秋沼 文香
30 件の小説4話
「すみれ、今日はなんのお歌弾いたの?」 「チューリップ!」 すみれはチューリップの歌を母親と歌いながら腕を振って歩いていると警察を名乗る女性に声をかけられた。その隣にメモ帳とペンを持った男性刑事が話を聞きながらメモ帳の上にペンを滑らせていく 「山本椿姫さんが亡くなる前あなたは何をしてましたか?」 「えっと…家に居ました」 「何をしてたんですか?」 「夕飯の支度したり、洗濯物を畳んだりしてました」 「そうですか、では何か心当たりはありますか?」 「いえ、ありません」 すみれが母親の腕をぐいぐい引っ張り早く帰りたそうにしたので警察の人が一言謝り去って行った 結璃が家を出るとお隣さんに声をかけられた 「大丈夫だった?昨日の夕方頃すごい大きな音聞こえたけど、ドンドンっていう」 「あー…すいませんうるさくて、きゅうりのたたき作ってたんです。本当すいません」 「あらそうなの、なんだ良かった、おばちゃんびっくりしちゃったから、それじゃまたね」 結璃は軽く頭を下げた。 真璃子は椿姫が亡くなった時のことを旦那に話した 「椿姫殺した犯人さ、結璃だと思うんだよね」 「どうして?」 「私本人には言ってないけど、見ちゃったんだよね結璃が望音の娘さんにクッキー渡してるとこ」 「天音(あまね)さんの娘さん、小麦アレルギーだよね?どうしてクッキーなんか」 「決まってるじゃない!殺意があったからだよ、子どもを殺そうとする人だよ、絶対結璃だよ椿姫殺したの」 「…まあ、真璃子の友達のことはよく分からないけど、あまりそういうこと言わない方がいいんじゃないか?クッキーだって、米粉を使ったものかもしれないし、見たまんま決めつけるのは良くないと思うぞ」 「そう、だよね…」 「腕の方大丈夫?」 真璃子はうんと頷くと旦那から真璃子はよく怪我するよなと言われ気をつけないとねと返した 真璃子は注意力が足りないのかよく転んだりしている。 テーブルの上にうさぎのぬいぐるみが置いてある 心臓に包丁が刺さっていてお腹の上に小さい紙が置いてあり”お前だ”と書かれていて、人の血で書いたかのようで気味が悪かった 次の日の学校帰り大地が母親の友人に声をかけ犯人を見たと伝えた 「本当なの?」 「はい、間違いありません」 「警察には言ったの?」 「いえ、僕実は、犯人に口止めされてて、そのなんとか自白させるよう仕向けてくれませんか?」 「…うん、分かった」 「あと、警察には絶対言わないでください、お願いします!」 「分かった、絶対言わないから」 「ありがとうございます」
3話
真璃子の右腕にギプスが巻かれていて望音がどうしたのと理由を聞くと階段から落ちたと答えた。 「大丈夫?」 「うん、なんとかね」 「そっか…私もこの間望音が体調崩して緊急搬送されたの、原因は小麦アレルギーによるものでね、小麦を使った食べ物は食べさせてないし、学校にも言ってあるし、皆にだって…」 「誰かのイタズラとか?でも命に関わることなんだからイタズラとかでは済まされないよね」 結璃が少し前屈みになり聞いた 「それで、すみれちゃん大丈夫なの?」 「うん、薬飲んだら良くなったから」 結璃は背もたれに背中をくっつけ安心したように良かったと呟いた。 「これさ…椿姫の呪いじゃない?」 言い出したのは真璃子だ。2人はありえないというような反応をした 「呪い?やめてよ真璃子、怖いこと言わないでよ」 「だって、椿姫が死んでからだよ、私達に不幸な事が起きたのって、私たちの中に椿姫を殺した人が居るんだよ」 「私達を恨んで呪ってるってこと?」 「結璃までやめてよ、偶然が重なっただけ、思い込みすぎだよ2人とも」 椿姫の呪いが本当だとして、どうして無関係の子どもにまで被害が及ぶのだろうか、すみれは無関係なのにどうしてすみれまで不幸な目にあったのだろう、呪いだなんていうのは2人の思い込みで本当は偶然が重なっただけではないのだろうか 「望音?どうしたボッーとして」 「あ、ううんなんでもない」 「実は昨日ね、警察が家に来たの」 望音と結璃は「警察!?」