メナジェール

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メナジェール

覗いていただき、有難う御座います。 このアプリで初めて小説を書き始めた学生です。 表紙などは自分で描いているか、フリー素材のみで作っております。 僕の書いている小説の二次創作をいつでも募集しております。書いていただける方はその作品のコメントにてお知らせお願いします。 初投稿:2023.11.20

5話〜魔法のお勉強〜

フルールは特殊魔法について話し始めた。 「まず特殊魔法っていうのはね、その人にしか使えないような特別な魔法。 一人一つが普通だけど、本当にごく稀に二つ持ってる人がいるわ」 「二つって、そんなこと本当にあるんですね」 桜詩が驚くとフルールがそうなのよと相槌を打って話を続けた。 「特殊魔法にはね、条件があるの」 「条件?初めて聞きました」 「まあ、条件というか、覚醒する魔法の特徴みたいなものよ。 それはね覚醒する本人に絶対に関わっていることよ」 「いまいちよく分からないです」 無性が首を傾げてそう言うとフルールも笑って言った。 「うふふ。そうよね。 ええっと、その本人が好きなことに関わってたり、やりたいこととかに関わってたりするわ」 「じゃあメナさんもそうなんですか」 桜詩がそう言ってメナの方を向くとメナは僕?みたいな顔をして答えた。 「そうね。僕の特徴魔法は『ミステリアスプレイングカード』だよ。 ジェネシスの実験施設から出てきた時に、フルール先生が教えてくれたマジックが楽しくて、それが多分特徴魔法に現れたんだと思う。 スフェーンは?」 「私かい?私の特徴魔法は『ノウスヒストリア』だね。 私は、物語を作るのが好きだったからかな」 「そうそう。みんな好きなものも、得意なことも違うから特殊魔法はバラバラなのよ。そう言えば、雨(れいん)もあったわよね。特殊魔法」 「あるにはあるけど、今は話したく無いかな。 その時になったらまた話すよ」 「で、桜詩ちゃんも無性ちゃんもそのうちしっかりと覚醒してくると思うわ。 きっかけは突然やって来るものよ」 「私の特殊魔法か……。なんだか想像ができないですね」 「まあ初めはそんなものよ。安心して頂戴」 フルールは優しく桜詩と無性に笑いかけた。 桜詩はメナがフルールのことを先生と慕っている理由がなんとなく分かった気がした。 「あ、そうそうメナくんなんだけど、今日の夜ちょっとだけ貸して欲しいのよ」 「僕は良いけど、どうしたの?」 「一時期ここでバーテンダーやってたでしょう? あれ、またやって欲しいのよ。 よかったらみんなもここに泊まって欲しいわ」 「構わないよ。久々にメナくんもフルールに会えたんだしね」 桜詩はびっくりしてメナに言った。 「え、メナさん、バーテンダーやってたんですか?見たいです!」 「まあね。僕、なかなかお酒作るの上手いんだよ!」 メナそう言ってはフルールの店の奥へと着替えに行った。

