アマガミ
6 件の小説第6回N1「restart」
はい、 はい、 そうです。今日こっちに帰って来て、それでまさか最初に会ったのが先輩だったなんて。 はい、5年です。この5年間でいろんなものを見てきました。いろんな経験をして帰って来ました。今日偶然先輩に会えて、すごい懐かしいなって、いろんな記憶が蘇って来て………………………… すみません、やっぱりあの時の俺はまだ未熟者でした。ずっと応援してくれてた先輩にあんなこと言って、勝手に出て行って、音信不通になって。 ……そうですよね。ご心配をおかけして、本当何て謝ったらいいのか。 はい、反省してます。何なら出会った瞬間、殴られる覚悟しましたからね。それくらいのことをした訳ですから。 ……… えっ⁉︎………………っ…… あっ、いえ……ははっ。先輩は変わりませんね。わかりました、ここでの会計は全部俺が持ちます。けど高い肉ばっか頼まないでくださいね。 ちょっと、勘弁してくださいよ。部屋借りられなくなっちゃいますって。 あ、はい、本当はもう一年早く帰ってくるつもりだったんです。でもその時はお金がなくて、だからもう一年、いろんなところで働いて、安い部屋借りられるくらいのお金貯めてから帰って来たんです。 いえ、全然遠慮しないで食べてください。それくらいの余裕はありますよ。それにこれが先輩が俺に課した贖罪でしょう、だったらしっかり償わせてください。 じゃあ、飲みましょうか。 乾杯。 ……………… ……はい、俺が今まで何をして来たかですよね。本当は今日お会いできなくても、先輩には今までのことを謝りに行って、色々お話しするつもりでしたから。 酒のつまみになるような話かはわかりませんけど、そうですね、どこからはなしましょうか。 まあ、無難に時系列に沿っていきましょうか。 先輩、よく言ってましたよね「努力は必ず報われる、だからゆっくり焦らず努力すべき」って、俺はその言葉が嫌いでした。どれだけ努力しても報われないものはある、別の世界にいるような天才には敵わないって、大した努力もしてないのに、幼稚で屁理屈で、そのくせ自分には人より多少の才能があると思い込んで、自分は小説で生きていけるって根拠の無い自信を信じて高校卒業と同時に上京して。 結局そこでは上手くいきませんでした。自信作をどの出版社に持ち込んでも突っぱねられて自分で思ってたよりもすぐに挫折しました。何せ一年持たなかったんですから。それからはただ生きることに必死でした。ここを出る時勢いで両親にも仕送りは要らないって言っちゃいましたから。実はまだ実家に帰ってないんですよ。 はい、何を言われるか怖くて怖くて、でも明日必ず帰ります。帰って謝ります。こっちは確実にぶん殴られるでしょうね。あはは。 じゃあ、話を戻しますけど仕送りもなくて、バイト掛け持ちで何とかなってましたけど、その頃物価高やばかったじゃないですか。限界が来て家賃払えなくて、まさか自分がホームレスになるなんて思っても見ませんでした。本当に後悔しましたよ。何も考えずに勢いだけで行動したことに。けど意外と何とかなりましたね。アパート追い出されてすぐは、やばい死ぬ、なんて不安でいっぱいでしたけど、日雇いとか色々探してそれなりに必死に頑張ってたら、辛かったですけどいつの間にか不安は無くなってましたね。ちょうどその頃ですね、悩みだとか、劣等感とか、プライドとか、色々頭の中で渦巻いてた物が消えて、急に冷静になって、その時に俺の思春期は、いえ、俺の青春は終わったんだと思います。それまでずっと俺は子供だったんです。どうしようもない餓鬼でした。だからこそ今まで時間を無駄にして来たことが憎くてしょうがなくて、それからはもっと必死になりました。失った時間を取り戻したくて、死に物狂いで働いて、いつか帰ろう帰って謝ろうって、ようやくそれが叶いました。 それだけです。思えば5年間、特段記憶に残るような、これと言って人生が一変するようなことがあった訳じゃないです。むしろ、先輩の言葉がより深く胸に刻み込まれました。先輩が正しかったんです。ゆっくりでよかった。俺は急ぎすぎて目の前が見えてなかった。 先輩と最後話した時俺なんて言ったか覚えてます? 「俺は先輩みたいにならない、行き遅れるかもしれない人生なんてごめんだ」 って。 最低です。やっぱり殴ってください。 ……そうですよね。すんません、変なこと言いました。なんかもう酔ってるみたいです。 話せることは全部話しましたけど、あんまり面白い話じゃなかったですよね。あっ、そうだ一つだけ価値観が変わったというか、ちょっとだけ面白い話があるんですけど、俺、「壁」に思い入れができたんですよ。 