人なのに。 俺、無力だな。 「なので、私はユウさんに賛成です。 貴方だけが、メイさんにとって「頼れる人」なんです。 ユウさんといたら、変わるかもしれません」 驚いた。 先生のことだから、ユイの意見を優先すると思ったら。 「で、どう思うんですか?」 「えっと…」 答えようとして違う違う、と手と首を横に振る。 「ユイさん、ナースコールを押して出てきてくださいよ。心配ですから」 いやいや、いるわけな… 「すみません」 居た。 空いたままの扉の横から中に入ってきた。 「いたのかよ…」 「ごめんね。さっきも、今も」 「こちらこそ」 …… 沈黙が続く。そこを、先生が打ち砕いた。 「で、どうするんですか?」 「…大人しく入るよ。 ゆっちがこういう大きいこと決めた時は、絶対曲げないからね。 何年一緒にいると思ってんのよ」 「いいのか⁉︎」 ここで、ユイは人差し指を立てた。 「ただし、条件」 「な、何?」 「私の部屋があること。 そして、ノックもして。 もちろん、洗濯はゆっちのお母さんに任せるから」 「…当たり前だろ。アホか。俺がそんなにすけべか?オイ」 「念の為よ」 「…それでは、万が一のためにユウさんの親の連絡先を聞いても…」 俺はスマホを開き、NINE(ナイン)の連絡先を教え用と電源を入れる。 「ヤッベ…」 「通知」の欄には、 母さんから132通、友達から5、6通、先生から24通もの「不在着信」。 「アーもう!どーすりゃいいんだよ!」 とりあえず片っ端からかけるか… 「あ、私も。久遠さんとか桐谷さんとか先生からとか不在着信の山…」 これから苦労が待っているというのに、3人でドッと笑ってしまった。

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終焉の鐘3

届け、SOS。誰か、変えてくれ

誰か、地獄に終止符を打ってください。 誰か、「キボウ」を下さい。 ダレカ、「「ヒカリ」」ヲクダサイ。 •••••ーーーーー••••• 「逝ってきます。父さん、母さん」 そう言うなり、すくんだ足で地面を蹴って、海に飛び込む。つもりだった。 蚊がなくよりも小さな音。メガホンを3つ通してやっと聴こえる声。 親は、死んだ。 ボクは、なんで生きてたんだろう。 わかんないや。 べつに、死にたい訳じゃない。 消去法だ。 生きたくないなら、逝くしかない。 なのに。 「動けよ、足」 「生きたくないんだ、俺は」 「足、忘れたかよ。「親を殺した」足よ」 「足、忘れたかよ。虐められる苦しみを」 「俺の体、忘れたかよ。騙されて殺す気もないのに殺した俺の体よ」 …これじゃあ、まるで誰かに止められてるみたいだ。 「じゃぁ、お前は殺したかったのかよ。死にたかったのかよ」 と足が答えた気がした。 「そんな訳ないだろうが。俺には光も希望もない。SOSを送ってもどうせ誰も答えない!」 「冗談じゃねえよ。お前の親父も、お袋も。お前に殺されたからと言って、この光景を喜ぶと思うか?」 …全く、その通りだ。 「じゃあ、どうしろってんだよ」 「生きろ」 「やだね」 沈黙が続く。 「じゃあ、賭けをしよう。飛び込むがいいさ。 俺はもう何もしない。お前もな。 落ちるだけ。なるがまま。 それで生きて陸に打ち上がった時は…真っ当に生きろ」 「いいだろう」 今度こそ、地面を蹴る。じゃあな、最後の大地。じゃあな、日本。じゃあな、この世。        「本当にそうかな」 そう、最後に言われた気がした。        チャポン… 息がもたない。肺に氷のように冷たい真冬の海水が入ってくる。 苦しい。冷たい。暗い。怖い。 早く、ここから逃げたい。 そこで、僕は意識を失った。 白い天井。ふかふかの感覚。 ああ、生きてしまった。    「ほらな。生きてみろ。お前の幸せが、お前の親への罪滅ぼしだ」 …ありがとう、足。 悪かったな、足。 もう、観念するよ。 この足が、「俺」の恩人だ。 氷のように冷たかった胸が、急に熱くなってきた。 •••••ーーーーー••••• 伝わったのかな、SOS。 こんな「俺」を、助ける人がいる。かもしれない。 今度は、「俺」が助ける側にならないと。 これが、「俺」の新しい夢だ。

