実々
15 件の小説努力の天才
努力の天才 そう、親からも先生からも友達からも言われ続けられていた。 自分でも思う 自分は、頑張れる子なんだと 今日は魔法試験の実技と、知識テストの日 たくさんの時間をこのテストだけに使っていたから自信はある。 だって私は『努力の天才』だから テストから3日後 今日は結果発表の日だ。 魔法学校高等部に入ってから初めてのテストだったから他の子がどれだけ賢いのかは分からないけど、中等部の時は1位を保っていた私は相当な自信で結果を見た。 「えっ?」 トップ5にギリギリ滑り込んだ4位。 200人以上いる中でのこの成績は、私以外の人から見たら快挙だろう。 「デリアは何位だったの?まぁトップ3には入ってるよね〜中等部の時は1位だったし、なんたってデリアは『努力の天才』だし」 そう言った友達は私の手の中にある、結果を覗き込み、そこから気まずそうな表情をした。 「まぁ、次頑張って!」 よく分からない励ましをされたが、全く納得ができない。 私がずっと固まっていると遠くから 「やったあー1位だぁー」 と言う声が聞こえてきた。 その声を聞いて私は固まった。 中等部の時は同じクラスであったいつもヘラヘラと笑ってばかりで授業も寝ていた絵に描いたような問題児、メイだったからだ。 なんで?なんで? メイはもしかしたら地頭が良かったのかもしれない。 高等部では同じクラスにならなかったから授業態度も分からないから真面目になったのかもしれない。 そんな考えがいくつも浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す。 おかしい 『努力に勝る天才なし』 よく言われているのに これだけ努力した私がメイに負けるのはおかしい。 分かった、ズルをしたんだ そうでなきゃ説明出来ない 私がメイに負ける理由なんて 我慢が出来なくなった私はメイのところに直接行って聞いてみた。 「どんなズルしたの?」 それを聞いたメイは不思議そうな顔をして 「やだなぁデリアちゃん。ズルなんかする訳ないじゃん」 私が嫌いだったヘラヘラとした笑みを浮かべて言った。 「あっ、でもね今回のテストは結構勉強頑張ったんだよね!」 そんな訳ないじゃん この言葉が外に出たかは分からない。 ただ、メイが不思議そうな表情をしていたから言葉にしていたんだろう。 「私以上に努力できる人なんか居ない」 そう言って私はメイに背を向けて走った。 私は『努力の天才』。 そう自分に言い聞かせて その日から私はメイに負け続けた。 実技も知識も何もかも 小テストでも、何も勝てなくなってしまった。 悔しくて悔しくて家に帰ってたくさん勉強をした。 魔法だって1日20回は放った。 メイに勝てるようにたくさんたくさん『努力』した。 『努力の天才』 そう私を呼んでくれる人は居なくなってしまった。 参考書を買いに書店に行った帰り道、広場でメイを見かけた。 遊んでるくせに そう思ったのも束の間。 メイは遊んでなんかいないことに気づいた。 魔法を放っていた 何回も何回も繰り返し 空を飛んで火を出して、水を出して花を咲かせて 私がしているよりも早く上手く、そしてたくさんの数を放っていた。 どのくらいメイを見ていたかは分からない。 ひと段落着いたのか休憩に入ったらしい所で私はメイに話しかけた。 「すごいね」 ただそれだけ 「あっデリアちゃん!見てたの?恥ずかしいなぁ…もっと早く声、かけてよぉ」 キツく当たったはずなのにメイは気にせず話してくれる。 私は馬鹿だった メイは私よりもずっと頑張って1位を取っていた 魔法を見ていたらよく分かった あれだけの物は私では出せない メイは、私よりも『努力』していた。 ただそれだけの話だったのに 「ごめん、ごめんねメイ」 何に対して謝られたのか分かっているのか 「もちろん!ぜんぜん大丈夫だよぉ」 と、ヘラヘラ笑って返された 私も『努力の天才』ともてはやされて調子に乗っていた。 本当の『努力の天才』は見えない所でも努力して、巻き返そうと頑張ったメイ そう分かって私の醜い嫉妬心は綺麗さっぱり無くなった