はい、やっぱり家がないと夏はまだ何とかなりますけど、冬は何とかして寒さを凌がないと本当に死んじゃいますから、夜は誰も来ないような古い公園のトイレの個室に入って冷たい風を遮って寝てたんですよ。 そりゃあ汚いですよ、でも生き死にが掛かってる状況でそんなこと言ってられませんから、それでやっぱり壁って凄くて本当に寒さが和らぐんですよ。これが本当の「壁」の役割なんだって。 それでほら、「壁」って言ったら「障壁」だったり何かと「阻む物」ってイメージがありません? それとか無機質で冷たい感じがしたり、何となくマイナスなイメージがあるじゃないですか。でも、今言ったみたいに本来「壁」って言うのは、寒さを凌ぐためのもので、暖かいもののはずじゃないですか。そう思ったら、もう「壁」をただ冷たい無機物だとは思えなくて。 それとちょっとだけ話が変わるんですけど、よく「人生は長い長いマラソンだ」なんて言われるじゃないですか。けどそれも違うなって、俺人生は迷路だと思うんですよ。人生に真っ直ぐな道なんてなくて、上手く進んでいるように見えても一回も道を間違えないなんてあり得なくて、その時、迷ったとき、目の前の行き止まりを進行を妨げる「壁」だと思う。そしてどうにかして乗り越えなきゃ、と思う。けど違うじゃないですか、迷路で迷ったら、まず乗り越えよう、じゃなくて違う道を探そうとしますよね。それでよかったんですよ。人は行き止まりを越えなきゃいけない「壁」だと思い込む。そうして越えられなくて挫折する。当たり前じゃないですか、だって正攻法じゃないんだから。まあ、「壁」を越えられる人も中にはいると思いますけどね。そういう人のことを天才って言うんでしょうね。 けどその才能でできるのはあくまで近道なんです。だから、焦らずゆっくりでよかった。「壁」に突き当たっても他の道を探せばいい、「壁」があるってことは当たり前ですけどそこには道はないんです。そう教えてくれてる。逆に「壁」に沿っていけばいつかは目的の場所に連れて行ってくれる。迷路は別に競争ではないじゃないですか。だから近道をする必要はない。天才とそうでない人で別の世界に住んでるなんてあり得ない。今は遠い存在でも進み続けたら同じ道を通る。 「下を向くな、前を向け」って、そんな励まし文句あるじゃないですか。けどそれって大事な言葉が省略されてると思うんですよね。「下を向くな、前を向け、そして周りを見渡すんだ」って前を向くだけじゃ見えてこないものがあると思うんです。だってほら目の前の行き止まりに絶望して、下を向いてたのに、もう一度前を向いても、そこにあるのは同じ行き止まりじゃないですか。目的を達成するのに道は一つじゃないって、そこは「壁」だって、目的に続く道標だって、違う見方を教えてあげられることが大切なんじゃないかなって思います。 ははっ、何関心してるんですか先輩、この考え方の基礎は先輩ですからね。それと「壁」に思いを馳せることでできた俺の信念です。 「努力は必ず報われる、だからゆっくり焦らず努力すべき」 今はこの言葉大好きですよ。本当にその通りだなって思います。はぁ、何やってたんだろ俺は…… そうですね、この後悔は一生残ると思います。けど、取り返しがつかない訳じゃない。今俺は複雑な道に迷い込んでしまった。だから先に進むには人一倍時間がかかる。けどそれだけ、いつかは目標に近づける。それまで弛まぬ努力を続けます。 はい、俺は小説を書き続けますよ。やっぱり好きなんです。この5年間、挫折してからも一度も忘れる事ができませんでした。挑戦し続けます。それで、先輩、もし俺が本を出せたら読んでくれますか。 ははっ、よかったです。それにしても、ずっと恥ずかしい話してたなぁ、シラフなら絶対言えないや。 じゃあ、いい時間なのでそろそろ切り上げましょう。先輩本当に遠慮なく食べましたね。別にいいですけど。先出ててください、会計しておくんで。 っと、お待たせしました。そう言えば俺の話ばっかりしちゃいましたけど、先輩は今何やってるんですか。 へぇー、大学院で勉強を、しかも勉強しながら学科の教授のお手伝いで給料貰ってるんですか。 ……凄いですね、ずっと立ち止まらずに進んできたんですね。先輩は俺にとっての「壁」ですよ。 何言ってるんですか、ちゃんと褒め言葉ですよ。どこまでも俺の道を示してくれて、それでも俺はそれを無視して越えようとして、数年ぶりに会って、暖かく迎えてくれて。ずっと憧れの先輩です。 あっ、ここです。俺の住むアパートは はい、お疲れ様です。先輩も近いはずですけど気をつけて帰って下さいね。 ……先輩! ありがとうございました。今日のことも、これまでのことも。 それから、俺はまた進み始めます。もう一度、今度はゆっくり一歩ずつ。 だから見ていてくださいね。
