実々
28 件の小説全部嘘で終わらせる
百合です 嫌いな人は読まないで! 「好きだよ」 「えっ?」 私の言葉に彼女は驚いている。 だけどそんな彼女に私はにっこりと笑いかけ、 「嘘に決まってるじゃん。もちろん友達としては大好きだよ」 「あーびっくりした」 彼女も笑う 私も笑う 彼女の純粋な笑顔とは真逆で、私の笑顔は不純。 諦めや、悲しみというものが浮かんでいる。 「なんか嫌な事あったの?」 彼女は私の微妙な表情を見抜く。 そんな所もやっぱり愛おしい。 「なんでもないよ」 言えるわけがない。 『あなたが大好きだけど好きになってもらえなくて辛い』 なんて 私は彼女が大好きだ。 性別や親友という関係すら超えて だけど 彼女は私のことが『親友として好き』だから私のこの恋心は 「えー嘘だー」 「好きだよ」 「?」 「もちろん嘘」 全部全部嘘で終わらせる
視力(私の愚痴です見たくなかったら飛ばしてください)
私は生まれつき少し視力が弱い。 普通に生活を送る分にはあまり問題はない。 でも小さな不自由は、ずっと私にとってストレスとなっていた。 目が悪く、遠くからだと人を判別できないため手を振ってくれていたとしても、自分に振られているのかも分からないし、結果的に無視した事になってしまう。 球技系の運動も苦手。ボールを持っているのが敵か味方かの判別も付かないし、パスをもらっても敵にパスしてしまう事が多いからだ。 はっきり言って足手纏いになってしまうし、自分で言うのもどうかと思うけど元々運動神経はいい方なので、なんでも出来ると思われてみんなをガッカリさせてしまう。 そんな事を知らない人の方が多く、説明はしているけれど伝えても結果、気遣わせてしまって新しく出来た友達は少なかったし、今も上手く接する事ができない。 なんで視力が悪いんだろう すいません少し私の愚痴を聞かせてしまいました。 今話した事は全部私の事であり、実々という名前は私にとって声を聞く耳が大切だったから漢字を変えて実々という名前にしたんです。 めっちゃ語っちゃってすいません。 でもちょっと愚痴りたかったので愚痴らせてください!
第7回N1 本音と建前
お題:『おもい違い』 私達は幼い頃から仲が良かった。 私は彼女の事を親友だと思っていたし、彼女も私の事を親友だと思っていると勝手に信じていた。 幼稚園に通っていた時、幼かった私達なりに意気投合し、一緒にお姫様ごっこやおままごとをして遊んだ記憶がある。 小学校に通っていた時、一緒に放課後遊んだり、宿題を一緒にしたりした。バカな私は算数を彼女に教えてもらいつつも一生懸命頭を使って頑張っていたと思う。 そして中学生 私の小学校は、仲が良い人同士はクラスが分けられる。もちろん私達も例外ではなくクラスが分かれてしまった。 「中学生になってもクラスが分かれてもずっと親友だよ。ずっと〇〇が一番だよ」 クラスが分かった時私は彼女にそう言った。 その時彼女は「うん」とも「ううん」とも捉えられる様な曖昧な返事をしていた。 けれどその時の私はあまり気にならなかった。 この関係が続くと信じて疑っていなかったからだ。 中学生になった 私は初め、クラスで友達を作ろうとしていなかった。休み時間になったら教室から出て廊下で彼女と話していたからだ。 話しかけてくれる子が居ても適当に話を終わらせ、廊下に出る。 それが私の中学生になった最初の一カ月の日常だった。 二カ月目に入ると彼女は廊下には来なくなった。 委員会の当番だったり、学級委員である彼女はいろんな用事があった。 彼女と話す事が少なくなった。 せめて、帰り道は一緒に帰りたかった私は彼女の部活が終わるのを待っていた。 それが二カ月目 「別に帰り道、待っていなくても良いよ」 彼女にそう切り出された三カ月目。 「ううん〇〇と一緒に帰りたいの」 なんでそんな事言うんだろう。 そう思いつつも返事を返す。 「ねぇ友達できた?」 そう聞く彼女は何故か少し苦しそうだった。 「大丈夫だよ。