Canon・Noe
9 件の小説神武椿の裏事情
第2章【彼女】 「はぁ〜」 私はとびきり大きな欠伸と登り始めた太陽と共に目を覚ました。 今日は待ちに待った双子のお世話当番の日! 遂にあの宝石を盗めると思うとワクワクが止まらない! 『いつもは大嫌いなこの国に対しても愛国心を抱きそうな程だよ!』 お前は今日この日の為に生きてきた。 そう誰かに言われても信じてしまいそうな程、今日を私は待ち望んでいた。 「…楽しみ♪」 口端が自然と上がる。 『あの宝石とすり替える用の偽物も袖に忍ばせてある。』 準備は万端。 いざ、双子の部屋へ…! 右手首軽くコンコンと扉を叩く。 「おはようございます。楓様、心結様、起床のお時間でございます。」 寝起きのお二方はとにかく面倒くさい。 まず、楓様。 「楓様、心結様。お返事が無いようなので入られて頂きますね。」 私が部屋に入ると枕が一つ、顔にクリティカルヒットした。 「貴方…返事も待てない訳?部屋の扉は勝手に開けないで下さいよ…」 眠気眼を擦りながら怒りの滲む声でそう言う。 楓様は基本常に侍女・侍従にも礼儀正しいのだが、起床してからの三〇分程はとにかく怒りっぽくなるのだ。 「うっさ…てか、眩し過ぎるんですけど〜。カーテン全開にすんの止めてくんなぁ〜い?」 ギャル口調で文句を言うのは心結様だ。 「あ、ご、ごめんさい…あんな風に言うなんてぇ…マジで私ってに馬鹿ぁ…」 と言う風に〈怒る↓泣き〉のような感じになってしまうのだ。 勿論、心結様も起床から三〇分程で元に戻られる…らしい。 『他のメイド達から聞いてはいたけど…話よりも大分カオスなんだけど…』 私はニコニコと笑いながら「申し訳ございません」と「そんなことございませんよ…」の二つの言葉を延々と言い続けること三〇分… 『やっと…お二人が正気に戻られた…!』 本当に起床から三〇分ぴったりで二人は正気を取り戻した。 三〇分経過すると二人は、「あ…すみません…また、非の無い方に怒ってしまった…申し訳ない……」と楓様が言い。 「マジでごめんなさぁい…私、朝起きるとしばらく情緒不安定なっちゃうんだぁ〜…ごめんね!本当!」と悲しげに心結様は謝った。 『…嘘、だな。』 私は人が嘘をついているか、そうじゃないかを見分けられる。 小さい頃に私は父から男として育てられた。 その時に金稼ぎの道具として、父の代わりに賭博場へ通っていた時期がある。 父から教えられた技術と嘘つきを長年間近で見てきたことにより、誰よりも嘘の見分け方には自信がある。 この二人は俯き、声のトーンも申し訳なさそうに見えるが、瞳孔が先程よりも明らかに開いている。 そして…ここ数日間二人をみて来て分かったことがある。 まず、楓様は嘘をつく際に右手で首の後ろを触る癖がある。 次に心結様は嘘をつく際、左人差し指の第二関節を口に軽く当てる癖がある。 今、お二人がしている動作に当てはまる。 結論。 お二方は嘘をついている。 まあ、実際どこから嘘かは分からない。 謝罪が嘘なのか、はたまた私が部屋に入ってからお二人がとった一連の動作全てか… とにかく、こんな嘘の謝罪はしてもらっても意味が無い。 「いえ、大丈夫です。そんな(嘘の)謝罪も、要りません。」 私がそう言うと、お二人方は何かに驚くように目を見開いた。 『謝罪を断られたのが、そんなに衝撃だった?でも、双子の信者化してるメイド達なら慌てて「滅相もございません…!」とか言いそうなものだけど…』 私は少し不思議に思いながらも双子の世話をした。 髪を梳かし、お二人のお洋服を見繕い、お顔に軽くメイクを施し、軽く雑談をする。 コレが他のメイド達から聞いた朝に私がやるべきことだ。 『──あの宝石は、飾り棚の上か。』 ターゲットの位置は頭に入れた。 雑談の後、お二人食堂へ行き朝食を摂る。 私はその間に部屋を整えるのだが… 『そこがチャンスよね。掃除をする隙に宝石を偽物と摩り替える…』 考えるだけで胸が高鳴る。 「終わりましたよ。」 私はメイクを終えて、お二人にそう声をかける。 「ありがとうこざいます。」 「ありがとぉ〜」 お二人はそれぞれ私に礼を言う。 『基本的には、お二人共礼儀正しいんだけどな〜』 さっきは何故嘘をついたのか… 不思議で仕方がない。 私がそう考えていると、心結様が私に話しかけてきた。 