第四話 お人好し
「はい?」 と園崎はそう聞き返した。全く予想だにしない答えだったのだろう、困惑が一周回ってか、そのままの姿勢から動かず、表情ひとつ変えず、そのまま園崎の周りの領域だけ時が止まってしまったかのように静止してしまった。一言で言えば園崎は思考停止したようだった。と言えばいいだけの話だが、そもそも、そこまでなるほど理解し難い話でも無いと思うが、 「おーい、生きてるかー?」 と、そう言いながら、園崎の顔の前で大袈裟に手を振る素振りをする。もちろん単に生存確認では無い。おちょくっている。たまには俺の方からも仕掛けさせてもらう。 「生きてますよ普通に、生きてます」 「そりゃよかった」 「もしかして、おちょくってます?」 「おお、よくおちょくってるってわかったな」 流石園崎、人を小馬鹿にすることにおいてはひとかどの見識があるようだ。 「先輩にそういうことされると何だか無性に腹が立ちますね」 「おいおい、人を煽っていいのは煽られる覚悟のあるやつだけだぞ、しかもこんな程度のことででイライラしてたら煽り合いになったら案外僕が勝っちまうんじゃねえのか」 「なるほど、そうきましたか、まあ、そういう事でしたら今の先輩の起点の聞いた返しに免じて身に余る怒りをなんとか抑えて差し上げましょう」 「そんなに怒ってたのか」 それなら本当に煽り耐性が無さすぎる、圧倒的に攻撃特化の性能をしている。いや、そんなことはどうでもいい、これは今回言い勝ったんじゃないか、今の言葉は事実上敗北宣言とも取れるだろう。 「いえ、今のは言葉の綾と言いましょうか、何とか言いましょうか、ともかく私は先輩をこれからもコケにし続けます」 「ともかく何がどうなってそうなった⁈」 話に脈絡がなさすぎる、それに園崎は最終的に俺をどうしたいんだよ。 「でも確かに私に煽られる覚悟がないことも事実です。ですから……」 「ですから……?」 「これからは先輩が煽る余裕も無いくらいに完膚なきまで煽り倒します」 「煽られる覚悟を持つ努力をしろ‼︎」 最悪だ。ならこれからはもっと面倒くさい絡まれ方をするのだろうか、勝負に勝って、戦いに負けたとはまさにこの事だろう。自分の勝利のために相手に良くない気づきを与えてしまった。 「あっはは、明日から楽しみですね」 「あ、明日からなんだ」 「はい、せめて心の準備くらいはさせてあげようと思いまして、まあ私なりの優しさです。」 僕は本当に何を言われるんだ? 人目も憚らず泣いてしまうような酷いことを言われるんだろうか。怖い、明日学校休もうかな。 「そんなことより先輩、今から読書部に行くことの詳細についてきちんと説明してください。」 「あー、そういう話だったな」 あまりに話が脱線したため、すっかり忘れていた。 「んー、じゃあまず、主目的としては読書部の部室にある 歴代の推理小説部の活動記録が記されてるファイルを取りに行く。で、何でそのファイルが読書部室にあるかと言うと、実は前は読書部の部室が僕たち推理小説部の部室だったんだ。読書部の人数が増えて元の教室に入らなくなってな、僕もちょうどその時1人だったから、この物置だった、と言うより今も絶賛物置で、ついでに推理小説部室になってるこの教室に移動になったからだな。そん時に一応物品とかは整理したんだけど、いかんせんここは雰囲気こそはそそるものはあるけど、ものを置くスペースもないからな、置いとけるものは向こうに置いとくことにしたんだ。」 「なるほど、大方把握しました。部費だけでなく部室まで、中々因縁深いんですねうちと読書部は」 「因縁って、いや、そうでもないよ、むしろ向こうは同じ本の部活ってことで勝手に仲間意識を持ってる。」 「ほう、中々図々しいですね」 「読書部アンチになっちゃったよ」 園崎には読書部の悪いところしか伝えてないからなあ、ほぼほぼ印象操作で読書部に対して悪感情を抱かせるのは良くない、ここは一つ読書部のいい面も伝えておこう。 「ああ、悪い、お前には読書部に対して悪い印象を抱くようなことしか伝えてないと思うが、別に悪い奴らじゃないんだよ、それに部費に関してはうちは使うことがまずないし、部室も譲った結果、こんなところになったのは先生の采配だ。それにあいつらはいいところもあるんだよ、例えば、」 「例えば?」 「うーん、ごめんこれと言ってないかも」 無理だった。あいつらの擁護とかマジで無理だった。何の印象操作もなく一年生の時から読書部とのそこそこの関わりを持って僕が最終的に出した結論は、あいつらは苦手ということだ。始め読書部に行くことを渋った理由も主にこれだ。