実々

21 件の小説
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実々

はじめまして!実々(みみ)です。 ファンタジーも恋愛もどんなジャンルも大好きな中学生です。 小説書くの初心者なので暖かく見守ってください。

不思議な友達

昨日から準備していたリュックを背負って 大好きなぬいぐるみを抱いて 玄関の鍵を開けた 昨日読んだ本に影響されて私も大冒険をしてみたいと思ったことが始まりだった。 6歳なりに頭を振り絞って計画した朱里(しゅり)の大冒険が始まる。 トントントン アスファルトでできた道をスキップをしながら通り抜ける。 昨日から念入りに計画をしてきたからどこに行くかは、もう決まっている。 お化けが出ると有名な空き家だ。 小学6年生のお姉ちゃんがお化けの噂は子供を近づけないためのウソと言っていたから平気だ。 ギィギィ 錆びているのか変な音が鳴るドアを開けたら本当にお化けが出て来そうな空間が広がっていた。 ちょっとだけビクビクしながら奥の方へ歩いていく。 ここで一晩過ごすのだ。 寝心地が良いところを探すために奥へ奥へ進んでいく。 「ねぇこんな所で何してるの?」 「!」 驚きすぎて声も出ない。 出来れば聞き間違いであってほしいと願いながら声が聞こえた後ろを振り向くと 私と同い年くらいの少年が立っていた。 「あっ叫んじゃダメだよ。大人に気づかれちゃう」 しぃと指を口に当てて注意してる。 「だぁれ?」 やっと出た言葉がこれだった。 「ボク?僕はケイだよ」 「ケイくん?」 「そうだよ。よろしくね、えっと」 「しゅりだよ」 「よろしくね、しゅりちゃん」 それが私とケイくんとの出会いだった。 「しゅりちゃんは何しに来たの?」 「しゅりはねぇ大冒険しに来たんだよ」 胸を張って答える。 「でも此処には僕しか居ないんだよ。だぁれも居ない!」 「ココはケイくんのお家?」 「そうだよ。僕とお父さんとお母さんのお家」 「へぇー」 それから朱里とケイは家の中を探検したりいつもはできない事をした。 朱里は、満足すると同時に親が恋しくなってきた。 「ケイくん。しゅり、おうちに帰るね」 「そっかぁ」 「バイバイ」 「また遊びに来てね」 「うんまた来るよ」 「朱里、こんな時間までどこに行ってたの!」 家に帰るなりお母さんに抱きつかれた。 「しゅりね!大冒険して来たの。空き家に行って来たんだぁ」 「朱里、空き家に行って来たの?」 尋ねたのはお姉ちゃんだ 「うん」 「あの空き家のお化けの噂、本当だったらしいよ。その家の子供だった男の子のお化けが住んでるんだって」 「へぇー」 「お化け、居なかったの?」 笑いながら聞いてくるお姉ちゃんに向かって 「うん!ケイくんしか居なかったよ」 そう答えた瞬間、朱里以外の家族は全員固まった

