おさかな
24 件の小説おさかな
高3男子です。まだ書き始めたばかりなので拙いですが、温かい目で見ていただけると幸いです。 好きなジャンルはファンタジー(ゲームが題材のもの、SF)とミステリーです。最近気づいたのですが、ヤンキーものも結構好きです。週2〜3回程度を目安に投稿しようと思います。
閃雷イマジネーション一話
「ハァハァ、ハァ…!」 東京の入り組んだ路地を、男が何かから逃げるように走る。その体は傷ついており、掌にはUSBを握りしめている。 「早く知らせなくては…!」 男の持つ一つの情報が、後の大事件の引き金となる−。 二XXX年、東京−。 密集したビルの間を少年は走り抜ける。ここ数十年で東京は異常な発達を遂げ、近未来都市へと変貌した。それには幾つかの背景があるが、最も大きいのは“超能力”だろう。 “超能力”−。 この世の理を超えて超常現象を起こす能力のこと。遥か昔から存在は確認されてきたが、三十年ほど前からその数が激増した。神からの恩恵か試練か。良くも悪くも超能力者の存在は社会に影響を与えた。 「クソッ!上手く逃げれると思ったのに!」 三十代くらいの男は、大きなバッグを持って逃げる。少年はその男を追いかけて同じように走る。 「面倒だな…。そろそろいいか?」 少年は、耳に着けたインカムに向かって聞いた。 『うん。人も近くにいないし、いいよ。』 女の子が返事をした。 「オッケー。じゃあ…いくぞ。」 フッと息を吐くと、少年の体が発光し始めた。正確には、発光する筋のようなものが入った。そして、その体からはバチバチと青白い雷が放電している。 ボルトキネシス−。 そう呼ばれる超能力。雷への耐性があり、純粋な雷エネルギーを操ることができる。少年は雷を体内に流して、身体能力を強化しているのだ。 「行くぜ…!」 足に集中的に雷を流す。 「クソッ!『浮遊』!!」 男は超能力でふわりと浮いた。常人ならばそのまま逃げ切れていただろう。しかし少年は常人ではない。二つのビルの壁を交互に蹴って上へと上がる。そして、 「追いついた!」 男を真下へと蹴り落とした。 「ふぅ、終わりっ!」 男は地面に衝突し気絶していた。 『お疲れ様、後の処理は警察に任せて帰ってきていいわよ。』 インカムの先の少女−南川沙羅(みなかわさら)は言った。 おっと、俺の紹介をして無かったな。 俺は井狩空(いがりそら)。都内の高校に通う高校生。茶色のミディアムマッシュショート(ちなみに地毛)を除けば至って普通も高校生…いや、一つ違うところがあった。 俺は、“超能力者”だ。
お久しぶりの挨拶
三ヶ月?ぶりの投稿です。こんなで申し訳ない! 部活が忙しくて投稿できんかった。あと単純にスランプ…。 とにかく!今日から投稿再開するんでお題よろしく! なんでもいいよ!