〇〇が居れば別に良い」 彼女は一瞬苦しそうな表情をした後、すぐに 「そっか」 と、いつかの会話を思い出す様な嬉しそうでもあり、しんどそうな曖昧な表情をしていた。 それが三カ月目 四カ月目 夏だった。 「あっ〇〇一緒に帰ろ…」 彼女は一緒に歩きていた友達と私の横を通り過ぎた。 気づかなかったのかもしれない。 「〇〇、〇〇」 彼女が振り向く事はなかった。 暑い中待っていたからではない汗が私の頬から流れ落ちるのを感じた。 夏休みに入った 相変わらず彼女が私に話しかける事はなかった。 バカな私にだって彼女に嫌われてしまった事くらいわかっていた。 何がダメだったんだろう 何が良くなかったんだろう ずっと仲良しだったはずなのに 新学期が始まった。 新学期が始まって変わった事は大きく二つ 一つ目は、私が廊下に出なくなったという事。 彼女と話せなくなったから、もう廊下に出る必要はなかった。 二つ目は、私に新しい友達が出来た事。 最初の方も話しかけてくれていた子だ。好きなキャラクターが同じで、意気投合した。 その子が言うには 「最初から友達になれそうだと思ってたけど、〇〇さんと一緒に居たからあんまり話しかけられなかった」 と言う 彼女を失った事で出来た友達も居たのだと私は不思議な気分になったのを覚えている。 そこから一年が経った。 彼女と話さなくなってから半年以上が経った事でもある。 最初こそは嫌われてしまって落ち込んでいたし、悲しくて泣きながら眠りについた事もあった。 でも今は嫌われてしまったけど仕方がないと思える様になった。 彼女が私を嫌いになった理由は謎のままだが、このままでもいいと思っている。 だけど私のそんな思いは裏切られるような事になった。 彼女に呼び出されたのだ。 久しぶりに話す彼女は、半年前と変わっていなかった。 唯一変わった事といえば彼女の表情が緊張で強張っていた事だ。 そのまま沈黙が続きさすがに何か話そうと思い、口を開いた。 「ごめんなさい」 だが私が話すより、彼女が謝る方が早かった。 「あのね、私、無視しちゃったから」 よく見ると彼女は、涙で顔が濡れてしまっていた。 「このままじゃ、友達が出来ないと、思って」 驚いた 「友達を、作って欲しくて、クラスでも笑っててほしかったの」 彼女は、私を嫌っていなかった その逆だった私の事が 「大好きだったから」 その一言を聞いた瞬間私は泣き出した。 「私も、いろいろごめんなさい。〇〇が私の事を嫌ってるって勝手に決めつけて、こんなに私の事を考えてくれてるって、何もわかってなくって、勝手に嫌になっちゃって」 私達はまた、涙を流した。 そして最後には笑っていた。 私はおもい違いをしていた。 彼女の気持ちを何もわかっていなかった 自分の気持ちだって、別に良いと強がっていた 私の中学校時代の1番の思い出である
ガラクタ屋②
「それでは一週間に一度だけですけどこのお店に来てこの部屋を片付けてくれると嬉しいです!」 相変わらずニコニコ笑いながら説明をする店長は、ほっとした様子だ。 「いやぁそれにしてもよかったですよー。丁度、片付けるのがめんどくさいなぁと思っていた所でした」 「もちろん、店長も手伝ってくださいますよね!」 「ふぇ?」 そんな話をしている内に、空はもう暗くなって来たので大人しく帰ることにする。 「それではまた、一週間後に来てくださいねー」 元気に手を振る店長に見送られて、今日は店を後にした。 次の日、店に来ても当たり前かもしれないけど何も無かった。 ただ空き地が広がっていただけだった。 店長の言っていた一週間に一度しか現れないのは本当なのだろう。 少し落ち込みつつ一週間後を楽しみにしている自分に気づき思わず笑ってしまった。 ーあの時間がそんなに楽しかったんだ と気づいて 大人しく一週間待ち、店があった場所に向かうと空き地は店になっていた。 何もなかった事から夢だったんじゃないかと実は不安だった私はほっとしつつ店のドアを開ける。 「お待ちしていましたーえっと…まだ名前、聞いてませんでしたね!」 「愛海(あみ)です」 その時の私は満面の笑みだった。 