ま、良い

6 件の小説
Profile picture

ま、良い

五話目 新妻気取り世話焼き概念の話をしよう

 私はユゥくんに仕事の報告を任せて、自分達が拠点にしている宿屋に向かう。  って言っても、この組合の2階に上がるだけなんだけどね。    階段を登ると、長い廊下が伸びていて、幾つもの扉が連なっている。そのうちの一つ、私とユゥくんの名前が書かれた扉の鍵穴に、持っていた鍵を差し込んで捻る。  これで鍵は開いた筈なんだけど、なんかいつもより音が軽い。鍵を捻ったが、扉の錠が開いた感覚はない。これではまるで、最初から鍵が開いていたみたいだ。    少しの警戒をしながら、扉を静かに開ける。ただいま〜、とは言わなかったし、もちろん「おかえり」も返ってこない。忍び足で部屋に入り、キョロキョロと周りを確認しながら玄関をぬける。  やはり、というか案の定というか……、キッチンの方から包丁がまな板を叩くリズミカルな音が聞こえる。  誰かが居る——いや、十中八九|あ《﹅》|の《﹅》|女《﹅》が居る。   「ユグロくん!おかえ——って、なんだアナタか」 「なんだとは随分な挨拶ね、空き巣魔」  あざとい程にフリフリとしたピンクのエプロン。新妻気取りのラフなポニテが腹立たしい。  そして何より、私よりも年下の癖に一切の謙遜を見せない太々しさ。   「10歳の男の子に欲情してるアナタの方が、犯罪者っぽいとは思わない?」 「大家の特権を振り翳して、異性の部屋に転がり込む方がアウトでしょ?」  バチバチと、目には映らない火花が私達の間に散る。  握った包丁を人に向けるこの野蛮な女は、私のユゥくんを奪おうとしてくる泥棒猫。部屋の鍵が開いてることに気づいて、まず最初にこの常習犯の顔が浮かび上がった。  ユゥくんよりも年上だが、彼とあまり大差の無い子共。当然体つきも幼いが、本人の態度も相まって、実際よりは多少大人びて見える。 「ところで、今日ユグロくんは?」 「ユゥくんは下で報告中よ。私の為に、お仕事を頑張ってくれてるの」 「ふ~ん、何その言い方。まるで彼が、甲斐甲斐しくアナタに尽くしてるみたいじゃない」 「みたいじゃなくて事実よ。今日もユゥくんから、熱いモノをたっくさん注いでもらったんだから♡」 「なっ、なによそれ。アナタまさかユゥくんと―――」 「ちょっと待ちなさい!なにが『ユゥくん』よ!馴れ馴れしくその呼び方をしないで欲しいのだけれど!」  冗談じゃない……!  その愛称を呼ぶのも、彼の世話するのも、全部それは私のものなんだ。  この子と話していると、胸の内がグツグツと熱くなる。他の女に取られたくない、私の独占欲が煮えたぎる。 「だいたいアナタね―――!」 「なによそっちこそ―――!」  気づけばいつもの口喧嘩。けれど私も、彼女も、この口論で折れた事は一度も無い。相手の主張を絶対に認めない。  だからこの口論を終わらせるスイッチは、もう世界に一つしか無くて。 「姉さん、ただいま戻りました」  彼の帰宅の言葉に、そのスイッチが”カチリ”と押し込まれる。 「ユゥくん―――」 「ユグロくん―――」  おかえりなさい♡

