漫画

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嫌いなもの

僕には昔から、一つだけ嫌いなものがある。 それは、「退屈」だ。 僕がこの、「退屈」を感じるようになったのは、 僕が10歳の時だった。 父が事故で無くなり、母は僕を育てるために必死で働くようになった。 母が朝から晩まで働くようになり、僕は一人で過ごす時間が多くなった。 一人でいる時間はとっても「退屈」だった。 家にはゲームなどの娯楽はなく、話についていけない僕は、クラスではのけ者のされ 家では一人、こんな「退屈」な日々を過ごすようになった。 そんな僕にも、「退屈」を凌ぐ方法があった。 それは、他人の「退屈」を終わらせてあげることだ。 毎日、同じことを繰り返しているアリさんは、もう働かなくていいように、巣を壊して楽にしてあげた。 毎日、同じように鳴いているセミさんは、頭を落として、もう鳴かなくていいように、楽にしてあげた。 毎日、同じ水槽で泳いでいる金魚さんは、水を抜いて、もう泳がなくていいように、楽にしてあげた。 そんな僕にも、高校卒業という「退屈」を終わらせられるかもしれない、一大イベントがやってきた。 大人になり、今後の進路を決める。 その時、僕はもっと多くの人の「退屈」をなくしてあげたいと思い、学校の先生になることに決めた。 それから4年、僕は必死で勉強して、教員免許を取り、先生になった。 今日からこのクラスの担任。 僕の生徒には絶対「退屈」な思いはさせない。 もし「退屈」をしている生徒がいたら、

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笑う

僕の彼女はいつも笑顔だった。 僕が受験に受かった時も 僕がデートに遅刻した時も 彼女が風邪をひいたでさえ、笑顔だった。 最初は彼女の笑顔以外の表情が見たい。 そんな些細な好奇心からだった。 「君は笑顔以外の表情はしないの?」 普通に考えれば、とてもおかしな質問だが、彼女は笑顔で答えてくれた。 「人間ですから笑顔以外の表情もしますよ」 「でもあなたといると、楽しくていつも笑顔になってしまうんです」 僕はそんな彼女の答えに、ついつい笑ってしまった。 それでも彼女は一緒に笑ってくれた。 そして、彼女が寝てる隙に僕は彼女の大事にしている、日記帳をほんの出来心で見てしまった。 一日目 お皿を割ってしまいお父さんに殴られました。 二日目 お父さんに、笑顔でいなさいと殴られました。 三日目 お父さんにまた殴られました。でも私が間違った時に、殴って教育をしてくれるいいお父さんです。 そこから、笑顔でいないと殴られるなど、理不尽な虐待が始まった。 それから二年後 今日はお父さんが警察の人に連れていかれました。 警察のおじさんは児童虐待とか言ってたけど、私にはちゃんと教育してくれるいいお父さんなのに、なんで連れてかれちゃったんだろう。 次の日 新しいお家に来ました。 お父さんはもう帰って来ないみたいで悲しいです。 この日記には、僕も知らなかった彼女の虐待の日々が書かれていた。 そしてこの日記の最後のページは、僕と彼女が付き合った日だった。 今日でこの日記を最後にします。 私の生きている記録を残すために、日記を書いていましたが、もうその必要がなくなりました。 今日彼氏ができました。今日からはその彼と過ごす一生の日々を、彼と私の心の中に刻んでいきます。 僕はこの日記を読み終わった時には、顔がぐしゃぐしゃになるくらい、泣いていた。 そして、起きてきた彼女にそっと寄り添って、ぎゅっと抱きしめてあげた。

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ミッション

僕は今すごく重要なミッションに取り掛かっている。 ミッションの内容は、とても簡単なもので、手を挙げてとある言葉を唱えるだけだ。 だが、この手を挙げる行為は、この場において、一歩間違えれば死を意味する極めて危険な行為。 しかし、このミッションにはもう一つ、クリアする方法が存在する。 それは、別のライバルの宝を横取りすることだ。 おそらく、この場にいる30人のうち、少なくとも4人は、僕と同じく宝を横取りしようとしてるはず。 制限時間は、僕の長年の勘からして約5分、それまでに誰かがこのお宝にありつけなければ、みんな死んでしまう。 誰か早くお宝に有り付いてくれ! 「先生トイレ行ってきていいですか?」 「ええ、行ってきていいですよ」 よしやっと救世主が現れた。 その瞬間他の4人も一斉に手を挙げた。 「俺も!」 「私も」 そして、当然僕も手を挙げた 「僕も」

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何のことですか?

