思ったこと。

依存しても辛いことだらけ。 それなのにまた次へと依存していく。 依存したくてしてるわけじゃないのにね。 人を信じることができない。 世間ではこれを人間不信と言う。 なりたくてなってるわけじゃないのに。 人はよく死にたいと口にする。 本当はまだ生きたいのに。 可笑しな人生。 泣いてもいいんだよ。 そんな言葉を使わないで欲しい。 泣きたくても泣けないんだよ。 苦しいとき、辛いとき。 助けてを求めてもいい。 そんな無責任な言葉を使わないで。 解決なんてされない、一時的に気持ちが軽くなるだけ。

言葉

言葉には これまでの経験がとても詰まってる 私には、文才がないから 時々イラついて仕方なくなる 自分にはなにもないのに 周りにはそれがあるから 文字の1つ1つが連なって 人を魅了する言葉にかわる 私もそんな、文才を持つ人間になりたい

雨の降る朝、彼女は死んだ

傘を忘れた日に限って雨が降っている。私の人生にはよくあることだ 大ヒットしたjpopの歌詞じゃないけど、雨が降りやむまでは帰れない 早く家に変えたって、やることなんてないから、祝日の誰もいない教室で、一人窓の外を見ていた 「……高木さん?何しているの?」 一年の、斎藤先生の少し焦った声に起こされた 「高木さん?もう夜の7時よ?」 「......えっ?」 え、私五時間も寝ていたの......どおりで体が痛い 外を見渡すとすっかり暗くなっていて、雨は台風になっていた 「お迎え、待ってるの?」 「い、いや......」 「え.....っと、じゃあ、体調が……悪いとか?」 「いいえ、すこぶる元気です」 「なら......」 「傘を忘れてしまったので、雨が降り止むのを待っていました」 「レモン.....じゃなくて、じゃあ......」 「ですね、余計帰れないです」 「今日は不思議な日ね......なら、取り合えず職員室にきて」 先生に引き連れられ、職員室に入ると、私のほかに......奈央がいた 「えっ!紗枝?!なんで!」 「…….あなたと同じよ」 先生は私を椅子に座らせると、自分の椅子に座って呆れたようにため息をついた 「仲良しよね、同じ日に帰りそびれるなんて」 「え、奈央も傘忘れたの?」 「それは、あなただけよ」 「傘忘れて帰りそびれるとか、やっぱり紗枝らしいね」 そういって、奈央が笑った うっさい、そっち二人は?なんで? 「いいや、まぁ......補修......」 「ん?」 「いや~ほら~その......」 「ん?奈央、赤点だったの?」 「いや.....まぁいいじゃん!それより、このままうちら、今日帰れないってヤバくない?!」 「え?先生が送ってくれんじゃないの?」 「ダメよ、そもそも今日は、朝までいなきゃだし、台風だから車、旦那に貸しちゃった」 「あら~、え?なら電車は?」 「外えぐい台風だよ~?全部止まってるよ~」 「え、じゃあ今日......泊り!?」 「そうよ、朝まで三人」 先生の言葉で、少し重たい空気が流れた 「朝までって、先生どうやって帰るの?」 「ん?朝になったら、旦那が車で迎えに来てくれるから、それで」 「えっ、なら今連絡して迎え呼んでよ~」 「ダメよ、今日は会社の飲み会で、運転任されてるんだから」 「え~けち~」 「はは、しょうがないね~」 「そうだ、二人、お菓子、食べる?」 