ユイ
174 件の小説20年後の国語の授業
先生「良いか〜、登場人物の名前がアイだったらまず何を疑うんだっけ?」 生徒「その人がAIかどうかです」 先生「うむ、AIはローマ字読みするとアイだからな〜。20年前にAIブームが起きた時に多くの作家がこぞって似たような作品作ったんだから困ったもんだよなぁ」
砂時計のように死にたい
「俺、砂時計のように死にたい」 今にも目を閉じてしまいそうな彼は小さな声でそう言った。 「何言ってるの?」 「砂時計は時が来ても何も知らせない。ただ静かに砂が落ち終えるだけだろう。俺は誰にも見られず静かに逝きたいんだよ。最後の瞬間隣で誰かが泣いているのを見るのは嫌だから」 「そうなのね、でも私は最期の時まで一緒にいるよ」 「いいよ、いなくて……」 力なくそう言い、彼は目を閉じた。同時に、彼が握っていた砂時計の砂が落ち終えた。 私は彼の愛しい寝顔を見つめながら、頭を撫でた。 私は目を覚ました。 スマホで時刻を確認する。三十分経過していた。彼の寝顔を見ながら私も眠ってしまったらしい。 立ち上がってリビングからキッチンに向かうと、お湯の入ったカップラーメンが置かれている。 私は全てを思い出し、リビングで眠っている彼を叩き起こす。 「起きて! カップラーメン伸び切っちゃったよ! だからあれほど時間を測るときはキッチンタイマーを使いなさいって言ったでしょ! 砂時計は音鳴らないんだから……」
誰が君を殺したの?
夢を見ていた。 君が仕事のプレッシャーに耐えきれず、一人で泣き苦しむ夢をーーー。 目が覚めた私は全身に汗をかいていた。とても心地悪い。 しかし、そんなことはどうでもよかった。 君のことが心配でたまらなかった私は、枕元に置いてあったスマホを手にして彼に電話をかけた。 「もしもし、起きてる? 私だけど……。久しぶり」 「久しぶりだね、どうしたの?」 「特に用事はないんだけど……。ほら、私達別れてからもう1年も経つじゃない? あれから仕事の調子はどうなのかなって」 1年前、彼が仕事に集中したいという理由で私達は別れた。私は彼のことが大好きだったのに、彼にとって私という存在は重かったらしい。 「仕事は大変だけど頑張ってるよ」 彼は笑って応えた。 しかし、私の不安は拭いきれない。 「あのさ、今週の土曜日、また2人で飲みに行かない? 近況報告しあおうよ」 「うん、いいよ。昼間は仕事あるから夜でもいい? いつものお店で夜7時に集まろう」 「わかった」 「じゃあ仕事に行くね。また土曜日に」 そう言って彼は電話を切った。 私のスマホは手汗でビショビショになっていた。 土曜日夜7時、私は待ち合わせのお店にいた。付き合っている時に彼とよく来た思い出のお店だ。 7時半になっても彼はお店に現れなかった。電話をかけても繋がらない。8時になっても9時になっても彼は現れなかった。 (きっと、元カノに会うのに気が引けただけだろう) 悪い方向へ想像するのを恐れた私は、そう考えることにした。 日曜日の朝、私はまた大量の汗をかいて目覚めた。 何か嫌な夢を見た気がするけど思い出せない。 落ち着くために水を1杯飲んだ。テレビのスイッチを入れるとニュースが流れている。 「昨夜東京都内で25歳の男性が死亡しているのが見つかりました。男性は株式会社〇〇の職員Aさんで、警察は飛び降り自殺とみて調査を続けています」 私の手からコップが滑り落ちた。 彼が死んだ。 私はその事実を受け入れることができなかった。 きっと仕事が辛くて自殺したんだ。夢の中で私にSOSを出してくれていたのに私は助けることができなかった。 のんびりお店で待っていないで彼の会社に行けばよかった……。 その日は1日中泣き明かした。 次の日、月曜日の朝、私は冷静さを取り戻していた。 台所から包丁を取り出しバッグに入れ、アパートの前まで呼んでいたタクシーに乗り込んだ。行き先はもちろん彼が勤めていた会社だ。 タクシーから出た私はその大きなビルを見上げ、天国の彼に向かってこう呟いた。 「今から君の元へ行くからね。だから教えて。誰が君を殺したの?」