一週間経った今
昨日野宿をした森の中でサナは目を覚ました。 北の果てを目指し始めて一週間。 旅路は順調 頑張れば1年で着くかもしれない。 微かに残る睡魔に抗いながら、起き上がる。 そしていつも通り横で寝ているニーナを起こし、まだ寝ぼけてるニーナを横目にとっとと朝ごはん作りに取り掛かる。 食料を入れている鞄を開くとそこには… 「えっ?ほとんどない」 「忘れたの?次の街で買いたそうって言ってたのにサナがバテちゃったから、辿り着かなかったのに」 呆れたような表情でニーナが後ろから声をかけてくる。 「北の果てを目指すって言ってたから前よりも体力付いてると思ったのに」 「……」何も言えない その代わり頬を膨らませそっぽを向く。 「あーあーサナが拗ねちゃった。悪かったから、早く街に向かおう。余計にお腹すいちゃう」 「…わかった」 そして二人は仲良く並んで森の中を歩き出した。 「サナは運動音痴だったもんね」 本日2回目のニーナの呆れたような声を聞きながら、サナは残り少ない食料を食べる。 「……」今回も何も言えない。 サナは魔法使いとしての素質は抜群だが、勉強と運動は平均以下なのだ。 ステータスを魔法に全振りした人間なのである。 「ナっナナ姉ちゃんも食べる?」 「もらう」 ため息を吐きつつ目の前にあったリンゴに齧り付いている。 「どうしよう」 冒頭の前言撤回 全く順調ではない旅路にニーナはため息をついた。 「たっ助けてくれぇ」 そんな時だった。 木の影で休憩していた二人の元に、男性と女性。 そして男性に抱かれた血だらけの子供が駆け寄って来たのは 奥からは魔物の雄叫びが聞こえた。 「何があったの?」 先に我に帰り、鋭い声で恐らく親子に尋ねたのはニーナだ。 「もっ森を抜けた先にある街に親戚が住んでいるから尋ねようとしたら、魔物に…オーク遭遇したんだ」 「護衛は?」 「お金がなくて……」 「はぁ?」 滅多に怒らないニーナが怒っていた。 親子と自分を無意識のうちに重ねてしまっていたからだろう。 「サナッボーッとしてないで早く寝袋ひいて!それが終わったら火をつけて!あなたたちは止血するから布を取って」 サナも重ねていた。 この親子と自分を 魔物・家族・血 あの日のことを思い出す要素がありすぎる。 「サナ?」 あの日の出来事は鮮明に思い出せる 「サナ!サナ!」 苦しい…お母さん バシッ、パーン 「ふぇ?」 「しっかりしなさい」 叩かれたのだ…ニーナに 「この場で一番強いのは誰だと思ってるの?私がこの子の命を救うように、サナは自分ができる精一杯をやりなさい」 そう言ってすっかり準備ができた寝袋の上に子供を乗っけると呪文を暗唱して、傷を治していく。 「グオォォォ」 魔物の声が近くなってくる 「ありがとうナナ姉ちゃん」 そう、ニーナに伝えるとサナはみんなに背を向けて魔物の方へと走って行った。 「お〜大量だね」 サナがオークを全滅させアイテム袋に死体を入れて帰って来た頃には子供の危機は脱したらしく、ニーナは嬉しそうに話しかけて来た。 さっきまで怒っていたのが嘘みたいに 「本当にありがとうございました」 「ありがとーおねーちゃん」 数時間もしたら子供も走り回れるようになるくらい回復した。 親子から感謝されて食料を分けてもらったのは嬉しい誤算だ 森にいた魔物はサナが一掃したのでもう魔物が出る心配はない。 親子は最後まで感謝しながら去って行った。 