宇宙のひとかけら

10 件の小説

宇宙のひとかけら

高校2年 ゆずごめんね。世界で一番愛してる。

時代

犬の散歩で久しぶりに一時間ほど歩いた 久しぶりに中学校の前を通った ちょうど下校の時間だった 坂を降りる生徒達を見て違和感を覚えた よく見ると中学指定のセーターを着てる人がちらほら あれ、こんな制服だった? あれ、こんなスカート長い? あれ、こんな雰囲気だった? 懐かしい道を歩きながら“時代の変化”を感じた たった二年前までは私もここに通ってたのに なぜ“とっくの昔”のように感じるのだろう

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時代

幸せの涙

『なんで私なんかに構うの?』  それも嫌われ者の私に… 彼と出会ったのは半年前。バイト先で知り合った。 話すようになったのはつい最近。  地味で陰キャな私。とにかく自分に自信がなくネガティブ思考で緊張するとすぐお腹を壊すなんの取り柄もない女子高生。 それとは裏腹に陽気な性格でバイト先でも友達がたくさんいる彼。同じ人間なのにどうしてここまで違うのだろう。  ある日、シフト時間が一緒になった。 午後八時半、暇になる時間帯。 話しかけてくれたのは彼だった。 「高校生?」 どう対応するべきか分からずとりあえず頷く。 「何年生?」 相槌で返せない問題は敬語で返す。 「二年生です」 話はすぐ終わってしまうが、彼は飽きずにずっと話しかけてくれる。それも私が答えやすい簡単な質問で。 退勤時刻になった。私の方が早くあがった。 話し途中に彼は仕事に戻ったため、何も言わずに抜けてしまった。  次シフトが被ったのはニ日後だった。 午後八時半過ぎて暇になったが、彼は一言も喋らない。 今日は何となく態度がそっけなかった気もする。 前回の事怒っているのだろうか。 次もその次もそっけない態度、気まづい空気が漂った。 申し訳ないと思いつつ、話しかけようとすると怖気付く。 あと一歩が踏み出せない。相手の気持ちが分かれば良いのに。  日を重ねていくうちに罪悪感は大きくなり、耐えられなくて声を掛けた。 「あのッ」 思った以上に大きい声が出てしまった。周りの人達の焦点が集まったように感じた。 「後で謝りたいです…」 今度は異常なほど小さな声で。顔が熱い。 一瞬固まった彼。その後吹きだした。 変な事を言ってしまった、と思ったが、 「分かった」 と返事をくれた。退勤した後、彼が終わるのを待つ。 少しして打刻を済ませた彼が来た。 「どうしたの?」と問われる。 「先日は何も言わずに抜けてごめんなさい。話しかけてくれたの嬉しかったのに、そっけなくなって…」 上手くまとめられないけど伝えられた。彼の目は見れてないけど… 「俺もごめん、てっきり話しかけられたのが嫌だったのかと」 そうだったのか、私が無愛想だから。 「そんな事ないです。無愛想だし、地味だけどまた話しかけてくれると嬉しいです」 と言い捨て、逃げるように帰った。  次シフトが被った日、彼はたくさん話しかけてくれた。私も徐々に話せるようになりLINEまで交換した。 最初は必要事項だけだったが、いつの間にか毎日やり取りする仲になっていた。 彼をもっと知りたい。そう思うようになった。  バイト先まで歩いている時、彼の友達が前を歩いていた。 話の内容が聞こえてしまった。  “なぜ彼と私が仲良いのか”がテーマ。 彼は学校で女子に人気。なぜ地味で隠キャな私と仲良くするのか。遊んでいるだけだろう、という内容だった。ショックだった。  心に傷を負った私は余裕がなく、その話を鵜呑みにする事しかできなかった。 彼が出勤してからずっと避けた。あんな噂を間に受けて。 そのまま数日が過ぎた。LINEは未読無視。何件もの通知が来ていた。 バイトが被らない日が続いて、顔を見なくて済むと思っていた。学校終わり、帰ろうとすると正門に彼がいた。私は走って逃げたが、捕まってしまった。どう考えても脚の長い彼のが有利だ。 どうして…遊びなら優しくしないでよ 泣きながら拒む私を見た彼は顔をしかめた。 そして私の事を抱きしめた。 優しいのにとても重かった。でも何故か安心した。 『なんで私なんかに構うの?』 気づいた時には遅かった。関係が壊れてしまうくらいなら今のままでいい。そう思っていたのに。涙と嗚咽が止まらない。 数秒前に戻りたい。叶わない事を何度も願った。 やっと落ち着いた時、公園のベンチまで連れて行ってくれた。 「最初は、興味本位だった。ずっと一人だったから。同情だったのかもしれない。寂しくないのかなって。でも話してみると面白くて惹かれて行った。反応が可愛くて、性格は優しくて、誰にでも気を遣える」 それは誰でもあるものではない。そう教えてくれた。 「好きです。付き合って下さい」 最後にくれた一言。どんな言葉よりも嬉しく感じた。遊びじゃなかった事への安心、申し訳ないと謝罪もして全て話した。嬉しさ、喜び、罪悪感、色々な感情が混ざって涙となり溢れてきた。 「また泣いてる」 力が抜けたように微笑む彼。 君が泣かせたくせに。 「はい」 ぐちゃぐちゃになった顔で答える。彼の目を見て。

