しん

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しん

アラフィフおばばですが、頭の中は小学2年生。好きな小説ジャンルはファンタジー。魔法とか大好きです。 pixivはhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18759061

愚痴、ぐちぐち

 ちょっとすまん。ここで吐き出させてください。ある人のことについて(家族)。  まあ嫌いじゃないんだよ。  私も一応母親だから、今までしてきた事の償いじゃないけどさ。  でも変わったとは思うけど、 『あ〜、結局それね』  そう思ってしまう部分が見え隠れする連休前に出来事。  次女がさ、ネット上で悪いことしてしまったのを、姉を信用して話したんだけど、姉は、それを私に話してしまったのね。(意見の食い違いから)。それはいいんだけど、自分の気持ちや思いを免罪符にして、それを盾に相手を責めてしまう癖ってのが、姉(私からすると長女ね)にはあって、この性格や精神疾患は過去の私の育て方にも問題があって、それはもうしょうがない事なんだけど、長女は、三、四年前までアルコール中毒手前までなって精神病棟にも入ってた。  だいぶ酷かった当時を思えば、今はまだ楽なんだけど、話が逸れた。  今回のことは、長女の考え方や気質は結局変わらないんだなっていうね。まあもういいんだけど。(隠れてお酒飲もうが何しようがもういい。暴れてくれなければいいかな)  ただそういう自分のした事を免罪符にして、妹を責めるのは違うんじゃないかってね。 (夫はもう見て見ぬふり)  結局、羨ましいっていうだけなんだよね。妹だけ優しくされて私の時は厳しかったじゃん。みたいな。  こういうのって幼少期の家庭環境も、まあ少し起因してしまうだろうし。  支離滅裂になって申し訳ないけど、  何が言いたいかって、  連休になったんなら、 『私も夕飯作らないといけないね』  と言っていたのだから、一日くらい実行して欲しかった。って事です。  そういうの無いまま今日連休最後なんだけど、言ったことも出来んのかいっていうね。  その事指摘すればいいでしょって思うよね?  指摘するとややこしいんだよ。反論してくるもん。(そろそろマジで考え方を気を付けていったほうがいいんだと思うけどね。アラサーなんだし)  過去のことほじくり返して、『私がやるのは違くない?!』だの、色々めんどくせぇんだわ。  と言う愚痴だか何だか知らない事をダラダラ書いてみた。  みんなごめんね。最後まで読んでくれた方々、ありがとうございます。

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あとがき

あとがき  俺とお前の生きる道1【中学生編】を最後までお読みいただきありがとうございます。  淡い恋愛話とボーイズラブでプラトニック的な感じで短編ですらすら読める話が書きたくて産まれた作品でもあります。  一応、物語の形式的には、神藤龍治(しんどうりゅうじ)と新川直往(あらかわなおゆき)の二人の視点で進んでいきますが、中学生編は龍治視点を多めにしてあります。  タイトルにもある通り、二人の物語はこれで終わりではなく、ここからがスタートになります。なので次回作は【高校生編】となります。  龍治と直往の二人が今後どんな風になっていくかはこの先のお話になりますが、中学生編はあまり濃くなくさっぱりと仕上げたかったので、及第点ではあるけれど一旦これで区切りをつけました。  最後の最後までお読みくださった方々、重ね重ねありがとうございます。また次回作でお会いしましょう。  令和七年(2025年)、八月十八日(月)  伊上申  