その日から私はガラクタの山の片付けに取り掛かった。 異世界からのお客様は男の人や女の人、子供まで幅広い人が来店していた。 ガラクタが売れて行くのを見ると何故かとても嬉しくなる。 「愛海さんもだいぶ店に馴染みましたねーお部屋も綺麗になってきたし、万々歳ですよぉ」 手伝いなど一切せずにのんびりお茶を飲んでいた店長が話しかけてくる。 「それにしても人間界からのお客様って本当に少ないんですね。ここに来るようになってから一回も見た事ないですよ?」 ずっと疑問に思っていた事を聞いてみる。 「あーそれはですね。人間の方って魔法とか信じない人多いじゃないですかーだから元々魔法が存在する異世界の方が不思議なお店っていうのは信じられるんですぅ」 店長が不服そうに言い切った時 ギィぃ 「あれ?噂をすれば人間界からの扉ですねーどんな方でしょう?」 「ニャーオ」 「へ?」 お客様は、なんと猫だった。 「いやぁ僕もびっくりですよーもう何年もお店を経営しているのにこんな事は初めてですっ」 「私も猫が来るとは思っていませんでした」 猫好きなのかどこからか出してきた猫じゃらしで遊ぶ店長はいつもより楽しそうだ。 「水晶を持たせたらどうなるんでしょうね?」 「確かにそうですねぇ持たせてみますか?普通に商品を持って帰ったら面白いですねー」 などと面白半分で水晶を柔らかそうな肉球の上に置いてみる。 「映るんかい!」 思わず突っ込んでしまうくらい驚きの瞬間だった。 「普通にお客様だったんですねぇ迷い猫ではなく」 ニコニコと笑いながらそこに映し出された本を探しに最近私が片付けたエリアに入って行く。 お目当ての本は私が片付けただけあってすぐに見つかった。 本を背中に乗せてあげると猫は嬉しそうに尻尾を振りながら店から出て行った。 「あーあ、行っちゃいましたね…」 少し残念そうに猫を見送った店長がそう呟く。 「珍しいですね。店長がお客さんに執着するなんて」 一つの出会いこだわらないどちらかというと淡々とした性格の店長だからこそ猫一匹に残念そうにする店長が珍しかった。 「執着とは少し違うんですけどー昔、猫を飼っていたんです…大好きな家族と一緒に」 驚いた。 何度もこの店に通っていた私も店長の昔話を聞くのは初めてだったからだ。 「僕が大好きだった家族は、願いが叶わないままいなくなってしまったんですよ。だから僕はここで皆さんの願いを叶えるお店を開いたんです」 店長は一息つくと私の目をまっすぐ見て言った。 「ちょっと急ですけど、愛海さん僕の願いを叶えるお手伝いをして欲しいです」 「何をしたらいいんですか?」 気づいたら返事をしていた。 店長は嬉しそうに、そして少し覚悟を決めたように口を開いた。 「ありがとうございます。愛海さん、では…このお店を無くしてください」
魔法をかけて
私に魔法をかけてください。 女の子として好きになってもらえたい そんな私の願いが叶う魔法をかけてください。 誰もいなくなった教室で私はうずくまっていた。手の中にあるラブレターは、くしゃくしゃになって涙で濡れている。 私の人生初の告白は告白を終える前に終わった。好きだったクラスメイトは彼女ができたらしい。 涙を拭いながら私は思う。 私に魔法をかけてください。 彼に好きになってもらえるようにしてください。 そう願った 「えっと…大丈夫?」 気づけばあまり話したことがない女の子が気まずそうに立っていた。 「聞くつもりじゃ無かったけど聞こえちゃったの」 無意識に考えていた事を声に出していたらしい。 恥ずかしく思いつつ、何か言いたそうな彼女の言葉を待つことにした。 「魔法は無いかもしれないけど魔法の言葉はあるよ。『大丈夫。きっと次は上手くいく』」 幼稚園児みたいな言葉だった。だけど今の私には深く突き刺さった。事情なんて何も知らない彼女の言葉に救われた気がした。 「じゃあね」と、手を振り教室から出て行った彼女に私は本当に魔法をかけられた気がした。 教室から出た時の私の表情は晴々としていたから
トイレの花子さん誕生!
