山本 煌
4 件の小説山本 煌
初めまして。 まずは小説を読んでくださりありがとうございます! 完全な素人なので読みにくい部分もあると思いますが、暖かい目で読んでいただけると嬉しいです。 ファンタジー系の小説を書きたいと思ったんですが、まずは私がどんな人物か知ってもらいたいと思い、自分の人生を元にしたフィクションのミステリー小説を連載していきます。 応援とフォローよろしくお願いいたします🙏 四十五からスタートなので間違えないようにお願いいたします! X⇒@YAMAMOTOKOa3
【45】 4話 腕に刻まれた数字
桜がまう遊歩道、新しくキラキラ輝く赤や青のランドセル。 俺は小学生になった。 まさか自分がもう一度ランドセルを背負うとは… 恥ずかしいようなむず痒いような気持ちになった。 中身は26歳だぞ… 緊張している子、親と離れて寂しいのか不安なのかソワソワしている子、人の目等気にせず騒いでいる子。 全員同級生だが、今の俺の目線からみえるのは可愛い子供達だ。 俺「娘が生きていたら小学生姿もこんな感じだったんだろうか」 胸が苦しくなり、涙が零れそうになるのを必死に抑え子供とは思えない立派な返事をして席を立つ。 教室に入るともう何年も会っていなかった同級生達の顔をみて複雑な気持ちになる。 俺は小学校2年生から中学校1年生までずっといじめられ続けていた。 だが恨みや憎しみはほとんどない。 逆に家でも学校でも居場所がなかったおかけで出会えたたくさんの大事な人達がいるからだ。 俺「懐かしいな…」 古い校舎。小さな机と小さな椅子。 全てのものが懐かしく感じる。 そして俺は悩んでいた。家族の前では言うこと聞く大人しい子供として演じるのは楽なもんだが、学校ではどうしたらいい? 子供らしくってなんだ… どう過ごすか考えるうちに、一人の子が話しかけてくれた。 けんた「一緒にあそぼ!けんちゃんはね、恐竜が好き!がおーーー!」 俺「あー、おれ…じゃなくて僕も恐竜が好き!ガオーー!」 なるほど子供らしさってこんな感じだな。 けんたという少年は自分のことをけんちゃんと呼ぶので俺もけんちゃんと呼んでいた記憶がある。 一番仲が良かった子だ。 そしてけんちゃんは俺がいじめられていてもずっと守ってくれて仲良くしてくれて、最後は震災で命を落とす。 まだ小学5年生だというのに… 今でも泣きながら葬儀会場で喋っていたけんちゃんの両親の顔が鮮明に思い浮かぶ。 だからこそ決めていた。 俺がなぜタイムリープしたのかはわからない。 けどそれはきっと娘と妻の命を救うため親父を殺すこと。 そして救える命は救う。 死ぬとわかっている目の前のけんちゃんを放っておくなんて俺にはできない。 学校が終わると祖母が迎えに来てくれる。 家から学校まで距離があるため歩かせるのが心配なんだそうだ。 祖母「学校はどう?楽しい?お友達はできた?」 俺「うん、楽しいし、お友達もできたよ」 祖母「よかったねぇ、今日はご飯何食べたい?今日はこうたの誕生日だし、パパも帰って来ると思うから」 俺「じゃぁチーズハンバーグとカレーライスが食べたい」 祖母「わかったよ」 俺は祖母の作るハンバーグとカレーが大好きだった。 そうか今日で俺も7歳。タイムリープしてから4年もたつのか… 俺の記憶通りなら父は帰ってこない。 帰ってくるのは夜中に友人と酒を持って騒ぎながら帰ってくる。 当時の俺は誕生日ケーキを買って帰ってきてくれる父を楽しみに待っていて、父の足音が聞こえ、帰ってきてくれたと走って父の元に向かったが 父「まだ起きてたのかよ、早く寝ろ!おめぇは!」 と怒鳴られ蹴飛ばされた。 幼いこうた「今日…誕生日だったよ...」 怖がり泣きながら伝えても父には届かず布団にくるまって一晩中泣いていたのを覚えている。 そう。