実々

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実々

はじめまして!実々(みみ)です。 ファンタジーも恋愛もどんなジャンルも大好きな中学生です。 小説書くの初心者なので暖かく見守ってください。

第9回N1 懐中時計

時が戻る懐中時計。 そんな魔法のような道具を持っていると言ったら周りは、どんな反応をするだろうか。 僕達は一度話し合ったことがある。妹であるベルと一緒に。兄である僕は、黙っておくべきだという結論を出した。 なぜなら、ただの貧乏な一家に生まれた兄妹である僕達が、時が戻る懐中時計を持っているだなんて誰も思わないからだ。 反時計回りに一回転くるりと回すと時間が少しだけ戻る。それが、僕達が持っている時計の能力だ。 けれど僕達がこの時計を使う事はほとんどなかった。得体の知れない力を使うのは不気味で怖かったし、何より僕達の家族は貧乏で、毎日大変そうに働く親を何度も見るのが辛かったからだ。 ベルも僕と同じ意見だったようで、懐中時計はいつも僕とベルのベットの下にしまいっぱなしだった。 「お兄ちゃんお腹すいた」 これはベルの口癖だった。事あるごとにお腹が空いたと言ってくるベルだったが、妹だからという理由で僕もベルを甘やかし、自分の分のパンをよく分けてあげた。 このベルの口癖を聞いた両親も、申し訳なさそうな表情をし、2人のパンをベルにあげていた。 「ベルは妹だものね。たくさん食べて大きくなろうね」 この言葉を聞いた途端僕の心はちくりと傷んだ。ベルは僕の妹だけど、妹だからという理由で、ベルだけ両親に愛されている気がして辛かったのだ。 「うん!ベルたくさん食べるよ」 笑顔でそう答えた妹にも、腹を立ててしまった。 「お父さん。ベル、新しい服が欲しいなぁ」 「お母さん。ベル人形が欲しい!」 「ねぇお兄ちゃん。ご飯ちょっと分けてよ」 しばらく経つと、妹だからと甘やかされて育ったからか、ベルが甘えてくる回数が格段に増えた。 両親は決してお金に余裕はないのに、ベルが欲しがるものを買い与えた。 僕も自分のご飯をベルに分け続けた。 そんなある日のことだった。 「ベル…なんてことしたんだ!」 ベルは近所に住む少年を包丁を突き刺して殺してしまったのだ。 ベルは不機嫌そうだった。 そして、イライラしたように話し出した。 「だってあの男の子、ベルよりお兄ちゃんなのにベルがおねだりしても何もくれなかったんだもん。ベルに何にもくれないなら別に生きてても意味ないじゃん」 僕は、そんな妹になんの言葉もかけられなかった。凍ったようなその場で両親が涙を流して座り込む姿をただただ見ていただけだった。 ベルは数日後、処刑される事になった。 両親は嘆き、ずっと涙を流していた。 「ベル、何してるんだ」 いつのまにか僕達の寝室に入っていたベルは、ベットの下を探っていた。 「あ、お兄ちゃん。このままだとベル死んじゃうから時間、戻そうと思って。いい考えでしょ」 にっこり笑うベルの手の中にはあの懐中時計があった。 僕は、考えるよりも先にベルの手から懐中時計を奪い取った。 「え?お兄ちゃん返してよ。ベルの時計…」 「ベルの…お前の時計じゃないだろ」 ベルは驚いたようだった。いつも自分の思うままに動いてくれた兄が、自分に歯向かってきたのだから。 この時計は、反時計回りに回した人物しか時間が戻った事が分からない。 「ベルは今のままじゃダメだ」 僕はそう言うと、何度も何度も時計の針を反時計回りに回した。 昔の、可愛かった妹に戻すために。 「お兄ちゃん。お腹すいた」 目の前には、時間を戻す前よりも背の小さなベルが居て、僕のパンを物欲しそうに見ている。 「ダメだよ。ベルはもうパンを食べたでしょ?」 あぁこれで良かったんだ。言葉にした瞬間、そう思えた。 ベルはにっこりと笑って 「そっか。お兄ちゃんごめんね」 と、謝ってくれた。 あの時とは似ても似つかないような笑顔で僕に笑いかけた。