絶対絡まれるし、絡まれたら非常にめんどくさい。だけど、僕はあいつらが苦手でつい愚痴をこぼして悪態をついてしまうけど、だけど 「ただ、面倒くさいけど、すごいいい奴らだよ。そう思ったら、俺にとってはお前みたいな感じだな。厄介だけど楽しい奴って言ったら。」 園崎かえで、慇懃無礼で皮肉屋で先輩を揶揄うことが生きがいなんて言ったりする、ちょっと変わった子。文字に起こすとこっちの方が酷いような気がする。それでもこいつのことは一緒にいて楽しいと思えるのはどうしてだろうか。とパッと出てきた疑問から考え事に耽てしまう前に園崎が口を開いた。 「なるほど、言いたいことは伝わりましたよ。その人たちをどう思うかは、実際に会ってみて決めようと思います。」 「ああ、そうしてくれ」 どうやらうまく伝わったみたいだ。 「それにしても、面倒で、いい人、それで私みたいですか、そう言えば前にもそんなこと言ってましたよね、聞いた覚えがあります」 そう言って園崎は何か言いたげな目で僕の方を見た。 「何だよ」 「いえ、先輩ってやっぱりお人好しですよね」 「そんなことないだろ」 「いえ、そんなことありますよ、少なくとも私にはそう見えます、あっ、一応言っておきますけど貶してますからね」 「貶してんのかよ」 「はい、騙されやすそうだなーとかそう言った感じの皮肉です」 「じゃあ、断固として否定する、僕はお人好しじゃない」 「でも、こんな失礼なこと言っても許してくれるじゃないですか」 「冗談で言ってるんだろ、ならいちいち怒ることもないだろ」 「そういうところを言ってるんですよ、全く自分で証明してどうするんですか」 「いや、でも」 「言い訳は見苦しいですよ、何と言おうと先輩はお人好しです。」 そういう訳でどうやら僕はお人好しらしいことが決定してしまった。自分のことは自分が一番わかってる。そうじゃないって声を大にして言いたいが、そう言っても園崎は聞き入れないだろう。 「では、長話で時間も押していますし、そらそろ向かいましょうか、読書部の部室に」 そう言われて時計を見る。確かに最初の話を始めてからだいぶ時間が経っていた。 「ああ、そうしようか」 そうして、僕らは長い長い会話の末、ようやく部室を出た。脱線もほどほどにしないとな、と少しだけ反省する。 「あ、そういえば」 教室を出る直前、園崎は僕の方に振り返って言った。 「さっきの、本当は褒め言葉ですよ」 それが「お人好し」のことだと気づいたのは家に帰ってからのことだった。
第三話 推理小説部の活動
「先輩、何か活動をしましょう」 ある日の放課後、部室にて、僕以外のただ1人の部員であり、後輩であるところの園崎がそんな提案を持ちかけてきた。 「活動?今してるだろ」 そう言って僕は手に持っている新作の推理小説をわざとらしく揺らした。 「いえ、そうじゃなくてですね」 僕の返答が気にいらなかったらしく、言葉遣いは丁寧なままではあるものの分かりやすく機嫌を悪くしている。どうしてそう判断したかと言うと思いっきり顔に出ているのだ。 こいつ声とかちょっとした動作からはいつも余裕がある振る舞いをしてるのに、表情だけは豊かなんだよな。 「なんですか、わたしの顔をジロジロ見て」 「いや、なに、怪訝そうな顔してるなー、と思って」 「先輩のせいですからね、全く」 「お前って表現豊かだよな」 「ん、そうなんですか、あまり自覚はありませんね」 「そうか、しかし俺なんかはいつもお前にいいように遊ばれてるからな、そういう納得いってなさそうな顔を見ると元気になる」 「変態ですね、後輩の嫌な顔を見て元気になるなんて、最低なカス野郎です」 「お前が、もっと先輩を敬っていたらこんなことにもならなかったんだけどな」 「言いがかりです、先天的なものに後天的な理由をつけないでください」 「おい、俺が生まれつき変態みたいな言い方をするな、誤解だ」 「分かりました、では生まれつきではない変態先輩」 「ごめんなさい、私が変なことを口走りました、名を改めてください、いえ元に戻してください」 「何なんですかこのやりとりは、全く、本題に戻りますよ」 「はい」 やっぱり、いい負かせられないか。いや、馬鹿みたいに全部の煽りに突っ込んでかかるのが良くないんだけど。どうやらツッコミ癖がついてしまっているようだ。まあ、思い当たる節はいくつかあるが。 「で、活動がしたいという話ですけど、」 そう前置いて園崎が話し始めたので、取り敢えずそれを聞くことにした。 