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最終話3【龍治】

最終話3【龍治】  ――俺は今最高に幸せだと思う。  この状態がずっと続けばいいと願う――  高校生となった俺と直(なお)は、同じ高校に入学した。  中学生の時の告白を、直によって引き出された淡くも恥ずかしくもある想い出。  そんな気恥ずかしい想い出を、生涯忘れることの無い想いを心に留めて、 「なぁ。明日どっか遊びに行かねぇか?」  高校二年生の夏休み。  とある目的でバイトしてお金を貯めている俺だが、たまには直と遊びたいのも事実。  中学の頃の延長で直の自室でゲームをするのに飽きた俺がそう聞くと、 「そうだね!」  パッと明るくなる直の顔。 「ねぇ。せっかくだからデートみたいに待ち合わせしよう?」  にこにこと楽しそうに告げる直。  ――俺が、あの時遊びに誘わなければ。  直はまだ俺の隣で笑っていてくれただろうか?  横断歩道の向こうから腕を振りつつ俺のほうへ向かってくる直。  その右正面から迫り来る大型のトラック。 「直っ!」  俺が気づいて呼び止めた時にはもう遅かった。  俺はまだあの光景を覚えている。  ――いや。忘れられる訳がなかった。  直の身体がトラックにぶつかり、少し宙に浮いてアスファルトに投げ飛ばされる。衝撃で二回転ほど直の身体は転がった。それはスローモーションのように鮮明に俺の脳裏に焼きついている。  急ブレーキの音。誰かの悲鳴。ざわつく人々。 「直ーーっ!!」  反射的に俺は直に駆け寄った。  直の頭からは赤黒い液体が流れ出ていた。 「直っ、直っ! 直往(なおゆき)!! 直っ!!」  俺は直の身体を揺さぶる。誰かの手がそれを止める。振り切って再び縋ろうとするも何か怒鳴られ再び止められる。  救急車の音が聞こえ俺はそこで意識を失った――

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最終話2【直往】

最終話2【直往】  僕は一瞬、りゅうちゃんがなにを言ったのか分からなかった。 「……ご、ごめん、りゅうちゃん。ちょっと、離して」  突然すぎて僕はすごくびっくりしたけれど、それ以上にりゅうちゃんがさっき言ったことが気になって、慌てて身じろぎをするとりゅうちゃんは、『ごめん……』と呟いて僕の身を解放してくれた。 (と言うか。なんで僕りゅうちゃんに抱かれてんの? なんかすごく恥ずかしいんだけど)  僕の心臓はすごくドキドキしていて、この音がりゅうちゃんに聞こえてしまうんじゃないかって言うくらいうるさかった。それを聞かれないように、 「ね、ねぇりゅうちゃん?」  少し掠れたような声でりゅうちゃんを見れば、 「ーーなに?」  りゅうちゃんの顔がほんのり赤くなってるのは気のせいかな。 「さっき、なんて言ったの?」  僕の聞き間違いじゃなければ、『俺ーー直のことが好きだ』そう言った気がする。 「…………」  りゅうちゃんは少しだけ間を置いて、僕を真剣な表情で見つめてきて、 「俺、直のことずっと前から好きだよ」  優しい口調でそう言ってきた。 「……え」  僕は思わず呟いた。  ――りゅうちゃんが、僕のこと、好き?  僕の耳はすごく都合のいい耳をしている。  きっとりゅうちゃんは友達として僕を好きなんだよね?  僕とりゅうちゃん。  お互いが同じように恋愛として好きなんて、そんな両想いみたいなことってないよね。  僕は、変に期待しないようにちょっとだけ軽く笑い、 「そ、それって……友達、としてだよね?」  確認するように上目遣いでりゅうちゃんを見る。 「違う。……ちょっと、気持ち悪いかも知んないけど……。俺、お前のこと、恋愛として好きだから」 「え……」  りゅうちゃんが照れたように、でもはっきりとそう言ってくれたのに僕はそれが信じられなくて、ポカンと口を開けてぼーっとしてしまった。 「直、聞いてる?」  りゅうちゃんは心配になったのか僕の顔を覗きこんでくる。 「え。あ、うん。聞いてる……」  僕はそれに気づいて慌てて頷く。 「……りゅうちゃん、ホント……?」  僕はまだ、りゅうちゃんが恋愛として僕を好きだってことが信じられなかった。 「うん。俺、直のこと……大好き」  はにかんだように笑うりゅうちゃん。 「お前に、そんなつもりはないかもだけど……」  その後で悲しそうな顔をする。 「ーーううん」  僕は首を横に振った。  りゅうちゃんの想いは、僕も一緒だった。  僕もりゅうちゃんがずっと前から大好き。  りゅうちゃんの言葉は、僕の心に素直に響いてきて、僕はすごく嬉しい気持ちになった。  僕も、りゅうちゃんの想いに応えなきゃいけない。 「……僕もね。りゅうちゃんのこと大好きだよ」  りゅうちゃんの目をちゃんと見てはっきり言ったつもりだったけど、僕の目からは涙が溢れてしまった。 「直……」  僕の頬にりゅうちゃんの指がそっと触れて涙を拭ってくれる。そんなりゅうちゃんの瞳も潤んでいて涙の雫がぽたりと僕の手に落ちた。 「りゅうちゃん。僕たち両想いだったんだね」 「そうだな。俺とお前一緒に想いあっていたんだな」    お互い涙を零しながら、二人で笑い合った――