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5話〜魔法のお勉強〜

【BL】夕波の歌

波の音、窓にはオレンジ色の夕日、涼しい潮風。 それが僕のいつもの景色。 窓枠に座り海をぼうっと眺めながら煙草を吸っている黒髪の男性。 いつも傷がある男性。 「先生、いつも言ってますけど煙草辞めたらどうです?寿命が縮みますよ」 僕がそう言うと先生は決まってこう言う。 「長生きしたって良いことはない。もうこの世でやりたい事もない。いっそのこと、今すぐに逝ってしまいたいよ。」 「もー、またそんなこと言って。そうなったら寂しいのは僕なんですからね」 「よく言うよ」 先生は不思議な人だ。 いつも寂しそうな、遠くのどこかを見つめる様な真っ黒い眼をしている。 最近は目の下の隈も段々と濃くなっている気がする。 先生は小説家だ。 僕は先生が書く小説が大好きだ。 名前は、あれ、先生の名前って何だっけ。 僕の記憶は所々途切れている。 僕が久しぶりに先生の家に帰ってきた時も先生はなぜか、静かに涙を溢した。 理由を聞いても先生は教えてくれないし、僕が覚えてない記憶も教えてくれない。 先生は煙草を吸い終えると執筆作業に戻った。 「先生、僕、お茶淹れてきますね」 「ああ。ありがとう」 僕はキッチンにお茶を入れに行った。 先生の笑顔はいつもぎこちない。 どこか、無理をしている様な笑顔だ。 「あ、先生、また唇の皮剥いでる。駄目ですよ。跡になっちゃいますよ」 「あ、ごめん。本当にこれは無意識で」 僕は先生の唇を指でそっとなぞった。 「もう、こんなボロボロになるまでめくって。血が出てるじゃないですか」 「別に、そんなに痛くないし。」 「そう言う問題じゃないです」 先生の顔を見ると頬と耳がほんのりと赤くなっていた。 「これ以上邪魔するわけにはいかないですし、僕、ちょっとだけ散歩してきますね」 「……分かった」 僕はそうして近くの海に向かった。 やっぱりこの時間は涼しくて良いな。 潮風が気持ちいい。 僕はふと歌を口ずさんだ。 先生がよく歌っている曲。この前初めて聴いたのに、なぜかずっと前から知っている様な懐かしい感じがした。 その日の晩御飯の時、先生は言った。 「明日、お墓参りに行こう」 「誰のですか?」 「私にとって、とても大事な人」 先生は静かにご飯を食べながらそう言った。 その日の夜、先生は執筆の合間に鶴を折り紙で折っていた。 先生はよく鶴を折っている。 「先生、よく鶴折ってますよね。何でですか?」 「ん?ああ、これか。君がこれ好きだったから。」 過去形?昔の僕が好きだったって。 あんまり昔のことは覚えてないや。 それからしばらくして先生を見てみると先生が机に伏せて寝ていた。 その目からは涙が溢れて頬を伝っていた。 次の日、僕は先生とお墓参りに向かった。 その途中で僕は、おばあさんと肩がぶつかってしまった。 「あ、ごめんなさい」 僕が謝るとおばあさんは僕のことを無視した。 前から何度かこういったことがあるのだ。 まるで、僕なんか見えていないみたいに。 僕ってそんなに存在感薄いかな? しばらく歩いてお墓に着いた。 先生が線香をあげ、手を合わせた。 それから少しして、先生はいつもの歌を歌い始めた。 だから、途中から僕も合わせて歌ってみた。 「渚(なぎさ)、その曲……」 「渚?うっ」 頭が割れる様に痛い。 その時、僕が忘れていた記憶が頭に流れ込んできた。 僕の名前は渚だということ。 先生の名前は小夜(さよ)だということ。 僕は小夜先生の恋人だったこと。 僕は………… 既に死んでいるということ。 とある夜に僕は小夜と自殺した。 小夜は昔から一人で、両親がとても厳しくて、常にアザがあった。 大人になっても両親は虐待を辞めず、仕事にまで支障ををきたすようになった。 それに疲れた小夜は僕に 「一緒に死のう」 と言ってきた。 僕も人間関係が上手くいかず、両親にも見捨てられ、誰にも求められない。もう限界だった。 そうして二人で固く手を繋いで、海へと飛び込んだ。 だけどそれは失敗。 僕だけが死んで、小夜は病院に運ばれてなんとか一命を取り留めた。 「小夜、僕、全部思い出した」 「渚?本当なのか?私、渚がいなくなって……ずっとずっと寂しくて」 僕は優しく小夜を抱きしめて頭を撫でた。 「うん、ごめんね。僕、今とっても幸せだよ。」 「じゃあ、一緒に帰ろう。あの家に。荷物まとめるからちょっと待ってて」 そうして小夜はお墓の方を向いて荷物をまとめだした。 あーあ。僕、今とっても幸せだな。 小夜に求められて。僕も小夜のこと求めて。 今なら何処へだって行けそうだ。 「渚、帰ろう!……渚?」 小夜は笑顔で振り向くと、そこにはもう、誰も居なかった。