「え、お菓子あるの!」 奈央は飛びはねて先生の席に向かった 「うわ~先生、いっぱいある~悪い大人だ~」 「大人だって、ずっといい人じゃ疲れちゃうのよ~ほら、紗枝もおいで~」 「う、うん......」 三人で、机におかしをばらまいて、なんでもない話をしながら、お菓子をつまんだ 二人とも、笑っているけれど、何処か壁を感じる 「ねぇ......どうして、みんな私を避けているのか、わかる?どうして、私は教室に行ってはいけないの......どうして、二人は友達をやめたの.......」 その言葉で、さっきまで、楽しそうだった二人が俯いて黙ってしまった 「えっとっ.........」 「紗枝、もしかして......」 「奈央、......」 先生は奈央に向かって、涙をためて首を振った 奈央は、涙が零れないように、上を向いてこらえた 「私......なにか、したの.......?」 私たちは、親友だった 教室に居場所がなかった私たちは、保健室で出会って、友達になった 毎日、保健室で、たわいもない話をして、放課後になると担任の斎藤先生も来て、そこが私たちの居場所だった 二年になっても、ここに集まるのだと、私は疑いもしなかった 始業式の日 流石に一回くらいは教室に行こうと、私はその日、放課後まで保健室に行かなかった。 その日は、先生は会議で来れなくて、紗枝もいなかったから、私はすぐに帰った 次の日、朝の保健室から、雨の降る外をぼんやり眺めていた 「昨日から雨、止まないな~」 バシンッッ! 目の前に、何かが降って来て、鈍い音が響いた 紗枝だった うちのクラスには、二人の保健室登校の生徒がいた 私もあまり、教室が得意な子ではなかったから、学年主任に何を言われても、過度に連れ戻すつもりはなかった ただ、仲間でいつ続けようと、毎日、放課後は保健室に通っていた だんだん友達みたいになって、二人は教室にいないから、私も肩の力を抜いていられた 学年が変わって、もう担任じゃなくなるけど、来年もよろしく。なんて言って別れた 二年の初めの日は、私も忙しくて、放課後も会議で二人に会えなかった 会議の後、紗枝のクラスの担任に聞いた 紗枝は、今日...... 私は急いで保健室に向かったけれど、もう二人ともいなかった その日当番だった私は、無理を言って変わってもらって、雨の中、紗枝を探した 紗枝は家にも彼女が好きと言っていた場所にもいなかった 結局、その日は紗枝に会えないまま、学校に出勤して...... 私が紗枝と目が合った瞬間、紗枝は笑った 私の足が動く前に、体を前に倒して屋上から、飛び降りた。 紗枝がそう話した瞬間、外から凄まじい轟音がして、職員室の電気が消えた 「きゃああああ!!!」 紗枝は途端にうずくまって叫ぶ 「高木さん、大丈夫だよ、私たちもいるから」 奈央は紗枝がここまで叫ぶのに驚いた、それまで雷が鳴ることもあったし、紗枝は暗いのが好きと言っていたから。 「紗枝、どうしたの......暗いの苦手だったっけ」 「暗いの......嫌.......」 「紗枝........」 バシン! 音がして、明かりが戻った 「ねぇ......私......ごめん......