0
0

【四話目 ショタの困り顔は心臓に効く】

 意を決して両開きの重い扉を押す。  ズリズリと床を擦って、自分の倍以上に大きな扉が隙間を作る。開けてくれてありがと、なんて言いながら、姉さんは片手でもう一方の扉を容易に押した。なんかちょっとショックだった。   「治安|組合《ギルド》にようこそ!って、なぁんだ。義勇兵の方ですね♪」  扉の先、大きな受付カウンターに座った人が軽く手を振ってくれる。フワフワした髪型の、いつもニコニコとしている女の人だ。  優しそうな人がカウンターで対応をしていて、少しホッとする。後ろをついてくる姉さんには、安心して任せて貰えるように"大丈夫だよ"と、声をかけた。結局不安そうな目は最後まで向けられたが、多少強引に説得をして、今日は先に宿に戻ってもらう。  今回の仕事は、全部彼女に任せきりになってしまった。少しでも多く休んでもらいたい。   「お帰りなさいユグロくん。お仕事は平気だった?」  受付の女の人に名前を呼ばれる。この人——ギルドの受付嬢さんに、仕事の報告を今からするんだ。いつもは彼女がやってくれていた仕事の一つ、今日はそれを俺がやる。声を掛けられたくらいでビクビクなんてしてられない。   「はい。お仕事は終わりました、確認お願いします」  自分の首にかけられていたドックタグを渡す。受付嬢さんはそれを丁寧に両手で受け取ると、カウンターの上に乗っていた機械にタグを差し込む。精一杯に手を伸ばしたつもりだったが長さが足りず、受付嬢さんがカウンターから身を乗り出して受け取ってくれた。  今確認しますね、と笑いかけ、機械を操作し始める。程なくして、何も無い空中に映像が投影された。写っているのは、数時間前の俺と姉さんの映像。鳥型人形との戦闘記録だ。   「うーん、困ったなぁ。コレは……」  受付嬢さんの言葉に、背中から汗が湧き上がる。困った?何が?何か、ダメな事でもあったのか……   「どうかしたんですか?」 「うーんと、ユグロくん達の今回のお仕事は、前に確認された人形の調査……および討伐だったよね?」  受付嬢さんが言ったのは、俺たちが組合で引き受けた仕事の概要だった。  依頼書に書かれた通り、姉さんの攻撃で敵は倒した。それこそ、灰も残らない程徹底的に。   「ユグロくん、この時、魔力を大量に使う攻撃とかした?」  質問にコクリと頷き返すと、受付嬢さんはますます困った顔をした。何かが起きてしまったことは明らかで、不安で胸がキュッとなる。   「組合のライセンスタグに施してた、映像記録の魔術が魔力干渉を起こしちゃってるみたいで。うまく記録が——」  受付嬢さんの言葉はまるで呪文の詠唱で、何を言ってるのかすぐには分からなかった。一生懸命理解しようと思い、あれこれと聞いてくうちに、受付嬢さんが困ってる理由が分かってきた。  つまり、仕事の完了を証明する映像が、ちゃんと記録されていなかったようだ。   「ごめんね、この記録だと。ギルドから報酬を出すことはできないんだ……」 「そんな……」  報酬が出ない。お金が貰えない。ちゃんと倒したのに、ちゃんと仕事をしたのに。   「あぁ〜!泣かないで!泣かないで、ね?」  泣いてない。泣いてたまるか。目をギュッと閉じて、込み上げる不安に蓋をする。でもどうしよう……、お金が無いと、今月の宿の代金とか、ご飯のお金とか。そうだ……、今日はお仕事頑張ったから、姉さんが外食するって言ってた。本当にどうしよう。  本当に、どうしよう。   「そうだ!ユグロくん、人形の残骸とかない?物的証明品があれば、お仕事完了の確認ができるんだけど」  無い。全部、欠片も残さずに消し飛ばしてしまった。  既に言葉を発する余裕もなくなって、惨めに首をプルプルと振る事しか出来なかった。   「そっかぁ……う〜ん」  受付嬢さんの、何度目か分からない唸り声が上からする。困らせてしまった。迷惑をかけてしまった。自分たちの生活も大事だし、お金が貰えないのは悲しいけど。今は、申し訳なさが勝ってその場から動けない。   「う〜ん……うーん、う〜〜ん⁈」  紙が捲れる音と、受付嬢さんが身体を乗り出した音がして、反射的に顔を上げる。  さっきまでの困った顔とは違う。何かを閃いたかのような明るい顔があった。   「ユグロくん!私に、今日あった事を教えて!」  受付嬢さんが持っているのは、姉さんと一緒に受注した依頼書の写し。そこに書かれた一文『——調査と討伐——』の、調査の部分に指が当てられている。  調査報告を聞きます!、そう言って受付嬢さんは、もう一度笑いかけた。