「ねぇねぇ、私ぃ〜質問があるんだぁ〜」 「…なんで御座いましょう?」 私はにこりと笑いながら機械的に返答をする。 「ねぇ、何で君さぁ〜… 「周りの子達と、違うの?」 私は少し固まった。 「…どういう意味でしょう?」 私は動揺を悟られぬよう、必死に笑顔を作る。 『宝石の力が聞いていないのがバレた…?』 『バレたなら一体どこで?』 『不自然なところはなかったか?』 『思い出せ。』 『思い出せ思い出せ…!』 私は脳をフル回転させた。 バレたなら、誤魔化し通す…! 「…」 心結様はしばらく黙ったあとに底抜けたように笑う。 「プハっ!ごめ〜ん!貴方が知り合いとよく似てたからさぁ〜、ついつい遊んじゃったぁ〜♪」 「ごめぇーんね?」と悪びれもなく心結様は言う。 『そう、似てる。〝彼女〟にそっくり。髪の梳かし方も、その作り笑いも…』 それから、心結様と楓様は食堂へとお行きになった。 「さぁてさて、お楽しみの時間がやーと来た!」 私は満面の笑みを浮かべる。 箒で掃き掃除をしながら少しづつ、少しづつ、あの宝石へと近づく。 『もう、少し…』 なるべく近づく。 腕を伸ばすと、その分だけ時間がかかってしまう。 『やるなら、一瞬でやる…!』 ハタキを持ち、宝石へと近づき… 『今!』 手首を捻り、袖に潜ませた偽物を取り出し、流れるように取り替える。 『…よし!』 「なぁ〜にが、良しなの?」 声に驚き振り返る。 「――心結、様…」
欠陥姫は成り上がる
第4章【囚われ女王と背命者】 「アザリエ!ココから出しなさい!このようなことが本当に許されると思っているの…!」 「………」 ピクシルの丁度真中にある大きな城の一角。 そこには大きな鳥籠がある。 鳥籠の中には、プラチナブロンズの髪を持つ一人の女性が囚われていた。 まるで波打つ広大な海を彷彿とさせる髪の女性は、塔の窓を見つめる紅色の髪の少女へと訴える。 血のような色の髪に、夜の闇のように黒い瞳を持つ少女… 彼女の名は〈アザリエ〉。 妹〈シャルロッテ〉から〝夢の魔力〟を奪い取り、現・精霊女王たる〈カシネス・Q・ピクシル〉を現在進行形で鳥籠に閉じ込めている罪深き精霊である。 「お母様、私は真実を知ったのです。」 アザリエはゆっくりと振り返りそうカシネスに告げる。 「…真実?」 アザリエはにこりと笑う。 「お母様、魔王陛下は実に尊きお方です。彼女はこの世界を正しき世へと変えるのですから…」 アザリエは頬を紅色させ、それとは対象的にカシネスはどんどん青ざめていく。 「貴方…その言葉の意味を、分かっているの?」 現・魔王は今、人間族を滅ぼそうと画策していると聞いた。 つまり、人間族に〝勇者様〟が誕生するということだ。 そして、精霊族とその眷属たる妖精族は創造神〈セルティア〉様の命によって勇者様を支えねばならない。 『アザリエ、この子の今の言葉はセルティア様の命に背く言動よ…必ず、止めなければ。』 アザリエ・Q・ピクシル… 創造神に背く、初めの者。 勇者、立ち上がらん… ❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇ 僕の手を取り、僕と同じ目線まで浮かび上がる。 「さて、協力関係になるということで…まずは自己紹介といこうか。」 僕はにこりと笑い簡単な自己紹介をはじめる。 「僕の名前はティアナ。好きなことは読書で、色んな魔法や武術を使えるよ。」 「ま、威力は弱いんだろうけど」と付け足しす。 「あ、えぇと、私の名前はシャルロ…シャルです。好き…というか、日課は日の出位の時間に空を飛ぶことです。」 シャルと名乗ったその子は少し照れながらそう自己紹介した。 「シャルだね!これから宜しく!」 僕はシャルの手をもう一度取り、勢いよく握手をする。 「わわゎ…」 シャルは目を回しながら、「こちら…こそぉ……」と言った。 『ありゃ、力強過ぎたかな…?』 僕は後頭部を掻きながら「ごめんね」と言う。 「えっと、まずは作戦を立てていきましょう。」 シャルは目眩が収まると、そう言いって地図を取りだした。 「まず、ココが私達の現在地です。」 シャルは地図でいう南の端っこを指で指し、そう告げる。 「ココからアザリエ様が居る城へ向かうには最短でも約二日程掛かります。」 シャルは現在地から城までの間にある森を迂回するように指を動かして言う。 「ココの森を突っ切るのは?