思い出したよ……..」 保健室は、居心地がよかった 細目で、地味で、不幸がまとわりついている私は、学校ではどのクラスに行ってもいじめられて、次第に私はこの世界にいらない人間なのだと思っていた。だから、中学に上がって出会った奈央と先生は、私にとっての唯一の仲間で家族だった。 毎日保健室で喋って、放課後に先生も来て、お菓子を食べながら沢山笑った 家も、教室も地獄だった私に、そこは初めて落ち着ける居場所だった。 学年が変わっても、当たり前にここに集まるのだと、そう思っていた 朝、保健室に行くと、奈央はいなかった 「高木さん、あなたたち、もう保健室出禁だから。用のない生徒は保健室に来ないでください」 初めて見る保健の先生が、いきなり私にそう告げた 震えが止まらなかった 無理やり教室に向かって、席についても、震えが止まらなくて......気が付いたら、私は授業中に失禁していた 名前も知らない男子に笑われながら、担任に連れられて、保健室に逃げた 保健の先生は、わかりやすく舌打ちをして、私を迎えて、その日の保健室は、まるで知らない場所みたいで、ずっと心臓が痛かった 終業ベルが鳴ると、保険の先生は、私をにらんで無理やり保健室を追い出した どうにか二人に会いたかったけれど、保健室の先生は、私が校門を出るまで睨み続けた 「あ......傘忘れた……」 このまま家に帰りたくない。雨の中、ふらふら街を歩いていても、何処か居心地が悪い、ここは私を受け入れていないように感じた 「お!おもらし女じゃん!」 空が真っ暗になった頃、昼間に教室から逃げ出す私を指さして笑っていた男子に見つかってしまっって、次の瞬間、視界が真っ暗になって……気絶した。 それからは、まだ思い出せていない。ただすべて終わると、真っ暗な場所で、体中に痣を作って倒れていた とにかくここから離れようと、走って町まで出たところで......足が動かなくなった 震えて、座り込んだまま、町の明かりがなくなったら死んでしまいそうだった そのまま、朝まで街の明かりを見ながら、座っていた 行く当てもないし、学校に行くことにした 保健室は......怖い…… 絶対に暗くない、屋上に行こう 屋上に着くと、なんとなく足が勝手に屋上の端まで私を運んだ 「あ、先生……」 先生と目が合った。でも、もうだめか…… 体が前に倒れて、目の前に地面が見えて.....。 沢山泣いた、紗枝が全部思い出して、二人もごめんって謝って、三人は、もう一度仲間に戻った 「ねぇ、これからは、視聴覚室に集まらない?」 「え?」 「保健室は、私の担当じゃないけど、視聴覚室なら、私がカギ持ってるから」 「大丈夫かな......」 「大丈夫、私に守らせて」 三人はそのまま朝が来るまで、またあの頃のように笑いあった 台風が雨になって、駐車場に止まる先生の車に乗った お墓の前に着くと、先生は、紗枝の傘をお墓にさした 「忘れ物、やっと返しに来れたよ......遅くなって、ごめんね」 二人で紗枝に手を合わせると、また涙が止まらなくなった 「紗枝、これで成仏できたかな?」 「多分出来たよ。もう保健室に戻ってもいないと思うよ」 「そっか。   紗枝  またね」 「紗枝さん、またね」 [うん、またね。」 声がして振り返ると、 雨が止んだ。