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届け、SOS。誰か、変えてくれ

何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい 親友を超える(1)

高校一年生。校外学習の時期。 氷のように冷たく、何も感じなないまま知識を得る。 どこにいくかは任せ、言われたことを実行する。 私の班は、私•氷女、日野朝陽、暁荒野(あかつきこうや)、影狼炎(かげろうほむら)、月光星一(げっこうせいいち)、工藤北斗(くどうほくと)、夏炎花火(かえんはなび)の7人班。 そして、どうでもいい校外学習が、今日。 今日の予定としては…知らない。 スタスタと、氷の表情で、この時間帯なのに人が少ない田舎の列車に乗り込む。 ……久々だな。このメンバー。 一応この7人は家が近くて幼馴染。 みんな、私の変わりように驚いたのか最近は日野としか話さない。 「日野」…か。 しっくりこない。 今まではあさっぴって呼んでたのに。 今日くらいは、良いよね? 「……あさっぴ」 突然ぽつりと呟いたのが、隣の朝陽に伝わる。 「……大丈夫か?急に。あだ名で呼んでさ…」 困惑を隠せない様子。 それに周りのみんなも反応する。 「…大丈夫、虐められてても、私が守るから!」 と炎。 「電車ではお静かにって教わらなかったのか?炎」 と茶化す星一。 「…何かあったら話してね」 と花火。 「まあまあ、みんな。今日くらいは前みたいに盛り上がっていこう!」 とまとめる目標の名前、「北斗」。 荒野はただ目を見開くだけだ。 「それにしても…前みたいだな。…まさか、日野に告白でもされたか?」 ドクン、ドクン、ドクンドクン、ドクドクドクドク…とまた脈が速く強く。 「いやいやいや。待て待て。 確…ウホン、俺はこの前公園で!宇宙に自信と夢を与えただけだ!」 「あれれ〜それって?それってぇ〜?」 「炎、黙れ」 「やだ」 人をバカにする瞳を朝陽に向ける炎。朝陽はその瞳をキッと睨みを利かせている。 それを私が何もできずにいる。 コレがしばらく続いて、目的の駅に着いたアナウンスがなる。 「なんでさ」 『何が?』 「校外学習の目的地が、遊園地なの?」 「え?楽しいから」 …呆れた。 炎は変わらない。 「まあまあ。先生も「学習するというより楽しんで来な!」っつってたじゃないか。それともずっと黙々と作業するか?」 と北斗が問う。 「私に「嫌」という感情はない」 「宇宙、すぐ「氷女」を主張する癖やめろ」 と言う朝陽。 「わかったよ、あさっぴ…」 と力無く話す。 さて、校外学習、開始だ!

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何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい 親友を超える(1)