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【BL】夕波の歌

笑う妖は福を運ぶ

「……い。おーい。兄ちゃん、そろそろ起きぃ」 俺はそんな声が聞こえて目をゆっくりと開けた。 なんだか、あったかい。なんだろう、いっそのことこのままでいたい。 まだぼやけた視界に一人の男の姿が映った。 「お、起きたな。おはようさん」 そう言ったのはどう見ても怪しい男だった。 オレンジ色の七三分けで前髪が少し垂れている。 服は赤の和服に黒色の裏地が赤い羽織。 一言で表すのなら、キツネのような胡散臭い男だった。 「あんちゃん、ぼーっとしとるけど大丈夫か?しっかりしぃや」 「え、ここ、どこ?」 「あー、せやな。混乱するよな。ここは死後の世界。まあ明確に言えば、閻魔様のとこに行く前の通過地点みたいなもんや」 そう言われて俺は辺りを見回した。 まるで祭りのような神社の様な長い道だった。 「ところであんちゃん、なんで死のうとしたんや?」 俺はその言葉でハッと思い出した。 俺は自室で首を吊った。もう人生に疲れていたんだ。 「あー、なるほどな。よくあるタイプやな」 俺が何も言っていないのに男は俺の心を読んだかの様にそう言った。 「あんた、俺の心が読めるのか?」 「うーん、まあな。ボクは……、いや、説明は後や!とにかくボクはな、あんちゃんのことを生き返らせるためにあんちゃんのとこに来たんや」 「な、俺はそんなこと微塵も願ってない!」 「しー。まぁ話は最後まで聞きや」 男は俺の口を人差し指で塞ぎ言った。 「これはボクの仕事でもあるんや。やからな……、あんちゃんの願いを三つだけ叶えてあげるっちゅうことや」 「願い……?」 「せや。何かは有るやろう。まあ細かい話は後でええわ。とりあえず現世に戻ろか」 男がそう言った瞬間、目の前が真っ白く光り、俺は現実世界でむせた。 首を吊っていた紐が切れていたのだ。 「よし、ちゃんと戻って来れたな。ボクの名前は狐幸(ここう)や。あんちゃんは?」 「俺は……梔子(くちなし)だ」 「ほうかほうか。ええ名前やんか。で、まずは一つ目の願いを聞こうか」 「俺は……垢抜けがしたい」 「おーおー、ええやないか!ほな行こうか。ボクがその願い、絶対に叶えてあげるからな」 そうしてあれこれといろんな場所に連れて行かれた。 はじめに連れて行かれたのは美容院だった。 どうやら狐幸の知り合いらしくおまかせで髪を切ってヘアセットまで教えてくれた。 その次に連れて行かれたのは服屋だった。 そこのオーナーも狐幸の知り合いらしく、色々なコーディネートをしてくれた。 なんだ。もっと魔法みたいな方法で叶えてくれるかと思ってたけど、案外原始的な方法なんだな。 「よし。あった頃からおもっとったけど、やっぱキレーな顔しとるな。じゃ、二つ目の願いを聞こうか」 俺は少し考えてから言葉を発した。 「仕事に就きたい」 「仕事か。任せときぃや。ボクがなんとかしたるわ」 俺は狐幸に紹介された飲食店の面接に行ってみた。 狐幸が言うには呪いをかけてあるとの事だった。 結果はなんと合格。案外あっけないものだ。 「お、おかえり。暇やったから部屋の掃除しといたで」 面接から帰ってくると部屋は驚くほど綺麗になっていた。 「なぁ」 「ん?なんや?」 「あんたはなんで俺のためにここまでしてくれるんだ?」 「なんや、そんなことかいな。それはな、ボクの願いやからや」 「願い?」 「せや。ボクも元は人間やってん。それがな、あんちゃんみたいに人生に疲れて自殺しようとして目を覚ましたらボクもあの場所にいたねん。 そしたらな、ボクの願いを三つ叶えてやる言われたからあんちゃんみたいに色んなことを願ったんや。そしたら二つ目の願いが叶ったぐらいになぜか死ぬのが怖くなってたんや」 それは今の俺と似た様なものだった。 今は幸せで死ぬことが怖くなっていた。本当におかしいくらいに。 「やからな、ボクは三つ目の願い事にな、あなたみたいになりたい言うたんや。そしたらな、この仕事に就くことができたんや。 ボクはな、人が笑うところが好きやねん。生前は芸人やったのもあるかもな」 狐幸は笑っていた。 それはこれまでの笑い方じゃない。 本当に、本当に、 幸せそうな顔で笑った。 「なぁ、最後の願いをいいか?」 「ああ、ええよ。言うてみ」 「お前とずっと一緒にいたい」 「なんや!えらい急なプロポーズやないか!」 狐幸はケラケラと笑いながら俺を煽る様に言ったので俺は慌てて言った。 「いや、そう意味じゃない!その、お前といると本当に楽しいんだ。俺、これまで友達なんていたことないから。だから、俺の友達でいて欲しいなって」 「なんや、そういうことか。そんなこと言われたん初めてやわぁ。ええよ。あんちゃんと、梔子とずっと友達でいたるよ」 そう言った後に狐幸との時間はあっという間に過ぎて行った。 それから何年かが経ったある日、狐幸は俺に話してくれた。 「そう言えば、あの三つの願いのことなんやけどさ、あれ実は、何も呪いなんてかけて無かったねん。やから、あれはあんちゃんの力で叶えた願いやねんで」 俺はその言葉を聞いてなぜだか目から涙が溢れてきた。 悲しいからじゃない。 俺、そんなことできたんだ。あの時死ななくてよかったな。 狐幸は相変わらず笑いながら俺の背中をさすってくれた。 ああ、本当に、 幸せだな。

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笑う妖は福を運ぶ

夢遊日記

とある冬の星が綺麗な夜の話。 私はいつも通り、残業を終えて夜遅くに家へと帰ってきた。 私の勤めている会社は、所謂ブラック企業というものだ。 「はー、疲れた。私、このままおんなじような日々を繰り返して死んでいくのかな」 疲れのあまり、私は部屋の灯りもつけずにベットへと飛び込んだ。 そしてベットの横にある窓の外を眺めた。 月明かりが優しく窓から差し込んでくる。 「あ、今日の三日月、綺麗。星も綺麗」 意識が段々と遠のいてゆく。瞼がゆっくりと落ちてゆく。私は眠りについた。 (あれ、なんだか甘い香りがする) 私はそう思いゆっくりと目を開けると、見覚えのないベットに横たわっていた。 (どこ、ここ……?) 私が戸惑っていると横から優しい声がした。 「おや、今宵のお客様ですね。初めまして」 そう言ったのは優しい目をした男性だった。 真っ白な肌に水色の瞳と黒い肩までの髪の毛がよく映えている。 「おっと、自己紹介がまだでしたね。私は夢瑠(むる)と申します」 「えっと……」 「あ、初めてだと混乱してしまいますよね。ここは夢の中の世界です」 「夢の中の世界……?」 「はい。つまり、現実での貴方は眠っているということです」 なるほど、と私は頭の中を整理した。 「随分とお疲れな様ですね。少し待っていてください」 夢瑠がそう言って振り向くと焼き菓子の様な甘い香りがふわりと漂ってきた。 私は不思議とその香りに安心を覚えた。 そう感じていると夢瑠が帰ってきた。 「お待たせしてしました。これ、どうぞ。ホットミルクです。今夜は冷えていますし、体が温まりますよ」 「ありがとうございます」 私が一息つくと夢瑠は頭を撫でてくれた。 「ここには私と貴方しかいません。貴方さえ良ければ、私にお話をしてくれませんか?」 私はまるでその声に誘われたかの様に話し始めた。 「私、ブラック企業で今働いてるんです。辞めてしまいたいんですけど、少し怖くって。私、本当は本を書くお仕事がしたくって」 「それはそれは、ブラック企業だなんてまだまだあるものなのですね。その話、私で良ければご協力しますよ。少し待っていてください」 夢瑠は少し考えてから近くにあった雑貨などが置かれた木製の棚をゴソゴソとあさって、何やら小さな物を持ってきた。 「こちら、良ければ持っていってください」 「これは……」 それは紫色の様な、水色の様な小さい宝石のようなネックレスだった。 「お守りの様な物です。私は貴方の、現実の世界へは行けませんが、私が作った物なら、一つだけ現実の世界に送ることが出来ます」 私が驚いたような顔をしていると夢瑠は優しい声で言った。 「このネックレスには私のお呪いが掛けられています」 「お呪い?」 「そうです。『貴方に幸せが降り注ぎますように』って。私はここからでも祈っていますよ。おや、貴方が目覚めようとしているようです」 「あの……!」 私の視界が白くぼやけていっている。 「また、会えますか?」 すると夢瑠は優しく笑って答えた。 「貴方が私に会いたいと願いさえすれば」 その瞬間、現実の私は目を覚ました。 窓の外を見るともう朝だった。こんなによく眠れたのは久しぶりだ。 私の手のひらを見ると夢に出てきたネックレスがあった。 今度こそ、夢を叶えてやる。 私はその後、会社を辞め、新しい会社に転職した。 新しい会社はとても明るい雰囲気で楽しい。 前みたいに夜中に帰ってくることも無くなり、休みも取れるようになった。 そして休みの日、私は何をしようかと考えていると、思い出した。 私は小説が書きたいんだ。 だけど、初めからしっかりと書くのはハードルが高い。 だから、夢の中であったことをアプリでお話しにして書いてみて投稿することにした。 そう、 『夢遊日記』と名付けて