「大事な話をしよう」 親子が去って行ってからすぐだった ニーナにそう切り出された 私は木の影に座り直した 「サナはまだ、あの日のことを克服してない」 「そうかも…しれない」 あの日というのがいつのことなのかは言われなくても分かる 「だから最悪子供が死んでいた場面で、最悪みんなオークにやられてたかもしれない場面で、動けなくなるくらいなら私は……」 ニーナも言うのは辛いのか言葉を切りつつも 「北の果てを目指さなくてもいいと思う」 私が泣いてもいい場面ではない 分かってるのに… 「あれ?」 ポロポロ目から雫が落ちて来て、顔がびちょびちょになる。 そんな私を見てニーナは優しく頭を撫でてくれる お母さんみたいに… 「サナは、北の果てに行きたいの?」 私が落ち着いた頃、そう聞かれた。 「わかんない」 わかんない 私はどうしたいんだろう 今日で自信を失って、 またうずくまってしまいそうで怖くて、 ニーナを傷つけるのも嫌で、 でもお母さんの願いを叶えたかった 「ナナ姉ちゃんはどう思う?」 結局決断を放り投げた 「私は……」 いつものニコニコした笑顔で 「私もわかんないや」 「ふぇ?」 少子抜けた 厳しい事を言われる覚悟だったから 「正解はないんじゃないかな?だから、せっかく此処まで来たし…」 「行ってみてもいいと思う。サナにその覚悟があるなら」 また、ボロボロ涙を流した ニーナは私の頭を撫でながら 「でも、街や村に行くと思い出しちゃうからわざとゆっくり歩くのは無しね!」 その時私は分かった 「ナナ姉ちゃんには、隠し事できないなぁ」 「当たり前だよ」 そして立ち上がって 「だってサナのお姉ちゃんだからね」 と笑った
国が滅ぶまで
この国は魔法でできている ーーそう言って過言ではない だからその国は滅んだ 一人の身勝手な魔女によって 私の住んでいる国は、魔法に依存している。 そんなの国民全員が分かっているが誰も止められない。 だって楽だから 移動するのも呪文を唱えるだけで完了。 野菜や魚も杖を振れば食卓に並ぶ。 一日一歩も動かない日だってある。 だからこそ私は思った 『この国から魔法を消したら面白いんじゃないか』 その日、その国から魔法は消えた。 一人の魔女の思いつきで魔法は消えた。 そして人々は死んでいった。 その魔女は想像力が足りなかったのだ 長生きをするために歳をとるのを遅くしている魔女もいた。 食べ物も魔法が無くなったら何をすれば良いか分からず一つ残らず枯れていった。 生きていくための必要な食料も無くなり、空腹に苦しむ人々は自殺をし始めた。 国は滅んだ だが国が無くなる瞬間まで魔女は笑っていた。 魔法を消した本人ならば自分だけに魔法を残す事だってできたからだ。 魔女だって望まない結末だったはずなのに一番に、上に立ちたかった魔女は笑った 高らかに
自己紹介
今更ながら自己紹介しまーす 名前は実々(みみ)でーす 本名と、似ているような似ていないような… 小学校を卒業したばかりの中学1女子です 部活は陸上部にしました〜 疲れてきてるので投稿頻度落ちそうです… 漫画、アニメ、小説など全部大好きオタクです! オススメがあったらぜひコメント欄で教えてください ちなみに私はファンタジーや恋愛が好きです! 好きな小説…その日、朱音は空を飛んだ 魔女の旅々 死亡遊戯で飯を食う などなど 好きな漫画…薬屋のひとりごと 本好きの下剋上(アニメにも入りますねw) 好きなアニメ…Re:ゼロから始める異世界生活 葬送のフリーレン 将来の夢は、学校の先生!(全然小説関係ないですけど‥)この夢を目指し始めた理由も、実話をもとに投稿しています!タイトルは『夢をくれた。』です!見てみてください 最後まで読んでくれてありがとうございます〜
第2話 8年後のお話