だから期待するだけ無駄なのだ。 親という存在は子供にどんなキツく当たっても、子供にとっては太陽で世界の全てだと思う。親ガチャ なんて言葉は使いたくないが、親が子供に向ける愛情で子供の未来や性格は決まると思っている。 どんな状況でも、親がどんな状態でも子供は親が大好きで、愛されたいと思うからこそ泣いて笑って傍にいようとする。 家に帰り祖母が作るチーズハンバーグを食べ、当時大好きだったドラえもんを見る。 玄関が開く音が聞こえ、誰かが入ってくる。 父「今帰ったど!わりぃな遅くなったわ。こうた誕生日おめでとうー!」 当時に楽しみにしてたケーキとDSを手に持った俺の記憶の中に存在しない父親がいた。 俺「あ、ありがとう。おかえり…」 幼かった自分の記憶の父親と今目の前にいる父親の姿が違うことに困惑を覚え、そして妻と娘の仇のはずのこの男を目の前に涙がこぼれる。 どこで何が変わったのかわからないが今の父親は俺が知ってる父親とは違うんだろうか… そんなふうに思ってしまった。 今後どうしていくのか、本当に父親を殺すことが正解なのか、むしろこれは震災で亡くなるはずの母や友人を助け、父とも仲良く過ごし幸せな家庭を持つための神様が与えたチャンスだったりするのだろうか… 悩みながら家近くの海沿いを歩く。 潮風と春の暖かな陽気が心を軽くする。 その時近くで悲鳴が聞こえた、急いで駆けつけると小さな子が海で溺れかけている。 俺は無我夢中で海に飛び込み助けようとした、しかし潮の流れは思ったよりも急で体が言うことを聞かない。 俺「こんな所で死ねない。絶対助ける!」 火事場の馬鹿力というものなのかわからないが急に体が軽くなり思うように動かせた。 少女を何とか助け、岸にあがり声をかける 俺「おい、大丈夫か?」 少女「あ、ありがとう。おじさん!怖かった」 俺「無事ならよかった、家は近くか?」 少女「うん、すぐそこ!」 そこに少女の母親らしき女性が駆け寄ってくる。 少女の母親「ゆり!大丈夫なの?!」 少女「うん!海で遊んでたら落っこちたけどおじさんが助けてくれた」 少女の母親「本当にありがとうございます!なんてお礼をしたらいいか」 俺「いえいえ、気にしないでください。」 俺は逃げるようにその場を去った。 そう、あの少女と母親は間違いない。 俺の妻と妻の母親だ。 俺「そうか、この時代では生きてるんだもんな」 俺「え、そういえばさっきおじさんって」 コンビニのガラスに移った自分の姿に声が出なくなる。 そこにはタイムリープする前の26歳の自分が立っていた。
【45】3話 記憶と違う姿
父と共に母の元を離れてから数ヶ月が経つが俺の記憶の中の父とは全く違っていた。 記憶の中では泣きじゃくる俺を怒鳴り散らし、暗い部屋に閉じ込め、物を投げ、激しく蹴り飛ばされるはずだったが 目の前の父は少し空元気で、普通に子供を愛してくれるいい父親にみえた。 母からこうたに会いたいと連絡がきて母とは月に1回会うようになった。 母も酷くやつれていて、俺と離れ離れになったのが耐えられないと隣で泣いていた。 父方の方はある程度裕福な家系だったが、母方の方はお金がなかった。 母方の祖母からは金銭的な問題や精神的な病気もあるため、こうたを引き取らないようにと強く言われたらしく、泣く泣く親権を父親側に譲ったと聞いたことがある。 俺は昔大切にできなかった母との時間を噛み締めるように過ごした。 父と母との間を行ったり来たりする生活をしていくうちに気付けば6歳になっていた。周りの家族からはとても褒められた。 祖母「ほんとにこうたは泣かないし、わがままも言わないいい子ね」 俺「うん、泣いてもパパとママが困るだけでしょ」 祖母「子供なんだからもっとわがままになってもいいんだよ」 そう言いながら俺を抱きしめる祖母の腕は暖かく安心できるものがあった。 