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夢遊日記

4話〜先生〜

その日の夜、雨(れいん)はスフェーンの長い髪の毛を丁寧に乾かしていた。 「また伸びたか?」 「ああ。でも、雨こそ私より長いじゃないか」 「それもそうだな」 二人はとても楽しそうに談笑していた。 それを見ていた桜詩はメナに話した。 「なんだかとっても仲良しですね」 「ねっ。まぁ、幸せなんていつ無くなっちゃうかわからないし、それが良いに越したことはないよ」 メナは嬉しそうに二人を眺めていた。 「ああ、そうだ。明日、フルールさんのところに行ってみないかい?無性も桜詩も特殊魔法の変化があったんだろう?フルールさんならそういったことに詳しいからね」 雨が桜詩と無性に向って言うと、桜詩と無性は口を揃えて言った。 「フルールさん?」 「うん。僕の先生、お師匠さんみたいな人。とっても良い人なんだよ」 メナがそう説明した。 「メナさんの先生って、どれだけ凄い方なんでしょうか。私、会ってみたいです!」 「僕もです」 そうして予定は決定した。 * * * * 翌日の昼、皆はフルールの店兼家へと向かった。 魔法学園からとても近く、綺麗な花が咲いている庭を通って店のドアの前まで歩いた。 店の外観は木造のとっても落ち着いた、いや、庭の花に合うような外観だった。 ドアの前にある看板にはヴェールという店の名前が書かれていた。 掛け看板にはクローズの文字もあった。 雨がドアを開けた。 「あら、ごめんなさい。今は空いてないのよ。って、あれ?雨さんじゃない!どうぞ、入って入って!」 「ああ。すまないね」 「良いのよ。メナも、久しぶり」 「久しぶり、フルール先生」 店内でそう返事をしたフルールは綺麗な男性だった。 センターで分けられ、綺麗に巻かれ、手入れをしっかりされたピンク色の長髪、優しくて明るいピンクの瞳、ワインレッドのベストの胸元には白いリボン、その上には袖が広く、フリルが付いているまるっこいコートを羽織っていた。 「ちょっとここに座って待っててちょうだい。ちょうどケーキを焼いたからお茶と一緒に持ってくるわ。ちょっとお喋りしましょ」 フルールはそう言って店内の奥へと向かっていった。 「いやぁ、相変わらず綺麗な方だよね。フルールさん」 ウルがそう言った。 「あの、フルールさんって……」 「ああ、桜詩と無性とウィザードは会うの初めてだよね。とっても良い人だよ」 「なんだかとっても可愛い人でしたね」 桜詩がワクワクしながら店内を見回した。 するとフルールが帰ってきた。 「あら、あなたが桜詩ちゃん?」 「あっはい。初めまして」 「あらー!とっても可愛いじゃない!」 「そっちが無性くんね」 「はい。初めまして」 「うんうん。良い子達ね」 ウィザードも小さく会釈をした。 フルールはクスリと柔らかく笑い、木製のチェアに腰掛けた。 「で、今日は何を聞きにきたのかしら?」 「ああ、無性と桜詩の特殊魔法について変化があったので」 「あら、そのことならワタシに任せてちょうだい」