私が最後に見た景色は病院の白い天井だった。真っ白な天井と隣に座る両親や医者に見送られ、私は息を引き取った。 「は?」 次に目を覚ました時は両足が地面についていなかった。ぷかぷか宙に浮かんでいたのだ。 死んで幽霊になったのだから当たり前かもしれないが、私が伸ばしていた髪も短くなりおかっぱ。 服も真っ赤なスカートである。 何より今いる場所は 「なんでトイレ?」 なんだか嫌な予感がしてトイレにあった鏡を恐る恐る覗いてみると… 「花子さんじゃん!」 そう、簡単に言えば私はトイレの花子さんに転生したのだ。 「うぅ〜どうせ生まれ変わるなら人間が良かった。花子さんとか恐怖の象徴じゃん」 ため息を吐いても、もう花子さんであることに変わりはない。花子さんに生まれ変わらせた神様を恨みつつ仕方がないと諦める。 「あーあ、最悪」 投げやりに始まった私の花子さんの人生は幕を開けた。 「花子さん本当につまんない!」 花子さんが居る場所と言えば学校。もちろん私も学校の女子トイレに住み着いているが、学校の端っこのトイレなだけあってほとんど誰も来ないのである。 面白半分で来た人を脅かしてみたが、誰一人として私の存在に気づかずトイレを出て行った。 暇すぎて学校でも探検しようかと思ったが、見えない何かに阻まれてトイレから出る事はできなかった。 ただ、例外として夜の12:00〜12:59分の間は学校の中に限ってトイレから出ることができた。だが1時になると強制的にトイレに飛ばされた。理不尽な事上ないと、憤慨していたが何度やってもダメだったため、諦めた。その1時間での収穫はここが小学校だとわかったくらいだ。 花子さんになって早一週間。 トイレでは暇つぶしになるような物は何一つない。しかも喋り相手も1人も居ない。 花子さんライフ早々に萎えはじめている。 そもそも七不思議と言われている花子さんは、いつも何をして過ごしていたんだろう。噂通り呼び出されないと出て来られないのなら女子トイレをウロウロしている今の私よりも更に暇だったのだろう。 今私が「遊びましょう」と言われたらきっと飛んで跳ねて出ていくだろう。花子さんも頑張っていたんだと同調的な気持ちになりつつ、知りたくなかった花子さんの闇を知ってしまった気分で、いつも通り12時の探索(私が勝手に名前をつけただけ)に出かける。 ちなみにこの時間に、教室にあるの本や紙などをトイレに持ち込んで置いて暇を潰そうと考えた事もあったが、私がトイレに飛ばされる原理と同じなのか、何故か1時になると元の教室に戻ってしまうという不思議な現象を発見した。発見して悲しくなっただけだったが… 「んー何処へ行こっかなー」 トイレ以外の場所へ出られたら不思議とテンションが上がる。誰だってトイレに一日中居るのは嫌なはずだ。たとえ花子さんでも… 真っ赤なスカートにおかっぱ頭を揺らしながら、私は校舎の端っこの教室に入る。それなりに大きな小学校らしく、私が入る教室は今の所毎日違う。今日は音楽室らしい。ギターにピアノ、よくわからない楽器までが置かれている。教室の壁に貼られたベートーヴェンなどの写真?は怖いのはお約束だ。適当な楽器を弾いて楽しんでいたその時に事件は起きたのだった。 ギョロリ 最初は気のせいかと思った。 ギョロリ 見られている気がする。気持ち悪いのでそのまま音楽室を出て行こうとした時、私の後ろに一つの影ができた。 「えっ?」 「こんな真夜中に奇遇じゃな。新入りの怪異かえ?」 ベートーヴェンだった。壁に貼られているはずのベートーヴェンが何故か実体化して私の後ろに立っている。 「いやァァァァァァ」 理解が追いついた途端絶叫を残し、私は音楽室を超特急で出て行った。 行き先はもちろんトイレである。 ぜぇはぁぜぇはぁ 息を切らしながらトイレへ駆け込んだ私は、足が無くても全力疾走は疲れるんだという無意味な事を知ったと同時にベートーヴェンが動いたという事実がそこまで驚く事ではないことに今更気づいた。 だって私、花子さんだし別にこの学校に他にも怪異が居たっておかしくはない。 人間だった頃の恐怖もあり、逃げ出してしまったが貴重な話し相手になったかも知れないと考えると惜しい事をした。 時計を見るともう1時になりそうだから今日の所は諦めるとして、また明日音楽室に行ってみようと決意した。 長い長い長い長い1日を終えて、やっとやって来た12時。 廊下を進み、音楽室に向かう。 ギィ 「失礼しまーす。