アルリア

25 件の小説
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アルリア

小説書くのはまだ慣れていない初心者です 基本的にファンタジー系、恋愛系を書こうと思います ただ恋愛系はほとんど同性愛の話になると思うので苦手な方は気をつけてください 連載中「花の物語」 「花の物語」でリクエスト募集してます! 最近ショートショート書くのにハマってます

この世界の中で

この世界にずっといたい この世界だけが俺を認めてくれる 現実世界はクソゲーだ どんなに頑張ってもレベルがすぐに上がるわけじゃないし頑張れば倒せる敵もほとんどいない 基本的には頑張っても倒せない敵の方が多いだろう だから俺は嫌いなのだ どんなに努力したところで結局見られるのは才能があるやつだけ 才能がないやつなんて…生きていくのは不可能だろう けどこの世界は違う 頑張ればレベルなんてすぐに上がる、頑張れば倒せない敵なんていない この世界は努力を認めてくれる素晴らしい世界だ 休みの日はほとんどこの世界で過ごしている 唯一の幸せだ 俺には…この世界しか生きる意味がない そんなことをネットの友達に話したことがある そのネットの友達はよく一緒に世界に行きクエストをするほどの仲だ その友達は「分かる」と言った後しばらく黙り込んでしまった 変なことを言っただろうか、俺は しばらくの沈黙のあとネットの友人はポツリとこう呟いた 「俺たち…この世界がなくなったらどうなるんだろうね」 俺はその言葉を聞いて完全に思考が停止してしまった 友人の言っていることを理解するのに数秒はかかってしまった 確かに友人の言う通りだ この世界は作られた世界、いつなくなっても不思議じゃないのだ なくなる…つまりサービス終了という意味だ そんなこと考えたくなかった しかし友人はそんな俺の気持ちに気づくはずもなく話を続ける 「俺たちっていつもこの世界にいるよね、なくなったら生きていけるのかな?」 この世界は神ゲーだ、しかし現実世界はクソゲーで 俺はいつかクソゲーの世界で生きていくしかないのだろうか 俺は何も言えなかった、いや言うことがなかった 「………」 俺が黙り込んでいると友人は「あはは」と笑った、声は乾いていた 「こんなこと突然言って悪かったな、許してくれ」 「…いや、別に気にしてないさ」 嘘だ、本当は俺はすごく気にしている 正直それ以外考えたくないほどに… 現実世界はクソゲーだ 何やっても上手くいかないし努力が認められることもほとんどない だけど…たまにはいいのかもしれない クソゲーもクソゲーなりに楽しい部分はたくさんある 「もう少しだけ…向き合ってみるか」 俺はクエストをクリアした後にそう呟いていた 俺の大好きなこの世界…ゲームの世界以外も見てみよう 俺はそう思うとコントロールを机に置いた

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この世界の中で

秘密ごと

「何してるんだ?」 そう言って俺の顔を覗き込んできたのは風紀委員長だった 俺は委員長の顔を見てからまた視線をスマホに戻す 「…はぁ、もう一回聞くぞ お前はどうしていつもこんなところにいるんだ? ここは屋上の入り口だ、立ち入り禁止だぞ」 確かに俺が今いる場所は本来立ち入り禁止の場所だ 入れば反省文を書かされる しかし俺はそう言われても立ち上がらず委員長を見上げる 「お前もいるじゃん」 「注意するためだ、仕方ないことだろう?」 委員長はそう言うと俺の隣に座った 「委員長特権ってやつ?」 俺は嫌味たっぷりで委員長に言う 「そうだな、委員長特権ってやつだな」 委員長はそんな嫌味たっぷりのセリフを気にする様子もなく俺に返した そのせいで余計にイライラが募る 「だけどそれだけじゃないぞ、お前が毎回授業サボるから俺が探す羽目になるんだよ いい加減ちゃんと出てくれよ」 委員長は呆れた顔で俺を見つめる 「お前には関係ないことだろ?わざわざ探すなよ…」 「先生が見逃してくれないのさ 俺だって探すより授業出たいんだよ、だけど先生が俺が風紀委員長だからって言ってさ」 「あぁ…なるほど」 俺は軽く罪悪感を覚えながらも授業に出るというだるさの方が勝っていた 「けどこの場所静かだよな」 委員長は上を見上げながらそう言った 「当たり前だろ、ここは立ち入り禁止だからな」 「じゃあお前はここにいちゃダメだな」 正論を言われ俺は笑うしかなかった しばらく俺たちは黙り静かな雰囲気を味わっていると授業終了のチャイムが鳴り響いた 「あ、終わった」 俺がそう言うと委員長は苦笑いをして 「結局俺までサボっちゃったよ」 そう言った 「俺と一緒って…ご愁傷様でした」 俺はまた嫌味を込めてそう言う 「ほんと…お前って最低だな」 委員長は睨みながらもニカっと笑った 俺はそんな委員長の反応を見れて嬉しくなり 「じゃあこれは俺と委員長の秘密って事で」 と言った たぶん怒られるだろうと思っていたが 「はぁ…俺も反省文書きたくないしな、仕方ない」 俺は委員長の意外な言葉に驚いていた まさかのってくれるとは思ってもいなかったから 「今回、だけだからな」 委員長は俺の反応に気づいたのかニヤリと笑いながら俺のおでこにデコピンした 俺はジンジンと痛むおでこに手を当てながら笑っていた