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最終話1【龍治】

最終話1【龍治】  俺が家に着き自室の扉を開けると、 「どこ行ってたのっ?! りゅうちゃん!」  心配そうな顔で眉をひそめた直(なお)が開口一番俺のほうへに駆け寄ってきた。 「悪りぃ。遅くなって」  一息つこうと直の横を通り過ぎてソファに腰掛ける。 「……『悪りぃ』って……」  少し呆れ混じりに呟く直の顔を見れば、心配していたのか目が少し潤んでいるのが分かった。その表情は俺を責めているようで、俺は見て見ないフリをした。 「……りゅうちゃん、いっつもそうだよね……」  ため息をついて低めに呟く直。 (あ。これ、相当怒ってんな)  俺は瞬時にそう思った。直がこんな低い声になるのはすごく機嫌が悪いときか怒っているときくらいだからだ。 「だから。悪いって言ってんじゃん」 「だから何っ?! りゅうちゃんいっつもそうじゃん! 黙って勝手に行動してさっ、僕がどれだけ心配してるかも知らないでしょっ!?」  なんとか直を宥めようと軽く言ったけどそれが逆効果だったみたいで、直は俺のほうに詰め寄ってくると床にぺたんと座りこみ大声でそう言ってきた。 「いつもいつも! 心配する僕がバカみたいじゃんっ!」  そこまで言って今度は俯いてぐずぐずと泣いてしまう。 「そ、それは悪いと思ってるけど……そんな風に怒鳴らなくても良くないか?」  俺は直がそこまで怒ると思っていなくて、少しびっくりして恐る恐る直の顔を覗きこんだ。 「りゅうちゃん何も分かってない! なんでちゃんと言ってくれないのっ?!」  こぼれた涙を拭く直は俺をすごい勢いで睨みつけてきた。 「行き先とか言わなかったのは悪りぃけど、なんでそんなに怒ってんだよ」  こんな風に怒る直は初めてで、俺はなんで直が怒っているのか分からなかった。 「だってっ、僕……りゅうちゃんに嫌われたとか思って……」  直は急に不安そうな表情で俺を見てくる。 「なんで? 俺がお前を嫌うわけねーじゃん」  俺は直がなぜそう思うのか本当に分からなかった。 「だっていつも何も言ってくれないし……僕、そんなにりゅうちゃんに嫌われてんだとか思ったりして……」  少し自信無さげに俯く直を見て、俺はすごく愛おしいと言うか大切にしたいとか、悲しませたくないとか、色んな感情が一気に溢れてきて――  ――次に気づいたときは直を抱きしめていた。 「りゅ、りゅうちゃん……?」  びっくりしたように呟く直の声で、俺は自分が何をしているのか気づいたが、もうそのまま感情任せに直を抱きしめたままにした。 「俺ーー直のことが好きだ」  今はっきりと自分の感情を直に伝える。  孝弘が勇気を持って俺に伝えてくれたように、俺も勇気を出して直に対する想いを打ち明けた。 『これで直に嫌われてもいい』  本当にそう思った。  もう、色んな感情や思いがごちゃごちゃになっていたけど、直に対する想いを隠し続けるのは、正直イヤだった。  想いを打ち明けたら嫌われてしまうかもと怖かったけど、もうなんか吹っ切れた感じがして、思わず抱きしめてしまった勢いに乗って、俺は直に告白をした。