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4話〜先生〜

メリーハロウィン

今宵はハロウィン。 そのとき、俺は森の中にいた。 この日はとてつもない嵐で、倒れてしまいそうになるほどの風だった。 昔から俺が住んでいる町では、ハロウィンの夜は村に近づくなと言い伝えられていた。 その夜に森へと立ち入ったものは森の中の怪しい洋館へと迷い込んでしまうと言われていた。 「くそっ、これじゃまともに歩くことすらできねえ」 ふらふらと森を彷徨っていると、目の前にオレンジ色の光が見えた。 灯りだ。 そう思って俺は近づくと、大きな洋館があった。 これが噂の……。でも、ここに泊めてもらうか何かしないと、本当にどうにかなってしまう。 俺はその洋館の重そうな木製の扉をノックした。 すると扉はまるで俺をその館に誘うように開いた。 俺が恐る恐る洋館の中に入ると、バタンッと大きな音を立てて扉は閉まってしまった。 俺が焦って扉を開けようとしたが、鍵のようなものがかかって開かない。 すると目の前に赤い目が怪しく光った。 洋館が暗くてよく見えないがこれだけは分かる。 人間では無い。 それはこちらに向かって走ってきた。 まずい、襲われる! その時だった。 「辞めなさい」 その声と同時に灯りが館中に灯った。 目の前にはヴァンパイアのような何かと少年のような姿。 俺を襲ってこようとしたヴァンパイアの口に少年が手を当てて止めていた。 「……!、すみません」 ヴァンパイアはその少年に跪いた。 一体何者なんだ。 その少年は俺の前へと姿勢を整えて立った。 「申し訳ありません。彼は少し取り乱しやすい性格でして」 少年はとても不思議な見た目だった。 かぼちゃのような色をした天然パーマの髪に全てを見透かしてしまいそうな澄んだグリーンの瞳。 袖がフリルになっていて裾がボロボロのジャケットに紫色のベスト、胸元には貴族がつけているようなシャボが目立っていた。 「貴方は、森で嵐に見舞われたといったところですかね」 「え、なんで分かるんですか」 「毎年ハロウィンになると嵐で人間様が迷い込んでくるものです」 その少年がパンパンと手を叩いて声を上げた。 「さぁ皆さん、お客様ですよ。しっかりとおもてなしをして下さいね」 その瞬間、屋敷中からふわふわと何かが沢山出てきた。 「人間さん?人間さんだー!」 「本当だ!ようこそ、ジャックズパレスへ!」 俺にそうして元気よく話してきたのは双子の姉妹のお化けだった。 何故かここにいるお化けは皆、俺を歓迎していた。 俺はその少年に部屋へと案内された。 案内された部屋はとても綺麗にされたホテルのようだった。 「今日はこちらをお使いください。何か必要なものがあれば僕にお申し付けください」 「ああ。ありがとう。なぁ、お前、名前は?」 「ああ、伝えていませんでしたね。僕はジャック・オ・ランタンです。ジャックとお呼びください。貴方のお名前は?」 「俺はウンブラだ」 「ウンブラさんですか。さぁ、皆さん!今宵はハロウィンパーティですよ!」 ジャックがそう言い手を叩くと皆は一斉に準備を始めた。 それから暫くして準備ができた。 華やかなハロウィンの飾りに美味しそうな料理、俺にはそれが光り輝いているように見えた。 「では、今宵ウンブラさんに出会えた奇跡とハロウィンを祝して、乾杯!」 「かんぱーい!!」 そうしてパーティは始まった。 俺はお化けの子供と遊んだり、大人びたお化けと話したり、美味しい料理を食べたりしてこの一夜を楽しんだ。 あっという間に夜は更け、時刻は零時を回った。 俺はベットに入って目をゆっくりと閉じるとあっという間に眠っていた。 * * * * 翌朝、俺は朝御飯を作ってもらいゆっくりと食べた。 昨晩の嵐が嘘のように外は晴れていた。 そうして俺がジャックズパレスから帰ろうとした時だった。 「すみませんね、昨晩はパーティに巻き込んでしまって」 「いやいや、俺も楽しかったから。ありがとう。世話になった」 「それはよかったです。良ければまた、遊びに来て下さいね」 「ああ!勿論だ」 「お待ちしておりますよ。では、お気をつけて」 俺は無事に町へと帰った。 その一週間後、俺はまたその館のあった場所へと向かった。 だけど、そこには何も無かった。 (あれ、確かにあったはずじゃ……あれは夢だったのか?) 俺がそう考えているとヒラリと俺のポケットから何かが落ちた。 それは、あの夜皆で撮った写真だった。 その写真は確かにみんな映っていた。笑っていた。 夢じゃないのか? なあ、教えてくれよ。ジャック。