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不思議な友達

一ヶ月と1日後

サナは焦っていた。 どこを探してもフォルトが見つからないからだ。 ニーナのためだと思っても、闇雲に探し回って早3日。 大きくて綺麗な街だとはしゃいでいたのも最初の1日だけである。 今となってはこの大きさが恨めしい。 「はぁ…」 思わずため息を吐いた時 「おねーちゃんどーしたの?」 まだ幼い声が聞こえて前を向くと、いつだったかオークに教われているところを助けた家族の子供である少女が、サナの顔を覗き込んできた。 ニーナの治癒が良いからか血だらけだった時とは程遠く、元気な姿を見てサナは胸を撫で下ろした。 「どっかいたいの?だいじょうぶ?」 こっちを心配してくれる少女の顔は愛らしい。 「大丈夫だよ。人を探してるのに見つからないから困ってたの」 「ふーん」 「えっと…一人?パパとママは?」 今更ながら名前を聞いていなかった事に気づく 「メイザ、パパもママもおかいもの行ってるからまってるの!えらいでしょ」 名前はメイザらしい。 こんなに小さな子供を待たせるのもどうかと思ったが、今だけはサナに元気をくれた出会いに感謝だ。 「あっパパ、ママ!」 メイザが手を振る先にはあの時の夫婦が居る。 「こんにちは、久しぶりですね」 「えっサナさん?あの時は本当にありがとうございます」 「ご無沙汰しています。メイザもこんなに元気になって…本当に感謝しかないです!」 感謝されて居心地が悪い 「あれ?そーいえばもう一人のおねーちゃんはいないの?」 「もう一人のお姉ちゃんは、怪我した子を治しに行ってるからいないよ」 「そっかー」 僧侶は魔法使いよりも希少なため、ケガを治してあげたりするとお金がたくさん入ってくる。 私達のお金の3分の2は、ニーナが稼いでいる。 「サナさんは何故ここに?」 お父さんの方から質問された。 「人を探しているんです。フォルトさんって聞いた事ありますか?」 「フォルトくんのことですか?」 えっ? 「助けていただいた時に会いに行った親戚の息子がフォルトくんだったんですよ。それで襲われたと言ったらたまたま実家に帰っていたフォルトくんが護衛をしてくれて…」 「どこにいるか教えてください!おねがしいます」 勢いが凄かったのか引かれた。 「分かってるよ。どうせニーナから俺が誰なのか聞いたんだろ」 宿屋から出て来たフォルトはため息をつく。 「で、俺にニーナに会えって言いに来たんだろ」 「よく分かりましたね」 「だけど…」 「悪い、ニーナには会えない」 「どうしてですか?」 サナには分からなかった。 もしサナが死んだと思っていた友達が生きていると知ったら会いたいに決まっているからだ。 「俺はニーナを見捨てたんだよ。」 「え?」 「俺はあの日、サナ達の村に行ってたんだ。もう用事は終わったから村を出た後だったけどな」 フォルトの表情は苦しそうだった。 「ピンチだって知ってたのに。助けに行かなかったし、助けも呼ばなかった。それだけじゃなくて」 一泊間を空けてから 「その後、ニーナの所へ行こうともしなかった」 「それだけですか?」 サナの感想はそれだけだった。 「俺はニーナが生きていることを知ってた。俺の村でも大騒ぎだったらか生き残った二人の子供のうち、一人がニーナがだって知ってた。知ってた上で生きていたことを知らないふりをした」 「何で…」 「会いにいく自信がなかったからだよ」 長い長い沈黙を破ったのはサナだった。 「サナは嬉しいですよ。どれだけ時間が経っていても、会いに来てくれるのなら」 「…」 「サナなら喜びます。大好きな人が会いに来てくれたら」 「そう…か?」 「はい。ナナ姉ちゃんはそんな事でいつまでも怒っている人ではないです」 しばらくの沈黙の末、フォルトは根負けしたように 「分かったよ、会いに行けばいいんだろ。」 と、投げやりに言い放った。 「よかったです!ですがサナは用事があるのでこれで失礼します。そろそろお仕事も終わっている頃だと思うのでこの宿屋に行ってください」 「おい嘘だろ」 ペロリと舌を出したサナはスキップをしながらフォルトに背を向けて駆けていく。 後ろからは 「お前本当にアンジュさんにそっくりだな」 という呆れたような声が聞こえた気がした。 その後のことはサナは知らない。 だけどバイパー討伐から暗かったニーナの表情は明るくなった。 そして 「ねぇサナ、北の果てまでフォルトも一緒に行ってもいい?」 北の果てを目指す旅にフォルトも同行する事になった瞬間だった。