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33話【龍治】

33話【龍治】 「りゅ、うじ……」  俺の名を小さく呟く孝弘(たかひろ)。 「……ごめ、ん。泣くつもりじゃねーのに……」  言って、孝弘は俺の手を離すと制服の袖で涙を拭った。 「俺も、いきなりで悪りぃ……」  俺も同じように手の甲で涙を拭う。 「ーー俺も同じだから」 「は?」  二人無言で涙を拭いたあと、俺が呟くと孝弘が怪訝な顔をする。 「俺もお前と同じように直(なお)のこと好きだから」  そう言うと孝弘は一瞬だけびっくりしたように目を丸くしたが、 「やっぱりそうだったんだな……」  納得したように頷いた。  それには今度は俺がびっくりした。まさか孝弘が気づくほど、俺は直が好きだって表に出ていたんだろうか。 「……お前、知ってのか?」 「知ったって言うか気付かせられた」  呆れたような、すべてを見透かされたように返される。 「なんかもう、これは俺の負けだなって言う感じ。だってお前のことずっと見てたもん、イヤでも分かっちまうてーか」  半ば呆れ笑いになる孝弘。 「それもあったのかな。直往(なおゆき)に酷いことしちまった……。それは悪いからちゃんと謝るよ、あいつに」  孝弘は意外にもすっきりした表情で笑顔になってそう言った。 『これで、お前に嫌われてもいい』  そんな覚悟が聞こえそうな、爽やかな笑顔だった。 「……でも俺は孝弘のこと嫌いじゃない」  このまま、この瞬間、孝弘と縁が切れそうに感じた俺は反射的に思わずそう言った。 「…………」  少しの間を開ける孝弘。その後に、 「そっか。ありがとな」 「まだーー俺ら友達だよな?」  俺が確認するように孝弘に聞くと、 「龍治(りゅうじ)が良ければ俺はずっとお前と友達でいたい」  真剣な眼差しで見つめてくる孝弘。目の前に右手を差し出される。それは小学校の頃からやってきた、お互いの誓いを示すポーズだった。  俺も右手を差し出し腕相撲するように孝弘の手を握る。そうすると孝弘も俺の手を握り返してきた。それはまるで互いの友情を再確認するようだった。 「懐かしいよな、このポーズ」  俺が言うと孝弘も同調するように、 「お前よく覚えてたな」 「こういう感じ嫌いじゃねーから」  言って俺はいたずらっ子みたいに笑った。こういう、【男の友情】ってみたいな感じが俺は好きだった。孝弘とはそれができるってのもあって、まあ気が合うところもあって、(直にした事は許せないけど)俺自身は孝弘のことは別に嫌いじゃないから。 「ありがとな、龍治」  手を離す孝弘。帰宅しようと踵(きびす)をかえし俺に背を向ける。その背中越しに俺に手を振ってきた。 『またな』  そう言う孝弘の背中に『じゃあな』と返して、俺もまた家に帰ろうとした時携帯が鳴った。ズボンのポケットから取り出して着信先を見れば倉田からだった。  同時に時刻を見ると十九時を過ぎていて、 (ヤベェ、どこに行くとか伝えてなかったな。直のやつ心配してるよな)  そう思い、足早で家に帰ることにした。

