星月

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星月

私の体験がほとんどです。元気にやってます。

他人の優しさに触れるたび 君の優しさが恋しくなる 他人の冷たさに触れるたび 君の優しさが恋しくなる 恐怖を目の当たりにした時 君の存在を求める 悲しみに打ちひしがれた時 君の胸に抱かれたい 君の冷たさが1番怖い 君が少しでも落ち込んだ時 私は君のそばにいたい

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昇華

ある日の日記にこう書かれていた。 『夢に向かって一歩前進だね!頑張れ!!』 俺のことだった。俺は将来のために色々動いていた。ありがたいことにそれらはうまく行って、その話を彼女にもしていた。 彼女はとても喜んでくれた。嬉しかった。そして毎回のようにその話をした。 彼女の話も聞かずに。 彼女は俺の話をずっと聞いてくれていた。 嬉しそうに、楽しそうに。 それなのに俺は自分の話に夢中で彼女の話を何も聞いてやれていなかったことに今になって気づいた。 彼女が泣いたあの日。 あの時の彼女は、勇気を振り絞ったのだろう。だから余計に言葉が詰まってしまった。 でもそれが最後だったのは多分、俺のことを思ってくれたのだ。 彼女はきっと、自分が俺の負担になることを避けたかった。 彼女はきっと、自分が俺の人生に邪魔をしてしまうんじゃないかと考えた。 だから言わなかった。 彼女は自分自身を含めた全てに失望してしまったということ。 彼女が生きる理由が、意味が、俺の存在だけだということ。 俺が傷つかないために、悲しまないために死ねなかったということ。 それを言ったら俺を縛ってしまう。そう思ったのだろう。 日記では書いていたのに。 直接俺には言えなかった。 俺は彼女が自分の話をしていないことに気づけなかった。 自分の話に夢中になっていた。 彼女を守れたのは俺だけなのに。 自分を殴りたくなった。 言ってくれればよかったのになんて思わない。 彼女は彼女なりに一生懸命だったんだ。 自分勝手な俺に、彼女の選択をとやかくいう資格はない。 彼女はもういない。会えない。 謝ることも、抱きしめることもできない。 俺が悲しむことを考えても自殺するという選択をするほど追い詰められていた彼女に…俺は…何ができたんだ? 過去に戻ることができないことくらい俺は知っている。 だから俺ができることは。 彼女を追いかけること。 【昇華】 心理学において、ストレスや社会的に受け入れがたい欲求を、より建設的な行動や創造的な活動によって満たすこと。 これは私が書いた物語。 傷つけないために、傷つかないために いっしょに死のう?

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昇華

俺は届いた日記をすぐに開いた。 最初の頃は何でもない、普通の日記だった(彼女が日記をつけていることは知らなかった) その日記は誰かに語りかけるような、そんな文体だった。 『今日はこっちにきて初めてコロッケ作ったよ!めっちゃ美味しかった!今度作ってあげるね。』 ……きっとこれは、その誰かは俺だ。 これは自意識過剰なのではない確信だった。 電話をした次の日の日記には必ず『昨日は電話ありがとう!』と書いてあり、電話する予定の日には『今日話せるの楽しみだなー』と書いてあった。彼女らしいな、と思って泣きそうになった。 ページを捲るたび、俺の知らない彼女の日常が見えてくる。 あるページで俺ははっとした。 その日の日記にはこう書かれていた。 『昨日は電話ありがとう。そしてごめんね…。言葉詰まっちゃってなかなか話せなくて。でも最後までずっと聞いててくれてありがとう。ちゃんと話せてすっきりしたよー。次の電話は元気に話します!』 あの日だ。彼女が初めて、そして最後に電話口で泣いたあの日。その時の彼女の声が鮮明に思い出された。 俺はまたページを捲る。その日を境に、毎日ではないが彼女の日記は読むのも辛いほど鬱々とした内容が所々に見られた。 俺は見てはいけないものを見ている気がした。 でも、本来なら俺がきちんと向き合うべきだった。 『つらいよ』 『苦しいよ』 『たすけて』 『にげたいよ』 『死んじゃいたい』 普段明るい彼女の口から発せられるとは思えないような言葉が散りばめられていた。 あの日以来、彼女は電話で一切涙を見せることなく辛さを感じさせず、明るかった。話し声も内容も。 でもほんとは苦しくて苦しくてたまらなかったのだろう。 新しくなった環境が、未来への絶望が、他人への不信感が、 そう感じてしまう自分への罪悪感が。 重く重く 彼女にのしかかっていたのだろう。 彼女がなぜ俺に話さなくなってしまったのか。 日記では俺に求めていた助けを。なぜ求めなかったのか。 それを知った俺は自分を殴りたくなった。 つづく

