恋するGirl
19 件の小説高校3年生 5月頃
ゴールデンウィークも終わり、いよいよ中間テストが始まろうとしていた。 楽しかった連休を名残り惜しく思いながら、教室の戸を開けた。 中間テストはほんとに嫌いだ。 いや、中間テストに限らずテストは嫌いだ。 憂鬱な顔をしている私の目には元気な野球部が見えた。 野球漬けの連休が終わり、テスト期間になると部活も休みだからうきうきしているようだ。 友達の野球部も休みは遊ぶ約束を立てていた。 私も君と遊ぶ約束がしたいなぁと思っていた。 友達と楽しそうに話している君を見て自然と笑みができる。 マスクをしていなかったら完全に変な人だった。 朝から君を見れて幸せだなぁと思いながら、ほんとに好きなんだなと同時に思った。 授業も終わり、放課後友達と勉強会をしようと駅の方面に向かった。 部活が休みということですごい人がいた。 なんとか電車に乗り駅に降りた。 お店に入り勉強をしていると、タピオカのような坊主軍団がきた。 先頭には友達がいた。 「あ、お前らもおったの。」 「そやー勉強しないと赤点ギリギリだもん。 「俺もなのよ、あっ後で友達とな来るから隣の席使ってもいい?」 「おん、使ってもいいよー。」 呑気に友達と話しているとタピオカ軍団がまた来た。 「お、こっちこっちーーー」と友達が言う方向に目を向けると君と他の子もいた。 「先輩待たせてすみません。席とって下りありがとうございます。」 すごく丁寧にお礼を言う君。 「いやー全然大丈夫。お前ら勉強分からないところあったら俺とそこの人達に聞け。」 「は!?なにそれ!!ちょっと!」 友達の意味わからない提案が採用された。 君がすぐにいるから無駄にドキドキして勉強が出来ない私。 真面目に勉強をして数学に悪戦苦闘している君。 君の長いまつ毛を見て何センチあるのかなと思っていると、君がこっちを見た。 「あの、この問題どうしてこうなりますか。」 と遠慮がちに聞いてきた。 「え、あ、え、この問題はね...。」 キョドりなが話して上手く説明できていない私の話を、真剣に聞いてくれる君。 「ありがとうございます」と笑顔で言う君にノックアウトされる私。 頭の中が君でいっぱいの私は中間テストどうなるのかまだこの時分かっていない。
高校3年生 5月
私は5月が好きだ。 ゴールデンウィークもあり遠足もあるからだ。 ゴールデンウィークには地元の祭りがあり、久しぶりに地元の友達と会うことができる。 うきうきしている私。 その近くには唸っている野球部の友達。 野球部はゴールデンウィーク全て練習試合らしい。 私のいる学校の野球部は強豪校だ。 甲子園にも何年か前は出場したりプロの選手も先輩にいる。 「まじで、野球漬けならゴールデンウィークなんていらん。」 「まぁー強豪校の部活あるあるだからしょうがないよ。」 「はぁぁぁぁぁぁ今から憂鬱。」 「はぁぁぁぁぁぁ今から楽しみ。」 真反対なことを言う私を睨む友達。 野球部は正直苦手だが、友達は唯一気さくに話すことができる男友達だ。 死んだ魚のような目をしている友達を呼ぶ声が廊下から聞こえた。 私がふと廊下を見ると君がいた。 私は思わず目と見開いて見た。 「先輩、少しお時間ありますか。」 「おうよ、時間たっぷりあるよ。」 友達は変なことを言いながら君の元へと行った。 とてもとても丁寧に話す君。 私はただただ眺めていた。 友達と君が話終わり友達が戻ってきた。 「今の子、すごく丁寧に話してたね。」 「あいつすごい真面目だからな。」 「見たまんまだよね。」 「あぁ、1年の学年リーダーになるぐらいだからね。」 「そーーーなんだ。」 「なに、あいつのこと気になるの?」 死んだ魚の目をしていた友達はいつの間にか、水を得た魚のように生き生きして私を見ていた。 「そんなわけがないだろう。」とすぐに言えない私がいた。 私は言葉に返せない代わりに、坊主頭を思いっきり下敷きで叩いた。 「いてぇぇぇえよぉ。」という友達の横で顔を赤くしている私。 君が好きだと確信してしまったからだ。