第6回 小説で競って1番決めませんか?

 本日より第6回N-1グランプリを開催いたします。  【N-1グランプリについて】  N-1グランプリは、  一回戦と決勝戦の2部構成となっており、お題に沿って書いて頂いた小説を審査員が審査し、一番面白いものを決める大会となっております。  決勝戦に進めるのは上位3名のみとなりますので、まずは一回戦を勝ち残れるように頑張ってください。  【参加者募集に関して】  審査員希望者と出場希望者を募集します。  参加方法は、この投稿にいいねをして、コメント欄に希望する参加方法を書くことです。(審査員希望,出場希望のどちらかわかるように書くこと。)  コメントに主催者のいいねがつき次第参加となります。  審査員はMAX4人までとなりますので早い者勝ちです。  参加締め切りは4月10日までとなりますので、お早めに参加お願いいたします。 それでは参加表明をコメント欄にされた方からこの先の詳細を読んでください。  【出場希望者】 現在11名 エントリーナンバー1番 叶夢衣緒。 様 エントリーナンバー2番 Us 様 エントリーナンバー3番 ot 様 エントリーナンバー4番 新野楓衣 様 エントリーナンバー5番 青天目翠 様 エントリーナンバー6番 ひばり 様 エントリーナンバー7番 アマガミ 様 エントリーナンバー8番 有陽へいか 様 エントリーナンバー9番 水彩絵の具 様 エントリーナンバー10番 ナナミヤ 様 エントリーナンバー12番 海月 様  【審査員希望者】 現在2名 エントリーナンバー11番 つきみ 様 エントリーナンバー13番 はむすた 様 +黒鼠シラ  【大会概要】 ・文字数に関して  文字数は5000字までです。オーバーすると、10文字につき1点を合計点から引かせていただきます。 ・お題に関して  お題は、「壁」「逆戻りする時間」「ランデブー」の3つから1つ選んで作品を描いてください。お題がわからないほどでなければ、お題から逸れても大丈夫です。 ・締切やタイトルに関して  締切は、今日から4月14日24時までです。なるべく早くの投稿をよろしくお願いします。(15日には結果発表と決勝戦に関することのの投稿をします。)  また、タイトルの前に必ず「第6回N1」と書いて投稿してください。(検索で出てくるようにするためなので、一文字一句完コピお願いします。) ・その他  無断無投稿はやめてください(次の大会を出禁にします)  投稿後の加筆や修正はお控えください。審査員が大変になってしまいます。  投稿したらここのコメント欄にコメントお願いします。  一回戦上位3名は最終決戦へ進出し、もう一つ作品を描いていただきます。最後までやりきれない方は参加をお控えください。  その他質問や要望がありましたら、ここのコメント欄にお願いします。  【審査に関して】  審査員はもちろん、出場者の方も読んでください。  審査員は一人100点満点で評価してください。それを集計し、これまでの大会に合わせるために全審査員の合計点の平均を取り、残りの空きの人数の点数として加算します。  さらに、いいね数×10点(MAX100点)を足した、600点満点で採点します。  採点基準は、 49点以下 面白くない 60点 面白い 80点 非常に面白い 90点 プロ並みに面白い 100点 これまで読んだ作品で最も面白い  面白いという単語を基準に使ってはいますが、技術的なものなど、様々な観点での審査をお願いします。 という感じです。審査員の方は、必ず14日までに審査結果の方をここのコメントにしてください。 名前を書くのは面倒だと思いますので、エントリーナンバーで描いてください。(くれぐれも間違えないように)  以上が説明になります。  基本的には辞退や未提出は認めていないので、よろしくお願いします。 ※最後まで読まれた方は、合図としてハッシュタグから"#最後まで読んだらいいね"に飛んでいただき、そこにある「N-1グランプリの歴史」いう投稿にいいねをしてください。 すでにいいねされている方は一度いいねを外したのちに再度いいねをお願いします。(通知に残すためです。)  それでは面白い作品を期待しています。頑張ってください。

