秋沼 文香

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秋沼 文香

本はミステリーものが好き よろしくお願いします。

鏡の世界

鏡を見て思う、鏡の世界はどうなっているのだろう?文字が左右逆さまになってるのかな? そんなことを考えていると身体が突然鏡の中へ吸い込まれた。 目を覚ますと私はベッドの上に居た いつもと変わったとこはない ここは私の部屋だ。鏡に吸い込まれた感じがしたけど、夢だったのだろうか? リビングに行くと誰も居らず、飼い犬のポチがスヤスヤと眠っていた 新聞も置いてないし、弁当の準備もしていない 「パパとママ寝てるのかな?」 顔を洗い、冷凍食品を温め弁当箱に詰めていく 「おはよう、花帆」 私の名前を呼んだこの女の人は誰だろう? 「どうしたの?」 「あ、いや、なんでもありません」 「何その喋り方、他人みたいじゃない」 他人みたい?つまりこの人は他人じゃない、この人は私のなんなの? 「…誰、ですか?」 「やだな、冗談はやめてよ」 「本当に誰ですか?なんで私の名前知ってるんですか?」 「本当にどうしたの?私はあなたのお姉ちゃん、小さい頃から一緒に居たじゃない」 小さい頃から… 確かに私には姉が居るけど、私の姉は重度の発達障害でまともに話したりすることが出来ない 「アルバム、見せてもらえますか?」 いいわよと言い、私の姉らしき人は二階に上がりアルバムを持ってきた。 開くと二人の少女が笑顔で写っていた 写真の隣には短い文が書かれていた。 《花菜七歳の誕生日》 《花帆小学校入学おめでとう! お姉ちゃんと一緒に登校》 《運動会のリレーで三位》 写真の少女は確かに私だ そういえばパパとママはまだ寝ているのだろうか 「花帆、そろそろ行かないと遅刻するんじゃない?」 時計を見て慌てて家を飛び出した。 焦っていて気付かなかったけど、その時に、いや、もっと前に気付いていたらと思うことになるとはこの時の私には思いもしなかっただろう 学校に着き教室に入る 「花帆ちゃんおはよう!遅刻ギリギリセーフだね」 「もしや寝坊?」 「あ、いや…お、おはよう…」 私に挨拶するなんて珍しい、それに名前だって、いつもは名字で呼ばれてるのに…お姉ちゃんのこともだけど、一体どうなっているのだろう? 「お、花帆おはよう、寝癖付いてるぞ」 隣の席の男子が揶揄うように言った いつもなら私と目が合うと舌打ちしてきたりするのに そういえば私の机キレイになってる 上靴も靴箱もキレイになってた 「あ、あのさ、なんか大掃除でもしたの?」 「してないけど、なんで?」 「わ、私の机キレイになってるから」 「元からこんなだったぞ」 元から?あの落書きは?悪口がたくさん書かれたあの落書きは? 「私の机にはキモイとか死ねとか、悪口がたくさん書かれてた」 「悪口?寝ぼけてんのか?」 頬を抓ると少し痛みを感じた。 夢じゃない、これは現実だ 奇妙な話だが私はパラレルワールドに迷い込んだらしい こっちの世界の私はいじめもなく、やさしい普通の姉が居る。このままずっとここに居たいと思った。私がずっと思っていた理想の世界 「お前ら席着け、この前の期末テスト返すぞ」 一人一人名前を呼ばれ、紙を取りに行く 私は大丈夫、だってここは理想の世界テストの点もいいはず!誇らしげな顔で紙を受け取り点数を見ると私の顔は一瞬で曇った 「数学5点、社会20点、理科35点、英語12点、国語38点、あらら相変わらずひどい点だね、特に数学」 頭の悪さは変わらないんだな…世の中甘くないってことかな 「花帆〜?大丈夫?落ち込むのも分かるけどさいつもの事じゃん、ドンマイドンマイ」 「そういう高橋さんはどうなの?」 「私?私は、じゃーん!」 机に広げられたテスト用紙の点数を見ると私よりもいい点を取っていてほぼ満点に近い点だ 「みかって遊んでるように見えて頭はいいんだよね」 「失礼な、私だってちゃんとしてるもん」 テストの点が悪くても私にはやさしいクラスメイトが居て、やさしい姉も居る。