「たとえば読書部と言ったら、ただ本を読むだけじゃなくて、読んだ本の感想会をしたりするじゃないですか」 「確かに」 まあうちの読書部は本読んでないけどな 「他にもリレー小説を回したり」 「あー、面白そうだよな、ああいうの」 あの読書部じゃあそんなことできないだろうな 「じゃあ、やっぱあいつら読書部じゃねえだろ」 「うわっ、急にどうしたんですか」 しまった、つい心の声が、 「あ、すまん急に発作が出てしまってな」 取り敢えず適当なことを言っておこう。 「そんな発作聞いたことないですよ」 「まあまあ、とにかく言いたいことはわかった、僕たちも推理小説部らしい固有の活動をしたいってことだな、ただ本を読むだけじゃなくて」 「そう言うことです、ほら、この物語の題名、「探偵日記」なのに今のところ謎解き要素全然ないじゃないですか、それはちょっとまずいんじゃないかなぁって思いまして」 「ん、物語?題名?何のこと?」 よくわからないけど何かとんでもなくメタいことを言っているような気がする。 「とにかくです、早急に謎解きやら、ミステリーやら、推理要素を入れないと、と言うわけで何か案を出してください」 「どう言うわけでだよ、しかも丸投げって」 「いえ、ほら、こう言うのって先輩が決めるべきでしょう、先輩は部長にも当たるわけですし、部全体を巻き込む大切なことですからね」 「部全体って、僕とお前しかいないじゃん。あーでも、来年新入生も入ってくるだろうし、何かしら勧誘になる面白い企画は考えておくべきだよな。」 「そう言うことです、さあ早く企画を、さあ早く」 「待て、急かすな」 さあ、さあ、としつこくにじり寄ってくる園崎を手で払いながら考える。何かいいアイデアはないか、うーん…………………………… 「あっ、そうだ思い出した」 「何を思い出したんですか⁉︎」 しかし思いついてすぐに気づく、せっかくの閃きだったが、閃きガチャはハズレのアンコモンだった。 「いや、これは面倒くさいから他に何か考えよう」 それが先決だ、その方が正確であり、正解である。それだけ僕が思いついたことはやりたくない 「早急にと言ったじゃないですか、もうそれでいいです、やりましょう」 「えー」 正直本当に面倒くさい。 けど、いつかはいないといけないことでもある。 はあ、それなら早めに済ましておくべきなのかもしれない。 「わかった、そのかわりちょっとお前も付き合ってくれ」 「え、わたし、準備は全部先輩に丸投げする予定だったんですけど」 「ふざけんな、言い出しっぺなんだから、お前も汗水かいてはたらけ!」 「冗談ですよ、ちゃんと働きます、何をすればいいんですか」 「ああ、それはだな」 「それは……?」 「今から読書部の部室まで行く」
第二話 デレ?
「んーーー、はぁーー」 読み始めてからどれくらい経っただろうか、2、3時間くらい経っただろう。時計を見ると針は午後5時前を指していた。窓の外を見ると辺りは完全に夕焼けの赤に染まっていた。今見るまで気づかないかったなんて、こんなに集中して本を読んだのはいつぶりだろうか、最近は園崎の戯言にツッコミを入れていたら活動が終わっていたような気がする。 「読み終わりました?」 「ああ、犯人絶対こいつだって自信あったのに、全然違った」 「あっはは、そりゃあ騙されて推理小説部に入ったような人に簡単に犯人がわかってしまったらその本の作者も浮かばれませんよ」 「くっそ、早速ネタにしやがって、それより結構本持って来てるんだな」 机の上を見ると園崎が今持っている本の他に3冊ほど本が重ねて置いてあり、やはりどれも推理小説だった。 「はい、さてと、これも終わりですね」 そう言って園崎は持っていた本を置いている本の上に重ねた。 「ん、これも?今から積んである本読むんじゃ無いのか?」 「いえ、この重ねてあるやつは全部読み終わったものですが」 「早くない⁉︎僕が1冊読んでる間に3冊も?」 天才なのは知っていたが、こういうところでも差をつけられるとは、うーん、僕も読書歴は長いんだけどな、速読には割と自信があったんだけど。自信が悉く削がれていく。僕が園崎に揶揄われ、先輩に対するものとも思えない罵倒をするのも当たり前のことなのかもしれないとさえ思ってしまう。先輩だから後輩より優秀である必要はないが、こうも読書家として格の違いを見せつけられると先輩として立つ瀬がない。 「もう、今日からお前が先輩でいいぞ、いや、いいですよ園崎先輩」 「何でそうなるんですか、わたしが揶揄ってないところで勝手に気分を落とさないでください、ほら、元気出してください」 「何だその慰め方は」 いやよく考えたら慰めてもないな、とことん僕は園崎に都合のいいおもちゃだと思われているようだ。 