狼ヶ森 爽籟
13 件の小説狼ヶ森 爽籟
狼ヶ森 爽籟(おいがもり そうらい)という名前で活動しています。 個人的趣味で怪談や奇妙な出来事、ときどき特撮のことなどを書いています。文章下手で、まだまだですが頑張っていきますのでよろしくお願いします!
幸福な情事①
夕焼けが校舎を茜色に染める頃、日陽人と今日子はいつも二人きりだった。全校生徒わずか十数名。分校の五年生は、彼らだけ。木造の校舎は古く、廊下を歩けば床が軋む。その音さえ、二人の間では日常のBGMだった。 「今日子、また大きくなった?」 日陽人は、そう言って後悔した。今日子の顔が、夕焼けよりも赤くなったからだ。彼女はムッとした顔で、ランドセルを抱え直す。 「もう、そういうこと言わないでよ」 日陽人は、どうして今日子が怒るのか分からなかった。ただ、最近の今日子の変化に、目が離せないのだ。特に、胸の膨らみ。体操着の上からでも分かるそれは、日陽人の目を釘付けにした。 「だって、本当に大きくなったんだもん」 「うるさい!」 今日子は早足で歩き出す。日陽人は慌てて追いかけた。 「ごめん、ごめんって」 二人は並んで歩き出した。沈黙が重い。日陽人は、自分の体の変化にも戸惑っていた。授業中、ふとした瞬間に訪れる衝動。下腹部が熱くなり、どうしようもなくなる。それは今日子を意識するようになってから、特に頻繁に起こるようになった。 「ねえ、日陽人。先生たち、最近変じゃない?」 今日子が唐突に言った。 「先生たち? 別に普通だと思うけど」 「ううん、なんか、二人でいることが多いっていうか……」 日陽人は、特に気にしたことはなかった。若い男女の先生は、仲が良いのだろうと思っていた。しかし、その日の放課後、二人は信じられない光景を目撃する。 校舎の裏、物置小屋の陰。担任の先生と、図書室のボランティアの女性が抱き合っていた。最初はじゃれ合っているだけかと思った。しかし、先生の服が脱げ、女性のスカートが捲り上げられると、二人はそれがただのじゃれ合いではないことに気づいた。 日陽人の心臓は、激しく脈打った。見たことのない光景に、目が釘付けになる。今日子も、息を呑んでいる。二人の先生は、服を脱ぎ捨て、肌を重ね合わせた。それは、日陽人が今まで見たことのない、激しい行為だった。 「……っ!」 今日子は顔を覆った。日陽人も、どうしていいか分からなかった。ただ、下腹部に熱いものが込み上げてくるのを感じた。それは、今まで感じたことのない、強烈な衝動だった。 その夜、日陽人は眠れなかった。先生たちの姿が、目に焼き付いている。今日子の膨らんだ胸と、先生たちの激しい行為。二つのイメージが、頭の中で混ざり合った。 今日子もまた、眠れずにいた。先生たちの姿が、頭から離れない。同時に、日陽人の言葉を思い出す。「大きくなった?」 自分の体の変化が、恥ずかしいような、でも、どこか誇らしいような、不思議な感情が湧き上がってきた。 二人はまだ知らない。あの日の出来事が、二人の関係を大きく変えることになることを。そして、禁断の扉を開けてしまったことを。
狼
相手を犯したいという強い“願望”・・・その思いが人を狼に変える。 ただ彼女を守りたくて ただ笑顔でいてほしいだけで... 違うだろ? 幸福でいてほしくて 違うって 違う違う 本心はそんなことすら思ってないだろ? 自分だけを見て欲しくて 自分のモノにしたくて ただ、あの女が欲しくて そうか、俺は心から“狼”だったんだ... 愛するが故に、もっとも残酷な道を辿らざる得ない者の宿命 それでも 暗い夜に悲しい泣き声が聞こえたら黙っていられない それが狼の魂なんです... 人間には聞こえない声でも、狼には聞こえるんです...