僕は、昔から病弱でよく倒れていた。 入退院を繰り返しながら、16歳のある日ある力に目覚めた。 最初は透視能力あらゆるものが透けて見えた。 その数日後には、炎が出せるようになった。 能力が次々目覚めるようになってから、病気は治っていった。 でも先生はなかなか退院させてくれなかった。 「先生なんで僕を退院させてくれないんですか?」 「先生にもらった薬は飲んでるし、それ以外の薬もしっかり飲んでるのに」 「その、それ以外の薬を飲んでるのが問題なんですよ」 「何のことですか?」 「はっきり言うと、あなたは薬物中毒者です」 「特殊能力が使えるのも、昔からよく倒れるのも薬物の副作用です」

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ネットサーフィン

僕の家は、5人家族で父、母、兄、僕、おばあちゃんがいる。 父は昔からネットが嫌いで、僕が初めてネットを手にしたのは、高校一年生の時、スマホを買ってもらったことだ。 それまでは、スマホ以外の物は一切買ってもらえなかった。もちろんテレビゲームもだ。 スマホを持ちネットという面白いものにのめりこんだがスマホにも限界があった。 そこで、大学はネットを学べるところに行くことにした。18にもなれば一人暮らしができたことから少し遠い大学に行った。 ネットを学ぶことから、パソコンを手にした。 ネットサーフィンの危険なところは、変なサイトに飛ぶことがあるところだ。 人間の危険なところは、それに興味を持つ、好奇心だ。 生憎その日は、変なサイトに飛んでしまった。 でもその時焦ることはなかった。なんなら興味まで持ち始めた。 大丈夫、大学でネットは勉強してるんだ。 大丈夫、いつでも戻れるんだ。 そのサイトは、暗くて不穏な雰囲気だが、どうやらネットショッピングのサイトのようだ。 「black市場」 このサイトにおいてある商品は、普通ではなかった。 「両目20万」 「片手(右)12万」 「心臓90万」 詳細を見てみるとその人体の持ち主が書いてあった。 「佐藤XXさん」 借金を負いこうなりました。 「山田OOさん」 自身からこの道を選びました。 苗字は書いてあるが、名前は書いてなかった。 私は、自分と同じ苗字の片手を買ってみることにした。 「お買い上げありがとうございました」 それから2日後 「お届け物でーす」 「届いた!」 中を開けてすぐに電話が鳴った。 母からだった。 「もしもし、行方不明だったあなたのお兄ちゃんが、片手がない遺体の状態で発見されたわ」