ここの世界最高! 「霜月さん少しいい?」 「はい」 放課後私は担任の先生に呼び出しされた 「あなた、こっちの人じゃないでしょ?」 「あ、えっと」 「手遅れになる前に帰った方がいい」 「帰る?…先生どうしたんですか?」 「鏡の前に立って、元の世界に帰りたいと強く念じれば帰れるから、あなたはここに居るべきじゃない、早く帰りなさい」 返事だけをして教室を出ていた。 帰る、元の世界に、絶対に嫌だ あんなとこ絶対に帰りたくない だけど、この時先生の言うことを聞いておけば良かったと後悔することになるとは…… 「ただいま!」 と言ったと同時に何かが割れる音がした 次に飼い犬が吠える声と怒鳴り声がした、男の人の声だ 音がした方に行くとお姉ちゃんが大柄の男の人に殴られていた。姉の頬は腫れおでこから血が流れていた。 「花帆…」 男が私を見る 怖い…逃げたい、動けない、声が出ない 「花帆…おかえり」 大きな手が私の頬に触れる。男の手を振り払うと 男は私の頬を殴った どうなってるの、ここは私がずっと思っていた理想の世界じゃないの? 男はずっと吠えている飼い犬を蹴り飛ばし、犬は痛そうにクーンと鳴いた 勇気を振り絞って声を出した 「これ以上やるなら、警察呼びます」 声が震えていた、目にも涙が浮かんでいる 鍵が開く音がし、中に女の人が入ってきた だらしない格好だ、手にはコンビニの袋がぶら下げられている。 「お酒切らしたの?ほら一本買ってきたよ」 男は女から缶ビールを奪い取り早速飲み始めた 女は空になったお酒の瓶や缶を見て何杯飲むんだよと文句を言うとお前だって外で飲んでるだろと男が言い返した 「花帆、上行こう、ポチおいで」 リビングから二人の言い争う声と物が壊れる音が響いた。 なんなの、どうなってるの? 「花帆、大丈夫だからね、殴られたとこ痛くない?」 私は頷く事しか出来なかった。 震える身体をお姉ちゃんがやさしく抱きしめてくれている。ポチも隅の方で丸くなっている 「お姉ちゃん、パパとママいつもあんなだった?」 「そうだよ、花帆が五歳の頃からあんなだったよ、お父さんは酒癖悪くて暴力を振るうし、お母さんは家の事何もしないで遊んでばっかり…」 私は先生が言ってたことを思い出した 「手遅れになる前に帰った方がいい」 先生が言ってたのって、もしかしてこれのこと? 元の世界に帰ったらまだいじめられる お姉ちゃんだって、、だけど、あっちの世界にはやさしいパパとママが居て、学校に行く時挨拶してくれる近所のおばさん、違うクラスのたった一人の友達が居る 今思えば悪いことだけじゃないことに気付いた 帰りたい…元の世界に帰りたい 先生が言ってた、鏡の前に立って強く念じれば帰れるって 「お姉ちゃん、私、私帰るね!」 階段を下り洗面所の鏡の前に立ち強く帰りたいと念じた (お願いします、帰らせてくださいお願いします) 「ダメだ、帰れない…」 鏡を叩き帰らせてよ!と叫び続けた 後ろからお姉ちゃんの声が聞こえてきた 「いいじゃない、ずっとここに居れば、それにもう遅いわよあなたはずっとここから出られない」 「いや、お願い!帰らせて!」 「ママ、鏡の方から声しなかった?」 「気のせいじゃない?花帆怖いこと言わないでよ」 「ごめん」 鏡の向こうの私がニヤッとした感じがしてゾッとした。 [完] 解説 最初らへんで鏡に吸い込まれた花帆は鏡の世界の花帆 ベッドで目を覚ました花帆が現実の花帆 つまり入れ替わり 理想の世界ではなく、逆の世界 人の性格や特徴が現実世界と逆になっている 元の世界に帰りなさいと言ってた先生は鏡の世界から帰れなくなり花帆が自分と同じ目にあっていることにすぐに気付き心配して帰るよう言った。 アルバムの文字が読めたのは鏡の中に閉じ込められたことに気付かれないようにするため アルバムの写真やメッセージは姉と姉の友達やおばあちゃんに協力してもらった 先生が言ってた帰る方法は都市伝説 帰る方法は不明 今ここにいるあなたは現実(ほんとう)のあなたですか?