ランナー
僕はもう追いかけはしない 君の走る影のあと 人は誰も走り続ける ゴールはまだ見えない 今日の次に何がある? 明日の先に何がある? はるか彼方の光に向けて 僕は今も走り続ける
幽霊からの電話
心霊スポット巡りの好きな三田君の話。 その日も彼は、仲間と共に某心霊スポットへ行ったと言う。 そこは一家心中が起きた場所だった。父親が妻と子を包丁で滅多刺しにして、最後は自分のとどめを刺した場所だった。 三田君らは、雰囲気はあるがとりあえず何もないなと笑いながら家路へ着いた。 家に入ると三田君の携帯が鳴り、見慣れない番号からだったが出てみることにした。もしもしと言いかけた途端、相手は 「うちに土足で上がり込みやがって...お前ら顔は覚えたからな...」 ドスの効いたその声に三田君は固まってしまった。 その後、彼は仕事中の事故で両足切断。一緒に行った仲間も次々と体の一部を欠損する。 共通点として全員、ドスの効いた声の男から電話を受けていた。
死の共有
「俺だけが、みんなと死を共有していない」 そう言った男がいました。Rという男は、私の一つ上の男でオカルト好きなやつで、特に都市伝説を好んでいた。そんなRの奇妙な一面、それが他人と死を共有できていないと言うこと。 阪神大震災、東日本大震災などなど、あらゆる人の命が脅かされる災害に彼は遭遇していないのだと言う。それは特別変わったことではないと私は思う。しかし彼の中では、そうではないそうだ。人と死を共有できていない自分にどこか劣等感を感じているのだと言う。正直、何言ってんだコイツ状態だった。阪神大震災と東日本大震災の両方を経験した私から言えば何とも不謹慎なやつだなと思ったのも事実である。 何でも阪神大震災のときは別地域に住んでいた、東日本大震災のときは海外旅行中だったとのこと。彼の中ではそれが劣等感に感じているようで、しきりに「みんなと死を共有したかった...明日また災害起きないかな」が口癖だった。不謹慎を通り越してイカれてる。そうとしか思えなかったし、とうとう他の人間たちからも災害や死を軽く捉えすぎていると注意を受ける始末だった。そんなRが死んだのは今から3、4年前。 ルーレット族の真似をして愛車を走らせていたところ縁石に乗り上げて横転。死去したという。彼はとうとう死を共有というのを通り越して、死んでしまった。なんとも呆気ないな...そう思っていたときのことだった。彼の家に線香をあげに行った数名が青い顔して帰ってきた。聞くと彼の家に行った際にとんでもない物を見せられたと言う。なんでも死を共有するためのノートと言うものがあり、恐る恐るページを捲るとそこには、有りとあらゆる死に方とそれを共有する相手の名前がズラッと書かれていたという。さらにノートは日記としても機能しているようで最後のページに気になる文があった。 「やはり死を共有するのは無理だった。今になって怖い。だけど、あの人はそれを許してくれない」 Rの言うあの人とは誰なのかはいまだに分かっていない。しかし、話を聞く限り人間じゃない気がするのは私だけだろうか...?
目玉
知り合いの家の話。 とんだ事故物件を買ってしまった友人夫妻は、まさに霊現象に悩まされていた。 幽霊の徘徊 ポルターガイスト 謎の叫び声 開かなくなるトイレのドア などなど、挙げればとんでもない数の霊現象が起きていたという。おまけに一家心中まで起きた家に加えて霊道まで通っていたと言う。 それを著名な霊媒師の手で除霊してもらったと彼は言う。俺はそれに対して良かったなぁと声をかけた。 しかし 気がついていないのか? 元からいたのか、それとも祓いきれなかったのか?家の隙間と言う隙間に見開いた目玉が見えるのは俺の気のせいなのか?そう思っていた。 どうやら、それは気のせいではなく他の人間にも見えているようだ。決まって友人は我々が遊びに来ると「泊まっていけよ」と笑顔で誘ってくる。しかしそれを笑顔で「外せない用があるんだ」と言って振り切って帰る。家主の笑顔の後ろの隙間からこちらをじっと見つめる目玉があるのだ。 ちなみに友人夫妻は、6年前に一家心中している。
悪意
Nさんは、中学生時代に興味本位から出会い系サイトをはじめた。 元々、内気で地味な彼女は同級生の男子から「暗い」と卑下されることはあれど、自分を「可愛い」や「優しい」と評してもらえるのが素直に嬉しく、表面的には地味な優等生で通していた。そんな彼女に転機が訪れたのは14歳の秋口だった。三ヶ月以上、メッセージのやり取りを続けている男性Aから「会わないか?」と持ちかけられた。Nさんは、Aとは20以上も離れていることから、最初は躊躇ったものの紳士的な彼の文面から「優しい人」と決めつけてしまい、彼と会う事を承諾した。 当日、想像とは少し違ったAを目にした。待ち合わせ場所は彼女の地元から離れた駅で、Aは車で彼女を迎えに来ていた。細身の長身を想像していたがAはどちらかと言えば太った童顔の男だったそうだ。