そうすれば時短になるんじゃない?」 僕がシャルが指で迂回した森を指さす。 「――この森は、通称〈魔の森〉と呼ばれている場所で…ピクシル唯一のダンジョンなのです。」 シャルは伏せ目がちに続ける。 「このダンジョンはC級とランクはあまり高くないのですが、毒やデバフを操る系統の魔物が多く、攻略が難しいのです…」 シャルは小さめの声で「デバフの無効化も太古の昔に文献からも消えてしまって」と付け加える。 「…」 僕は少し考えた後に言う。 「もしかしたら、攻略できるかも…」 「え?!」 シャルは心底驚いたように目を丸くする。 「実は、僕の住んでいる所の地下に古い蔵書室があるんだけど、そこにデバフを無効化する魔法があったと思うんだよね。」 僕は「確か、こんな感じの魔法陣を紙に描いて首の後ろに貼り付けて…」と思い出しながら魔法陣を描いていく。 ぺとりと自分の首の後ろに魔法陣を貼り付ける。 「よし!シャル、僕にデバフ系の魔法をかけてみて!」 「はい!?」 シャルは突然のことに驚き、「き、危険です…!」と不安そうに見つめてくる。 「大丈夫、大丈夫!僕、野菜に遅効性のデバフ魔法がかけられてたことあるから!」 にこと僕が笑うと、「それは、大丈夫…なのですか?」と呟く。 「ま、何かあっても三〇分弱位で治るから!」 僕は右手で握り拳を作り不敵に笑う。 「…っ!もう、何かあっても知りませんから!」 シャルはそう言うと雷魔法を放ってきた。 『…一瞬ビリッてしたけど普通に動くな。』 「よし!実験成功!シャル、協力ありがと!」 僕がにこと笑うとシャルはへなへなとその場に座り込む。 「いや…ありがとうじゃなくてですね…」 シャルは精神的に疲弊したような、そんな雰囲気を醸し出していた。 「えーと、何か…ごめん?」 僕はそういって座り込んだシャルに手を差し出す。 「いや、ごめんとかじゃなくてですね…」とぶつぶつと言いながらもシャルは僕の手を取り立ち上がった。 「よーしっ!コレでデバフ対策もバッチリだ!」 僕ら二人は首の後ろに魔法陣を貼り付け、城までの距離を大幅に短くすることに成功した! 「ねぇ、シャル♪」 「どうしたんですか?ティアナ…さん。」 僕はふっふっふっと得意気に笑いながら言う。 「森を通る次いでにダンジョン攻略とかs…」 「し、しません!」 食い気味に否定された。 僕は初めて、あの別荘の外に出られたから少し浮かれていたのかもしれない。 『それに、欠陥品の僕なんかが描いた魔法陣の威力なんて、たかが知れてるしな……』 僕は気休め程度になればと思い、シャルの魔法陣に追加で残りの魔力を少し込めた。 目の前に広がる広大な樹林… 「〈鑑定〉」 右手で目に軽く触れながら僕は言う。 目の全体が薄青く光る。 鑑定という言葉と同時に手からゾワゾワした暖かい何か…魔力を目に流すイメージだ。 目の前に青白いウィンドウが現れる。 C級ダンジョン〈魔虫の森〉 備考[魔物は主にデバフ魔法を使用] [騎士団の要請を急ぐ] [魔物の波(スタンピード)間近] 「うわ…マジか……」 僕は備考の三つ目を見て、思わずそう呟いた。
欠陥姫は成り上がる
第3章【妖精の国の惨状】 目が覚めると、全てが終わっていた。 あの青い牛は消え、ドロップアイテムが部屋の中心に散乱していた。 「…っ!」 『頭が痛い…』 強烈な頭痛がする。 頭の中に映像が流れ込んで来た。 『白い翼を持つ…金髪の、女の子…?』 女の子が何かを言うと、七色の雨が降り注いだ。 そして、兎獣人の子の傷は癒え、逆に青い牛は光の胞子と成り消えていった。 その少女がこちらを振り向いたかというところで映像はそこで途切れてしまった。 『あの映像は、一体何なんだ?』 僕は顔に手を当て、ゆっくりと顔を上げとそこには兎獣人の女の子が正座で僕の横に座っていた。 彼女は眠っているが、その周りには回復魔法の残滓と、使いかけの包帯が有った。 改めて見るとあの時、棍棒を握り潰した手には包帯が巻かれている。 とても丁寧に巻かれており、痛みもあまり無い。 僕は彼女を起こさないようにお礼の品として、彼女に似合いそうな赤いマジックバック(全属性無効化を付与した魔石付き)を置いてその場を去った。 辺りを見渡すと、部屋には二つの扉が出現していた。 一つは帰還用の扉のようだが、もう一つはまた別の場所に繋がっているようだ。 