ベートーヴェンさん、いらっしゃいますか?」 居ると思いながら声をかけるのはそこまで怖くない。じっと壁の絵を見つめていると… 「なんだ、昨日逃げてった花子ではないか」 絵の中からベートーヴェンが出て来た。 「その…昨日は逃げてしまってすいません。初めてだったんです。自分以外のお化けを見るのが」 とって食われるような事はないと思いたいが、初対面の印象はあまり良くないので礼儀正しく見えるように敬語で話す。 「おぉーそうかそうか花子は初めてだったのか。そりゃビビって逃げ出すわな。ともかく初めましてじゃな。わしは見ての通りベートーヴェン。なんとでも呼んでくれ。お主は花子じゃろ?」 思ったより優しそうなおじいちゃんのイメージで安心しつつ、一応礼儀正しく名乗り返す。 「はじめまして、トイレの花子さんです。この学校の女子トイレに住んでいます。これからよろしくお願いします」 「おぉ、小さいのに立派じゃのぅ。この素直さ、人魚にも見習ってほしいわい」 「えっ?人魚が居るんですか!!」 人魚といえば小さい時に海に行けば一度は探す、小さな女の子達の憧れのプリンセスだ。もちろん私にも人魚姫になりたいと思っていた時期があった。そんな事もあって思わず聞き返してしまった。 「花子はプールにはまだ行っていないのか?夜中にあそこでバタバタ泳いでるぞい」 「えー会ってみたいなぁ」 「また明日にでも行ってみると良い。だが今夜は、年寄りの話に付き合っておくれ」 それからおじいちゃんと孫娘のような会話をした。ベートーヴェンの話は面白かったし、私はいつも暇をしている事や喋り相手が欲しい事を話すと、いつでもしゃべりに来ても良いと言ってくれた。 その夜は私はベートーヴェンの事をベートーヴェンのおじいちゃんと呼ぶようになるくらい親しくなった。 楽しい夜だったが、私だけじゃ無くみんないつも暇してるんじゃないかと疑いたくなった。 次の日は校舎の外から出てプールに向かった。 ベートーヴェンのおじいちゃんが言っていた事が本当なら、人魚はプールを泳いでいるらしい。相手が人魚という事もあり、実は結構楽しみにしている。 バシャバシャバシャバシャ プールに近づくと明らかに誰かが泳いでいるような音がする。 プールサイドに入り、水の中をよく見てみると上半身は綺麗な桃色の髪を長く伸ばした女の人。下半身は綺麗な鱗という古典的な人魚が泳いでいた。 「わぁ」 思わず声を上げると、人魚は私に気づいたらしく近寄って来た。 「ふーん何となく気配はしてたけどやっぱり増えたのね。その見た目からしてトイレの花子さん。正解でしょ」 近くで見るとやっぱり美人だなぁと思いつつも返事を返す。 「はい、トイレの花子さんです。ベートーヴェンのおじいちゃんから人魚さんが居るって聞いて来てみました」 「おじいちゃんにはもう会ったのね。まぁあの人のことだからあっちから声はかけたんだと思うけど。まぁ改めて私は人魚。人魚姫よ、よろしく花子さん…はよそよそしいわね。花と呼ぶわ、よろしく」 「よろしくお願いします」 「ねぇ花、私ずっと妹が欲しかったの!良かったらお姉ちゃんって呼んでくれない?」 顔から火が出るとはこの事なのか。私の顔は真っ赤っかだと思う。人魚姫をお姉ちゃんと呼んで良いのか 「おっお姉ちゃん、よろしくね」 真っ赤っかな顔で私はそう言った。し 「花が来てくれて良かったわ…この学校には私とおじいちゃんしか、怪異はいなかったのよ。おじいちゃんも良い人なんだけどよく対立しちゃうなのよね。それにたくさん居る方が楽しいし」 「お姉ちゃんとベートーヴェンのおじいちゃん以外、誰もいなかったんですか!?」 こういうのは七不思議があるのがお約束みたいに思っていたけど案外そうではないのかもしれない。 そして対立の部分は深く聞かないことに決めた。ベートーヴェンのおじいちゃんから聞いた話からしても、そこまで仲が良い訳ではないはずだ。 「そうなのよ、おじいちゃんだけだと暇で暇で仕方なかったの…プールなんか夏以外使わないから、誰も来ないし」 この人暇って言ったよ暇って!やっぱりみんな暇してるじゃんと心の中で思いながら、プールという最悪な場所に住んでいるお姉ちゃんに深く同情した。 トイレは、端っこだけど何人かは来てくれる。音楽室も音楽の授業でもちろん使う。 「だから花に時々来てもらって話し相手になって欲しいわ。ヒレだと陸地を上手く歩けないの」 「分かったよ、お姉ちゃん!」 こうして私はこの学園でおじいちゃんとお姉ちゃんという家族ができた。