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正義の勇者

正義の勇者(Hero) みんなが憧れる素敵な存在 近所の女児が車に轢かれそうになる 迷いなく一歩踏み出し女児を助けた これは勇者(Hero) 自分も飛び出して、2人とも助からない確率 自分の命を犠牲にしてまで出来るものか これは勇者 運良く女児はかすり傷で済んだ 自身は下半身麻痺状態、車椅子生活 これは勇者(Hero)? 相手の親には感謝される 笑顔で元気に振る舞う これは勇者(Hero)? 実は恋人が離れてしまった 家族にも迷惑がかかった 自分の夢はもう叶わない これは勇者(Hero)? 自分が辛い思いをしてでも相手を救うこと 例え、自分の夢が叶わなくなったとしても これは本当に勇者(Hero)なのか、?

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思い出の飴玉

通学時間なのに支度が遅れてしまい、走って家を出た。 結局予定の一本遅いバスになってしまったが、間に合うと安心する。時は淡々と進み、それに比例してバスも進んで行く。 いつもと変わりのない景色を眺めていると向かいのバス停で時刻を確認している老婆がいた。 老眼の為か、目を細めて指でたどって確認している。 少し心配になるが、降りる訳にも行かず、その場を後にした。 「まもなく〜」 音声とともにバスが止まる。 そこで目にした光景は意外なものだった。 先程バス停にいた老婆がいるじゃないか。 歩いてきたのか?いや、高校生の私が走っても十分はかかる。 『ありえない』 何度考えても答えが導き出せないと気づいた途端、一気に背筋が凍る。 再度、老婆に目を向けた時にはもういなかった。 目を丸くした私を無視してバスは進み続ける。 信号で止まったバス。前方に目をやると、今度は横断歩道を老婆が渡っているではないか。だが、私に怖がっている余裕など無かった。信号が変わり、バスが発車したからだ。老婆はまだ七割地点、このままだと轢かれてしまう。ドライバーは気づかないのか? 「危ないっ!」 ついに叫んだ。ドライバーは急ブレーキをかけて止まったが、前輪は横断歩道を超えている。この様子だと手遅れか。 「今、老婆が渡っていましたよね?」 疑いながら確認しに行くドライバー。 私も駆けつけたが、誰もいない。轢いた痕跡もないのだ。 ドライバーには酷く怒られたが、頭に入ってこない。 ふと目線をあげると、ドライバーが老婆に変わっていた。 それも口がさけるほど笑っている不気味な顔で。 私はその場に倒れ込み意識を失ったらしい。 病室のベットで目を覚ました私が話を聞いたのは少し経っての事だった。 最初に老婆を目撃したバス停の前の家で、死人が出たらしい。 衰弱死だったらしいのだが、家族や親族は連絡がつかず、誰にも気付かれずに亡くなったらしい。 その話を聞いた時、モヤモヤしていたものが弾けるように消えた。 老婆が私の前に現れた理由、それは孤独で寂しかったのだと思う。 名前を知った途端、涙が溢れてきた。 あるスーパーの帰り道、久しぶりに歩いて帰っていると、身分証が落ちていた。 それは、数メートル先で重そうな買い物袋を手に坂をのぼっていた老婆のものだった。 届けたついでに家まで運んであげたのだった。 お礼に飴玉をくれた。 忘れていた事への後悔と気づけなかったことにとてつもなく罪悪感を覚えた。 その日の夜、夢に老婆が出てきた。 「ありがとうお嬢ちゃん」 笑顔で明るい光の方へと消えていった。 目を覚ますと枕元にはあの時貰った飴玉が置いてあった。