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冷蔵庫

僕が冷蔵庫として、この家に来たのは、今から7年前の3月、 ひとつ前の型として、セールに出されていた僕を買ったのは、20代前半くらいのきれいな女性だった。 そこそこの大きさの僕は、一人暮らしには、少し大きいが、不便であるほどではなかった。 彼女はなかなかの偏食ぶりで、冷蔵庫には、いつもスムージーとコンビニ弁当が入っていた。 僕は彼女とずっと一緒に暮らしてたこともあり、次第に人の文字や、言葉がわかるようになっていった。 それから2年が経ち、彼女が男の人を連れてきた。どうやら彼氏ができたようだ。 彼氏はその日から家で生活を共にするようになった。 それから間もなく、彼女が帰ってこなくなった。男の電話の話を聞いていると、彼女に子供ができたらしい。 彼女が帰ってきてからは、子供が増えて3人暮らし、冷蔵庫の中も離乳食や、栄養バランスのとれた食事ばかりになった。 子供が2歳にもなると、僕はだんだん小さくなり、彼女の住んでいるアパートもだんだん狭くなっていた。 彼女は男に引っ越しを、相談するようになった。男はその後すぐに、引っ越し業者に引っ越しを頼んだ。 周りのみんなが、段ボールに入れられたりする中、僕だけなにもされずに車に乗せられた。 車から出されると、そこには大きなおうちがあった。 中から男の人が2人出てきて、僕を運んでいく。さっきの引っ越しの人かななどと考えながら僕は家の中へ入れられた。 そしてシールを張られると彼女たちは帰ってしまった。また迎えにくるのかな? 新しいおうちには、人がいっぱい居て、僕みたいな家電がいっぱいあった。 みんなシールが貼ってあった。僕のシールにも、みんなみたいに何かが書いてあった。 意味が分からなかったが読むことはできた。 「冷蔵庫 中古9000円」

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地獄のない世界

俺はある日、トラックにはねられ、事故で死んだ。 焦りながら近寄ってくるトラックの運転手、パニックで悲鳴をあげる女性、何が起こったかもわからずこちらを見つめる小学生、俺はこの景色を見ながら死んでいった。 これでいいんだ。これでやっと死ねた。俺は昔からこの世に退屈していた。早く死にたい、天国を見たい、地獄を見たい、この退屈から抜け出したい。 でも、あの世は、俺が思っていたものとは違った。閻魔様から告げられた一言目は、天国でも、地獄でもなく、衝撃の言葉だった。 「君は次、記憶を残したまま、転生しよう。」 「え、ちょっと待って。天国は?地獄は?」 「君は転生、もう決まったの、何より君は事故死でしょ、天国でもないし地獄でもないよ。」 その後俺は、驚きで一言も発せぬまま転生した。 次の人生も、とても退屈だった。 結婚して子供もできた。それでも、俺の退屈が晴れることはなかった。そしてここにきて初めて自殺をした。 「君、また来たの」 「えっと、退屈で自殺、こっちも遊びじゃないから、こういう事されると困るんだよね。」 「次もまた記憶を残したまま転生ね」 「は?今回は自殺だろう、前回とは違う、自殺なら地獄へ行けるだろう。」 「君しつこい、さっさと転生してくれる。」 次の転生では、天国と地獄へ行く方法を必死で考えた。 そしてある決断に至った。 「人を殺そう。」 その日の晩、隣の家の夫婦を刺し殺し、自殺した。 「次は、人を殺して自殺」 「君、最悪だね。」 「前回同様、転生」 「あと、天国と地獄は存在しないよ。何してもみんな転生。」 俺はそのまま何も言わなかった。 そして、3回目の転生で、あることに気づいた。 「なんだ、地獄ならあるじゃないか。ずっとそばに」 そう、この退屈な転生これこそが、俺に課せられた、地獄じゃないか。

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私が嫌われる理由

私は「普通」や「当たり前」が嫌いだった。 よくわからないルールにはすぐに理由を求めた。 「先生なんでみんな、同じ教室で、同じ黒板を見て、同じ勉強をするんですか?」 「それが普通だからだ」 「先生なんでみんな同じ制服なんですか?」 「それが当たり前だからだ」 そう、誰も普通や当たり前を、説明できる人はいなかった。 こんなことをしているうちに、先生からは避けられ、友達はいなくなった。 そんなある日、先生に荷物を職員室に運ぶようにお願いされた。 職員室の前まで来ると、私の名前が聞こえた。どうやら私の話をしているようだ。 「あの子気持ち悪いわよね」 「あの容姿であの格好でしょ、他の子にも悪影響だからほんとやめてほしい」 「ああいう子には、荷物運びでもさせておけばいい」 ああ、なんだ、そうかそうか、私が避けられる理由も、友達がいなくなった理由も、めんどくさい質問をするからじゃなかったんだ 「私の心と体の性別が違うからだったんだ」

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