「サナ、お誕生日おめでとう」 「ありがとう、ナナ姉ちゃん」 村が襲われてから早8年。 ナナ姉ちゃんは、16歳。 私は14歳と大きくすくすく成長した。 「ねぇナナ姉ちゃん。私もう14歳になったよ。だから…‥」 良い加減私も、あの日の出来事を過去にしないといけないと思った。 時は8年前に戻り… 「サナ、ニーナ。顔を見せて、」 「お母さん!」 「おばさん…」 私達が村へ戻って来た時、まだ私のお母さんだけは息をしていた。 「ねぇサナ、ニーナ。あなた達に本当はこんなこと頼みたく無いのだけれど、北の果てに行ってくれない?」 「えっ?」 「お母さんね、お友達と約束したの。」 『絶対に幸せにしてあげるって』 そう言った途端お母さんは、意識を手放しそのまま目覚めなくなった。 「ナナ姉ちゃんお願い!サナ14歳だよ。お母さんとの約束を果たしたいのだから…」 「もう、分かってたよ。サナは行きたいって」 「じゃあ!」 「でもやっぱり私だって大好きなサナにいなくなってほしくない」 私は年甲斐もなくほっぺたをプクりと膨らませ、不服を訴える。 「絶対に行くの!今行かないと後悔しちゃう。大きくなったら、もうお母さんを思い出すのが怖くなっちゃうと思うから」 「だからお願い!」 「サナの気持ちは分かったよ。でも人の話は最後までちゃんと聞いてね」 「行っても良いよ。でも私も一緒について行く。これだけは譲れない」 そう言って私の頭をわしゃわしゃと撫でまわしたのだった。 そしてニーナは… 「私もお母さんからの頼まれごとを考えると、やっぱり行かせない方が良いんだけど…」 と意味深な発言を溢したのだった。 サナはお母さんの最後の願いを叶えられることの嬉しさで、ニーナの発言には気づけなかった。 * * * サナだって、北の果てを目指すことに不安がないわけじゃ無い。 ニーナと暮らしている今の生活だって楽しい。 それに北の果てには辿り着けたものがいない。 まだ生きていたいとも思い、考え始めると今でも決意が鈍りそうだ。 でも 『絶対に幸せにしてあげるって』 気づいたらそう、小さく呟いていた。 * * * サナの誕生日を祝い、自分の部屋に戻ったニーナはため息をついた。 「あーもう。やっぱり行ってほしく無いなぁ」 ニーナは攻撃手段の少ない僧侶である。 簡単な魔法くらいなら問題なく出せるが、素質が高かったのがこれしかなかった為、消去法で選んだのだがやってみると面白かった。 怪我を治すのを面白いと言っても良いのかは分からないが、そのおかげでお金は稼げている。 対して、親の素質を受け継いだのかサナは火属性の魔法使いだ。 強さを測ってもどちらが強いのかは明確だが… 「サナは私が絶対守るからね」 * * * 「やっぱりそのフード、被ってくの?」 ニーナが微妙そうな表情で、サナを見る。 サナが今着ているのは母親の肩身であり、冒険者として魔物を倒すときなどに着て行っていたローブである。 ニーナがなぜ反対するのかはサナには分からないが、母の願いを叶えるために旅立つサナにとって着て行かない選択肢はない。 「ナナ姉ちゃんに、なんと言われようとも着て行くもーん」 と、膨れたように返事をしつつも待ちきれないのかスキップしながら玄関に向かった。 「行って来ます『行ってくるね』」 そう言って二人は歩き出した。
夢をくれた。