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ゆずへ

飼っていたインコ、ゆず。可愛くてとにかく尊い愛おしい世界でいちばんかわいい子。 どの俳優よりも凛々しく、どの女優よりも可愛い。 今日放鳥したまま寝て起きた時には息絶えてた。 最期に話したかった。温かかった。 私の唯一の生きがい。 暴れた形跡、苦しそうな目、つい二時間前までは私の唇にその尖った嘴でキスしてくれていたのに。 来月で1歳の誕生日、楽しみにしてた。 だんだん喋れるようになって喜んだ。 私が立つと必ず肩に止まって、隠れたら鳴きながら探して、、 私の不注意で本当にごめんなさい。 全部全部大切だったのに、バイトばかりで全然構ってなかった。 どうにも償いようがない。 もう一度目を覚まして可愛い声で鳴いて、 お茶目な姿を見せて、おバカなことをして笑わせて… 家中どこを見回してもゆずとの思い出のシーンが頭に映される。 ゆずは今私の腕の中にいるのに、動いてくれない。 目を開けてくれない。 あのクリっとした大きな目、光が当たった様に輝く瞳をもう一度だけ見たい。 ゆずがいないと生きていけないよ、そう何度も呟く。 “大好き、愛してる、私の元に来てくれてありがとう”そう言いながらキスをする。

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ゆずへ

一年に一度、君だけに。

7月7日、学校の屋上、目を閉じて風を感じる。 風でなびく艶やかな髪。 白い肌、細い足は心配になるレベル。 君と二人だけの空間が心地いい。 “僕の天使” いつも通り他愛のない話で盛り上がる。 無口な君が僕だけに向ける笑顔。 その度に 大好きな想いが溢れてとまらなくなる。 帰ろうとする君をひきとめ、ハグをする。 『愛してる』 そう言って年に一度のキスをした。   静かに消えた君。 空を見上げると無数の星が広がっている 僕の足元には水滴が滲んでいた。

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一年に一度、君だけに。

大好きな貴方へ思いを込めて

大好きな貴方へ 今何をしていますか? この世界と比べて楽しいですか? なんでも好きなことは出来ますか? 生まれ変わりは本当にありますか? もし生まれ変わったのなら私に会いに来てください。 今の私は独りです。 家族がいても友達がいても独りです。 私自身がそう思っているから。 どうして遠くへ行ってしまったのですか? 私も連れて行って欲しかったです。 いつでも一緒が良かった。 星や雲になりたいと思います。 そうすれば貴方に会えると思うから。 もうすぐあなたのところへ行きます。 私にとってたった1筋の光を求めて