と打ち合わせでもしたかのように口を揃えた 「椿姫の死因、自殺じゃなくて他殺かもしれないって言われてね、私は何も知りませんって答えたけど、2人は何か知ってる?椿姫のこと」 「私達も知らないよ、でもどうして他殺に切り替えたの?最初は自殺って言ってたのに」 「それね、聞いてみたらさ教えてくれなかったの、捜査のなんとかって言われて」 「あー刑事ドラマとかで聞くやつ」 結璃がアイスコーヒーを啜った 「2人ともごめん、私先抜けるね今日すみれのピアノ教室の日なんだよね」 望音は席を立ち2人に手を振り店を出て行った 「私達も出ようか」 2人は店を出て、真璃子が結璃の耳元で囁いた。 「結璃だよね?」 「…何か?」 「ん?別に、またね!結璃」 「あ、うん…またね」 結璃は家に着くと透明の袋に入ってるクッキーをめん棒で砕きゴミ箱に捨てた
2話
すみれの腕に赤いぶつぶつが浮かんでいる。すみれはお腹を押さえ、顔から汗が吹き出し息も苦しそうで床には嘔吐物が散らばっている。望音はすぐに病院に連絡をしすみれは緊急搬送され、色々検査をした結果小児科の先生から小麦アレルギーだと言われた 「小麦アレルギーですか?」 「はい、すみれちゃん何か小麦を使った食べ物とか食べてませんか?」 「いえ、ありません、前にも同じようなことがあって、それからは小麦を使った料理は与えてません」 「クッキーなどを食べたとかは?市販のものは小麦を使ってるのが多いので」 「それはありません、家にクッキーは置いてません。小麦を使ったお菓子は一個も置いてません」 「そうですか…分かりました。お薬出しておきますので、また何かありましたら来てください」 「はい、ありがとうございます」 家に帰りすみれはお水と一緒に薬を胃の中に流し込んだ 「すみれ、これで少しは良くなるからね」 「ママ、明日学校行ける?」 「うーん…元気そうなら行ってもいいけど、無理しなくていいからね」 すみれは頷いた 「すみれ、何か小麦を使った食べ物とか食べたりしてない?ちゃんと、本当のこと話してくれる?」 すみれは何かを思い出すように目を泳がせた 「ママが作った物しか食べてないよ」 「すみれ、怒らないから本当のこと話して、これは命に関わることでもあるの」 「知らない、私何も知らない」 「本当に?本当にママが作った物しか食べてない?」 「うん、本当だよ」 望音は肩を落とし、食べれそうな物はあるかと聞くとすみれはお腹痛いから何も食べたくないと答えた 「お腹空いたら言ってね」 「はーい」 仕事から帰ってきた旦那にすみれのことを説明した。 「…そうか、大丈夫なのか?」 「うん、薬飲んで少し良くなったみたい」 「すみれが小麦アレルギーなの知らない人から何か貰ったとか?クッキーとか」 「それはないよ、学校にも言ってあるし、私の友達にも言ってあるんだから」 「誰かの嫌がらせ?」 「ないよ、だって命に関わることだよ、そんなことする人いるはずないよ」 「でもなんで、アレルギー反応が出たんだ?家には小麦を使ったお菓子もないし、小麦を使った料理も出してないのに」 「それが不思議なのよ」 ソファで横になっていたすみれがゆっくり起き上がりお腹空いたと言うと望音は何食べたいと聞くとなんでもいいと言われ望音は台所に向かいお粥を作った。水とご飯が入った鍋を温め、少し沸騰してきたら溶いた卵を円を描くように入れかき混ぜる。 「すみれ、熱いから気をつけて食べてね」 すみれはスプーンで少しだけお粥をすくいふーふーと冷ましながら食べた 「大丈夫?熱くない?」 すみれは頷いた 「すみれ、お粥食べ終わったら熱測ろうか」 すみれはもう一度頷いた すみれはお粥を少しだけ残したのを母親に渡し、体温計を脇に挟みじっとした。 ピピピと体温計が鳴り脇から離した。 「熱はなさそうだね、すみれ明日学校行けそう?」 すみれは少し首を傾げてから行けると思い頷いた
1話