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秘密ごと

ひまわりの麦わら帽子

サンサンと降り注ぐ太陽の光に思わず私は目を細めた 気だるい夏の日、私は目の前に広がるひまわり畑を見ていた 私のおばあちゃんはひまわりが大好きで1年中ひまわりを育てていた そして夏の時期になるとこうやってたくさんのひまわりを見ることができる そこそこ広い畑はひまわりでいっぱいになりあたり一面黄色で埋め尽くされていた 私は正直ひまわりが好きではなかった 理由なんてない、おばあちゃんがひまわりが好きだから私は好きではないのだ 私のおばあちゃんはとにかく心配症なところがあった 私が少しでも帰りが遅くなればすごく心配し警察に届けまで出そうとするほどだ 私だってもう高校生なんだけど… そのせいで私は友達と帰りに寄り道することが出来なかった ただでさえ私が住んでいるところは田舎なのだ 遊ぶ場所が少ないのにどうしてこんなにも制限させるのだろう… 私はそのことを思い出すとギュッと唇を噛み締めて頭にのった麦わら帽子をとった 麦わら帽子には私の嫌いなひまわりの飾りがある 「嫌いだよ…お前なんて大嫌い…」 私は涙を流しながら麦わら帽子を握りしめる 視界がぼやけひまわりがうまく見えなかった 昨日は私の誕生日、おばあちゃんは私にこの麦わら帽子をくれた 捨ててやろうと思ったがそんなこと出来なかった 私の誕生日の3日前、おばあちゃんは突然この世を去った 理由は突然の持病の悪化だった 私の誕生日プレゼントだけを残しておばあちゃんは行ってしまった 悔しかった、悲しかった 最後に私がおばあちゃんに話した会話なんてもう覚えていない 私は長い間おばあちゃんを無視し続けていたから もっと話せばよかった、なんて私は馬鹿なんだろう… 私はひまわりが嫌い“だった” けど今は… 「なんか、好きだな」 私は麦わら帽子をもう一度かぶり直すとひまわりに向かって微笑みかけた まるでおばあちゃんが私のことを見守ってくれているような、そんな感じがする この花畑は私が守るよ 友達と遊ぶ時間は減るかもしれない、けれどこの花畑は無くしちゃいけない気がする 「頑張ってみよう」 私はそう呟くと頭にのった麦わら帽子を優しく撫でた