宵に酔う 七話
「久しぶりだな。ひひっ!」 そう言って笑った男に見覚えがあった。 「アレン…!」 彼−アレン・マクーバー−は俺の親友とも言える人物で、メンバー以外で最も長く、いやもしかしたらメンバー以上のに付き合いのある同い年の友人だ。俺の親父とアレンの親父さんが古くからの知り合いで、俺の親父はヤクザ、アレンの親父さんはマフィアらしい。名前から分かる通り、アレンの親父さんはロシアのマフィアだ。日本に仕事で来た際、一人の女性に一目惚れして日本で活動することになったのだと。その女性が後の奥さんになる人で、漫画みたいなことが色々あったらしいが、その話はまた今度。さっき言った通りアレンの母親は日本人。そのため日本語もロシア語もペラペラだ。外見は親父さんの血を濃く継いでおり、金髪碧眼、堀は深いが整っている。そういや中学の頃はモテモテだったな。本人は興味無さそうだったけど。 「それで、なんの用だ?」 俺がそう聞くと、 「おいおい冷たいぜー?久しぶりに会ったんだからさぁー。」 「はいはい悪かった。久しぶりだなさっきは助かった、それでなんの用だ?」 「ああ用ってのはね−。」 アレンはそこで一度区切り、真剣な面持ちになって言った。 「お前とそこのお嬢さんについてだ。」 「俺たち…?」 「ああそうだ。実はな…。」 そこで俺たちは衝撃の事実を知る。 「なに…!?」 杏里が狙われていたのは俺が原因だったという。というが、杏里を狙っていたのは本当で、俺のついでだったらしい。では何故俺が狙われたのか。日本進出を狙うマフィアが、手始めに日本有数のヤクザである親父の組を狙い、優位に立つために俺を人質にしようと企んでいるのではないか、ということ。 「でも誰がそんなことを?」 「…俺の兄貴のせいだ…。ゴメン。」 「アレンの兄貴?」 確かアレンの兄貴は十歳くらい上で、ロシアの小さなマフィアのボスだったはず。しかし根はいい人で、何度か会ったことがあるが礼儀正しく物腰柔らかな青年という印象だった。 「お前の兄貴はそんな人じゃなかっただろ?」 「そうなんだ。兄貴はなによりも礼節を重んじる人で、どっちかって言うとお前の親父みたいなヤクザっぽい人なんだよ。兄貴の組織もそうだった。でもいつしか変わっちゃって…。きっと誰かが裏で操ってる。頼む、力を貸してくれ。」 アレンは頭を下げて言った。こんなことをしなくても俺の答えは決まっている。 「向こうが狙ってくるんなら、返り討ちにして情報を聞き出せばいいじゃねぇか。」 「それって…!」 「もちろん!いくらでも力になるぜ!」 「ありがとう!俺の方でも探ってみる。このことは内密にな。それじゃ。」 アレンはフードを被り直し、暗い路地に消えていった。 「思ったより大事だな…。」 しかし今までとやる事は変わらない。杏里を守り通すだけだ。 もう一度気合いを入れ直した。
【お題】赤色のギフト
三年前、女の子を助けた。 「待って!!」 そう言って、駅のホームから飛び降り自殺しようとする女の子を止めた。その行為が彼女を救ったのか、余計に辛い思いをさせることになったのかは分からない。しかし、事実俺は彼女を止めた。 始まりはさらに半年前に遡る−。 俺は荒巻慧(あらまきけい)。都内の高校に通う高校生だ。そんな俺には気になっている女の子がいる。それは、いつも電車の中で見かける同い年くらいの彼女。名前はおろか、マスクの下の顔、声、性格、通っている高校でさえ知らない。しかし俺は彼女から目が離せなかった。 そんな俺たちが初めて会話したのはある夏の日だった。その日は最高気温が三十度を超えていて、彼女も冷たい飲み物を買おうと思ったのか、同じ自販機の前で会った。 「「あっ。」」 同時に手を伸ばし、指先が触れ合った。 「ど、どうぞ…。」 「い、いえ、お先にどうぞ。