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梅雨時 母親が買ってきてくれた傘を手にのんびり歩く。平日になんて呑気なんだろう。時間は九時三十八分。すれ違う人からの視線を感じる。憧れの制服を着ることは嬉しいが、片道一時間もかかる学校に行くのは思っていたよりも過酷だ。バスを待っているとふと気づく。傘に桜模様が浮き出ているではないか。どれほど心が濁っていても見惚れてしまうほど美しい。周りに桜が散っている様な幻想に陥る。桃色に群青色を混ぜた紫に近い色合いの傘。くすんだように思えるがハッキリしている。桜のための色と言っても納得できる。この傘を開発したのは誰だろう。その人はきっと天才だ。そんな風に考えているとバスの扉が開く。急いで傘を閉じ乗車する。同時に濁った心に切り替わる。窓の外は雨、どんよりとした車内。とても空気が重い。家庭環境が上手くいかず心が蝕まれた私には心まで重く感じる。何もかもどうでも良い。私に未来など訪れない。生まれつき心臓に疾患がある。軽度だったが、半年前の検査で腫瘍が見つかり悪化したことが判明。腫瘍は悪性で余命宣告までされた。学校に到着するともう一人の“私”になる。 明るくおてんばな女子高生。異性、同性どちらからも人気で高嶺の花と言われる存在。お昼休憩の時間、友達に 「体調悪い?なんか顔やつれてない?」 と言われたので、内心焦りながら 「最近メイク変えたからかなぁ」 と苦笑する。クマや顔色は完璧に隠したつもりでいた。 きっと雨のせいだ。 学校が終わると今よりずっと色味の強い化粧品を購入し帰宅。疲れが一気に来るため眠りにつく。夢を見た。傘を持った少女が空を飛ぶ夢。目が覚めても鮮明に覚えていた。ハッと閃く。私も飛べばいいんだ。わざわざ死を待つことは無い。計画を立て始める。 どんなものを用意して、いつ実行するか。というものだが、傘さえあればいつでも実行出来る。 悩んだ結果、実行日は1月19日 生まれた日に人生を終える事にする。 それが家族への最大の復讐だと思ったからだ。 家では嫌われ者、学校では偽りの自分。そんなつまらない生活。 人生楽しそうな人は沢山いるが、私からしたら“苦”でしかない。 1月19日 実行日。雪がパラパラと降り注ぐ。最後に目にする景色があまりにも美しく、口角が少し上がる。なんて呑気なんだろう。平日なのに、制服で学校とは真逆の方向へ向かって歩く。十時四十六分。目的地へ到着。迷惑がかかることは考えない訳では無い、がどうでも良く思えてしまった。最後まで奸悪な自分にも嫌気がさす。管理人には友達を迎えに来たと説明する。偽りの自分でいられるのもきっと最後になるだろう。非常階段を使い最上階へと登る。足が鉛のように重い。何故だろうか。頬には幾筋もの涙が伝っていた。最上階から身を乗り出し、お気に入りの傘を開く。いつ見ても美しい。胸が高鳴る。深い深呼吸を1つ。そして空に向かって飛び込んだ。 なんて爽快な気分。今までにない笑みを浮かべ宙を舞う。いつの間にか目の前が真っ暗になっていた。

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傘

思い込みとはなんだろう。 今日も窓から外を眺める私。 周りの人は授業を受けてるのに。 コソコソと呟き出す。 私の愚痴など、聞きたくない。 ヘッドホンをする。 音楽を聴く。そんなうまい話はない。 自分勝手な思い込み。 今日も窓から外を眺める私。 周りはみんな寝てるのに。 隣の人も前に座る人達も。 みんな私に見惚れてる。 当たり前のことだろう。 今日はメイクが上手くいったのだから。 自分勝手な思い込み。 思い込みはトゲとなり心を刺してくる。 思い込みは私の気分を高揚させてくる。 みんな同じ『心』をもって生まれる。 その心の使い方により人は変わる。 性格も、外見も、この世の全て。 心を扱うのは難しい。今でも思う。 思い込みは心から成り立つもの。 今日も心を扱うだろう。 『正体不明』の思い込みとして。