そのまま二人はドライブに至り、Nさんは人生初のデートに心を躍らせていた。そして、自然の流れで彼女はAと肉体関係を結んだ。その後、二人は半年以上に渡って関係を続けたという。 15歳のときNさんが孕っていることが分かった。慌てたNさんは、急いでAさんに連絡を取った。両親や学校、同級生に知られたくなかった彼女は焦ったがAさんには一向に連絡がつかなくなってしまったという。お腹は少しずつ大きくなり始め、とうとう両親から問いただされてしまった。 Nさんは全てを両親に告白した。出会い系アプリにハマったこと、Aという父親よりも少し歳上の男に処女を捧げた事、性知識に疎く何度も胎内に射精されていたこと。母親は泣き崩れていたが、父親はなぜか愕然とした顔でNさんを見て言った。 「本当に...Aと名乗ったのかい...?」 なぜだか父親の顔は、信じられないという感じの顔つきをしている。Nさんは涙を拭って父親にどうしたのかと訪ねた。すると父親は信じられない事を口走った。 父親には、Aと同姓同名の従兄がいたのだという。ところが従兄は若くして大病を患い、余命幾許もない状態になってしまった。元々、やっかみや僻みという屈折した性格からNさんの父親とは仲は良くなかった。それでも死に目くらいは、見送ってやりたかったという。そして従兄に断末魔が訪れ、家族や親戚に看取られながら少しずつ息を引き取ろうとしたときだった。 「◯◯!!俺は死なんぞ!!覚えておけ!?お前も引き摺り込んでやる!!お前の大事なものを全部壊してやる!!」 そう叫ぶと従兄は息を引き取ったのだと言う。 信じられない話にNさんと母親は黙り込むしかなかった。するとNさんの携帯に着信が来た。Aからであった。恐れ慄いたNさんは携帯に出れず、代わりに父親が出た。すると電話越しにAの声が聞こえて来た。 「ひひひひひひ...俺だよ。◯◯、お前の娘を奪ってやったぞ。まだこれから引き摺り込んでやる」 気味の悪い声だった。 幸いにもNさんは、中絶手術を受けることが出来た。身体やその後の子供を産むのにも支障はないという。望まぬ妊娠と得体の知れない恐怖を味わったNさんは二度とそのような目に遭いたくないと思い、出会い系アプリを使わなくなったそうだ。だが引き換えに重い心臓病を患ってしまった。 Nさんは言う。 「私がいま患ってる心臓病って父の従兄がかかった病気なんだそうです。けど現在は医学も発達したから死ぬような事はないんです。 私にはこれがAさんが残した爆弾のような気がして...いまだに恨み辛みを持っているんだと思います」
白い家②
白い家のつづきになります。 時代は、前回から10年ちょっと経ち2000年代初頭の体験談。 濱島さん(仮名)は当時、16歳になったばかり。彼女は中学時代の同級生たちと久々の再会を頼んでいたそうである。そんなとき誰が言い出したのか、本牧にある白い家の話が持ち上がったと言う。若さゆえなのか濱島さんらは、本当に幽霊が出るなら行かなきゃダメじゃん!という謎の使命感に駆られて、初めて本牧へ繰り出して来たという。 何と言うか聞いていたよりもガランとした住宅街だなーってイメージでした...と濱島さんは言う。そして先頭の人物に引っ張られるように彼女らは足を運ぶ。着いてみると何だか他にも周りに家があるのにそこだけ異様な雰囲気を纏ったような出立ちに見えたと言う。窓は閉め切られ、ドアも開けられないよう厳重にロックされていたという。先頭の人物は、さあ行こう!と乗り気だがなぜだか濱島さんらは怖気付いてしまったのだと言う。 「正直なんで来ちゃったんだろ...って感じでしたね。それで外でああだこうだって議論してたら何か変なことに気づいちゃったんですよね...」 濱島さんらは妙な事に気がついたと言う。 「人数多くない?ってなったんですよ。最初、男女合わせて6人くらいだったのに7人いたように見えて」 同じく同級生の男子がそれに気づき、妙だと言いはじめたときだった。 バキンッ! 何か固いものが地面に叩きつけられた音がした。全員が恐怖で固まってしまい、何が起きたのか地面を見張ると何か固いモノの欠片が転がっていたのだと言う。恐る恐る顔を上げるが何もない。しかし濱島さんらは気がついていた。それが白い家の二階方向から投げられた事を。その場の空気は凍りつき、泣き出す者も出始めた。踵を返して無言で立ち去ろうとしたときだった。 「なんだ...お前らまで帰るのか?」 この声に振り返ってはダメだとその場にいた全員が思い、一心不乱に走り出した。そのとき背後からドアの締まる音が聞こえたと言う。厳重にバリケードされていたにも関わらず...。 しばらく走ったあと濱島さんらは明るいコンビニの前で止まり息を整えた。すると7人いたはずなのに6人に戻っている。決して置き去りにはしていないはずだと全員の意見が合致した。そのとき濱島さんは他のメンバーに 「あの先頭にいた子...誰だっけ...?」 そう聞くと誰もその人物を知らなかった。それに白い家へ行かないかと誘って来たのも誰なのかとなった。 濱島さんらは、その夜を最後に会わなくなったという。当然、彼女が白い家へ近づくこともなかった。