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一ヶ月と1日後

ガラクタ屋①

「裏路裏に不思議なお店があるって知ってる?」 「知らなーい」 「本当に困っている人に必要なものがあるんだって!」 「へぇー今度行ってみたいね!」 そんな話を立ち聞きした。 私には友達が居ない。 友達をつくる道具があるかもしれない。 クラスでうまくいくようになるかもしれない。 そんな藁にもすがる思いで、私は裏路裏に向かった。 結果は…心の中ではわかっていた事だった。 そんなお店があったら誰も苦労なんかしない。 私はその場に座り込んで膝を抱えた。 そうでもしないと泣き出しそうだったから。 空が茜色に染まってきた。 帰ろうかと思い、重い腰を上げたそのとき 突然何も無かった場所に古ぼけたお店が建っていたのだ。 「は?」 思わず腑抜けた声を出してしまったけど驚きでそれどころではない。 何度目を擦ってもお店は見えているし、幻ではないはずだ。 私が驚きすぎて硬直していると、店のドアが開きそこから恐らく同い年くらいのふわふわの髪をした男の子が出て来た。 「あっお客さんです?このお店見えますかー」 語尾を伸ばし、ブンブンと手を振る そんな様子からやっぱり年下なのかもしれないと余計な事を考えてしまう。 人間パニックになるとどうでもいい事を考えると何かで読んだ気がするが恐らくこの事だろう。 「あれぇ見えてないのかな?人間のお客さんは久しぶりだったのにな」 ぶつぶつ呟きながら店の中に戻ろうとする男の子を見て、私はここに来た目的を思い出す。 「ちょっと待って!」 「わぁやっぱりお客さんだったんですね!どうぞどうぞ僕のお店へ」 ニコニコしながら振り向いてドアを開けてくれた。 「最近人間界からのお客さんが少なくてですね、久しぶりに会いたいなーって思ってた所だったんですよ」 嬉しそうな男の子に案内されるがまま店の奥に入って行く。 「はい!それでは好きに見ていってくださいねー」 どんな物なのかと商品棚を見てみると がらくた? としか言えないような商品が並んでいた。 例えば古びたメガネや、壊れてボキボキの傘。 底が抜けた鍋まで誰が買うんだというような商品ばかりだ。 驚いている私に男の子はケラケラ笑いながら 「やっぱり皆さん驚かれるんですよねー必要なものがあるっていう、噂を聞いて来てみればこのガラクタの山!」 「必要なものがあるって事は本当ですか?」 だんだん不安になってきた私が聞く。 「それは本当です。でも100%効果があると言われると保証はできませんよ。あくまでも神社のお守りや、占師が占ったラッキーアイテムよりも効果があるくらいですからねー」 「そう…ですか」 あからさまに落ち込んだ様子の私を見て気の毒になったのか 「あーでもこの中から探すのはめんどくさいと思うので、この水晶に手を当ててください。そうしたら必要なものが分かるんですよ」 確かにちょっと面倒くさそうだと思っていた私は気持ちを切り替えて水晶に手を当てる。 『えっ?』 私と男の子の声が重なった。 水晶に映ったのはガラクタなんかではなくこのお店だったからだ。 驚いて固まっていると店のドアが開いた音がした。 「あっすいません他のお客さんが来たので案内して来ます。商品を見て待っていてください」 そう言って男の子はドアの方へ走っていったかと思うと、明らかに日本人…地球人でも無さそうな女の人を連れて戻って来た。 異世界風の服を着て、背中に杖を背負っている綺麗な人だ。 「居なくなった友達を探す道具が欲しいんですけど…えっ?」 男の子に聞いている途中で、店の商品に気づいたようで驚いている。 「ねぇ君?ここは困っている人に必要なものを与えてくれるお店で合ってるよね?」 さっきの私と同じような質問をした。 「えっとまず、そちらのお客さんもそうですけどー僕のことは店長と呼んでください。一応ここで一番偉いんで!」 えへんと胸を叩いて言った後にさっきの私と同じような説明をする。 その後水晶に手を当てるまでの動作は同じ。 だが女の人の水晶には見るからに古そうな望遠鏡が映った。 「あーこの望遠鏡。どこやったっけなぁ確かあっち?の方です」 見るからに自信がなさそうな声で指を指したのはもちろん店長だ。 「ちょっと待って。なんでそんなに自信ないの?」 女の人がにっこりと笑いながら問う。 笑顔が怖いとはまさにこのことだ 「いやぁ物の管理が苦手なんですよー自力で探してください」 ちゃんと管理がされているのはこの部屋だけらしい。 ちょっと覗いただけでも入れない事が分かる部屋ばかりだった。 「そんな…友達が遭難していまっているのに」 涙目な女の人を黙って見ていられる訳もなく… 「手伝いますよ!一緒に頑張りましょう」 そこからは、大変だった記憶しかない。 望遠鏡だけでもいくつも店内にある上にごちゃごちゃしていてどこにあるか分からない状態だった。 嫌がる店長も探すのに参加し、やっと見つかった頃には1時間が経っていた。 「ありがとうございます」 感謝する女の人を見送り、店内には私と店長だけが残った。 「店長。私水晶に映ったことの意味がわかった気がします。私は久しぶりにとても楽しかったです。私に必要な物は『友達』だったんですよ」 「そうですか…僕もちょうど、あの部屋を片付ける人が欲しいなーと思ってた所だったんですよーよかったら一週間に一回、ここに来てくれないですか?」 私の返事は決まってる 「もちろんです!」 私がガラクタ屋に通うことになった始まりである