その時にふとある事に気付いた。 俺の幼少期は父も母も俺に怒鳴ったりすることが多かったし、酷い言葉もかけられた記憶があるが、今はまったくない。 2人ともどこか俺に申し訳がないように、気を使ったような態度をとる。 俺「そうか…俺が原因だったんだ…」 思わず涙が溢れる。 今は中身が26歳の成人男性だが、当時は心も体も子供だ。 急に母がいなくなり、泣きじゃくる俺に対しどう接すればいいか分からなくなった父親は怒鳴ったり、殴ったりする以外に方法が思いつかなかったんだろう。 父を壊したのは幼少期の俺の態度や言葉だったんじゃないかと考えると少し父に申し訳なく思えた。 同じ親の立場で考えた時にろくに子供の世話もしてこなかった男が母に会いたいと泣きじゃくる子供にイライラしない訳がないし、辛く当たってしまうのは仕方がないことだったのかもしれない。 幼少期に父から受けた虐待はなくなったものの、6歳以降に起こる内容は対して変わらなかった。 何もワガママも言わず、責めもせず、泣きもしない我が子が気味悪いと思ったのか、それとも子供がいること自体がしんどくなってしまったのか、父は度々遊びに出かけるようになった。 朝まで帰ってこない日や、3日、4日帰ってこない日もざらにあった。 パチンコか、女か、飲み歩きか。 なにをしているかは想像がつくがやはり人間の本質は変わらない。無責任な父親だと心の底から感じた。 主に俺の面倒をみてくれるのは祖母と祖父だったが、父親は夜中にたまに帰ってきて俺を起こした後一緒に寝ようと言ってくる。 俺が寝たフリをした後に抱きしめながらごめんなと泣く。そんな父親の姿をみて心が痛むと同時に中途半端な優しさや愛情が1番嫌いだと思った。 どうしたらいいのかわからなくなる。 決心が揺らぐ。 母は俺の記憶のままだった。 とにかく俺と一緒にもう一度暮らすために色んな仕事を掛け持ちして、色んな男と付き合った。 母からすれば離れた子供を取り戻すにはお金もある父親が必要だったのだろう。 でもその行動は、まだ母のことを思っていた父の心を壊していき、自分自身の心も壊していく行為だと気付いていなかったようだ。 母からは色んな男を紹介された。 歌が上手くメジャーデビューを目指している青年。 20以上歳が離れた高校の体育教師。 自称元暴走族のフリーター。 飲み歩くのが好きな夢と現実を区別できない中年男性。 タイムスリップして母から紹介された男たちにもう一度会ってみて思うが… 俺「選ぶセンスが終わってるだろ…」 思わず口に出てしまった。 本当にこの女はこんな父親を義理の父親にすることで俺と3人で幸せに暮らして行けると思っているんだろうか? 頭がお花畑だと感じたが、逆に若さゆえに焦っている事も感じていた。 結論から言うと俺の意見など聞かずに、母は元暴走族のフリーターと付き合い、子供ができて再婚をする。 フリーターはダンプの免許をとり運送会社に就職し、一見幸せそうな家庭を気付けると思うがそこが大間違いで、このフリーターは借金まみれの酒が入ると容赦なく殴ったり物を投げる最悪の父親だった。 俺がこの男との結婚を阻止しなかったのは理由がある、この男との間にできる子には罪がないからだ。 その子は俺によく懐いてくれていた。 にぃにと呼びながら後ろをくっついて歩いてた。 とても可愛がってたが、同時に当時の俺は酷くその子を憎んでいた。 俺は母親には月に1回しか会えず、この子はずっと一緒にいれる。 たまに会える日でも母はその子につきっきりだ。 当時の俺は言葉と力で支配してくる父と、愛を向けてくれない母が大嫌いだった。 そして母にかけてはいけない言葉をたくさんかけた記憶がある。母も父も当時の自分が追い込んだ。そう思うとやるせない気持ちになった。 