ポニーテールちゃん

 やばい、どうしよう。  窓際一番後ろの席にて、私は一人焦っていた。 「よし、じゃあ教科書の百四十八ページ開けー」  先生の声に慌てて机の中を探してみても、やっぱりない。教科書が、ない。  そんなはずは……。いや、でもたしか昨日家で勉強しようと思って机に出した後、カバンにしまった記憶がないな。  英語の先生は忘れ物に厳しいのに…。珍しく真面目に勉強していた昨日の自分が恨めしい。  あぁ、本当にどうしよう。 「どした?」  すると、隣の席で教科書を開いていたあいつが焦った私に気づいて話しかけてきた。 「もしかして、教科書ない?」  う、と言葉に詰まる私の反応をみて、何を思ったのか、そいつは黙って私の机に自分の教科書を置いた。  混乱する私をよそに、そいつは前に向き直って手を挙げた。  待って、と止めようとしたが遅かった。 「せんせー、教科書忘れたので、隣に見せてもらってもいいですかー?」  そいつの大きな声に先生とクラスメイトが後ろを振り向く。先生が呆れた顔になって言った。 「教科書忘れたのかぁ? 隣に見せてもらうのはいいが、忘れ物は内申に響くぞ! 次から気をつけろー」 「あちゃー、勘弁してくださいよ…」  クラス内から少し笑いが起きる。  なに、なんで……。  先生が授業を再開し、クラスメイトの視線も前に向き直っていく中、私は呆然としながらそいつを見つめた。  そいつは机をこちらに移動させながら、「ラッキー、いつもより近づけるじゃん」とかなんとか言っている。 「なんで…」 「ん? 教科書みせて?」  そいつは嬉しそうに笑いかけてくるが、私は申し訳なさでいたたまれない。だって、教科書忘れてないのにあいつの内申に影響するのはおかしい。  やっぱり先生に訂正しよう、と立ち上がりかけたら、そいつに腕を掴まれた。 「いーの、かっこつけさせて」 「でも、あんたに借りをつくりたくない」  そいつが目を見開く。しまった、と思ってつい俯いた。こんなことが言いたいんじゃないのに。  こんなときでも素直に優しさを受け取れない私は、本当にかわいくない。自分でもわかってる。  だからそれを少しでも変えたくて、椅子に座り直し、勇気を振り絞って呟いた。 「あ、ありがと」  声は小さかったが、すぐ隣のそいつには届いたみたいだ。うん、といつになく嬉しそうな返事が聞こえた。 「気にしないで、ポニーテールちゃん」 「なっ!」  なに、その呼び方…。  思わず顔を上げると、そいつは頬杖をついて目を細めていた。視線は、私の高い位置で一つ結びにされた髪に注がれている。 「だってそれ俺のためでしょ?」 「は、」  何を言ってるんだ、こいつは。 「あれ、違った?」  不思議そうにそいつは首を傾げながら、続ける。 「俺のためにポニーテールしてきてくれたから、貸し借りなしでいいよ」 「ば、ばかっ! 誰があんたなんかのために…」  赤くなった顔を隠すように、そいつと反対側の窓の方を向く。いつもと違って、髪で顔を隠せないのがもどかしい。 「えー、違うの?」  あぁ、顔を見なくてもそいつがにやにやしているのがわかる。図星なのが悔しくて、無視を決め込んだ。 −−あいつが私にポニーテールをしてきてほしいと言ってきたのは一週間ほど前のこと。  授業中に急に言われたものだから、からかわれているだけだろうと思った。  それを言われた次の日の朝、家を出る前に少しだけ、ほんっとうに少しだけ迷ったが、結局髪を下ろして行った。  すると、朝登校してきたあいつが私を見つけるや否や、露骨に残念そうな顔をした。 『えー、今日結んでないの? ポニーテールだっけ。あれしてきてくれるのちょっと、いやかなり期待してたんだけど』 『するわけないでしょ』  私はふいっと顔を背けたが、そいつは意に介した様子もなく続けた。 