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メリーハロウィン

3話〜幸せの香り〜

しばらくして、雨(レイン)はスフェーンの様子を見に行った。 スフェーンは窓の外を眺めていた。 「スフェーン、散歩にでも行かないか?」 「おや、珍しいね。雨から誘うなんて」 「その方がよく眠れるかと思って」 雨はスフェーンの隈、言動からそう推測した。 「はは、なんでもお見通しだね。いいよ、行こう」 雨はスフェーンを優しく車椅子に乗せて外へと出かけた。 今日は驚くほどの晴天だ。 「ねえスフェーン、お前はなんでメナくんやウルくんたちを助けてくれたんだ?」 「おや、そんなの簡単だよ。ジェネシスのラットにはなって欲しくないし、なにより、幸せになって欲しかったんだ」 スフェーンは本心からそう思っている。雨はずっとスフェーンと一緒にいたからこそ分かる。 スフェーンはとてもよく笑う。 とても優しい。他人でも、自分のことを考えずに優先する。 「おや、雨、泣いているのかい?どうしたんだい?」 雨は車椅子を動かすのをやめ、静かに泣いてスフェーンの前にしゃがんだ。 スフェーンは車椅子の上で必死に動き、わずかに残っている腕で雨の頭を撫でた。 「よしよし。誰もみていないから大丈夫だよ。雨は昔から甘えたがりなのに人に言えない。変わってないね」 「スフェーンだって……、お前だって、いつも他ばかり優先して自分のことは後回しだ」 「それは私の義務だ」 「そんなわけない!ボロボロに傷ついて良い者なんて、この世界に存在しない!」 「……。君の言うことも、一理あるのかもしれないな。私がこんなことしなければ、君たちも巻き込まれてなかった」 「そうじゃない。私に、スフェーン、君を甘やかせておくれよ」 雨はスフェーンをギュッと抱きしめた。 「……。じゃあ、今は君に私を託すよ。雨」 「ばか。」 二人は笑って、小さい頃に戻ったみたいに話しながら散歩をしてみんなの居場所、喫茶『星空』へと帰っていた。 「あ、雨。そこの花畑、寄って帰ろうよ」 「ああ、今止める」 雨はスフェーンが言った花畑にゆっくりとスフェーンを下ろした。 「あれ、これって」 「星導香(ほしるべこう)だね。懐かしい」 星導香とは、星のような花びらの形をしてとても甘い香りがする花だ。大きさはシロツメクサほどの大きさ。 花言葉は「幸せを導く」だ。由来はその花の香りから来てると言われているがもう一つ理由がある。 クローバーのようにその花を見た者には幸せが訪れるという昔からの言い伝えのようなものがあるからだ。 「懐かしいね。私がスフェーンと初めて遊んだのも星導香の花畑だった」 「そのときは、本当にびっくりしたよ。誰かもわからない私と一緒に遊んでくれるなんて」 「はは。懐かしいな。本当に」 雨は下の方で何か作業していた。 スフェーンが気になって覗いてみると、雨は作業が終わったようだ。 「はいっ、これ」 雨は星導香の花で作った花冠をスフェーンの頭にそっと乗っけた。 「ふふ。よく似合ってるよ。君に幸せが訪れますように」 スフェーンは一瞬驚いたが幸せそうに笑った。 「ありがとう、雨。ねぇ雨、今の私、少しは人間をできているかな」 「ああ。勿論。君は君だ」 二人は本当に子供に戻ったようだった。 花畑で笑って、話して、遊んで。 星導香は、二人に最大の幸せを運んできたのだった。

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3話〜幸せの香り〜

鳥籠の外のパラディ

※このお話は腐表現(BL要素)を含みます。 最悪な目覚めだ。 体がだるいと思い体温計を脇に挟みながら、仕事の準備をしていた。 ピピピピ。 三十八度。 やけにしんどいわけだ。だけども休むわけにも行かない。 俺はそう思い薬を飲んだ。 更に重ねて俺は今日、誕生日だ。今日で30歳を迎えた。 祝ってくれる人なんて一人も居ない。というか、そもそも期待していない。 「行ってきます」 誰もいない自分の部屋にポツリとそう呟き、俺は家を出た。 俺はフィデリス。ゲイだ。だがパートナーどころか、友人すらいない。 仕事は刑事。やりたくてこの仕事をやっているのではない。親が刑事の中でも偉い人で俺もやらされているって訳だ。 今日は夜勤だ。 内容は最近この辺りで騒ぎを起こしている怪盗を捕らえること。怪盗についての情報は名前どころか、見た目すら情報がない。 だが決まって予告状をよこしてくる。 今回の予告状はこれだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 今宵、ロイヤルヴィルのカジノバーに深夜零時、『楽園』をいただきに参上する。                 A. −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ロイヤルヴィル。 金と欲望が渦巻くギャンブルの街。 事件やトラブルなどが多くてよく仕事で立ち入るが、こんな事は初めてだ。 そしてこの『楽園』は絵画のことだ。 一体どんな怪盗なのだろうか。 そんなことを考えているうちに目的地であるカジノバーに着いた。 カランカラン。 木製のドアを開けた。 すると目の前には、広いカジノホールが広がっていた。 俺は取り敢えず店の角の方にあるバーカウンターの席に腰掛けた。 「いらっしゃいませ」 そう優しく挨拶をしたバーテンダーは俺が調査で来たことを知っている。 「シャーリーテンプルを一杯」 「かしこまりました」 それから暫くして俺が頼んだモクテルが来た時だった。 「隣、いいかな?」 「どうぞ」 隣に座ったのは中年の背が高い男性だった。 黒い中折れ帽を被っていて顔が見えにくかったが、席に腰掛けるとその帽子を取り、顔がよく見えるようになった。 それは一言で表すのならば美中年だった。 白い天然パーマの少し長い髪に紫色の瞳、赤紫色のマフラーに黒いコートと黒いハーネス。 俺は見惚れてしまった。 「君、お酒弱いの?」 「はい。実は、こう言った場所も初めてで」 「そうなんだ。普段遊んだりしないのかい?」 「家が厳しくてなかなか。父が刑事の偉い方で、昔から勉強ばかり。なんなら友達すら居ないです」 「じゃあ、今夜は私とちょっと悪いことしちゃおうか。ほら、着いておいで」 「えっ?は、はい!」 俺はどこに行くのかすら分からずにその男性について行った。 着いた場所はカジノの台だった。なんの台かは分からない。 「ポーカーだよ。名前ぐらいは聞いたことがあるだろう?もしよければ、一緒にやらないかい?」 「いえ、遠慮します。でも、見学ぐらいなら……」 「おや、そうかい。ディーラー、彼の見学を許してくれないか い?」 「構いませんよ」 それから俺は男性のプレイを見ていた。 何をしているのかはよく分からないが、大勝ちしているらしい。 彼は席を立ち上がり俺に行った。 「少し店の中を歩こうか」 ここのカジノバーは支配人が絵画が好きなため、たくさんの絵画が壁に掛けられている。 彼がとある絵の前に立ち止まった。 それは、『楽園』だった。 俺は今のことで今回の仕事のことを思い出して時計を見た。あと少しで予告の零時だった。 (このまま、彼との時間が続けばいいのに) 「絵画、お好きなんですか?」 「ああ。君はこの絵、どう思う?」 「え、そうですね…この天使たち、とても楽しそうですね。俺もこんな風になりたい」 「ねえ、さっきから気になってたんだけど、君についてもっと詳しく教えて?その、家庭の話とか」 (俺も誰かに話したかったし、少しぐらいならいいか) 「俺、さっきも言った通り父が刑事の偉い方なんです。それで親が厳しくていつでも勉強、勉強で。 それに、中学生の頃に自分がゲイだって気づいたんです。それからこんなことがバレたらどうしようって。なんでこんな俺になっちゃったんだろうって。 これならいっそのこと、悪側に慣れたらどれだけいいだろうって。」 「それは大変だったね。君、名前は?」 「フィデリス」 「フィデリスか。いい名前だ」 「あなたの名前は?」 「私かい?私は……アルセーヌ」 その瞬間、零時を告げる鐘が鳴り、辺りの明かりが消えた。 だけど、俺の前だけは光輝いていた。 まるで彼のためのスポットライトの様に。 「なぁフィデリス。私と一緒に来ないかい?」 アルセーヌはそう言いながら絵を背負い、俺に手を差し伸べた。 この手を取れば俺は世界を敵に回す。 けど、今のままでは居たくない! 俺はアルセーヌの手をとった。 するとアルセーヌは嬉しそうに笑い「着いておいで」と言いながら建物の屋根を駆けた。 俺は夢中でアルセーヌについて行った。 その瞬間は夢の様に楽しかった。本当に、目の前が輝いて見えたんだ。 すると急に眩暈がして意識が遠のいた。 アルセーヌが俺を呼ぶ声が遠くで聞こえる。 * * * * 俺が目を覚ましたのはアルセーヌの自宅のベットだった。 「おや、目が覚めたかい?ひどい熱が出ていたね」 とても優しい声だった。 俺の額には熱覚ましシートが貼ってあった。 アルセーヌはコートをとハーネスを脱ぎ、袖が膨らんだ白いブラウスに黒いスキニーパンツを着ていた。 「私は何か食べ物をとってくるよ」 アルセーヌが立ち上がりどこかに行こうとした。 すると俺は無意識にアルセーヌの袖をきゅっと引っ張っていた。 「ひとりに、しないで」 涙が止まらなかった。 アルセーヌは少し顔を赤くして俺を抱きしめた。 「ほんっとに君はかわいい。大丈夫だよ。私はここにいる」 こんなに甘えたのは初めてだ。 俺は思わず口走ってしまった。 「アルセーヌ。俺の願い事、一つだけ叶えてくれないか?」 「私にできることならなんだって叶えるよ」 「俺と……付き合ってくれないか?」 「えっ?本当に良いのかい?!私も君を私のものにしたいと心から思っていたんだ。嬉しい」 最高な夜だ。 そうして俺たちのハッピーライフが始まったのだった。