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ガラクタ屋①

一ヶ月後の二人 2

「逃げるよっ」 ニーナが震えるサナの手を取って走り出す。 バイパーも餌だと思っているのか当たり前のように追いかけて来て巨大な尻尾で叩きつけようとして来る。 「ヒャァァァ」 そして場面は冒頭へ戻り… 「フレイムっ」 必死に炎魔法でバイパーを倒しても次々と湧いて来てキリがない。 ニーナも数少ない僧侶の攻撃技や風魔法を放っているが、効果は薄い。 死ぬ…… そう思った瞬間 「すっごい数のバイパーだな!!」 視界に私達と同い年くらいの少年が入って来たかと思えば、サナも使えないような大魔法で、バイパーを一掃した。 その後バイパー討伐は言葉にすれば簡単。 バイパー討伐はサナとニーナが目を見開いているうちに終わった まだ固まっている私達に少年が声を掛けてくる。 「えーっと…アンジュさん?みたいな人とーえっ?」 一応私達が居ることは分かっていたらしい。 「アンジュさんって村が無くなった時に死んじゃったんだよね?そっくりだなぁ」 だが、本日2度目の会話ににサナもなんとコメントすれば良いのかわからない。 「隣の子は、俺の知り合いの子にそっくりだよ…不思議!本当にそっくり!きっと将来、こんなに美人だったんだろうなぁ」 一人で会話を続けられて困惑するサナとは違い、ニーナの表情はなぜか今にも泣き出しそうだ。 「……ニーナ。私の名前」 ニーナが急に名乗り出す。 それにびっくりしたのか、目を大きく見開いてから 「俺はフォルトだ」 と、名乗った。 「フォルト……」 ニーナがゆっくりと名前を呟く。 「なんだろうな。二人とは初めて会った気がしないな。特にニーナとは…」 フォルトが考え込むような仕草をして呟く。 「そうだね…もしかしたら昔、会った事があるかもね」 「あぁ」 サナにはよく分からない 少なくともサナにはフォルトを見た事がない。 初めて会ったはずだ 「なぁ、ニーナだよな」 「ニーナだよ。フォルト」 それからフォルトは思い出したように大量のバイパーをアイテム袋に入れ、去って行った。 フォルトは、辛そうな表情をしていた気がする。 ニーナも少し寂しそうな顔をしたことにサナは気づいていた。 「ナナ姉ちゃん。フォルトさんと何かあったの?」 疑問系にはしているが、不審な様子から何かある事はほぼ確信しつつも聞く。 「お母さんに付き添って他の村に行った時、いつも喧嘩を売ってくる男の子がいたの」 ニーナが静かに語り出した。 「そいつは、失礼で口を開けば悪口ばっかり。なのに頭は良くて、同い年だったのに私よりも先にその村に一緒に行ったアンジュ叔母さんに魔法や魔法学を教えてもらってた」 そんな話は初耳だった。 お母さんが、誰かに魔法を教えに行っていたのは知っていたけどそれがニーナの知り合いだったとは。 「それでいつもドヤ顔で私に魔法を披露してた。でも毎日口喧嘩になって、みんなに呆れられてた」 この流れでわからない人はいないと思う。 「男の子の名前はフォルト。村が無くなった時、フォルトとは連絡もつかなくなった。多分私が死んだと思ったんだろうね」 それから二人はサナとニーナが倒した数少ないバイパーを持ち、街に戻った。 両者、何も言わなかった。 「ナナ姉ちゃんは、フォルトさんに会いたいの?」 思い切って聞いてみた。 サナは分からなかったから。 アンジュの娘というと子供達からは怖がられていて、友達はニーナしか居なかったから。 「分かんない。フォルトは、私の所に来なかったから、今日まで忘れられてると思ってた。でも覚えてた。忘れられてるから仕方ないと思ってたのに覚えてた」 ニーナは苦しそうだ。 その表情を見てサナは気づく。 『ニーナはフォルトが好きだった』と 恋をした事がないサナはよく分からないが、これだけは分かる。 このまま有耶無耶にするのは絶対にダメだと。 サナはフォルトを探すために街へ踏み出した。