『ざんねん。まぁ、下ろしててもかわいーから結局、俺得なんだけどね。ありがとう』  なぜか感謝されたが、訳がわからないので『あっそ』と返しておいた。  その日以降、ふとしたタイミングでそいつはポニーテールを勧めてくるようになった。  そんなに髪型にこだわるのか、と呆れつつもあいつがポニーテールが好きだというならしてきてみようかな、という気になってもいたのだ。うるさいし。  それに、いっつも私の心を乱してくるあいつの余裕な態度を崩してみたいという思いもあった。  普段そっけない態度を取ってる分、急にあいつの好きな髪型にしたら、あいつもびっくりしていつもの余裕が崩れるのではないか、という魂胆だ。想像しただけで愉快だ。 −−そういうわけで、週が明けた月曜日の今日、張り切ってポニーテールにしてきたわけだが、私の予想に反してあいつは何も言ってこなかった。  特に驚いた顔もせず、かといってからかってくるわけでもなく、なんならいつもよりあんまり話しかけてこなかった。  本当になんなんだ、あいつは。  やっぱり私はからかわれていただけだったのか、と悔しくなった。  だから、六時間目の英語が始まってすぐ、あいつが話しかけてきたときは少し驚いた。 −−思い返していたら、隣からまた声が聞こえてきた。 「俺のためじゃなくても、勝手にそう思っとくね。ありがとう」  ……。無視だ。無視、無視。 「あれ、でも俺が言うまでしてきたことなかったよね?」 「っ!」  無視を決め込んだはずが、めげずにそいつは話しかけてきて、私は思わず振り向いてしまった。 「あ、あんたが! ぜったい似合うって言ったくせに! なのに、いざしてきてみたら何も言わないし! ほんとに…」  なんなの、と続けようとして我に返った。  まずい、これじゃあこいつに褒めてほしいみたいだ……。  内心、冷や汗が止まらない私の前で、案の定そいつはにやっと口角を上げた。 「ふーん?」  私は必死に言い訳を考えるが何も思いつかない。 「俺に褒めて欲しかったんだ? ポニーテールちゃん」 「……その呼び方やめろっ」  なぜかぐいっと顔を近づけてくるそいつから離れるようにして返事をする。 「またまた、照れちゃって。ほんとにかわいーんだから」 「うっさい」  赤くなる頬を隠すようにまた窓の方を向く。 「いや、ほんとはね? 朝、してきてくれたの見て嬉しかったんだけど…」  私は顔を背けつつも、どうしても耳がそいつの声を捉えてしまう。そしてそいつは、いつもより歯切れが悪い。 「……想像以上のかわいさで、声かけられなかった…って言ったら許してくれる?」  驚いてばっとそいつの方に顔を向ける。そして私は目を見開いた。  そいつは、手の甲を口元に当てて顔を隠していたが、耳まで真っ赤なのが見える。 「なに?」  あまりの珍しさに、私がじーっとそいつの顔を見つめていたら、そいつは拗ねたように言った。その姿がいつもの余裕のある様子とは違って、子どもみたいだったから、思わず笑みがこぼれた。 「ふふっ、耳まで真っ赤…」  そいつは驚いたように固まった後、拗ねたように口を開いた。 「何がおかしいの」  いつもは見ないそいつの様子がなんだかおかしくて、また笑いが込み上げてくる。  そいつは顔を真っ赤にしたまま、そんな私をじっと見つめた後、机に突っ伏した。 「もー……。なんでそんなにかわいいの……」  肩を震わせて必死に笑いを堪えていた私の耳にそいつの声は届かなかった。 ーーその後、そいつは授業が終わるまで黙っていた。  私は今日も開け放たれた窓の向こう、どこまでも広く続く青空を眺めながらさっきの出来事を思い返していた。  これからもたまにポニーテールにしてみても悪くないな、と無意識に笑みをこぼした。