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第9回N1   懐中時計

タイムカプセル 〜8年後のお話〜

前書き この作品は、一応私が昔に投稿した『タイムカプセル』の続きになっています。 読んでなくても楽しめますがぜひそちらも読んでみてください🙌 「もう、8年か」 目を閉じればまだあの時の生徒たちが俺の名前を呼んでくれている気がする。 8年後にまた会おうと解散したのも少し前の話のように思えた。 8年という時間が早く感じるほど、自分も歳をとったという事だ。 天気は晴れ。絶好の発掘日和である。 「さぁ行くか」 自分を奮い立たせるようにそう呟くと俺、古谷はスコップを片手に車へ乗り、小学校へ向かった。 転勤も重なり、自分自身もくるのが久しぶりだったあの時の小学校。 久しぶりに来た小学校は、昔の記憶のままで何故か少しほっとした。 「ここか」 周りと比べて少しでこぼこしている土を見て、自分たちが8年前埋めたタイムカプセルがこの場所に埋まっている事を確信する。 まだ、誰も学校へ来ていない。 「ちょっと待つかなぁ」 季節は3月 ちょうど咲いてきた桜の花は、強く卒業の季節だという事を示している気がした。 1時間待った 「まだ午前中だもんなぁ。みんな忙しいんだろうな」 そう、声に出してみると本当にそう思えてくるから不思議だ。 2時間待った 「あぁ12時か。みんな、何の飯食ってんだろうな」 5時間待った 6時間待った 7時間待った 「もう、夕方なのか」 あの日の約束はみんな忘れたのかも知れない。 8年という時間は、自分は一瞬に感じたけれどみんなにしたら大きな時間だったかも知れない。 少なくとも、楽しかった小学校時代を思い出に出来るほどの膨大な時間だったのだと。 「なんとなく、わかっていたのにな」 寂しさを感じつつも、大人になってもいった生徒に喜びも感じられる。 「掘るか」 ザクっザクっ 校庭に響くこの音は、8年前はもっと賑やかだったはずだった。 「ははっ」 あの時は軽々とこなしていた地面を掘る作業も今は大変に思う。 「俺も老けたな」 流石にキツくなり、休憩を入れようとした 「古谷せんせー」 「先生久しぶりー」 正直、もう来ないと思っていた。 なので、来てくれた嬉しさよりも、驚きの方が優った。 だが、 「久しぶりだな。元気にしていたか?」 大人になった生徒に会えたことが何よりも嬉しくて、幾つになっても自分のことを忘れないでくれたあのクラスが愛おしくて。 8年前のクラスの雰囲気が戻ってきた気がして。 「全然連絡つかない人もいて、集まるのに時間かかっちゃった。ごめんね先生」 「その代わり、力仕事は任せろよ!」 「腰、痛めないでくださいね」 「いつまで経っても変わらないな」 俺からしたらいつまでも子供で、明るくて、バカみたいな会話で盛り上がれるあの時の生徒だった。 生徒が揃った校庭は、8年前と変わらないくらい輝いていた。