僕が帰還用の扉に手を掛けようとすると、またあの時と同じ声が聞こえた。 「待って…!行かないで!」 切にそう訴え続ける声。 ココに飛ばされる前に聞いた声と同じ声色の、助けを求める声。 『あの声が、この扉の向こうから聞こえる…』 僕は帰還用では無い方の扉の前に立つ。 『この声は誰のものだ?』 『コレは罠じゃないのか?』 『リスクとリターンを考えて行動しろ。』 そんな憶測や考えとは裏腹に、僕の心はずっとこう叫んでいた。 『行け』 『早く行くんだ。』 そう、僕の心は叫び続ける。 『リスク?リターン?そんなものより大事な物があるだろ!』 まるで、何かが訴えかけるように心は叫んだ。 『助けを乞う者が居るならば助けろ!』 『例え、その命に変えようとも…!』 僕の手は、気付けばその扉を押していた。 開いていた。 何かに突き動かされるように。 僕の足は歩みだした。 『そうだ。行け。お前に助けを求める、者の所へ…』 僕の足は止まらない。 助けを乞う者がいる限り。 例え、何があっても… 扉を開けた先に有ったのは、〝荒れ地〟だった。 廃墟に、荒んだ目をした孤児達… 道端で眠る少年少女に、暗い顔の大人達。 そして…彼らの背中から生えた、透き通った羽。 「あの、人間のお方。この国には何用でいらしたのですか?」 僕が唖然としていると、一人の女の子が話し掛けてきた。 年齢は五つか六つ位。 「ここは、妖精と精霊の国〈ピクシル〉です。」 優しげに話す少女は最後に「元、ですが…」と呟き、俯いた。 「元?」 僕が聞き返すと少女は少し躊躇いがちに言った。 「この国は、変わってしまったのです…」 少女はこの国に何が有ったのかを全て教えてくれた。 〈ピクシル〉。 そこは、緑溢れる妖精と精霊達の楽園。 子供が飛び回り。 皆、笑顔で若々しく。 悲しい事も、良いことも、皆で分け合える。 そんな国でした。 ある日、精霊女王様がお倒れになるまでは… この国は変わってしまった。 精霊女王様の第一子たる〝アザリエ・Q・ピクシル〟。 彼女は次期女王最有力候補と呼ばれていた妹から、特殊スキル〈強奪〉を使い〝夢の魔力〟を奪い取ったのです。 その後、アザリエ様は妹君を城より追放し臨時の女王代理となったのです。 そして今も尚、この地の神聖なる生命エネルギーをも奪い続けているのです… 「私達妖精族や精霊族は大地の神聖なら生命エネルギーと強い繋がりを持っています。なので、大地が生命エネルギーを奪われると必然的に弱ってしまうのです…」 彼女はそう、悲しげに言ったのだった。 「…成程。」 『この子の声は、扉の向こうから聞こえた声に似てるな。』 僕は、彼女に聞いた。 「ねぇ、結論を教えて。僕に、どうしてほしいの?」 彼女は俯いたまま目を強く瞑り、勢い良く顔を上げ真っ直ぐに僕の目を見て答える。 「私は…!この国を、私達国民を、助けてほしい…!!」 彼女は涙を堪えながら強く願う。 「人間の方、身勝手なお願いだということは重々承知の上で頼みます。私達を、この地を、助けて下さい…!!」 僕は力強く頷く。 「あぁ、分かった。僕は助けを求める者が居るならば、この命尽きようとも助けようじゃないか!」 僕は握り拳で胸を力強く叩く。 『助けを求められたから…それもあるけど、僕は何故か彼女のことを放っておけないんだ。初対面の筈なのに、不思議だな。』 僕は彼女に手を差しのべる。 「さあ、行こう。この国を救いに!」 彼女は僕の手を取る。 僕らの未来にあるは栄光か、それとも… 僕の足は誰にも止められない。 誰かが僕の助けを、求める限り。
神武椿の裏事情
第一章 【メイドと双子奴隷】 此処は男性主義のイカれた思想を掲げる国【ストック】。 そんな国のとある屋敷に私は居た。 ジャラジャラと、金属の鎖が揺れる音が鳴り響いている。 私は椿。この屋敷のメイドだ。 メイドと言っても給料が出る訳では無い。 まだ奴隷よりかはましと言う程度の扱いだ。 この国で、女性の人権はほぼ無い。 奴隷制度も認められ、奴隷売買がショッピングモールの目玉になっていることも珍しくは無い。 私は目立つ汚れから順に隅々まで綺麗に掃除をしていく。 奴隷に成らなかっただけまだましだと思わなければならない。 だって、奴隷に落ちた女性の中には酷い扱いを受けて自害を選ぶ人も少なくは無いのだから… 掃除が終わると、この屋敷の主人がご帰宅なさった。 