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鏡の世界

香水

手首と首元にシュッと香水を付ける お花のいい香りがする。 誰かにやさしく包み込まれるような安心する香り この香水はお母さんから貰ったもの 空になった香水をお母さんの前に置いた そして、手を合わせて目を瞑った 「お母さん、いつも見守ってくれてありがとう、これからもよろしくね」

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香水

小さな花が一つの大きな木に集まるように咲いている。今年もこの季節がやってきた いつも通る道がこの季節はなんだか特別に感じる ヒラヒラと桜の花びらが風に乗って地面に落ちる 地面は桜の絨毯のようにたくさんの花びらが散っていた 来年も満開の桜が見れますように

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桜

お花見

花見の定番といえば桜だろ 花を見ると書いて花見、なのに花見と言ったら桜 なんでか知ってるか?それはね、一番最初に桜を見た人がいるんだけどその人は桜の名前を知らずに、桜の事を花と言ってたんだ。 満開に咲いた綺麗な桜を見せたくて家族や友人に花を見に行こうと言って桜が咲いてる所に連れて行ったんだ。家族も友人も誰一人桜の名前を知らなくて、みんな綺麗な花が咲いてると大盛り上がり、そこから花見と言われるようになったんだよ 私の隣を歩く甥っ子が本当なの?と聞くと さあ、どうだろうね、今考えた作り話だからね、でも、もしかしたら本当かもよと答えた

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お花見

電池

おもちゃが動かなくなったら電池を変えれば動く リモコンが付かなくなったら電池を変えれば付く だけど、人や動物、生きている物はどうだろう? 電池を入れる所なんてないから電池では元には戻らない 病気や大きい怪我をしたら手術をすれば治るかもしれない だけど、完全に壊れてしまったらもう元には戻らない 命はひとつしかないのだから

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電池

演奏隊

信号が青になったら合図 右足を出してド 左足も出してレ もう一歩右足を出してミ ドレミファソラシド 皆跳ねたりスキップしたり自由に演奏 車も演奏隊に合わせてクラックションを鳴らす ドレミ君も一緒に演奏しないかい?

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演奏隊

甘いキミに恋をする15話~駿斗side~

あいつに好きって言ってしまた、しかもあいつの唇に…変に思われてないよな 西宮さんが下から顔を覗き込みどうしたの?と聞いてくる。 「この間の返事だけどさ、ごめん、他に好きになった人がいる」 西宮さんは俺から目を逸らし自分の足元を見て そうなんだ、私振られたんだと呟いた 好きな人ってどんな人?と聞かれ俺は犬みたいなやつと答えた 俺と西宮さんは仕事に入り、仕事中は互いに黙々と手を動かした。振った相手と振られた相手という気まずい関係になってしまい西宮さんを振ったことを少し後悔する。だけど俺はあいつが好きだ だから西宮さんと気まずくなっても、ちゃんと気持ち伝えないとだよな 午後六時に仕事が終わり帰宅する途中、向こうから走ってくる人影が見えた。その人影はどんどん近付き数メートルのとこであいつだと分かった 俺の前で止まり息を整えた 「俺、ちゃんと考えたんだ。好きかどうかは分かんないけど、俺は奥島といたいと思う」 「それって、付き合ってもいいってこと?」 「ま、そうなる」 「航太、もう一回していいか?」 奥島が両手で俺の腕を掴み互いに唇を重ねた 俺と奥島は付き合うことになった 周りの反応がどうなるかは分からないけど、俺達なら乗り越えられるはずだ 〜完〜