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ひまわりの麦わら帽子

偽善者ヒーロー

俺は偽善者だと思う いや、思うではないな 改めまして、俺は偽善者です 俺は自分の正義を誰かに強引に押しつけてしまうところがある 俺の考えが全て正しいとは思わない むしろ間違っていることも多いだろう だけど…それでも俺は俺の考えを、正義を人に押しつけてしまうんだ もちろんそれにはちゃんとした理由がある 俺には…大切な人たちがいるから その人たちがが傷つくのを見るぐらいなら俺は何者にだってなってやる 顔も知らないネットの中で知り合った人たち 初めて声を聞いた時、俺はとても感動したんだ あぁ…ここが俺の居場所なんだって ありのままの俺を受け止めてくれたこの場所が、その人たちが俺はとても大切なんだ その中でも特に大切な人がいる そうだな…仮にAさんとしよう Aさんは俺を見つけてくれた恩人、少なからず俺はそう思っている Aさんがいなかったらきっとこの人たちに会うことはなかっただろうし集まることもなかったと思う だから、俺はAさんが傷つくのを見たくない もちろんAさん以外の人もそうだ Aさんは自分の体を自ら傷つけようとしている、物理的にも精神的にも 世間的には自傷行為と言うのだろう 正直な感想、どうしてそんなことするのって思った 仮にやっているAさんはいいかもしれない、やって落ち着くのかもしれない けれど俺は違う そこを分かってほしい 人は誰だって自分が1番かわいい 自分を優先するのは当たり前だ、だってそれが人間だから だから最終的に決めるのはAさんだ 俺じゃない、Aさんなんだ だけど俺はそれでもAさんのことを止めたい Aさんが傷つくたびに俺の心が傷つく、体が傷つくんだ 俺は悲しいんだよ、それを止められなかった自分が死ぬほど悔しくて 俺はただ泣くしか方法がなくて 自分がどうしようもなく小さい存在だって思ってしまうから だから、俺はAさんのことを助けられなかったんだって ここまで考えて思うんだ あぁ…俺ってきっとAさんにとっては偽善者なんだろうなって 俺だって思うよ、こんなこと考えるなんて俺はきっと偽善者だ けど偽善者だって思われてもいい、それでもいいから俺はAさんのことを救いたい どうすれば救えるかなんて分からないよ でも俺は俺なりの力で Aさんを救いたい それでもし他の人たちも自分のことを傷つけようとしたなら 俺は全力で止めるよ 偽善者だとしても俺は俺の考えで正義でみんなのことを救いたいんだ 昔見ていたあの頃のヒーローのように 偽善者のヒーローになって、俺は大切な人たちを守るよ

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偽善者ヒーロー

赤いベル

ねぇ、赤いベルって知ってる? …あぁ知らないんだね いや、そこまで大切な話ではないよ でも君にとってはとても大切な話になるかもしれないね よかったら聞いてくれないかな? …ありがとう、聞いてくれるんだね 赤いベルって言うのは…願いを叶えてくれる魔法のベルだよ 見た目は名前通りさ、真っ赤に染まっていてとても綺麗なんだよ 言っておくけど市販に売られているベルに赤いペンキを塗ってもあの綺麗さは出ないだろうね え?君も欲しいのかい? 実はね…私は持っているんだよ、そのベルを 譲ってあげてもいいよ だけどまだ完璧な赤いベルじゃないんだ 完成させるには君の力が必要なんだよ、だから声をかけたのさ 君には叶えたい夢があるはずさ そうじゃなきゃこんな街にいないだろ? …夜の街にいるくらいだ、お金に困ってるんじゃない? 女の子が1人でこの街いるのは正直おかしい話だからね やっぱり困ってるんだ じゃあ私の話に協力しておくれ、そうすれば赤いベルを君に譲ろう …ありがとう、手伝ってくれるんだね なにをやればいいかって? なーに、難しいことはしないさ 君はただ… 死んでくれればいいだけさ 真っ赤な海が少女から出来上がっていく 私は嬉しくなり口角が上がるのをなんとか手で押さえながらポケットからあるものを取り出した 赤いシミがたくさん付いたベル 私は真っ赤な海にベルをそっと入れた べっとりとした赤い液体がベルに付着していく もうすぐだ…もうすぐ私の理想的なベルが出来るのだ 娘が欲しがった真っ赤なベル、渡す前に死んでしまった娘に私はこのベルをあげなくてはならない 私は赤く染まっていくベルを見てニッコリと笑った ベルはチリンと鈍い音を奏でていた

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赤いベル

ブルースター

星が降り続けるあの日の夜、僕は君と出会ったんだ 綺麗な黒髪がとても似合う君に 僕はその時思ったんだ あぁ…これは運命なんだと 僕はすぐに君に猛アピールした 君は最初は警戒していたけどだんだんとその警戒心が薄れていってよく笑うようになった 君と出会ってしばらく経ったある日のこと その日も君と出会った頃と同じように星がたくさん降る夜に 僕は君にこう言った 「ねぇ!一緒に僕の星に来てよ!」 僕の住む星と君が住む星、地球との宇宙戦争の途中の出来事だった 敵同士なのに僕はどうしようもなく君を好きになってしまったんだ びっくりした君の顔を今でも忘れない しばらくしてほおを赤らめ、目を潤ませて幸せそうに笑ってこう言う 「…私も、君と一緒に行きたい」 僕はすぐにでも君を連れて行こうと手を伸ばし君の手に触れようとした その時だった 突然僕達の上に星が降ってきたのだ 上空で戦っていた仲間の船だった 一瞬の事だったんだ 僕はいつの間にか地面に転がり目の前には船が無残な姿で落ちていた そして…真っ赤に染まった君の体が転がっていた その時全て分かったんだ 君が…僕のことを助けてくれたんだって 背中がわずかに暖かくて、君が僕の背中を押した感触がまだ残っていて 慌てて君のところに駆け寄った 冷たくなった君の手を握りしめて僕は大声で泣いた 僕は…ただ泣くしかなかったんだ 大声で泣いた僕の声は君に届いていたのかな? あれから何年経っただろう 僕はなんとか生き延びて今は荒れ果てた地球で暮らしている そう、君の故郷だよ 忘れない…僕と君は心と心で繋がっているんだ 「僕は今、とっても幸せだよ」 僕はそう呟くと手に持っていたブルースターの花にそっとキスをした ブルースターの花言葉「幸福な愛」「信じ合う心」