キャラクター
「純香(すみか)ちゃんってさ、サイコパスだよね」 友人の何気ない一言が私にはたまらなく嬉しかった。 自分でもサイコパスと言われて嬉しがるのはどこか頭のネジが外れているとしか思えない。 だけど中学校に入学してから思う。 キャラクターって大事だと リーダーみたいな子、天然な子、賢い子、不思議子まで 皆んながどこまでが作り物でどこからが本当の性格なのかは知らないけれど 自分にはキャラクターがなかったから。 極々普通のありふれた子では必要とされなかったから。 だから私はその日から徐々に徐々に言動や行動をサイコパスに変えていった。 みんなに怖いと言われつつも笑ってもらえて、何故だか友達も増えていった。 私は楽しかった。 徐々に本当のサイコパスになって行っていると気づいていても みんなに必要とされるならそれでも良かった
不思議な友達
昨日から準備していたリュックを背負って 大好きなぬいぐるみを抱いて 玄関の鍵を開けた 昨日読んだ本に影響されて私も大冒険をしてみたいと思ったことが始まりだった。 6歳なりに頭を振り絞って計画した朱里(しゅり)の大冒険が始まる。 トントントン アスファルトでできた道をスキップをしながら通り抜ける。 昨日から念入りに計画をしてきたからどこに行くかは、もう決まっている。 お化けが出ると有名な空き家だ。 小学6年生のお姉ちゃんがお化けの噂は子供を近づけないためのウソと言っていたから平気だ。 ギィギィ 錆びているのか変な音が鳴るドアを開けたら本当にお化けが出て来そうな空間が広がっていた。 ちょっとだけビクビクしながら奥の方へ歩いていく。 ここで一晩過ごすのだ。 寝心地が良いところを探すために奥へ奥へ進んでいく。 「ねぇこんな所で何してるの?」 「!」 驚きすぎて声も出ない。 出来れば聞き間違いであってほしいと願いながら声が聞こえた後ろを振り向くと 私と同い年くらいの少年が立っていた。 「あっ叫んじゃダメだよ。大人に気づかれちゃう」 しぃと指を口に当てて注意してる。 「だぁれ?」 やっと出た言葉がこれだった。 「ボク?僕はケイだよ」 「ケイくん?」 「そうだよ。よろしくね、えっと」 「しゅりだよ」 「よろしくね、しゅりちゃん」 それが私とケイくんとの出会いだった。 「しゅりちゃんは何しに来たの?」 「しゅりはねぇ大冒険しに来たんだよ」 胸を張って答える。 「でも此処には僕しか居ないんだよ。だぁれも居ない!」 「ココはケイくんのお家?」 「そうだよ。僕とお父さんとお母さんのお家」 「へぇー」 それから朱里とケイは家の中を探検したりいつもはできない事をした。 朱里は、満足すると同時に親が恋しくなってきた。 「ケイくん。しゅり、おうちに帰るね」 「そっかぁ」 「バイバイ」 「また遊びに来てね」 「うんまた来るよ」 「朱里、こんな時間までどこに行ってたの!」 家に帰るなりお母さんに抱きつかれた。 「しゅりね!大冒険して来たの。空き家に行って来たんだぁ」 「朱里、空き家に行って来たの?」 尋ねたのはお姉ちゃんだ 「うん」 「あの空き家のお化けの噂、本当だったらしいよ。その家の子供だった男の子のお化けが住んでるんだって」 「へぇー」 「お化け、居なかったの?」 笑いながら聞いてくるお姉ちゃんに向かって 「うん!ケイくんしか居なかったよ」 そう答えた瞬間、朱里以外の家族は全員固まった
一ヶ月と1日後
サナは焦っていた。 どこを探してもフォルトが見つからないからだ。 ニーナのためだと思っても、闇雲に探し回って早3日。 大きくて綺麗な街だとはしゃいでいたのも最初の1日だけである。 今となってはこの大きさが恨めしい。 「はぁ…」 思わずため息を吐いた時 「おねーちゃんどーしたの?」 まだ幼い声が聞こえて前を向くと、いつだったかオークに教われているところを助けた家族の子供である少女が、サナの顔を覗き込んできた。 ニーナの治癒が良いからか血だらけだった時とは程遠く、元気な姿を見てサナは胸を撫で下ろした。 「どっかいたいの?だいじょうぶ?」 こっちを心配してくれる少女の顔は愛らしい。 「大丈夫だよ。人を探してるのに見つからないから困ってたの」 「ふーん」 「えっと…一人?パパとママは?」 今更ながら名前を聞いていなかった事に気づく 「メイザ、パパもママもおかいもの行ってるからまってるの!