別れ話

「別れよう」  そう口にすると、あなたのさっきまでの笑顔が凍りついたようにかたまった。  そうだよね。あなたは、ここで私に別れを切り出されるなんて、きっと思っても見なかったんだろうな。 「もう支え続けられない」  私は今日、それを言うためにきたの。あなたに何を言われてももう揺るがない決心をして。  あなたは案の定、涙を流しながら私に訴える。 「……嫌だ…。別れたくない……。別れたくない。ほんとにごめん、今度こそ変わるから」  泣いてるあなたを見てずきりと痛む胸に気づかないふりをした。 「前もそう言って、でも結局こうなってる」 「今回は違う。だから、あと一回だけ、一回だけチャンスがほしい……」  ふぅー、と深く息を吐き出す。チャンス、ね…。  いつもそう。変わるから変わるからって。具体的なことは言わないくせに、『頑張るから待ってて』って。  もしかしたらあの時みたいに戻れるんじゃないかって私に期待させる。でも結局傷つけられる。かと思えば、そのあとはごめんって優しくされて。  もう無理って思っても、優しくされると期待しちゃう私がばかなだけかもね。  でももう、あの時の純粋な気持ちで、好きでいられないって気づいた。お互いにもうあの頃には戻れないってわかったの。  変わるわけないって言ってるわけじゃない。変わってくれるのかなって期待して待ってられるほど、もうあなたのことを好きじゃなくなってしまったみたい。  もちろん、できることならあなたとうまくやっていきたかった。こんなに私のことを愛してくれた人は初めてだし、私もこんなに人を愛せたのは初めてだった。これからもずっと一緒にいるんだって、信じて疑わなかった。  でも、気付いたらこうなってたね。あなたを支えたいとか、一緒にいたいとか、そういう気持ちがあなたに否定されるたび、薄れていった。  私なりにちゃんと愛を伝えていたつもりだったけど、あなたを不安にさせてしまっていたのは事実だから申し訳ないと思ってる。  だいすきって伝えても、うそつけって言われるの辛かったんだよ。あなたは、初めはそんなこと言う人じゃなかったはずなのに。  またやり直しても、たぶん前みたいに愛を伝えられない。  あなたが私と比較して辛くなってたように、私もつい他人と比較して劣等感を抱いてしまうこともあった。だけど、あなたにはそれを言えなかった。言っても理解してもらえないってわかってたから。 「本当に変わりたいって思ってるんなら、私じゃなくて、もっと心からあなたを応援してくれる人にそばにいてもらった方がいいよ。私はもう、あなたのことを好きじゃ、ない」  初めて口にしたセリフに、あぁ別れるってこういうことなんだな、と実感する。と同時にこれまでのことが頭に蘇った。 ーー大好きをお互いに伝え合った日々。はにかむあなたは、照れてるのを隠そうとしていつも私の胸に顔を埋めてきたよね。私はそんなあなたを愛おしく思いながら、頭を撫でてたっけ。  こんなときに幸せな思い出が蘇るなんて、私の脳も都合が良いにも程があるなぁ、と苦笑いしてしまう。  私に幸せをくれてありがとう。辛いことだけじゃなくて、ちゃんと楽しかった思い出もたくさんあるから、今もこんなに涙が止まらないの。  実を言うとね、今もあなたのことを好きじゃなくなったのか、よくわからない。もしかしたら、まだあなたのこと好きなのかもしれない。  ここまできて、言ってることぐちゃぐちゃだよね。自分でもわかってる。  だけど、私が好きなのは過去のあなただから、これから付き合い続けても幸せになれないんだって、思うことにした。そう言い聞かせないと別れられないから。  本当にごめんね。  背筋を伸ばして、あなたに正面から向き直る。今なお、茫然自失としている様子のあなたに頭を下げて、もし一度告げた。 「お願いします。私と別れてください」

カントリー・ロード

木製の小舟に揺られて湖を漂っているのは僕。 櫂を動かす度に隣にある果物を入れた籠が揺れる。揺れる度に、熟れ尽くしたそれから濃いアップル・アンド・グレープが香る。今朝収穫したてのそれは、口に含むと同時に多大なる酸味を僕に与える事を約束している。 北方からは冬の到来を告げる風が吹く。 冬の寒さを代金として支払い、籠から香りを盗み去る。自然だからこそ許される悪徳商売だ。 屋敷の方角からは香りが漂う。シナモンをこれでもかと入れた義母特製のアップル・パイ。果実の比率が多く、フィユタージュの主張が弱い。だからこそ感じるアップルの甘さと、舌に我が物顔で座るシナモンが僕は好きだ。 舟を停めて屋敷まで向かう道は、その土地の良さが全て詰まっている。動植物に溢れたその道は、僕にとってのカントリー・ロードである。いつだって、ノスタルジーの精霊が姿を現すのだ。 だけど彼女は、夢から覚めた僕の周りにはいない。 湯沸かしは電気。入り組んだ回路から生み出される熱は僕のノスタルジーを模倣している。テクノロジーを孕んだ湯気からも、どこか冷めた香りがするのだ。 机の上にもエレキの山。積み重なった本の山は幻に消えた。強いて言うなら、幻の中で燃やされたのだ。温度は、華氏四五一度。 窓を開けて入ってくるのはアンドロイドと化した人々の喧騒。全員がマックス・ポロコフで、フォークト=カンプフ改良検査法に引っかかる。 懐かしきカントリー・ロード、貴方が恋しい。 ウェストバージニアではないし母なる山々でもない。僕の場合は規模でいえばもっと小さい。それでも想いとしては変わらない。 麗しきカントリー・ロード、僕を迎えに来て。 義母の笑みも、小麦の味を感じないアップル・パイも全てが恋しい。手紙は返ってこない。都会の騒音じゃ悲しみは癒せない。 犬を連れて走ったあの山奥、酸味を齧って昼寝したあの木陰。 切符代はある。土産話もある。 ないのはこの身のみ。 カントリー・ロード 僕を連れ戻してくれ。