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ブルースター

星空の人魚姫7

「…シリウスはお姉さんに会えたの?」 シリウスの顔が固まった 今は夜中だけど顔が青ざめているのが分かる …聞かなきゃよかったかも 「ごめん、やっぱ忘れ…」 「会えてないよ」 俺が謝るのと同時にシリウスが言った 声はまるで氷のように冷たかった さっきまで笑っていた優しくて温かい声が嘘のようだった 「…ごめん」 俺はそう言うしかなくて顔を下に向ける 「こっちこそごめんね」 下を向いているせいでシリウスの顔は見えないが声が明らかに震えていた 「人魚姫はどんな願いでも叶えてくれるって言ったのにね… 長い間ここにいるけど姉さんに会えていないの もしかしたらどこか遠い街にいるのかもね」 そっか、シリウスのお姉さんも人魚になっている可能性が高いのか シリウスのお姉さんもシリウスと同じように人魚姫に会っている可能性があるから 「…会いに行かないの?…探しに行かないの?」 俺は下を向いていた顔を上げてシリウスを見た シリウスは… 泣いていた とても綺麗な涙だった 月の光や星の光でキラキラと光りこの世にはこんな綺麗な涙があるんだとそう思った 「私はね…ここから離れるのが怖いの」 シリウスはスッと目を伏せる、目を伏せたせいで世界一綺麗な涙はほおを伝った 「ここから離れたら私の存在そのものが無くなりそうで」 シリウスは自分のワンピースの裾を握りしめる なんて…声をかければいい? どうすれば悲しみの海に沈む少女を救うことが出来るんだろう… 俺はシリウスの顔を見た シリウスの綺麗な瞳に俺の顔が映っている 俺は息を吸うと今1番に思っていることを口に出した 「俺は絶対にシリウスのこと忘れないよ」

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星空の人魚姫7

青色の星

「ねぇ、君はあの星を知っている?」 相棒は俺にそう言うと宇宙船の窓から見える星を指差した 俺は窓からその星を見る その星は青くてとても綺麗だった 所々緑色になっている部分もある 「…知らない」 俺は星から目線を逸らすと窓から離れようとした 「あの星、地球っていうんだよ」 俺はその星の名前を聞いて離れようとしていた足を止める 「綺麗だよね…あの青い部分って全部海なんだって」 相棒はしゃべり続ける、相棒が地球を見る目は憧れのような眼差しだった 「綺麗じゃないよ…あんな星」 俺はそうポツリと呟いていた 「どうして?あんなに青い星、僕見たことないよ」 相棒は俺の言葉に驚いているようだ 「俺は見た目の話をしてんるじゃない あそこの星は毎日のように争いが起きてる、幸せになれる人なんて少ないんだよ 人同士で殺し合いだって起こる…俺たちの星とは全然違う 一見綺麗な星だけどとても汚いんだよ だから…あの星に行くのはオススメしない」 俺は一気に話すと黙った 相棒はしばらく唸ると俺の顔を見て 「僕は…やっぱあの星に行ってみたい」 「は?!」 俺は思わず大きな声を出した 相棒の言っている意味が分からなかった 「確かにあの星は君のいう通り争いが多いかもしれない、たくさんの人たちが殺し合ってるかもしれない」 相棒はスーと息を吸うと 「だけどさ、あんなに綺麗な星だよ? もしかしたら素敵なところがたくさんあるかもしれないじゃん! 僕は…その可能性を信じてみたい」 俺は固まった そしてあの時の記憶が俺の中に流れ始めた 俺には相棒と呼べるようなやつがいた 明るくて、まるで今の相棒と同じような性格をしていた あいつは捜査のために地球に行くことになった そして…あいつは地球に行ったきりもう帰ってくることはなかった 上司からは戦争に巻き込まれたらしいと教えられた 悲しく、悔しく、苦しかった もう誰も失いたくない、あの星はとても危険だ だけど…俺はあの時、あいつが言った言葉と今の相棒が言った言葉で頭がいっぱいになった 「大丈夫、俺は必ず帰ってくるよ それにあの星にはきっと素敵な所がたくさんある、俺は…信じたいんだ」 「だけどさ、あんなに綺麗な星だよ? もしかしたら素敵なところがたくさんあるかもしれないじゃん! 僕は…その可能性を信じてみたい」 首を絞められたような苦しさが俺を襲う 危険だと分かっているのに…どうしてなんだろう 「信じて…みたい、地球という星を」 おれはそうポツリと呟いていた 相棒はバッと顔を上げると俺の手を掴んだ 「一緒に行こうよ!きっと…きっとワクワクだよ!」 相棒の笑顔につられて俺も笑ってしまった もう誰も失わない、例えあの星がとても危険でも俺が守ればいい 俺は綺麗に輝き続ける青色の星を見てそう決意した