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一ヶ月後の二人 2

一ヶ月後の二人

「ヒャァァァ」 やばいやばい 「だから言ったじゃん。アンジュ叔母さんとサナでは強さが段違いだって!」 サナは本気で1日前の自分を呪う羽目になった。 事の始まりは1日前 「おぉ〜おっきい街だね!!」 サナはキラキラとした瞳で街を見上げる。 「この街は水などの資源が発達していて、貿易が盛んだったからこうして、栄えていったんだって」 普段は大人びているニーナも心なしかこの光景には、はしゃいでいる。 絵本でしか見た事のないようなかわいい街並みだ。 はしゃがないはずがない 残り少ないお金で宿屋を取り、いつも通り冒険者ギルドに向かう。 冒険者は、大体そこでお金を稼ぐのだ。 「ん〜ゴブリンにオーク、あとは…」 ゴブリンもオークもあまり強くないので貰える報酬は少ないが、駆け出しの冒険者には人気のクエストだ。 だがサナは軽くランクBの冒険者くらいの実力があるので物足りない。 「えっ?バイパー!?」 隣のニーナも驚いている。 「バイパーって、あのバイパーだよね?」 バイパーは巨大な蛇の姿をした魔物でもっと山がある小さな街に出る魔物だ。 大きなこの街にバイパーが出る事はほぼあり得ない。 「いけるかな?」 「失礼ですがアンジュさんですか?」 バイパーのクエストを受けに受付に申請しに行くと突然そう聞かれた。 アンジュは、私のお母さんの名前。 私はアンジュじゃなくてサナだ。 「違います。私はサナです」 ニーナは何故かケラケラ笑いながらやり取りを聞いている。 「そうですか‥失礼しました」 「なんでお母さんの事、知ってるんですか?」 私がそう口にした瞬間、受付の男の人はびっくりしたように目を見開いて 「アンジュさんは私の命の恩人なんです」 そう、紳士的に一礼して言った。 「いやぁしかし、アンジュさんに娘さんが居たなんて…しかも二人ですよ!紹介してくださったらよかったのに」 「あっいやナナ姉ちゃんは、本当のお姉ちゃんじゃないのでお母さんの娘は私だけです」 「あっそうなんですね。これは大変失礼しました」 男の人とサナのテンションの違いすぎる会話に堪えきれなくなったのかニーナはまたケラケラ笑い出す。 そんな感じのやり取りがしばらく続いた 「お兄さん。サナがちょっとパニックになってるし、受付済ませちゃってよ」 流石に聞き飽きたのかニーナが会話を中断させる。 「そうでしたね、すいませんそれでは最後に一つ。アンジュさんにまた会いにきてくださいと伝えてください。」 「ッ」 「お兄さんがアンジュ叔母さんに会いにきてください。叔母さんは、ここに居ます」 そう言ってお母さんのお墓がある住所をお兄さんにニーナが渡した。 「ナナ姉ちゃん、よかったのかな?教えなくって」 「いいんだよ。その方がお兄さんもきっとお母さんに会いに行ってくれるから」 「そっか」 サナは肩まで伸びた髪を意味もなく、くるくる回す。 不安な時や落ち着かない時にするサナの癖だ。 「それよりも本気?バイパーは強いよ。いくらアンジュ叔母さんが楽々倒せてたからって、サナに倒せるとは限らないよ」 サナは頬をぷくりと膨らませる。 これも不満を表したい時にするサナの癖だ。 「わかんないよそんなの。私も強くなったし」 「戦ってる途中にバテちゃうかもよ」 「うぅー」 「サナ」 さっきまで笑っていたニーナは、急に真面目な顔になって私を呼んだ。 「アンジュ叔母さんとサナは違うんだよ。それを忘れないでね」 「うん?」 よく分からないけど、とりあえず頷いた。 「これ、詰んだんじゃない?」 隣で無表情のニーナが怖い。 「サナ、おーい?」 ちょっと涙目になりながら 「無理かもしれない」 クエストでは一体だったバイパーが目の前には何十体も蠢いていた。