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タイムカプセル 〜8年後のお話〜

正反対な心の内

ピアノの音が聞こえた。 聞いたことがないくらい切なくて、それでいて美しい音色だった。 そんな音色に吸い込まれるようにして、私は気づいたら音楽室の扉を開けていた。 ドアを開けた瞬間、ピアノの音はぴたりと止んだ。 「えっ?神谷じゃん」 私に気づいて気まずそうにしている少年は、私のクラスのお調子者のような立ち位置の神谷悠人だった。 「で、新井はなんで音楽室に来たんだよ。下校時間も過ぎてるのに…」 かなり不機嫌そうな声で言われて苛立ちつつも質問に答える。 「ふつーに宿題忘れたから。それにしても神谷、ピアノ弾けるんだ。意外」 「弾けたら悪いかよ」 かなりぶっきらぼうで、あまり触れてほしくない話題だと言うのは空気が読めないと日々言われている私でもよく分かった。 「でも意外とうまかったよ。私は好きだなぁ。ねぇ、もう一回弾いてよ」 「……帰る」 その日はそこで、会話が終わった。 次の日、神谷のピアノが聴きたくてもう一度音楽室へ行った。 ドアを開けたら弾くのをやめてしまう気がしたからドア越しに曲が終わるまで耳を澄ませていた。 「すっごい良かったよ!いつもの神谷じゃないみたい」 弾き終わった瞬間ドアを開け、率直に感想を伝えるとあからさまに嫌そうな表情で私を音楽室から追い出した。 それでも私はめげずに毎日音楽室に通うようになっていた。 初めは神谷も嫌そうにしていたけど、慣れたのか今はもう何も言わなくなった。 私も、感想を毎日伝えているとどの辺りが良かったのか詳しく話せるようにもなった。 神谷もだんだんいろんな曲を聴かせてくれるようになり、新しく弾いた曲には必ず感想を聞きたがった。 お互いにこの時間が心地よく感じるようになってきた気がした。 「新井は、こんな所に毎日居ていいのか?女子と放課後も遊んだ方が楽しいだろ」 神谷の方から雑談を振ってくる事に珍しさを覚えた。 だが、私がお調子者の神谷にこんな特技があった事に驚いたようにクラスの中心にいるタイプである私が毎日聴きにきている事に疑問を抱いていたのだろう。 「んー私、実はあんまり女の子好きじゃないから」 今なら誰にも話した事がない事が話せる気がした。 「めんどくさいじゃん?陰口とかさ、正直1人で居たいけど孤立するのは嫌だからねーだから別に良い。遊ばなくたって、音楽室の方が楽しいから」 「一緒だ」 「え?」 「俺も、クラスではバカやってるけどさ、正直しょーもない事で盛り上がってるのダサいと思ってるし、めんどくさい。でも1人にはなりたくない」 私だけじゃなかったんだ。 「あいつらと連むよりピアノを弾いたほうが楽しいと思うし、こうやって好きな事を素直に褒めてもらえるって気持ち良いんだな」 「っ…あはっ感謝してね!」 「ねぇ神谷、ピアノってすごいね」 「だろ」 この日初めて私は神谷について深く知れた気がした。 数日前まではクラスでバカをやっている男子という印象がここまでガラッと変わった事にも驚いたが、私の内側を初めて晒した人間が彼で良かったと心から思った。

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正反対な心の内

見えなくなったお星様

私は星が好きだった。 大好きだったお母さんがずっと見守ってくれている気がしたから。 『人は亡くなったらお星様になるんだよ』 そう話してくれたのはお母さんだったから。 その会話をした数日後、お母さんは病気で亡くなった。 小さな時はその日から毎日星を眺めていた。 悲しさと不安でいっぱいだった私の心を満足させるためであり、窓を開けてはお母さんに話しかける事が日課になっていた。 学校であったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、毎日いろんな事を話した。 星を見ているとお母さんがまだ近くにいてくれるような気がして安心した。 だけどいつからだろうか 見上げる星が霞んで見えるようになったのは 綺麗だと思えなくなったのは その年から私の視力は劇的に低下し、裸眼で小さな星は見えなくなった。 見上げてもお母さんを感じられなくなった。 そんな時だった。 小学校で家族についての作文を書く宿題が出されたのは。 最初はお父さんについて書いた。 私のために毎日働いてくれたり、遊んでくれるお父さんも大好きだったからだ。 だけど何故か納得出来なかった。 『あなたが書きたい作文はこんなのじゃないでしょ?』 誰かが語りかけているような気がした。 その日、久しぶりに星を見上げた。 「ねぇ、お母さん、聞こえる?」 私の目では、ほとんど星が見えなかった。 「聞こえてる?」 でもお母さんは聞いてくれている気がした。 「お母さんは、お星様だよね?」 『もう、大丈夫ね』 大丈夫じゃないよ 叫びたくなった。 その日私は、お母さんが亡くなった日よりも、もっと大声で取り乱して泣きじゃくった。 「 私には、お母さんが居ません。 お母さんは、お星様になったと言っていました。 昔はお星様になったお母さんとよくお話ししていました。 けれど、私は最近思います。 お母さんはお星様じゃなかったのかもしれません。 私を安心させてくれていたんだと思います。 目も悪くなってお星様はもう見えません。 でも、お星様じゃなくってもお母さんはきっと私の事を思ってくれています。 これからもずっと大好きだよお母さん。」 この作文を見せた時、お父さんは私を抱きしめてくれた。 その日の夜はお父さんと二人で星を見て、それから私の作文をお仏壇の上に乗せた。