メイドと侍従が扉の前にずらりと並びご主人様をお出迎えする。 ご主人様は新しい奴隷を連れてきた。 神秘的な髪と瞳の色をした双子の奴隷だ。 ご主人様は双子が家に入るとすぐに奴隷の証とも言える首輪を外した。 屋敷の皆、騒ぎ出した。 奴隷の首輪を自分好みの物や邪魔にならない物に変えるのはよくあるが完全に外すのは【奴隷解放】とみなされて罪に問われる可能性も有る。 貴族男性でも最悪の場合処刑されてしまう。 貴族出身の侍従長がご主人様に皆の代表の様に進言した。 「旦那様。奴隷の首輪を外すとは、その行動の意味を理解しておられるのでしょうか?」 他の侍従たちも侍従長に続き意見を述べる。 「旦那様!我々は旦那様に罪人になってほしく有りません!」 「何故奴隷の首輪を外すのですか?!」 ご主人様は無言でその豊満な髭を摘んでいる。 その様子を見ていた奴隷の片割れが溜め息を着き、懐からサファイアの様な濃い青の宝石を取り出した。 その奴隷が何かを呟くと宝石が眩い光を放った。 するとその一瞬、空間が光に満ちた一瞬だけ場が静まり返った。 その後再び上がった声はご主人様への賞賛の声だった。 奴隷を解放した事への賛同の声と双子奴隷達への好意的な言葉の数々がメイドや侍従から発せられた。 ご主人様も満足気に頷き、私は唖然といていた。 この国では最底辺の存在として扱われる奴隷に皆いきなり好意的になった。 侍従達の意見もいきなりひっくり返った。 『あの宝石…一体何?まるでそう、御伽噺に出てくる魔法みたい。』 今、私だけがあの奴隷達に疑問を持っているのだろう。 そんな風に悶々と私が悩んでいると、ご主人様が奴隷達と肩を組み言った。 「2人の事は我が亡き息子と同じ扱いをしようと思っている。2人も、それで良いか?」 ご主人様が2人へかける声はとても優しい声だった。 本来なら奴隷、しかも女の子がご子息と同じ扱いを受けるだなんて普通は許されない事だが屋敷の者は全員快く承諾していた。 そしてその日は数人のメイドを連れ元・奴隷の双子は屋敷で2番目に上質な部屋に通された。 私は双子の片割れの持っていた宝石についてとても気になり、元・奴隷である双子へ向ける感情(嫉妬や好感等)とあの宝石の事についてその場に居た使用人達にそれとなく色々と聴いてみる事にした。 あれから数日間聞き込みを続けご主人様にもお世話の際少し聞いてみたが、皆双子への好感度が異常に高くなっている様だった。 ご主人様の奴隷解放とも見える行為によって2人への好感度はマイナスから始まったにも関わらず、人によっては忠誠心さえ感じられる言動の者も居た。 そして何よりも不可解なのが、誰一人としてあの宝石を見ていない…覚えいないのだ。 あんなに徐ろに出されていたのにも関わらず誰一人として、だ。 『きっと双子へのこの異常な好感度はあの宝石せいね。』 私はあの宝石を盗む事にした。 悪い事だし今の屋敷であの2人の物を奪うのは屋敷中の人を敵に回しかねない危険な行為だが、恐れは無かった。 それよりもあの宝石に私はとても強く惹かれていた。 胸の高揚感。 このトキメキ… あの双子以外はどんなに堂々と置かれていても宝石に気づいていなかった。 つまり、私とあの双子以外は誰もあの宝石が見えていない。 幸いにも明日は私があの双子のお世話をする当番の日。 盗むのには絶好の日だ。 『ふふふ、明日が待ちどうしいよ♪』 ◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖◆❖ 「…この屋敷に居るはずなのだけれど、全員宝石の魔法に掛かっている様に見える。」 口元を手で隠しながら緑髪の元・奴隷「天宮城楓」は怪訝そうに言った。 「ねぇねぇ、本当にこの屋敷なの?エルラッテ〜私にはこの屋敷に〝彼女〟が居るとは到底思えないよぉ」 少し拗ねた様な表情でそう言う桃色の髪が特徴的な彼女は同じく元・奴隷の「天宮城心結」。 「宝石にも誰一人気付いてる様子なしいさ〜」 「でも、この屋敷から彼女の心の波動がするんでしょ?」 そう楓が聞くと眉をひそめながら心結が言った。 「そうなんだよ〜、とりあえずこの屋敷内に居るのは間違いない!って位近い距離から波動がするんだよね…」 おかしいな〜と言いながら心結は首を傾げる。 「まあ、何にせよこの屋敷の人々全員と話せば分かるでしょ。」 「そだねー!居なかったらまた別のとこ探そ〜」 双子の声と共にその夜は省けて行ったのだった。