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一ヶ月後の二人

歌が聞こえた

私は歌手になるのが夢だった 昨日までは 「絵美ぃ〜カラオケ行こっ」 「いいよ」 「あっ男子誘ってもいい?」 「もちろん」 いつも通りのやり取りだった 仲のいい茉莉奈からカラオケに誘われて歌って日々のストレスを発散し、気の合う男子を探す。 私の青春 私の日常 この日のせいで夢を諦めることになるとは思っていなかった。 「〜〜〜♩♪」 茉莉奈が歌い終わる その次は今日誘った男子の内の一人が歌う 「ねぇ絵美ちゃんジュース取りに行かない?」 コップを見ると確かにジュースは、なくなりかけていた。 特に断る事でもなかったので私は彼と一緒にジュースを取りに向かった。 「ねぇこの人見て。ウケるんだけど」 なんの疑問も持たずに彼のスマホを覗き込んだ私は、文字通り固まった。 TikTokに上げていた私の動画だったからだ。 モノマネ動画と書かれた動画は私が流行りの曲を大熱唱している。 そんな私を気にせず彼は話を続ける。 「絶対自分が歌上手いと思ってるやつだw。こういうの一番恥ずい。そこまで上手い訳じゃないのにさぁ」 彼がそう言った瞬間、歌手になるという私の夢は無常にも崩れ去っていった。 そこからは覚えていない 気づけば私は知らない原っぱに居た。 茉莉奈から急に居なくなった私を心配したらしくメッセージが届いたがとても返信する気にはなれず、既読をつけて放置する。 ポロッ 私は泣いていた 自分の歌声を馬鹿にされたショックと 簡単に夢を諦めてしまった自分への失望と これまで私が歌った歌は下手だと思われていたのか。 茉莉奈もそう思っていたんじゃないかという恐怖で もう、どうにかなりそうだった しゃがみ込んでしまった時、 歌が聞こえた 「〜〜♪🎶」 綺麗だった ずっと聞いていたかった だけど今の私には聞くのが辛かった。 比べてしまって惨めになったから 歌は止んだ 唐突だった。 その代わり 「どうして泣いてるの?」 アイドルの子に声をかけられたのかと思うくらい綺麗な声だった。 声をかけてくれたのが歌っていた人だというのはすぐに理解できた。 「大丈夫?」 知らない人に声をかけられたというのに不思議と怖さはなかった。 むしろ安心できた。 「何かあったの?」 私は何も返事を出来ていないのに気にしないのか優しく聞いてくれる。 この人なら話してもいいかもしれない そう感じ、私は茉莉奈でさえ話さなかった夢を、そして今日あった出来事を全て話した。 「歌ってみてよ」 そう、唐突に言われた。 でも ーー歌えない 「なんで、歌手になろうと思ったの?」 すごかったから。 大好きな歌手さんの歌を聴いているとイライラも吹き飛んだから。 私もそうなりたかった。 「じゃあ、将来自分の歌で救われる人のために諦めちゃダメだよ」 びっくりした。 それと同時に歌いたくなった。 「〜〜🎶🎵」 やっぱり歌は大好きなんだ ー10年後ー 私は10年前に行った原っぱにもう一度向かう。 ある女の子を元気づけるために。 今の私を知ってもらうために

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歌が聞こえた

努力の天才

努力の天才 そう、親からも先生からも友達からも言われ続けられていた。 自分でも思う 自分は、頑張れる子なんだと 今日は魔法試験の実技と、知識テストの日 たくさんの時間をこのテストだけに使っていたから自信はある。 だって私は『努力の天才』だから テストから3日後 今日は結果発表の日だ。 魔法学校高等部に入ってから初めてのテストだったから他の子がどれだけ賢いのかは分からないけど、中等部の時は1位を保っていた私は相当な自信で結果を見た。 「えっ?」 トップ5にギリギリ滑り込んだ4位。 200人以上いる中でのこの成績は、私以外の人から見たら快挙だろう。 「デリアは何位だったの?まぁトップ3には入ってるよね〜中等部の時は1位だったし、なんたってデリアは『努力の天才』だし」 そう言った友達は私の手の中にある、結果を覗き込み、そこから気まずそうな表情をした。 「まぁ、次頑張って!」 よく分からない励ましをされたが、全く納得ができない。 私がずっと固まっていると遠くから 「やったあー1位だぁー」 と言う声が聞こえてきた。 その声を聞いて私は固まった。 中等部の時は同じクラスであったいつもヘラヘラと笑ってばかりで授業も寝ていた絵に描いたような問題児、メイだったからだ。 なんで?なんで? メイはもしかしたら地頭が良かったのかもしれない。 高等部では同じクラスにならなかったから授業態度も分からないから真面目になったのかもしれない。 そんな考えがいくつも浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す。 おかしい 『努力に勝る天才なし』 よく言われているのに これだけ努力した私がメイに負けるのはおかしい。 分かった、ズルをしたんだ そうでなきゃ説明出来ない 私がメイに負ける理由なんて 我慢が出来なくなった私はメイのところに直接行って聞いてみた。 「どんなズルしたの?」 それを聞いたメイは不思議そうな顔をして 「やだなぁデリアちゃん。ズルなんかする訳ないじゃん」 私が嫌いだったヘラヘラとした笑みを浮かべて言った。 「あっ、でもね今回のテストは結構勉強頑張ったんだよね!」 そんな訳ないじゃん この言葉が外に出たかは分からない。 ただ、メイが不思議そうな表情をしていたから言葉にしていたんだろう。 「私以上に努力できる人なんか居ない」 そう言って私はメイに背を向けて走った。 私は『努力の天才』。 そう自分に言い聞かせて その日から私はメイに負け続けた。 実技も知識も何もかも 小テストでも、何も勝てなくなってしまった。 悔しくて悔しくて家に帰ってたくさん勉強をした。 魔法だって1日20回は放った。 メイに勝てるようにたくさんたくさん『努力』した。 『努力の天才』 そう私を呼んでくれる人は居なくなってしまった。 参考書を買いに書店に行った帰り道、広場でメイを見かけた。 遊んでるくせに そう思ったのも束の間。 メイは遊んでなんかいないことに気づいた。 魔法を放っていた 何回も何回も繰り返し 空を飛んで火を出して、水を出して花を咲かせて 私がしているよりも早く上手く、そしてたくさんの数を放っていた。 どのくらいメイを見ていたかは分からない。 ひと段落着いたのか休憩に入ったらしい所で私はメイに話しかけた。 「すごいね」 ただそれだけ 「あっデリアちゃん!見てたの?恥ずかしいなぁ…もっと早く声、かけてよぉ」 キツく当たったはずなのにメイは気にせず話してくれる。 私は馬鹿だった メイは私よりもずっと頑張って1位を取っていた 魔法を見ていたらよく分かった あれだけの物は私では出せない メイは、私よりも『努力』していた。 ただそれだけの話だったのに 「ごめん、ごめんねメイ」 何に対して謝られたのか分かっているのか 「もちろん!ぜんぜん大丈夫だよぉ」 と、ヘラヘラ笑って返された 私も『努力の天才』ともてはやされて調子に乗っていた。 本当の『努力の天才』は見えない所でも努力して、巻き返そうと頑張ったメイ そう分かって私の醜い嫉妬心は綺麗さっぱり無くなった