レディファーストなんで…。」 「ありがt、あっ!」 彼女が財布を落とし、小銭をばら撒いてしまった。 「すみませんっ…!」 「いいですよ。普通のことなんで。」 そんなことがあって、俺たちは自己紹介をした。彼女は九那凛(くなりん)と言う名前で、驚いたことに彼女も俺を知ってくれていた。同い年と言うこともあり、朝電車の中で話す仲になった。二十分もない短い時間だったが、毎日それが楽しみで癒しだった。 そんなある日、凛は暗い顔で電車に乗ってきた。俺に気づくと少し明るくなったが、どうしても気になって聞いた。 「何かあったの?」 俺が聞いても「なにもないよ。」と言うばかりで答えをはぐらかされた。 (絶対何かあっただろ…。) 気になっても何もできない自分が情けなく思えた。 それから凛は朝見かけなくなった。最初は体調を崩しただけかと思ったが、一週間、二週間と時間が経つにつれて俺の中の不安は大きくなっていった。 そして事件が起こる−。 凛が飛び降り自殺をしようとしていたのだ。久しぶりに見た彼女は様子がおかしく、フラフラとホームの縁に向かっていた。その姿を見た途端に体が動き、凛に向かって走っていた。やがて電車がやってきて、彼女の体が傾き、落ちようとしていた。 「待って!!」 自然と口から出ていた。その刹那、彼女は一瞬だけ足を止め−、 「間に合った!!」 俺は凛の腕を掴んだ。彼女を自分の方へ引き寄せ言った。 「どうしてあんなことしたんだ!もう少しで死ぬところだったんだぞ!?」 「…もう、疲れた…。死にたいよ…!」 その言葉を聞いた時、俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。彼女がそんなにも背負い込んでいたなんて。それに気が付かなかった自分が恥ずかしかった。 「なにがあったの?」 少しでも力になりたくて聞いた。 「実は…。」 凛はぽつりぽつりと話し始めた。 凛の家は父子家庭で、お父さんが男手一つで凛を育てていたのだそう。そんなお父さんも無理が祟ったのか、一ヵ月ほど前に倒れた。学校にバイト、お父さんのお見舞いや看病とやることが多すぎて身体的にも精神的にも辛くなり、もうなにもかも嫌になった時、自殺が思いついた。 「…そんなに辛かったなら言ってくれよ…。」 「でも…。」 「迷惑くらい、いくらでもかけろ!辛い時こそ頼ってくれよ…。」 「……。」 「九那さん、俺は君が好きだ。」 「−ッ!?」 「多分一目惚れだったんだと思う。でも話していくうちに、君を知っていくうちに。明るい君に、その笑顔に惹かれていった。だから、その笑顔がかげるのは嫌だ。もっと頼ってくれないか?」 「でも、迷惑をかけるかも…。」 「さっきも言ったでしょ?迷惑くらいいくらでもかけてよ。」 「うん…。ありがとう…!」 安心したのか、凛は泣きだした。俺はそんな凛に寄り添うようにいつまでも横にいた。 それから時は流れて−。 「慧くん!」 凛の声で目を覚ました。 「おはよう。」 「おはよう!」 あれから三年が過ぎ、俺たちは同棲を始めた。凛のお父さんも回復し、バリバリ働いている。お父さんからは「凛のこと、頼んだよ!」と言われてしまった。凛も元の明るい凛に戻り、今はデザイナーの専門学校に通っている。 「あ、あのさ慧くん…。」 「うん?」 俺が少し昔のことを思い出していると、凛がモジモジしながら話しかけてきた。 「そ、その…。今日バレンタインでしょ?チョ、チョコ、作ったの…。」 「マジで?ありがとう。」 「それ、本命だから…。だ、大好きだよ、慧くん。」 顔を真っ赤にしながらも微笑んで伝えてくれた。その笑顔が一番の贈り物だ。
小説グランプリ決勝稟空 モンスターハンターRISE 紅蓮の砲火