何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい。 「越える。」

家に帰ると、「おかえり」と暖かく母さんが声をかけてくれる。 でも、その暖かさは私の冷たさに掻き消されていく。 どうせ、どんな言葉も、景色も、何もかも、私の「氷」に勝てない。 氷女。そんなあだ名は、今更だが、私にピッタリだ。 氷のように冷たく、無感情、無表情。 いつからだろうか。私が私でなくなったのは。 いつからだろうか。脈が運動でもしない限り狂わなくなったのは。 いまだに繰り返す自問自答。 誰か、答えを教えて欲しい。 「ワタシは、ダレ?」 「何か言う暇があるならご飯食べちゃいなさい。冷めるわよ」 冷める。そうか、私は冷めたのかもな。 そう、勝手に思ってしまった。 次の日の夜。 不意に、夜の街に飛び出した。 雨上がりの月夜。 また私は「超えて。」を聞いている。 そして、まだしっとりしてる近場の公園のブランコに、そっと座った。 水たまりに乱反射した私の姿に問う。 「私、どうなっちゃうの?」 と。 もちろん、答えない。はずだった。 「どうにでもなるさ」 と帰ってきた。 私の声じゃない。 コレは、日野の声? 「日野?」 その問いには答えずに、隣のブランコに腰掛けた。 「やっぱり、宇宙はそうなりたくなかったんだ」 「当たり前でしょ。感情もなくなって、常に冷徹。冷酷。無表情。こんなの、なりたいわけ無いじゃん」 「感情?あるさ」 無いだろ。バカ。 それが無いから、私はこうやって「氷女」なんだ。 「そんな自分を拒んでいるということ。それ自体が感情じゃ無いのか?」 そんなの、感情のうちに入るかよ。 そう言いたかったが、喉に何かがつっかえた様に言えなくなってしまった。 「宇宙、下を見てみろ」 見てみると、そこには乱反射した私と日野と街灯…花火のような、儚い光。 「宇宙はこの光、どう思う?」 「綺麗。私はこうなりたかったのかな」 「さあな」 沈黙が続く。 「でもよ、今度は上を見てみろ」 雨上がりのさっぱりとした無数の光がある宇宙。コレが、どうしたんだ。コレは、私には程遠い。乱反射した街灯より、もっと、もっと…… 「お前の名前はなんだ」 「……氷野宇宙」 「宇宙、だろ。 ということは、こんな街灯の光よりも強く明るく広く、綺麗なあの宇宙に、宇宙はなってるんだよ」 それは、名前でしょ。 そう言いたかったのに、またつっかえてしまった。 「最後に、こっちを見ろ」 ボサボサ頭の美顔……“日野朝陽”。 「ちょっ近い!」 また、ドクン…ドクンドクン…ドクドクドクドクと脈が速くなっていく。 「宇宙は、俺のことが嫌いか?」 ポー……っとしていたが、すぐにその問いで意識が戻ってくる。 「ううん…」 「俺は、宇宙が好きだ。その…“そういう”意味じゃ、ない、けど…」 カーッと日野が顔を真っ赤にする。頭からは、湯気。 ついつい、目を逸らして、気を紛らわすために、ブランコを思いっきり、漕ぐ。 そうか。今の私は、「宇宙」か。 なら、私はそれを「越えて」進む。地球も、宇宙も、「氷女」も。なんだって超えてやるんだ。 「私は越えるんだ。絶対に」 その言葉に満足したのか逃げたくなったのか、日野は満足げに笑って帰って行った。

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何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい。 「越える。」

何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい。 始まりは電車で

トクン……トクン……狂いのない正常な脈。 いつしか、コレが、私の日常になってしまった。 狂いのない毎日。面白みも楽しみも悲しみも怒りも全く湧かない虚無。 私の名は、氷原宇宙(こおりはらそら)。初恋がまだ来ない高校一年生。周りからは「氷女」と呼ばれている。 「それにしても氷女のヤツ、まだ初恋来てないらしいぞ」 「当たり前だろ。「氷」の氷女だからなぁ…」 と、私の目の前だということにも関わらず私の陰口を叩いている。(コレは、陰口と呼んでいいのだろうか) 学校とは、ただ学ぶだけの場所。それ以上でも以下でもない。 「ところで、知ってるか?日野朝陽のヤツ、氷女が好きっていうウワサ」 「なにそれ。アイツが?馴れ馴れしくしてるだけじゃねーのか?あの氷女が好きって、意味わからん」 ああ、日野か。 学校の生徒で唯一私を宇宙、と呼ぶクラスメイト兼幼馴染。 日野はいいヤツ。それだけだ。 あくまでも私の心を溶かせる太陽にはなれない。 それに、私のことを知って好きなんて、あるわけがない。 そう思ったことを合図に、チャイムが授業開始を知らせた。 ガタゴト、と電車に揺られる。 私と日野は微妙な距離感。二人だけの静かな車両。 イヤホンをつけて、お気に入りのアーティスト、「夏花火。」の「超えて。」を流す。 コレを聞いてる時だけ、脈が変わる。 目を瞑ってリラックスをする。それだけのつもりだったのに、いつの間にか私は夢を彷徨っていた。 「ー!?、。-^/')…宇宙、宇宙!」 と声が聞こえ、私は起き上がろうとするが、ゴチッと何かに当たった。今思えば、コレがはじまりの合図だったのかもしれない。 「ッ痛ー…お、おはよ、宇宙。駅、着くぞ」 「えっあ、ごめん」 「いや、いいよ。別に…」 額を抑え、耳を真っ赤にし、視線をあっちゃこっちゃに動かしている日野を見ると、久々に笑ってしまった。 「あ!笑った!」 と視線が私に定まる。 途端に、今まで感じたことないような大きく速い脈が私を襲った。 ドクン!ドクン!ドクンドクン!ドクドクドクトク…!と、どんどん大きく速くなってく。 「宇宙、頭から湯気出てるぞー」 「宇宙ー」 「宇宙ー‼︎」 むにゅー、っとほほを引っ張られて、私は気が確かになった。 「ごめん、ホントに」 そう小さく言ったつもりだが、アナウンスで掻き消された。 それからは、無言。無言で帰って、気がつけばもう布団の中にいた。 「あの時の脈は、一体何という名前なのだろうか…」 嫌、ではないんだけど…なんか、優しく、でも力強く掴まれたように胸が苦しくなって。私は一体どうなってしまったのだろうか。