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努力の天才

一週間経った今

昨日野宿をした森の中でサナは目を覚ました。 北の果てを目指し始めて一週間。 旅路は順調 頑張れば1年で着くかもしれない。 微かに残る睡魔に抗いながら、起き上がる。 そしていつも通り横で寝ているニーナを起こし、まだ寝ぼけてるニーナを横目にとっとと朝ごはん作りに取り掛かる。 食料を入れている鞄を開くとそこには… 「えっ?ほとんどない」 「忘れたの?次の街で買いたそうって言ってたのにサナがバテちゃったから、辿り着かなかったのに」 呆れたような表情でニーナが後ろから声をかけてくる。 「北の果てを目指すって言ってたから前よりも体力付いてると思ったのに」 「……」何も言えない その代わり頬を膨らませそっぽを向く。 「あーあーサナが拗ねちゃった。悪かったから、早く街に向かおう。余計にお腹すいちゃう」 「…わかった」 そして二人は仲良く並んで森の中を歩き出した。 「サナは運動音痴だったもんね」 本日2回目のニーナの呆れたような声を聞きながら、サナは残り少ない食料を食べる。 「……」今回も何も言えない。 サナは魔法使いとしての素質は抜群だが、勉強と運動は平均以下なのだ。 ステータスを魔法に全振りした人間なのである。 「ナっナナ姉ちゃんも食べる?」 「もらう」 ため息を吐きつつ目の前にあったリンゴに齧り付いている。 「どうしよう」 冒頭の前言撤回 全く順調ではない旅路にニーナはため息をついた。 「たっ助けてくれぇ」 そんな時だった。 木の影で休憩していた二人の元に、男性と女性。 そして男性に抱かれた血だらけの子供が駆け寄って来たのは 奥からは魔物の雄叫びが聞こえた。 「何があったの?」 先に我に帰り、鋭い声で恐らく親子に尋ねたのはニーナだ。 「もっ森を抜けた先にある街に親戚が住んでいるから尋ねようとしたら、魔物に…オーク遭遇したんだ」 「護衛は?」 「お金がなくて……」 「はぁ?」 滅多に怒らないニーナが怒っていた。 親子と自分を無意識のうちに重ねてしまっていたからだろう。 「サナッボーッとしてないで早く寝袋ひいて!それが終わったら火をつけて!あなたたちは止血するから布を取って」 サナも重ねていた。 この親子と自分を 魔物・家族・血 あの日のことを思い出す要素がありすぎる。 「サナ?」 あの日の出来事は鮮明に思い出せる 「サナ!サナ!」 苦しい…お母さん バシッ、パーン 「ふぇ?」 「しっかりしなさい」 叩かれたのだ…ニーナに 「この場で一番強いのは誰だと思ってるの?私がこの子の命を救うように、サナは自分ができる精一杯をやりなさい」 そう言ってすっかり準備ができた寝袋の上に子供を乗っけると呪文を暗唱して、傷を治していく。 「グオォォォ」 魔物の声が近くなってくる 「ありがとうナナ姉ちゃん」 そう、ニーナに伝えるとサナはみんなに背を向けて魔物の方へと走って行った。 「お〜大量だね」 サナがオークを全滅させアイテム袋に死体を入れて帰って来た頃には子供の危機は脱したらしく、ニーナは嬉しそうに話しかけて来た。 さっきまで怒っていたのが嘘みたいに 「本当にありがとうございました」 「ありがとーおねーちゃん」 数時間もしたら子供も走り回れるようになるくらい回復した。 親子から感謝されて食料を分けてもらったのは嬉しい誤算だ 森にいた魔物はサナが一掃したのでもう魔物が出る心配はない。 親子は最後まで感謝しながら去って行った。 「大事な話をしよう」 親子が去って行ってからすぐだった ニーナにそう切り出された 私は木の影に座り直した 「サナはまだ、あの日のことを克服してない」 「そうかも…しれない」 あの日というのがいつのことなのかは言われなくても分かる 「だから最悪子供が死んでいた場面で、最悪みんなオークにやられてたかもしれない場面で、動けなくなるくらいなら私は……」 ニーナも言うのは辛いのか言葉を切りつつも 「北の果てを目指さなくてもいいと思う」 私が泣いてもいい場面ではない 分かってるのに… 「あれ?」 ポロポロ目から雫が落ちて来て、顔がびちょびちょになる。 そんな私を見てニーナは優しく頭を撫でてくれる お母さんみたいに… 「サナは、北の果てに行きたいの?」 私が落ち着いた頃、そう聞かれた。 「わかんない」 わかんない 私はどうしたいんだろう 今日で自信を失って、 またうずくまってしまいそうで怖くて、 ニーナを傷つけるのも嫌で、 でもお母さんの願いを叶えたかった 「ナナ姉ちゃんはどう思う?」 結局決断を放り投げた 「私は……」 いつものニコニコした笑顔で 「私もわかんないや」 「ふぇ?」 少子抜けた 厳しい事を言われる覚悟だったから 「正解はないんじゃないかな?だから、せっかく此処まで来たし…」 「行ってみてもいいと思う。サナにその覚悟があるなら」 また、ボロボロ涙を流した ニーナは私の頭を撫でながら 「でも、街や村に行くと思い出しちゃうからわざとゆっくり歩くのは無しね!」 その時私は分かった 「ナナ姉ちゃんには、隠し事できないなぁ」 「当たり前だよ」 そして立ち上がって 「だってサナのお姉ちゃんだからね」 と笑った