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鳥籠の外のパラディ

2話〜天使からの希望〜

「ミカエル様、今宜しいでしょうか」 通信のモニターに映ったのは羽が六つ生えている真っ白な天使だった。 「はい。宜しいですよ」 「今回はその、私が大きな怪我をしてしまったんですが、これは治せますでしょうか」 「ふむ、怪我ですか。実際見てみないと分かりません。今からそちらに向かいますが、構いませんか」 「構いませんよ。窓を開けておくので、そちらからお入りください」 学園長がそう答えるとミカエルは通信を切った。 それから少しすると外からバサバサと翼の音が聞こえた。 窓から入ってきて床に音も立てず降り立った。 「生身では初めまして。私、天使長のミカエルと申します」 生で見るとそれはそれは美しかった。全てが白くて透き通ってしまいそうだ。 「初めまして、ミカエルさん。私はこの星海魔法学園の学園長をしております“ウィザード・インペラトル”と申します」 「初めまして。スフェーンにお世話になっています。スフェーン、怪我を見せて頂いて宜しいですか?」 「はい」 ミカエルはスフェーンに近づき、腕と足を触った。 「ふむ、なかなか特殊なものですね。ですが、最近聖歌隊に入ったあの子なら治せるかもしれません」 「本当ですか?!」 「ですが少々時間がかかります。ざっと一ヶ月ほどでしょう。それまでは雨さん達にお世話になってください。私はこれで失礼します」 ミカエルはそう言って天界へと帰った。 「ではそういうことですので、スフェーンを頼みましたよ、雨」 「お任せください」 * * * * スフェーンたちは喫茶『星空』へと戻ってきた。 「お帰りなさい!ってそれ、どうしたんですか?!」 ウルは車椅子に乗せられたスフェーンの姿をみてとてもびっくりしていた。 「ちょっと色々あってね……。でも大丈夫だよ。私は部屋にこもっておくから気にしないで」 「それなら私の部屋を使ってくれ」 スフェーンが雨に部屋へと連れて行ってもらった時、ウルとウィザードに桜詩が事情を説明した。 「うーん、なるほどね。にしても、僕とウィザードたちこと、まだ引きずってるんだ。もう大丈夫なのに」 「まあスフェーンって昔からそうだったから。研究所にいたときも、ずっとごめんね、ごめんねって言ってたよ」 メナが不安そうな顔をしてそう話していると雨がおりて来た。 「さあ、ひとまずは店を開けよう。仕事の時間だ」 皆の中に不安が漂う中、一日が始まった。