墓場から来た女
前の会社での話。 私はその日、車の運転を後輩に任せていました。何の変哲もない国道246号を走っていた時でした。多摩川を抜けて、世田谷区に入ったところで後輩が大声を出しました。次の瞬間、ドカンッ!という大きな音と衝撃が走りました。後輩に何をやってるんだ!と言い救急車を呼ぶように指示して外へ出ました。相手の車に駆け寄ると直ぐに相手がドアを開けて出て来ました。白いワンピースを着た黒髪が印象的な女性でした。怪我はありませんか?そんな質問に彼女は 「ええ、もう大丈夫ですから」 そう言ってその場を立ち去ろうとするので、いま警察と救急車を読んでるからと無理矢理止めたのです。 警察が来て私と後輩が事情を聞かれました。後輩いわく女性の車が突然割り込んできたので止めようがなかったのだと言います。確かに彼女の車が無理矢理割り込んできた為に車間距離が取れなかったのは事実でした。そのあとは当事者同士で話し合いでというパターンになりました。 翌日、保険会社から連絡がありました。 「すみません...何と言うか相手さんと連絡がつかなくなってしまって...」 保険会社の人から聞かされました。さらに相手の保険会社から奇妙なことを聞かされたそうです。 「本当に◯◯様なんですか...?」 これが担当者からの第一声だったそうです。保険会社は、相手側の保険会社から既に車の持ち主は亡くなっていて、車の保険もとっくに解約されているとのことでした。また病院に確認を入れると病院側も確かに搬送されて来たはずだが、いつの間にか消えてしまっていたそうです。 こんな怪談話みたいなこと...後輩とそう呟いていました。 後日、警察の方が我々を訪ねてきました。 「確認なんですがKさん(俺)、Sさん(後輩)...本当に女性とお話されたんですよね?」 何でですか?と聞くと警察の方いわく彼女から事情を聞こうとしたところ、何でもないから解放してほしいとだけ彼女は言ったそうです。では病院で検査をしてから...そう言って病院へ搬送させると、病院から居なくなってしまったという連絡が来たんだと言います。よほど警察と関わりたくない何かがあったのかと思っていた矢先、今度は保管されていた彼女の車両が無くなったと大騒ぎになったそうです。 後にわかったことですが彼女は既に故人でした。自殺されたそうで、埼玉の某所にあるお墓に埋葬されているそうです。車も残された家族の手で既に処分されていました。全てが存在し得るわけがない...。 ちなみに彼女の車が向かった方角に生前に付き合っていた男性が住んでいるそうです。しかし、彼女の車が消えた日の朝に彼女の車と同じ車に轢き逃げに遭っていたことが発覚しました。 最後に。保険会社から聞いた話です。 親族が彼女の墓参りに行くと墓石がずれていたそうです。まるで中から開けて、閉めたように見えたと聞きました。
首のない赤い着物の...
自分の話。 はじめて幽霊を見たのは、小学校一年生の冬でした。その日は凍てつくように寒く、雪が積もり尚且つ少し吹雪いており、幼馴染のあーちゃん(仮名)と一緒に下校した日でした。 遊ぶ約束をして「また後でね」と彼女が手を振って俺が家の方へ振り返った時です。家の玄関の所に赤い服を着た人がいるのが見えました。その日は母も祖母も出かけており、父親は仕事でおらず、誰だろうと思いました。ですが直ぐに姉の友人かもしれないと思い家へ向かいました。家に着くと玄関の鍵が閉まっていたので、鍵を開けると人の気配がしません。あれ?お客さんは?などと思って何気なく、玄関から二階へ繋がる階段を見上げた時でした。誰かが階段を上がるのが見えました。玄関が薄暗かったので私が灯りをつけると、私の目に赤い着物を着て四つん這いでゆっくり動く人物が見えました。瞬間背筋が凍りつきました。赤い着物らしきものを着た人はゆっくりとこっちを振り返りました。その時点で私は腰を抜かしました。その人には首がなかったのです。よく見ると手足が異様に真っ白だったのを今でも覚えています。悲鳴をあげた私を舐め回すように見ていました。そのあと記憶が一切ありません。 気がつくと私は、あーちゃんと祖母に名前を呼ばれていました。どうも玄関で倒れており、早く帰ってきた祖母と遊びに来たあーちゃんに発見されたのです。雪が靴に付着して滑って転び、気絶したのだろうという話になりました。私は夢を見たのだろうと思っていました。しかし、その日を境に姉が反抗期になったのか家で暴れることが多くなりました。刃物沙汰になったこともありました。私は、あの首のない赤い着物の人物が原因ではないかと考えています。 後日談。 6年生の終わり、あーちゃんの妹からこんな話を聞いた。 「家で赤い着物みたいなの着た人見てから、お姉ちゃん...凄い暴れるの」 彼女の最期は、悲惨でした。