5 件の小説
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誰にでも認めてもらえるような小説が書けるようになりたい

悪役令嬢は私。

私は醜い悪者だった。 どこに行こうと罵声を浴びせられた。 そう簡単にあなたたちをハッピーエンドにさせるものか、と 足りない頭で一生懸命試行錯誤した。 けれど、全て失敗に終わった。 悔しいけれど 私はこいつらに勝てないんだと理解した。 それでもやっぱり負けてたまるか、と 歯を食いしばって前を向いた。 けど、本当は 心の底からあなたが羨ましかった。 一度でもいいからあなたになりたかった。 いつも注目の的で好かれてて いつ、どこにいても、どんな時でも 堂々とスポットライトに照らされているようなあなた。 気持ちを素直に表現できなくて、惨めで、 誰かを不幸に導こうと試行錯誤している私。 本当に、本当に心の底から 羨ましかっただけだった。 他の、 もっと素敵な世界線は存在しなかったのだろうか。 そう思ってしまう私は、 今日もやっぱり 醜かった。

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そんなはずじゃなかったのに

いつも通りのはずだった。 私は教室の扉を開けた。 騒がしかった教室が一気に静まりかえる。 扉から鳴るガラガラという音に ふと意識が私の方に向いただけだと良かったのに。 扉を閉めて私が自分の席に着いてもみんなの視線は 私に向いている。 ここまで来ると嫌でも考えてしまうだろう。 自分は何かしてしまったのではないだろうかと。 昨日のことを思い返してはみるものの心当たりなどない。 とりあえず、席を立って親友二人のいる教室の隅に行こうとした。 「来ないで。」一人の親友、千夏(ちなつ)が低く唸った。 私は突然の変わりようにフリーズしてしまう。 千夏の胸元に顔を埋め、身を隠しているのは もう一人の親友である陽葵(ひまり)だった。 小さく肩を震わせ、か細く嗚咽する姿に察した。 あぁ、泣いているのだ、と。 もう一度親友の元に近づこうとすると千夏は言った。 「あんた、それでも私たちの親友なの?」と。 意味がわからない。 「え……なんで……」と呟いた言葉は千夏に乱雑に拾われた。 「何でじゃないでしょ!見てわからない⁉︎ 昨日陽葵のこと置いて帰ったよね⁉︎何も言わずに!」 私と一緒に帰った千夏も同罪ではないか と思ったが言わずに飲み込んだ。 今言っても場をより悪化させるだけで信じてはもらえないと、 場の雰囲気が語っていたからだ。 私を刺す視線がより一層険しくなる。 ……あぁ、『あの事』か。 クラス全員に睨まれながら 私は昨日の帰りのことを思い返していた。 昨日の夕方、教室には私、千夏、陽葵の 三人だけが残っていた。 帰る直前、陽葵は 「先行ってて、すぐ追いつくから。」と言った。 私たち二人は陽葵の言った通り、自転車を押して校門に向かった。 学校を出て信号に差し掛かったとき、私は言った。 「ねぇ、陽葵のこと待っとこうよ」と。 けれど、千夏は「いいよ、どうせすぐ追いつくでしょ。」 とだけ吐き捨てた。確かにそれもそうだろうと思ってしまった。 言われるがままについていき、 もう自宅まであと少しという距離まできたが 陽葵はまだ来なかった。 「やっぱり待っておこうよ」そう発した言葉は 「どうせ、他の友達でも見つけて一緒に帰ってるよ」 という声に掻き消されてしまった。 それで今日の有り様だ。確かに自分にも悪いところはあるが、 これはないだろう。 もしかしたら、ずっとこの二人は私を離したかったのかもしれない 親友だと思っていたのは私だけだったのかもしれない という考えが頭をよぎり視界が歪みかける。 「何か言ったらどうなの。 置き去りにした上に黙るとかありえないんだけど」 という千夏の発する棘が私を現実に引きずり戻した。 一歩後ろに後退りした。 「違う……私じゃない……」混乱して出た言葉がこれだ。 何の説得力もない。 私の周りがザワつき始めていた。 机に置いていた鞄を乱暴にとり、私は走った。 私は、私の居場所を見つけて、どこまでも走った。 目から溢れてとまらない涙を拭く余裕もなく。 ぐしゃぐしゃであろう顔も気にならない。 走った。ただただ。拳を握り締めて。 がむしゃらに走って走って、気がつくと知らない場所に 私はまた一人だった。

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君の好きな人。

「ね、ね、好きな人いる?」 何気ない会話に混じった小さな恋愛話。 「ん〜、どうでしょ?当ててみて、」 ちょっとイタズラっぽい微笑みをした君は 「好きな人、いるんでしょ?」 「あったり〜、ちなみに…」 君の声は私の耳元に。 「海星くんだよ、」 きっと君は微笑んだまま答えた。 私からは表情が見えなかったけれど。 「……そっか!いやぁ、いい人だよね!海星くん!」 上がった口角から明るい声が自然とでる。 「ちょっ!声大きいってば!」 真っ赤だね、頬も耳も …やっぱり可愛いんだよなぁ、、、。 私もそろそろ諦めなきゃ…

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君の好きな人。

第3回 N1 「飛行機と少年と。」

八十三歳を過ぎた夏頃のことだったと思う。 私は小高い丘の上でのんびりと座っていた。 ふんわり柔らかくて暖かい風が私の白い髪を浮かせる。 その日は本当によく晴れていて、心地が良かった。 綺麗な青空の下には一機の飛行機の姿があった。 私がその飛行機をぼんやりと見つめていたその時だった。 一人の幼い少年が私の前を「ぶーん!」と言いながら駆け抜けた。 そして飛行機に向かって嬉しそうに微笑んだ。 「少年よ、」 私がそういうと少年は満面の笑みのまま体ごと振り返る。 「君は飛行機が好きなのかね」 と尋ねると、少年は大きく首を横に振った。 「ううん!僕はね飛行機になりたいんだ!」 曇りなきキラキラと輝く瞳に私が映る。 「今はね、ちっちゃいけどホントはねとぉっても大きいんだ! だからね、お空を飛んだらぜぇったいに気持ちぃよね!」 少年は輝く笑顔で飛行機を指差して教えてくれた。 その姿を見て私はつられるように口角が上がる。 私は手招きをして少年を隣に座らせた。 そして私の歳を重ねた皺だらけの手で少年の頭をそっと撫でる。 「君はこの飛行機のように立派に空を飛べるようになるよ」 と言った。もう確信に近かった。 少年はしばらくぽかんとしていたが、やがて満面の笑みで「うん!」と 大きく頷いた。 私は少年と共に青空に浮かぶ飛行機を見つめた。 その翌年に 初めて会うはずだった孫は 飛行機から降りてきた。 会うのは二度目の少年だった。

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第3回 N1 「飛行機と少年と。」

泡色。

私の欠片は海に堕ちた 吸い込まれるほど綺麗な海に 水色みを帯びた透明感のある泡が 深い藍色の中で散る 私は海で満たされた 浅部の水色に 深い藍色に 私は散る ただ何も考えずに ゆらゆらと 水平線の向こう側に 吸い込まれた

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泡色。