ぽてと

4 件の小説

ぽてと

小説書いてみたいなって

猫(人目線)

− 朝、カーテンのすき間が白くなる前に目が覚める。というより、胸が重い。猫が乗っている。動く気配はないので、そのまま目を閉じる。次の瞬間、くしゃみ。猫の鼻が近すぎる。わかった、起きるから。 皿にカリカリを入れると、量を測るように見られる。しっぽが揺れ少し不機嫌な気がする。仕方なくすこし足す。負けた気はしない。 昼、家は静かだ。床に落ちる光の中で、猫は意味もなく動いたり止まったりしている。時計の音に耳を動かし、気づくと眠っている。その姿を見ていると、時間も一緒にゆるむ。 夕方、箱やソファは点検済みらしい。夜、帰宅すると膝の前で待たれる。撫でると喉が鳴る。今日も一日が、ちゃんと終わった気がした。

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− 朝はだいたい、太陽の匂いで始まる。カーテンのすき間が白くなると、ぼくのひげが先に目を覚ます。人間はまだ動かないから、胸の上に乗って体重をかけてやる。全く起きない。次は顔に鼻を近づける。くしゃみ。起床成功。 皿の音がして、粒の朝ごはん。昨日より少ない気がするので、しっぽで不満を表現する。通じないが、鳴けばだいたい増える。 昼は家が静かになる時間。テーブルの下に落ちた光の斑点を追い、床の冷たさで腹を冷やす。時計の針の音は獲物みたいで、つい耳が動く。眠って、起きて、また眠る。 夕方、箱の城を点検し、壁で爪を整える。夜、人間が帰ると膝を差し出すまで待つ。撫で方はまだ下手だが、今日は許す。眠る前、世界は静かで、ぼくの喉が小さく鳴る。

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幸せ

−朝、猫が先に起きていた。 目が合うとあくびをして、エサをねだってきた。エサを用意して、頭を撫でる。これだけで今日はいい日だと思った。 猫を撫でるのに夢中になっていると、自分のトーストが少し焦げてしまった。 けれど牛乳を注ぐ音がやけに気持ちよくてどうでも良くなってしまった。 学校が終わって、帰り道、道端の花が昨日より咲いていた。 特に特別なことはない。 でも家に帰ると、猫が朝と同じ場所で寝てい る。その安心を 「幸せ」と呼ぶんだと思う。

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僕は要らなかった

−朝、僕はいつも通りに起きた。 普通に話して、普通に笑った。 ただ、嬉しいとか悲しいとか、そういう感情をあまり感じなかった。 でもそれは「落ち着いていた」からだと思っていた。 失敗しても焦らない。 褒められても舞い上がらない。 その方が楽だったし、周りからも「大人になったね」「成長したね」と高く評価された。 ノートは綺麗で、答えは正しい。 何も問題は無かった。 夜 ふと鏡を見た。そこに写っていたのは、完璧な僕だった。表情も声も行動も、全て正しい僕。 何かがおかしいと思った。 その時分かってしまった。 感情を持つ僕はもう居ない、残ったのは、正しく生きるための代わりの僕だけ。 壊れていた訳じゃない。 最初から全て終わっていた。 戻る自分も、戻る場所も、最初から存在していなかった。 世界は今日もいつも通り動く。 そのかわり、今日を生きているのは「僕」じゃない。 僕の代わりだった。

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