だが今の俺は3歳の娘がいた父親だ、母がどれだけ大変なのか理解ができる。 理解ができる分、子供は時に残酷だと気付き、親になりきれないまま親になるしかなかった若い母に同情をした。 母の再婚が決まってから父は外に遊びに行く頻度が増えた。 父は母にまだ未練があるのを隠すので精一杯で、その思いを遊びや、女で紛らわしていた。 夜から朝まで隣の部屋では牌のぶつかる音と有害な煙でそまった部屋の隣で咳き込む俺を他所に楽しく笑う父親。 女を連れ込んでは俺いようが気にせず行為に及ぶ姿に心から幻滅した。 結局俺がいい子でいようが、泣いて困らせようが、本質は変わらない。 子供が優先ではなく、自分のしたいこと好きなことが優先の父親になりきれてない若い男がそこにいた。 俺「結局父さんは父さんなんだね。」 誰もいない部屋でひとり呟く。 自分が父親を壊してしまって追い込んだんじゃないかと心の中で思っていたが、それは杞憂みたいだ。ただ少なくともワガママも言わずいい子でいれば怒鳴り声も怖い思いも痛い思いもしなくて済んだ。 昔の俺も今の俺も気を使い愛想笑いをする事が一番の得意技だった。
【45】2話 懐かしい香りと決意
初めは訳が分からなかった。 死ぬ前にみるという走馬灯なのかと思った。 しかし目の前の母の優しい笑顔、甘い香水の香り。 現実だと思うしかなかった。 気付いたら母の胸に飛びついていた。 大人になってから涙を流すことなんてほとんどなかった。 大人は泣いてはいけないという世間の常識というダムが崩れたように泣いた。 不思議なことに子供と大人では涙腺の脆さが違うのか、止めようと思っても溢れてくる。 母「あらら、どうしたの?怖い夢見みた?大丈夫だよ」 そう言いながら俺の頭を撫でるその手はまるで春の日差しのように温かいものだった。 15年ぶりに聞く母の優しい声。 俺は思わず口走った 俺「母さん!俺は20年以上先の未来からきて、俺の奥さんと子供が殺されて…親父が…」 詳しく説明しようとした時右手に痛みが走る。 右手を見ると先程まで刻まれていた45の数字は44に変わっていた。 母「怖い夢でもみたの?」 俺は右手を擦りながら痛みがあること、数字が変わってしまったことを打ち明けたが、母には数字は見えていなかった。 俺にだけ見える数字… 45から44へ減った数字… 大人の記憶を持ったまま過去にタイムスリップした俺… こういう時はまず情報を整理することが大事だ。 そして冷静に。おそらく痛みが走り数字が減った事にはなにかしら意味があるはず。 そして数字が減ったのは俺が未来の事を話そうとした時。 一体この数字がなにを意味しているのかわからないが、仮にペナルティみたいなものだとしたらこれ以上未来のことは話さない方がいいだろう。 そう思っていた時玄関の開く音が聞こえる。 ドスの効いた低い声。 父「ただいま」 俺の父親だ。気付いたら何倍も体格差がある父を子供とは思えない目つきで睨んでいた。 父「おぉ!なんだそのメンチ!イカついメンチきれんじゃねぇか!」 父「さすが俺の子だ〜!けんか強くなるなこりゃ!いいかこうた。人ぶん殴る時はこうやんだぞ」 一人でシャドーボクシングをはじめる父。 こんな優しい目をした父をみて開いた口が塞がらなかった。 父はヤンチャな人ですぐ誰にでも喧嘩をうるような性格だった。 だがこの頃の父は子供に手を上げるような人ではなかったみたいだ。 自分が知っている父親とは違う姿をみて、違う世界に来てしまったんじゃないかと思えた。 タイムスリップしてから数日がたち、だいぶこの体での生活にも慣れた。 おねしょをしなくなったり、1人でうんちをしてる姿をみて父と母は喜んでいた。 そういえば子供の頃は一人でうんちするのが怖くて、扉を開けっ放しでしたり誰かについてきてもらって、そこにいてよ!なんて言いながらしてた記憶がある。 