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32話【龍治】

32話【龍治】 「でも、なんか。ホントに悪りぃとは思ってるけど、龍治(りゅうじ)んこと好きだってのは……」  しばらく笑ったあとふいに語りだす孝弘(たかひろ)。一度呼吸を整えて再び俺のほうを見つめてくる。 「俺ーー龍治のこと、本気で好きだし、なんなら龍治に恋してるから」 「孝弘……」  真剣に、好きだと言ってくる孝弘はなんだかすごくカッコよく見えて、 「お前、カッコいいな」 「は? なんだよいきなり」    孝弘はびっくりしたように目を丸くしたが、次には少し照れ加減に、 「俺は、龍治のほうがカッコいいと思ってるし、なんなら憧れってのもある」 「そうか?」  孝弘がいつになく真剣で俺を持ち上げてくるから俺は少し気恥ずかしくなって顔をそらす。 「……気持ち悪りぃよな」  ふと悲しげに呟く孝弘の言葉に俺は顔をあげる。  自分をあざ笑うかのような表情を見せる孝弘に俺の胸はなぜかズキリと痛んだ。 「別に気持ち悪くなんて……」  俺も同じだから静かに首を横に振ると孝弘は自身を嫌悪するように眉をしかめ、 「いやだって、俺ら男だぜ? ーーお前に対する想いに気づいたとき最初、俺はおかしくなったんじゃねーかとか、気持ち悪りぃとか……っ!」  そこまで早口で言って孝弘は急に言葉を切る。 「孝弘……」  孝弘の名を小さく呟くと孝弘は俺から顔をそらすように俯いて、 「でも俺、お前のことどんどん好きになるし……っ。直往(なおゆき)とか側にいて羨ましかったりしたし! 悔しいってのもあった……直往にお前を取られたって感じでっ」  取り乱したように言ってのける。その声がだんだんと涙声になっていくのを、俺は自分も同じような想いを抱えているように感じ、同調したのか分からないけど知らずうちに涙が頬を伝ってきた。 「全然気持ち悪くねーからっ!」  気づけば孝弘の両肩を掴んで顔を覗き込んでいた。お互いの顔を見つめると孝弘は涙を流していた。

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31話【龍治】

31話【龍治】 「ちょっと待て!」  動揺しつつ俺は孝弘(たかひろ)を呼び止めた。 「まだ、なんかあるのか……?」  俺の声で孝弘は足を止める。  消え入りそうに呟くその声はかすかに震えていた。 「さっき、なんて言った?」  俺は数メートル遠ざかった孝弘を追いかける。 「いや、直往(なおゆき)には謝るって……」 「その前!」  直(なお)に謝るのは当然だ。  俺が聞きたいのは、その前に孝弘が言った言葉だ。  孝弘は小さくため息を吐いて、 「もう……。勘弁(かんべん)してくれよ……」  面倒くさそうにこちらを振り返る。孝弘は妙にすっきりとした表情をしていた。   「何度も言うの、恥(は)ずいんだけど……」  照れたのか、少し視線を泳がしてから一息つき、再び俺を見ると、 「俺は龍治(りゅうじ)の事が、その……恋愛として好きなんだよ」  さっきと同じようにはっきりとした口調でそう言ってきた。 「ちょっ……、と待て」  真剣な眼差しで見つめられた俺のほうが急に恥ずかしくなって孝弘から視線を逸らした。  思ってもいないことを言われたのがショックだったのかびっくりしたのか分からないけど、でもすごく動揺しているのは自分でも分かる。  あまりにも突然すぎて、まだ鼓動の高鳴りが治らないが、孝弘が俺のことを好きだってのは理解できた。でもなんで俺なのかが分からない。なんで孝弘は俺が好きなんだ? 「なんで、俺なの?」  ようやく絞り出した言葉は、口の中がカラカラに乾いていて掠れた声になった。 「……気持ち、悪くねぇのか?」  孝弘が少しびっくりしたように目を丸くしていたが、 「いや別に」  俺にも同じような感情 (直のこと好きだとか) があるから気持ち悪いとかそんなのはなかった。 「……その。誰かに、そんなふうに『好き』って言われるなんてなかったから……。あと、なんで俺なのかとか……」  孝弘を変に意識してしまい俺は顔中が熱くなるのを感じ、それを見られたくなくて俯き加減となってしまう。 「お、俺だってこんな感情初めてだよっ!」  少し怒ったような口調の孝弘に俺は思わず顔をあげる。孝弘もまた顔が真っ赤になっていて視線だけを俺から逸らしている。 「孝弘……。お前、顔真っ赤だぞ」  そうやってぼそりと呟けば、 「はぁっ?!」  孝弘は眉を吊り上げて俺を睨みつけてきた。 「龍治こそ顔赤いじゃねぇかよ!」  と、俺の眼前に指を差してくる。 「いやだって! ……こ、告白されるとか初めてだしっ! なんか気恥ずかしいっていうかっ」  顔のことを言われて俺は慌てて弁解するように言うが、 「お、俺だって初めてだって言ってんじゃねーか!」  俺と同じように孝弘も弁解するように言ってくる。  お互いの視線が混じり合って、 「……ぷ」  最初に吹き出したのは孝弘。その次に俺と孝弘は同時に大声で笑い出した。 「てかなに? なんで俺ら顔真っ赤にして言い合ってんの?」  しばらく笑い合ったあとに孝弘は息絶え絶えになってそう言う。 「俺も分かんねぇ」  俺も笑いを止められず、口角を上げながら首を横に振る。