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一週間経った今

国が滅ぶまで

この国は魔法でできている ーーそう言って過言ではない だからその国は滅んだ 一人の身勝手な魔女によって 私の住んでいる国は、魔法に依存している。 そんなの国民全員が分かっているが誰も止められない。 だって楽だから 移動するのも呪文を唱えるだけで完了。 野菜や魚も杖を振れば食卓に並ぶ。 一日一歩も動かない日だってある。 だからこそ私は思った 『この国から魔法を消したら面白いんじゃないか』 その日、その国から魔法は消えた。 一人の魔女の思いつきで魔法は消えた。 そして人々は死んでいった。 その魔女は想像力が足りなかったのだ 長生きをするために歳をとるのを遅くしている魔女もいた。 食べ物も魔法が無くなったら何をすれば良いか分からず一つ残らず枯れていった。 生きていくための必要な食料も無くなり、空腹に苦しむ人々は自殺をし始めた。 国は滅んだ だが国が無くなる瞬間まで魔女は笑っていた。 魔法を消した本人ならば自分だけに魔法を残す事だってできたからだ。 魔女だって望まない結末だったはずなのに一番に、上に立ちたかった魔女は笑った 高らかに

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国が滅ぶまで

自己紹介

今更ながら自己紹介しまーす 名前は実々(みみ)でーす 本名と、似ているような似ていないような… 小学校を卒業したばかりの中学1女子です 部活は陸上部にしました〜 疲れてきてるので投稿頻度落ちそうです… 漫画、アニメ、小説など全部大好きオタクです! オススメがあったらぜひコメント欄で教えてください ちなみに私はファンタジーや恋愛が好きです! 好きな小説…その日、朱音は空を飛んだ       魔女の旅々       死亡遊戯で飯を食う                などなど 好きな漫画…薬屋のひとりごと       本好きの下剋上(アニメにも入りますねw) 好きなアニメ…Re:ゼロから始める異世界生活        葬送のフリーレン 将来の夢は、学校の先生!(全然小説関係ないですけど‥)この夢を目指し始めた理由も、実話をもとに投稿しています!タイトルは『夢をくれた。』です!見てみてください 最後まで読んでくれてありがとうございます〜

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