「別に本を読む速さくらい個人差があるんですから、それに今日持ってきた小説は全部一度読んだことがあるものです」 「そうなのか」 「はい、わたしだって未読の本を読もうと思ったらもう少し時間がかかりますよ」 「そっか、なんか自信出てきた」 「どんだけチョロいんですか、全く先輩が先輩じゃなくなったらわたしは先輩のことを何と呼べばいいんですか」 「いや、別に「あおい」とか「日比谷」とか好きに呼べばいいだろ、」 「嫌です、わたしにとって先輩は先輩なんですから」 「何だそりゃ」 「わたしは先輩をいじることが生きがいですけど」 嫌な生きがいだ。 「それでもやはり先輩を尊敬しているところは多少なりともあると言うことです」 「はあ、じゃあそれが先輩呼びに出力されるってことか?」 「そう言うことです」 お、なぜか自信ありげにそう言う園崎、そして、それに僕は思わず笑ってしまって 「ははっ、やっぱわかんねぇわ」 けど、これはきっと僕の怠慢だろう。園崎の好意もとい敬意を正しく汲んでやれない僕が悪くて、園崎はああ言ってる通り、普段先輩を先輩とも思ってない言動をとっている分、せめて呼び方では敬意を忘れないようにしているのだろう、もちろんこれは予想だ、ここまで詳しく言ってくれたわけじゃない、けど仮にこんなことを思っていたとして、やっぱり園崎の考えることはわからない。天才の思うことなんて僕にはわからない。だけど、いつか知りたい、謎だらけの新入生のことを、どうしてこんなに無礼なのか、どうして初対面からこんなに慕ってくれているのかを。取り敢えず今日は園崎がぼのことを慕っていることと敬意も払っているとがわかったし、生意気な後輩のデレ(?)の部分が見れたことが、収獲だろう。 「よし、じゃあもういい時間だし俺は帰るぞ」 「あ、待ってください、せっかくなんでどこかで食べていきましょうよ」 「はあ?夕飯家で食べないのか」 「はい、わたし一人暮らしなので、あれ、言ってませんでしたっけ?」 「いや、初耳だが」 どうやら収獲が増えたみたいだ。そうか園崎一人暮らししてるのか、いいなぁ僕も早く親元を離れたい。 「で、行くんですか?行かないんですか?」 二択で聞きつつも目では「もちろん行くだろう」と訴えている。 「わかった、行こう」 「お、言質とりましたよ、じゃあ奢ってくださいね」 「お前最初からそれが狙いだろ、まあ、奢るけどさ」 流石に後輩でしかも一人暮らしの女子に割り勘をせびるほど僕は良識がないわけではない。 「やったー、じゃあ寿司行きましょう」 「ふざけんな」 恩を仇で返すとはまさにこのことだろう。奢ってもらえると聞いて、寿司を指名するとは。高校生の財源で2人分の寿司代を出すのは不可能だ。 結局、僕たちはファミレスで簡単に夕飯を済ましてから解散した。夕焼けは夜の深い青色とぶつかって透き通るような紫が空一面に広がっていた。疲れたけど楽しい一日だった、そう僕は今日の一日を振り返った。
第一話 奇人変人その上後輩
休日、部室でいつも通りの活動、と言うほどでも無い、ただ一人静かに本を読んでいるだけ、そんな活動に勤しんでいた。思えばそんな普段している日常の一部を部活という名目の元行うだけであまつさえ活動に「勤しんでいる」ということもできるのだから勤勉さというものは思っているよりも大したものでは無いのかもしれない。そんなふうに働いている人間全てに喧嘩を売ったところで、ついこの間この部活に入部した、新入部員であるところの一年生、園崎かえでが部室に入ってきた。扉を開け、一歩入ったところで何やら教室中を見渡している。何を考えているかはわからないが、ここは教室というには色々ごちゃごちゃとしてるからな、見慣れないのだろう。確かに僕もこの教室離れした部室には驚かされたものだ。もう慣れたが、始めは部室というより秘密基地だと思ったくらいだ。 「おはようございます」 俺と目が合うと、気持ち悪いくらいに気持ちのいい笑顔で挨拶をして向かい側の机に荷物を置いて椅子に座った。そして開幕一言、 「先輩、今日は休日ですよ、暇なんですか」 「お互い様だろ」 「いえいえ、わたしはたまの休日にお友達と遊ぶでもなく、この小汚い教室で読書に勤しんでいる先輩を嘲笑うという確固たる目的を持ってここに来ましたので、暇だなんてとんでも無い、観光に来るのと同じくらいのワクワクした気持ちでここまで馳せ参じた所存です」 「珍獣でも見に行くみたいな気持ちで馳せ参じてんじゃねえよ、見せ物じゃねえんだよ」 「おや、そうでしたか、残念。餌やりできるかな、と胸を踊らせてここまで来たのですが、」 そう言って、がっくしと肩を落とす園崎 「バカにしてるよな、なあ?」 