0
0

【三話目 背伸びするショタって何で可愛いんだろ?】

 鳥型人形と遭遇した広野を離れて少し。姉さんとの拠点にしている大きな街が見えてくる。    『経由都市:アスクル』    各地にある転移ポータルの殆どがこの街と繋がっていて、この街を経由する事で、世界中に旅立つ事が出来る。  そういった理由で、この街は『経由都市』と呼ばれている。   「——らっしゃい!西から持ってきた魔石はどうだい!この辺よりも大粒よぅ‼︎」 「——コイツは南から持ってきた新鮮な魚さぁ!産卵期だから脂がすごい‼︎」    人の入れ替えが、多分世界一多い街。だから商人も沢山来ていて、賑わいだけなら王都にも負けてない、って姉さんは言っていた。   「ユゥくん、今晩はどうしよっか?」  夜ご飯の相談をしてくるのは、俺よりもずっと背の高い綺麗な人。黄金ほどキラキラしてる訳じゃなくて、どちらかと言うと、秋の麦畑みたいに温かい印象を受ける長い金髪。俺を見る目は透き通った紫色で、長いまつ毛に心臓が大きくジャンプするのを感じる。  俺がすぐに答えを出せず、口をパクパクしてしまうと、なぜか姉さんは口元をニッと上げて繋いだ手の力を強くした。   「せっかく今日はお仕事したから、外食にでもしよっか」  そう言って鼻歌まで歌い出すものだから、その大人びた見た目とのギャップになんだか笑ってしまう。  姉さんは俺をジロリと見て、なぁ〜に〜?、なんて恨めしそうな声を出すけれど、その様子も同年代の女の子のように見えた。   「仕事の報告は俺がやるよ。だから姉さんは、先に部屋で待ってて」 「うーん、良いの?ユゥくん」  この仕事を始めてもう2年は経つんだ。仕事の報告——|組合《ギルド》とのやり取りは、姉さんを見て学んだ。だから大丈夫。俺でも、姉さんの力になれる。   「うん、任せて!」  少しでも彼女が安心するように、信頼してもらえるように、出来る限り明るく大きな声で言った。少ししてそれが、自分の子供っぽさを強調しただけだと気づいて顔が赤くなる。  姉さんはそんな俺を見て大きく顔を逸らし、肩を振るわせてクスクスと笑う。それがまた恥ずかしくて、顔から火が出てしまうんじゃと思った。   「じゃあ、お願いしよっかな♪」  揶揄うように彼女は言う。まだ息が乱れていて、細い眉毛が歪んでいる。まだ自分を笑ってるんだと思うとちょっとムカムカしてきて、繋がった手を強く握ってみた。そうする事で、この気持ちが少しは伝わるんじゃないかと思って。   「ふふふ♪」  今度は声を出して笑われた。でも、今度はその顔を見せてくれた。小麦色の髪が揺れて、向日葵が咲いたように笑う顔が俺を見ている。  今日はいつもより機嫌が良いな、なんて思ったけど、自分と二人きりの時は大抵いつもニコニコと笑っている気もした。でも、今日はこれが一番の笑顔だ。だって、その顔を見ただけで、口が勝手に釣り上がったんだもの。   「ん?なにか面白い事でもあった?」  そんな風にスッとぼけられても、知らない、としか言いようがない。  これ以上顔を見続けるのは危険だと、体温が警報を鳴らすから、慌てて前を向き直す。  キラキラとした商店街は過ぎ去り、殺伐とした『義勇兵』の街並みに変わっていた。埃と汗と、血と油の匂いに頭がフラつく。  さっきまでの活気良さも抑えられ、地味目な看板を掲げた怪しい店ばかりが目に留まる。   「ユゥくん、本当に大丈夫?」  心配そうな声と一緒に、手を引いてた彼女の足が止まる。  横を向くと、周りの建物よりも数段大きくて豪華な|館《やかた》がこちらを見下ろしていた。

0
0

二話目 魔力補給はエッチじゃなきゃダメなんです!