えらいでしょ」 名前はメイザらしい。 こんなに小さな子供を待たせるのもどうかと思ったが、今だけはサナに元気をくれた出会いに感謝だ。 「あっパパ、ママ!」 メイザが手を振る先にはあの時の夫婦が居る。 「こんにちは、久しぶりですね」 「えっサナさん?あの時は本当にありがとうございます」 「ご無沙汰しています。メイザもこんなに元気になって…本当に感謝しかないです!」 感謝されて居心地が悪い 「あれ?そーいえばもう一人のおねーちゃんはいないの?」 「もう一人のお姉ちゃんは、怪我した子を治しに行ってるからいないよ」 「そっかー」 僧侶は魔法使いよりも希少なため、ケガを治してあげたりするとお金がたくさん入ってくる。 私達のお金の3分の2は、ニーナが稼いでいる。 「サナさんは何故ここに?」 お父さんの方から質問された。 「人を探しているんです。フォルトさんって聞いた事ありますか?」 「フォルトくんのことですか?」 えっ? 「助けていただいた時に会いに行った親戚の息子がフォルトくんだったんですよ。それで襲われたと言ったらたまたま実家に帰っていたフォルトくんが護衛をしてくれて…」 「どこにいるか教えてください!おねがしいます」 勢いが凄かったのか引かれた。 「分かってるよ。どうせニーナから俺が誰なのか聞いたんだろ」 宿屋から出て来たフォルトはため息をつく。 「で、俺にニーナに会えって言いに来たんだろ」 「よく分かりましたね」 「だけど…」 「悪い、ニーナには会えない」 「どうしてですか?」 サナには分からなかった。 もしサナが死んだと思っていた友達が生きていると知ったら会いたいに決まっているからだ。 「俺はニーナを見捨てたんだよ。」 「え?」 「俺はあの日、サナ達の村に行ってたんだ。もう用事は終わったから村を出た後だったけどな」 フォルトの表情は苦しそうだった。 「ピンチだって知ってたのに。助けに行かなかったし、助けも呼ばなかった。それだけじゃなくて」 一泊間を空けてから 「その後、ニーナの所へ行こうともしなかった」 「それだけですか?」 サナの感想はそれだけだった。 「俺はニーナが生きていることを知ってた。俺の村でも大騒ぎだったらか生き残った二人の子供のうち、一人がニーナがだって知ってた。知ってた上で生きていたことを知らないふりをした」 「何で…」 「会いにいく自信がなかったからだよ」 長い長い沈黙を破ったのはサナだった。 「サナは嬉しいですよ。どれだけ時間が経っていても、会いに来てくれるのなら」 「…」 「サナなら喜びます。大好きな人が会いに来てくれたら」 「そう…か?」 「はい。ナナ姉ちゃんはそんな事でいつまでも怒っている人ではないです」 しばらくの沈黙の末、フォルトは根負けしたように 「分かったよ、会いに行けばいいんだろ。」 と、投げやりに言い放った。 「よかったです!ですがサナは用事があるのでこれで失礼します。そろそろお仕事も終わっている頃だと思うのでこの宿屋に行ってください」 「おい嘘だろ」 ペロリと舌を出したサナはスキップをしながらフォルトに背を向けて駆けていく。 後ろからは 「お前本当にアンジュさんにそっくりだな」 という呆れたような声が聞こえた気がした。 その後のことはサナは知らない。 だけどバイパー討伐から暗かったニーナの表情は明るくなった。 そして 「ねぇサナ、北の果てまでフォルトも一緒に行ってもいい?」 北の果てを目指す旅にフォルトも同行する事になった瞬間だった。
ガラクタ屋①
「裏路裏に不思議なお店があるって知ってる?」 「知らなーい」 「本当に困っている人に必要なものがあるんだって!」 「へぇー今度行ってみたいね!」 そんな話を立ち聞きした。 私には友達が居ない。 友達をつくる道具があるかもしれない。 クラスでうまくいくようになるかもしれない。 そんな藁にもすがる思いで、私は裏路裏に向かった。 結果は…心の中ではわかっていた事だった。 そんなお店があったら誰も苦労なんかしない。 私はその場に座り込んで膝を抱えた。 そうでもしないと泣き出しそうだったから。 空が茜色に染まってきた。 帰ろうかと思い、重い腰を上げたそのとき 突然何も無かった場所に古ぼけたお店が建っていたのだ。 「は?」 思わず腑抜けた声を出してしまったけど驚きでそれどころではない。 何度目を擦ってもお店は見えているし、幻ではないはずだ。 私が驚きすぎて硬直していると、店のドアが開きそこから恐らく同い年くらいのふわふわの髪をした男の子が出て来た。 