「詰め寄らないでくださいよ、全く、冗談じゃ無いですか」 「冗談じゃ済まないですが」 「済ましてください、可愛い後輩の戯言でしょう」 「はあ、わかったわかった、じゃあ本当のとこはどうなんだ」 「先輩、曜日感覚忘れたんじゃ無いかなって心配になりまして」 「僕はどこの船乗りだ!と言うか嘘をつけ、そんな目的で来たなら今取り出した本は何なんだ、お前も部活しに来たんだろ」 「ついでですよ、それにしても船乗りとは面白い返をしますね、金曜日の夕飯はカレーだったんですか」 「船乗りは船乗りでも水兵かよ、やっとこさ陸に戻ってきて、まず行くところが学校なんて勤勉なやつだな」 「そこまで来ると病気ですね、ワーカーホリックもびっくりです」 「全くだ」 「では話を戻しますが」 「お前が逸らしたんだけどな」 「話を戻しますが、結局今日部活動ありましたっけ?」 「…いや、ないよ」 「なんでいるんですか?」 本気で困惑している様子だった。 「失礼ですが、お友達は」 「いるよ!!じゃあそっちこそ何で休日にわざわざ学校に来たんだよ?」 「さっき言ったじゃないですか」 「さっき言ったことが本当なら早急に退部しろ」 「おや、いいんですか、わたしが退部しても」 「すみません、嘘です退部しないでください」 現在の部員は僕と園崎の二名のみ、辞められると非常に困る。 「じゃあ安易に退部を促さないでください」 「ごもっともです」 「世が世ならパワハラですよ」 「世が世だから実際パワハラ発言ではあったな、すまん気をつけるよ」 「全く、気をつけろよな」 「……」 と、最近はいつもこんな感じだ。この新入部員は入部してすぐからこんなふうに馴れ馴れしく、失礼で、辛辣で、皮肉屋な、それでいて、いつも飄々としていて底が見えない、そんなちょっと変わった子だ。 しかも僕から見て園崎は物語の登場人物のようでもある。ジャンルで言えば…ミステリー系だろうか、その中でも謎を解明する主人公側の変人だタイプの天才といった感じで、実際そんな風格もある。 「まあ、何で来たかと聞かれれば、答えてあげるが世の情けやら何とやらです。」 と、園崎はどこぞのラブリーチャーミーな敵役が言いそうな常套句で話し始めた。 「単純に運動がてら学校まで来ただけですよ。家にいても本を読んでるだけなので、どうせなら運動しないと、ほらわたし健康優良児じゃないですか」 「初耳だが」 本当に初耳だ。というかやっぱりお前も暇だったんじゃねえか。 「しかしまあ、それはいい心がけなんじゃないのか。」 「はい、ですがそれに比べて先輩はいけませんね。いつもよりツッコミにキレがありません。キレのないツッコミは健康を害しますよ。」 「知らねえよ、どこ情報だよ。」 「ソースは私です。」 言い切った。堂々と言い切りやがった。 「じゃあ俺の健康を心配してくれてるのか?」 「いえ、早く死ねばいいと思ってます。」 「…………」 「冗談じゃないですか。グレーなジョークです。」 「違う、ブラックなジョークだ、しかもかなりライン越えのな。」 本当に笑って許される問題ではない。いや、まじで、 「何言ってるんですか、死んだら|灰《グレー》しか残りませんよ。」 「…………」 こっちのほうがよっぽどブラックジョークだ。 「ツッコミのキレが戻ってきましたね。あれ、怒ってます?」 「はぁ、こんなことでいちいち怒ってたら、お前に付き合いきれないよ。」 「じゃあ、付き合わなければいいじゃないですか「戯言なら何でもござれ」こと私の戯言に。」 「それをお前が言うか。というか何だよそのキャッチコピー。」 「「戯言」と「〜ざれ」こと」をかけた高度なギャグです。低能先輩には伝わりませんでしたか?」 「伝わるかっ!」 「おい、笑えよ」 「いじめの加害者が被害者に対して、保身のために笑うことを強要する風に僕にそんな低俗なギャグで笑うことを強要するな」 いじめはダメ!絶対! 「笑えばいいと思うよ」 「別にこういう時、どんな顔すればいいかわからないわけじゃあない。……はぁ、お前の言動はすっごい、うっざいけど、まあ、自惚れてなければ、慕われてるんだなと思ってるよ。悪意は感じないし、それにお前結構変わってるしな、変人のコミュニケーションに腹を立てても仕方ないだろう」 「おお、お優しいですね。さぞ人徳もあることでしょう、きっとこの先輩の所属している部活動には大勢の先輩を慕う部員がいるに違いありませんね」 部員 2年生―日比谷あおい 1年生―園崎かえで 以上 「まあ、私が先輩をお慕い申し上げているということも、変人であるということも、先輩は友達のいない惨めな方だと言うことも否定はしません」 「一つ訂正しろ。」 慕っている、と園崎の口から聞けたのは中々嬉しいが、だからと言って言っていいことと悪いことがある。 「失礼しました。