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友情

花怜side 学校に行くといつも『おはよう』と言ってくれる友達は千束。 私が入学して初めてできた友達だ。 見た目はもちろん、声のトーンも明るく可愛らしい。そして元気だから、私まで元気をもらえる。千束の挨拶は毎朝の恒例になっていき、暇さえあれば話したり笑ったりするほどの仲だ。楽しかった。 私にとっては−−− 十一月のある日、千束から相談を受けた。相談されるのは初めてだ。 内容をまとめると、千束は“自殺”しようとしているらしい。 私は無理にとめることもないと思った。その気持ちがわかるから。その後、死ぬ時は教えて欲しい、とだけ伝えて話を切り上げた。 千束side 花怜に初めて相談をした。“自殺”しようとしていることを伝えた。初めての相談なのにとてつもなく重い。とめられるだろうと思っていたが、あっさり受け入れてくれた。予想とは違うが、そっちの方がありがたいと思う。でも、正直とめてほしいきもちもあった。なんだか悲しい気持ちになる。 花怜side それからしばらくたった日曜日の夜。 千束から1件のLINE 『明日死ぬから』 どこで、いつ、頭の中は疑問で埋め尽くされていたが、それどころではない。 どこで 千束からの返信は来なかった。 翌朝、急いで家を出た。学校、ショッピングモールや商店街にもいない。思い当たる全てを探したがどこにもいない。残っているのは家だけ。あいにく家に行ったことは無い。遊んだ時に千束から聞いた情報をもとに探したところ、四十二階建てのマンションに住んでいることがわかった。猛ダッシュで電車に乗る。降りてからもずっと走り続ける。とめるわけではないが、伝えておきたいことがあったから。 マンションの前についた頃には夕方五時を過ぎようとしていた。最上階を見ると、千束が立っている。丁度飛び降りようとしている。走って階段をのぼる、が間に合いそうにない。それでも諦めずに走り続ける。間に合ってくれ、心の中でそう叫びながら。 千束side やっぱり花怜は来なかった。少しでも期待した私が馬鹿だった。とめてこない時点で分かっていたことだろう。そもそも家を教えていない。改めて自分の馬鹿さを実感した。誰にも必要とされていない。最後くらい必要として欲しかった。そんなことを思った自分が嫌になる。 勇気を出して一歩踏み出すだけ。怖くない。楽になるだけ。生まれ変わったら、どんな世界にいくのだろう。今度はもう少し楽しく、恵まれた人生を送りたいと願う。 正面の壁に身を乗り出す。 いつでも落下できるように。 花怜side 走りに走って最上階につく。扉を開けると千束は玄関に背を向け壁に身を乗り出している。 今まで焦っていた気持ちが一気に解けた。 ゆっくり呼吸を整えながら歩く。そして、千束のすぐ隣の壁に背をかける。 ほんとにそれでいいの? やり残したことはない? 死にたいなら死ねばいい。 でも最後に私の話し相手になって。 そう語りかけた。今までで1番優しく。 “何がしたいの” 今にも泣きそうなくらい、小さく、震えた声で返される。 自分でも何がしたいのか分からない。 ただ一つだけ、言えていないことを伝えたかった。言葉にしたいが、単なる言い訳に過ぎない。本当は話したい気持ちもあるから。結局何も返さなかった。いや『返せなかった』のほうが正しい。 千束side 飛び降りようと覚悟を決めたところで花怜がきた。今更、とめにきたのかと呆れる。私の横の壁に背をかけ、語りかけてきた。 ほんとにそれでいいの? やり残したことはない? 死にたいなら死ねばいい。 でも最後に私の話し相手になって。 それでいいからこうしているのではないか。 やり残したことはないから、今こうしているのではないか。 死にたいから死のうとしているのではないか。 何がしたいのか、全く理解ができない。 “何がしたいの?” そう問いかけた。 相手がどう思っているかなんて正直どうでもいい。 早く飛び降りたい気持ちでいっぱいだった でも、最後くらい話し相手になってあげてもいいかなと思った。 問いかけに対しての返事は返ってこない。 その後は、しばらく重い空気が漂った。 