女性が花に囲まれ眠っている。眠れる森の美女のように美しい顔のまま 大学の頃結璃(ゆり)はサークル仲間とこんな会話をしたのを今でも覚えている。 「皆さ、結婚とか考えてる?」 最初に話を始めたのは椿姫(つばき)だ 「老後とか考えるとした方がいいのかな?孤独死って嫌じゃん」 「運命の人(いいひと)がいればね…」 そして年は重ね、結璃だけを残し大学時代の友人は既婚者になり中には母親になったものもいる 「いいなー皆結婚出来て」 「そんないいものじゃないよ、子どもが出来たら子ども優先の生活になるし、お金もかかるし、自分の時間なんてほぼないよ」 「でもいいな、だって帰ったらおかえりって言ってくれる人が居るんですよ、私には居ないから」 結璃はコーヒーを一口啜った 「大地くん、今いくつだっけ?」 「今ね、中学一年生」 「え!もうそんな大きくなったの?最初会った頃確か…2、3歳ぐらいだったよね、早いなー子どもの成長は」 「あっという間だよ…結璃も早く結婚相手見つけなよ、時間は止まってくれないんだからね」 「そうだよね」 「ねえ、真璃子は子ども居ないんだよね?作ろうとか思わないの?」 「うん、私さ子ども苦手なんだよね、旦那と居るだけでも幸せだし、いいかなって」 席を立ち店を出た。 「ねえ結璃、椿姫のことどう思う?」 「どうって?」 「なんかさ、自分の価値観押し付けてるというか、そういうの感じるんだよね」 「え?そうかな…」 「そうだよ、子どもいらないって話したらありえないって顔してたじゃん」 「考えすぎじゃない?気のせいだよ」 「…そうだよね、こういう愚痴言えるの結璃ぐらいだからさじゃあ、またね」 「またね」 結璃は友人に手を振り誰も居ない家に帰り、ただいまと言って家に入る。 大学時代に撮った写真を懐かしそうに眺めた 「若いな…」 3ヶ月後 椿姫が自宅のベランダから転落し死亡した 頭から血が流れ通行人が叫び声を上げ、その声と人が落ちた音に振り向く人も居た。 椿姫は棺桶の中で花に囲まれ眠っているようだった。妻を亡くした夫は涙を堪えているのか拳をぎゅっと握っている。隣の学ランを着た男の子は無表情のままお坊さんのお経を聞いていた。 「妻が、色々お世話になりました。大学の頃からのご友人なんですよね?仲良くしてくださりありがとうございます」 「いえ、そんな」 「…妻の死因は自殺だと聞いてます。何か心当たりとかありますか?あ、旦那の僕が知ってないとダメですよね?すいません、なんか」 「そんな、大丈夫ですから」 「父さん、もう帰ろう」 「そうだな、それではまた」 結璃たちグループのリーダー格みたいな人で、何もかも完璧で素敵な旦那さんに偏差値の高い中学に通ってる優秀な息子が居るのに、どうして椿姫は自殺なんかしたのだろうか?私たちには見えない、知らない悩みでもあったのだろうか?椿姫は弱音を吐いたり弱い自分を見せるような人じゃなかった。 「椿姫にもさ、私たちの知らない悩みとかあったのかな?」 「結璃さ、椿姫の死因が自殺だと思う?私は違うと思う、だって変でしょ?あの椿姫が自殺なんて考えられないよ、誰かに突き落とされたんだよ」 「誰に?」 「決まってるじゃん!旦那か子どもにだよ」 「えーあの2人?でもありえるとしたら、息子さんの方じゃない?旦那さんは悲しそうにしてたけど、息子さんはなんか、ふつうそうだったじゃん」 「結璃、真璃子この話はやめよう…死因とか誰か犯人とかどうだっていいじゃん、真実が分かったとこで椿姫が戻ってくるわけじゃないんだし」 「うん、望音(もね)の言う通りだね、やめよう!この話は終わり!」 結璃は手をパンと叩いた
特別コーナー