神武椿の裏事情
プロローグ 「怪盗リナリアが現れたぞ!」 「今度こそ捕まえろ!」 夜空を舞う一人の女が居た。 白いマントをはためかせ走る、紅色の髪の乙女… 世間が注目する空前絶後の大怪盗リナリア。 彼女は王の居る城の頂上に立ち胸に手を当て高らかに宣言した。 「過去に奪い損ねた秘宝…今宵頂きに参りました。」 そして一拍置き、彼女は言った。 「この国、奪わせて頂きます。」 彼女は不敵に笑いまるで幻だったかの様にそこから消えた…
欠陥姫は成り上がる
第2章【ダンジョン・精霊の図書室】 穴に落ちるような浮遊感を感じた。 目を開けると白っぽい青緑色の光が目に入った。 光る蔦だ。 一等大きな蔦を引っ張るとブチッと蔦が千切れる音ともに背中に痛みを感じた。 どうやら〝穴の底〟に着いたようだ。 穴の底には浮かんでいたり、置いてあったりする白い煉瓦で出来た本棚がそこかしこに有った。 そして…魔物。 『周囲の景色、環境、魔物の種類…間違いないな。ここは…S級ダンジョン〝精霊の図書室〟だ。』 S級ダンジョン・精霊の図書室。 まず、この世界は作られる前、黒い闇で出来ていた。 そこに、創造の女神〈セルティア〉が舞い降り、闇を一混ぜすると五つの大陸が出来た。 闇は凝縮され、魔神と成った。 魔神は一目見た女神を愛し、執着した。 魔神は自身の欠片を大陸の隙間から地上へと出し、ダンジョンを作った。 ダンジョンの魔物を積上げて女神を捕まえようと考えたのだ。 けれど、五つの大陸に住まう人間や亜人達は産みの親である女神を守るためにダンジョンを攻略し、魔物を倒し続けた。 コレが創世神話にて語られる〝ダンジョン〟の概念である。 ダンジョンにはF~Lまでのランクが付けられる。 F~Dまでのランクのものは下級の冒険者達に簡単に攻略され、C~Aになると高位の冒険者パーティーや騎士団に要請が出される。 そして…S・Lランクのものは何を置いてもその攻略を優先する。 Sランクの冒険者パーティや王立の騎士団、国境を守るラヴェル辺境伯家の騎士達にも要請がかかり討伐及び攻略にあたる。 勇者もその時代に居れば勿論呼ばれる。 『詰まるところココは…〝百戦錬磨の戦人でも死ぬ程危険なダンジョン〟ということになるな。』 「さて、どうしたもんかな〜」 僕はいきなりの事に驚き、頭を悩ませていると目の端に人影が見えた気がした。 見間違えでなければ僕と同い歳位の女の子。 『な、何でこんな所に女の子が…!?』 僕は少女を追いかけた。 『見間違いかもしれない。でも、もし見間違いじゃないのならば…』 僕の頭の中に数々の単語が思い浮かんだ。 熟練の冒険者・騎士・辺境伯家・S級ダンジョン・魔物・〝死〟…! 僕は走った。 走って走って…見失った… 「はぁはぁ…やっぱり、見間違い…だったのかな?」 僕は心から思った。 「よかった〜!」 心から安堵した。 今、僕は魔物に囲まれている。 でも、幼い少女が死ぬよりも出来損ないの自分が死ぬ方が断然良い。 『気の所為で、本当に…良かった。』 僕は少女が最後に居た〝気がした〟所の本棚に手を着く。 すると、足元に魔法陣が現れた。 紫色の光を放ち、僕は何処かへ飛ばされた。 目を開けるとそこには棍棒を振り回す大きな二足歩行の青い牛と一〇歳位の兎獣人の女の子がいた。 僕が、さっきまで追いかけていた少女だ。 ピンクブロンドの髪とアメジストのような瞳の少女は牛へ鋭い視線を向けている。 地形・魔力密度・巨体の牛… 『え、ココって…ダンジョンの最下位層じゃね!?』 ってことは…と僕は牛を見る。 『あの牛が、ボスってこと?』 ダンジョンボスとは、そのダンジョンに住むダンジョンコアの守護者だ。 ダンジョンコアは強力な力を秘めており、ダンジョンを形作る物としか分かっていない。 そして、ダンジョンコアを破壊することでダンジョンを攻略。 つまり破壊出来るのだ。 ただし、ダンジョンボスの強さはダンジョンのランクに比例するので高位のダンジョンを攻略する際は注意が必要。 僕は、思った。 『彼女は今、明らかに劣勢だ。加勢したいが僕のような欠陥品がしゃしゃり出た所で更に状況が悪化するかも…しれない。』 出るべきじゃない。 そう思った。 思っていた。 