高校3年生 4月頃
桜が綺麗に咲いている通学路を見ながら友達と登校している。 友達と下らない話をしながら爆笑する私。 新しい教室で君と近くなり嬉しい私は、ふわふわと宙に浮いている。 階段を上るときに見える君。 いつも真面目に朝自習をしている。 今年受験生の私とは真反対だ。 進路をどうしようかと考える日々。 親と交渉が中々進まないが、君を見ると暗い気持ちも明るくなる。 両手を合わせて1人心の中で拝んでいた。 メンバーの変わらない私の教室は、開始そうそう席替えをした。 私は真ん中の1番後ろの席になった。 内職もしやすくとても幸せだ。 先生に去年渡した手帳を出してと言われた。 私はおや???となった。 手帳をどこにやったか分からない。 古い古い記憶を辿る。 思い出すのは去年の私。 空っぽの机の中にいれた手帳。 その机には手書きの坊主の天使が描いてある。 あぁぁぁ!!と1人叫びそうになった。 そう、今君が使っている机に入っている。 どうしようどうしようと思い先生に事情を話した。 呆れた顔の先生と共に君のクラスに行った。 恥ずかしくて顔を赤くしていたはずだ。 教室に行くと君のクラスの先生に事情を話中に入った。 「ほーーら、早く取りに行け。」 「え?1人で行くんですか?先生一緒じゃないんですか??無理っす。」 「無理じゃない。早く行きなさい。」 まさかの1人で取りに行く羽目になった。 下を見ながら君の元に行った。 「あの、手帳入ってませんか。」 「手帳ですか?ちょっと待って下さい。」 手帳を持って行かなった自分を恨んだ。 「あ、手帳ありましたよ。どうぞ。」 君がそう言い手帳を受け取ろうとした。 お礼を言おうと思い君を見た。 廊下から見る君とは違い、凄く近くでみる君はかっこよすぎた。 パンダの目が私を見ていた。 何秒ほど見つめたのか分からないが、担任に頭を叩かれ我に返った。 「あ、ありがとうございます。助かりました。」 早口でそういう私を見て笑う君。 どっちが先輩かわからないよ。 笑う君にまた釘付けの私を置いていく先生。 私はさっきまで恨んでいた自分にナイスとここの中でいった。
高校3年生 4月
桜が咲く季節。 私は着慣れた制服をきて、新しい教科書をカバンに詰め込み学校に向かった。 文句を言いつつ終わらせた自分偉!と心の中で自分を褒めながらいた。 2年前には痛かったローファーも履きなれふにゃふにゃになっていた。 見慣れた光景のはずなのに気分が上がっているのか、いつもよりも綺麗に見えた。 あーあ、今年は君には会えないなぁ。 めっちゃ会いたいのに会えんなんてつら。 君と教室が離れて会う回数が極端に減ったことを思いながら歩いていた。 私の教室は相変わらずの旧校舎だ。 場所は去年の君が使っていたクラスだ。 2月に君が告白をする人の案内係をしていたクラスに今年私はいる。 そのことを思いだし1人笑っていた。 去年と変わらない担任の先生に、まだ決まってもいない学級委員を勝手にさせられていた。 会長の友達とまたプリントを取りに行こうと階段を降りていた。 この階段から降りる君を見て私は恋に落ちたんだなと思いながら降りた。 今、君はどこにいるんだい。 何もできない私だけど君に会いたいよ。 そんな思いをもちながら1階に降りようとしていたときに坊主がいた。 思わず息を飲んでしまった。 そこには階段を上がっている君がいた。 君を見すぎているからか、私の君への察知能力はずば抜けている。 すごい量のプリントを持っている君。 なんで旧校舎にいるの??え??バグっている私の横を通っていく君。 君は2階の教室に入っていった。 え!!?と思い振り返ると、君は去年私が使っていた教室でプリントを配っている。 私は思わずやったぁ!と言ってしまった。 もう会うことができないと思っていた君と、去年よりも会えると確信したからだ。 喜びすぎたせいで階段から転げ落ちたのは言うまでもない。 初日早々に怪我をしたが全く痛くなかった。 実はね、私だけが知っていることがあるの。 君の使ってる机実は私が使っていたの。 君がいつ気づくか分からないけど、机の側面に坊主頭の天使を書いてあるんだ。 それ、実は私が君を初めてみた日に書いたの。 水性ペンで書いたのに中々落ちなかったの。