 甘い香りが鼻いっぱいに広がる。首元を濡らすシットリとした汗の香り。ユゥくんがこの行為に、恐怖や緊張を感じてるのが伝わる。  あぁ……可愛い♡  どうして君は、そんなにも私を誘惑するの?なんで こんなにも愛しいの?  震える体を強く抱きしめて、襟元から覗く白い肌に、甘えるようなキスをする。  彼にもコレが、行為の前の準備だと分かったようで、背中に回された小さな手が私の服を強く握った。   「噛むよ?」  私の声に、彼が小さく頷いた。  白い綺麗な肌に歯が沈んでいく。服を掴む手は徐々に強くなり、筋肉の強張りも激しくなる。私は、ヒトよりも鋭い構造をした自分の歯で、彼の肌を傷つけた。   「ッツ……!」  痛みを堪える、声にならない吐息が聞こえる。私は一度口を離し、血の滲んだ傷口にキスをする。  鎖の味がジワリと広がった。  痛いよね。怖いよね。でもごめんね、本番はまだこれからなんだ。   「それじゃ、吸うよ♡」  もう一度口を大きく開け、カプリと傷口ごと首元を咥える。深く息をするように口を窄め、彼の中にあるものを吸い出す。  今度は、さっきよりも少しだけ塩辛い味がした。極限まで上がった彼の緊張が、血と混じり合っている。   「……♡」  口の中に、血とは違う熱いものが流れ始める。味はしない。匂いもない。ただソレを吸い出すたびに、耳元から甘えるような寂しい吐息が聞こえる。   「姉さん……もうっ、出てる?」  悲しい鳴き声を出しながら、ユゥくんが私の頭に手を回す。辞めて欲しいのか、もっと吸い出して欲しいのか。  『魔力』と呼ばれるソレを奪われる感覚に、彼が怯えているのが分かる。だから私も、安心させるように彼の頭に手を回した。ゆっくりと手を動かし、落ち着かせるように頭を撫でる。  服を掴む手はゆっくりと弱まり、預けられた体重が大きくなっていくのを感じる。  あと少し♡……もう少しだけ♡  何度も自分にそう言い聞かせ、たっぷりと時間をかけて魔力を取り込む。   「姉さん、もうっ……」  彼の少し辛そうな声を聞く。ほんの少しだけ、調子に乗りすぎたかもしれない。  名残惜しさを感じながら口を離し、まだ少し滲んでくる血をペロリと舐めとった。   「ごめんね、ユゥくん。少し夢中になっちゃった」 「俺は平気。それより、魔力は回復した?」 「もうバッチリだよ!ありがとう、ユゥくん♡」    魔力補給という大義名分を失って、私が彼の身体を解放すると、彼はそそくさと襟元を直して離れてしまった。  けれど、その耳元や頬は少しだけ赤い。それがどうしようもなく嬉しくて、彼の頭を抱きしめた。   「姉さん?どうかしたの?」  戸惑った声を出す彼に、何でもない、と私は言う。  少しの葛藤と再び闘いながらも今度こそ彼を解放して、乱れてしまった自分の衣服も軽く整える。  まだ身体全身に、彼の残した匂いが残っている気がする。貰った体温が、私を包んでくれている気がする。  そう思えるだけで、胸の中がジンジンと温かくなるのを感じる。   「その……、そろそろ帰ろっか?」  どこか照れた様子でチラチラと視線を送ってくるユゥくん。そんな彼の小さな手をパッと掴み、少しはこの思いが伝わって欲しいと思いながら笑顔を向ける。   「うん、帰ろっか♡」  繋がる手は柔らかくて、フワフワで、私の手でもスッポリと包み込める程に小さい。  私が少しだけギュッと握ると、彼も同じくらいの強さで返してくれる。それがとっても嬉しくて、私は思わず指を絡ませた。