キャラ紹介(chatGPTに聞いた結果 名前は自分で考えました) 白泉未希(しらいずみ みき) 2月19日生まれ 魚座 A型 INFJ 24歳 妹が1人 下川勇(しもかわゆう) 10月10日生まれ 天秤座B型 ISFJ 24歳 妹が1人 乙葉志乃(おとはしの) 9月9日生まれ 乙女座A型 INTJ 28歳 姉が1人 白泉未花(しらいずみみか) 7月3日生まれ 蟹座O型 ISFP 22歳 姉が1人 岩澄正人(いわすみまさと) 11月21日生まれ 蠍座O型 ISTP 41歳 佳川天音(よしかわあみ) 5月14日生まれ 牡牛座 AB型 ENFJ 31歳(死亡時) 弟が2人 キャラ別質問コーナー 乙葉の好きな動物は? ハリネズミ 乙葉のスマホの待ち受けは? 天音さんとのツーショット 下川の学生時代の部活は? 中学ではバレー部、高校ではバスケ部 下川の好きな動物は? 犬(サモエド飼ってます名前はコハク) 岩澄の趣味は? 洋画鑑賞 岩澄の好きな食べ物は? どら焼き 未希は下川のどこを好きになった? やさしいとこ一途なとこ 未希の学生時代の部活は? 中学ではバトミントン部高校では天文部 裏話 緑黄色社会さんのLITMUSを聴いてた時にこれ物語にしたら面白そうだな、曲が切ない感じだから切ない話にしようと書いたらこんなに重たい話になってしまいました。
おまけ2-2
高校時代 放課後体育館で勇がバスケをしている。ボールはバスケットゴールに吸い込まれるように入り、勇は部活メンバーとハイタッチした 体育館にはボールが弾く音、声援で溢れ、下川の額には汗が光っていた。 「下川くんおつかれ」 「白泉さん、ずっと待ってたの?」 「うん、下川くんと帰りたかったから」 「そう?僕、汗臭いよ?」 「いいの!」 未希は勇の腕に抱きついた 勇は少し驚いてはにかんだ 「私たち、大人になったら結婚して子どもも出来て、幸せになろうね」 「うん、子どもかわいいだろうな…」 勇がそう呟くと未希はニヤリと笑い、勇の顔を覗き込んだ 「私に似て?」 「え、えっと…それは、うん」 「えへへ下川くんに似たら、かっこいいだろうな」 「僕ってかっこいいかな?」 「かっこいいよ!下川くん、女子から人気なんだよ?」 勇は夜空を見上げぼんやりと浮かぶ月を指さした 「白泉さん、今日は月がキレイだね」 未希も空を見上げた 「あれ、朧月っていうんだよ、ぼやけてる感じが幻想的でキレイだよね…私こっちだから、またね下川くん」 「またね、白泉さん」 お互い手を振り、未希は名残惜しそうに勇の背中を見つめた 「お姉ちゃんおかえりー」 「未希、夕飯出来てるから制服着替えたら降りてきなさい」 「はーい」 夕飯はシチューとレタスのサラダ 「お姉ちゃん、将来何になりたいとかある?」 「んー…ないかな…」 「私は建築関係の仕事!自分が考えたのが、建物になって、みんなが使って、それで、そこの人たちに私が考えたんだよって言うのが夢」 未花が建築関係の仕事をしたいのは、父親の影響を受けてからだ。 「いいじゃない、未希もなんか夢持ったら?」 「いいよ別に」 「そうそう、お姉ちゃんにはイケメンな彼氏いるもんね」 「未花!」 「何?彼氏?未希彼氏いるの?どういう人?」 「同じクラスの子…下川くんっていう子」 「へー下川くん…あの、バスケ部の子でしょ?可愛らしい顔の」 「そうだよ」 「その子と付き合ってるの、いいじゃない、青春してるわね、お母さんも学生の頃に戻りたいわ」 玄関のドアが開きお父さんが帰ってきた お母さんがお父さんに未希に彼氏が出来たと言いかけた時未希が慌てて止めると、お母さんは「はいはい」と言いお父さんは首を傾げ不思議そうにした。 「お、シチューか、ラッキー!シチュー!」 「お父さんって本当シチュー好きだよね」 「当たり前だろ、お母さんのシチューは世界一なんだから」 「他のはふつうってこと?」 「いや、もちろん全部、世界一!」 食卓は家族の笑い声で溢れ寒い冬の空気も少しだけ温かくなった
おまけ2-1