「卒業証書授与」 「6年1組、尾崎香奈(おざき かな)」 「はいっ」 いつも使っている体育館も、いつも挨拶をしている校長先生も、今日は違った雰囲気だ。 卒業証書を貰った後、卒業生達は自分の将来の夢を話す。 これが我が校の伝統だ。 「私の将来の夢は薬剤師になることです。困ってる人や悩んでる人を助けたいです…」 「私の夢は、作家になることです…」 皆んなが順に言っていってさぁ次は私の番だ 「私の将来の夢は学校の先生になることです!」 私が先生になろうと思ったのはなんとなくではなく、ちゃんとした理由がある。 私の大好きな人が私に夢をくれた 遡ること5年前 私はまだ小学1年生だった。 入学して、すぐにあった運動会で初めて会ったその人とは最初は緊張して何も喋れなかった。 「えっと、香奈ちゃんだよね?ほら授業遅れちゃうよ。早く教室戻ろっ」 「……」 「おーい?」 びっくりした。多分小学6年生だろう。 一年生にしては小柄な私にとって、大きい人は恐怖の対象だった。 固まってしまっている私に困ったような表情をした後 「ほら、練習で疲れちゃったかもしれないけどこの後もしっかり授業だからね」 手をぎゅっと握って1年教室までついて来てくれた。 全くの的外れ だけどそんなお姉ちゃんが暖かくて、一緒にいたちょっとの時間でも大好きになっていた。 「里菜(りな)さんありがとう。ほら、香奈さんもちゃんとお礼を言いなさい」 「あっありがとう」 「どういたしまして!」 そう言ってにっこり笑って、6年教室まで歩いて行った。 キーンコーンカーンコーン チャイムが鳴る。 お姉ちゃんが、歩いて行ってすぐのことだった。 「ほら香奈さん里菜さん授業遅れちゃったよ。次からは運動会の練習で疲れててもすぐに帰って来てね」 担任の先生の小言も気にならないくらい、私の心はポカポカ暖かかった。 私は、最近お母さんに構ってもらえない。 小さな妹が出来たからだ。 だから一人で寝ることも多くなったし手を握ってもらったのは久しぶりで嬉しくって、里菜ちゃんと言う名前をバッチリ覚えてしまった。 次の日の運動会の練習で、私と里菜ちゃんはおんなじチームだという事が分かった。 運動会のチームでの初めての練習で、昨日緊張してできなかった分いっぱいおしゃべりしようと決めて練習場所に向かうと 「あっ香奈ちゃん、同じチームなの?頑張ろうね〜」 「うん…里菜ちゃんは、運動会楽しみ?」 「あっ名前、覚えてくれたんだ!ありがとう」 「運動会楽しみだよ。小学校の運動会は今年で最後だからねー」 なんでかわからないけどやっぱり話していると、楽しくて暖かくなる。 思わずぎゅっと手を握ると、びっくりしたようだけど嬉しそうに笑ってくれた。 その日から、里菜ちゃんに会うたびに飛び出してお話をするようになった。 里菜ちゃんも、最初は驚いていたみたいだけど 「妹ができたみたい」 と喜んでいた。 そんな私達を見て、周りは 「里菜ちゃんと香奈ちゃん、名前もそっくりだし本物の姉妹みたい!」 と笑ってくれた。 楽しかった時間も終わりはすぐ訪れた。 「令和⚪︎年度、⚪︎⚪︎小学校卒業式」 里菜ちゃんが卒業するからだ。 「私の将来の夢は、学校の先生になることです。」 たくさんの人が言う中でもやっぱり里菜ちゃんの声はよく聞こえる。 「先生になって、子供達が成長するのを一番近くで見ていたいです。」 卒業式が終わった 「ウッウッうわぁーーん」 「ほら香奈さん良い加減泣き止みなさい。里菜さんが、困ってるでしょ」 「ウゥゥー」 「香奈ちゃんあのね、私先生になりたいの。」 「ッゔん」 「香奈ちゃんのおかげなんだ。先生になりたいって思ったの。香奈ちゃんが隣に居てくれて、それが楽しかったから先生になりたいなって思ったの。」 香奈はもう泣かない 「だから良かったら一緒に先生になろう!そんでその時また会おうね」 「うん」 涙を拭いて、笑顔で里菜ちゃんに返事をした。 ただそれだけの話 そして、また5年後に戻り… 「私の将来の夢は学校の先生になることです!そして…大好きな里菜ちゃんと一緒に絶対に先生になります!」 皆んなが真面目なことを言っていたから、私の原稿とはかけ離れた言葉に皆んながびっくりしている。 そんなみんなに向かって思いっきり笑って、私は卒業した。 あの時の自分に、温もりをくれたお姉ちゃんに憧れて、また会いたくて私は先生になる。