文面で伝える気持ち

私は手紙がすきだった。 なんでかって? 自分の気持ちを素直に伝えられるから 人の態度なんか気にせずに、 自分の本心で会話ができたから。 手紙を書いてワクワクしてたような 昔の純粋な私に戻りたかったから。 私は人の目を見て話せない いつからそうなってしまったんだろう 人と会話すればするほど 地味で卑屈で どうしようもない自分になっていく でも、それをあなたに気づかれたくないから、 私は、今日も手紙を書く この気持ちを 大好きなあなたへ伝えるために ちゃんと読んでくれますか?

心の隔たり 第6回N1

あの頃、私たちの間には『見えない壁』があった。 握手を交わすことも、肩を寄せ合うこともためらわれた。友人と笑い合う時間は画面越しになり、家族で囲む食卓にも静寂が増えた。誰かの温もりを感じることさえ、遠い昔の記憶のように思えた。 人との距離は、物理的なものだけではなかった。心の距離もまた、少しずつ広がっていった。「会いたい」と思っても、簡単には言えない。「大丈夫?」と聞かれても、本当の気持ちは隠してしまう。見えない壁が、私たちの間にそっと立ちはだかり、互いの存在をぼんやりとした影のようにした。 その壁の原因となった『疫病』で亡くなっても、まだ元気だった頃に見た顔が最後となってしまい、二度と顔を合わせることはなかった。 けれど、壁の向こうには、同じように手を伸ばしたい人がいることも知っていた。画面の向こうの笑顔や、届いた手紙の文字、遠くから聞こえる声が、その証だった。中には、自分たちでその壁をぶち壊してやろうと言わんばかりに、人々に笑顔を届けるために立ち上がる者もいた。その行動は、『疫病』に苦しむほとんどの人々を笑顔にした。その瞬間、壁の隙間から、新鮮で心地よい風が吹いてきた気がした。 そして現在。あの分厚い壁は、もうそこには無い。今日も人と人が、手を繋いだり、会話を楽しんだり、いつもの日常を楽しんでいた。 作:海月

ソフトクリーム

「夏、好きじゃないんだよね」 君は気だるげに言った。 君にとっては十五回めの、俺にとっては十七回めの夏。 家が近いという理由だけで幼い頃からずっと仲が良いのは俺たちくらいだと思う。 いや、そうでも無いか…? 「俺は結構夏好きだけどなー」 あー、知ってた。と呆れた顔で君は言った。 君は頭が良いし、責任感が強くて、…ちょっと生意気で。 それに比べて俺はバカだし、楽観的だし。 俺と君は何かと正反対だった。 そんなんだからか俺は君にウザがられてる。 いくら鈍感な俺でも、それはさすがに気づいてる。 でもなんだかんだで一緒に居てくれる、良い友達だった。 「ってか、せっかく貴重な夏休みなのに、私と一緒にいていいの?彼女居そうなのに。」 「…は、いや、何それ」 耳から一気に熱くなっていくのを感じた。 彼女なんているわけないだろ、だって俺には君が…… 夏の暑さのせいか、俺の体温のせいか、持っていたソフトクリームが手に垂れてきた。