乙葉は小学生の頃、刑事ドラマにハマっていてテレビの前で目を輝かせて観ていた。 「志乃、冷蔵庫にショートケーキあるわよ」 「やったー!ママ、私大きくなったらこの刑事さんみたいになる」 「今から勉強たくさんしないとね」 乙葉は頷き、ケーキを一口食べると頬に手を当て幸せそうな顔をした。 そして大人になった乙葉は子どもの頃の夢を叶え、捜査一課に配属した 乙葉が食堂で天丼を食べていると佳川が声をかけてきた 「ここいい?」 「はい、いいですよ」 「乙葉、さん?っていいかな?呼び方」 乙葉は口の中の物を飲み込んだ 「好きに呼んでください」 「じゃあ、志乃」 「え、呼び捨て?」 「いいでしょ?私の方が先輩なんだから」 「えーじゃあ、天音さん」 「何?志乃」 「天音さんってどうして刑事になったんですか?」 「刑事ドラマ観て、かっこいいなと思って」 「え、私もです。私もそれがきっかけです」 「本当?そうだ、見て私の弟」 カメラ目線でウインクをしピースサインをしてるのが陽太、その隣で恥ずかしそうにカメラから視線を外してるのが一番下の弟の清太(せいた)だ 「2人ともかっこいい、絶対モテるでしょ?恋人とかいるんですか?」 「いないよ」 「いそうなのにな、話さないだけじゃないですか?」 「いや、いない私には分かる。絶対いない」 「なんですか?その自信あはは」 「志乃って笑うとかわいいね」 乙葉は少し赤くなり、そうですか?と聞いた 「うん、志乃は兄弟いる?」 「姉がいます」 「お姉さんいるんだ、確かに志乃、末っ子って感じするもん」 乙葉は頬を膨らませた 「どこかですか?」 佳川はそんな乙葉がかわいいのが、ケラケラ笑い揶揄った。 「そういうとこ!本当志乃ってかわいい!私も妹欲しかったな、私の弟うるさいし、もう1人は話しかけただけで、話しかけないでとか言うし…志乃、私の妹になってよー」 「嫌ですよ」 「えー」 2人は笑いあった 天音さんの隣でずっと笑っていたい、そう心の中で乙葉は思った。
7話
病院のベッドの上で未花が仰向けになり、ボッーと天井を眺めている。 「未花、お見舞いに来たよ、病院のご飯美味しい?見て未花、未花の好きなプリン買ってきたから冷蔵庫に入れとくね、あとパジャマも持ってきたよ、それと退屈にならないように本も三冊買ってきたよ。未花明日も来るからね」 未花は天井を見上げたまま何も答えなかった。表情も変わらない、だけど、目を微かに動かしたり、あ…あ…と口を動かし未花なりに意思疎通をしていた。未希は未花が言いたい事は分からないけど、多分「ありがとう、お姉ちゃん」と言ったのだろうと思うようにした。 話を終え、取調室が静まり返った 今から言うことは刑事として正しいのか?乙葉は自分に自問した。 「辛かったね、ずっと苦しかったよね、あなたには今回のことで人生を無駄にしてほしくない、自分がやったことを後悔しないよう、妹さんに胸を張れるように、生きていきなさい」 未希の手が震え、足元を見つめ答えた。 「今でも、はっきり覚えてるんです。あの日の感覚…」 「大丈夫、あなたは間違ってない、妹さんのためにやったんでしょ?」 白泉の目には大粒の涙が浮かんでいた 「あなたのような刑事さんに、話を聞いてもらえて良かった。ありがとう」 「現場に鳥のストラップを置いていたのはどうして?」 「勇くんに、気付いてほしかったから」 「どうして、私に話を?」 「だって、勇くんに話したら、勇くんを傷付けると思ったから、家族が悪く言われるのは…きついですからね」 未希は乙葉から視線を外し、ガラス越しの勇を見た 「私たち、出会わなければ良かったね、ごめんね、勇くん」 未希は静かに涙を流し、涙は雨のように流れ落ち、乙葉がハンカチを差し出した。 二年後 「下川、仕事ばっかりしてないで、たまには出会いの場にも行けよ。今年で26だろ?」 「いいっすよ、そんなの」 「そうですよ岩澄さん、下川くんは一途なんだから」 あの日勇は未希と約束をした。 「未希!僕待ってるから、戻ってきたら結婚しよう」 未希は驚き、そして嬉しそうに頷いた。 遠ざかる未希の背中を勇はじっと見つめた [完]
6話