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30話【直往】

30話【直往】  りゅうちゃん、まだ帰ってこないな。  そんな風に思って時計を見るともうすぐ十九時になる。 (……え。りゅうちゃんこんなに遅くまでどこに行ってるの? もしかして本当に鈴木に仕返ししに行ったんじゃないよね?)  そう思うとなんだかソワソワしてきて、 「……む、迎えに行ったほうがいいかな」  僕は自然と呟いて落ち着かず立ち上がる。その場で足踏みをするようにウロウロとした。 「え、でもどこに迎えに行く? 行き先とか分かんないよ……。す、鈴木の家とかかなぁ」  数歩進んでピタリと止まり、顎に手をあてて考えてみる。  まあ考えてもりゅうちゃんがどこにいるかなんて分からないんだけど。  ちょっと落ち着こうと思いまたソファに座ってお菓子を一口。 「……やっぱり、迎えに行ったほうがいいよね」  口の中でお菓子を咀嚼(そしゃく)しながら言って再び立ち上がる。 「あ。倉田さんにひとこと言ってったほうがいいか」  部屋から出ようと扉に手をかけその動きを止めた。 (倉田さんどこにいるのかな……)  僕は踵をかえして再びソファへと座ってしまう。 (りゅうちゃん。本当にどこに行ったの……? 僕……りゅうちゃんになんかしてないよね? 嫌われるようなこと、してないよね……?)  りゅうちゃんが、あまりにも遅いので僕はりゅうちゃんに嫌われてしまったのかと思ってしまう。 「僕……。嫌われて、ないよね……?」  誰に言うでもなく、自分に問うように小さく呟いた。  嫌われていたら一緒に帰らないし、家に泊めてだってくれないよね、普通。  うん。多分、嫌われてはいない。りゅうちゃんを怒らすようなことも、思い返してもないはず。だから、大丈夫。    りゅうちゃんは僕を嫌いになったわけじゃない。  僕は自分自身にそう言い聞かせた。これ以上深く考えるとなんかどんどん変なこと考えてしまいそうだったから。  でもやっぱり迎えに行ったほうがいい。  そう思いたって僕は立ち上がるとその勢いで部屋から出る。そのまま玄関まで行こうとして―― 「直往(なおゆき)様? こんな時間にどこかへお出かけでしょうか?」 「……ぅひゃ?!」  後ろから突然聞こえた声にびっくりしてしまった僕は口から変な声が出た。  慌てて振り返ると、倉田さんが目を丸くして僕を見ていた。 「え、えっとあの……りゅうちゃ、龍治(りゅうじ)くんの帰りが遅いかなぁって思って迎えに行こうかなって」  理由としては心もとない気がするけど心配なのは本当だから言い訳っぽくなっちゃったけど。  倉田さんは顎に手をあて少し考え込み、 「――そうですねぇ」  胸の内ポケットから携帯電話を取り出して、 「でもこの時間から直往様が出かけるのは少し危ないので、わたくしの方から龍治様に連絡を取ってみましょう」  僕を安心させるように笑顔でそう言ってくれた。 「あ、はい。おねがいします」  僕はそんな倉田さんの笑顔に少しホッとして思わず頭を下げてしまった。倉田さんには、『そのような事なさらないでください』と、苦笑いで諌(いさ)めらられてしまったけど。 (とりあえず、りゅうちゃん早く帰ってきてほしいな)  そう思いつつ、僕は電話をする倉田さんの姿を見守るようにした。

