氷
カラコロ、カラ。 夏の音を聞いている。 彼がグラスを傾ける。喉仏が上下して、中の麦茶が減っていく。その様を見ている。 氷とグラスが鳴り合う音。夏だなぁ、と思った。 私は言葉を待っている。 さっき「ところでお姉ちゃんの左手、返してもらえますか?」と質問したから、その答えが聞けるまで。 彼は黙っている。グラスを握りしめる指が震えていた。それにはもう氷しか残っていない。
ペトリコール
ペトリコール
切ないお話が好きです。ハッピーなお話も好きです。 気まぐれに投稿していきます。フォローも気まぐれなのでお気になさらないでください。 サムネイルは自作だったり、フリーサイトで生成していたりします。