0
0

【一話話 後半えっちぃな】

 目を閉じればいつだって貴方の顔が浮かび上がる。サラサラの黒髪。大きな瞳。小さな鼻に、プニプニの頬。  そして、口角をニッと上げて見せてくれる、太陽みたいな笑顔。  背も歳も、私の半分も無いというのに、いつだって私は彼に支えられている。   「姉さん……ッ!」  彼の声だ。声変わりの訪れていない、不安定な幼い声。私を呼ぶ、信頼に溢れた声。    その声の主人を探してゆっくりと目を開ける。  目の前に広がるのは広野。背の低い草花に覆われた緑の大地。そこに立つ私の傍には、真剣な眼差しを向ける彼が居る。   「姉さん、大丈夫?」  心配そうな顔を向けてくる少年。その頭にそっと手を乗せる。髪の反発が心地よい。私の手にスッポリと収まる程の頭が、掌の動きに合わせて前後に動く。   「大丈夫だよ、ユゥくん♡」  そう声を掛けて私は、彼が心配そうに目を向けた先に視線を送る。  広野の上空を飛ぶ三体の|敵《エネミー》。鳥の形をしているが、生物ではない。  『人形』と呼ばれる、どこかのバカ野郎が作った戦闘兵器。魔物に対抗する為に大量に製造されたが、そのバカが土壇場で夜逃げしたせいで、制御ができずに暴走している。    世界中で今も動き続け、無差別な攻撃を繰り返す人形。  私はそんな害虫に向けて両腕を伸ばす。    彼と同じ、ヒトの見た目をした華奢な腕。けれど私の腕は『本物』じゃない。  一度魔力を集めれば、ソレは真の姿を晒す。機械的な開閉、移動、展開をし、命を奪う砲身に変わる。   「Fire」    小さく呟く。  銃口がチカリと煌めき、光の柱が人形に向かって伸びる。  狙いは正確。  三体の人形を白線が呑み込み、跡形も無い塵へと変える。柱は段々と細くなり、次第に途切れ、最後には青い空だけが残った。   「ふぅ〜、終わったよ。ユゥくん」  銃に変わった腕を雑に振ると、ガシャガシャと可愛く無い音を立ててヒトの形に戻る。  あまりに何事も無かったかの様に戻るから、思わず呆れた目を向けてしまう。  今更ヒトのフリは無理があるでしょうが……   「姉さん、お疲れ様」  自分の視線よりもずっと下からする声。視線を落とすと、まん丸の瞳がキラキラと輝いている。正直、どんな宝石よりもずっと綺麗だと思う。  そんな眩しい視線を浴びせてくるものだから、堪らず私は彼を抱きしめた。   「ユゥく〜ん!私頑張ったよぉ」  ヤバイ…!柔らかい!多幸感が‼︎多幸感が脳から溢れりゅ♡私この子のお姉ちゃんで良かったぁ♡   「大丈夫?疲れてない?」 「うぅん、もうヘトヘト。歩けなくなっちゃったぁ」  このモチモチから離れたく無い私は息をする様に嘘をついた。彼がまだ"そういう事"に鈍いのを良い事に、首元に鼻をくっつけて思いっきり空気を取り込む。   「ねっ、姉さん……くすぐったいよ」   モジモジと動いて逃げようとする体をホールド。絶対に逃さない。  押し返す力が段々と強くなるが、いくら男の子と言えど、この体格差では何も出来ない。  私にされるがままになって耳がほんのりと赤くなる彼に、出来るだけ甘い声を出して私は言った。   「ねぇユゥくん。ユゥくんの熱いの、欲しくなっちゃった♡」  抱きしめた身体が、ピクリと跳ねたのを感じて口角が上がる。爪を立てる様に背中を撫で、薄い肩に吐息をかける。   「ねぇ、良いでしょ?ユゥくんも溜まってるもんね♡」  彼は何も言わない。目を右往左往させて、小さく口を開いては、躊躇うように閉じるのを繰り返している。  そんな彼の可愛い葛藤をジッと待つ。   「……いいよ」  捻り出したような小さな声。彼が私の背中に腕を回したのを感じ取り、私はジュルリと舌なめずりをした。

0
0

プロローグ おおまかな舞台説明

 この世界には『迷宮』と呼ばれる塔が時々現れる。  高さも大きさもバラバラなその塔からは、『魔物』と呼ばれる怪物が産み落とされ、人々を恐怖させていた。  そして時を同じくして、魔物に立ち向かう何人かの勇気ある者が現れた。  彼らは、今でいう『義勇兵』の先駆けで、歴史の中では『勇者』と呼ばれる者達。  そんな彼らの働きにより、人々は魔物の脅威から守られてはいたが、少なからずの犠牲は毎年のように出ていた。    そんな時だ。一人の天才が素晴らしい事を思いついた。 『魔物と戦ってくれる兵器を作り出そう!』  そうして生まれた戦闘兵器は『人形』と呼ばれ、人類の切り札になる……筈だった。

1
0