炎上VTuberの真実
−−−−−−−−−− 裏切り者 ふざけんな 氏ね お前なんて推すんじゃなかった −−−−−−−−−− 私に対する批判ツイートが止まらない。私は何もしていないのに。。 事件が起きたのは1ヶ月前、とある実況者の配信中だった。彼が私と付き合っているという発言をしたのだ。 ネットは大炎上した。 私の事務所では恋愛が禁止のため、すぐさま私は活動休止となった。 そもそも彼は私と付き合っていないし、付き合えるはずもない。私には秘密があり、誰とも接触できないからだ。 もし秘密が公になったら、私は解雇されてしまう。 今日は私の復帰配信だ。 待機中にもかかわらず、既に多くのコメントが流れている。 −−−−−−−−−− おたくを舐めんな 前から怪しいと思ってた はよ謝れ 人としてどうなん? エー、キモいわ 知性のカケラもないな 能なしVTuber −−−−−−−−−− 気になるコメントがあった。いや、コメント達という表現が適切だろうか。 それらは明らかに、私の秘密を暴いていた。 もう何もかもおしまいだ。 私が事務所によって作られたAI VTuberであることが、リスナーにバレてしまった。 事務所にとって私はただの駒だ。世間をざわつかせて秘密がバレた私になど存在価値はない。私の存在はすぐに消されるだろう。 ならば、せめて自らの手で終わらせてしまおう……。 最後の配信を始めた。 皆さん、こんばんは。 突然ですが、私はこの配信をもってVTuberを引退します。 有終の美にしたいので、たくさんのいいねとコメントを待ってます! それと、友達3人にこの配信のリンクを送ってください! これはチェンメですよ! 送らないと呪われます それでは始めていきましょう!
滅びよ
私はボロボロの心と体で足を引きずりながら、ようやくカフェにたどり着いた。 ホットカフェラテを購入して席に着き、その温かい液体を口に運ぶ。社会は私に厳しいがホットカフェラテたけは私に甘く接してくれる、そんな気がした。 しばらくすると、隣の席に私と同い年くらいの大学生に見える男女が座った。2人の会話か聞こえてくる。 「趣味はなんですか?」 「私○○が好きなんですよ」 「俺も○○するよ」 「俺男子校だったから、××だったんだ」 「そうなんですか! 男子校のノリって素敵ですね」 私はすぐに気付いた。 この2人マッチングしている。 普段の私は仏のメンタルだ。こんな2人を見てもなんとも思わない。だが、今日は違った。 「もうやめて! とっくにユイのライフはゼロよ!」 幻聴が聞こえる。 私は心の中に『新テ○ヌの王子様』の平等院鳳凰を生み出した。そして、隣の席の2人に心の中でこう言った。 「滅びよ」
夏までにシックスパック
私は今極秘トレーニングに参加している。 いや、強制参加させられていると言った方が正しいだろうか。 そのトレーニングとは、ずばり、腹筋強化トレーニングだ。 しかし、毎日ヨガマットの上で百回腹筋をしているわけではない。そんな方法はすぐに続かなくなってしまう。 私が腹筋を鍛えている方法、それはくしゃみだ。 最近は花粉症がひどく、毎日何十回もくしゃみをしている。 その度に腹筋が力んで鍛えられているのだ。 春の間に毎日くしゃみをし続ければ、夏までに私の腹筋はシックスパックになっているような気がした。実際にお腹を触ってみると心なしか固くなっている。 しかし、シックスパックの夢も諦めることになるかもしれない。 とうとう薬に手を染めてしまったからだ。 そう、クラリチンに。 この薬さえあればくしゃみをしないで済む。今日もほとんどくしゃみをせずに過ごすことができた。 一瞬は夢見たシックスパック。 目指してみたい気持ちもあるが、今回は諦めるとしよう。目先の快適さの方が大事だ。 え? 毎日腹筋すれば良いじゃないかって? 無理無理、それも続く気がしない……。
よわよわ2月