高校2年生 3月頃
短い春休みが始まった。 大好きな先輩は卒業をして夢に向かって大きく前進した。 君に会えない日々が続く中、私は課題と睨めっこしていた。 2週間もない休みなのに、休みの長さと一致していない課題の量。 教科担当の先生に心の中で文句をいいながらしていた。 春休みが終わる3日前にクラス発表と教科書販売が行われた。 大好きな友達とまた同じクラスになれますようにと神頼みしてから学校に行った。 久しぶりに会う友達といつものように話に花を咲かせながら学校に行った。 壁に貼られている新しいクラス。 まだ聞きなれない“3年”という言葉。 お願いお願いお願いいいと何度も心の中で叫びながら見た。 私のクラスは去年と何一つ変わらなかった。 他のクラスは知らない顔ばかり揃っていたらしいが、全校で私のクラスだけは変わっていなかった。 全校で1番うるさいクラスは今年も変わらずにいた。 友達と抱きつきながら喜んでいる私。 そのときに友達はさらっと言った。 「あ、今年は2年生だけ別の場所に下駄箱あるから帰りあの子と会えなくなるよ。」 「はぁ!?」 私の声でその場にいた人ほぼ全員が振り向いた。 嬉しいかったはずがすぐに絶望に下がった。 もう下駄箱でも会えなくて教室の場所も移動しているはずだから、会うことが極端に減るとわかったからだ。 清々しい晴天の下で1人真っ黒な顔をしている私。 私の高校最後の1年が幕をあけた。
高校2年生 3月
寒がりにはとても辛い日々が続く中、体育館では卒業式が行われた。 体育館はとてつもなく寒く、お腹や背中など全身にカイロを貼っていても寒いくらいだ。 今日、私の大好きな先輩が卒業する。 思えば、私が先輩を知ったのは中学生の頃だ。 中学校から始めた部活。 初めて公式戦を見に行った地区大会で先輩がいた。 1つ上とは思えない大人なびた雰囲気。 次々と勝っていく先輩の試合中の姿と試合前のあどけない笑顔に私は魅了された。 中学では学校も違うため話す機会はなかった。 憧れの先輩と同じ学校に行きたいという思いだけで先輩の追っかけのように学校を選んだ。 先輩とは様々なことがありながらも今も仲良くさせてもらっている。 そんな心から尊敬する先輩が卒業する。 まだ始まってもいない卒業式で、きっと先輩よりも早く泣いている私。 卒業式終了後、私は先輩のところに走って行き挨拶をしていた。 泣いていたため上手く話せなかったが、先輩は優しい笑顔で聞いてくれた。 大好きな先輩の大人への階段を登る姿を見れたことがとても嬉しかった。 すると、野球部が校門にいた。 私と同じように先輩に抱きつきながら泣く子もいた。 私はすぐに君を見つけた。 いつもと変わらない表情の君。 でも、君の目には涙が溜まっていた。 1人の先輩が君の肩を叩きながら話していると、君は涙を流していた。 君はいつもより幼い表情で泣いていた。 私も君も少しずつだが大人への階段を登っているんだなぁと思いながらいた。 春は別れの季節。 しかし、大人への大きな1歩を踏み出す季節。 私も君も大きな1歩をまた踏み出した。 先輩の卒業と共に、私の卒業式まで残り1年となった。 私の卒業式のときに君は泣いてくれるのかな。 きっと私は泣きながら君に会いに行くだろうね。
高校2年生 2月頃