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2話〜天使からの希望〜

1話〜一夜にしての再会〜

「あれ、桜詩(おうた)何やってるの?」 メナが桜詩に尋ねた。 「メナさん!」 その横には雨(れいん)も居た。 「いやぁ、それがね、桜詩くんの特殊魔法が少しずつ覚醒してきたんだよ」 「でも、物を浮かせる魔法なら特殊魔法じゃなく無い?」 「それが違うんだよ。桜詩くんの特殊魔法は『無重力空間を創り出す魔法』なんだよ」 「それって、しっかりと発動するようになればとてつもない力になり得る物じゃない?」 「え、そんなにすごい物なんですか?無性(むしょう)も最近、変化があったみたいですけど」 「これはこれは、とんでもない逸材を見つけてしまったのでは……」 チリリリン。 喫茶の電話が店内に響き渡った。 雨がその電話に出た。 「はい、こちら喫茶『星空』です。……学園長でしたか。どうなさいました? はい……はい……、本当ですか?!今すぐそちらに向かいます!」 「雨さん、そんなに慌ててどうしたの?」 「話すよりも見た方が早い。ウルとウィザードは店を頼むよ。無性くん、桜詩くん、メナくん、魔法学園に向かうよ。急いで支度してくれ」 * * * * そうして四人は魔法学園へと向かい、雨に案内されるまま、学園長の部屋の隣の部屋に着いた。 雨がコンコンと木製の扉をノックする。 「どうぞ」 扉を開けると、スフェーンのベットを学園長とローズが囲むように座っていた。 「急ですみませんね」 ベットにはスフェーンが眠っていた。 倒れたのだろうか。 「眠っているだけのように見えますが、どうしたんですか?」 桜詩が何も知らずに聞いた。 学園長は深刻そうな顔をして言った。 「昨夜遅くに、拷問室、スフェーンの仕事場から叫び声が聞こえたから急いで向かったら、スフェーンが倒れていたんだよ。 でも、命に別状はないから安心していいよ」 「ですが、緊急で連絡を下さったということはそれだけではないのでしょう?」 「その通りだよ。それに関しては見てもらった方が早いと思うよ」 そのとき、スフェーンが目を開けた。 「あれ、学園長……?それに、メナくんと雨まで。待ってね、今起き上がるから」 スフェーンはそう言いながら起きあがろうとしてベットに手をついた。 つくことができない。 いや、つける手が無い。 「あれ、おかしいな。どうしたんだろ」 スフェーンがそうジタバタとしていると、体を覆っていた掛け布団がずり落ちた。 四肢がない。 「あれ、手脚が無い……?」 手は肩の少し下からが、足は太ももの途中から無くなっていた。 「スフェーン、それ、」 「私がスフェーンを見つけた時にはすでにこうだったんです。あと、羽も千切れていたから取り敢えず手当をしておきましたよ。 スフェーン、昨日の夜のこと説明してもらってもよろしいですか?」 「はい。覚えているところまでなら」 * * * * 昨日の夜、仕事が終わったから鍵を閉めて自分の部屋に帰ろうとしたんです。 「スフェーン、久しいね」 後ろから声が聞こえたから、振り返った。 そこにはニコニコと笑いながら立っている男が一人居た。 その声は確かにジェネシスだった。 私はそのとき、後ろから何者かによって気絶させられた。 目が覚めたら、私が普段使っている拷問室の十字架に貼り付けられていたんだ。 「そろそろ研究所に戻ってきてもらうよ。 でも安心して。殺しはしないから。 でも逃げられちゃ困るから、手脚と羽根は切断させてもらうね」 私は何も言えなかった。 恐怖で全身は震えるし、助けを呼ぼうとしてるのに声が出ない。 助けて。 「さあ、始めよう」 ジェネシスがそういうと何者かが羽を切り落とした。 私は叫んだ。 痛い。痛い。痛い。 汗が止まらない。 「次、行こうか」 ジェネシスの部下だろうか。 私の腕にノコギリのようなものを当てた。 それを動かし始めたときに、私は痛みのあまり気を失った。 * * * * 「なるほど……ジェネシスですか。 思い出させるようで悪いですが、見た目は覚えていますか?」 「はい。真っ白な長髪を下の方で結んでいて、前髪はセンター分け。 人をの色はおそらく学園長と同じだったと思います。あと、目元も少し学園長に似ていたような……」 それを聞き、学園長は顎に手を添え言った。 「ふむ。もしかしたら私の知る人物かも知れません。 こちらでも調査してみますので、これからのジェネシスの行動に気をつけてください」 雨は不安そうな表情をして学園長に聞いた。 「スフェーンはどうするんですか?これじゃあ仕事どころか、日常生活もままならないんじゃ……」 「それなら、うちに来て貰えばいいんじゃないですか?」 桜詩がふとそう言った。 雨は驚いていたが、学園長はその意見に賛成した。 「もしよろしいならそうしましょう。雨もいることですし、安心できます」 「あの、私の四肢のことなんですが、天使長に聞いてみたらわかるかも知れません」 「本当ですか?ならそうしましょう。私も天使長さんと一度お話ししてみたいと思っていましたので」 「じゃあ、取り敢えず通信を繋ぎますね」 そう言ってスフェーンは天使長に通信を繋げた。

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1話〜一夜にしての再会〜