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青色の星

グラジオラス

※これは同性愛についての話です 「もうやだ〜!!」 そう言いながら俺に抱きついてくるのは親友の翼だ 翼は半泣きになりながら俺に抱きつき涙目で俺のことを見てくる その顔は男のくせに可愛さがあり一瞬ドキッとしてしまった 翼がなぜ半泣き状態になっているのか、それにはちゃんと理由がある …付き合っていた彼女に浮気されたらしい 翼もそれに最近気づき問い詰めたところ 「だってあなた女々しくて好きになれなかったんだもん!」 と何故か逆ギレされ振られたらしい 翼は大きなため息をつき俺に寄りかかる 「俺ってそんなに女々しいの…」 と最後は何言っているか分からないほどの小さい声でそう言った 昼休みの屋上は人が多く翼の声は一気にかき消される 確かに翼は女っぽいところはあるにはあると思う しかしそこが翼のいいところなんだよな 俺は翼の頭をポンポンしながらそう思った 翼は頭をぐりぐりと俺の手に押し付けている 相当ショックだったのかしばらくの間沈黙が流れる 「…彼女とはさ、いい思い出がたくさんあったんだよ」 しばらくの沈黙の後翼はそう言うと 「今じゃこんな思い出、いらないや」 とそう言うとまた黙り俺の肩に顔を押し付けた 「…そんなの忘れればいいだろ」 俺は無意識にそう言っていた えっとした顔をして翼が俺の顔を見る 俺は翼の顔を真っ直ぐと見て今まで隠してきた自分の思いをぶつけた 「俺は翼のことが好きだ 俺だったら翼に楽しい思い出たくさん作ってやる! だからあんな奴の思い出なんて忘れてさ…」 俺の顔は真っ赤だろうな… 「俺と付き合ってくれ」 翼は目を見開くと涙目になりながらコクリと頷いた 俺たちを祝福するかのように屋上にある花壇に咲いたグラジオラスが揺れていた グラジオラスの花言葉 「思い出」「忘却」「情熱的な恋」

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グラジオラス

世界のパズル

俺の見る世界はある日突然おかしくなった 理由は分かってる …大事な君を失ってしまった時からだ モノクロの世界、白黒の世界 世界ってこんなに冷たかったっけ… まるでパズルのピースみたいにすべての風景がバラバラになった 繋げれば1つの絵になると、心の中では分かっていても繋げるのが怖かった この世界は…大切な君が残した呪いの世界だったから だけどそんなある日、温かい人に出会った その人だけが白黒じゃなくて、パズルのピースじゃなくて はっきりと顔を見た 久しぶりに見たんだ…あんなに優しくて温かい笑顔を その人は僕に向かって笑って 「大丈夫…?僕でよかったら力になるよ」とそう言った 俺は…自分の世界についてその人に話した 自分が見えている世界、その世界が呪われた世界だと その人はしばらく考えると優しい笑顔でこう言った 「じゃあさ…」 ギュッと手を握り締められる 冷たくない、こんなにも温かい手があるんだ 「僕と一緒に、この世界のパズルを完成させようよ」 ごめん、大切な君 この呪いの世界から俺は抜け出すよ…この人と一緒に

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世界のパズル