彼女が、一〇歳の女の子が、棍棒で壁に叩き付けられるのを見るまでは。 頭に血が昇った。 怒りが暴走した。 考えるよりも、言葉にするよりも早く、足が動いた。 『とにかく、とにかく少女を安全な所へ』 僕は少女の所まで全力で走る。 少女は気絶していた。 僕はゆっくりと少女を抱いた。 棍棒が、少女に追撃を加えようとした。 棍棒が僕の頭目掛けて振り下ろされる。 「邪魔」 僕は一言そう言い、棍棒を握り潰した。 冷たい怒りが、全身を駆け巡る。 そっと少女を部屋の端に寝かせた。 そして、僕は牛の方へと一歩、また一歩とゆっくり近づいていく。 「ねぇ、牛さん。僕ってほんとに馬鹿だよね?」 僕はニコりと笑う。 きっと目は笑っていないだろう。 「だって、欠陥品の僕とS級ダンジョンのボスな君。勝敗は、分かりきってる。」 牛が後退りをする。 あいつは本能で分かったのだ。 〝勝てない〟と… 牛が逃走しようとした。 僕は奴の背中に手を付き、奴の眼前へと舞い降りる。 「でもね、牛さん。僕、イラッとしたんだ。」 牛は棍棒を無造作に振り回す。 焦り・不安・恐怖。 どれも感じ得ないはずの感情をあの魔物は感じている。 ティアナは軽々と棍棒を避けながら笑うように言う。 「ね?可笑しいでしょ?見ず知らずの女の子が死にかけたからって、こんなに、怒って。怒って。怒って…!」 目をカッと開いた。 ティアナはゆっくりと息を吐く。 そして言った。 恐ろしい笑みを浮かべて。 「でもさ、コレが…欠陥品の僕が、生まれた意味のような気がするから…」 「さようなら。」 壊れた棍棒を牛は投げ捨て、突進してくる。 きっと、僕はこの時死ぬ筈だったのだろう。 でも、その日。その時。 力が、溢れた様な〝気がした〟んだ。 だから、手を前へ掲げた。 この口から零れた。 勇者しか使うことの出来ない…魔法の言葉が… 「我の夢と成り。我に力を与えよ。〝神翼のポラリス〟!」 ポラリス。 それは、現代の地球では北極星を意味し、この世界では… 〝勇者〟 闇夜を照らす唯一の道標である守護者を示す言葉であった。 ❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇❖◇ 意識が朦朧とする中で見たのは、金糸の髪と翡翠の瞳だった。 小さな背中は堂々としていて、ミノタウロス…あの化け物の攻撃を悠々と躱した。 彼女は何か言っている。 「……欠陥品の…が、………味のよ……………」 『欠陥品…?』 誰がそんな事を言ったのだろう。 彼女の姿はまるで… 彼女は楽しげ笑い、手をミノタウロスの方へと掲げる。 「我が夢と成り。我に力を与えよ。〝神翼のポラリス〟!」 「え…!?」 このボス部屋の全部に彼女の声が響き渡る。 『あの神言…それに今、ポラリスって…』 彼女の純白色の翼が光の胞子と共にその姿を現した。 彼女の足が地面から離れた。 彼女が浮かび上がるにつれ、彼女の髪も伸びていった。 彼女は、ミノタウロスを冷ややかに見つめて言った。 「雫」 静かに、それでいて力強く言った。 すると…七色の雨が降り注いだ。 まるで物語りのような光景に息を飲んでいると… 「え!傷が…」 全身に有った打撲などの傷がみるみる塞がって行く。 また私の体とは対照的に、ミノタウロスの身体はまるで浄化でもされるかのように光の胞子と成り消えていった。 『そうか、あの御方が…』 「勇者様…」 私は目を潤ませながら彼女を見つめたのだった。 ※神言とは…各職業のスキルを使用する為に言わなければならない呪文のような物
自己紹介
Canonの自己紹介 こんにちは!または、こんばんはです! 小説家志望の〝Canon・Noe〟って言います。 こうゆうサイトに小説載せたりとかするの、初の超絶初心者です… 小学生…いや、幼稚園の年長さん位?に初めて物語りを書きました。 もっとも、自分以外には読めないような字でしたがあの頃から私は物語りの〝読み手〟ではなく、〝書き手〟になりたかったんだと思います。 私は、初心者で、文も拙く、きっと誤字脱字も多いし、面白い作品を書ける自信もありません。 ですが、暖かい目で見守ってもらえると恐縮です。 これから良い作品の良いところをジャンジャン吸収して、より良い作品を作っていこうと思っているので感想やご指摘が御座いましたら何卒宜しくお願いします! それでは!