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昇華

あの電話から1ヶ月ほどが経った。 俺たちが次会えるまであと3週間となった時のことだ。 地元にいる母親からいきなり電話がかかってきた。 俺の彼女はこの世からいなくなった。自殺だったらしい。 俺は頭の中が真っ白になった。 額や背中から冷や汗が溢れて、呼吸が乱れる。 受け入れられなかった。 嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ… 昨日も俺は彼女と電話していた。 昨日の様子からは自殺なんって考えられなかった。 昨日の会話を思い返す。 心当たりは…?なかった。 俺は気づかなかったのか? 彼女は本当は静かに俺に助けを求めていたんじゃないか? そんな考えが頭を支配する。 俺のスマホには俺と彼女の共通の友人たち(俺との共通の友人には彼女も心を開いていた)から心配するメッセージが届いていた。 でもそんなこと気にもならなかった。 喪失感。無力感。孤独感。 そんな言葉がその時の俺にはぴったりだった。 俺はそれからの日々を無気力に過ごした。 彼女の訃報から1週間経ったくらいだったか。 俺の元に一冊のノートが届いた。 差出人は彼女の母親。 俺はすぐさまそのノートを開いた。 そこには「彼女の本当の姿」があった。 つづく

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昇華

思えばこの日からだったかもしれない。彼女が人生の選択を迫られていたのは。 ある夜、彼女が電話口で話した。 俺といる時はそこそこ明るく話してくれる彼女だったが、この時は違った。 「大学で…できた友達とね…結構長い時間一緒にいるんだけど…やっぱり気を遣いすぎちゃって……少し…疲れちゃったなー…なんて。」 比較的自由度の高い大学生活で彼女は生きづらさを感じていた。 辛そうに、苦しそうに、一言一言丁寧に吐き出すように。 言葉を詰まらせながらゆっくりと。 彼女は泣きながら俺に訴えた。電話中に泣いたのは初めてだった。 抱きしめてやりたいと思った。 でも同時に、彼女がそういう人だと知っていたので、どうしようもないと思った。彼女も俺に言ってもどうしようもないことくらいわかっていただろう。でも俺に吐き出してくれた。 高校の時からそうだった。 本当はマイペースで、自分がやりたいこともあるはずなのに、 彼女は常に周りに気を遣って、自分の意見は押し殺して。他人に嫌われることを何より恐れていた。でも同時に、他人に支配されることを何より嫌った。そんなジレンマの中、それでも、他人に支配されてでも自分を犠牲にして、平穏を演じていた。 彼女は言葉にこそしなかったが、 そんな彼女の気質を、俺はなんとなく感じ取っていた。 だから無駄な干渉はせず、せめて俺のそばにいるときだけでも彼女が気を遣わずに心を休められる居場所になろうと努めた。 でもそれもいいことばかりではなかった。 彼女が俺といる時、彼女を取り巻いている人たちは、彼女を妬み、冷たい目で見た。 繊細な彼女はそれに気がつき、慌てて俺の元から離れていく。心の中では少しでも俺が傷ついてしまう可能性を考えて、罪悪感でいっぱいだったろう。彼女は自身の自分勝手さに、ひどく嫌悪を感じただろう。 でも俺はそんなこと思わなかった。傷ついたりしなかった。 本当は彼女と一緒にいたいけれど、彼女に友人(?)を失う恐怖を感じさせるわけにはいかなかった。 でも彼女はこれによって俺を傷つけてしまったかもしれないという罪悪感に加えて、さっきまで冷たい視線を送っていた友人に笑顔で迎え入れられていることへの恐怖も感じていただろう。その証に友人と話す彼女はかすかに震えていた。 俺はその日のうちに彼女からの謝罪を受け、 「そんなこと気にすんなって!」 と、明るく返した。 つづく