もう一度、親友へ
「ずっとずっと、友達だよ!」 親友の雫が、涙を流しながらも抱きついてくる。 私が転校する日 5年前の夢を久しぶりに見た気がする。 私と雫は、大親友だった。 だけど5年前私が転校した事をきっかけに疎遠になってしまった。 最初の頃は手紙を送り合ったし、親のスマホを借りて電話だってした。 だけどだんだん、何もしなくなっていって… 気づけば中学生になっていた。 「ねぇ今日ね遠足に行ったの」 電話越しに聞こえる雫の声。 新しい家に引っ越してすぐのこと。 私達はいつものように話していた 私よりもちょっとだけ高い雫の声。 久しぶりに声が聞きたくなって、久しぶりに雫に会いたくなった。 私は雫に会いに行た。 ピーンポーン 緊張して今にも倒れそうな私の心情とは裏腹に能天気な音が響き渡る。 「はーい」 やっと会えた 「えーっとぉ、誰ですか?」 雫が声を発した瞬間、フワフワしていた気持ちが一気に凍りついた。 「莉子だよ。東堂莉子。」 「えーっと…東堂さん?」 「覚えてないの?」 そう言うのがやっとだった。 まぁそうだよね。 今まで私も会いに来なかったもん 5年間も会ってなかったもん 「雫、本当に覚えてないの?小学校の時仲良しだった、莉子ちゃんよ!」 「えーごめんね莉子ちゃん…」 私達の玄関でのやり取りを聞いて、雫ちゃんママが家の中に入れてくれた。 雫ちゃんママは私のことを覚えてくれてたみたいだ。 「うーんうーん?」 本当に思い出せないらしい。 さっきからしきりに唸っている雫は、頭を抱えている。 「莉子ちゃん、ちょっといい?」 雫ちゃんママに声をかけられて、廊下に出た。 「莉子ちゃん、雫はね…少し前に事故に遭っちゃって、昔のことを忘れちゃってるの。記憶喪失って聞いたことある?」 「えっ」 ショックだった。 「お医者さんからは忘れた記憶の中で行った場所とか、あったことを再現してみると思い出すかもって言われて….だから、雫の記憶を思い出す手助けをしてくれない?」 私の返事は決まっている。 「はい」 私はそれから毎週のように雫に会いに行った。 そして、小学校に行ったり(事情を話すと中に入れてくれた)ショッピングモールへ行ったり、毎日が楽しかった。 「ねぇ雫、次公園に行こっ」 「…莉子ちゃん。無理してない?」 いつものように会いに来た時、急にそう聞かれた。 「どういうこと?」 「莉子ちゃん、お母さんから記憶のこと聞かされたんでしょ。だから、無理して来てくれてるのかなって。申し訳なくなっちゃった」 そう言い切って、私のなんとも言えない表情に慌てたのか 「ナシナシ、今の忘れて」 と、取り繕うようにして笑った 「ねぇ雫。私もごめんなさい」 「?」 「私ね、転校先であんまり上手くいかなくって、情けないとこ見せたくなかったから雫に会いに来なかったの。」 「莉子ちゃん?」 「だから記憶を戻したいって建前で雫に会いに来てた。」 「…」 「私は、雫の記憶が戻んなくても良いなって思っちゃってた。」 「だから、本当にごめんなさい。そして…私ともう一度友達になってください。」 「ねぇ莉子ちゃん。もしかして、昔同じようなやり取りやった?」 「えっもしかして…」 「もちろん!莉子はずっとずーっと友達だよ!」
ぬいぐるみ