「ふぅ…。」 軽く息を吐いて銃を構える。スコープを覗いた先にはモンスター。全身を泥で覆われたボルボロスだ。今までの狩りの成果で、足元がふらついている。引き金に指をかけ、反動に備えて態勢を整え力を入れる。 ドウッ! 銃口から貫通弾が発射され、狙い違わず目を撃ち抜いた。 「グガッ!?」 短い断末魔を上げて倒れた。 「クエスト、クリア。」 ボルボロスの素材を剥いで帰路に着いた。 私はリィン。観測拠点エルガドでハンターをしている。基本はソロ狩りで、武器はライトボウガンのヴァルキリーブレイズ。防具はヤツカダシリーズだ。 「今日も綺麗だなぁリィンちゃん…♡」 歩くリィンを男たちはうっとりと眺める。それもそのはず。スッと通った鼻筋、柔らかそうな桜色の唇、ぱっちりとした目で、瞳は翡翠色。深い藍色の髪は短く切り揃えられていて、しっかりとケアされているのが分かる。またスタイルもよく、その仕草は品がありその姿からは強い意思を感じる。言わずもがな、美少女であった。 「今日は何のクエストを受けようかしら。」 そんな男たちには目もくれず、リィンはクエストボードを見た。 時は少し遡り−。 「うおぉぉーー!!」 「グァァ!!」 大社跡に少年とモンスターの雄叫びが響く。さらに時折雷が落ちた音もする。その音で鳥たちは騒ぎ、木々はざわめいた。 「ははっ、流石だなジンオウガ!」 嬉々としてジンオウガと戦う少年の名はカグラ。ユクモ村出身の双剣使いだ。通常、ジンオウガに一人で挑むことは自殺行為ではあるが、少年は好んで挑んでいた。しかも楽しみながら。 「ウニャーー!許さねぇのニャーー!!」 先程一人でと言ったが訂正する。一人と一匹だ。 「大丈夫か、ユウガ?」 カグラが聞くと、オトモアイルー−ユウガ−は不敵な笑みを浮かべて言った。 「おうよ!お前こそ大丈夫か!」 「誰に言ってんだ?さ、後少し。行くぞ!」 「ウニャー!」 カグラとユウガは再び気を入れ直し、ジンオウガに向かった。 「このクエストにしようかしら。」 リィンが張り紙に手を伸ばすと同時に隣の男も手を伸ばした。 「これにしよっと!ん?」 「…。」 二人の間に沈黙が流れた。 「私が先に選んだのだけど?」 「いや、俺が先だ。」 「「……。」」 またしても沈黙。そんな時、見かねた受付嬢が提案した。 「なら、お二人で挑んでみては?ボウガンと双剣ですし相性良さそうですよ。」 「そう言うことなら…。」 「まあ一回ならいいか…。」 リィンとカグラ+ユウガは共にクエストに挑むことになった。
【恋愛・青春】書きたかったもの
唐突だが、私清水凪(しみずなぎ)には好きな人がいる。それは彼、奥堂海(おくどうかい)。顔はそこそこよくスタイルもいいが、無口で何を考えているか分からないミステリアスな男の子。私がそんな彼を好きになったのはつい一ヵ月前のこと。 「はあ、帰り遅くなっちゃったなぁ…。」 その日、私は委員会の仕事が長引いて帰るのが遅くなってしまった。 「早く帰らないと…って、ん?」 道の向こうから歩いてくる人影を見つけた。始めはただの会社員かと思っていたけど、そうじゃなかった。見るからにチャラそうな男は私を見かけるなり、 「ねぇ君、今ヒマ?よかったらこの後イイコト、しない?」 とナンパしてきた。 「私、急いでるので。」 と断っても離してくれなかった。挙句の果てには、 「ごちゃごちゃうるせぇな!黙ってついてこい!」 と私の腕を引っ張ってきた。 「きゃっ、やめて!誰か!」 「ギャハハ、こんな時間だ。誰もこねぇy−。」 「叫び声がして来てみたが…、これはどう言う状況だ?」 その時に助けてくれたのが奥堂くんだった。 「とりあえずその子を離してくれないか?嫌がってる。」 「あぁ?痛い目見たくなかったら引っ込んでろ!」 「そうか。なら、力づくで…!」 奥堂くんは少し腰を落として、左手を前に出し構えた。 