欠陥姫は成り上がる
第1章【欠陥姫の始まり】 ティアナ・カティ・セラフィーネ。 通称【欠陥皇女】。 神から職を与えられなかった、セラフィーネ皇国の無能な姫君。 それが、今世の僕だ。 この世界では五歳になると教会でステータスを確認する。 このカラミテス大陸ではステータスが全てで、公式的な僕のステータスは【メインとサブの職業なし】【魔力属性不明】【HP及びMP共に一〇以下】【才能は女性に有るまじき剣の才】【特殊スキルは人々を惑わす魅了と呪われし不老不死のスキル】となっている。 歳を取らなくて周囲を惑わす無才の姫… 誰かに利用でもされたら国家が傾く可能性も否めない。 そんな僕は教会に行った日以来、南部に在る皇族専用の別荘にて幽閉されている。 教会に行ったあの日、僕は昔の〝僕〟について思い出した。 〝日本〟の〝高校生〟だったこと。 諸々を思い出した。 そして、僕は鑑定板に写ったステータスを神官達や両親が確認した後にココに幽閉された。 現在の年齢は一〇歳。 この別荘には使用人も誰も居ない。 理由は僕が持つパッシブスキル【魅了】にあてられて、反乱等が起こることを危惧してのことだ。 食材は週に一度、王都から送られてくる。 欲しいものがあれば紙に書いて食材の入っていた籠と一緒に返却すれば物資も大体の手に入る。 ココに来る時、父である国王から街や外に出る事を禁止された。 これも先程と同じく魅了のスキルに領民があてられると色々と面倒だから、というのと王族の証である金髪を見られると少々と厄介だからだと言われた。 正直、ココから出られないことに最初は不満を抱いていた。 人とも会えないし、話せない。 何かをやる気力もなかった。 けれど、四年前に僕はこの別荘で〝秘密の地下室〟を見つけたのだ。 そこには王宮を凌ぐ程の量の本が有った。 魔法・体術・剣術・鞭術・弓術・薬草学・社交術・交渉術等、色々なジャンルの本があった。 地下室は地上の部屋よりも広く、魔法で亜空間になっているようだった。 それから、僕は地下室に籠るようになった。 幸いにも僕は家事全般が得意だった。 前世では女子力男子と言われたりもしていた。 女子力が高いことに対して文句を言う輩にはお菓子を口に突っ込めば、皆何も言わなくなった。 僕は別荘にある大きめの空部屋を一つ鍛錬用の部屋に改造し、本で見た武術や魔法を試しまくった。 今では、地下の蔵書の殆どを読み尽くした。 この身体は魔法を使っても何故か魔力が消費された感じはしないうえ、体術などを実戦しても全く疲れない。 『この世界の人ってタフなんだなー』と思った。 僕はとにかく読んで、実践し、また読んでを繰り返した。 そんなある日、僕は今までに見た事のない真新しい本を見つけた。 その本はまるで光り輝いているように見えた。 僕は本を手に取り、題名を無意識に口にした。 「〝勇者と精霊の国〟…」 その話は、古い御伽噺だった。 昔むかし、とある子供がおりました。 子供は冒険をすることが大好きでした。 街を練り歩き、森を探検し、まだ見ぬワクワクを探すことが好きでした。 子供はある日、湖へと行きました。 その湖は子供が近寄ると、瞬き一つする間に眩く光りだしました。 子供は、不思議な湖に興味を持ちその水に触れました。 水からは助けを乞う少女の声が聞こえました。 「「お願い…!助けて!国を、どうか…!!」」 僕は驚いた。 本を読んでいると、声が聞こえた。 この本の子供が聞いた言葉と全く同じ言葉だ。 『何処から聞こえるんだ…?』 僕が戸惑っていると、本が一等眩く辺りを包み込むように光り輝いた。 僕は反射的に目を瞑った。
欠陥姫は成り上がる
プロローグ ただ漠然と、周りと同じ様に大学に行って。 就職して。 誰かと結婚して。 何の変哲もない人生を送ると思っていた。 高3の冬、僕は第一志望の大学に受かって少し浮き足立っていた。 それがいけなかったのだろうか。 誰かが家に押し入り、腹部からの激痛と鈍い頭部の痛みを最後に僕の記憶は途切れた。 次に目が覚めるとそこは雲の上だった。 天国かななんてぼんやり考えながら辺りを歩いていると何も無い雲の上に一つだけ、湖が有った。 そこにはとある情景が映し出されていた。 一つ目は制服を着た数名の学生達が楽しげに談笑している情景だった。 特に目を引いたのが金色の髪の少女だった。 彼女の表情は希望に満ちていて、まるで主人公の様だった。 だが、水面が揺らぐとそこには金色髪の彼女と2,3人の先程の情景で共に談笑していた学生達が泣き崩れていた。 水面にどこからともなく一粒の雫が落ちるとまた情景が変わった。 今度は金髪の少女と学生に加え何人か仲間が増えた様で和気あいあいと旅をしていた。 だが、また水面が揺らぐと金髪の少女と数名の旅仲間達が皆屍の上で泣いていた。 恐らく…仲間の誰かが死んでしまったのだろう。 雫が落ちた。 その場面が最後の2場面だった。 まず、金髪少女が皆に讃えられていた。 何か物凄い事を成し遂げた様だった。 皆が賞賛の拍手を鳴らし、少女も微笑んでいた。 でも、水面が揺れて変わった場面は雨の中で絶望と悲しみの入りまじる表情で泣く彼女だった。 全ての情景を見終えると目の前に女性が現れた。 見た目は全然覚えていないが彼女が女神様だというのは何故か分かった。 女神様は言った。 「若くして死んだ貴方に新たな人生と使命を…」 その言葉が終わると同時に視界は歪み再び記憶が途切れた。