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見えなくなったお星様

叫び

『助けて』っていつも誰かが叫んでいる声が聞こえる。 私にだけが聞こえる声。 私にしか聞こえない声。 あまりにも悲痛で聞いているだけで悲しくなるような、そんな叫び。 声の主を、助けたいとは思っている。 けれど誰なのか分からない。 知らないふり、分からないふり。 出来ないって決めつけて、毎日叫びを無視をしていた。 この声の主が誰だったのか気づいた時にはもう、私は病院の中だった。 ストレスが溜まり溜まった結果だったらしい。 ごめんねって、心の中でたくさん謝った。 無理をさせてたと、今になってようやく気づいた。 大事になる前に、誰かに心配をかけてしまう前に。 この声の子が…心の中の私が、辛くなる前に。 もっと早く助けてあげたかったな 『ごめんね』

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叫び

生きる理由

全体的に白で統一された一室。 そして、私の頭に手を置き笑顔で撫でる老人。 その光景を見た瞬間、私は夢だと瞬時に理解する。 何度も繰り返される夢 いつも夢の終わりは決まっている。 そして、 「生きていて偉いねぇ」 目の前にいる老人が私に向かって笑顔で言う。 私の夢はいつもそこで終わり 「生きていて偉いか…」 目覚めた瞬間、思わず呟いた言葉は自分でも分かるくらい不機嫌だった。 あの夢は、私の昔の記憶。 幼い私と、おじいちゃんの最後の会話だ。 生きるだけで偉いと言われるのは子供まで。 大人になってからは、結果を残さないと偉いとは言われない。 その事を実感してからは、おじいちゃんの言葉を思い出すたびにイライラしていた。 隈ができていて、不健康な目を擦りながら私はベッドから起き上がる。 着たくもないスーツを着て、乗りたくもない満員電車に乗り、楽しくもない仕事をする。 けれど、仕事をしないと生きていけない。 結果を残さないと認めてもらえない。 上司に怒られ、節約をしているから満足にご飯も食べられない。 頼れる相手だって一人もいない。 私の心も体も、もう限界だった。 死にたいとは何度も思った。 目の前で、電車が通過する。私は何も感じていなかった。 無意識のうちに足だけは前に向かっていた。 電車との距離は少しずつ近くなる。 ここから落ちたら楽になる。 そんな考えが浮かんできて私は足を進めた。 プルルルプルルルル 思わず舌打ちをしたい気持ちになった。 タイミングよく電話が来たからだ。 「もしもし…」 「あのねっお父さんが…」 いつかを思い出す白で統一された部屋。 あの人違うところは、私が大きくなったという事と、今ベッドで眠っているのはおじいちゃんではなく私のお父さんという事だ。 「お父さん、久しぶり」 私がかける声にお父さんは薄く目を開け、笑った。 「生きていてくれてありがとう」 しゃがれた声でそう言うと、すぐにまた目を閉じてしまった。 「え?」 「愛する、娘が会いにきてくれる事を信じて、待っていたんじゃよ」 目を瞑ったまま搾り出すような声でお父さんは言った。 その日、お父さんは亡くなった。 葬式で私は久しぶりに涙を流した。 親孝行も特にできなかった娘がお父さんの生きる理由になっていたなんて知らなかった。 実家から家に戻る日、お母さんに涙ながらに言われた。 「お母さんもいついなくなるか分からないけど、貴方は私達の生きる理由だから、生きていてね。生きるだけでいいから」 「また来るね」 お母さんと比べたら、そっけなくて淡白だったかもしれない。 けれど何故か、家に帰る時の私の表情は来る時よりも明るくなっていた。