「なんだぁ?そういうことなら、これでも食らえぇ!」 「奥堂くんっ!!」 男が奥堂くんを殴ろうとして−、 「遅いな。」 横腹に強烈なパンチを食らった。それだけで男は地面に突っ伏し、悶絶していた。 「大丈夫だった?今日は家まで送るよ。」 「う、うん。ありがと…。」 (奥堂くん、強い…!) 思い返せば、この時、恋に落ちていたのかも知れない。 それからと言うもの、私は奥堂くんを自然と目で追うようになってしまった。そのせいか、奥堂くんと時折目が合うようになった。彼は目が合うと、ふっと微笑んで軽く手を振ってくれる。その度に私の胸は高鳴った。 そんなある日、私が彼を好きだと自覚する出来事があった。 その日は奥堂くんと二人で学園祭の買い出しに行っていた。 「うぅ〜、寒いね〜。」 「ん。そうだな。大丈夫か?」 そう言って彼は自分のジャンパーを脱ぎ始めた。 「いやいや、大丈夫!心配しないで!」 「そうか。」 (あービックリした。急にあんなこと言うんだもんなー。) 二人で話しながら道を歩いていると、私が氷で足を滑らせた。 「あっ。」 車道側に体は傾き、後ろからは車の音も聞こえる。 (私、もしかして死ぬ…?) そう思った瞬間、私の腕がぐんっと引っ張られ、歩道に戻された。 「え…?」 急なことで何が起こったのか分からなかった。呆然としていると、 「大丈夫か!?怪我ないか!?」 奥堂くんの声が近くで聞こえた。その時に気づいた。私は奥堂くんに肩を抱かれていた。 「えっ!?あ、あぁ…!」 奥堂くんの顔が近くにあり、心配そうな面持ちで顔を覗き込んでいる。私は恥ずかしさのあまり、顔を背けてしまった。きっと顔は真っ赤だ。 「どうした?どこか痛むか?」 「い、いや、その…。顔が、近い…。」 「ッ!わ、悪い…。」 奥堂くんは優しく私を立たせてくれた。 (すっごいドキドキした…!心臓の音、聞こえてないよね…?) 私の心臓はこれまでにないくらい早く鼓動していた。 「ありがとう。さっきの奥堂くん、かっこよかったよ。」 (わぁーー!何言ってんの私!?恥ずかしい恥ずかしい!消えたい!) さっきの言葉を早くも後悔した。一方奥堂くんの反応は…、 「あ、ありがとう。…清水に怪我がなくてよかった…。」 …キュン♡ (奥堂くんが顔を赤くしてる!照れてるの!?可愛すぎぃー!さりげなく私の心配してくれるとこもかっこいいー!あぁー好きぃー!) そこで私の思考はフリーズした。 (…ん?好き?…そっか、私奥堂くんのこと好きだったのか…。) そう自覚すると、奥堂くんが急にかっこよく、いやより一層かっこよく見えた。 (あー直視できない。) その後は、奥堂くんが車道側を歩いてくれ、何事も無く無事に帰ることができた。 それから、私は奥堂くんに猛アプローチをかけ続け、時が過ぎ、三年が経った。 「海くん、一緒に帰ろっ!」 「ん、いいよ。」 私たちは同じ大学に通っている。 「〜〜♪…ひゃうっ!?」 「手繋ぐの嫌だったか?」 「い、いや別にいいよ…。むしろ嬉しい…。」 「ふふっ、ありがと。」 海くんはニコッと微笑んだ。 「〜ッ!好きぃっ!!」 私は今日もドキドキされっぱなしだ。
羽の先三話
俺は真島響(まじまひびき)。シングル県内準優勝で、実力は県内トップクラスだと自負している。 今からやる相手は…竜胆瞬、か…。チームは強いが、本人はベスト十六くらいの実力だったな。これなら問題ない。叩き潰してやる…! 「ふぅー。」 深呼吸をして落ち着いた。相手は真島響。シングル準優勝の実力者か。 「相手にとって不足なし…!」 ピィー−。 試合開始のホイッスルが鳴った。互いに礼をしてサーブ権を決めた。サーブは俺から。 「試合開始!」 審判の声を合図に、目の前の試合に入り込む。