今日も寒く、旧校舎は賑わしくしていた。 私は友達からあの1件を聞き、ただただ頭の中が君のことでいっぱいだった。 1つ上の階に女子が行くのを見る度に、1人勝手に君のところに行くのかなと思っていた。 君には失礼かもしれないが、上に上がる女子が君のところに行かないことを願うしかなかった。 私には本当に勇気がない。 ただ願うしかできない自分に絶望していた。 すると、ある友達が上の階の子にチョコを渡したいから着いてきてほしいと言ってきた。 私は返事に困った。 もし、上に行き女子に囲まれている君を見たら自分がどうなるのか分かっていたからだ。 私が返事に困っていると友達が私の手を握ってお願い!!っと言った。 結局、大好きな友達のお願いを断ることも出来ずについて行った。 上の階は予想以上に女子がいた。 君のクラスにも沢山の可愛い女子が列を作ってていた。 不安な思いと共に友達と一緒に教室覗いた。 すると君は女子と話していた。 やっぱり君も人気なのかと思った。 何も行動出来ていない私はただ落ち込むしかなかった。 落ち込んでいる私とは対照的に、友達は真っ赤な顔をして想い人を探していた。 すると、君はこちらに来た。 あれ??なんでなんでなんできたの??と思い、君をガン見した。 「誰探してるんすか。呼びますよ。」 と君は想像よりも低い男の声で言った。 友達は君に、想い人の名前を伝え呼んでもらった。 私はおかしな展開にびっくりしながら君の横に立っていた。 すると君は突然口を開いた。 「あの、次誰呼びましょうか。」 「え、あ、うちは付き添いだから大丈夫だよ。」 「あ、そうなんすね。」 私は今年1番の勇気を振り絞って君に聞いた。 「あの、君はチョコとか貰わないの?」 私の大好きな君の目は私を見ながら言った。 「あー俺は1個も貰ってないです。俺、呼び出し係なんすよ。」 その言葉を聞いた瞬間、私の心の中は真夏の快晴のように清々しくなった。 想い人に思いを告げ赤くなっている友人が帰ってきた。 君にお礼を言い教室に戻った。 赤い顔の友人と嬉しさで顔をを赤くしている私の2人が教室にいた。 君に失礼だけど、君がモテてなくて私はすごく嬉しいよ。 ちょっとだけ1歩前進した日でした。
高校2年生 2月
まだまだ寒い日が続いている。 野球部もオフシーズンに入り、室内練習が増えたようだ。 2月の女子はソワソワしていた。 3年生の登校も片手に数えられるほどの日数になり、憧れの先輩への告白やバレンタインで話題は尽きない。 今日もまた誰かが先輩に告白をした。 2月14日には3年生はいない。 そのため、少し早めのバレンタインを渡しに行く子もいた。 私も大好きな先輩に渡しに行った。 大好きな先輩は笑顔で受け取ってくれた。 慣れないお菓子作りで手は絆創膏だらけだったが、先輩の笑顔を見ると頑張ってよかったと心から思った。 「今年の野球部はめっちゃ人気!!」 と目を輝かせながら友達が言った。 「野球部って言っても、3年と2年でしょ??」 「いや、それが1年生がすごい人気なの。」 「え、、、?」 それを聞いた私はすごい顔をしていただろう。 確かに、私たちの1個上の階は野球部ばかりいるクラスが2つある。 旧校舎は新校舎から遠いため、新校舎の人がくるとすぐにわかる。 ここ最近は、日頃あまりみない新校舎の女子をよく見ている。 それも、全学年の女子だ。 赤、青、緑の3学年に分けられたスリッパがよく行き来していた。 泣いている女子もよく見て、先生に怒られたのか小指をぶつけたのかと考えることがしばしばあった。 最近の旧校舎が騒がしい理由がよく分かった。 私はすぐに君を思い出した。 かっこいい君もやっぱり人気なのか。 ただ、これだけを思った。 友達と一緒に教室に行こうと思ったが、すぐに授業開始のチャイムが鳴った。 私の心は雪が降る雲のように暗かった。
高校2年1月頃