そんな中、先に言葉をかけたのは花怜だった 花怜side 静寂が続いた。その空気を壊したのは私。 実は隠してたことがある。 “私はもう死んでいる” 千束はその言葉に驚いている。無理もない。何か言いたげな顔をしているが、それを無視して語り続ける。 死因は自殺。限界を超えてついに壊れた。千束の気持ちはわかる。けれど、私のようになって欲しくない。 今は幽霊に近い存在だという事。 未来予知の能力が身についた事。 千束の未来はすごく明るいという事。 私を信じてもう少しだけ頑張って欲しい。 それだけ、伝えたかった。 伝えないといけないと思った。 自分が死んだという事。 未来予知の能力を得た事。 誰かに話してしまうと、この世にはいられない。 だから、今まで隠していた。 だけど、これが千束の生きる自信に繋がるなら構わない。 千束side 花怜が語り始めた。その内容はありえないものだった。聞いているうちに次々と疑問が浮かんでくる。 幽霊とは。 未来予知とは。 なぜ教えてくれなかったのか。 花怜が語り終わったあと、私は怒りが抑えきれなかった。 友達だと思ってたのに、心底呆れる。 相談した時、なぜ教えてくれなかったのか、理解できない。そもそも信じられるわけがない。ならば、どうして触れるの、話せるの、私をとめるための口実に過ぎない。そんな嘘が通じると思ったのか。 馬鹿馬鹿しいと嘲笑ってやった。 とても腹が立った。教えてくれなかったことだけでなく、友達だと思っていたのは私だけだったのか、と。とても悲しくなった。 怒りが鎮まらないまま解散した。 花怜は、 今まで隠してたことへの謝罪。ついでに話は嘘じゃない、とだけ 言って帰っていった。 その日の夜。腑に落ちないまま眠りについた。嘘だとしても、私の未来をそう望んでくれているのだから、自殺はやめた。 流石に言いすぎたと反省し、謝る気でいた。 花怜side 千束が怒ったのははじめてのことだからとても驚いた。もちろん友達だと思ってる。嘘じゃない。そう返したくても、言葉が出てこなかった。信じてくれるかは分からない。でも、千束なら信じてくれる。勘だけどそう感じた。最後は笑った顔が見たかった。そんなことを思いながら眠りについた。 頬には涙が伝っていた。 千束side 翌朝、学校に行くと、花怜の机がなくなっている。 いじめを疑い、先生に聞くと、そんな人は元からいなかった、と言われた。何馬鹿なことを言ってるんだ。そう思い、友達にも聞いてまわったが、私の方が馬鹿扱いされた。 なんで… 悔しい気持ちでいっぱいだった。 昨日の事が本当だとしたら、酷いことを言ってしまった。 花怜にとっては最後だったのか。 胸が締め付けられる。 あの話を受け入れて仲直りしていれば… 自分を責めた。沢山泣いた。 教室に戻ると机の上に1枚の手紙があることに気づいた。表紙には『千束へ』と花怜の文字で書かれている。 −内容− 高校入学して、初めてできた友達が千束でよかった。 私はこれから先、千束に寄り添うことはできないけど、千束は強い子だから大丈夫。 未来も明るかったし、今は楽しくなくても、これから楽しくなるから安心してください。 なぜ相談した時に教えてくれなかったのかって言われた時、思った。ほんとだよね。その時に全部話してれば千束が自殺を試みることは無かった。自分勝手なんだろうけど、千束と過ごした日々が楽しくてまだ一緒にいたいって思ったんだ。 死んでること、未来予知ができることを話したら私はもうこの世にはいられない。だから、ギリギリまで隠してた。 本当にごめんなさい。こうなったのは千束のせいじゃない。 自分を責めないでね。今までありがとう。 花怜 そう書かれた手紙にポツポツとシミが作られていく。 私もずっと一緒にいたかった。 みんなの心から消えてしまったとしても、私の心の中にはずっと残っている。一緒に過ごした日々は決して忘れない。 −半年後− 私は二年になり、友達もできて毎日楽しい日々を送っている。 あの時花怜が言ってたことは本当だった。 もう一度会えるなら、“ありがとう”の一言を伝えたい。 終

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