段々と周りの音が聞こえなくなり、雑音が消えた。 (いい感じだ…。) サーブを打って試合が始まった。 キュッ、キュッ−。 靴の音が鳴る。試合は五分五分だ。瞬が前に落としても響は追いつく。逆に響がスマッシュを打っても、瞬は返す。お互いに腹の探り合いをしながら、互いのミスを待つ。すると、 「そろそろあったまったな!」 響がギアを一段階上げた。 (嘘だろっ!?) スマッシュが鋭くなり、反撃に転じることができない。 「クソッ!」 瞬は焦っていた。今までの均衡が崩れて、ズルズルと持っていかれるのではないか。そう思うと余計に集中力が削がれる。さらに周りの人の声が聞こえるようになり、体が強張る。 「どうした!動き鈍くなってんぞ!」 「うるせぇ!」 (このままじゃやられる!でも、どうしたら−。) その時、会場の雑音を切り裂いて一つの声が響いた。 「瞬!お前の実力はそんなもんかぁ!!」 それは玲司からの激励だった。 「ハハ、ハハハハハハ!」 (俺は何を悩んでたんだ。) 自らの誤ちに気づき、俺は吹っ切れた。 「どうした?」 「ふぅ。」 軽く息を吐いて目を開ける。 「ッ!」 (なんだコイツ…。急に雰囲気が変わった…!) 「まあいい。試合再開だ!」 サーブは響から。まずはラリーを続けていく。 (なんだ、なんも変わってないじゃないか。…そろそろいいか?ドロップで前に…。) 「ッ!」 響は瞬の意表を突いて、前にシャトルを落とそうとした。しかし、それよりも前に瞬は落下地点向けて移動していた。 (なぜ読まれた!?マグレか、それとも…。) 瞬はドロップをコートの後ろに返した。 「まずい!」 ギリギリ響は追いついたが、返すのが精一杯。チャンスを与えてしまった。 (どこに打つ!?) 響は一歩引いてスマッシュに備える。 (きた!) 瞬が跳び、大きく腕を振りかぶって……、前に落とした。 「なにっ!?」 ここでのドロップショット。誰も予想出来なかった。しかし流石は県準優勝、追いついてみせた。 「クソッ!」 瞬はふわりと浮いたシャトルを目一杯コートに叩き落とした。その後も瞬が連続で得点。響は完全に瞬の掌の上だった。 (どういうことだ?コイツの身体能力はよくてもベスト八くらい…。まさか!) 響は試しに少し浮かせてドロップを打った。 「やっぱり!」 (竜胆は俺のショットの前に動いている。コイツの強さは、天性の予測能力!だから全てに追いつけるのか!) 瞬は響の心の中を読んだように言った。 「俺の強さは予想能力。正解だ。でも、それが分かったところで俺は止められないぞ?」 「言っておけ。勝つのは俺だ!」 最終ラウンドが始まった。
羽の先二話
団体戦第一シングルに選ばれたその日から、俺の練習は一層ハードになった。 毎日朝起きたらランニング。約三キロ走る。その後家に帰ったら軽く筋トレをして登校。放課後は部活をして帰宅後、再び筋トレをする。正直言って結構しんどかったが、それでもできる日は毎日やった。 その甲斐あってか、自分に自信がつきあがり症が改善されてきた。 「この調子なら…!」 そんな折、練習試合が組まれた。相手は県内ベスト八の高校。実力はこっちがこっちが少し上と言ってところか。まあ勝てるだろう、そう思っていた…。 「嘘だろ…。」 結果は惨敗。一勝三敗で負けた。俺自身も負けた。戦ったのは相手のキャプテン。スコアは二十一−十一。何もできなかった。 「クソッ!」 悔しかった。負けたこともそうだが、何より自分の不甲斐なさに腹が立った。 「そう思えるならオッケーだ。次は勝とう。」 「…はい!」 負けても落ち込んでいる者はいなかった。むしろいい機会だと皆やる気に満ちていた。 「次は絶対に勝つ…!」 俺もリベンジに燃えていた。 それから約一ヵ月後、インターハイの予選が行われた。俺たちはシードで、二回戦からの出場だ。 