そういえば先輩を慕って部に所属している大勢の部員はいませんでした。」 「そっちじゃない!」 「ところで先輩、この部活って何部でしたっけ?さっきから活動そっちのけで私が先輩を罵倒しているような、罵倒部でしたっけ?バド部でしたっけ?」 「バド部だとと思うなら外に出ていって走ってこい。」 「嫌です、私はクーラーの効いた部屋で1日中ゴロゴロしていたいです。」 健康優良児設定はどうした、と言おうとしたがやめた。もうなんか疲れた。 「はぁ、うちは推理小説部だ。」 「先輩、前々から常々思ってたんですけど、この学校には読書部がありますよね」 「あるな」 「じゃあ、何でわたし達、推理小説部だけ独立した部になってるんですか?」 「あぁ、それはな、実は推理小説部のほうがこの学校では歴史が深いんだ。学校設立当初からあるらしい。それで、この部を学校の伝統として残していきたいそうだ。」 「うーん、なんというかもっともらしく聞こえて、最もくだらない理由ですね。どうして人は伝統なんて合理性も効率性もないものを大事そうに抱えて、死守し続けようとするのでしょうか」 「結構言うな。そこまで言う必要もないと思うが、気持ちもわからんでも無い。伝統って言っても結局部員は全然いないし、うちの部はほぼほぼ空気だし、コスト削減のために部費も読書部と共有だし」 よく「過去や伝統に縛られる」なんて言葉を聞くが本当にそのとおりだと思う。そもそも順序が違うんだ。守るべきもの存続すべきものを伝統として保護しようとするならまだしも、伝統だから守るべきとか最近は過去に縛られてそのへんが逆転しているように感じる。 「そういえば、園崎はどうしてこっちの部活動に入ったんだ?」 「普通に推理小説が好きだからです。あとは、読書部は人多いじゃないですか、わちゃわちゃしてるのは好きじゃないんですよね。」 「あー、なかよし部だもんな、あそこ、合宿とか言って謎の旅行行ったりするし、部費共有だってのに」 実際部費のほとんどは読書部が使っている。 「先輩は何でこっちに入ったんですか?」 「え、ああ、言わなかったっけ、俺は騙されて入ったんだ」 「はい?」 と、園崎が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。珍しい、というか園崎のあんな顔は初めて見るような気がする。普段俺がそんな顔にさせられることはあってもさせることはなかったのでなんだか一本取った気分だ。 「僕の先輩たちがな、うちには読書部がないから本読みたいなら推理小説部に入るといいって言って、当時の僕学校から貰ったもの全部カバンに押し込んでたからなあ。部活動紹介みたいな紙もしまってみてなくてどんな部活があるとかも興味なかったし、見事に騙されたよ。」 「経緯はわかったんですけど、何でそんな誇らしげなんですか。誇れるところありませんよ。」 「まあとにかく、先輩たちも面白い人だったし、後悔は無いよ、まあ全部たちはほとんど来てなかったけど」 「幽霊部員だったんですか。」 「週1ペースだったな。だまして入部させた挙げ句ほったらかしなんて酷い話だよ全く。」 「そこはまぁ、騙されたほうが悪いと言うやつですね。」 「はは、そりゃそうだ。」 と、そこまでの会話を皮切りに、それぞれ自分の小説を読み始めた。教室にはカタカタと鳴る空調の音とページをめくる音だけが部室全体に響いていた。
主人公と部室
教室に入るといつも見ている見慣れない景色がそこにはあった。ここに来るまでに通ってきた他の教室と外装は何ら変わりないのに、ただ室内に入ると私の中の教室という概念とあまりに乖離しているためとても混乱する。教室を囲むように積み重ねられた机の山はビルの骨組みのように轟々とそびえ立ち、不動の重圧感を放っている。そしてその中心にある4つ並べられた机とその一つを占拠し、何やら難しい顔で本を読んでいる先輩。部室というよりは秘密基地と言った方が正しいだろう。ただまあワクワクはしない。当然だ、部室よりは秘密基地っぽく見えるというだけでこれが秘密基地だよ、と言われればそれはそれで顔を顰めたくなる。まさに殺風景、何にも無いが故の殺風景ではなく、文字通り景色が死んでいるから殺風景なのだ。もし今目の前に写る景色を名のある画家が1枚の油絵にしても、評論家はその絵に価値を見出すことができないだろう。0に何を掛けても0ということだ。 「……」 先輩と目があった。うーん、ちょっと喋りすぎたかなぁ。 これは先輩の、日比谷あおいの物語。あんまりでしゃばりすぎるのは良くないだろう。 「おはようございます。」 今日は先輩でどう遊ぼうか、そんなことを考えながら私はニッコリとわざとらしい笑顔で挨拶をした。