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甘いキミに恋をする15話~駿斗side~

甘いキミに恋をする 14話~航太side~

夏休みが終わりに近付いてきた日華楓が神に拝むように勉強手伝ってとお願いしてきた 俺が早くやらないからだろと注意すると文句とかいいから早くと生意気な発言をしてきた 華楓は数学のワークを開き空欄に答えを書いていく。ほぼというか全部答え丸写しにしてるけど先生にバレるとめんどくさいらしくわざと違う答え書いたり消しゴムで消すなど小細工を仕掛けている。 いつも宿題とかギリギリになってからやるのにテストの成績はいいからなんか気に障る。 夏休みの宿題もなんとか全て終わらせた華楓は大きく伸びをし終わった!と言い早速スマホに手を伸ばした。 四日ぶりに店の手伝いをしに下に降りると奥島がケーキを見てる姿があった 「奥島!」 「あ、四日も店さぼって何してたんだよ?」 「妹の宿題見てたの、何?俺居なくて寂しかった?」 「は?なわけねーだろ」 「そこは寂しかったって言えよ可愛くねーな」 「別にいいし、そういえば今日お前だけ?」 「そう、俺だけ」 奥島が俺をお前じゃなくて「航太」と呼んだ そして少し間を置き、好きだよと言った。 この好きはどういう意味なんだろう? 「好きってどういう?」 奥島の顔が俺の方に近付いてきて俺の唇と奥島の唇が触れた ほんの一瞬の事だった 「こういう意味だよ」 返事待ってるからと言い奥島は店を出ていた 一瞬唇が触れただけなのに、感触はまだ残っている。 奥島が俺を好き、恋人として いやいや冗談だろ、男同士で恋愛とかありえない、けどあいつふざけてるようには見えなかったな なんかモヤモヤしてきた。 スマホを耳に当て東京に戻った姉ちゃんと通話する。 「俺さ告白された」 「誰に?」 「えっと、奥島、男に、告られた、そのどうしたらいいと思う?」 「航太の事でしょ?航太が決めなよ」 「男同士で恋愛とか変だよね?」 「航太の正直な気持ちを言えばいいと思うよ、それに同性恋愛は普通だと思うよ。そろそろ休憩終わるから切るね」 今日はお客さんが少なく暇だから奥島の事を考えてしまう 母さんと父さんが買い物から帰ってきた 母さんに店大丈夫だった?と言われ”うん”と答えるとこれ冷蔵庫にしまってとスーパーの袋を指さした。袋の物を冷蔵庫にしまっていく 「航太お菓子は冷蔵庫じゃないでしょ」 「あ、そうだった」 「どうしたの?」 奥島の事は言い辛かったので少し疲れてるだけと嘘を付いた。 次の日も次の日も俺は店の手伝いや家の事でミスをするようになった 砂糖と塩を間違えたり食パンを焦がしたりした 恋してるねと母さんに言われドキッとする 「な、なんでそう思うの?」 「女の勘よ」 「…恋なんかしてないよ」 俺が奥島の事を考えてるのはあいつが好きとか言うからだ。 ていうかいつから好きになったんだ? 俺は奥島をどう思ってんだ?