「うっし!」 最初の試合は危なげなく勝利。全勝して、この上ない良いスタートを切れた。そのままの勢いに乗り、その後も勝利。チームはベスト八まで残った。 「遂にか…。」 準々決勝の対戦相手は、俺たちが練習試合で惨敗したあの高校だった。 「相手は俺たちよりも強かった。でも、俺たちは今日まで全力で頑張てきた。その努力は裏切らない。絶対勝つぞ!」 「「おう!!」」 キャプテンの言葉で全員気合を入れた。いよいよ試合開始! 第一ダブルス、キャプテンと副キャプテンの試合だ。二人とも部内トップの実力があり、幼馴染でもあるので息ピッタリだ。大きなミスはなく、安定した戦いをする。持ち前のスタミナを活かして、相手のミスを待つ戦い方だ。キャプテンは器用になんでもこなすタイプで、シャトルが毎回嫌な所に帰ってくる。それでチャンスが生まれたら副キャプテンの出番。ラインギリギリを狙ったスマッシュで得点をもぎ取る。スコア二十一−十六で勝った。 「よし!まずは一勝!」 キャプテンたちが勝って、勢いに乗りたかったが第二ダブルスは相手に取られた。 「すみません…。」 「大丈夫!まだ負けた訳じゃないからな!次、瞬行けるか?」 「はい!」 「よし、いい返事だ。行ってこい!」 次は第一シングル。勝利に向けて、反撃の下剋上(ジャイアントキリング)が始まる!
羽の先
「勝った、勝ちました!竜胆選手、優勝ーーっ!!」 『わぁぁぁーー!!』 会場いっぱいの拍手と歓声を受けて、俺は右手を突き上げた。世界大会優勝。俺の、いや俺たちの長年の夢が叶った瞬間だった。 これは、俺が世界最強になるまでの短くも長い青春の一ページ−。 俺は竜胆瞬(りんどうしゅん)。普通の高校に通う高校二年生で、バドミントンをしている。 「おはよっ、瞬。」 後ろから肩を組んできたのは幼馴染の玲司(れいじ)。コイツもバドをしている。 「ああ、おはよう。」 「今日もバド日和だな!」 玲司は根っからのバド馬鹿だ。基本バドのことしか考えてない。でもそんなやつだからか、高校卒業後はプロに来ないかと声がかかっている。ちなみに俺にスカウトは来てない。まあ県でベスト十六が最高だから、スカウトが来るはずもないのだ。そう思っていると、 「瞬はスカウト来たのか?」 玲司がそんなことを聞いてきた。 「来る訳ないだろ?」 俺はそう答えた。 「なんでだよー。お前、俺より強いだろ。」 そう、俺は玲司に何度も勝っている。小さい頃とかそんな話じゃなくて、つい一週間前にも勝ったのだ。 「さあな。本番だと力が発揮できないんだよ。」 「勿体無いよなー。メンタルが強ければ…。」 俺はあがり症だ。大勢の前では緊張して体が固まる。それでもなんとか克服して、ベスト十六までいった。 「ま、今度の大会で頑張れよ。俺は『三年までは大会に出ずに練習に専念しろ』って言われてるからさ。あ、もちろん応援は行くぞ!」 「ありがとう、頑張ってみるよ。」 一か月後、夏のインターハイが迫っていた。 キュッ、キュッ−。 体育館に靴の音が響く。そこではバド部が練習していた。 「はい、もう一セットー。最後まで頑張れよー。」 俺の通う高校はバドが強い。県内でも五本の指に入るほどに強く、一昨年は県一位で、全国ベスト十六までいった。代は変わっても、玲司を始めとして、県内の実力者が集まっている。そんな中で、俺は団体メンバーに選ばれた。玲司はさっき言った通り、大会には出ない。それでも玲司がいるだけで競争心が掻き立てられるので、いい刺激だ。 「瞬、ちょっといいか?」 「はい。どうしました?」 練習の合間、俺は監督に呼び止められた。 「お前の実力は本物だ。団体の第一シングルで出る気はないか?」 「第一シングルですか?」 第一シングルとは団体戦の三戦目であり、ここを取れるかが勝敗に大きく関わる。 