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29話【龍治】

29話【龍治】 「……小学校の頃にさ、直往(なおゆき)のこと『子分(こぶん)になれ』とか言ってたの覚えてるか?」  孝弘(たかひろ)が突然そんな事を聞いてくるから俺は苦虫を噛みしめたみたいな変な表情になり、 「覚えてる」  と、口の中で呟くように頷いた。 「その頃くらいからお前は直往と一緒にいるようになった」  孝弘の、まるで責めるような言い回しに、俺の心はトゲが刺さったように少し痛みを感じ、そっと孝弘の顔を見た。  孝弘は俺としばらく見つめあっていたけど、ふと視線を下に向ける。 「別に、龍治(りゅうじ)が誰と仲良くしようがいいと思ってたんだけど……」  小さなため息をはく孝弘。 「大事なもん取られたみてーに無性に腹が立ったんだ」  言って、再び俺を見る孝弘は、全てを悟ったような、何かを押し殺すような――でもどこか苦しくて泣き出しそうな表情をしていて、俺の胸はちくりと痛んだ気がした。 「俺は――」  孝弘の口が動く。少し間をあけて、 「直往に『嫉妬(しっと)』した」  ――『嫉妬』?  直(なお)にお前が?  孝弘の言葉を頭ん中で反復した。 「……なん、で」  思わず呟いた。 「なんで、嫉妬? それじゃあまるで――」  そこまで言って、なにかに気づいた感じがした俺は言葉を止めた。  もしかして、え?  違うよな?  俺が直を恋愛として好きなように、孝弘が俺のこと『好き』なんて、あるわけないよな?  自意識過剰もいいところだけど、こんな言い方されたら勘違いするじゃん。  いや。孝弘はきっと『友達』を取られたって言う感じで嫉妬してるんだと思う。  そうだよな、孝弘?  そう頭ん中で自己解決して、恐(おそ)る恐(おそ)る孝弘を上目遣いで見ると、孝弘はさっきと同じように真面目な表情で俺を見つめ、 「俺、龍治のこと好きだから」  少し照れ隠しに、でも視線は俺から逸らさずそう言ってきた。  俺はその言葉の意味から逃げるように半笑いで、 「『友達』、としてだよな?」  念を押すように言えば、 「いや」  首を軽く横に振る孝弘。 「恋愛のほうで、俺はお前が好きだ」  今度は、照れもなくすごく真剣な顔でしっかりとそう告げてくる。 「いや、え……?」  あまりにも真剣な孝弘の態度に俺は動揺してしまう。  ドクドクと心臓が脈打ち息苦しくなる。 「……気持ち悪りぃだろ? だよな。ごめん、今のは忘れてくれ」  俺が動揺しているのが伝わったのか、孝弘は少し自虐(じぎゃく)気味に早口でそう言う。いたたまれなくなったのか、 「今までのこと、直往には謝るから」  そう早口で続けて、 「じゃあ俺帰るから」  言い残し、その場を去ろうとする孝弘。 「ちょっと待て!」  俺は動揺しつつ孝弘を止めた。

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