だが見た目は3歳でも中身は今の父と母よりも年上のおじさんだ。 おねしょもするわけないし、トイレも当たり前のように一人で行く。 そういえば娘がオムツ外れてトイレでできるようになった時は、妻と一緒にたくさん褒めて喜んだっけな… もう戻らない過去を思い出しながら、唇を噛み締めてやるべき事を決める。 俺「父を殺す」 もちろん今のままでは殺せないし、仮に殺したところで自分が犯人だとわかれば自分自身で人生を壊すようなものだ。 そんなヘマはしたくない。 一応記憶を持ってタイムスリップしてるわけだから、もしかしたら殺した瞬間に妻と娘がいる未来に戻れるなんて可能性もあるが… 下手な博打はうちたくない。 俺は確実に父を殺すために決行日は決めてあった。2011年3月11日。 この日であれば災害に見せかけて殺すことは簡単なはずだ。そう考えていた。 ただ今の母と俺と父で笑ってるこの姿を見ると本当に父親を殺すことが正解なのか揺れてしまう自分がいた。 梅雨に入り、雨の匂いが辺りを埋め尽くす季節に母が嬉しそうに報告をした。 母「なんと!2人目が妊娠しました!!」 父「おぉ!!よくやったぁ!男か?!女か?!」 父「こうた!お前お兄ちゃんになるぞー!」 幼少期の記憶というのは曖昧なもので、父と母が離婚する前は喧嘩はするもののこんな仲が良くて、こんなに幸せそうな普通の家庭だったことを初めて知った。 どうしてこの幸せが続かなかったんだろう どうしてこんなに今自分に愛を向けてくれる親が自分にあんなことを… 考えても仕方がない。 とりあえずよくわかってないふりをしながら一緒に喜ぶ。 だが俺の記憶では弟や妹が産まれる記憶はない。 妊娠が分かり2ヶ月がたったころ 父と母の喧嘩が増えるようになった。 妊娠してから母の体調の悪さや、父の気遣いのなさ、タバコやギャンブル等理由は色々ある。 お互いの若さからすれ違いは増え、思いやりのない言葉も飛び交っている。 俺がお腹にいる時は周りのサポートもたくさんあったが、2人目の時はあまりないようでそこも母を追い詰めていったんだろう。 母親といっても21歳。まだ遊びたい気持ちや欲しいものさえも全て我慢して母親という重荷を背負い、父親は仕事を頑張ってはいるが付き合いでの飲みやストレス発散のパチンコ、家にいても俺に少し構うだけで家事は手伝わず、飯はまだか、風呂は湧いてるかと喚き散らかす。 令和の時代では考えられない光景を目の前にしていた。 自分は子供だから、何も出来ないのがもどかしかった。 梅雨が明ける頃に母が倒れた。 俺はすぐに救急車を呼んだ。 お腹の中にいた俺の妹か弟は助からなかった。 母は酷く悲しんでいた。 父が駆け付けた時の第一声は 父「まぁ仕方ねぇべ。大丈夫大丈夫!またすぐできっから!」 父なりの優しさや、気遣いをしたつもりなのかもしれないが母との関係を終わらすにはじゅうぶんな一言だった。 その後の病院での喧嘩はとても言葉では説明できない。 お互いの怒号、泣き叫ぶ母、目の前にいる俺のことはみえていないようだった。 病院の先生や、看護師達が止めに入る。 父は看護師からあんな言い方はないとか、思いやれとか言われているが、案の定看護師にも怒号を浴びせ病院を出ていった。 自分中心に世界が回らないと嫌で、自分が責められれば守るために強く見せる。 プライドは高く他人の意見は聞かない。 不器用で人に優しくしようとしても空回り、逆に怒らせてしまうような性格。 そんな父の背中は少し寂しそうに見えた。 父は家に帰らなかった。 母と俺は家に帰り、母はろくに寝れず、食べ物も喉を通らないようだった。 俺も菓子パンやカップラーメンやコンビニのご飯ばかりになった。 そんな時に父と祖母が家にやってきて母から俺を引き離した。 3歳の俺にはどうすることもできなかった。 