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生きる理由

流れ星に願いを込めて

「また流れ星だ。今日は流星群だって、綺麗だね」 私の隣でニコニコ笑っている親友に頷きつつも、私は流れ星を必死で探す。 流れ星に3回願い事をすると願いが叶う そんな迷信に頼って夜空を見上げる私。 いつもはそんな噂は全く信じないが、どうしても叶えたい願い事がある時は噂頼りも悪くないと思う。 「明日も元気に過ごせますよーに」 隣で願い事をのんびりと口に出して願う彼女の気楽さに呆れつつ、私は彼女の為に今日は星に願い続ける事を決意する。 「私、病気なんだ」 そう、今日とさほど変わらない表情で半年前彼女は打ち明けた。 寿命ももう少なく、体を動かすことすら辛いはずなのに思い出作りにと、一緒に流れ星を見に行く提案をしたのは彼女からだった。 「やったぁ3回言えたよ。明日も元気に過ごせるね!」 そんな些細なことに喜びを感じる彼女が愛おしくて、居なくなってほしくなくて、私は必死に願う。 彼女を元気にしてください。 私に病気をうつしてください。 明日も、明後日も、1年後も、10年後も、笑って過ごさせてください。 夜空を見上げるうちに、私の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。

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流れ星に願いを込めて

当たり前

夜寝る時は毎日思う。 明日が来なければどれだけ幸せなんだろう。 朝起きる時は必ず感じる。 辛い、怖い、息苦しさ。 夜に布団に入って寝る。 朝は布団から起き上がる。 これだけの当たり前の動作なのに私には辛くて、明日にも、これからにも全く希望が持てない。 いじめられた訳でもない。 虐待を受けた訳でもない。 私は恵まれている。 なのになんで毎日がこんなに苦しいんだろう

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当たり前

生意気な子

「ねぇ、おねーさん」 「は?」 「風邪ひくよ?頭大丈夫?」 初対面で私の事を馬鹿にしてきたのは見た事のない少女だった。 雨の中傘もささずに公園のベンチに座り込む私が、少女には奇行に映ったのかもしれない。 必死で自分を納得させ、怒りを封じ込める私を他所に少女は私の横にちょこんと座り込んだ。 「おねーさん風邪ひいちゃうよ?私みたいにカッパ着ればいいのに…カッパも、もしかして傘も知らないの?」 「……」 「そっかー、じゃあ仕方ないね。私が教えてあげる。これはねーカッパ!雨を防げるの」 「………」 「傘もね、一緒だよ。でもね私はカッパの方が…」 「うるさいなぁ」 急に声を出した私にびっくりしたのか少女は、びくりと肩を振るわせる。 「あのね、お姉さん今元気ないの。分かる?あんたの話に付き合ってる暇はないの。どっか行って」 拒絶だった。 いい年した大人が小さな少女相手にここまで言うのは大人気ないと、分かっていながら止められなかった。 「…」 泣いちゃったかな? 急に黙り込んだ少女を見ると流石に言い過ぎたかと、不安になる。 「言い過ぎた…」 「んー、まぁおねーさんが元気ないのは分かってたけど子供にここまで言っちゃって、大人気ないんだぁ」 ケラケラと笑う少女に毒を抜かれた気分になる。 だけどすぐにまた馬鹿にされた事に気づき、頭に血が昇ってきた。 「あんたねぇ」 「良いよ、怒っても」 「は?」 「おねーさんずっと悲しそうだもんね。泣きそうだよ。だからね、私にぜーんぶ喋って!」 なぜだろう ずっと目の前にいたはずの少女は、私よりずっと大人に見えて、私の目には涙が溜まっていた。 勝手に口は動いていて、さっき会ったばかりだというのにこれまでの事を全て話していた。 気づいた時には雨が上がり、心が軽くなっていた。 「またねー」 雨が上がると少女は、スキップをしながら公園を出て行った。 「生意気な子…ありがとう」 小さく呟いた私の表情は、きっとキラキラ輝いていた。

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生意気な子

フィルター越しに見える世界

授業参観や発表会。 これは、フィルターを通して見た世界。 いつもはふざけてるのに特別な日だけは良い子を演じている。 親の期待を演じる日。 親がその日、見ているのはフィルターを通して見た子供。 いつもは仲がいいあの子も、いつも笑顔な友達も、本当の心は誰も知らない。 私が、自分のフィルターで見たみんなだから。 私の事も誰も分からない。 助けてって叫んでも、涙を流しても言わないと分からない。 分かってもらえない。 そんな世界は辛いけど、分からなくて良かったかも知れない。 弱い所は知らなくていい。 完璧な女の子 それが私だから。

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フィルター越しに見える世界