「あっお客さんです?このお店見えますかー」 語尾を伸ばし、ブンブンと手を振る そんな様子からやっぱり年下なのかもしれないと余計な事を考えてしまう。 人間パニックになるとどうでもいい事を考えると何かで読んだ気がするが恐らくこの事だろう。 「あれぇ見えてないのかな?人間のお客さんは久しぶりだったのにな」 ぶつぶつ呟きながら店の中に戻ろうとする男の子を見て、私はここに来た目的を思い出す。 「ちょっと待って!」 「わぁやっぱりお客さんだったんですね!どうぞどうぞ僕のお店へ」 ニコニコしながら振り向いてドアを開けてくれた。 「最近人間界からのお客さんが少なくてですね、久しぶりに会いたいなーって思ってた所だったんですよ」 嬉しそうな男の子に案内されるがまま店の奥に入って行く。 「はい!それでは好きに見ていってくださいねー」 どんな物なのかと商品棚を見てみると がらくた? としか言えないような商品が並んでいた。 例えば古びたメガネや、壊れてボキボキの傘。 底が抜けた鍋まで誰が買うんだというような商品ばかりだ。 驚いている私に男の子はケラケラ笑いながら 「やっぱり皆さん驚かれるんですよねー必要なものがあるっていう、噂を聞いて来てみればこのガラクタの山!」 「必要なものがあるって事は本当ですか?」 だんだん不安になってきた私が聞く。 「それは本当です。でも100%効果があると言われると保証はできませんよ。あくまでも神社のお守りや、占師が占ったラッキーアイテムよりも効果があるくらいですからねー」 「そう…ですか」 あからさまに落ち込んだ様子の私を見て気の毒になったのか 「あーでもこの中から探すのはめんどくさいと思うので、この水晶に手を当ててください。そうしたら必要なものが分かるんですよ」 確かにちょっと面倒くさそうだと思っていた私は気持ちを切り替えて水晶に手を当てる。 『えっ?』 私と男の子の声が重なった。 水晶に映ったのはガラクタなんかではなくこのお店だったからだ。 驚いて固まっていると店のドアが開いた音がした。 「あっすいません他のお客さんが来たので案内して来ます。商品を見て待っていてください」 そう言って男の子はドアの方へ走っていったかと思うと、明らかに日本人…地球人でも無さそうな女の人を連れて戻って来た。 異世界風の服を着て、背中に杖を背負っている綺麗な人だ。 「居なくなった友達を探す道具が欲しいんですけど…えっ?」 男の子に聞いている途中で、店の商品に気づいたようで驚いている。 「ねぇ君?ここは困っている人に必要なものを与えてくれるお店で合ってるよね?」 さっきの私と同じような質問をした。 「えっとまず、そちらのお客さんもそうですけどー僕のことは店長と呼んでください。一応ここで一番偉いんで!」 えへんと胸を叩いて言った後にさっきの私と同じような説明をする。 その後水晶に手を当てるまでの動作は同じ。 だが女の人の水晶には見るからに古そうな望遠鏡が映った。 「あーこの望遠鏡。どこやったっけなぁ確かあっち?の方です」 見るからに自信がなさそうな声で指を指したのはもちろん店長だ。 「ちょっと待って。なんでそんなに自信ないの?」 女の人がにっこりと笑いながら問う。 笑顔が怖いとはまさにこのことだ 「いやぁ物の管理が苦手なんですよー自力で探してください」 ちゃんと管理がされているのはこの部屋だけらしい。 ちょっと覗いただけでも入れない事が分かる部屋ばかりだった。 「そんな…友達が遭難していまっているのに」 涙目な女の人を黙って見ていられる訳もなく… 「手伝いますよ!一緒に頑張りましょう」 そこからは、大変だった記憶しかない。 望遠鏡だけでもいくつも店内にある上にごちゃごちゃしていてどこにあるか分からない状態だった。 嫌がる店長も探すのに参加し、やっと見つかった頃には1時間が経っていた。 「ありがとうございます」 感謝する女の人を見送り、店内には私と店長だけが残った。 「店長。私水晶に映ったことの意味がわかった気がします。私は久しぶりにとても楽しかったです。私に必要な物は『友達』だったんですよ」 「そうですか…僕もちょうど、あの部屋を片付ける人が欲しいなーと思ってた所だったんですよーよかったら一週間に一回、ここに来てくれないですか?」 私の返事は決まってる 「もちろんです!」 私がガラクタ屋に通うことになった始まりである