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何もかもを超えて、またあなたと笑い合いたい。 始まりは電車で

記憶の深淵(久保井星矢体験談)

桜が舞う外。外では同級生が遊んでいる。 俺は、やりたいことがない。 つまらないんだ。 考えたら、すぐに答えが出てしまう。 武道も、嫌ではないし先生も好きだ。でも、楽しいはずなのに、やりがいを感じない。 ガリガリ、とシャーペンを走らせても、すぐに問題が解けて虚無が襲う。 それが嫌になって、俺は突然武道全般を教えている小武道場に向かった。 「お、久保井!一つ話があるんだが…」 あまり栄えていない小武道場の隅っこに、ちょこん、と小武先生が居た。 「なんでしょうか」 「お前、今の人生、楽しいか?」 …知ってるくせに。 「楽しくありませーん」 と、おちゃらけて言ってみる。しかし、はは、と笑い飛ばされてしまった。 「……答えがない学問って、気になるか?」 「答えのない、学問…?」 そんなのがあるなら、やりたい。 「なんですか⁉︎」と聞こうとする音は、「押忍!」という門下生の声に弾かれた。 「すまない、続きは明日だ」 と、門下生に先生が近寄っていく。 それから一日経った。 よし、そろそろ道場に行くか、と思った時、朝のニュースを思い出す。 「花粉が今日から急に酷くなります」と言っていたっけ。 だから、サングラスとマスクを付けて俺は小武道場に向かう。 「押忍」 そう言って中に入ると、同級生くらいの男に先生が教えてるのが見えた。 「お!ちょうどよかった。コイツと一本勝負してやってくれ」 そう言って、先生は早速模造刀を投げてきた。 「先生、模造刀は投げないでください」 「悪い悪い」 そういうや否や、もう一人の男にも「投げて」模造刀を渡した。 居合道。静かに俺は腰に模造刀を収めた。 勝負は思ったより早く終わった。俺の勝ち。 今までは妙な「敵意」のオーラを放っていたが、今、すっとそれが尊敬のオーラに気がした。 その男が俺を向いた途端、先生が俺を呼び出してあの男を待機させた。 「それで、何です?答えのない学問って」 ニヤリ、と先生が笑う。 「哲学だ」 哲学、ねぇ。答えがないことには間違っていない。けど……と俺が口を開く前に、先生が代弁した。 「宗教とか神秘的なものには興味がない。それに、それを知って何になる…だろ?」 「なら、何で…」 「テーマを変えればいい」 テーマ? 「生きる理由。人が存在した理由。人が心を持った理由。お前や俺が今ここにいる理由、とかな」 「だが、それを知って何に……」 確かに、その発想はなかったことは認める。でも、それは何にも実らないと思う。 「自分の存在意義やら何やらの論を考えて、「確かに」って思ったり、嬉しくなる。楽しくなる。お前は、それを求めていたんじゃぁないのか? その言葉を聞いて俺はグッと目を見開く。 「楽、しく……?」 「ああ、そうだ」 「だが、お前一人じゃ無理だ」 何でだ?と俺は思う。 「何しろ、自分だけで考えて自分だけで納得する…結局、つまんねえだろうが」 「言われてみれば、そうかも」 「それに、お前は猫をかぶってる。優等生のな」 優等生という仮面を俺に付けてる、ということだろうか。 確かに物足りないのに「面白い」とか、内申点が良くなるように「やります」とか嘘をついたこともあった。 「お前の本性は、探究心に塗れた変わり者だ」 「ぐぬぅ…」 否定できない自分が、悔しい。 「探究するためなら無鉄砲に突っ込む。そんなお前にピッタリの行き先と目的を教えてやろう」 「…なんです?」 「トキヤ高校だ。あそこにはヤンキーがわんさかいる。それに……」 トキヤ高校。その名を聞くだけで、俺はゾッとした。 「いやです」 「まあまあ、話を最後まで聞け」 「…」 聞いてやらなくもなくもなくもない。 「あそこの先生であり幹部だ。俺。だから、相性良さそうなやつ目星つけてかき集めてまとめて俺が持つ!」 「いやでもトキヤ高校…」 「お前は、どんな頭がいい奴がいる学校に行っても、楽しくないだろう?」 またも俺は食い下がる。完全に先生のペース。 「だったら、学歴より喜怒哀楽を優先しろ。いいところに入ることと幸せになることは違うぞ」 「…わかった。とても前向きに検討するよ」 と告げ、俺はいそいそと帰宅した。