冬がしんしんと降る季節。 3年生は受験の追われている間、1・2年生は部活や恋愛に追われていた。 「2年生は中だるみしやすい」と担任の先生が一学期に仰っていたように、私のクラスはだらけにだらけていた。 だらけているというより、みんな恋愛を楽しくしていた。 修学旅行以降、クラス内での恋愛が増えた。 女子と男子の人数は圧倒的に女子が多い。 ここは女子校か?と間違えるほどだ。 横をみてもカップル、前を見てもカップルそんな状況であった。 もちろん、私の横は年中フリーだ。 私は君と初めて話したあの日から、ずっとあの光景がループしている。 そして勝手に顔を赤くしている。 そんな毎日を過ごしていると、中学時代から尊敬してやまない先輩が私の元に訪れてきた。 彼女は私の目標とする人だ。 尊敬をこえて愛と言えるほどだ。 そんな先輩から手紙をもらった。 先輩がもう少しで卒業してしまうという現実が急に込み上げ、私は授業中にも関わらず泣いてしまった。 かなり泣いていたので目が腫れた。 保健室で冷やしてもらおうと思い、腫れぼったい目を隠しながら歩いていた。 授業中ということで1人で歩いていると、体育館から元気な声が聞こえた。 バレーをしている君がいた。 このご時世でマスクを外している君はすごく新鮮だった。 マスク詐欺とは無縁な可愛い顔だ。 まだまだ中学生感が抜けない幼い君の笑顔に私は釘付けだった。 保健室に行くという理由で教室を出てきたが、残りの時間こっそりと見ていた。 笑顔の君はすごく輝いていた。 やはり君の目からは優しさの光線が出ていると思った。 授業が終わるころに保健室に行ったが、元気になりすぎたせいですぐの帰された。 少しのサボりもたまにはいいなぁと勝手に思っていた。 君の笑顔が頭から離れない1日でした。
高校2年生 1月
年も明け短い冬休みも終わった。 寒い中また学校に登校する日々が始まった。 冬休み中のだらけた生活習慣はまだ抜けきっておらず、眠たい目を擦りながら学校についた。 教室につくと修学旅行以来の再会の大好きな友達がいた。 冬休み中の話などで楽しく話していた。 横のクラスの野球部はいつも来ている時間なのにまだ来ていない。 初日早々寝坊か遅刻かと思った。 そんなことを考えていると、担任の先生に別棟にある資料を取ってこいと言われた。 このときに雑用されるのが学級委員だ。 私は一応、名ばかりの副会長をしているから手伝わないといけない。 しかも、別棟というのは外を通らないといけない。 会長の友達と文句を言いながら別棟に向かった。 外にでると雪がしんしんと降っていた。 今年の雪は去年よりも多く降るらしいよ と友達が横で手を擦りながら言った。 掃除のおじちゃんが一生懸命雪かきをしているのを見ながら通った。 女子に持たせる量ではない資料を2人で持って教室に向かった。 分割して持っていったのでラストの資料を持って外にでたとき、野球部がいた。 雪かきをしていた。 2年生だろうと思いスルーしようとしていると、野球部がこちらをみた。 真新しいウィンドブレーカ。 1年生の野球部の大群だった。 寒い中ご苦労さまですと友達と一言かけた。 あざっす!という野球部らしい元気な返事が返ってきた。 その大群の後ろに友達といる君がいた。 真っ赤な鼻と耳の君。 少し微笑みながらにあざっすと言い立っていた。 寒さで赤くなっている君。 君の一言と微笑に射抜かれて赤くなっている私。 君の返事だけいつものように返せなかった。 これまでのコミュニケーションとは何だったのかと考えさせられるほどのキョドりに自分もびっくりした。 「え、あ、その、ぜんぜんです。」 この一言を言うために私は君を初めて真正面から見た。 パンダのような君の目。 私が1番すきな君の目。 あまりの綺麗さに修学旅行で見たイルミネーションは打ち消された。 野球部との少しのやりとりが終わり、友達と教室に戻ってからも君のことばかり考えていた。 新学期早々、幸せなことがありスキップする私がいた。