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昇華

俺たちが出会ったのは高校の頃だった。 たまたまクラスが同じで、席は前後。 最初はお互いにただのクラスメイトだとしか思っていなかった。 俺もそこまで人前で騒ぐタイプではないが、それに比べても彼女は人見知りでおとなしく、真面目な人だ。 ただ彼女はなぜだか俺に惹かれたらしい。 俺は最初は気にも留めていなかったが、だんだん彼女の誠実で謙虚な性格に惹かれていった。 最終的には俺の方から告白して、交際が始まる。 とても幸せで、満たされていた。 誰かに愛されているという感覚。誰かを愛しているという感覚。 彼女も感じていただろう。 そんな高校時代を経て、ついにお互いのやりたいことをするため、遠距離での大学生活がスタートした。 会いたくても会えない。そんな寂しい気持ちもあったが、夜に電話口から聞こえる彼女の眠そうな声で、幸せな気持ちでいっぱいになれた。長期で休みができると、たまにだが会いに来てくれたり、会いに行ったりしていた。 遠距離でも高校時代から続く彼女との付き合いが長くなるにつれて、俺は「彼女の本当の姿」に気づくことができた。 気がつくことができた。つもりだったのかもしれない。 彼女が死んだと聞いた時、俺はその事実を突きつけられた。 わかっていなかった。 あんなに愛していたのに。 つづく

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昇華

【昇華】 心理学において、ストレスや社会的に受け入れがたい欲求を、より建設的な行動や創造的な活動によって満たすこと。 -プロローグ- 俺の彼女はこの世からいなくなった。 自殺だったらしい。 もう2度と会うことはできない。 俺が死ねば、天国で会うことができるだろうか。 もう一度会いたい。話したい。抱きしめてやりたい。 なんで気づいてやれなかったのだろう。 彼女の苦しみに。 彼女のことだからバレないように1人で苦しんでいたのだろう。 俺がのうのうと生きている間、彼女がどれほど苦しんだことか。 もう一度会って、謝りたい。 彼女の苦しみにも気づけないような情けない奴でごめんなって。 俺が死ねば、会えるだろうか。 つづく

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サイダー

『プシュッ』 私は開けたばかりの間の苺サイダーを丁寧にグラスに注ぐ 苺の優しい甘い香りがただよう 透明の、少しぼこぼことした素材でできたグラスだ サイダーは缶からシュワシュワと音を立てて流れ出る 間の飲み口のくぼみに溜まった少しのサイダーを こっそりと吸い上げ、甘さを確かめる グラスに顔を近づけると、泡が弾けて顔に飛んでくる コップの側面に泡が溜まってきてとても綺麗だ 五感で楽しむ苺サイダー

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サイダー

衣替え

夏になるとみんながほぼ一斉にアイロンのかけられた白いブラウスに変わるということは、大学生にもなればなくなってしまう。 あの瞬間は結構好きだった。 あの光景を見れば、緑の葉の隙間から差す鋭い光や、蝉の鳴き声が浮かんでくる。 もうあの青春は感じられないのかな、と、少し寂しくなる、、

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終電

部活が終わった 「今日も1日長かったなー。」 「それなー。」 私は同じ電車に乗る同級生のつぶやきに適当に返事をする。 こんなものなのだ。人生なんて。 いくら高校生でも、部活終わりなんてこんなものなのだ。 とある田舎の田んぼ道を、私たちはトボトボと歩く。 もうなれたものだ。この道を歩いてもう3年目だ。 もう少しで終わってしまう。 嬉しいような、少し寂しいような。 夏の夜のムワッとした空気が私たちを覆う。 「そうだ、コンビニ行かない〜?」 友人からの最高の提案だった。 何ならその言葉を待ってました。 でもそんなことは表に出さず。 「いいね、ありー。」 と、また適当に返事をする。 こんなものなのだ。 途中コンビニで買ったアイスを食べながら、部活の話をして、 もうちょっとで終わるね、なんて話しながら 私たちは田舎のちょっと早い終電に向かって歩いた。

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終電