団体戦は、第一ダブルス、第二ダブルス、第一シングル、第二シングル、第三シングルという順番で行われ、三勝先取で勝敗が決まる。つまり第一シングルは、勝っていれば勝利に大きく近づき、負けていれば絶対に勝たなくてはいけない重要な役目。なおかつ第一シングルだけは選手の重複ができず、全力で勝負しにくる。ウチのチームでは代々エースが務めるポジションだ。 「そんなところを俺に任せて良いんですか?」 恐る恐る聞いた。 「ああ、キャプテンもといエース直々の指名だ。アイツはダブルスで本領を発揮するからな。やってくれるか?」 俺の答えは決まっていた。 「もちろんです!」 この日から、俺はより一層練習に打ち込んだ。
小説グランプリ(りく)最強ヤンキー異世界転生紀2
あらすじ 最強のヤンキーと謳われていた俺(シン)は、車に轢かれて死んだ。次に目が覚めると異世界でドラゴンになってしまっていた。 「ん…。」 目が覚めた。 「よっと…うぐっ!」 まだ体がズキズキと痛む。 三日ほど前、正体不明の獅子に喧嘩を売って返り討ちにされた。見逃してくれたのか、ボロボロにはなったが命はある。右腕と肋骨が折れており、体を起こすのにも一苦労だ。 「絶対にやり返す…!このままで終わらせるかよ…!」 リベンジを誓い、修行を始めた。 まずは体を治す。しかし、完全に安静にしていると鈍ってしまうので、簡単なトレーニングは欠かさない。肉も野菜も食い、回復を早める。幸運にも薬草を手に入れたので食った。苦かった。 ドラゴンの体は回復力が高く、二週間弱で完治した。 「次は修行だ!」 毎日朝起きたら筋トレをする。どうやらこの世界では、レベルアップだけでなく普通に体を鍛えることでもステータスが上がるらしい。体を鍛え、モンスターを狩り、食事を摂って寝る。 そんな日々を一ヶ月ほど繰り返して、レベルは二十を突破した。 「このあたりで一番強い奴と言えば…。」 この世界に来てから二ヶ月弱。あの獅子に敗北してから、毎日修行を欠かさずしてきた。そのせ成果を試すべく、森の奥にある洞窟に来ていた。 「この中のモンスターは外に比べて強いんだよな。うっし、行くか!」 シンは洞窟に入った。 中はジメジメしていて暗かった。シンは【暗視】のスキルを手に入れていたのでそこまで問題はなかった。さらに【魔力感知】で魔力を読み取り、サーモグラフィーのように周りが見える。めちゃくちゃ便利だ。 洞窟に入ってから、時々モンスターに出くわすが、丁寧に倒していく。回復用の薬草は持ってはいるが数が少ないので、できる限り傷を負わないように処理する。そうしていると、奥からバタバタと音が聞こえた。 「なんだ?」 しかもこっちに来る。段々と音は大きく、キィキィという鳴き声まで聞こえてきた。そうして姿を現したのはコウモリの一軍だった。 「うおっ!やめろ、来るな!」 コウモリたちは興奮していて、俺を見つけ次第襲いかかってきた。 「うらぁ!」 コウモリを掴んで地面に叩きつける。一匹倒しても、次から次にコウモリが襲ってくる。 (このままじゃ埒が空かない。なら…!) シンは大きく息を吸い込んで、 ゴゥ! 炎を吐いた。これは今までの修行で手に入れた能力の一つだ。急な炎に、コウモリたちは避けることができず直撃した。 「まだまだぁ!」 すかさず再びコウモリを掴み、集団に投げつける。そして、怯んだ集団目掛けてもう一度炎を吐く。向かってくるコウモリは、腕や尻尾でたたき落としていく。そうして二十分ほど戦闘すると、 「もういなくなったか。」 コウモリを全滅させた。いや、正確には逃げたのもいるかも知れないが。 「ちょっと休憩。」 途中倒した蛇と薬草で昼飯を食った。 「ごちそーさん。さて、行くか。」 英気を養い、この先に待ち構える強敵目指して、再び進み始めた。