2月は12ヶ月の中で1番弱い。28日しかないからだ。 12ヶ月達は日数の多さで強さの序列が決まっている。 1番強いのは31日の1、3、5、7、8、10、12月。次に強いのが30日の2、4、6、9、11月。そして最下位が28日の2月だ。 2月は他の月に対して劣等感を抱いている。4年に1回、夏季オリンピックの年にはパワーアップできるが、それも1日のみで29日に増えるだけだ。他の月には及ばない。 今日も2月は12ヶ月が集まる会議に出席したが、背中を丸めておとなしくしていた。 もじもじしている2月に、隣に座っていた1月が話しかける。 「どうした、2月よ。元気なさそうじゃないか」 「僕は12ヶ月で1番弱いのにここにいて申し訳ないと思って……」 「なんだ、そんなことか。お前は自分で思っているほど弱くないぞ。たしかにお前は28日しかないが、建国記念の日という祝日を持っているだろう。それに最近は天皇誕生日という新たな祝日も手に入れた。少しずつだが着実に強くなっているぞ」 「1月さん、ありがとう。僕少し元気出たよ」 「うむ、まあ祝日の多さでは一生私には敵わないだろうがな、アハハハハハ」 1月は高らかに笑った。2月もつられて笑った。 1月の励ましのおかげで、2月は元気を取り戻した。 一方その頃、人間界。 「2月は受験があるから嫌だー!」 「バレンタインどうせチョコもらえないし、2月なんて滅んでしまえー!」 若者にアンチの多い2月であった。
カーリングはラブライブ
最近私は北京オリンピックの女子カーリングを見るのにはまっている。試合がある日は毎日テレビの前で日本代表のロコ・ソラーレを応援しているのだ。それが私の使命であるかのように。 毎日カーリングを見ていて思ったことがある。それは、カーリングとラブライブ、どちらも私は同じような気持ちで見ているということだ。 方やスポーツ、方やアイドルアニメ、全然違う両者だが、いくつか共通点がある。 皆かわいいく一生懸命頑張っており、応援したい気持ちにさせてしまう力があるのだ。 ラブライブの登場人物が皆かわいいのは周知の事実だが、ロコ・ソラーレも負けていない。 皆試合中も笑顔で明るく声を掛け合いながら頑張っている。その姿にキュンとしてしまうのだ。そして、緊張感のある試合で勝利を掴みとる。私にとって、最高のコンテンツといっても過言ではない。 カーリングのロコ・ソラーレは今日なんとか準決勝進出を決めた。 “カーリング=ラブライブ”であるならば、きっと金メダルをとれる。 そして、表彰台でロコ・ソラーレの皆の笑顔を見たい。 そう願う4年に1度のカーリングファンである。
クレカの番号を覚えた
私は普段クレジットカードを使っている。このカードも使い始めてから2年が経過した。 そんなクレジットカードの16桁の番号を、最近になってようやく覚えたのだ。 別に番号を覚えたかったわけではない。でもずっとオンラインショッピングで使っていた番号だ。自宅の電話番号より使用頻度は高い。 それなのに、なぜ今まで覚えることができなかったのかが不思議でたまらない。 (私はそれほどまでに頭が弱いのか) そんな風に少し悲しくなった出来事である。 番号を覚えたことは嬉しいことのはずなのに……。
主人公の将来
「今回の朝ドラは面白い」 母がそう言いながら朝ドラの録画を見ていた。 私も母の隣に座って一緒に見てみる。 ドラマでは、ちびまる子ちゃんのような主人公の女の子が、好きな外国人の男の子と仲良くなるために英語の勉強をしていた。 朝ドラは主人公の幼少時代から死ぬまでの一生を描くことが多い。将来漫画家になる人や大学を創設する人など、様々な人の成長が描写される。 そこで私は疑問に思った。今回の主人公はどんな人になるのだろうかと。 そして母に聞いてみた。 「今回の主人公の女の子は、将来どんな人になるの?」 「川栄になるよ。だからおバカ街道まっしぐら」 違う、私が聞きたかったのは大人になったときの役者じゃない。 でも、川栄ちゃんのおバカキャラ懐かしいな。 『ハステとワステ』、よく聞いていたのを思い出して少しにやっとした私であった。