「ねぇマリア、今日はねーこんな事があったの!」 『ふーんよかったねぇ』 「それでね!笑っちゃったの〜それからそれから」 『分かったよ』 ボクは毎日女の子の話を聞いている。 話を聞くのは楽しいし、ボクと話しているときは女の子は笑顔になる。 でも一度、聞いた事がある 『他の人と遊んだりしないの?』 と。 でもその時は 「私にはマリアしか居ないから。」 と悲しそうに言っていた そう女の子にはボクしか居ないんだ。 両親が事故で死んでしまって、悲しさのあまり “ぬいぐるみに話しかけるようになった”女の子には 幼稚園に通っていてもそこに居るネコのぬいぐるみにずっと話しかけている。 おかしな子、と呼ばれている。 でもボクは気にしない。 だってボクにも 女の子しか居ないんだから。 ボロボロで捨てられそうになっていたボクを救ってくれたのが女の子だったから。 恩返しがしたいんだ たとえ周りからどう思われようとも。 「それでねそれでね!」 『楽しそうだね』 女の子はショックのあまり、狂ってしまい一人じゃない事を証明するためにぬいぐるみを必要とした ぬいぐるみは捨てられそうになっていた所を女の子に救われ、自分はまだ役に立つ事を証明するために女の子を必要とした お互いがお互いを依存していた 女の子が自分でこれはおかしいと気づける日は来るのだろうか
終わりの印を打つために 第一話
「グオォォォ」 「いゃぁぁぁ」 「ギャァァ」 目を開ければ昨日まで笑い合っていた仲間が倒れている。 耳をすませば誰かの叫び声が聞こえる。 空気を吸い込めば血の匂いが広がる。 そんな地獄みたいな空間に少女は一人、立ち尽くしていた。 「サナァー…よかった生きてる。」 サナ、それが少女の名前だ。 「ナナ姉ちゃん!!」 ナナ姉ちゃんと呼ばれたサナよりも3歳年上の女の子が、ニーナだ。 血は繋がっていないが姉として慕っているニーナと再会できたことで、サナは少し安堵する。 だが、その安心も束の間 「グオォォォ」 1匹のゴブリンが棍棒を振り回しながらサナとニーナを襲う。 「うぃ、ウィング」 恐怖で動けないサナに代わってニーナが習ったばかりの風魔法を使って撃退を試みる。 しかし威力が弱くて、左手を傷つてた程度だ。 「ウィング、ウィング!」 何度か撃っても変わらない。 ゴブリンは止まらない。 「ヒャァァァ」 ニーナの腕から血が吹き出した。 死ぬ サナもニーナも覚悟した瞬間。 「フレイム!二人とも大丈夫?」 サナの母親であるアンジュだった。 アンジュはA級の冒険者だ。 幼いサナにはその凄さがいまいち理解出来なかったが、遠い遠い北の果てを目指している…というの話を聞いたことがある。 そんなアンジュにとってはゴブリンなどのEランクの魔物は簡単に倒せる。 ゴブリンが崩れ落ちるように倒れた瞬間、サナはお母さんに駆け寄った。もちろんニーナも走る。 もう離れたくない。 そう思ったサナの期待は、裏切られる。 「サナ、ニーナ逃げなさい。」 「エッ」 どちらが言ったのかも分からない。 訳が分からなかった。 「この村から出て、応援を呼んできなさい。かなり押されているのよ…悔しいけれど。」 「…」 「ニーナ、傷は自分で止められるわよね。僧侶としての才があるもの。」 「嫌だぁ。もう離れたくないお母さんと一緒にいるの!ねぇ嫌っ嫌っ」 泣きじゃくるサナに困ったような笑みを浮かべるアンジュ。 「っサナ、行くよ!」 涙を流しながらもニーナはサナの腕を取って走り出す。 サナにも分かっていた。 負けちゃいそうな、事くらい だから、アンジュはサナとニーナを逃した。 二人は泣きながら村を出て行く 走って走って、別の村を探す。 助けを呼ぶために。 他の村から応援を呼んできた時にはもう、3日が経っていた。 村人達は誰一人例外なく全員倒れていた。
終わりの印を打つために プロローグ
遠い遠い北の果て みんなが幸せになれる魔法がある だけど気をつけて 遠い遠い北の果て 辿り着けなかった人がたくさんいるから 古い古い言い伝え。 現代でも信じる人は、北に向かう 遠い遠い北の果て 誰かが来るのを待っている 辿り着いた者は一人も居ないから これからは分からないけど