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記憶の深淵(久保井星矢体験談)

終焉の鐘2

担架で運ばれていたのは、紛れもなく、メイだった。 俺、ユウはカバンを落とし、彼女の下へと寄っていく。 「…ゆっち……」 うっすら目を開けてこっちを見る。顔が青い。 「ああ、俺だ!メイ!何があった⁉︎」 その問いに対して「いずれわかる、今は、聞かないで…」とメイは答えた。 …なんだそれ。俺は心にドライアイスを入れたかのように、冷たいとも言えなくって熱いとも言えない。そんな感情が表れていた。 ひとまず、俺は救急車に同行。 後にメイから聞いたことは「ちょっと、大きかっただけだから」の一言。 メイには、親がいない。離婚して、母子家庭だったが、去年、他界してしまった。 俺とメイで話を聞いた方がいい、と先生は言った。 それに対してメイは「それは……」と答え、俺は「心配です。お願いします」と答えた。 メイの言う「いずれ」を早めて、今、知ろうとしている。 「メイさんは…」 「メイは?」 「一種の病気を患っています。新種の病気。時々こうやって「発作」が起きるんですが…そろそろ限界です。介護者を雇うか、入院した方がいい」 「新種」。その一言で、これがどれほど深刻な事態か、と言うのがよくわかる。 「そんなお金は…」ない。そう言おうとしたのだろう。 俺はその言葉を遮るように、「ウチで介護すればいいんですよね?」と言う。 「えっでも、ゆっち、それは…」 「俺たちはいいから!」 「迷惑なんてかけたくない!」 それに反応して、俺はここで本音を漏らしてしまう。 「お前が死ぬくらいなら!俺が身代わりになってやる!」 しまった。俺はハッとして口を抑える。 その途端、周りは絶句し、時が止まったように重苦しい空気が流れた。 「…すみません、つい本音が」 「ゆっち」 「なに?」 「次、そんなこと言ったら、「絶交」するから。こっちだって、ゆっちが死ぬくらいなら私が死ぬ覚悟で生きてるんだよ」 またまた重くなった空気を、先生が和ませる。 「まあまあ。 二人ともカッカしすぎだ。少し休むといい。介護の話はその後だ。気が済んだらナースコールを押してくれたまえ」 そう先生は告げて、鎮静剤と書かれた薬と病室の鍵2本を俺の手に置いて去っていった。

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終焉の鐘2