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甘いキミに恋をする 14話~航太side~

甘いキミに恋をする13話~駿斗side~

フライパンに卵を落とし蓋をする 卵が固まる間に味噌汁とご飯をよそいテーブルに持っていく。フライパンの蓋を外し火を止める。 目玉焼きをお皿に移して塩こしょうを少し振りテーブルに持っていく黄身は半熟でいい感じだ 下に降りてきた母さんに母さんの分も焼いといたよと伝えると料理も作れるようになったのねと言われ目玉焼きぐらい簡単だよと少し照れくさそうに答えた。 朝ごはんを食べ終え皿をシンクに置き、洗面所で歯を磨き仕事へ向かう 先に店に居た西宮さんにおはようと挨拶をし店の制服に着替えた。 「母さんと一緒に暮らす事になったから」 「そう、あのお節介くんのおかげだね」 「そうかもな」 あいつのおかげで俺は、母さんと一緒に暮らす事が出来た今度なんかお礼しないとな 「あのさ駿斗、私さ、駿斗の事好きなんだよね」 急な告白に戸惑いなんて言えばいいか分からず 後で考えとくと伝えた 気を紛らわせるように店の床を掃除した。 西宮さんが俺を好き…俺のとこを好きになったんだろ?幼なじみで小さい頃から一緒に居たけど 全然気付かなかった。 仕事が終わり帰ろうとすると西宮さんに呼び止められた 「返事、いつでも待ってるから」 俺は頷き帰宅した 「母さん、一緒に行きたいとこあるんだけど」 「いいけど、どこ?」 「ケーキ屋」 車の助手席に母さんを乗せあいつが居るケーキ屋に向かった。 ケーキ屋の駐車場に車を停め店の中に入る ショーケースに並べられたケーキを見て母さんはどれも美味しそうとケーキに釘付けになっていた 「いらっしゃいませ。あ、奥島くん」 声に反応した母さんの目線がケーキから店員の方へ移ると互いに軽く頭を下げた 母さんが指差しながらどれがおすすめかを聞いた 店員はどれも美味しいですよと笑顔で言い母さんはショートケーキを四つ頼んだ 会計を済ませてる間に店内を見回したがあいつの姿は見当たらなかった ショートケーキが入った箱を受け取り店を出て車に乗る。 箱の中からほんのり甘い香りが車内を包む あいつの店から俺の家まで車で約十分 その間俺はあいつの事を考えていた。 帰宅し家に入ると母さんが手に持ってるケーキの箱を見た空斗がケーキ買ってきたの?とキラキラした目で聞いてきた 箱を開け中を覗くとショートケーキが四つ並べられていた空斗はショートケーキを一個取り手掴みで食べた。品のない食べ方だ 俺と海斗と母さんはケーキを皿に移しフォークで食べた 「あのさ、お母さん」 「何?海斗」 「…もう、居なくならないでね」 海斗は父さんの不倫相手である実の母親と俺達の母さんから二度捨てられているのだから不安にもなるだろう 「居なくならないよ、絶対」 母さんの目に嘘は無かった。海斗はその言葉に安堵しケーキを食べた 俺もケーキを食べながらあいつの事を考えていた あとがき やっと、恋愛話になってきましたね

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甘いキミに恋をする13話~駿斗side~

甘いキミに恋をする12話 ~真由美の過去~

ある日夫は小さい男の子を家に連れてきた 男の子はモジモジしながら「海斗です」と言った 誰の子なのと聞くのが怖かった。聞いたら疑いが現実になりそうだったからだけど聞かずにはいられなかった。 私の予想は当たった 夫はあっさり不倫を認めた。 この子を私のとこに連れてきたのはその不倫相手が育児に疲れ夫と二人だけで居たいという、なんとも身勝手な理由で私のとこに連れてきたという事だ。それに賛成する夫も不倫相手と同レベルだ 「分かった。この子は、私がちゃんと育てるから」 夫は玄関のドアを開け出ていた。 私は海斗くんに歳を聞くと指で二歳と教えてくれた。駿斗と空斗の弟になるということだ。 二人は突然来た見ず知らずの子と仲良く出来るだろうか、そんな私の不安は一瞬で消えた二人は人見知りせず、すぐに海斗と仲良くしてくれた。 でも、私には中々懐いてくれなかった おもちゃを与えても、ベビー食を作っても心を開いてくれる様子がない この子のお母さんは何を食べさせてたんだろうか 何して遊んであげてたんだろうか 私は元夫に電話をし海斗の事を聞いた。 きっとなにか教えてくれるだろうと期待していたが、それはすぐに無くなった 「お前母親だろ?なんで分かんないの?子供の接し方分かんないとか親失格じゃん」 それから私は少しずつ精神を病みうつ病となった 三年間治療したが、完全には治っておらず子育てにも自信を無くし私はあの子達を置いて家を出ていた。 《三人とも仲良くしてね ママより》 「どうして、戻ってきたの?」 海斗が聞いてきた。 「貼り紙を見たの、駿斗の顔写真見たら、会いたくなって、でも迷惑だと思って、嘘ついてこの家に入ったの迷惑だよね?ごめんねすぐに出てくから」 「真由美さん、お母さんは俺達の家族でしょ」 「そうだよ、母さん」 駿斗と空斗とは別に海斗だけは笑顔を向けてくれなかった。 まだ捨てられるんじゃないかという不安な目で私を見ていた。

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甘いキミに恋をする12話 ~真由美の過去~