もみじやイチョウが色付く頃 父と母の離婚が決まった。 母は精神的に病んでしまったようで俺は父に引き取られた。 ここまでは自分の人生と同じ。 ただ離婚の理由や離婚の背景を知らなかった俺は二人の関係を間近でみることで、知れて良かったと思う自分もいれば 知らなければ良かったと思った自分がいた。 母と離婚してからの父は1人の男として同情せざるおえない程落ち込んでいたからだ。 繊細な人間程言葉で相手に伝えることが難しいのだろう。 だが同情はしても決心は揺るがない。 俺は俺の幸せのために父を殺すと決めた。
【45】1話 タイムスリップ
娘の靴が、まだ玄関に揃えられている。 小さなピンク色のスニーカー。 右と左をきちんと並べるのが、あの子の癖だった。 もう履く人はいない。 血の匂いは、三日経っても消えなかった。 窓を開けても、洗剤を撒いても 床を何度拭いても、消えない。 俺はアクリル板越しに父の顔を見た。 父は、何も言わなかった。 怒鳴りもしなければ、言い訳もしない。 ただ、俯き座っていた。 昔と同じ顔で。 奪われた、という言葉では足りない。 殺されたのだ。 俺の妻と娘は。 そして、殺したのは―― 実の父親だった。 父親に娘と妻を殺されてから1週間 食べ物も、水も何も喉を通らない ただ時計の針だけが今までと変わらずカチコチと音をたてながら進む 時を戻せたらいいのに、何度そう思っても戻ることのない幸せの残骸を抱きしめながら声と涙が枯れるまで叫び続けた。 世間的にも大きな事件として取り上げられたこの件でマスコミや記者達が毎日のように家に訪れる マスコミ「山本さーん!いるんでしょー!お話聞かせてください!」 記者「実の父親が奥様と娘さんを殺した事件についてどういったお気持ちなんでしょうか!?」 マスコミ「お父様との関係性はどうだったんですか?」 外からは毎日毎日人の心を土足で踏み鳴らす音が鳴り止まない。 俺「頼む...そっとしておいてくれ…」 喉がかれて掠れた声で必死に訴えるも、誰にも届くことのない声は外の雑音とテレビの音に掻き消される。 テレビ「今話題の親子殺害事件の進捗ですが、未だ加害者の男性は黙秘を続けているそうです。」 テレビ「殺害自体は認めているものの、犯行動機や目的はまったく不明というこの事件。世間ではやはり被害者の夫と加害者である夫の父親との関係性の問題があったんじゃないかとか、色々言われてますけどね」 俺「関係性が悪い…か…」 俺と父親の関係性なんてとうの昔に崩れている 関わりたくない。親子の縁を切りたい。そう思っていたから父親がいない九州まできて妻と娘と3人で幸せに暮らしてきたのに。 父親には幼い時嫌という程言葉の暴力、圧力、アザができないような暴力、いわゆる虐待をずっと受けてきた。 幼少期の私の幸せは全て父親に奪われた。 ようやく自分で選択できるようになった幸せも奪われるのか… そう思うともうどうでもよくなってきた。 俺「辛かったよな…苦しかったよな…ごめんなぁ…パパもすぐそっちに行くからな。」 天井に用意したフックからロープが垂れ下がる。 この中に首を通して落ちるだけ。 そうすれば今度こそ幸せになれる。 家族3人できっと… 首が締められ息ができなくなる。 血液がジューーッと音をたてて止まっていくのを感じる。 外の雑音もテレビの音も聞こえなくなってきた もうすぐ2人のところに… 女性の声「こうた、こうた、起きて」 俺「え、ここは…」 俺は確かに部屋で首を吊って… ここは小さい頃住んでた俺の部屋? 隣にいるのは... 2011年3月11日東日本大震災の犠牲者になったはずの母親が目の前にいた。 それもかなり若い姿で。 そして俺自身も… 右腕の手の甲に電気が走るような痛み 手を見ると手の甲には数字で 45 と刻まれていた。