夢だった建築会社で妹が働くことになった 憧れの場所に夢と希望を抱いて、一歩前へ足を踏み入れる。 「お姉ちゃん、私の企画通ったよ!」 「本当?良かったじゃん、お祝いに未花の好きな物たくさん作ってあげるね」 「やったー!オムライスとハンバーグとショートケーキと」 「もう、欲張るね」 夕飯は未花の好きな物を作り、ケーキも用意して、盛大にお祝いした 笑い合う二人、幸せな空間が二人を包む -建築会社- 「あの、私の企画がキャンセルされたってどういうことですか?」 「は?お前みたいな新人の企画が通るわけないだろ馬鹿じゃねーの?早く仕事戻れ」 「…はい」 納得が出来なかった、悔しくて未花は唇を強く噛んだ 今に始まったことじゃない、こういう暴言は以前から続いていた。宗一は息を吐くように未花に暴言を吐いたり、理不尽なことで叱っていた 未花の心は少しずつ削られていき、やがて笑顔も少なくなり、口数も減っていた。 「未花、最近元気なさそうだけど、なんかあった?」 「…何もないよ、私寝るね」 「あ、うん…」 未花の様子が気になる未希は未花の部屋へ向かいドアを叩いた。返事がない…嫌な予感を感じ、息を飲み込んだ。ドアを開けると未花が倒れていて、周りには白い玉の薬が散らばっていて、薬の瓶が二つ置いてあった。 「未花!」 未希は病院に電話をし、未花は病院へ運ばれた 意識不明の重体で目を覚ますかは分からない状態だ。 家に戻った未希は未花の部屋の机の上に置いてあった日記を読んだ 《建築会社に就職!頑張るぞ!》 キレイな字がページを巡ることに殴り書きのように汚くなっていく 《上司から嫌なこと言われた。下川宗一っていう人お姉ちゃんの彼氏さんのお父さんだからお姉ちゃんには秘密にしないとこれ知ったらお姉ちゃん絶対彼と別れるって言いそうだからお姉ちゃんには幸せになってほしい》 《大丈夫まだ笑えてる》 《私なんでこの仕事してるんだろ?もう分からないや》 《明日が怖い辛い死にたい》 《誰かに助けてほしい消えたい楽に死ねたらな…》 未希は日記を閉じ、未花の部屋を出た。 未希は宗一の行動を観察し、事件があったあの日、未希は歩道橋で宗一と言い争っていた 「白泉未花が自殺しました。どうしてか分かりますよね?」 「は?知らないよ」 「あなたのせいですよ」 「俺?普通に教育してやっただけだぞ?最近の若いやつは…話は終わりか?」 「死ね…」 白泉の口から無意識に出た言葉 「今なんて…」 気が付いた時には、下川宗一は階段の角に頭をぶつけ、そこから血が水のように流れ出ていた。開かれた目が白泉を責めてるようで、白泉の手が震え出した 暗闇の空には朧月が妖しく浮かんでいる。 白泉は鞄から鳥のストラップを取り外そうとするが、上手く外せない、なんとか外してその場から離れた。
5話
「昔話だけど、少しだけ聞いてくれない?」 勇は乙葉の方を向いてはいと答えた 「私ね、大好きな人を亡くしてるの、その人の分までがんばるって決意してるの、だからしっかりしないといけないでしょ?」 勇は乙葉から視線を外し、前を向いて答えた 「たまには笑ってもいいと思いますよ。乙葉さんがしっかりしてることは僕たちがちゃんと分かってますから」 乙葉のハンドルを握る手に力が入り、乙葉は俯き「ありがとう」と呟いた 車を止め、中へ入る。 ソファに座っていた未希の前に勇が立ち、その隣に乙葉が立っている。 勇はほんの少しの迷いから躊躇った後、未希の腕に手錠をはめた 「署で話そう」 未希が空を見上げるとあの頃と同じ朧月が浮かんでいた -取調室- 「歩道橋の階段から被害者の下川宗一を突き飛ばした。間違いないですか?」 未希は頷いた 「どうして突き飛ばしたんですか?」 「どうして?どうしてかな?どうしてだろうね?」 「何があったのか、説明してください」 「そんなこと言われてもな…なんて言えばいいかな?」 未希は乙葉の方を向いた 「私、この人と話したい、この人になら話せるかも」 乙葉と勇が席を変わったが、未希は話そうとしなかった。未希は少し笑いながら答える。 「勇くんが居ると話しにくいよ」 勇は仕方なく取調室から出ていき、未希と乙葉の二人だけになった 「どうして、被害者を突き飛ばしたんですか?」 「…私ね、妹がいるの」 「質問に答えてください」 「答えてるよ、ちゃんと話すから…」 乙葉は腕組をし話を聞いた 「妹ね、今入院中なの…明るくていい子だった、今は話すことも動くことも出来ない。自殺したの…」 「どうして、自殺したんですか?」 白泉は天井を見上げ、ゆっくり深呼吸をしてから話を続けた。